(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】温度センサの取付構造体
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20250117BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G01K1/14 E
G01K1/14 L
F16K37/00 H
(21)【出願番号】P 2021509358
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012572
(87)【国際公開番号】W WO2020196353
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019075170
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】堂屋 英宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祐介
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191404(JP,A)
【文献】特開2016-183906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体流路を備え、少なくとも一面に前記流路の開口部を備えた複数の流路ブロックと、該流路ブロック上に載置される流体制御機器とを備えた流体制御装置の前記流路ブロック又は流体制御機器に取り付ける温度センサの取付構造体であって、
矩形状の温度センサ取付片と、
該取付片の対向する対辺から延設される対となる挟持片とを備え、
前記温度センサ取付片及び挟持片の少なくとも一箇所の下辺から、内側に向かってストッパ片を延設する温度センサの取付構造体。
【請求項2】
前記挟持片の反温度センサ取付片の端辺は、内側に屈曲する屈曲部を設けた請求項
1に記載の温度センサの取付構造体。
【請求項3】
前記温度センサ取付片は、表面が帯状の加熱手段で覆われている請求項
1又は2に記載の温度センサの取付構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置等に使用される流体制御装置に関し、特に、加熱装置付き流体制御装置に取り付ける温度センサの取付構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に使用される流体制御装置は、種々の流体制御機器が複数列に配置されるとともに、隣り合う列の流体制御機器の流路同士が所定箇所において機器接続手段により接続されることにより構成されているが、近年、この種の流体制御装置では、マスフローコントローラや開閉弁などを、チューブを介さずに接続する集積化が進められている。
【0003】
この種の集積型流体制御装置では、結露防止及び常温では液体である流体をガス化して流す際の再液化防止等を目的とし、加熱装置を必要とする場合がある。このような加熱装置付き流体制御装置では、少なくとも1つのラインの両側にリボン状の面状ヒータが配されており、これらの面状ヒータが複数の金属製クリップによって対応する継手部材に保持されているものが開示されている(特許文献1)。
【0004】
そして、加熱装置を配設した流体制御装置では、温度調整用の温度センサ(例えば、熱電対等)を取り付け、加熱不足や加熱超過を調整するようにしている。
【0005】
そして、従来、温度調整用の温度センサは、流体制御機器を載置する流路ブロック、特に流量を制御するマスフローコントローラの下流側の流路ブロックに粘着テープを用いて貼り付けることで運用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、粘着テープでの取り付けでは、完全に固定されている状態とはならず、外部応力によって温度センサが外れ、温度制御を行うことができなくなるという問題がある。また、温度センサを強固に取り付けるために、流路ブロックに温度センサ取付固定用のネジ孔等を設けることも考えられるが、特殊対応となり、コストが上昇するとともに、汎用化が低下し標準化の面で問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度センサを確実に固定することができるとともに、標準部品にも後付けすることができる温度センサの取付構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る温度センサの取付構造体は、内部に流体流路を備え、少なくとも一面に前記流路の開口部を備えた複数の流路ブロックと、該流路ブロック上に載置される流体制御機器とを備えた集積型流体制御装置の前記流路ブロックに取り付ける温度センサの取付構造体であって、矩形状の温度センサ取付片と、取付片の対向する対辺から延設される対となる挟持片とを備えている。
【0010】
この温度センサの取付構造体は、温度センサを取り付ける取付片から延設される対となる対辺が流路ブロックを挟み込み、上方への引き上げ力が作用した場合、流路ブロックに載置される流体制御機器に当接し、上方への抜けを有効に防止する。
【0011】
この場合において、温度センサ取付片及び挟持片の少なくとも一箇所の下辺から、内側に向かってストッパ片を延設することができる。これにより、流路ブロック(下部ブロック)に載置される上部ブロック(流体制御機器(流量制御器や自動開閉弁等))に、温度センサを取り付ける際にも対応することができる。
【0012】
また、これらの場合において、挟持片の反温度センサ取付片の端辺は、内側に屈曲する屈曲部を設けることができる。屈曲部が流路ブロックの反温度センサ取付面に引っ掛かること、取付構造体に水平方向の応力が加わっても抜け落ちることを防止する。
【0013】
さらに、これらの場合において、温度センサ取付片は、表面を帯状の加熱手段で覆うことができる。温度センサの取り付け位置を加熱手段の取り付け位置とすることでより強固に水平方向の抜けを防止する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度センサを流量制御装置、特に集積型流量制御装置に確実に固定することができるとともに、標準部品にも後付けすることができる温度センサの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る温度センサの取付構造体を取り付ける前の集積型流量制御装置を示す斜視図である。
【
図2】同温度センサの取付構造体を取り付けた後の集積型流量制御装置を示す斜視図である。
【
図3】同温度センサの取付構造体の斜視図で、(a)は第1実施形態を、(b)は曲げ部を単純に直角に曲げた例を、(c)は第2実施形態を、それぞれ示す。
【
図4】同温度センサの取付構造体の第2実施形態を上部ブロックに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】同温度センサの取付構造体の第3実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)はブロックに取り付ける過程を説明する平面図、(d)ブロックに取り付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
<実施形態1>
図1~
図3に、本発明の温度センサの取付構造体の実施形態1を示す。
【0018】
[流体制御装置]
図1に示す流体制御装置100は、上段に複数の流体制御機器3A~3Gと、下段に複数の流体制御機器3A~3Gを載置する内部に流体流路を備えた複数の流路ブロック2と、複数の流路ブロック2を支持する支持部材4と、流路ブロック2及び流体制御機器3A~3Gの表面を加熱する加熱手段Hと、流路ブロック2又は流体制御機器3A~3Gの表面の温度を測定する温度センサSと、この温度センサSを流路ブロック2又は流体制御機器3A~3Gに取り付けるための温度センサの取付構造体1とを備えている。
【0019】
流路ブロック2及び流体制御機器3A~3Gを1つのラインとし、図例では2ラインを表示しているが、ライン数はこれに限られるものではなく、1ラインから複数ライン、設備に応じて自由にライン数を決定することができる。
【0020】
[加熱手段]
加熱手段Hは、流路ブロック2の側面に当接し、流路内の温度を所定の温度まで加熱するもので、入口配管を介して流入するガス(例えば、フッ化水素)を加温し、常温で液化するガスの液化を防止する。
【0021】
流路ブロック2の側面に当接する加熱手段Hは、クリップ5によって挟持固定されている。図例では、面状ヒータで構成される加熱手段Hの高さ寸法は、流路ブロック2(下部ブロック)の高さ寸法に合わせた例を示すが、流体制御機器3A~3G(上部ブロック)の下側を覆う高さを有するものでも構わない。
【0022】
クリップ5は、薄板材を曲げ加工することにより狭圧部5Aは、上下方向に延び、流路ブロック2及び流体制御機器3A~3Gの側面と平行をなしている。連結部5Bは、ガスラインの短手方向に沿って延び、一対の狭圧部5Aを連結している。
【0023】
クリップ5は、
図1~
図2に示すように流路ブロック2及び流体制御機器3A~3Gに、温度センサの取付構造体1、加熱手段Hを取り付け、それらを挟み込むように固定するようにしている。また、加熱手段Hの表面や流体制御器3A~3Gのブロック部上面を覆う、例えばシリコーンスポンジ断熱材を配設し、それらもクリップ5によって固定するように構成しても構わない。
【0024】
[温度センサ]
温度センサの取付構造体1に取り付けられる温度センサSは、流体制御機器3A~3Gを制御する制御機器(図示省略)に、計測した流路ブロック2又は流体制御機器3A~3Gの温度を送信するもので、制御機器は、計測された温度に応じて、流体制御機器3A~3Gを制御するとともに、所定温度の閾値から外れた場合、機器を緊急停止するように指示を出すこともできる。温度センサSは、特に限定するものではないが、本実施形態では熱電対を使用するようにしている。また、温度センサSは、サーモスタットを用いることもできる。
【0025】
温度センサの取付構造体1は、上述した流路ブロック2又は流体制御機器3に取り付けるもので、矩形状の温度センサ取付片10と、この取付片10の対向する対辺10a、10aから延設される対となる挟持片11とを備えている。
【0026】
温度センサ取付片10と挟持片11、11は、本実施形態においては1枚の板金を曲げ加工によって製作するようにしている。板金を曲げ加工することによって、挟持片11、11は、拡開しても元の位置に戻るバネ性を有する。挟持片11、11の間隔L(温度センサ取付片10の幅寸法)は、取り付ける流路ブロック2又は流体制御機器3の幅寸法と略同一寸法としている。通常、この幅寸法、特に流路ブロック2の幅寸法は、集積型の流体制御装置では規格化されており、多くの種類を用意する必要はない。
【0027】
また、取付片10の対向する対辺10a部を直角に屈曲して、
図3(b)に示すように挟持片11、11を形成するようにしても構わないが、本実施形態においては、
図3(a)に示すように、取付片10の幅寸法を挟持片11、11の間隔Lよりも若干長くし、対辺10a部の内側を鋭角に曲げ、更に取付片10に対し直交するように曲げることで挟持片11、11を構成するようにしている。これによって、曲げ加工によるバネ性を高め、挟持片11、11で流路ブロック2を確実に挟持することができる。また、温度センサSに対して上方への応力(引き抜き力)が加わった場合でも、隣り合う流路ブロック2の上に載置される流体制御機器3の底面に挟持片11、11の上辺が当接し、温度センサSが流路ブロックから抜け出すことを防止することができる。
【0028】
また、取付片10と挟持片11、11との高さ方向の寸法は、
図3(b)に示すように同じ高さ寸法としても構わないが、
図3(a)に示すように、取付片10の高さ方向の寸法を挟持片11、11の高さ方向の寸法よりも短くしても構わない。
【0029】
<実施形態2>
さらに、温度センサの取付構造体1は、
図3(c)に示すように、温度センサ取付片10及び挟持片11、11の少なくとも一箇所の下辺から、内側に向かってストッパ片12、13を延設するように構成することができる。ストッパ片12、13も1枚の板金から切り出し、曲げ加工によって形成することが好ましい。
【0030】
図例では、温度センサ取付片10からストッパ片12、挟持片11、11からストッパ片13を延設した例を示すが、ストッパ片は何れかの1箇所から形成していればよい。特に、挟持片11から延設して形成するストッパ片13は、上部ブロックとなる流体制御機器3と下部ブロックである流路ブロック2の上面との間に隙間又は段差が無い場合には利用できない。そのため、温度センサ取付片10から延設するストッパ片12のみを形成することが好ましい。このストッパ片12を形成することで、
図4に示すように、流体制御機器3(上部ブロック)に温度センサSを取り付けるときに、温度センサSに対して上方への応力(引き抜き力)が加わった場合でもストッパ片12が上部ブロックの下面に当接し、温度センサSが流路ブロックから抜け出すことを防止することができる。
【0031】
<実施形態3>
また、温度センサの取付構造体1は、
図5(a)に示すように、挟持片11、11の反温度センサ取付片側の端辺を内側に向かって突出させることができる。突出する部分の形状は、特に限定するものではないが、本実施形態では端辺を、内側に円弧状に巻回することで突出部11aとなるようにしている。
【0032】
突出部11a、11aの間隔Mは、挟持片11、11の間隔Lよりも短くなるように構成すれば、突出部11aの形状は単に端辺を折り曲げるだけでも構わない。
【0033】
流路ブロック2(下部ブロック)又は流体制御機器3(上部ブロック)への取り付けに際しては、突出部11a、11aの間隔Mをブロックの幅サイズと等しくなるまで(通常挟持片11、11の間隔L)挟持片11、11を拡開させ、突出部11a、11aをブロックの側面に摺接させながらスライドさせ(
図5(c)参照)、ブロックの側面を越えたところで、挟持片11、11のバネ性によって、突出部11a、11aがブロックの対面に引っ掛かり、上方への応力(引き抜き力)のみならず水平方向への応力が生じても温度センサSの位置が変動することはなく強固に固定される。
【0034】
本実施形態において、実施形態1で説明した、対辺10a部の内側を鋭角に曲げたり、実施形態2で説明したストッパ片12、13を形成したりすることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明の温度センサの取付構造体は、集積型流体制御装置に取り付ける温度センサの上方への抜けを有効に防止することができるから、広く集積型流体制御装置に好適に用いることができる他、既存の集積型流体制御装置への温度センサの取り付けにも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 温度センサの取付構造体
10 温度センサ取付片
11 挟持片
12 ストッパ片
13 ストッパ片
2 流路ブロック(下部ブロック)
3 流体制御機器(上部ブロック)
4 支持部材
5 クリップ
100 流体制御装置
S 温度センサ
H 加熱手段