(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】8,9-ジヒドロカンナビジオール化合物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20250117BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20250117BHJP
C07C 50/06 20060101ALI20250117BHJP
C07D 303/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K31/336
A61P25/08
C07C50/06 CSP
C07D303/12
(21)【出願番号】P 2021553059
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 US2020021670
(87)【国際公開番号】W WO2020185661
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】マーク マスカル
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ シェブチェンコ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524672(JP,A)
【文献】特表2013-523708(JP,A)
【文献】Shimon Ben-Shabat et al.,New Cannabidiol Derivatives: Synthesis, Binding to Cannabinoid Receptor, and Evaluation of Their Antiinflammatory Activity,Journal of Medicinal Chemistry,American Chemical Society,2006年,vol.49, no.3,1113-1117
【文献】Noriyuki Usami et al.,Formation of Carbon Monoxide during Mouse Hepatic Microsomal Oxidative Metabolism of Cannabidiol; Identification and Determination,Biological and Pharmaceutical Bulletin,日本,日本薬学会,1995年,vol.18, no.4,529-535
【文献】B. Cardillo et al.,ALKYLATION OF RESORCINOLS WITH MONOTERPENOID ALLYLIC ALCOHOLS IN AQUEOUS ACID: SYNTHESIS OF NEW CANNABINOID DERIVATIVES,Tetrahedron Letters,Elsevier,1972年,no.10,945-948
【文献】Orrin Devinsky et al.,Trial of Cannabidiol fpr Drug-Resistant Seizures in Dravet Syndrome,The New England Journal of Medicine,Massachusetts Medical Society,2017年05月25日,vol.376, no.21,2011-2020
【文献】Megan N. Huizenga et al.,Preclinical safety and efficacyof cannabidivarin for early life seizures,Neuropharmacology,Elsevier,2019年01月10日,vol.148,189-198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00- 61/00
C07D201/00-521/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8,9-ジヒドロカンナビジオール(H2CBD)、下記式Ieで表される化合物、下記式Ifで表される化合物、又は下記式Ikで表される化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、それを必要とする対象に、治療有効量の
前記化合物を、前記対象において催眠作用を誘導することなく投与することを含む、
てんかんの発作を治療又は緩和する方法における使用のための、
前記医薬組成物。
【化1】
式中、
R
2f
が、水素、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルであり、
R
2a
が、-OR
2f
、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルである。
【請求項2】
下記式Ieで表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
式中、
R
2f
が、水素、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルであり、
R
2a
が、-OR
2f
、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルである。
【請求項3】
下記式Ifで表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
式中、
R
2f
が、水素、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルであり、
R
2a
が、-OR
2f
、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルである。
【請求項4】
下記式Ikで表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化4】
式中、
R
2a
が、-OR
2f
、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル又はC
2-20
アルキニルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月8日に出願された米国仮特許出願第62/815,735号に対する優先権を主張するものであり、該仮出願はすべての目的のためにその内容全体を参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
治療的介入と薬物乱用の間には微妙な違いがありうるが、ハーブ大麻とその製品ほどそのことをよく例示しているものは恐らくないであろう。難治性のてんかんのいくつの症例では、大麻を含む治療が最後の手段となることがあり、マリファナの合法化を正当化する最も強い医学的理由の一つとなっている。Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の催眠作用を回避するために、その中毒性の少ない異性体であるカンナビジオール(CBD)に絞った研究もある。しかし、CBDは、すべて天然カンナビノイドと同様に、ほとんどの国で規制物質であり、そのTHCへの変換は一般的な化学物質を使用して簡単に行うことができる。CBDの代替としては、8,9-ジヒドロカンナビジオール(H2CBD)とその類似体がある。H2CBDは、安価で非大麻由来の化合物から調製される完全合成のCBD類似体である。ラットにおいて、H2CBDは、ペンチレンテトラゾールで誘発された発作の回数を減らすことに関しても、重症度を下げることに関しても、CBDに匹敵する有効性を有することが見出された。そして、H2CBDは、どんな合理的な合成ルートでもTHCに変換できないので、乱用の恐れなしに、自由に市場に出せる可能性もある。
【0003】
現在、不安や、緑内障、てんかん、痙縮、炎症、神経変性疾患、情動障害、さらにはがんを含む広範な医学的状態を治療するために、フィトカンナビノイド、すなわち麻植物(アサ属の複数の種(Cannabis spp.))に天然に存在する化合物の可能性に関する研究活動がたくさんある。しかし、カンナビノイドの治療での可能性をめぐる機会は、健康への悪影響、乱用の可能性、認知障害及び運動障害、精神障害、法律上の問題、マリファナ栽培の環境への影響を含むさまざまな欠点と比較検討されている。このほか、ハーブ大麻は、さまざまなテルペン、フェノール、フラボノイド、脂質、ステロイドとともに、約100種類のカンナビノイドを含む>500種類の化学物質を含有することが示されており、その毒性及び変異原性についてはほとんど解明されていない。大麻に存在する2つの主要なカンナビノイド、すなわちΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)及びカンナビジオール(CBD)のうち、有害作用(中毒、運動失調、頻脈、傾眠、口腔乾燥、過食)は主に前者に起因し、この理由のために、多くの場合、CBDが薬理学的な研究に選ばれてきた。
【0004】
CBDは大麻植物から抽出することによって得られる。さまざまな不純物が存在する可能性があり、特に現在のほとんど規制されていない状況では、農薬による汚染に対する懸念が高まっている。純粋なCBDが販売されたとしても、CBDをTHCに意図的に化学変換することは技術的に簡単である。CBDが自由に入手可能になれば、プソイドエフェドリンからメタンフェタミンへの「メタンフェタミン密造所(meth lab)」現象に似た文化をもたらしうる。但し、「ハッシュ密造所(hash labs)」が必要とするのは、論理的にはるかに単純な化学変化であろう。純粋なTHCは、その向精神作用に拮抗するCBDを含有せず、潜在的に危険な薬物であることになる。大麻からCBDを得ることに付随して免れられないことは、麻の栽培であり、水の大量使用及び殺虫剤/除草剤の排出負荷の点で環境に影響する可能性が伴う。マリファナが合法化されると、潜在的な環境損害破壊を管理することを意図しない方法を用いた自家栽培に必然的につながることにもなる。そして、マリファナ合法化が医療制度に対して与えうる影響は、かなり大きい可能性があり、近年、米国では、事故による負傷、子どもによる食用大麻製品の意図しない摂取、リプロダクティブヘルスの領域で浮き彫りになってきている。
【0005】
大麻の潜在的な治療適応の中で、最も注目を集めている使用は抗てんかん薬としてであると言える。てんかんとは、何度も繰り返す予測不可能な発作を特徴とする多種多様な疾患に付与される総称であり、その結果は多くの場合、生活の質に大きな影響を及ぼす。歴史的な証拠及び逸話的な証拠は、てんかんの難治症例を治療するための大麻の事実上独自の有効性を示す数多くの症例研究と相まって、マリファナの合法化を推す強力な支持につながっている。CBDの抗てんかん薬としての治療可能性を裏付ける臨床データは、期待が持てるものであるが、関与する研究及び対象の数の点で限られている。一方、発作の急性動物モデルでのCBD及びTHCの抗痙攣作用に関する前臨床証拠は広範に及ぶ。
【0006】
H2CBDの1つの利点は、CBDと類似しているにもかかわらず、大麻抽出物には存在せず、したがって規制物質ではないということである。恐らくさらにより重要なことには、H2CBDは、CBDからTHCへの変換を可能にする二重結合を欠くので、CBDそれ自体とは際立って対照的に、H2CBDからTHCに変換する合理的な合成ルートが存在しない。H2CBDは天然のCBDから調製されているが、薬物スケジュールに分類された物質いずれの仲介も避けるために、H2CBDは効率的で完全な合成アプローチでも調製でき、それによってH2CBDを供給するために大麻を栽培する必要性も回避することができる。必要とされているのは、H2CBDの類似体並びに発作及び他の病態を治療するためのその化合物を使用する方法である。驚くべきことに、本発明はこのニーズ及び他のニーズを満たす。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を、対象において催眠作用を誘導することなく投与し、それによって発作を治療することを含み、式中、nが1又は2であり、R
1a及びR
1dがそれぞれ独立して、-CO
2R
1c、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
1a又はR
1dの少なくとも1つがメチル又はイソプロピルであり、R
1b及びR
1cがそれぞれ独立して、水素又は酸素であり、あるいは、R
1bが酸素であるとき、R
1bがR
1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、あるいは、R
1bがR
1d及びそれらが結合する原子と一体となってC
4-8シクロアルキルを形成し、そのシクロアルキルが1~3個のR
1c基で置換されており、R
1cが、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2aが、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2b及びR
2cがそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR
2f、又は-NR
2fR
2gであり、R
2d及びR
2eがそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R
2f、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、あるいは、R
2d及びR
1aが、それらが結合する原子と一体となってC
6-12ヘテロシクロアルキルを形成し、あるいは、R
2d及びR
1bそれらが結合する原子と一体となってC
5-12ヘテロシクロアルキルを形成し、R
2f及びR
2gがそれぞれ独立して、水素、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、破線a、b及びcが、それぞれ独立して、存在しない、又は結合であり、nが2であるとき、破線aが存在せず、R
1bが酸素であり、R
1aと一体となってエポキシド環を形成しないとき、破線bが結合であり、R
1cが酸素であるとき、破線cが結合であり、破線の円dが存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合である方法を提供する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、発作の頻度を低減する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、対象において催眠作用を誘導することなく投与し、それによって発作の頻度を低減することを含む方法を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、カンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与して、カンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減することを含む方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、式IA-1:
【化2】
の化合物であって、
式中、nが1又は2であり、R
1aが-CO
2R
1c、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
1bが水素又は酸素であり、あるいは、R
1bが酸素であるとき、R
1bがR
1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、R
1dがC
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2aが-OR
2d、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2d及びR
2eがそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R
2f、-O-C
1-6アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
2-6アルキニル、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2fが水素、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、破線の円dが存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合であり、R
1aがメチルであり、R
1dがイソプロピルであり、R
2dとR
2eがともに-OHであり、R
2aがC
1-20アルキルであるとき、化合物が、
【化3】
ではなく、R
1aがメチルであり、R
1dがプロピルであり、R
2bがペンチルであり、R
2aとR
2eがともに-OHであるとき、化合物が、
【化4】
ではない化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1はTHC、CBD、及びH2CBDの化学構造を示す。
【
図2】
図2A~2Dは、ラットにおける急性PTZ誘発原発全般発作に対するH2CBDの硬化を示す。PTZ投与後、(
図2A)強直間代発作を示す動物の割合(グレーの網掛け部分)並びに(
図2B)中央値(中央の棒)、四分位範囲(上と下の棒)及び個々の(●)最大発作重症度に対する、ビヒクル、H2CBD(50、100及び200mg kg
-1)、並びにCBD(200mg kg
-1)投与の効果。*=P<0.05、***=P<0.001。(
図2B)のエラーバーはSEMを示す。いずれの場合も1群当たりn=12匹の動物。カンナビノイド投与の90分後に採取した死後試料を介して評価したH2CBD(50、100及び200mg/kg)並びにCBD(200mg/kg)の(
図2C)脳内濃度及び(
図2D)血中濃度。1群当たりn≧5匹の動物。プロットは、中央値(中央の棒)、四分位範囲(上と下の棒)及び個々の動物(●)の結果を示す。*=P<0.05;**=P<0.01。
【
図3】
図3A~3Cは、薬物又はビヒクルを注射した45分後に開始して30分間測定したオープンフィールドでの自発運動活性を示す。水平面移動(
図3A)、垂直面移動(
図3B)、及びオープンフィールドアリーナの中心での時間(
図3C)を薬物群及びビヒクル群について示す。
【
図4】
図4は、マウスのPTZ誘発発作の予防における陽性対照CBD(左)とH2CBD(右)の比較を示す。いずれの薬物も200mg kg
-1で投与し、PTZは85mg kg
-1で投与した。筋緊張は、後肢伸張が続発しない激しい走り回り(wild running)として観察された。強直性伸展とは、激しい走り回り、それに続く後肢の伸張として観察された。間代とは不随意で律動的な筋収縮及び弛緩を指す。ジャークとは突然の不随意な筋収縮を指す。ビヒクル群と比較して*P=0.025、**P=0.004、***P=0.0002。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I. 概略
本発明は、H2CBD及びその類似体を使用して、発作を治療又は緩和する方法、並びに発作の頻度を低減する方法及びカンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減する方法を提供する。本発明はまた、新しいカンナビジオール誘導体を提供する。
【0013】
II. 定義
特に具体的な指示がない限り、本明細書で使用されている技術的及び科学的用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載の方法又は材料と類似又は同等の方法又は材料はいずれも、本発明の実施に使用することができる。本発明では、以下の用語が定義される。
【0014】
「A」、「an」又は「the」は、1つの構成員(member)を含む態様(aspects)だけでなく、複数(more than one)の構成員を含む態様を含む。
例えば、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例を挙げると、「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤(the agent)」への言及は、当業者に公知の1つ又は複数の薬剤への言及を含む、などである(and so forth)。
【0015】
「アルキル」とは、示された炭素原子数を有する(すなわち、直鎖又は分枝状の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6及びC5-6など、任意の数の炭素を含むことができる。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルはまた、限定されないが、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど、最大20個までの炭素原子を有するアルキル基を指すことができる。アルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0016】
「アルケニル」とは、少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分岐状の炭化水素を指す。アルケニルは、C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、及びC6など、任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル基は、限定されないが、1、2、3、4、5又はそれより多い数を含む任意の好適な数の二重結合を有することができる。アルケニル基の例としては、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、又は1,3,5-ヘキサトリエニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0017】
「アルキニル」とは、少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する直鎖又は分岐状いずれかの炭化水素を指す。アルキニルは、C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、及びC6など、任意の数の炭素を含むことができる。アルキニル基の例としては、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジイニル、1,4-ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニル、又は1,3,5-ヘキサトリイニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0018】
「シクロアルキル」とは、3~12個の環原子又は示された原子数を含有する飽和又は部分的に不飽和の単環式、縮合二環式又は架橋多環式の環集合体を指す。シクロアルキルは、C3-6や、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、C3-12など、任意の数の炭素を含むことができる。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式及び多環式シクロアルキル環としては、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが挙げられる。また、シクロアルキル基は、環の中に1つ又は複数の二重結合や三重結合を有して、部分的に不飽和であってもよい。部分的に不飽和である代表的なシクロアルキル基としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、並びにノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式のC3-8シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式のC3-6シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0019】
「ヘテロシクロアルキル」とは、3~12個の環員並びに1~4個のN、O及びSのヘテロ原子を有する飽和環系を指す。ヘテロ原子は、限定されないが、S(O)及びS(O)2など、酸化されていることもありうる。ヘテロシクロアルキル基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、又は3~12個の環員など、任意の数の環原子を含むことができる。ヘテロシクロアルキル基には、1、2、3、若しくは4、又は1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、若しくは3~4など、任意の好適な数のヘテロ原子が含まれうる。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-及び1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、又はジチアンなどの基を挙げることができる。ヘテロシクロアルキル基は、芳香族又は非芳香族の環系に縮合して、限定されないが、インドリンを含むメンバーを形成することもできる。ヘテロシクロアルキル基は、置換されていなくても、置換されていてもよい。例えば、ヘテロシクロアルキル基は、多数あるなかでも、C1-6アルキル又はオキソ(=O)で置換することができる。
【0020】
「エポキシド」とは、以下の構造をもつ3つの原子の環状エーテルを指す。
【化5】
【0021】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0022】
「異性体」とは、化学式は同じであるが、分子内の原子間の結合性が異なり、相異なる化学構造をもつ化合物を指す。異性体には、構造異性体と立体異性体が含まれる。構造異性体の例としては、互変異性体及び位置異性体が挙げられるが、これらに限定されない。立体異性体の例としては、ジアステレオマー及びエナンチオマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「薬学的に許容される塩」とは、対象への投与に適している塩の形態の化合物を指す。代表的な薬学的に許容される塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エディシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロニック酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、キシナホ酸(xinafoic acid)及び同種のものの塩が挙げられる。
【0024】
CBDとしても知られる「カンナビジオール」とは、以下の構造をもつ化合物を指す。
【化6】
【0025】
「H2CBD」又は「ジヒドロカンナビジオール」とは、以下の構造をもつ化合物を指す。
【化7】
【0026】
「催眠作用」又は「麻酔(narcotic)作用」とは、睡眠を誘発することを指す。催眠作用をもたらしうる薬物には、睡眠を誘発しうる向精神な薬物が含まれる。催眠作用のある薬物の種類としては、カニビノイド、ベンゾジアゼピン、キナゾリノン、イミダゾピリジン、及びバルビツレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「対象」とは、哺乳類などの動物を指し、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0028】
「緩和すること」とは、状態又は症状の重症度を下げること、又は弱めることを指す。
【0029】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」とは、傷害、病状、状態、又は症状(例えば、痛み)の治療又は改善の成功のいずれの指標も指し、緩和、寛解、症状の軽減、又は傷害、病状、若しくは状態を患者にとってより耐えられるものにすること、症状若しくは状態の頻度若しくは継続期間を減少させること、又はいくつかの状況では、症状の発症を防ぐことなど、客観的又は主観的なパラメーターを含む。症状の治療又は改善は、例えば身体検査の結果を含む客観的又は主観的なパラメーターに基づきうる。
【0030】
「投与すること」とは、経口投与、坐薬としての投与、表面接触(topical contact)、非経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鼻腔内投与、皮下投与、髄腔内投与、又は徐放装置例えばミニ浸透圧ポンプを対象に埋め込むことを指す。
【0031】
「治療有効量若しくは投与量」又は「治療上充分な量若しくは投与量」又は「有効若しくは充分な量若しくは投与量」とは、投与される目的の治療効果を発揮する投与量を指す。正確な量は治療の目的に依存することなり、当業者であれば公知の技術を用いて確めることができるであろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1 3, 1992)、Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999)、Pickar, Dosage Calculations (1999)、及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。感作された細胞では、治療上有効な投与量は、非感作細胞に対する従来の治療上有効な投与量よりも低いことが多い。
【0032】
「対象」とは、哺乳類などの動物を指し、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象はコンパニオンアニマルである。
【0033】
III. 治療の方法
本発明の化合物は、発作を治療又は緩和するために使用することができる。本発明の化合物は、発作の頻度を低減するために使用することができる。本発明の化合物は、カンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減するために使用することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、痙攣薬の作用を治療又は緩和するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、発作を治療又は緩和するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、てんかんを治療又は緩和するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は抗痙攣特性を有する。
【0035】
A. 発作を治療又は緩和する方法
いくつかの実施形態では、本発明は、てんかん又は発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の乱用の可能性の低いカンナビノイドを投与することを含む方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明は、てんかん又は発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式I:
【化8】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を、対象において催眠作用を誘導することなく投与し、それによって発作を治療することを含み、式中、nが1又は2であり、R
1a及びR
1dがそれぞれ独立して、-CO
2R
1c、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
1a又はR
1dの少なくとも1つがメチル又はイソプロピルであり、R
1b及びR
1cがそれぞれ独立して、水素又は酸素であり、あるいは、R
1bが酸素であるとき、R
1bがR
1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、あるいは、R
1bがR
1d及びそれらが結合する原子と一体となってC
4-8シクロアルキルを形成し、そのシクロアルキルが1~3個のR
1c基で置換されており、R
1cが、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2aが、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2b及びR
2cがそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR
2f、又は-NR
2fR
2gであり、R
2d及びR
2eがそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R
2f、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、あるいは、R
2d及びR
1aが、それらが結合する原子と一体となってC
6-12ヘテロシクロアルキルを形成し、あるいは、R
2d及びR
1bそれらが結合する原子と一体となってC
5-12ヘテロシクロアルキルを形成し、R
2f及びR
2gがそれぞれ独立して、水素、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、破線a、b及びcが、それぞれ独立して、存在しない、又は結合であり、nが2であるとき、破線aが存在せず、R
1bが酸素であり、R
1aと一体となってエポキシド環を形成しないとき、破線bが結合であり、R
1cが酸素であるとき、破線cが結合であり、破線の円dが存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合である方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、発作を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式I:
【化9】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を、対象において催眠作用を誘導することなく投与し、それによって発作を治療することを含み、式中、nが1又は2であり、R
1a及びR
1dがそれぞれ独立して、-CO
2R
1c、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
1a又はR
1dの少なくとも1つがメチル又はイソプロピルであり、R
1b及びR
1cがそれぞれ独立して、水素又は酸素であり、あるいは、R
1bが酸素であるとき、R
1bがR
1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、あるいは、R
1bがR
1d及びそれらが結合する原子と一体となってC
4-8シクロアルキルを形成し、そのシクロアルキルが1~3個のR
1c基で置換されており、R
1cが、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2aが、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2b及びR
2cがそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR
2f、又は-NR
2fR
2gであり、R
2d及びR
2eがそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R
2f、-O-C
1-6アルキル、-O-C
2-6アルケニル、-O-C
2-6アルキニル、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2f及びR
2gがそれぞれ独立して、水素、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、破線a、b及びcが、それぞれ独立して、存在しない、又は結合であり、nが2であるとき、aが存在せず、R
1bが酸素であり、R
1aと一体となってエポキシド環を形成しないとき、破線bが結合であり、R
1cが酸素であるとき、破線cが結合であり、破線の円dが存在しない、又は1若しくは2つの結合である方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、nは1又は2である。いくつかの実施形態では、nは1である。いくつかの実施形態では、nは2である。
【0040】
いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、-CO2R1c、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルであり、R1a又はR1dの少なくとも1つはメチル又はイソプロピルであり、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、水素又は酸素であり、あるいは、R1bが酸素であるとき、R1bはR1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、あるいは、R1bはR1d及びそれらが結合する原子と一体となってC4-8シクロアルキルを形成し、そのシクロアルキルは1~3個のR1c基で置換されており、R1cはH、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。
【0041】
いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、-CO2R1c、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、C1-20アルキル又はC2-20アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、又はペンチルである。いくつかの実施形態では、R1a及びR1dはそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R1aはメチルである。いくつかの実施形態では、R1dはイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R1aはメチルであり、R1dはイソプロピルである。
【0042】
いくつかの実施形態では、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、水素又は酸素である。いくつかの実施形態では、R1bは酸素である、又はR1bは、R1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成する。いくつかの実施形態では、R1bは、R1d及びそれらが結合する原子と一体となってC4-8シクロアルキルを形成する。いくつかの実施形態では、R1bは酸素である。いくつかの実施形態では、R1bは水素である。いくつかの実施形態では、R1cは酸素である。いくつかの実施形態では、R1cは水素である。
【0043】
いくつかの実施形態では、R2aは、-OR2f、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルであり、R2b及びR2cはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR2f、又は-NR2fR2gであり、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、-OR2f、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルであり、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、R2aは、-OR2f、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2aはC1-20アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aはC4-15アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aはC4-10アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aは、ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2-メチルヘキサ-2-イル、ヘプチル、3-メチルヘプタ-2-イル、又はオクチルである。いくつかの実施形態では、R2aは、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2-メチルヘキサ-2-イル、ヘプチル、又は3-メチルヘプタ-2-イルである。
【0045】
いくつかの実施形態では、R2b及びR2cはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-OR2f、又は-NR2fR2gである。いくつかの実施形態では、R2b及びR2cはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、又は-OR2fである。いくつかの実施形態では、R2b及びR2cはそれぞれ独立して、水素、F、Cl、-OH、又は-O-C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R2b及びR2cはそれぞれ独立して、水素又はFである。いくつかの実施形態では、R2bとR2cはともに水素である。いくつかの実施形態では、R2bとR2cはともにFである。
【0046】
いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、-OR2f、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、又は-OR2fである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)Me、-OC(O)Et、-OMe、-OEt、-OPr、又は-OBuである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)Me、又は-OMeである。いくつかの実施形態では、R2dとR2eはともに-OHである。
【0047】
いくつかの実施形態では、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、又はC2-20アルケニルである。いくつかの実施形態では、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素又はC1-20アルキルである。いくつかの実施形態では、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R2f及びR2gはそれぞれ独立して、水素又はメチルである。いくつかの実施形態では、R2fとR2gはともに水素である。いくつかの実施形態では、R2fとR2gはともにメチルである。
【0048】
いくつかの実施形態では、破線a、b及びcは、それぞれ独立して、存在しない、又は結合であり、nが2であるとき、破線aは存在せず、R1bが酸素であり、R1aと一体となってエポキシド環を形成しないとき、破線bは結合であり、R1cが酸素であるとき、破線cは結合である。
【0049】
いくつかの実施形態では、破線aは存在しない、又は結合である。いくつかの実施形態では、aは存在しない。いくつかの実施形態では、nが2であるとき、aは存在しない。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、破線bは存在しない、又は結合である。いくつかの実施形態では、bは存在しない。いくつかの実施形態では、bは結合である。いくつかの実施形態では、R1bが酸素であり、R1aと一体となってエポキシド環を形成しないとき、破線bは結合である。いくつかの実施形態では、破線cは存在しない、又は結合である。いくつかの実施形態では、cは存在しない。いくつかの実施形態では、cは結合である。いくつかの実施形態では、R1cが酸素であるとき、破線cは結合である。
【0050】
いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1若しくは2つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない。いくつかの実施形態では、破線の円dは1つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは2つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは3つの結合である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ia:
【化10】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ib:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ic:
【化12】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Id:
【化13】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ie:
【化14】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式If:
【化15】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ig:
【化16】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ih:
【化17】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ii:
【化18】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R
2a1、R
2a2及びR
2a3がそれぞれ独立して、C
1-19アルキル、C
2-19アルケニル又はC
2-19アルキニルである方法を提供する。いくつかの実施形態では、R
2a1、R
2a2及びR
2a3はそれぞれ独立して、C
1-19アルキルである。いくつかの実施形態では、R
2a1、R
2a2及びR
2a3はそれぞれ独立して、C
1-10アルキルである。いくつかの実施形態では、R
2a1、R
2a2及びR
2a3はそれぞれ独立して、C
1-5アルキルである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ij:
【化19】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R
2dが、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルである方法を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が式Ik:
【化20】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R
2aが、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルである方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物が:
【化21】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物が8,9-ジヒドロカンナビジオール:
【化22】
又はその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、脳波(EEG)、高密度EEG、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像(MRI)、機能的MRI(fMRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、発作時SPECTと発作間欠時のSPECTの差分画像をMRI画像に重ねる方法(subtraction ictal SPECT coregistering to MRI)(SISCOM)、統計的パラメトリックマッピング(SPMJ)、CURRYソフトウェア解析、及び脳磁図(MEG)を使用して、発作の治療又は軽減を判定することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、動物の発作モデルを使用して、発作の治療又は軽減を判定することができる。いくつかの実施形態では、動物の発作モデルは、全般発作のモデル、辺縁系発作のモデル、キンドリングによっててんかんの状態にされた動物の明瞭な発作モデル、進行中の発作のモデル、及び動物が電気ショックを受けて強直性痙攣を含むモデルでありうるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物の発作モデルは、最大PTZ発作モデル、6Hzモデル、角膜キンドリングマウスモデル、ピロカルピン誘発てんかん重積状態モデル、及び最大電気ショックモデルでありうるが、これらに限定されない。
【0066】
B. 発作の頻度を低減する方法
いくつかの実施形態では、本発明は、てんかんを軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、発作の頻度を低減する方法を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、動物試験を使用して、発作の頻度の低減を判定することができる。いくつかの実施形態では、動物試験には、げっ歯類、ラット、マウス、ゼブラフィッシュが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物試験は、本発明の化合物を、痙攣薬を投与する約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、又は約5時間前に投与することを含む。いくつかの実施形態では、動物試験は、本発明の化合物を、痙攣薬を投与する約1時間前に投与することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、動物の発作モデルを使用して、発作の頻度の低減を判定することができる。いくつかの実施形態では、動物の発作モデルは、全般発作のモデル、辺縁系発作のモデル、キンドリングによっててんかんの状態にされた動物の明瞭な発作モデル、進行中の発作のモデル、及び動物が電気ショックを受けて強直性痙攣を含むモデルでありうるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物の発作モデルは、最大PTZ発作モデル、6Hzモデル、角膜キンドリングマウスモデル、ピロカルピン誘発てんかん重積状態モデル、及び最大電気ショックモデルでありうるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、発作の頻度を低減する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物その薬学的に許容される塩を、対象において催眠作用を誘導することなく投与し、それによって発作の頻度を低減することを含む方法を提供する。
【0070】
C. 催眠作用を軽減する方法
多くのカンナビノイドは、催眠作用を誘発することが知られている。いくつかの実施形態では、本発明は、カンナビジオールによるてんかん又は発作の治療の催眠作用を軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、カンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減する方法を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、自発運動活性を用いて、カンナビジオールによるてんかん又は発作の治療の催眠作用の軽減を判定することができる。いくつかの実施形態では、自発運動活性は、限定されないが、水平面移動、垂直面移動、及びオープンフィールドアリーナの中心での時間によって測定することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を投与すると、最小限の行動の変化が生じるか、又は行動の変化が全く生じない。行動変化の例としては、催眠作用及び鎮静作用が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の化合物を高投与量で投与すると、最小限の行動の変化が生じるか、又は行動の変化が全く生じない。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明は、カンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項に係る発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与し、それによってカンナビジオールによる発作の治療の催眠作用を軽減することを含む方法を提供する。
【0074】
IV. 化合物
いくつかの実施形態では、本発明は、式IA-1:
【化23】
の化合物であって、
式中、nが1又は2であり、R
1aが-CO
2R
1c、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
1bが水素又は酸素であり、あるいは、R
1bが酸素であるとき、R
1bがR
1a及びそれらが結合する原子と一体となってエポキシド環を形成し、R
1dがC
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2aが-OR
2d、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2d及びR
2eがそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R
2f、-OR
2f、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、R
2fが水素、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル又はC
2-20アルキニルであり、破線の円dが存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合であり、R
1aがメチルであり、R
1dがイソプロピルであり、R
2dとR
2eがともに-OHであり、R
2aがC
1-20アルキルであるとき、化合物が、
【化24】
ではなく、R
1aがメチルであり、R
1dがプロピルであり、R
2bがペンチルであり、R
2aとR
2eがともに-OHであるとき、化合物が、
【化25】
ではない化合物を提供する。
いくつかの実施形態では、R
1aがメチルであり、R
1dがイソプロピルであり、R
2dとR
2eがともに-OHであり、R
2aがC
1-20アルキルであるとき、化合物は、
【化26】
ではなく、そこにおいてR
1aがメチルであり、R
1dがプロピルであり、R
2bがペンチルであり、R
2aとR
2eがともに-OHであるとき、化合物は、
【化27】
ではない。
【0075】
いくつかの実施形態では、nは1又は2である。いくつかの実施形態では、nは1ある。いくつかの実施形態では、nは2ある。
【0076】
いくつかの実施形態では、R1aは、-CO2R1c、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R1aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R1aはC1-20アルキルである。いくつかの実施形態では、R1aはC1-8アルキルである。いくつかの実施形態では、R1aは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、又はペンチルである。いくつかの実施形態では、R1aは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R1aはメチルである。
【0077】
いくつかの実施形態では、R1bは水素又は酸素である。いくつかの実施形態では、R1bは水素である。いくつかの実施形態では、R1bは酸素である。
【0078】
いくつかの実施形態では、R1dは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R1dは、C1-20アルキル又はC2-20アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1dは、C1-10アルキル又はC2-10アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1dはC5-8アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1dは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、又はペンチルである。いくつかの実施形態では、R1dは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R1dはイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R1dは6-メチルヘプタ-5-エン-2-イルである。
【0079】
いくつかの実施形態では、R2aは、-OR2d、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2aはC1-20アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aはC4-15アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aはC4-10アルキルである。いくつかの実施形態では、R2aは、ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2-メチルヘキサ-2-イル、ヘプチル、3-メチルヘプタ-2-イル、又はオクチルである。いくつかの実施形態では、R2aはペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2-メチルヘキサ-2-イル、ヘプチル、又は3-メチルヘプタ-2-イルである。
【0080】
いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、-OR2f、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルであり、R2fは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。
【0081】
いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、-OR2f、C1-20アルキルであり、R2fは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル又はC2-6アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)R2f、又は-OR2fであり、R2fはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)Me、-OC(O)Et、-OMe、-OEt、-OPr、又は-OBuである。いくつかの実施形態では、R2d及びR2eはそれぞれ独立して、-OH、-OC(O)Me、又は-OMeである。いくつかの実施形態では、R2dとR2eはともに-OHである。
【0082】
いくつかの実施形態では、R2fは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル又はC2-20アルキニルである。いくつかの実施形態では、R2fは、水素、C1-20アルキル、又はC2-20アルケニルである。いくつかの実施形態では、R2fは、水素又はC1-20アルキルである。いくつかの実施形態では、R2fは、水素又はC1-10アルキルである。いくつかの実施形態では、R2fは、水素、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルである。いくつかの実施形態では、R2fは、水素又はメチルである。いくつかの実施形態では、R2fは水素である。いくつかの実施形態では、R2fはメチルである。
【0083】
いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1、2、若しくは3つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1若しくは2つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない、又は1つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは存在しない。いくつかの実施形態では、破線の円dは1つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは2つの結合である。いくつかの実施形態では、破線の円dは3つの結合である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IA-1a):
【化28】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IA-1b):
【化29】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IA-1c):
【化30】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IA-1d):
【化31】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(IA-1e):
【化32】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物としては、
【化33】
【化34】
【化35】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、
【化36】
である化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0091】
V. 製剤及び投与
本発明の組成物は、多種多様な経口、非経口、薄膜、及び外用剤形で調製することができる。経口製剤としては、患者による服用に適した錠剤、丸剤、粉末、糖衣錠、カプセル剤、液体、ロゼンジ、カシェット、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが挙げられる。本発明の組成物はまた、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内に投与することもできる。また、本明細書に記載の組成物は、吸入、例えば鼻腔内に投与することもできる。さらに、本発明の組成物は経皮投与することができる。本発明の組成物はまた、坐薬、ガス注入、粉末及びエアゾール製剤を含む眼内、膣内、及び直腸内経路によっても投与することができる(ステロイド吸入の例については、Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995、Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111, 1995を参照)。本発明の組成物はまた、薄膜薬物送達法によっても投与することができる。
【0092】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は固体又は液体のいずれかであることができる。固体形態の製剤には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェット、坐薬、及び分散性顆粒が含まれる。固体担体は、1つ又は複数の物質であることができ、希釈剤、香味料、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用しうる。製剤化及び投与のための技術の詳細は、科学文献及び特許文献によく記載されており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PA(「Remington's」)の最新版を参照されたい。
【0093】
本発明の化合物は、本発明の化合物の酸塩又は塩基塩などの塩の形態であることもできる。薬学的に許容される塩の実例(Illustrative examples)は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸及び同種のもの)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸及び同種のもの)の塩、及び第四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル及び同種のもの)の塩である。薬学的に許容される塩は毒性がないことが理解される。好適な薬学的に許容される塩に関するさらなる情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に記載されている。その文献は参照により本明細書に援用される。
【0094】
本発明の酸性化合物の薬学的に許容される塩は、塩基と形成される塩、すなわち、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩などのカチオン性塩、並びにアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)メチル-アンモニウム塩などのアンモニウム塩である。
【0095】
同様に、鉱酸、有機カルボン酸及び有機スルホン酸、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸などの酸付加塩も、ピリジルなどの塩基性基が構造の一部を構成するならば可能である。
【0096】
化合物の中性形態は、従来のやり方で塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を単離することによって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などのある特定の物理的特性において、さまざまな塩の形態と異なるが、それ以外は、塩は本発明の目的のために化合物の親形態と同等である。
【0097】
粉末では、担体は細かく分割された固体であり,細かく分割された有効成分との混合物の状態にある。錠剤では、有効成分は、必要な結合特性を有する担体と好適な割合で混合され、所望の形状及びサイズに固められる。粉末及び錠剤は、好ましくは、5%又は10%~70%の本発明の化合物を含有する。
【0098】
好適な固体賦形剤としては、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカント;低融点ワックス;ココアバター;炭水化物;限定されないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むガム;並びに限定されないが、ゼラチン及びコラーゲンを含むタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤又は溶解補助剤を加えてもよい。
【0099】
糖衣錠のコアは、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物も含有しうる、濃縮糖溶液などの好適なコーティングを施される。染料又は顔料を、製品の識別のため、又は活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために錠剤又は糖衣錠コーティングに加えることができる。本発明の医薬製剤は、例えば、ゼラチンから作られたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングで作られた軟らかい密閉カプセルを用いて経口で使用することもできる。プッシュフィットカプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤沢剤、及び任意選択で、安定剤と混ぜた本発明の化合物を含有することができる。軟カプセルでは、本発明の化合物は、安定剤の有無にかかわらず、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解する又は懸濁させることができる。
【0100】
坐薬を調製するために、まず脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物などの低融点ワックスを溶かし、そこに本発明の化合物を撹拌などで均一に分散させる。次に、溶融した均質な混合物を、都合の良い大きさの型に流し込み、冷まし、それによって固化させる。
【0101】
液体形態の製剤としては、溶液、懸濁液、及びエマルション、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射のでは、液体製剤はポリエチレングリコール水溶液に溶解して製剤化することができる。
【0102】
経口使用に適した水溶液は、本発明の化合物を水に溶解し、所望により好適な着色剤、香味料、安定剤、及び増粘剤を加えることによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなどの粘性物質を含む水中の微粉化された有効成分並びに天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドとの脂肪酸縮合物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散剤又は湿潤剤分散させることによって作ることができる。水性懸濁液はまた、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾアートなどの1つ又は複数の保存剤、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の香味料、及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリンなどの1つ又は複数の甘味料も含有することができる。製剤は重量オスモル濃度を調整することができる。
【0103】
また、使用する直前に、経口投与用の液体形態の製剤に変換することが意図される固体形態の製剤も含まれる。そのような液状形態としては、溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。これらの製剤は、有効成分にくわえて、着色剤、香味料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、溶解補助剤、及び同種のものを含有しうる。
【0104】
油性懸濁液は、本発明の化合物を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油などの植物油、又は流動パラフィンなどの鉱物油、又はそれらの混合物に懸濁させて調合することができる。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有することができる。グリセロール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味料を加えて、嗜好性が高い経口製剤を提供することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を加えることによって保存することができる。注射用油性ビヒクルの例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本発明の医薬製剤は、水中油型エマルションの形態であることもできる。油相は、上記の植物油若しくは鉱物油、又はそれらの混合物であることができる。好適な乳化剤としては、アカシアゴムやトラガカントゴムなどの天然に存在するゴム、大豆レシチンなどの天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸及びヘキシトール無水物から得られるエステル又は部分エステル、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのそれらの部分エステルとエチレンオキシドの縮合物が挙げられる。エマルションは、シロップやエリキシルの製剤中のように、甘味料及び香味料も含有することができる。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、又は着色剤も含有することができる。
【0105】
本発明の組成物は、体内で徐放するためのマイクロスフェアとして送達することもできる。例えば、マイクロスフェアは、皮下にゆっくりと放出する薬物含有マイクロスフェアの皮内注射による投与のために製剤化でき、(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照)、生分解性及び注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照)、又は経口投与用マイクロスフェアとして(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照)。経皮経路と皮内経路はともに、一定の送達が数週間又は数か月間可能である。
【0106】
別の実施形態では、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与又は体腔若しくは臓器の内腔への投与など、非経口投与のために製剤化することができる。投与用の製剤は、通常、薬学的に許容される担体に溶解された本発明の組成物の溶液を含むことになる。使用可能な許容される担体及び溶媒のなかには、水及び等張塩化ナトリウムであるリンゲル液がある。さらに、従来の方法で無菌の固定油を溶媒又は懸濁媒体として用いることができる。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に、注射剤の調製に使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの製剤は、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌することができる。製剤は、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤(toxicity adjusting agents)、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム及び同種のもの、適切な生理学的条件に必要な薬学的に許容される補助物質を含有しうる。これらの製剤中の本発明の組成物の濃度は、幅広くさまざまでありうる。選ばれた特定の投与モード及び患者のニーズに応じて、主に液量、粘度、体重、及び同種のものに基づいて選択されることになる。静脈内投与では、製剤は、滅菌した注射用の水性又は油性の懸濁液など、滅菌した注射用製剤であることができる。この懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の技術に従って製剤することができる。また、無菌注射用製剤は、1,3-ブタンジオールの溶液などの毒性のない非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液であることもできる。
【0107】
別の実施形態では、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するリポソーム又はエンドサイトーシスによって取り込まれるリポソームを使用することによって、すなわち、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合し、エンドサイトーシスをもたらす、リポソームに結合するリガンド又はオリゴヌクレオチドに直接結合するリガンドを用いることによって送達することができる。リポソームを使用することによって、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンド又は他の形で特定の臓器に優先的に誘導されるリガンドをもつ場合、本発明の組成物の送達を生体内で標的細胞に集中させることができる(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996、Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995、Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照)。
【0108】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。単位剤形は、包装された製剤であることができ、パッケージには、小分け包装された(packeted)錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉末など、個別の量の製剤が入っている。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェット、ロゼンジであってもよく、包装された形態における適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0109】
本発明の化合物は、任意の好適な量で存在することができ、限定されないが、対象の体重及び年齢、疾患の状態などを含むさまざまな要因に依存しうる。本発明の化合物の好適な投与量の範囲としては、約0.1mg~約10,000mg、又は約1mg~約1000mg、又は約10mg~約750mg、又は約25mg~約500mg、又は約50mg~約250mgが挙げられる。本発明の化合物の好適な投与量としては、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000mgが挙げられる。
【0110】
本発明の化合物は、任意の好適な頻度、間隔、期間で投与することができる。例えば、本発明の化合物は、好ましい投与量レベルを提供するように、1時間に1回、若しくは1時間に2回、3回若しくはそれより多い回数、1日に1回、若しくは1日に2回、3回若しくはそれより多い回数、又は2、3、4、5、6若しくは7日毎に1回投与することができる。本発明の化合物を1日1回より多く投与するとき、代表的な間隔としては、5、10、15、20、30、45、及び60分、並びに1、2、4、6、8、10、12、16、20、及び24時間が挙げられる。本発明の化合物は、1回、2回、又は3回以上、1、1~6時間、1~12時間、1~24時間、6~12時間、12~24時間、1日、1~7日間、1週間、1~4週間、1ヶ月間、1~12ヶ月間、1年間又はそれより長い間、さらには無期限に投与することができる。
【0111】
組成物は、他の混合可能な治療剤を含有することもできる。本明細書に記載の化合物は、相互に組み合わせて使用することもでき、有用であることが知られている他の活性薬剤と組み合わせて使用することもでき、又は単独では有効でありえないが活性薬剤の有効性に寄与する可能性がある補助剤と組み合わせて使用することもできる。
【0112】
本発明の化合物は、別の活性薬剤と共投与することができる。共投与には、本発明の化合物及び活性薬剤を、互いに0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、又は24時間以内に投与することが含まれる。また、共投与には、本発明の化合物及び活性薬剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、約1、5、10、15、20、若しくは30分以内に)、又は任意の順序で連続して投与することも含まれる。さらに、本発明の化合物及び活性薬剤はそれぞれ、1日あたりの好ましい投与量レベルを提供するように、1日1回、又は1日あたり2回若しくは3回以上投与することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、共投与は、共製剤化(co-formulation)、すなわち、本発明の化合物及び活性薬剤の両方を含む単一の医薬組成物を調製することによって達成することができる。他の実施形態では、本発明の化合物及び活性薬剤を別々に製剤化することができる。
【0114】
本発明の化合物及び活性薬剤は、約1:100~約100:1(重量/重量)、又は約1:50~約50:1、又は約1:25~約25:1、又は約1:10~約10:1、又は約1:5~約5:1(重量/重量)など、任意の好適な重量比で本発明の組成物中に存在することができる。本発明の化合物及び他の活性薬剤は、約1:100(重量/重量)、1:50、1:25、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、25:1、50:1又は100:1(重量/重量)など、任意の好適な重量比で存在することができる。本発明の化合物と活性薬剤の他の投与量及び投与量比は、本発明の組成物及び方法に適している。
【実施例】
【0115】
VI. 実施例
キラル中心にアスタリスク(*)を表示する本発明の化合物では、示された立体化学は特定の原子における相対的な立体化学を示し、絶対的な立体化学を示すものではない。例えば、以下に示すH2CBD化合物の場合、
【化37】
アスタリスク(*)は、その化合物が示された原子にまたがってトランスであり、(S,S)若しくは(R,R)エナンチオマーのいずれか、又はそれらの混合物であることを示す。
【化38】
であることを示す。
【0116】
別の例では、以下に示すH4CBD化合物の場合、
【化39】
アスタリスク(*)は、下記:
【化40】
に示すように、相対的な立体化学を保持して、化合物がいずれかの立体異性体でありうることを示す。
【0117】
アスタリスク(*)を示す本発明の他の化合物は、上記のように、示された原子の相対的な立体化学を示し、絶対的な立体化学を示さない。
【0118】
いくつかの実施形態では、アスタリスク(*)を含む化合物は、エナンチオマー過剰率(ee)が0%~100%であることができる。いくつかの実施形態では、eeは0%~約90%である。いくつかの実施形態では、eeは0%~約70%である。いくつかの実施形態では、eeは0%~約50%である。いくつかの実施形態では、eeは0%~約30%である。いくつかの実施形態では、eeは0%である。
【0119】
実施例1 H2CBDの調製
ベンゼン(5mL)中のオリベトール(1.72g、9.54mmol)及び食品グレードのα-フェランドレン(1.41g、10.4mmol、1.09当量)の溶液を、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.545g、2.87mmol)で処理し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーでグラジエント溶離(100%ヘキサンからヘキサン中10%ジエチルエーテル)を用いて生成して、H2CBD(2.14g、71%)を暗黄色(dark yellow)の油として得た。分光学データ(1H-NMR、13C-NMR)は文献と完全に一致した。
【0120】
実施例2 2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(8,9-ジヒドロカンナビジオール、H
2CBD)
【化41】
150mL容丸底シュレンクフラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシュし、オリベトール(3.00g、16.6mmol)、トルエン(50mL)、及びp-トルエンスルホン酸一水和物(190mg、6mol%)を加えた。フラスコを予め熱した(70℃)油浴に入れ、15分間撹拌し、その後1分以内にセプタムからα-フェランドレン(2.80mL、2.38g、17.4mmol)を注入した。25分後、飽和NaHCO
3水溶液(20mL)と氷(10g)の混合物に注ぐことによって、反応をクエンチした。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(5.25g)を得た。クロマトグラフィーカートリッジに100gのシリカゲルを入れ、ジクロロメタン(15%)とヘキサン(85%)の混合物で平衡化した。粗生成物をカラムにのせ、4カラム体積の溶媒混合物で溶出した。次いで、方法をグラジエント溶離に変え、次の6カラム体積内でDCM含有量を50%まで徐々に増加させた。生成物を含有する画分を合わせ、溶媒を蒸発させて、H
2CBD(3.24g、62%)を粘性のある淡黄色(pale yellow)の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.21 (br s, 3H), 5.52 (s, 1H), 4.71 (s, 1H), 3.82 (br d, J = 9.8 Hz, 1H), 2.44 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.12-2.10 (m, 2H), 1.82-1.76 (m, 4H, incl. 1.77 s, 3H), 1.63-1.55 (m, 4H), 1.45-1.27 (m, 6H), 0.91-0.85 (m, 9H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 156.3 (br), 154.4 (br),143.1, 140.2, 125.0, 114.1, 109.9 (br), 107.5 (br), 43.8, 35.6 (2C), 31.7, 30.85, 30.8, 28.0, 23.8, 22.7, 22.2, 21.8, 16.5, 14.2. MS (ESI): 316 [M, 18%], 273 (8%), 246 (23%), 231 (100%).
【0121】
実施例3 5-イソプロピル-2-メチル-9-ペンチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-2,6-メタノ-1-ベンゾオキソシン-7-オール(8,9-ジヒドロ-イソ-THC)
【化42】
50mL容丸底フラスコに、オリベトール(600mg、3.33mmol)、ベンゼン(10mL)、p-トルエンスルホン酸一水和物(40mg、6mol%)、及びα-フェランドレン(0.55mL、470mg、3.5mmol)を入れた。ディーン・スターク装置を用いて水を共沸除去しながら、混合物を還流下で1時間加熱した。室温に冷却した後、反応物を飽和NaHCO
3水溶液にクエンチし、有機相を分離して水相を酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。合わせた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。粗生成物を真空蒸留で精製して8,9-ジヒドロ-イソ-THC(780mg、74%)を無色ガラスとして得た。沸点192~198℃/200mTorr(26664.4mPa)。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 6.28 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 4.54 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 3.33 (br q, J = 2.9 Hz, 1H), 2.45 (dd, J = 7.0, 3.1 Hz, 2H), 1.95-1.70 (m, 3H), 1.63-1.48 (m, 7H), 1.36-1.25 (m, 9H, incl. 1.33 s, 3H), 1.09 (t, J = 6.0 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 0.89 (d, J = 5.7 Hz, 3H).
13C NMR (151 MHz, CDCl
3) δ 157.46, 152.08, 142.44, 111.71, 107.80, 106.05, 74.47, 44.34, 35.70, 34.98, 31.59, 30.79, 30.52, 29.35, 27.79, 26.24, 22.57, 22.07, 21.13, 20.52, 14.05. MS (ESI): 316 [M, 26%], 273 (7%), 260 (24%), 231 (100%).
【0122】
実施例4 4-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(8,9-ジヒドロ-o-カンナビジオール、イソ-H
2CBD)
【化43】
100mL容丸底シュレンクフラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシュし、オリベトール(1.80g、10.0mmol)、トルエン(30mL)、p-トルエンスルホン酸一水和物(60mg、3mol%)、及びα-フェランドレン(1.76mL、1.50g、11.0mmol)を加えた。反応物を室温で6時間撹拌し、飽和NaHCO
3水溶液(20mL)でクエンチした。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(3.10g)を得た。クロマトグラフィーカートリッジに100gのシリカゲルを入れ、ジクロロメタン(30%)とヘキサン(70%)の混合物で平衡化した。粗生成物をカラムにのせ、6カラム体積の溶媒混合物で溶出した。H
2CBDを含有する画分を蒸発させた(1.10g、34%)。次いで、カラムを純粋なDCMでさらに溶出し、生成物を含有する画分を合わせ、溶媒を蒸発させてイソ-H2CBD(1.40g、44%)を粘性のある淡黄色の油として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 6.24 (s, 1H), 6.22 (s, 1H), 6.08 (s, 1H), 5.47 (s, 1H), 4.80 (s, 1H), 3.44 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 2.66 (ddd, J = 15.0, 9.5, 6.0 Hz, 1H), 2.44-2.31 (m, 1H), 2.27-2.05 (m, 2H), 1.81-1.70 (m, 5H, incl. 1.77 s 3H), 1.56-1.48 (m, 3H), 1.37-1.30 (m, 5H), 0.91-0.87 (m, 3H), 0.84 (d, J = 9.9, 3H), 0.82 (d, J = 9.9, 3H).
13C NMR (151 MHz, CDCl
3) δ 156.56, 154.55, 144.09, 139.95, 125.13, 120.24, 108.60, 102.47, 42.93, 38.30, 34.24, 31.90, 31.29, 30.60, 27.27, 23.65, 22.57, 22.16, 21.92, 16.79, 14.07. MS (ESI): 316 [M, 42%], 246 (67%), 231 (100%), 189 (44%).
【0123】
実施例5 2-(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル)-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(テトラヒドロカンナビジオール、H
4CBD)
【化44】
250mL容オートクレーブにマグネチックスターバーを取り付け、H
2CBD(6.00g、19.0mmol)、氷酢酸(100mL)、酸化白金(150mg)を入れた。容器をH
2でパージし、反応混合物を400psiのH
2下で12時間撹拌した。メタノール(100mL)を加え、混合物をセライトに通してろ過した。溶媒を蒸発させ、残渣を真空蒸留で精製してH
4CBD(5.68g、94%)を無色ガラスとして得た、200mTorr(26664.4mPa)での沸点194~196℃。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 6.18 (s, 1H), 6.12 (s, 1H), 4.62 (d, J = 3.3 Hz, 2H), 2.99 (td, J = 11.4, 3.7 Hz, 1H), 2.42 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.09-1.96 (m, 1H), 1.86-1.46 (m, 8H), 1.36-1.25 (m, 4H), 1.12-1.02 (m, 4H), 0.91-0.86 (m, 6H), 0.84 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.71 (d, J = 7.0 Hz, 3H).
13C NMR (151 MHz, CDCl
3) δ 155.81, 154.42, 142.30, 115.46, 109.45, 108.50, 45.00, 40.56, 38.50, 35.80, 35.63, 33.89, 31.96, 30.97, 28.98, 25.75, 22.91, 22.86, 22.06, 16.13, 14.40. MS (ESI): 318 [M, 27%], 262 (12%), 233 (58%), 193 (100%).
【0124】
実施例6 2-シクロヘキシル-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール
【化45】
100mL容丸底フラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコに、オリベトール(1.00g、5.55mmol)、シクロヘキサノール(1.70g、16.6mmol)及び85%オルトリン酸(3mL)を入れた。フラスコを密閉し、混合物を90℃で12時間撹拌しながら加熱した。反応物を冷却し、圧力を解放し、反応物を、窒素ガスを流しながら130℃で1時間再度加熱した。冷却後、反応物を水(20mL)でクエンチし、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(1.2g)を得た。40:60のジクロロメタン:ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより、2-シクロヘキシル-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(470mg、33%)を白色結晶性固体として得た、融点57~58℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.16 (s, 2H), 4.57 (s, 2H), 3.19-2.86 (m, 1H), 2.43 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.01 (dd, J = 12.5, 3.4 Hz, 2H), 1.82 (d, J = 12.5 Hz, 2H), 1.73-1.70 (m, 3H), 1.62-1.49 (m, 2H), 1.43-1.14 (m, 7H), 0.89 (t, J = 6.7 Hz, 3H)..
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 154.71, 142.20, 116.95, 108.93, 77.36, 35.57, 35.39, 31.70, 30.80, 30.64, 27.53, 26.36, 22.69, 14.17. MS (ESI): 262 [M, 62%], 219 (70%), 206 (64%), 137 (100%).
【0125】
実施例7 2-[6-(1,5-ジメチルヘキサ-4-エン-1-イル)-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール
【化46】
150ml容丸底シュレンクフラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシュし、オリベトール(2.00g、11.1mmol)、トルエン(35mL)、及びp-トルエンスルホン酸一水和物(125mg、6mol%)を加えた。次いで、フラスコを予め熱した(70℃)油浴に入れ、15分間撹拌し、その後ジンギベレンの含有量が48~50%の市販のジンジャーオイル(5.40mL)を1分以内にセプタムから注入した。25分後、飽和NaHCO
3水溶液(20mL)と氷(10g)の混合物に注ぐことによって、反応をクエンチした。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(2×40mL)で抽出した。合わせた有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(6.00g)を得た。クロマトグラフィーカートリッジに100gのシリカゲルを入れ、ジクロロメタン(10%)とヘキサン(90%)の混合物で平衡化した。粗生成物をカラムにのせ、7カラム体積の溶媒混合物で溶出した。次いで、方法をグラジエント溶離に変え、次の8カラム体積内でDCM含有量を40%まで徐々に増加させた。生成物を含有する画分を合わせ、溶媒を蒸発させて、2-[6-(1,5-ジメチルヘキサ-4-エン-1-イル)-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(1.80g、42%)を粘性のある淡黄色の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.26-6.15 (br m, 2H), 6.01 (br s, 1H), 5.53 (s, 1H), 4.89 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 4.51 (br s, 1H), 3.82 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 2.45 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.12-2.08 (m, 2H), 1.82-1.72 (m, 7H, incl. 1.77 s, 6H), 1.61-1.55 (m, 5H, incl 1.57 s, 3H), 1.42-1.18 (m, 8H), 0.90-0.83 (m, 7H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 154.18 (br), 142.90, 139.94, 130.99, 124.97, 124.67, 113.78, 109.94 (br), 107.34 (br), 41.39, 35.77, 35.51, 35.36, 32.50, 31.60, 31.57, 30.84, 30.71, 25.99, 25.60, 23.66, 22.56, 22.47, 17.56, 14.55, 14.03. MS (ESI): 384 [M, 15%], 277 (10%), 246 (21%), 231 (100%).
【0126】
実施例8 2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-フェニレンジアセテート(H
2CBDジアセテート)
【化47】
無水酢酸(1.24mL、1.34g、13.1mmol)を、ジクロロメタン(100mL)中のH
2CBD(1.60g、5.06mmol)及びピリジン(1.65mL、1.61g、20.0mmol)の撹拌溶液に室温で加えた。12時間後、反応混合物を水(20mL)に注いだ。有機相を分離し、飽和NaHCO
3水溶液及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いでシリカゲル(30g)のプラグに通し、続いて追加のDCM(50mL)で洗浄した。溶媒を蒸発させて、H2CBDジアセテート(1.82g、90%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.73 (s, 2H), 5.14 (s, 1H), 3.43 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 2.70-2.45 (m, 2H), 2.21 (s, 6H), 2.10-2.00 (m, 2H), 1.90-1.77 (m, 2H), 1.66-1.59 (m, 4H, incl. 1.65 s, 3H), 1.49-1.41 (m, 1H), 1.37-1.25 (m, 5H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 3H), 0.83 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.76 (d, J = 6.8 Hz, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 169.30, 150.06, 142.21, 133.33, 126.49, 125.11, 121.06 (br), 42.87, 37.57, 35.36, 31.69, 30.92, 30.52, 28.04, 23.55, 22.62, 22.49, 21.70, 21.11, 16.20, 14.15. MS (ESI): 400 [M, 56%], 357 (40%), 315 (38%), 273 (55%), 231 (100%).
【0127】
実施例9 2-(3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-イル)-5-ペンチル-1,3-フェニレンジアセテート(エポキシ-H
2CBDジアセテート)
【化48】
m-クロロ過安息香酸(75%重量/重量、1.00g、4.35mmol)を、ジクロロメタン(500mL)中のH
2CBDジアセテート(1.35g、3.37mmol)の撹拌溶液に氷浴中で加えた。12時間後、反応物を水(20mL)に注ぎ、有機相を分離し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液、NaHCO
3水溶液、及びブラインで洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、GCによる純度が94%の2-(3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-イル)-5-ペンチル-1,3-フェニレンジアセテート(1.14g、84%)を黄色がかった油として得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液として純DCM)で精製した後、より純粋な(GCで97+)生成物を黄色がかった油として得た(470mg、35%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm 6.76 (s, 1H), 6.78 (s, 1H), 3.09 (d, J = 11.1 Hz, 1H), 2.88 (s, 1H), 2.56 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.30 (s, 6H), 2.11 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 1.72-1.56 (m, 3H), 1.38-1.15 (m, 11H, incl. 1.34 s, 3H), 0.90-0.86 (m, 3H), 0.72 (t, J = 7.1 Hz, 6H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 168.99, 168.90, 149.78, 149.54, 142.86, 124.89, 121.09, 119.83, 64.07, 58.41, 43.12, 36.65, 35.37, 31.58, 31.08, 30.43, 27.86, 23.08, 22.52, 21.53, 21.42, 21.11, 17.98, 15.95, 14.06. MS (ESI): 426 [M, 4%], 374 (9%), 313 (48%), 271 (100%).
【0128】
実施例10 9-イソプロピル-6-メチル-3-ペンチル-5a,6,7,8,9,9a-ヘキサヒドロジベンゾ[b,d]フラン-1,6-ジオール
【化49】
KOHの1M溶液(1.81mL、1.81mmol)を、メタノール(15mL)中の2-(3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-イル)-5-ペンチル-1,3-フェニレンジアセテート(470mg、1.13mmol)の溶液に加えた。30分後、反応物を水(70mL)で希釈し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。抽出物をNaHCO
3水溶液及びブラインで洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、9-イソプロピル-6-メチル-3-ペンチル-5a,6,7,8,9,9a-ヘキサヒドロジベンゾ[b,d]フラン-1,6-ジオールを淡黄色の油として得た(368mg、98%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.31 (s, 1H), 6.17 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 5.00 (br s, 1H), 4.05 (dd, J = 5.3, 1.6 Hz, 1H), 3.12 (dd, J = 11.2, 5.3 Hz, 1H), 2.57-2.39 (m, 2H), 2.05-2.00 (m, 2H), 1.81-1.63 (m, 2H), 1.60-1.54 (s, 2H), 1.45 (s, 3H), 1.43-1.38 (m, 2H), 1.35-1.28 (m, 4H), 1.20-1.15 (m, 1H), 0.94 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 6.9 Hz, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 160.96, 151.91, 144.54, 117.65, 108.91, 103.47, 90.82, 69.93, 46.30, 40.58, 36.13, 35.10, 31.68, 31.09, 28.25, 27.38, 22.68, 21.92, 17.50, 15.76, 14.16.
【0129】
実施例11 5-(1,1-ジメチルペンチル)-2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ベンゼン-1,3-ジオール
【化50】
100mL容丸底シュレンクフラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシュし、5-(1,1-ジメチルペンチル)ベンゼン-1,3-ジオール(1.58g、7.59mmol)、トルエン(23mL)、及びp-トルエンスルホン酸一水和物(86mg、6mol%)を加えた。フラスコを予め熱した(70℃)油浴に入れ、15分間撹拌し、その後α-フェランドレン(1.28mL、1.09g、7.96mmol)を1分以内にセプタムから注入した。25分後、飽和NaHCO
3水溶液(15mL)と氷(5g)の混合物に注ぐことによって、反応をクエンチした。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(2.61g)を得た。粗生成物をヘキサン(25mL)に溶かし、シリカゲルのプラグ(30g)にのせた。プラグをヘキサン(100mL)で溶出し、続いて250mLのジクロロメタン:ヘキサンの25:75混合物で溶出した。溶媒を蒸発させて、5-(1,1-ジメチルペンチル)-2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ベンゼン-1,3-ジオール(2.21g、85%)を粘性のある淡黄色の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.40 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 4.62 (s, 1H), 3.33 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 1.89 (dd, J = 13.2, 2.6 Hz, 1H), 1.85-1.82 (m, 1H), 1.75 (dd, J = 13.6, 3.5 Hz, 1H), 1.61-1.56 (m, 2H), 1.54-1.48 (m, 4H), 1.36 (s, 3H), 1.32-1.27 (m, 1H), 1.24-1.19 (m, 8H, incl. 1.21 s, 6H), 1.10 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.07-1.03 (m, 2H), 0.96 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.83 (t, J = 7.3 Hz, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 157.27, 151.92, 149.87, 111.51, 105.81, 104.01, 74.63, 44.45, 44.42, 37.53, 35.14, 30.64, 29.52, 28.97, 28.95, 27.90, 27.09, 26.37, 23.54, 22.20, 21.26, 20.69, 14.25.
【0130】
実施例12 5-(1,1-ジメチルヘプチル)-2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ベンゼン-1,3-ジオール
【化51】
100mL容丸底シュレンクフラスコにマグネチックスターバー及びゴムセプタムを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシュし、5-(1,1-ジメチルヘプチル)ベンゼン-1,3-ジオール(1.50g、6.44mmol)、トルエン(20mL)、及びp-トルエンスルホン酸一水和物(74mg、6mol%)を加えた。フラスコを予め熱した(70℃)油浴に入れ、15分間撹拌し、その後α-フェランドレン(1.08mL、921mg、6.75mmol)を1分以内にセプタムから注入した。25分後、飽和NaHCO
3水溶液(10mL)と氷(5g)の混合物に注ぐことによって、反応をクエンチした。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機相を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物(2.38g)を得た。粗生成物をヘキサン(20mL)に溶かし、シリカゲルのプラグ(30g)にのせた。プラグをヘキサン(100mL)で溶出し、続いて250mLのジクロロメタン:ヘキサンの25:75混合物で溶出した。溶媒を蒸発させて、5-(1,1-ジメチルヘプチル)-2-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ベンゼン-1,3-ジオール(1.86g、78%)を粘性のある淡黄色の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.40 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 4.48 (s, 1H), 3.32 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 1.89 (dd, J = 13.2, 2.6 Hz, 1H), 1.85-1.79 (m, 1H), 1.77-1.69 (m, 1H), 1.61-1.55 (m, 2H), 1.53-1.47 (m, 4H), 1.35 (s, 3H), 1.30-1.26 (m, 1H), 1.24-1.16 (m, 12H, incl. 1.21 s, 6H), 1.11 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.08-1.04 (m, 2H), 0.95 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.85 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 157.30, 151.90, 149.91, 111.47, 105.86, 104.00, 44.70, 44.46, 35.15, 31.94, 30.64, 30.18, 30.17, 29.53, 28.99, 28.95, 27.92, 26.38, 24.79, 22.84, 22.21, 21.28, 20.70, 14.25, 14.25. MS (ESI): 372 [M, 22%], 3163 (9%), 288 (100%).
【0131】
実施例13 2,4-ジヒドロキシ-3-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-6-ペンチル安息香酸(H
2CBDA)
【化52】
金属マグネシウム(0.765g、31.6mmol)を、無水メタノール(15mL)中で、還流下で1時間加熱し、その時点で金属は完全に消費されていた。溶媒を蒸発させ、マグネシウムメトキシド生成物を乾燥DMF(10mL)に再溶解した。混合物を氷浴に入れ、撹拌し、固体二酸化炭素(1.4g、32mmol)を一度に導入した。30分後、DMF(2mL)中のH
2CBD(1.00g、3.16mmol)の溶液を加え、混合物を油浴中で120℃にて3時間加熱した。氷(20g)、水(50mL)及び濃塩酸(3.8mL)の混合物に注ぐことによって反応をクエンチした。10分間攪拌した後、1N塩酸を用いて混合物をpH3に調整し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機相を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて粗生成物(1.10g)を得た。それを85:15のヘキサン:酢酸エチルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製して、2,4-ジヒドロキシ-3-(6-イソプロピル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-6-ペンチル安息香酸(175mg、39%)を、静置時には固まる粘性のある黄色の油として、未反応のH
2CBD(610mg、61%)とともに得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 11.91 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 6.28 (s, 1H), 5.51 (s, 1H), 4.00 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 3.04-2.90 (m, 1H), 2.88-2.78 (m, 1H), 2.19-2.08 (m, 2H), 1.85-1.76 (m, 4H, incl. 1.78, s, 3H), 1.67-1.51 (m, 4H), 1.47-1.40 (m, 1H), 1.40-1.24 (m, 6H), 0.93-0.84 (m, 10H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 176.10, 164.26, 161.30, 147.68, 140.67, 124.51, 114.89, 112.25, 102.59, 43.78, 36.57, 35.07, 32.04, 31.28, 30.54, 27.84, 23.69, 22.53, 22.02, 21.71, 16.56, 14.07.
【0132】
実施例14 抗発作研究
動物:雄のウィスターハンラット(70~110g、ハーラン、ビスタ―、英国)を、餌と水は自由に摂取可能な状態で12時間の明暗サイクルで飼育した。実験はすべて、1986年英国動物(科学手続き)法(UK Animals (Scientific Procedures) Act)及び動物を含む実験の報告に関するARRIVEガイドラインに準拠して行った。合計で60匹のラットを使用した。
【0133】
薬物投与:動物を1群につき12匹の5群に無作為に分け、ビヒクル(エタノール、クレモフォールEL)及び生理食塩水(0.9%重量/体積NaCl)、2:1:17)、陽性対照(カンナビジオール、CBD、200mg kg-1;シグマアルドリッチ、英国)又は8,9-ジヒドロカンナビジオール(H2CBD、50、100若しくは200mg kg-1)を、脳内カンナビノイドのTmaxを達成するように痙攣薬を投与する1時間前に腹腔内注射で与えた。痙攣剤ペンチレンテトラゾール(PTZ、0.9%重量/体積NaCl中85mg kg-1)を、薬物又はビヒクル投与の1時間後に腹腔内投与した。発作活動を30分間ビデオで記録し、ビデオ記録を盲検化した後にオフラインレビューを行い、改変ラシーンスケール(0、正常行動;0.5、異常行動;1、孤立性ミオクロニー発作(myoclonic jerk);2、非定型間代発作;3、両前肢間代;3.5、体のねじれを伴う両前肢間代;4、強直期が抑制された強直間代発作;5、完全に発症した強直間代発作)を用いて数値に符号化した。
【0134】
生体分析検体の評価:化学物質及び試薬
4,4-ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT、CAS:50-29-3)を内部分析標準(IS)として使用した。HPLCグレードのn-ヘキサン、アセトニトリル、水及びアスコルビン酸は、シグマアルドリッチ(英国)及びフィッシャーサイエンティフィックから購入した。
【0135】
血漿及び脳試料の分析:CBD、H2CBD及びDDTの標準溶液の原液を、アセトニトリル(5mg/ml及び1mg/mL)で調製し、使用するまで-20℃で保存した。これらをアセトニトリル:水(62:38)でさらに希釈して、0.1、0.2、0.5、1、5、10μg/mLの校正濃度を得た。血漿試料は、以前に妥当性が確認された方法を用いてHPLC用に調製した。簡潔に言うと、DDT(50μg/mL)を内部標準としてラット血漿試料150μLに加えた。600μLの氷冷したアセトニトリル、それに続いて水(600μL)を加える(添加の間に1分間のボルテックスを行う)ことによって、血漿タンパク質を沈殿させた。n-ヘキサン(3mL)を各チューブに加え、5分間ボルテックスした後、チューブを1160×gで10℃にて15分間遠心分離し、上部有機層をガラスピペットで注意深くデカンテーションし、保持した。有機層を室温で窒素を流しながら蒸発させて乾燥させ、150μLのアセトニトリルと水の混合物(62:38)で再溶解した後、HPLC分析した。
【0136】
脳の分析では、脳を秤量し、1.5×氷冷溶媒(90%アセトニトリル、10%水、0.1%アスコルビン酸)(重量/体積)を加え、それに続いて1分間ホモジナイズした。ホモジナイズした脳組織それぞれに、DDT(50μg/ml)を内部標準として加え、試料を混合し、-20℃で一晩平衡化させた。次いで、試料を3500rpmで15分間遠心分離し、最上層を保持した。資料をスピードバック濃縮機で室温にて乾燥させ(Savant SPD131DDA、サーモフィッシャーサイエンティフィック、英国)、HPLC分析のために150μLのアセトニトリルと水の混合物(62:38)に再溶解した。
【0137】
HPLC分析:フォトダイオードアレイ検出器を備えたAgilent1200シリーズHPLC(ヒューレット・パッカード、パロアルト、カリフォルニア州、米国)を分析に使用した。試料はすべて、その30μlを注入し、ACE C18-PFP 3μmのガードカートリッジで保護したACE C18-PFP 150mm×4.6mm、3μmの粒径のカラム(Hichrom社、レディング、英国)を使用して分離した。移動相は、62:38(体積/体積)の割合のアセトニトリルと水の混合物であった。流量は1mL/分に設定し、カラム温度は55℃に維持した。対象の化合物(CBD及びDH-CBD)はすべて、その吸光度を220nmでモニターした。
【0138】
統計:統計処理は、グラフパッドプリズム7(グラフパッドソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を用いて行った。ダゴスティーノとピアソンの正規性の検定により、最大発作の重症度及び生体分析検体の濃度を記述するデータは正規分布しないことが明らかになった。したがって、これらのデータタイプの群内での差異の評価は、クラスカル・ウォリス検定とダンの事後検定で行った。強直間代発作を示す動物の%割合に対する薬物効果は、カイ二乗検定と事後フィッシャー直接確率検定で評価した。
【0139】
これまで、H2CBDを対象とするカンナビノイド薬理学に関する研究は、数が限られていた。CBDと一致して、H2CBDは、1)H2CBDの肝ミクロソーム代謝中のCO複合体形成によって測定できるシトクロムP450に対する阻害効果並びに2)マウスマクロファージにおける反応性酸素中間体、一酸化窒素、及び腫瘍壊死因子の産生の抑制によって定量化される抗酸化活性を示す。CBDとは対照的に、H2CBDは、たとえあったとしても鎮静作用を裏付ける証拠を、ごくわずかしか示さない。
【0140】
本研究では、60匹の雄のウィスターハンを各12匹の動物の5群に無作為に分け、ビヒクル(エタノール、クレモフォールEL、0.9%重量/体積の生理食塩水;、2:1:17)、ビヒクルと陽性対照(CBD;200mg kg-1)、又はビヒクルとH2CBD(50、100、若しくは200mg kg-1)のいずれかを腹腔内注射によって、痙攣剤ペンチレンテトラゾール(PTZ、0.9%重量/体積の生理食塩水中の85mg kg-1)の投与の1時間前に与えた。
【0141】
強直間代発作を示した動物の割合に対する投与の全体的効果が見られ(χ
2(4)=10.48;P=0.033)、ペアワイズ比較により、CBD(200mg kg
-1)及びH2CBD(200mg kg
-1)を投与された動物は、ビヒクル投与群と比べて、強直間代発作を示した動物が有意に少ないこと(いずれの場合もP<0.05)が明らかになった(
図2)。さらに、最大発作重症度も投与によって影響を受け(H=18.96;P<0.001)、ペアワイズ比較により、CBD(200mg kg
-1)及びH2CBD(200mg kg
-1)を投与された動物は、ラシーン(Racine)スケールで数値に符号化して、ビヒクル投与群よりも有意に少ない重度発作を示した(ビヒクル中央値:5(4.25~5IQR)、200mg kg
-1のH2CBD:2(0.25~4.25IQR)、200mg kg
-1のCBD:2(0.25~3.75IQR)、いずれの場合もP<0.001)ことが明らかになった。
【0142】
各投与群のラットから死後に採取した血液及び脳組織の分析により、ビヒクル投与群と比較して有意な濃度のH2CBD(100mg/kg:P<0.05(血液);200mg/kg:P<0.01(血液);P<0.01(脳)及びCBD(200mg/kg:P<0.01(脳))が検出されたことから、血液(H=17.00;P=0.0019)及び脳組織(H=15.76;P=0.0034)に対する投与の全体的な効果が明らかになった(
図2)。
【0143】
結果からはっきりと示されることは、H2CBDは、ラットの急性PTZ誘発全般発作において投与量依存的な抗痙攣作用を呈し、最大保護作用は確立された抗痙攣剤CBDの対応投与量に匹敵することである。これらの予備的データは、H2CBDの抗痙攣剤としての使用に対する明確な適応を示すが、さらなる研究がH2CBD固有の薬物動態プロファイルを確立するであろう。この予備的研究の目的のためには、その薬物動態プロファイルをCBDと同一であると仮定したが、生物分析検体の結果からは、同等の抗痙攣作用にもかかわらず、同じ投与量(200mg kg-1)で血漿中濃度及び脳内濃度に違いがあることが示唆される。これは、H2CBDの抗痙攣作用の大きさが、最適とは言えない投与間隔によって弱められ、効果が最大薬物濃度で評価されるのを妨げている可能性もあることを示唆しうる。
【0144】
次いで、H2CBDのネズミの行動に対する効果を評価した。複数の研究により、CBDの抗不安特性/鎮静特性が示されてきており、最近の研究では、この効果の考えられるメカニズムが提示されている。CBDが模擬胃液に曝されたとき、CBDは1時間以内に、主としてΔ8-及びΔ9-THCにほぼ完全に分解されることがこれまでに見出されており、CBDの経口投与は、患者がナルコーシスを誘発する閾値を超えるレベルのTHCに曝される可能性が示唆されている。本研究で使用した投与量範囲でのH2CBDに関する行動学的研究はないので、H2CBDの活性をEPM及びオープンフィールド試験でビヒクルに対して評価した。
【0145】
成体雄のスプラーグドーリーラット12匹を無作為に各群6匹の2群に分け、ビヒクル(コリフォールRH-40、dmso、0.9%重量/体積 生理食塩水、1:2:7)又はビヒクル+H2CBD(200mg kg-1)を腹腔内注射による投与で与えた。アルコールの交絡効果の可能性を回避するために、この場合のビヒクルは抗発作試験とは異なっていた。また、動物の数を、最大投与量の薬物での効果を確立するのに必要な最小限の集団に限定した。ビヒクル及び薬物を注射した45分後に、ラットをEPMの中央に置き、迷路の壁のない走路(open arm)及び壁の有る走路(closed arm)での滞在時間を記録した。2週間後、同じ12匹のラットを各群6匹の2つの群に無作為に分け、上記のように投与した。注射の45分後に、動物16インチ(40.64cm)×16インチ(40.64cm)アリーナの中央に置くことによって自発運動活性を測定した。30分間自由運動させ、自動活動モニタリングシステムを用いて記録した。
【0146】
EPMデータを分散分析した。オープンアームに費やした時間の割合において、薬物投与群とビヒクル投与群の間に、統計的に有意な差は見られなかった(F
1,10=0.50、p=0.49)。オープンフィールド試験では、水平移動距離(F
1,10=0.005、P=0.95)、垂直活動(F
1,10=1.52、p=0.25)又はアリーナセンターでの時間(F
1,10=2.55、p=0.14)について、薬物投与群とビヒクル投与群の間に統計学的に有意な差はなかった(
図3)。H2CBDはメカニズム的に合理的な経路でTHCに変換できないので、上記のデータは、CBD自体は抗不安作用も鎮静作用も有しないが、生体内でのTHCへの変換が効果の要因でありうるという仮説と一致する。いずれにしても、このデータは、H2CBDが高投与量(200mg kg
-1)で測定可能な行動への影響を生じないことを示す。
【0147】
結論として、H2CBD(200mg kg-1)のラットへの予防的投与は、行動の変化を生じることなく、ビヒクル投与と比較して、強直間代発作の発生率及び最大発作重症度を有意に下げることが示された。可能性のある抗てんかん薬としてのH2CBDのCBDに対する利点は次のようにまとめられる。1)H2CBDは完全に合成されたものであるので、規制物質ではなく、それによって大麻ベースの治療法をめぐる法的問題を回避する。2)H2CBDの調製法は、効率的で、安価で、規模を大きくすることが可能である。他の抽出物の混合物から単離する必要があり、農薬で汚染されている可能性があるCBDと違って、合成H2CBDは純粋な形で入手することが容易である。3)H2CBDは、麻薬性の副作用なく高投与量で医薬品として使用することができる。4)CBDとは対照的に、H2CBDからTHCへの実用的な合成経路は存在しない。5)容易に入手可能で、非大麻ベースの前駆体からのH2CBDの調製により、大麻を栽培する必要性及びそれに伴う懸念が取り除かれる。したがって、大麻ベースの治療法を追求することを正当化する主な医学的理由は、その並はずれた抗痙攣作用であり、他の適応症(不安、慢性疼痛、吐き気、拒食症など)はすべて、議論を引き起こしそうにない薬物で効果的に管理できると仮定して、この治療上の利点に基づいてマリファナを合法化するためによく引き合いに出されるような症例は疑問視される可能性がある。
【0148】
前述の発明は、理解を明確にするために例示及び実施例によってある程度詳しく説明されているが、当業者であれば、ある特定の変更や修正が添付の請求項の範囲内で実行できることを理解するであろう。くわえて、本明細書に記載の各参考文献は、各参考文献が個別に参照により援用される場合と同じ程度に、その全体が参照により援用される。本出願と本明細書に記載の参考文献との間に矛盾がある場合、本出願が優先されるものとする。