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特許7620990光学的に活性化可能な生体サンプルを光学的に前処理するためのアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】光学的に活性化可能な生体サンプルを光学的に前処理するためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20240101AFI20250117BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20250117BHJP
   G01N 15/1409 20240101ALI20250117BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G01N15/14 C
G01N1/28 J
G01N15/1409 100
G01N21/64 F
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022542133
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2021050252
(87)【国際公開番号】W WO2021140189
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】102020200193.6
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522010462
【氏名又は名称】アルベルト-ルートヴィヒス-ウニベルジテート フライブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレンカー,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ケーベレ,ルイーズ
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-063305(JP,A)
【文献】特開2001-038246(JP,A)
【文献】特開2003-083061(JP,A)
【文献】特表2016-503489(JP,A)
【文献】特表2013-522601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025187(US,A1)
【文献】国際公開第2019/063539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 21/64
G01N 15/1409
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に懸濁した複数の細胞を含む光学的に活性化可能な生体のサンプルを光学的に前処理するためのアセンブリであって、前記サンプルを貯蔵するリザーバを備え、
前記サンプルを前記リザーバの外の搬送ユニットによって中空チャネルを通して搬送することができ、前記中空チャネルは、前記細胞を次々に連続してかつ最大20個の前記細胞を互いに隣り合わせて前記中空チャネルに沿って搬送することができる寸法にされ、前記中空チャネルに沿って、前記サンプルに含まれる前記細胞を照明する照明ユニットが配置されており、前記細胞は、制御可能な照明強度および照明期間によって設定されて前記搬送ユニットによって特定することができる流速で前記中空チャネルを通って流れ、前記中空チャネルに前記中空チャネルの下流で流体連通した細胞分析および/または選別デバイスをさらに備えることを特徴とする、アセンブリ。
【請求項2】
前記中空チャネルは、光を透過させるキャピラリの形態で構成されており、キャピラリ直径が、前記サンプルに含まれる前記細胞の2つの直径の和よりも大きくない寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記照明ユニットは、前記中空チャネルの外側に配置された第1の複数の個別光源を有し、前記第1の複数の個別光源は、少なくとも部分的に前記中空チャネルに沿って、前記中空チャネルに対して軸線方向に並んで互いに隣り合って配置されていて、個別にまたは群で制御することができることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記照明ユニットは、前記中空チャネルの外側に配置された少なくとも1つの第2の複数の個別光源を有し、前記第2の複数の個別光源は、少なくとも前記第1の複数の光源に対して、少なくとも前記中空チャネルの周方向にオフセットされていて、少なくとも部分的に前記中空チャネルに沿って、前記中空チャネルに対して軸線方向に並んで配置されていて、個別にまたは群で制御することができることを特徴とする、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記複数の光源は、個々の発光体、またはLED、レーザダイオード、ハロゲンランプ、ガス放電ランプ、LCD、LEDもしくはOLED表示ユニット、プロジェクタ、もしくは量子ドットの混成発光体からなることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記照明ユニットは、前記中空チャネルに沿って配置された少なくとも1つのライトガイドを備え、前記ライトガイドは、前記ライトガイドの長手方向の延びに対して横方向で前記中空チャネルに向けられた少なくとも1つの光出口ゾーンを有し、
前記ライトガイドは、光を前記ライトガイドに結合するための光源に光学的に結合されている
ことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記中空チャネルは、熱交換器に熱的に結合されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記熱交換器は、前記中空チャネルを半径方向で取り囲む中空円筒の形態で構成されていて、前記中空チャネルに関連する中空チャネル壁によって環状チャネルを囲んでおり、前記環状チャネルを通して、前記中空チャネル壁に熱的に結合されていて、前記中空チャネル内の前記サンプルも熱的に結合されている温度制御された液体が流れることを特徴とする、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記照明ユニットの少なくとも一部が、前記環状チャネル内に配置されていて、前記温度制御された液体に熱的に結合されていることを特徴とする、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記中空チャネルを次々に連続して通過する前記細胞に、特定可能な一定の光強度および特定可能な波長スペクトルの波長の光を照射するために、時間的に規定される特定可能な期間に従って前記搬送ユニットおよび/または前記照明ユニットを制御または調整する制御および/または調整デバイスが設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記制御および/または調整デバイスは、特定可能な温度を制御するために、前記熱交換器を監視することを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれか一項又は請求項7から請求項9を引用する請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記細胞分析デバイスはフローサイトメータであり、
前記細胞選別デバイスは蛍光活性化セルソータである
ことを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記フローサイトメータは、前記搬送ユニット用の駆動源として機能する少なくとも1つの圧力源を有することを特徴とする、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記搬送ユニットは、膜ポンプまたはシリンジポンプの形態の液体ポンプであることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記細胞選別デバイスは、それぞれ前記サンプルの成分を受け取るための下流の少なくとも2つのサンプル捕集容器を有する選別機構を有し、
少なくとも1つの前記サンプル捕集容器に捕集された前記サンプルを照明するための少なくとも1つの更なる照明ユニットが設けられている
ことを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの更なる照明ユニットは、前記選別機構と前記サンプル捕集容器との間、前記サンプル捕集容器内、または前記サンプル捕集容器上に配置されていることを特徴とする、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
種々異なる生体細胞を含む細胞懸濁液から特定の生体細胞をポジティブに選択するための、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のアセンブリの使用であって、前記細胞選別デバイスは、それぞれ前記サンプルの成分を受け取るための下流の少なくとも2つのサンプル捕集容器を有する選別機構を有し、少なくとも1つの前記サンプル捕集容器に捕集された前記サンプルを照明するための少なくとも1つの更なる照明ユニットが設けられている、アセンブリの使用。
【請求項18】
前記少なくとも1つの更なる照明ユニットは、前記選別機構と前記サンプル捕集容器との間、前記サンプル捕集容器内、または前記サンプル捕集容器上に配置されていることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリの使用。
【請求項19】
前記細胞懸濁液は、光学的に活性化可能な粒子とともにサンプルとしてリザーバ内に貯蔵され、前記光学的に活性化可能な粒子は、構造変化の形態の第1の光学的な活性化によって、第1の粒子状態から、前記光学的に活性化された粒子が前記細胞懸濁液の特定の細胞に結合する第2の粒子状態へと移行することができるとともに、第2の構造変化の形態の第2の光学的な活性化によって、前記光学的に活性化可能な粒子が非結合状態を取り、前記特定の細胞から解放される前記第1の粒子状態へと再び移行することができ、
前記サンプルは、前記リザーバから前記搬送ユニットによって前記中空チャネルを通して特定可能な流速で搬送され、前記中空チャネルに沿って、前記サンプルは、前記光学的に活性化可能な粒子が前記第2の粒子状態を取り、前記特定の細胞に結合するように、制御可能な照明強度および照明期間によって設定されて、前記照明ユニットによって照明され、
前記中空チャネルに沿って続けて配置された選別デバイスによって、少なくとも1つの光学的に活性化された粒子が結合した前記特定の細胞が分離されてサンプル捕集容器に入り、
前記選別デバイスの下流に配置された更なる照明ユニットによって、前記特定の細胞に結合した前記粒子が、前記第2の光学的な活性化によって前記第1の粒子状態に戻され、前記特定の細胞から解放される
ことを特徴とする、請求項17または請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記光学的に活性化可能な粒子は、光制御可能な結合分子、光制御可能な抗体、光制御可能なシングルドメイン抗体(ナノボディ)または光制御可能なアドネクチン(モノボディ)の形態であることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記光学的に活性化可能な粒子は、少なくとも1つの特徴的な色によって、かつ/または蛍光特性によって、かつ/または磁気特性によって区別されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記細胞懸濁液は血液であり、前記特定の細胞は免疫細胞、T細胞であることを特徴とする、請求項17から請求項21のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に活性化可能な生体サンプルを光学的に前処理するためのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
生体細胞の定量的測定および分子特性解析のどちらについても、いわゆるフローサイトメータが使用されており、これは、通常、光を透過させるマイクロチャネルセルの形態のフロー測定セルを備え、貯蔵された細胞懸濁液からの単離細胞がフロー測定セル内を連続して流れる。光源アセンブリは、通常、少なくとも1つのレーザの形態でマイクロチャネルセルに沿って配置されており、レーザからの光線は、細胞がマイクロチャネルセルに沿って特定の測定ゾーンを通過する際に個々の細胞を横方向に照射または通過する。適切に配置された光検出器によって、刺激レーザ光の散乱成分と、通常では細胞または細胞成分に付着した蛍光標識に由来する、レーザビームによって生じる蛍光現象との両方を検出することができ、これは、個々の細胞の物理特性および分子特性の同時分析に使用される。
【0003】
国際公開第2005/017498号には、上述のレーザの代わりに発光ダイオードまたは略してLEDを使用し、個々の細胞を異なる入射角および/または異なる波長で照射する従来のフローサイトメータが開示されている。適切な形式では、散乱光成分のみならず、細胞による蛍光発光または細胞に付着した蛍光標識から放出される蛍光を検出するために、複数の検出器が使用される。
【0004】
フローサイトメータを用いて光学的に細胞測定を行うことで得られる測定値の再現性および有意性を改善するために、国際公開第2017/036999号には、光学的に活性化可能な生体サンプルを光学的に刺激するためのデバイスが記載されている。生体サンプルは、サンプル容器内に貯蔵されており、サンプル容器は、中空チャネルを通る温度制御された流体回路に光学的および熱的に結合されており、少なくとも1つの光源が中空チャネル上にまたは中空チャネル内に配置されていて、それに熱的に結合されており、光源は、サンプル容器に貯蔵された光学的に活性化可能な生体サンプルを制御する形式で照明することができ、その後、サンプルが、サンプル容器から吸引されてフローサイトメータに供給される。
【0005】
細胞の分析の代わりに、またはそれと組み合わせて細胞選別が必要とされる場合、通常、半透明の液体中に懸濁した細胞が、任意にフローサイトメータを通過した後、マイクロキャピラリに入り、マイクロキャピラリ内を単離細胞が次々に連続して流れる。典型的には、マイクロキャピラリに沿って流れる細胞にレーザビームが照射され、蛍光標識が細胞に付着している場合には、必要に応じて蛍光発光が刺激される。細胞ごとに生じる散乱光と、必要に応じて蛍光とを検出器によって検出し、それによる検出器信号が後続の選別機構の基礎となる。キャピラリ出口に取り付けられた振動子によって、液体の流れが小さな液滴に分けられ、マイクロキャピラリを出た後に静電選別機構を通過し、それにより、選別の仕様に応じて、細胞が分離され、空間的に分離された捕集容器に達する。
【0006】
細胞分析および細胞選別用の本システムは、光遺伝学の分野における実験のためのツールを成し、これを用いて細胞内および細胞外のプロセスに関する有益な情報を得ることができる。特に、光遺伝学では、極めて複雑で、何よりも迅速な生化学反応のみならず、細胞内の生体電気信号の伝達を分析し、場合により制御することが可能である。しかしながら、細胞分析および細胞選別のために利用可能な手段では、分析を目的とした生体細胞との光学的な相互作用の制御ならびに細胞内および細胞外のプロセスに与えられる影響の発揮の制御について、限られた可能性しか得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の説明
本発明の目的は、現在適用されていて、利用可能な上述した手法と比較して、情報を得るための範囲ならびに細胞内および細胞外の事象に影響を与えるかまたは同事象を制御するための範囲を大幅に拡張することができる手段を講じることである。
【0008】
細胞内の構造ならびに細胞内および細胞間の両方で生じる関連の生化学的および生物電気的な事象の複雑さのため、細胞および細胞プロセス全体の理解は依然として不十分である。現在、この理由の1つは、フローサイトメータに供給される細胞が実質的に非特異的な状態、つまり、不正確に規定された状態にあることであると考えられている。セルソータプロセスの場合も同様である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基本的な概念は、経時的に、それ自体は公知の細胞分析の直前に、フローサイトメータまたはセルソータを用いて、好ましくは蛍光ベースの細胞選別に基づき、個々の細胞を特定の量の光で特定の期間にわたって制御して照明することである。こうして、以下に説明するように、細胞内の特定の機能的な事象を光学的に活性化または不活性化することで、正確に分析することができるかまたは細胞に対して特定の操作もしくは手順を行う機会を与える特定の細胞状態を得ることができる。
【0010】
本発明の目的は、請求項1に規定されるように達成される。本発明の概念を有利に展開する更なる特徴は、従属請求項の主題を形成し、例示的な実施形態を参照して行われる以下の説明からも得ることができる。請求項17は、様々な生体細胞を含む細胞懸濁液から特定の生体細胞をポジティブに選択するための本発明によるアセンブリの使用を規定する。
【0011】
解決手段によれば、液体中に懸濁した複数の細胞を含む光学的に活性化可能な生体サンプルを光学的に前処理するためのアセンブリが提供される。アセンブリは、サンプルを貯蔵するリザーバを備え、リザーバからサンプルを搬送ユニットによって中空チャネルを通して搬送することができ、中空チャネルに沿って細胞を次々に連続して、つまり、好ましくは個別に次々に搬送することができ、中空チャネルに沿って、サンプルに含まれる細胞を照明する照明ユニットが配置されており、細胞は、制御可能な照明強度および照明期間によって設定されて、搬送ユニットによって特定することができる流速で中空チャネルを通って流れる。中空チャネルの下流には、中空チャネルに流体連通する細胞分析および/または選別デバイスが取り付けられる。
【0012】
公知のフローサイトメータまたはセルソータの流れ方向の上流に固定されるモジュール式の照明ユニットまたは照明アタッチメントとして構成および使用することもできる本発明によるアセンブリを図面を参照しながら以下により詳細に説明する。
【0013】
公知のフローサイトメータに関連した全細胞サンプルの照明の制御が細胞分析について知られているが、この既知の照明形態は、「FACS装置」(蛍光活性化細胞選別)(FACSはBecton, Dickinson and Companyの登録商標である)と略される選別フローサイトメータには適合しない。これらの装置のサンプルチャンバは小さく、それぞれの装置の内部に組み込まれていて、加圧もされる。このため、このタイプの蛍光活性化細胞選別装置に照明アタッチメントを使用することは、ほぼ不可能である。加えて、このタイプの選別フローサイトメータでは、細胞サンプル全体が照明され、その後、サイトメータに取り込まれる。これは、細胞選別手順には十分ではない。なぜならば、特に照明と個々の細胞の測定/選別との間に生じる時間遅延は同一である必要があるからである。当然ながら、FACS機器の既存のキャピラリシステムに沿った細胞の照明を想定することは可能であるが、照明期間、照明強度または細胞サンプルの温度を十分に制御することはできない。
【0014】
本明細書に記載の解決手段は、公知のFACS機器の予め組み込まれたサンプルチャンバを避け、好ましくはサンプルの流れの制御を可能にする外部の搬送ユニットを使用し、ひいては、キャピラリに沿った細胞サンプルの照明および温度制御を管理することができる。この点で最も重要な側面は、照明と測定/選別との間の時間間隔が個々の細胞について同一であることである。こうして、細胞サンプル全体の個々の細胞の選別時間が同一となる。
【0015】
ここで、本発明を図面を参照しながら、一般的な発明概念を限定することなく、例示的な実施形態を用いて例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】複数の個別光源を有する本発明によるアセンブリを示す図である。
図2】細胞を照明するための少なくとも1つ、好ましくは幾つかのライトガイドを有する本発明によるアセンブリを示す図である。
図3】細胞懸濁液から特定の細胞をポジティブに選択するためのアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施する形態、産業上の利用可能性
図1に本発明によるアセンブリの構成図を示し、アセンブリは以下の構成要素を備える。リザーバ1は、複数の生体細胞3が半透明、つまり、光透過性の液体4中に懸濁している光学的に活性化可能な生体サンプル2を貯蔵する。リザーバ1内の生体サンプル2の温度は、サーマルユニット5を用いて、好ましくは特定可能な温度に制御することができる。
【0018】
制御および/または調整デバイス7によって排出量または供給速度vを制御することができる流体供給ポンプ6を用いて、リザーバ1内に貯蔵された生体サンプル2は、流体ライン8を介してキャピラリ9に入る。キャピラリ9は、好ましくはサンプル2に含まれる2個の細胞3の直径の和よりも大きくない寸法を有するキャピラリ直径11の中空チャネル10を備える。つまり、キャピラリ9に沿って流れる細胞3が、好ましくは1つずつ、つまり、次々に連続してキャピラリ9を通って流れる。それにもかかわらず、キャピラリ直径の寸法は、懸濁液中に存在する細胞に応じて、例えば200μmまで、より大きくすることもでき、2個以上の細胞、例えば3個ないし好ましくは最大20個の細胞が互いに隣り合ってキャピラリに沿って流れてもよい。ここで重要なのは、個々の細胞に対する細胞照明が規定の時点で同一であることであり、それにより、各細胞を所定の光学的に励起された状態に移行することができる。キャピラリ9は、光を透過させるキャピラリ壁12を有する。
【0019】
図1に示す例示的な実施形態では、中空チャネル9の外側、つまり、キャピラリ9の外側に、複数の個別光源13が配置され、これらは少なくとも部分的に中空チャネル10に沿って、中空チャネルに対して軸線方向に並んで互いに隣り合って配置され、制御および/または調整デバイス7によって個別にまたは群(131、132、133)で制御することができる。好ましい光源は、個別の発光体、またはLED、レーザダイオード、ハロゲンランプ、ガス放電ランプ、LCD、LEDもしくはOLED表示ユニット、プロジェクタ、もしくは量子ドットの混成発光体である。
【0020】
複数の個別光源13は、好ましくは軸線方向だけでなく、中空チャネル10の周方向にも互いに隣り合って配置される。こうして、中空チャネル10内で光源13の近傍を流れる細胞3があらゆる側面から均一に照明される。
【0021】
中空チャネル10またはキャピラリ9を通過する際の個々の細胞3への光入力を可能な限り個別かつ多様にすることができるように、個別光源13が群131、132、133に集められる。各関連群131、132、133の光源はそれぞれ、具体的に規定可能な光強度の特定の波長λ131、λ132、λ133を放出する。波長λ131、λ132、λ133および関連の光強度は、好ましくは互いに異なる。原則として、個別光源群131、132、133等は、各光源群131、132、133等が少なくとも1つの光源13を含むように選択することが可能である。
【0022】
軸線方向に沿うだけでなく中空チャネル10の周方向にも配置された多数の光源13により、個々の細胞3への光入力を照射量または照射強度に関して、また、波長に関して、制御および調整ユニット7を用いて個別に特定することができる。
【0023】
キャピラリ9を出た光学的に前処理された細胞3は、さらに続く流体ライン14を介して、それ自体は公知の細胞分析および/または選別デバイス15に入る。
【0024】
有利には、キャピラリ9は、キャピラリ9内の生体サンプル2について特定可能な温度が得られるようにする熱交換器16に熱的に結合される。熱交換器16は、ペルチェ素子であってよいか、または図1に見られるように、流体回路17に接続される温度制御ユニットTの形態で構成され、流体回路17に沿って伝熱流体が供給され、その少なくとも一部が、中空チャネル10またはキャピラリ9を半径方向で取り囲む中空円筒Hによって半径方向外側に画定された環状チャネル18を通過する。環状チャネル18を流れる伝熱流体は、中空チャネルに関連する中空チャネル壁またはキャピラリ壁に熱的に結合するため、中空チャネル10内を流れる生体サンプル2の温度を制御することが可能となる。代替的にはまたは組み合わせて、温度制御ユニットTが、例えば空気/液体熱交換器の形態で、またはいわゆるヒートパイプを用いて熱交換器に結合されてよい。
【0025】
更なる好ましい実施形態では、個別光源13が、少なくとも部分的に環状チャネル18内に配置され、これによって、伝熱流体が個別光源13の周囲を流れ、個別光源13が、均一な特定可能な温度レベルに維持され得る。こうして、個別光源13によって引き起こされ得る局所的な過熱を防ぐことができる。
【0026】
供給ポンプ6を用いて得られる特定可能な流速vによって、本発明によるアセンブリは、キャピラリ9内の個々の細胞3についての滞留時間ひいては照明期間を正確に特定することが可能である。制御および調整ユニット7を用いて波長選択的にかつ放射強度を制御して個別にまたは群で操作され得る複数の個別光源13により、個々の細胞3に適用される光量または光強度および光の波長または波長のスペクトルを個別に特定することができる。このため、例えばフローサイトメータを用いるそれ自体は公知の細胞分析の直前にまたは細胞選別の前に、生体細胞3を特定可能な形式で光学的に処理することができる。
【0027】
図2に、光学的に活性化可能な生体サンプル2を光学的に前処理するための本発明によるアセンブリを実施するための代替的な実施形態を示す。キャピラリ9を流れる細胞3の照明または細胞3への照射の制御を目的として複数の個別光源13を想定する図1に示すアセンブリとは対照的に、図2による実施形態は、キャピラリ9に沿って中空チャネル10の外側に配置された、例えばガラス繊維の形態の少なくとも1つのライトガイド19を有する。ライトガイド19は、光源20に接続される。加えて、ライトガイド19には、その長手方向の延びに対して横方向に、中空チャネル10に向けられた少なくとも1つの光出口ゾーン21が設けられ、これを通して光が中空チャネル10に入ることができる。少なくとも1つの光出口ゾーン21は、例えばライトガイド19の局所的な粗面化によって製作することができる。粗面化により、散乱光成分がライトガイド19から横方向に出ることが可能となる。光出口ゾーン21の軸線方向の長さlにより、特定の流速でキャピラリ9を通過する細胞3の照明または照明期間を特定することができる。
【0028】
図2に示すライトガイド19は、軸線方向に互いに分離され、同一の寸法を有する合計3つの光出口ゾーン21を有する。
【0029】
任意に、キャピラリ9に沿って少なくとも1つの第2のライトガイド20が配置されてよく、それに光源22からの光も結合される。光源20および22は、同一であってよいか、または異なる波長を供給してよい。加えて、ライトガイド20に沿った光出口ゾーン23の数、配置および長さは、ライトガイド19の光出口ゾーン21とは異なっていてよい。明らかに、このタイプのライトガイドは、キャピラリ9に沿って、また、その周囲にほぼ任意の数で配置することができる。
【0030】
図2によるアセンブリは、少なくとも一部がキャピラリ9に沿って配置された環状チャネル18を通過する関連の流体回路17を備える熱交換器16も有する。任意に、ライトガイド19、20は、伝熱流体が流れる環状チャネル18内に配置され、こうして、均一な温度制御が得られる。
【0031】
キャピラリ9を連続して次々に流れる生体細胞3の本発明による光学的な曝露の制御によって、また、任意に細胞3に付着または結合した色素または蛍光物質または光調整粒子によって、細胞が、再現性のある細胞分析、細胞操作および/または細胞選別の基礎を形成する規定の状態に変換される。光学的な細胞照明ならびにその直後の細胞分析および/または細胞選別の経時的および空間的に規定された順序のため、正確な光遺伝学実験および手順を行うことができる。フローサイトメータを用いた細胞分析の代わりに、分析装置、例えば質量分析計、または磁気ビーズ等を用いる磁気精製システムの使用も可能である。
【0032】
このように、このデバイスを用いて、T細胞がT細胞受容体(TCR)へのリガンド結合の半減期の違いによって内因性リガンドと外因性リガンドとを区別することを示す、いわゆる動的校正モデル(Kinetic Proof Reading Model:KPR)を検証することが可能である。このため、植物の光受容体であるフィトクロムBを用いて、TCRへのリガンド結合の動態を照明の制御によって選択的に調査することができる。本発明によるデバイスを用いて得ることができる、調査対象のT細胞の再現性のある光学的な前処理によって、下流のTCRシグナル伝達の活性化の決定的要因であるリガンド-TCR相互作用の半減期の決定のための科学的に重要な測定を行うことができる。
【0033】
図3に、本発明によるアセンブリの好ましい更なる実施形態に示し、これにより、例えば血液の場合のように細胞懸濁液の形態の細胞の混合物から細胞のポジティブな選択を行うことが可能である。このポジティブな細胞選択の可能性は、腫瘍研究および癌診断において従来の方法と比べて特に有利である。
【0034】
特に免疫細胞は、その表面受容体に抗体が結合することによって活性化し、活性化の結果として死滅する。このため、主に、免疫細胞サブタイプは、ネガティブにしか選択できないことがあり、つまり、抗体のカクテルが必要とされ、これを最初に作製する必要があり、これにより、選択すべき標的細胞を除く全ての細胞が標識される。この手順は、時間、手順および手法に関して極めて高コストであり、真に純粋な細胞集団の単離につながることは殆どない。
【0035】
図3に示すアセンブリおよび手順を用いると、ポジティブに選択すべき細胞は、極めて短い時間にわたって光調整粒子に結合され、それにより活性化されることはなく、致死的な結果を伴うことはない。
【0036】
例えば様々な細胞3、例えば免疫細胞、いわゆるT細胞を含む血液サンプルの形態の細胞懸濁液が、図1および2のリザーバと同様に構成されたリザーバ1内にある。細胞3は、例えば光制御可能な結合分子、光制御可能な抗体、光制御可能なシングルドメイン抗体(ナノボディ)または光制御可能なアドネクチン(モノボディ)の形態の光学的に活性化可能な粒子24と混合される。
【0037】
光学的に活性化可能な粒子24は、構造変化の形態の第1の光学的な活性化によって、第1の粒子状態から、分離すべき細胞懸濁液の特定の細胞3に結合する第2の粒子状態へと移行することができるように選択される。第2の光学的な活性化および関連する必要な第2の構造変化により、光学的に活性化された粒子を、非結合状態を再び取り、特定の細胞3から解放され得る第1の粒子状態へと再び移行することができる。
【0038】
リザーバ1内に貯蔵された細胞懸濁液は、搬送ユニット6により、キャピラリ9に沿って光学的な前処理用のアセンブリ25内に移送される。
【0039】
搬送ユニット6は、制御可能な照明強度および照明期間によって設定されるように、細胞懸濁液を特定可能な流速で中空チャネルまたはキャピラリ9を通して搬送し、これに沿って細胞懸濁液が、光学的な前処理用のアセンブリ25内に配置された照明ユニット26によって照明される。この第1の光学的な活性化によって、光学的に活性化可能な粒子24が第2の粒子状態を取り、特定の細胞3に結合する。細胞懸濁液内の全ての残りの細胞3’は、元の形態のままである。
【0040】
光学的な前処理用のアセンブリ25の下流の選別ユニット15の内部では、光学的に活性化された細胞懸濁液が、光学的および/または磁気的に誘導される選別を受け、細胞懸濁液に含まれる細胞3、3’が、好ましくは放出される蛍光の量および/またはスペクトル色分析および/または磁気特性に基づいて選別および分離される。このように、光学的に活性化された粒子24が結合した特定の細胞3は、光学的に活性化された粒子24が好ましくは色素に結合しているため、他の全ての細胞3’よりも多量の蛍光を放出する可能性がある。代替的には、磁性粒子、いわゆるマグネトビーズが結合した光学的に活性化可能な粒子24の使用が検討されてよい。この場合、光学的に活性化された粒子を介してマグネトビーズが結合した特定の細胞3を選別ユニット15により磁力に基づいて分離することができる。
【0041】
選別ユニット15の下流には少なくとも2つのサンプル捕集容器27、28がある。光学的に活性化された粒子24がそれぞれに結合したポジティブに選択すべき特定の細胞3の全てが、サンプル捕集容器28に入る。選別ユニット15とサンプル捕集容器28との間に配置されるか、またはサンプル捕集容器28の中もしくは上にある更なる照明ユニット29が、第2の光学的な活性化のために機能し、その際、特定の細胞3に結合した粒子24が、構造変化によって第1の粒子状態に再び移行し、特定の細胞3から解放される。全ての残りの細胞3’は、他のサンプル捕集容器に入る。
【0042】
その後の分離30によって、例えば遠心分離、デカンタ、濾過、磁気分離等を用いて、光学的に活性化可能な粒子24を特定の細胞3から分離し、結果として特定の細胞3の純粋な集団31が得られる。
【符号の説明】
【0043】
1 リザーバ
2 生体サンプル
3 細胞
特定の細胞
3’ 残りの細胞
4 半透明の液体
5 サーマルユニット
6 流体供給ポンプ
7 制御および調整デバイス
8 流体ライン
9 キャピラリ
10 中空チャネル
11 キャピラリ直径
12 キャピラリ壁
13 光源
131~133 光源群
14 流体ライン
15 細胞分析デバイスまたは細胞選別デバイス
16 熱交換ユニット
17 流体回路
18 環状チャネル
19 ライトガイド
20 光源
21 光出口ゾーン
22 光源
23 光出口ゾーン
24 光学的に活性化可能な粒子
25 光学的な前処理アセンブリ
26 照明ユニット
27 サンプル捕集容器
28 サンプル捕集容器
29 更なる照明ユニット
30 分離
31 特定の細胞の純粋な集団
l 光出口ゾーンの長さ
T 温度制御ユニット
H 中空円筒
v 供給速度
図1
図2
図3