(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】口腔内光照射装置
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20250117BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20250117BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61C7/08
A61C19/06 Z
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2023206237
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2024-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323013413
【氏名又は名称】日本PBM Healing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141346
【氏名又は名称】潮崎 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100212082
【氏名又は名称】渡辺 貴康
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヒン,アラン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538028(JP,A)
【文献】特開2015-229084(JP,A)
【文献】特表2022-553650(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0029784(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0115371(KR,A)
【文献】特開2022-144251(JP,A)
【文献】特表2022-532475(JP,A)
【文献】特開2005-046421(JP,A)
【文献】特開2000-070292(JP,A)
【文献】特開2005-342072(JP,A)
【文献】特表2020-503947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
A61C 19/06
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピースと、
マウスピースに配設され、複数の光エミッタが設けられた光源とを有し、
前記光エミッタから装着者の歯茎に光を照射する口腔内光治療装置において、
前記マウスピースは、
装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイと、
前記咬合トレイの一側縁から前記一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジと、
前記咬合トレイの他側縁から前記他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジとを有し、
前記前フランジ及び前記後フランジは光透過性を有し、前記光源は、前記前フランジの内周面及び前記後フランジの外周面から光照射可能に配設され、
前記前フランジの端部に、前記咬合トレイから前記前フランジの延在方向に張り出す突出部が形成され
、
前記突出部は、前記前フランジの上側縁から立設方向の2/3程度まで突出されている口腔内光治療装置。
【請求項2】
前記前フランジの前記端部は、側面視において円弧状に形成されている請求項1に記載の口腔内光治療装置。
【請求項3】
前記後フランジの端部は、前記咬合トレイの端部と面一に形成されている請求項1又は2に記載の口腔内光治療装置。
【請求項4】
前記光源が前記突出部にも配設されている請求項1又は2に記載の口腔内光治療装置。
【請求項5】
口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピースと、
マウスピース内に配設された光エミッタが設けられた光源とを有し、
前記光エミッタから装着者の歯茎に光を照射する口腔内光治療装置において、
前記マウスピースは、
装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイと、
前記咬合トレイの一側縁から前記一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジと、
前記咬合トレイの他側縁から前記他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジとを有し、
前記前フランジ及び前記後フランジは光透過性を有し、前記光源は、前記前フランジの内周面及び前記後フランジの外周面から光照射可能に配設され、
前記前フランジは、
上側縁から前記咬合トレイ側にかけて前スリットが形成され
、前記前スリットは、前記前フランジの歯列中心と対峙する中心部に設けられ、
前記後フランジは、上側縁から前記咬合トレイ側にかけて後スリットが形成され、前記後スリットは、前記後フランジの歯列中心と対峙する中心部に設けられている口腔内光治療装置。
【請求項6】
前記光源を制御可能なコントローラを有し、
前記コントローラがケーブルを介して前記マウスピースと着脱可能に接続されている請求項1又は5に記載の口腔内光治療装置。
【請求項7】
前記光源を駆動する外部電源ユニットを備え、
前記外部電源ユニットがケーブルを介して前記コントローラと着脱可能に接続されている請求項
6に記載の口腔内光治療装置。
【請求項8】
前記光源を駆動する電源が、前記マウスピース又は前記コントローラに内蔵されている請求項
6に記載の口腔内光治療装置。
【請求項9】
口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピースと、
マウスピース内に配設された光エミッタが設けられた光源とを有し、
前記光エミッタから装着者の歯茎に光を照射する口腔内光治療装置において、
前記マウスピースは、
装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイと、
前記咬合トレイの一側縁から前記一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジと、
前記咬合トレイの他側縁から前記他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジとを有し、
前記前フランジ及び前記後フランジは光透過性を有し、前記光源は、前記前フランジの内周面及び前記後フランジの外周面から光照射可能に配設され、
前記後フランジは、端部が前記咬合トレイの端部よりも
延在方向に後退している口腔内光治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、歯列矯正に際し使用される口腔内光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯列矯正は、矯正の必要な矯正歯を弾性的に押圧することにより行う。歯を支持している歯茎の中には、歯を支える歯槽骨があり、歯槽骨と歯の根の部分(歯根)の間には歯根膜がある。歯根膜は、歯にかかる衝撃を和らげるクッション作用のある緩衝膜である。矯正歯を弾性的に特定の方向に押圧すると、押圧される側の歯根膜は圧縮され、反対側の歯根膜は伸張する状態となる。圧縮された歯根膜は、歯槽骨にストレスが生じ、炎症刺激となり炎症刺激物質が出て歯槽骨を溶かす破骨細胞が出現、活性化することにより、歯槽骨を溶かす(骨吸収)。伸張された歯槽膜は歯を作る造骨細胞が現れ新しく歯槽骨を形成する。矯正歯が弾性的に連続して押圧されると、歯槽骨の溶解と形成が繰り返されて歯は押圧された方向に徐々に移動する。
【0003】
従来の歯列矯正では、矯正歯の歯冠部に歯列矯正器具をつけて弾性的に押圧するが、一時的に大きな力が加わる可能性がある。また、歯列矯正器具をつけると、虫歯や口内炎をおこしやすくなる他、矯正歯に直接力を加えるため歯根に損傷を起こすおそれがあり、歯および歯周囲組織への負担が長期間にわたって続く。
【0004】
そこで、歯及び歯周組織を損傷することなく歯牙移動の速さを増加させる方法として、光照射により、骨吸収及び骨再生を向上させる方法が提案されている。光照射は骨疾患の処置ならびに骨及び軟組織の生体刺激において有効であることが知られており、歯槽骨の吸収及び再生の加速に有効に寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯列矯正用の光照射デバイスとして、マウスピース型の口腔内光照射装置が知られている(特許文献1参照)。マウスピース型の口腔内光照射装置では、使用者が口腔内にマウスピースを装着した際に、嘔吐反射を抑制する等、装着感の向上が求められる。特に、奥歯や親不知の歯列矯正を行うために、マウスピースを口腔内深部まで装着する場合にも装着感に配慮された形状が求められる。
【0007】
また、矯正歯の歯茎の中でも付着歯肉やその上部又は下部の歯槽粘膜に的確に光を照射する必要が有る。特に、奥歯や親不知あるいは前歯等、矯正歯の位置に関わらず、その付着歯肉やその上部又は下部の歯槽粘膜に的確に光を照射することが求められる。
【0008】
そこで、本技術は、マウスピース型の口腔内光照射装置において、良好な装着感を有し且つ矯正歯の付着歯肉や歯槽粘膜に的確に光照射することができる口腔内光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術に係る口腔内光照射装置は、口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピースと、マウスピースに配設され、複数の光エミッタが設けられた光源とを有し、前記光エミッタから装着者の歯茎に光を照射する口腔内光治療装置において、前記マウスピースは、装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイと、前記咬合トレイの一側縁から前記一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジと、前記咬合トレイの他側縁から前記他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジとを有し、前記前フランジ及び前記後フランジは光透過性を有し、前記光源は、前記前フランジの内周面及び前記後フランジの外周面から光照射可能に配設され、前記前フランジの端部に、前記咬合トレイから前記前フランジの延在方向に張り出す突出部が形成され、前記突出部は、前記前フランジの上側縁から立設方向の2/3程度まで突出されているものである。
【0010】
また、本技術に係る口腔内光照射装置は、口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピースと、マウスピース内に配設された光エミッタが設けられた光源とを有し、前記光エミッタから装着者の歯茎に光を照射する口腔内光治療装置において、前記マウスピースは、装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイと、前記咬合トレイの一側縁から前記一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジと、前記咬合トレイの他側縁から前記他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジとを有し、前記前フランジ及び前記後フランジは光透過性を有し、前記光源は、前記前フランジの内周面及び前記後フランジの外周面から光照射可能に配設され、前記前フランジは、上側縁から前記咬合トレイ側にかけて前スリットが形成され、前記前スリットは、前記前フランジの歯列中心と対峙する中心部に設けられ、前記後フランジは、上側縁から前記咬合トレイ側にかけて後スリットが形成され、前記後スリットは、前記後フランジの歯列中心と対峙する中心部に設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、良好な装着感を有し且つ矯正歯の歯茎や歯槽粘膜に的確に光照射することができる口腔内光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本技術が適用された口腔内光照射装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、口腔内光照射装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、口腔内光照射装置を示す左側面図である。
【
図4】
図4は、口腔内光照射装置を示す底面図である。
【
図5】
図5は、口腔内光照射装置を示す右側面図である。
【
図6】
図6は、口腔内光照射装置を示す背面図である。
【
図7】
図7は、口腔内光照射装置を示す斜視図であり、(A)は突出部に光源を設けていない構成、(B)は突出部にも光源を設けた構成を示す。
【
図8】
図8は、口腔内光照射装置を装着したときの光源と歯茎との位置関係を示す断面図である。
【
図9】
図9は、口腔内光照射装置の変形例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、口腔内光照射装置を背面上方から示す斜視図である。
【
図11】
図11は、マウスピースとコントローラが電気ケーブルを介して接続されている状態、及びコントローラと電気ケーブルを介して接続される電源ユニットを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、コントローラの一構成例を示す機能ブロック図である
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係る口腔内光照射装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、口腔内光照射装置を上歯列に装着した使用状態を示す図である。
【
図15】
図15は、口腔内光照射装置を上歯列に装着した使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術が適用された口腔内光照射装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
図1は、本技術が適用された口腔内光照射装置1を示す平面図である。
図2は、口腔内光照射装置1を示す正面図である。
図3は、口腔内光照射装置1を示す左側面図である。
図4は、口腔内光照射装置1を示す底面図である。
図5は、口腔内光照射装置1を示す右側面図である。
図6は、口腔内光照射装置1を示す背面図である。
図7は、口腔内光照射装置1を示す斜視図であり、(A)は突出部に光源を設けていない構成、(B)は突出部にも光源を設けた構成を示す。
図8は、口腔内光照射装置1を装着したときの光源と歯茎との位置関係を示す断面図である。
【0015】
口腔内光照射装置1は、口腔内に装着され、装着者の歯列に応じてU字状に形成されたマウスピース2と、マウスピース2に配設され、複数の光エミッタ3が配設された光源4とを有する。
【0016】
マウスピース2は、装着者の歯列に応じてU字状に形成された咬合トレイ5と、咬合トレイ5の一側縁から当該一側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジ6と、咬合トレイ5の他側縁から当該他側縁に沿って立設され、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジ7とを有する。なお、本明細書において、歯茎の外面とは頬及び口唇と対峙する側の面をいい、歯茎の内面とは歯茎の外面と反対側の面であり舌と対峙する側の面をいう。
【0017】
マウスピース2は、少なくとも前フランジ6の内周面6a及び後フランジ7の外周面7aは光透過性を有し、光源4は、前フランジ6の内周面6a及び後フランジ7の外周面7aから光を照射するように光エミッタ3が配設されている。これにより、光エミッタ3から装着者の歯茎の外面及び内面に光を照射可能とされている。なお、本明細書において、前フランジ6及び後フランジ7の外周面とは頬及び口唇と対向する口腔外側の面をいい、前フランジ6及び後フランジ7の内周面とは外周面と反対側の面であり舌と対向する口腔内側の面をいう。
【0018】
図8は、口腔内光照射装置1を上歯列に装着したときの光源と歯茎との位置関係を示す断面図である。口腔内光照射装置1が上歯列又は下歯列に沿って装着されると、光エミッタ3は矯正歯の付着歯肉及び歯槽粘膜と対峙され、付着歯肉及び歯槽粘膜に対して所定の光を照射する。同図中、40は歯茎(歯肉)を指し、41は遊離歯肉を指し、42は付着歯肉を指し、43は歯槽粘膜を指し、44は歯槽骨を指す。
【0019】
前フランジ6は、端部6bに咬合トレイ5の端部5aから突出する突出部11が設けられている。マウスピース2が口腔内に装着されると、突出部11は、口腔深部まで挿入され、臼後部の頬側に位置される。これにより、マウスピース2が口腔内にぴったりと装着され、マウスピース2を強く噛みしめることなく軽い力で安定して保持することができる。また、頬の内側と歯列の間に装着される前フランジ6の端部6bが突出され、歯列と舌の舌根側の間に装着される後フランジ7の端部7bが前フランジ6ほど突出しないことで、嘔吐反射も抑制され、装着感を損なうこともない。
【0020】
以下、口腔内光照射装置1の構成について詳細に説明する。
【0021】
[マウスピース]
マウスピース2は、装着者の上側の歯列又は下側の歯列に被せて使用されるものであり、咬合トレイ5と、咬合トレイ5の外周側の一側縁から当該一側縁に沿って立設された前フランジ6と、咬合トレイ5の内周側の他側縁から当該他側縁に沿って立設された後フランジ7とを有する。これにより、マウスピース2は、口腔内に装着されると前フランジ6と後フランジ7の間に歯列が挿入される。また、マウスピース2は、上側の歯列にも、下側の歯列にも被せて使用することができる。
【0022】
咬合トレイ5は、口腔内にマウスピース2を保持する際に装着者が噛むことができる部位であり、装着者の歯列形状に対応して平面視において略U字状をなす。
【0023】
前フランジ6は、マウスピース2が口腔内に装着されると歯茎の外面、特に付着歯肉及びその上部又は下部の歯槽粘膜と対峙される。前フランジ6は、光源4が配設されるとともに光透過性を有し、光源4の光エミッタ3から歯茎外面の付着歯肉及びその上部又は下部の歯槽粘膜に対して光照射が可能とされている。
【0024】
後フランジ7は、マウスピース2が口腔内に装着されると歯茎の内面、特に付着歯肉及びその上部又は下部の歯槽粘膜と対峙される。後フランジ7は、光源4が配設されるとともに光透過性を有し、光源4の光エミッタ3から歯茎内面の付着歯肉及びその上部又は下部の歯槽粘膜に対して光照射が可能とされている。
【0025】
なお、咬合トレイ5、前フランジ6、及び後フランジ7は、形状を維持するとともに適度な可撓性を有し、口腔内の形状に応じて追従して装着可能とされている。
【0026】
[突出部]
前フランジ6の両端部6bには、咬合トレイ5の端部5aより前フランジ6の延在方向に張り出す突出部11が形成されている。突出部11は、マウスピース2が口腔内に装着されると臼後部の頬側に位置され、側面視において円弧状をなし、且つ平面視においても先端面が円弧状に形成されている。したがって、突出部11が頬粘膜と接触しても装着感を損なうことがない。
【0027】
また、マウスピース2が口腔内に装着されると、突出部11は、口腔深部まで挿入され、臼後部の頬側に位置される。これにより、マウスピース2が口腔内にぴったりと装着され、マウスピース2を強く噛みしめることなく軽い力で安定して保持することができる。
【0028】
突出部11は、前フランジ6の上側縁側から突出するように形成されている。これにより、口腔深部まで挿入された突出部11が口腔内の形状に沿って密着し、前フランジ6を口腔の上部すなわち上唇裏側の最上部又は下部すなわち下唇裏側の最下部まで装着するとともに、マウスピース2を安定的に保持することができる。また、これにより前フランジ6が歯茎の付着歯肉及び歯槽粘膜と対峙される。すなわち、マウスピース2は、咬合トレイ5の底面側に歯冠が位置され、前フランジ6の上側縁側に付着歯肉及び歯槽粘膜が位置される。
【0029】
図3,5,6,7に示すように、突出部11を前フランジ6の上側縁から連続して突出させることで、光源4をできるだけ前フランジ6の上側縁側に形成することができ、付着歯肉及び歯槽粘膜に対して的確に光を照射することができる。また、前フランジ6は、前フランジ6の立設方向の全域にわたって突出部11を形成するのではなく、上側縁から立設方向の2/3程度までを突出させており、歯冠が位置する下方は咬合トレイ5の端部5aと面一とされている。これにより、光源4を付着歯肉及び歯槽粘膜に対して的確に照射する位置に配設するとともに、突出部11の大型化を抑え、装着感を良好に維持することができる。
【0030】
なお、光源4の照射位置を損なわない限り、突出部11を前フランジ6の上側縁から若干下方に下がった位置から突出させてもよい。また、装着感を著しく損なわない限り、前フランジ6の下方まで突出部11を突出させてもよい。
【0031】
図7(B)に示すように、マウスピース2は、突出部11にも光源4の光エミッタ3が設けられることが好ましい。前フランジ6及び後フランジ7は、奥歯(第二大臼歯)や親不知(第三大臼歯、智歯)と対峙するように形成され、光エミッタ3から当該部位に光を照射することができるよう設計されているが、装着者によっては前フランジ6及び後フランジ7から外れる位置に奥歯や親不知がある場合も想定される。この場合も、前フランジ6の上側縁側に突出部11を形成することにより、突出部11が奥歯や親不知の付着歯肉及び歯槽粘膜と対峙されることとなる。そして、突出部11に光エミッタ3が設けられることにより、奥歯や親不知の上部又は下部の付着歯肉や歯槽粘膜に光を照射することができる。
【0032】
後フランジ7の端部7bは、咬合トレイ5の端部5aと面一に形成され、延在方向へ突出する突出部は設けられていない。後フランジ7は、歯列の内側と舌の舌根側の間に装着されることから、前フランジ6ほど突出しないことで、嘔吐反射も抑制され、装着感を損なうこともない。なお、突出長さや突出面積を小さくするなどにより装着感を損なわない程度で、後フランジ7の両端部7bに突出部を形成してもよい。
【0033】
なお、
図9に示すように、後フランジ7の端部7bを咬合トレイ5の端部5aまで延在させず、短くしてもよい。後フランジ7の端部7bを咬合トレイ5の端部5aよりも後退させることで、嘔吐反射を抑制することができる。この場合、前フランジ6には突出部11を形成することが好ましいが、嘔吐反射を抑制することを主目的とする場合には、突出部11を設けることなく、前フランジ6の端部6bを咬合トレイ5の端部5aと面一に形成してもよい。
【0034】
[スリット]
前フランジ6の歯列中心と対峙する中心部には、上側縁から下方(咬合トレイ5側)にかけて、前スリット12が形成されている。前スリット12は、マウスピース2が口腔内に装着されたときに、上唇小帯(superior labial frenulum)又は下唇小帯(inferior labial frenulum)が挿通される。これにより、前フランジ6と上唇小帯又は下唇小帯が干渉することなく、前フランジ6を歯槽粘膜と対峙する口腔上部又は下部に装着することができる。
【0035】
すなわち、上唇裏側及び下唇裏側の歯列中心付近の歯槽粘膜には付着歯肉にかけて、上唇小帯又は下唇小帯が伸びている。そのため前フランジ6の歯列中心と対峙する中心部に前スリット12が設けられていない場合、前フランジ6の上側縁と上唇小帯又は下唇小帯が干渉し、前フランジ6を口腔の上部すなわち上唇裏側の最上部又は下部すなわち下唇裏側の最下部まで装着することができない、あるいは前フランジ6の上側縁と上唇小帯又は下唇小帯が干渉することにより痛みや不快感を伴うことから、前フランジ6の高さを高くできず、付着歯肉や歯槽粘膜と十分に対峙させることが困難となる。
【0036】
そこで、前フランジ6に前スリット12を設けることにより、前フランジ6の上側縁と上唇小帯又は下唇小帯が干渉することなく、上唇裏側の最上部又は下唇裏側の最下部まで装着することができ、前フランジ6を歯槽粘膜に対峙させることができる。
【0037】
また、後フランジ7の歯列中心と対峙する中心部には、上側縁から下方(咬合トレイ5側)にかけて、後スリット13が形成されている。後スリット13は、マウスピース2が口腔内に装着されたときに、舌小帯(frenulum linguae)や口蓋縫線(palatine raphe)が挿通される。これにより、後フランジ7と舌小帯や口蓋縫線が干渉することなく、後フランジ7を歯槽粘膜と対峙する口腔上部又は下部に装着することができる。
【0038】
すなわち、舌下の歯列中心付近には、舌小帯が伸びており、また、口蓋には歯列中心付近にかけて口蓋縫線が伸びている。そのため後フランジ7の歯列中心と対峙する中心部に後スリット13が設けられていない場合、後フランジ7の上側縁と舌小帯又は口蓋縫線が干渉し、後フランジ7を口腔の上部すなわち口蓋の天面又は下部すなわち舌下の最下部まで装着することができない、あるいは後フランジ7の上側縁と舌小帯又は口蓋縫線が干渉することにより痛みや不快感を伴うことから、後フランジ7の高さを高くできず、付着歯肉や歯槽粘膜と十分に対峙させることが困難となる。
【0039】
そこで、後フランジ7に後スリット13を設けることにより、後フランジ7の上側縁と舌小帯又は口蓋縫線が干渉することなく、口蓋の天面又は舌下の最下部まで装着することができ、後フランジ7を歯槽粘膜に対峙させることができる。
【0040】
[材質]
マウスピース2の材質は、従来スポーツや医療の分野で用いられているマウスピースの材料と同様であり、光源4から光を照射可能であり、且つ可撓性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料により形成される。具体的に、マウスピース2の材質としては、口腔形状に適合し、適度な硬さと柔らかさを備えた樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびカーボネート系樹脂などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂などがより好ましい。
【0042】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(ジカルボン酸など)とポリアルコール(ジオールなど)との重縮合体である。上記ポリエステル系樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれる。
【0043】
ウレタン系樹脂は、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との重縮合体である。上記ウレタン系樹脂の例には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが含まれる。
【0044】
ポリアミド系樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた(共)重合体である。上記ポリアミド系樹脂の例には、ナイロン、パラ系アミド、およびメタ系アミドなどが含まれる。
【0045】
アクリル系ゴム樹脂は、アクリル系ゴムを主成分とした(共)重合体である。上記アクリル系樹脂の例には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体などが含まれる。
【0046】
なお、咬合トレイ5と前フランジ6及び後フランジ7とを異なる材料により形成し、硬度を変えてもよい。
【0047】
上記マウスピース2は、上述のような材料を光源4と一体にモールド成形することにより得られる。材料の射出条件はマウスピース2の大きさや形状に応じて設定され、通常は1つの金型でマウスピース2全体を成形する。マウスピース2の大きさは、平均的な人の歯列に適合するのに適した形状を有していればよい。装着者が成人である場合には、平均的な成人の歯列に対応するような大きさと形状を有する大人用マウスピース2として製造し、装着者が子供である場合には平均的な子供の歯列に対応するような大きさと形状を有する子供用マウスピース2として製造する。
【0048】
[光源]
次いで、マウスピース2に配設される光源4について説明する。光源4は、基板10と基板10に配設された複数の光エミッタ3とを備える。口腔内光照射装置1は、光エミッタ3によって付着歯肉及び歯槽粘膜に光を照射し、歯槽骨に刺激を与えることにより、歯槽骨に炎症刺激を生じさせて歯槽骨の表面の破骨細胞を活性化させ、これにより歯槽骨に骨吸収を起こさせる。また、光照射により、出血を抑えることができ、不快感や痛みを緩和させることもできる。
【0049】
基板10としては、可撓性を有し光エミッタ3を実装し得るフレキシブル基板であれば特に制限はなく、例えばポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)等をベースフィルムとした公知のフレキシブル基板を使用することができる。基板10は、マウスピース2の前フランジ6及び後フランジ7の側面に沿ってそれぞれ配設されるものであり、前フランジ6及び後フランジ7の形状に応じて略矩形板状をなし、且つU字状に湾曲されて配設されている。また、基板10は、前フランジ6及び後フランジ7の端部まで配設されるが、好ましくは、前フランジ6の突出部11まで配設される。
【0050】
基板10は、前フランジ6の内周面及び後フランジ7の外周面から光を出射するように、光エミッタ3がそれぞれ配設される。これにより、前フランジ6及び後フランジ7間において光源4が対向され、矯正歯の付着歯肉及び歯槽粘膜の両面に光を照射することができる。
【0051】
図10は口腔内光照射装置1を背面上方から示す斜視図である。
図10に示すように、前フランジ6に設けられた基板10は、歯列中心と対峙する中心部において、接続端子部17が形成されている。前フランジ6に設けられた基板10の各光エミッタ3は内部配線を介して接続端子部17と接続されている。後フランジ7に設けられた基板10の各光エミッタ3は、歯列中心と対峙する中心部において、咬合トレイ5を通る内部配線を介して接続端子部17と接続されている。接続端子部17は、マウスピース2の前フランジ6の中心部外側面から導出される電気ケーブル15を介してコントローラ16と接続されている。光源4は、電気ケーブル15の端部に接続されたコントローラ16によって、光エミッタ3による光照射(照射ON及び照射OFF、照射部位、照射モード(時間、放射照度、照射量など))が制御される。
【0052】
なお、
図2に示すように、電気ケーブル15が導出される導出部19は、前フランジ6の外側面の上側縁からやや下方に設けられる。これは、上述したように前フランジ6の中心部には前スリット12が設けられていることから、この前スリット12の下端の下部から電気ケーブル15を導出するためである。
【0053】
[光エミッタ]
光エミッタ3としては、特に制限は無く、例えば発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、半導体レーザダイオード(LD)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、発光ポリマー(LEP)、光ファイバ束等、若しくはこれらの組合せ等が例示されるが、これらに限定されない。光エミッタ3は、光源4がマウスピース2と一体成形されることにより、マウスピース2を構成する透明又は半透明の樹脂により覆われている。したがって、光源4は、口腔内に光照射が可能とされるとともに、マウスピース2の使用時や洗浄時においても樹脂材料により保護される。
【0054】
光エミッタ3は、基板10の長手方向に沿って一端から他端にわたって複数実装され、例えば3列で、各列18~20個の光エミッタ3が格子状に配列されている。なお、光エミッタ3の配列パターンや個数はこれに限定されない。各光エミッタ3は、隣接する光エミッタ3との距離を近接させ、光が当たらない箇所ができないようにしてもよい。
【0055】
また、上述したように、光エミッタ3は、臼後部の頬側に位置される前フランジ6の突出部11にも形成されていることが好ましい。これにより、奥歯や親不知が前フランジ6や後フランジ7から外れた位置にある場合も、奥歯や親不知の上部又は下部の付着歯肉や歯槽粘膜に確実に光を照射することができる。
【0056】
光照射を行う部位は、設定により、前フランジ6の光源4全体及び/又は後フランジ7の光源4全体を照射させるように選択可能としてもよい。また、前フランジ6及び後フランジ7の各光源の照射部位も、一律に光エミッタ3全体を照射してもよく、前歯側半分又は奥歯側半分など選択できるようにしてもよい。光照射のパターンも適宜設定でき、光エミッタ3を一律に同じ放射照度で点灯してもよく、点滅させててもよい。また、時間的に照射位置や放射照度、照射パターンが変動するように設定してもよい。
【0057】
[サーミスタ]
なお、基板10には、光源4の温度を検知するサーミスタ等の温度検知部30を設けてもよい。これにより、光エミッタ3が所定の温度以上に加熱した場合に、光照射を停止し、装着者及びマウスピース2を保護するように制御することができる。
【0058】
[コントローラ]
図11は、マウスピース2とコントローラ16が電気ケーブル15を介して接続されている状態、及びコントローラ16と電気ケーブル15を介して接続される電源ユニット18を示す斜視図である。コントローラ16は、マウスピース2と電気ケーブル15を介して着脱可能に接続される。
図12はコントローラ16の一構成例を示す機能ブロック図である。
図12に示すように、コントローラ16は、プログラムに基づき光エミッタ3の照射部位、照射時間、照射波長、放射照度等を制御したり、予め照射部位、照射時間、照射光の波長、放射照度及び吸収エネルギー等が設定されたモードや、口腔内光照射装置1の稼働履歴をメモリやストレージに保存したりする制御部21と、電源のON・OFFや照射のON・OFFの操作やモードの選択を行う操作ボタンなどを備えた操作部23とを備えている。
【0059】
また、コントローラ16は、さらに電源ケーブルを介して電源ユニット18と着脱可能に接続される。電源ユニット18としては、家庭用コンセントと接続された電源装置(アダプタ)や、再充電可能な又は使い捨ての電池が収容されるモバイルバッテリー等を使用することができる。このように、マウスピース2とコントローラ16及び電源ユニット18を分離し、ケーブルで接続することにより、マウスピース2の装着時に掛かる重量がマウスピース2自体の重量のみとなり、装着位置のズレを防止することができ、またマウスピース2を口腔内に保持する装着者の負担を軽減でき、さらに操作性を向上することもできる。また、マウスピース2が電源ケーブル15と着脱可能とされることで、使用後にマウスピース2のみを洗浄することが容易となる。
【0060】
なお、二次電池をコントローラ16やマウスピース2に内蔵してもよい。コントローラ16やマウスピース2に内蔵された二次電池は、コントローラ16やマウスピース2が家庭用コンセントに接続された電源装置と電源ケーブルを介して接続されることにより充電可能となる。また、マウスピース2に内蔵された二次電池は、マウスピース2がマウスピースケース(図示せず)に収納されることにより充電可能としてもよい。この場合、マウスピースケースは、家庭用コンセントと接続された電源装置(アダプタ)と電源ケーブルを介して接続される、又は、電源装置が内蔵され、電源ケーブルを介して家庭用コンセントに接続される。
【0061】
なお、コントローラ16は、手動で照射部位、照射時間、照射波長、放射照度、吸収エネルギー等の設定を行なう設定部22や、口腔内光照射装置1の稼働状態や稼働履歴、スケジュール管理、光照射の残り時間、バッテリ残量などを表示する液晶パネル等の表示部24、所定の光照射の終了やエラー状態等をアラームや発光、振動などで報知する報知部25、インターネットを介して外部サーバ31と接続し、制御部21に格納された制御プログラムやスケジュールの更新、制御部21に保存された稼働履歴の送信等を行う通信部26などを設けてもよい。
【0062】
図13は、本発明の実施の形態に係る口腔内光照射装置1の一構成例を示す機能ブロック図である。制御部21は、マイクロプロセッサ28を有する。マイクロプロセッサ28は、メモリ29やストレージ34との間で照射モード等のプログラムや口腔内光照射装置1の稼働履歴等の情報通信を行う。また、マイクロプロセッサ28は、設定部22の設定情報をメモリ29又はストレージ34に保存し、またメモリ29又はストレージ34に保存された設定に応じて照射を制御する。
【0063】
マイクロプロセッサ28は、電源のON/OFFを行う電源スイッチ32及び照射開始/停止を操作する操作スイッチ33の操作に応じて動作する。また、マイクロプロセッサ28は、サーミスタ等の温度検知部30からの信号に応じて光照射を停止する。これにより、光エミッタ3が所定の温度以上に加熱した場合に、光照射を停止し、装着者及びマウスピース2を保護するように制御することができる。
【0064】
さらに、マイクロプロセッサ28は、電源ユニット18をモバイルバッテリーで構成した場合における出力電圧を検出する検出回路35の出力を受信し、充電量を判断し、表示部24や報知部25を制御して使用者に伝える。
【0065】
[使用方法]
次いで、口腔内光照射装置1の使用方法について説明する。口腔内光照射装置1は、歯列矯正中の使用者自身によって所定期間毎、例えば一日1回~数回使用され、1回又は1日あたりに所定時間(後述の例では矯正部位ごとに1日4分程度)だけ使用される。
【0066】
上の歯列に対して口腔内光照射装置1を使用する場合は、
図14、
図15に示すように、前フランジ6、後フランジ7及び咬合トレイ5によって形成されたU字溝を上の歯列に向けてマウスピース2を装着する。このとき、前フランジ6に前スリット12を設けることにより、上唇小帯46が前フランジ6と干渉することなく、上唇裏側の最上部まで装着することができる。また、後フランジ7に後スリット13を設けることにより、口蓋縫線47が後フランジ7と干渉することなく、口蓋の天面まで装着することができる。これにより、前フランジ6及び後フランジ7に設けられた光源4を付着歯肉及び歯槽粘膜と対峙させることができる。
【0067】
また、マウスピース2が口腔内に装着されると、突出部11が口腔深部まで挿入され、臼後部の頬側に位置される。これにより、マウスピース2が上歯列の歯茎と上唇及び頬との間にぴったりと装着され、マウスピース2を強く噛みしめることなく軽い力で安定して保持することができる。
【0068】
なお、突出部11まで光エミッタ3を配設した場合には、上述の前スリット12及び後スリット13の効果と相まって、上歯列の奥歯や親不知の付着歯肉や歯槽粘膜に確実に光を照射することができる。
【0069】
下の歯列に対して口腔内光照射装置1を使用する場合は、前フランジ6、後フランジ7及び咬合トレイ5によって形成されたU字溝を下の歯列に向けてマウスピース2を装着する。このとき、前フランジ6に前スリット12を設けることにより、下唇小帯48が前フランジ6と干渉することなく、下唇裏側48の最下部まで装着することができる。また、後フランジ7に後スリット13を設けることにより、舌小帯49が後フランジ7と干渉することなく、舌下の最下部まで装着することができる。これにより、前フランジ6及び後フランジ7に設けられた光源4を歯槽粘膜に対峙させることができる。
【0070】
また、マウスピース2が口腔内に装着されると、突出部11が口腔深部まで挿入され、臼後部の頬側に位置される。これにより、マウスピース2が下歯列の歯茎と下唇及び頬との間にぴったりと装着され、マウスピース2を強く噛みしめることなく軽い力で安定して保持することができる。
【0071】
なお、突出部11まで光エミッタ3を配設した場合には、上述の前スリット12及び後スリット13の効果と相まって、下歯列の奥歯や親不知の付着歯肉や歯槽粘膜に確実に光を照射することができる。
【0072】
光の波長(Wavelength:nm)、放射照度(Radiation Flux:W/m2)、照射部位、及び照射時間は特に限定されず、光の照射部位に与えた刺激が炎症刺激となって破骨細胞を活性化させることができ、且つ歯、歯肉、歯根膜、歯槽骨等に損傷を与えないように適宜設定される。
【0073】
具体的に、光の波長(Wavelength:nm)は、例えば850nm±10%(765~935nm)の範囲で設定してもよい。各光エミッタ3の放射照度(Radiation Flux)は、例えば68.64mW/cm2±10%(61.78~75.50mW/cm2)の範囲で設定してもよい。照射部位は、前フランジ6の光源4のみ照射するモード(モード1)、後フランジ7の光源4のみ照射するモード(モード2)、前フランジ6及び後フランジ7の光源4から照射するモード(モード3)を選択可能としてもよい。照射時間は、例えば240秒±10%(210~265秒)の範囲で設定してもよい。また、前フランジ6から照射される光の吸収エネルギー(Energy Absorb:J)は889.6J±10%(800.6~978.6J)の範囲で設定してもよく、後フランジ7から照射される光の吸収エネルギー(Energy Absorb:J)は428.3J±10%(385.5~471.1J)の範囲で設定してもよい。動作電流も適宜設計できるが、例えば26.0mA±10%(23.4~28.6mA)の範囲で設定してもよい。
【0074】
例えば、前フランジ6に光エミッタ3として54個のLEDを設け、後フランジ7に光エミッタ3として26個のLEDを設け、各光エミッタ3の放射照度を68.64mW/cm2とした場合、見かけ上、前フランジ6からの放射照度は3706.56mW/cm2となり、後フランジ7からの放射照度は1784.64mW/cm2となる。この設定において、240秒間照射すると、前フランジ6から照射される光の吸収エネルギー(Energy Absorb:J)は889.6Jであり、後フランジ7から照射される光の吸収エネルギー(Energy Absorb:J)は428.3Jである。なお、上記波長(nm)、放射照度(mW/cm2)及び吸収エネルギー(J)の数値範囲は例示であり、本発明の効果を奏する限り、上記数値範囲外の値に設定してもよい。また、上述したように各モードの選択は、コントローラ16によって行うことができる。口腔内光照射装置1の設定は上述したものに限定されない。
【0075】
なお、放射照度は、光エミッタ3から照射して放射照度計により単位面積当たりに入射する光の放射束を計測することで求めることができる。前フランジ6及び後フランジ7からの放射照度の総量は、各光エミッタの放射照度に光エミッタの個数を掛け合わせることで求めることができる。前フランジ6及び後フランジ7から照射される光の吸収エネルギー(W・sec)は、放射照度の総量(W)と照射時間(sec)を掛け合わせることにより求めることができる。
【0076】
コントローラ16によって、モードの選択がなされた後、照射開始の操作がなされると、モードに応じて光照射が実行される。光照射が終了した後は、マウスピース2を口腔内から外し、洗浄することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 口腔内光照射装置、2 マウスピース、3 光エミッタ、4 光源、5 咬合トレイ、5a 端部、6 前フランジ、6a 内周面、6b 端部、7 後フランジ、7a 外周面、7b 端部、11 突出部、12 前スリット、13 後スリット、15 電気ケーブル、16 コントローラ、17 接続端子部、18 電源ユニット、19 導出部、21 制御部、22 設定部、23 操作部、24 表示部、25 報知部、26 通信部、28 マイクロプロセッサ、29 メモリ、30 温度検知部、31 サーバ、32 電源スイッチ、33 操作スイッチ、34 ストレージ、35 検出回路
【要約】
【課題】良好な装着感を有し且つ矯正歯の歯茎や歯槽粘膜に的確に光照射することができる口腔内光照射装置を提供する。
【解決手段】口腔内光照射装置1は、U字状に形成されたマウスピース2と、マウスピース2に配設され、装着者の歯茎に光を照射する複数の光エミッタ3が設けられた光源4とを有し、マウスピース2は、U字状に形成された咬合トレイ5と、装着者の歯茎の外面と対峙する前フランジ6と、装着者の歯茎の内面と対峙する後フランジ7とを有し、前フランジ6及び後フランジ7は光透過性を有し、光源4は、前フランジ6の内周面及び後フランジ7の外周面から光照射可能に配設され、前フランジ6の端部に、咬合トレイ5から前フランジ6の延在方向に張り出す突出部11が形成されている。
【選択図】
図7