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特許7621021複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置
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  • 特許-複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/40 20060101AFI20250117BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G09B23/40
E02D17/20 106
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024107320
(22)【出願日】2024-07-03
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】202310817679.2
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】呂 慶
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬
(72)【発明者】
【氏名】徐 興華
(72)【発明者】
【氏名】呉 俊宇
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 新法
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 子昊
(72)【発明者】
【氏名】張 黎明
(72)【発明者】
【氏名】劉 正華
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-014637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102331489(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110456025(CN,A)
【文献】中国特許第103743887(CN,B)
【文献】土壌雨量指数,[online],気象庁,2008年08月01日,https://web.archive.org/web/20080801190958/https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/dojoshisu.html,検索日2024年7月23日
【文献】日置和昭,豪雨時における土砂災害危険度予測への修正タンクモデルの適用性について,第4回土砂災害に関するシンポジウム論文集,土木学会西部支部,2008年08月,p.33-38
【文献】模擬実験を用いた豪雨による地すべり発生メカニズムの研究,[online],2023年11月27日,https://jr-dctor.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/11/6461371b1e5f39d42a9e9fc22430bf0d.pdf,検索日2024年7月23日
【文献】菊野嘉雄,降雨による斜面流動性崩壊の発生・運動メカニズムに関する水路実験研究,第37回地盤工学研究発表会発表講演集,地盤工学会,2002年06月16日,p.2233-2234
【文献】森脇寛,斜面崩壊の発生過程について(I)-降雨による表層崩壊実験-,国立防災科学技術センター研究報告,vol.19,防災科学技術センター,1978年03月,p.51-64
【文献】Shun Wang,A device for rainfall simulation in geotechnical centrifuges,Acta Geotechnica,Springer Nature,vol.16, Issue 9,pp.2887-2898
【文献】Yanran Hu,Model Test Study of Rainfall Factors on Failure Process of Xiashu Loess Slope with Gravel Layer,Advances in Civil Engineering,John Wiley & Sons Ltd,2024年01月16日,Vol.2024, Issue 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/40
G09B 9/00
G01N 33/24
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験装置であって、
土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面のさまざまな傾きをシミュレーションし、モデルタンクを含む土壌体法面シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットと協力して設けられ、各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発する降雨シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットの最後に設けられ、降雨時の法面の流出と浸透流を分離し、モデルタンクの最後に設けられたオリフィス板を含み、土壌体法面の上方に対応するオリフィス板の後に流出導水タンクが設けられ、土壌体法面の岩盤表面に対応するオリフィス板の後に浸透流導水タンクが設けられる流出-浸透流分離ユニットと、
流出-浸透流分離ユニットと協力して設けられ、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングするモニタリングモジュールであって、流出-浸透流分離ユニットの最後に設けられ、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量の大きさをモニタリングする流量モニタリングユニットを含み、前記流量モニタリングユニットは、それぞれ流出導水タンク及び浸透流導水タンクに連通する2つの沈殿箱を含み、前記沈殿箱のいずれかは、それぞれ対応する第2導流管を介して対応する集水箱に接続され、前記第2導流管のいずれかは、対応する沈殿箱の上縁に設けられ、集水箱のいずれかの水平方向の高さが対応する沈殿箱の水平方向の高さよりも低く、沈殿箱のいずれか及び集水箱のいずれかの下に計量装置が協力して設けられるモニタリングモジュールと、を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記モデルタンク内に土壌体法面が配置され、前記モデルタンクの前端に吊り上げ機構が協力して設けられ、前記モデルタンクの後端の底部がヒンジベースにヒンジ連結され、前記ヒンジベースは水平面に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の地滑りモデル試験装置。
【請求項3】
前記吊り上げ機構は水平面に配置されたホルダーを含み、前記ホルダーの上部にホイストが設けられ、前記ホイストは、吊り上げリングを介してモデルタンクの前端の吊り下げリングと協力して設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載の地滑りモデル試験装置。
【請求項4】
前記降雨シミュレーションユニットは、モデルタンクの上部に協力して設けられる複数のノズルを含み、すべての前記ノズルは取水管を介して給水端に接続される、ことを特徴とする請求項2に記載の地滑りモデル試験装置。
【請求項5】
前記流出導水タンク及び浸透流導水タンクは、それぞれ第1導流管を介してモニタリングモジュールと連携する、ことを特徴とする請求項2に記載の地滑りモデル試験装置。
【請求項6】
前記モニタリングモジュールは、
土壌体法面の内部に配設され、降雨時の斜面内の含水率及び間隙水圧の変化をモニタリングする複数のセンサと、
土壌体法面シミュレーションユニットの側部に設けられ、土壌体法面の形状の変化を記録する1つまたは複数のカメラと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の地滑りモデル試験装置。
【請求項7】
前記センサは、降雨時の土壌体法面の内部パラメータの変化を収集するための複数の間隙水圧センサ及び複数の含水率センサを含み、前記間隙水圧センサ及び含水率センサは、岩盤表面に垂直な方向に沿って土壌体法面内のさまざまな深さに埋設される、ことを特徴とする請求項6に記載の地滑りモデル試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地滑り災害モデル試験の技術分野に関し、特に複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地滑りとは、河川の浸食、地下水活動、雨水の浸入、地震や人工的な切土斜面などの要因によって斜面の岩石や土塊が重力の作用により、特定の弱い表面や弱い領域に沿って全体的にまたは分散して斜面に沿って滑り落ちる自然現象を指す。中でも、降雨による地滑りは最も一般的な地質災害であり、多くの場合、多大な死傷者や経済的損失を引き起こす。
【0003】
雨水が法面に作用すると、その一部は地表流出として流れるが、もう一部は土壌体に入り、地下流を形成する。さまざまな降雨量による斜面表面の流出及び斜面内の浸透流の流量、及び斜面内の土壌体の含水率や間隙水圧の変化を正確にモニタリングすることは、降雨時の斜面の水文学的応答メカニズム及び斜面の安定性へのその影響を理解する上で非常に重要である。屋内地滑りモデル試験は、降雨による地滑り変形・破壊メカニズムを研究する有効な手段であり、降雨による地滑りの防災・減災に大きな意義がある。
【0004】
しかしながら、屋内モデルでは、斜面の流出及び浸透流は、流量が少量であり、土や岩石などが混じっているため、従来の水流流量モニタリング手法が適していない。地滑りモデル試験における既存の流量モニタリングは主に手作業に依存しており、モニタリング時間間隔が長く、地滑り発生前後の斜面の水文学的応答の詳細な変化を正確に捉えることが困難である。さらに、従来技術における流量モニタリングの多くは流出と浸透流が混在しており、雨水の斜面表面での流出及び斜面内の浸透流の流量の動的な変化を区別していない。一方、降雨による地滑りが発生する前に、流出の流量と浸透流の流量が変化することが多く、降雨による地滑り誘発メカニズムを研究して分析するためのデータ参照を提供するように、これらを個別にモニタリングし、斜面内の含水率や間隙水圧の変化データや画像データなどと組み合わせる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する問題を解決するために、法面の流出及び浸透流の流量を自動的かつリアルタイムでモニタリングするとともに、斜面内の含水率、間隙水圧の変化や斜面形状の変化をモニタリングする複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用する技術的解決手段は以下の通りである。複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験装置は、
土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面のさまざまな傾きをシミュレーションする土壌体法面シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットと協力して設けられ、各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発する降雨シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットの最後に設けられ、降雨時の法面の流出と浸透流を分離する流出-浸透流分離ユニットと、
流出-浸透流分離ユニットと協力して設けられ、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングするモニタリングモジュールと、を含む。
【0007】
好ましくは、前記土壌体法面シミュレーションユニットはモデルタンクを含み、前記モデルタンク内に土壌体法面が配置され、前記モデルタンクの前端に吊り上げ機構が協力して設けられ、前記モデルタンクの後端の底部がヒンジベースにヒンジ連結され、前記ヒンジベースは水平面に配置される。
【0008】
好ましくは、前記吊り上げ機構は水平面に配置されたホルダーを含み、前記ホルダーの上部にホイストが設けられ、前記ホイストは、吊り上げリングを介してモデルタンクの前端の吊り下げリングと協力して設けられる。
【0009】
好ましくは、前記降雨シミュレーションユニットは、モデルタンクの上部に協力して設けられる複数のノズルを含み、すべての前記ノズルは取水管を介して給水端に接続される。
【0010】
好ましくは、前記流出-浸透流分離ユニットは、モデルタンクの最後に設けられたオリフィス板を含み、土壌体法面の上方に対応するオリフィス板の後に流出導水タンクが設けられ、土壌体法面の岩盤表面に対応するオリフィス板の後に浸透流導水タンクが設けられ、前記流出導水タンク及び浸透流導水タンクは、それぞれ第1導流管を介してモニタリングモジュールと連携する。
【0011】
好ましくは、前記モニタリングモジュールは、
流出-浸透流分離ユニットの最後に設けられ、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量の大きさをモニタリングする流量モニタリングユニットと、
土壌体法面の内部に配設され、降雨時の斜面内の含水率及び間隙水圧の変化をモニタリングする複数のセンサと、
土壌体法面シミュレーションユニットの側部に設けられ、土壌体法面の形状の変化を記録する1つまたは複数のカメラと、を含む。
【0012】
好ましくは、前記流量モニタリングユニットは、それぞれ流出導水タンク及び浸透流導水タンクに連通する2つの沈殿箱を含み、前記沈殿箱のいずれかは、それぞれ対応する第2導流管を介して対応する集水箱に接続され、沈殿箱のいずれか及び集水箱のいずれかの下に計量装置が協力して設けられ、集水箱の質量変化をリアルタイムでモニタリングし、法面の流出及び浸透流の流量を自動的かつリアルタイムでモニタリングすることを実現する。
【0013】
好ましくは、前記第2導流管のいずれかは、対応する沈殿箱の上縁に設けられ、集水箱のいずれかの水平方向の高さが対応する沈殿箱の水平方向の高さよりも低い。
【0014】
好ましくは、前記センサは、降雨時の土壌体法面の内部パラメータの変化を収集するための複数の間隙水圧センサ及び複数の含水率センサを含み、前記間隙水圧センサ及び含水率センサは、岩盤表面に垂直な方向に沿って土壌体法面内のさまざまな深さに埋設される。
【0015】
前記複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験装置による試験方法であって、土壌体法面シミュレーションユニットによって土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面のさまざまな傾きをシミュレーションし、降雨シミュレーションユニットによって各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発し、このプロセス中に流出-浸透流分離ユニットによって土壌体法面シミュレーションユニットにおける流出及び浸透流を分流し、モニタリングモジュールによって降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングし、多変数データに基づく共同分析により、降雨による地滑り変形・破壊メカニズムを取得する。
【0016】
本発明は、複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置を提供する。この方法は、土壌体法面シミュレーションユニットによって土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面のさまざまな傾きをシミュレーションし、降雨シミュレーションユニットと土壌体法面シミュレーションユニットとを組み合わせて設けることによって、各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発し、土壌体法面シミュレーションユニットの最後に設けられた流出-浸透流分離ユニットによって降雨時の法面の流出と浸透流を分離し、モニタリングモジュールと流出-浸透流分離ユニットとの連携により、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングし、流量の変化に基づいて、降雨による地滑り変形・破壊メカニズムを取得する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)降雨時の斜面表面の流出及び斜面内の浸透流を分離する。
(2)流出及び浸透流の流量を自動的かつリアルタイムでモニタリングし、また、間隙水圧、土壌体含水率などを含むがこれらに限定されない土壌斜面の内部パラメータの変化及び法面の形状の変化をリアルタイムでモニタリングし、降雨に対する法面の応答を多角度データから取得することができる。
(3)降雨時の斜面の水文学的応答メカニズムと斜面の安定性へのその影響を研究するためのデータ参照を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の構造の模式的な正面図である。
図2】本発明におけるオリフィス板の構造の模式的な正面図である。
図3】本発明におけるオリフィス板の構造の模式的な側面図である。
図4】本発明の全体を組み立てた構造の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を参照して本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではない。
【0020】
本発明は、複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験装置に関し、前記装置は、
土壌体法面1モデルを土盛りにより作成して法面1のさまざまな傾きをシミュレーションする土壌体法面シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットと協力して設けられ、各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発する降雨シミュレーションユニットと、
土壌体法面シミュレーションユニットの最後に設けられ、降雨時の法面1の流出と浸透流を分離する流出-浸透流分離ユニットと、
流出-浸透流分離ユニットと協力して設けられ、降雨時の法面1の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、及び法面1の形状の変化をモニタリングするモニタリングモジュールと、を含む。
【0021】
本発明では、土壌体法面シミュレーションユニットは、さまざまな傾きの土壌体法面1をシミュレーションすることができる。降雨シミュレーションユニットによる降雨シミュレーションが完了すると、シミュレーションした「雨水」が土壌体法面1に沿って下に流れたり、土壌体法面1の内部に浸透したりし、流出-浸透流分離ユニットによって流出及び浸透流が分離され、モニタリングモジュールによって流出及び浸透流のそれぞれの流量がモニタリングされる。
【0022】
本発明では、水の流れの方向を正、開始位置を「前」とする。
【0023】
前記土壌体法面シミュレーションユニットはモデルタンク2を含み、前記モデルタンク2内に土壌体法面1が配置され、前記モデルタンク2の前端に吊り上げ機構が協力して設けられ、前記モデルタンク2の後端の底部がヒンジベース3にヒンジ連結され、前記ヒンジベース3は水平面に配置される。
【0024】
前記吊り上げ機構は水平面に配置されたホルダー4を含み、前記ホルダー4の上部にホイスト5が設けられ、前記ホイスト5は、吊り上げリング51を介してモデルタンク2の前端の吊り下げリング21と協力して設けられる。
【0025】
本発明では、モデルタンク2は底板を含み、底板の上には前側板、左側板、及び右側板が設けられ、後側板がない。降雨シミュレーションユニットによる降雨シミュレーションを容易にするために、底板の下に4本の脚22が設けられるのが一般的であり、モデルタンク2の後端の脚22はヒンジベース3のトップにヒンジ連結され、それにより、モデルタンク2の底板は地面から一定の高さだけ離れるようになり、また、モデルタンク2の前端に吊り上げ機構のホルダー4が配置される。ホルダー4は一般にはガントリであり、ガントリはホイスト5を介して吊り下げリング21を吊り下げ、モデルタンク2の前端の高さを変えることで、モデルタンク2の傾斜角度、すなわち、土壌体法面1の傾斜角度を調整する。
【0026】
本発明では、モデルタンク2本体は、12本の鋼管を溶接してなる直方体のスチールフレームの構造であり、底端は鋼材を底板とし、積み上げられた土壌斜面の勾配がフレームの長辺に沿って変化し、左側板及び右側板は、一般には、強化ガラスをスチールフレームの内側に接続してなり、前側板は、鋼板をフレームに一体に溶接してなることで、全体の強度及び剛性を確保する。
【0027】
前記降雨シミュレーションユニットは、モデルタンク2の上部に協力して設けられる複数のノズル6を含み、すべての前記ノズル6は取水管を介して給水端8に接続される。
【0028】
本発明では、給水端8は、貯水箱及び/又は市水を含むが、これらに限定されるものではなく、給水端8と協力して設けられる流量測定機構又は電子計量装置、特に電子計量装置(例えば、計量装置18)が貯水箱の下に設けられて、貯水箱の質量変化をリアルタイムでモニタリングして、リアルタイムな降雨強度を得る。
【0029】
本発明では、ノズル6を給水端8に連通しやすくするには、取水管は、接続された剛性管71及び可撓性管72を含み、剛性管71と給水端8との間に揚水ポンプ9が協力して設けられ、4本の可撓性管72は互いに独立しており、1入口4出口分岐弁によって剛性管71に接続され、4本の可撓性管72は、それぞれ2、4、8、8個のノズル6が設けられている。可撓性管72に給水する場合、単一のノズル6が噴出する水の流量が一定に保持され、4本の可撓性管72への給水の有無の組み合わせにより、噴水ノズル6の数がそれぞれ2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22個である、合計11種類の状況が得られ、これらは11種類の降雨強度に対応する。各可撓性管72に接続されるノズル6が斜面の上にできるだけ均等に配置され、それにより、11種類の降雨強度の場合の斜面に対して降雨が均一に行われることを確保する。
【0030】
前記流出-浸透流分離ユニットは、モデルタンク2の最後に設けられたオリフィス板10を含み、土壌体法面1の上方に対応するオリフィス板10の後に流出導水タンク11が設けられ、土壌体法面1の岩盤表面に対応するオリフィス板10の後に浸透流導水タンク12が設けられる。
【0031】
前記流出導水タンク11及び浸透流導水タンク12は、それぞれ第1導流管13を介してモニタリングモジュールと連携する。
【0032】
本発明では、流出導水タンク11は、土壌斜面の盛土高さに対応する位置にあり、降雨時の法面1で発生する地表流出を収集するものであり、浸透流導水タンク12は、オリフィス板10の下部に設けられ、降雨時のオリフィス板10を介して土壌斜面の内部に浸透する浸透流の水を収集するものである。2本の第1導流管13は、それぞれ流出導水タンク11及び浸透流導水タンク12の出水口に設けられ、法面1の流出及び浸透流を排水するものである。
【0033】
前記モニタリングモジュールは、
流出-浸透流分離ユニットの最後に設けられ、降雨時の法面1の流出及び浸透流の流量の大きさをモニタリングする流量モニタリングユニットと、
土壌体法面1の内部に配設され、降雨時の斜面内の含水率及び間隙水圧の変化をモニタリングする複数のセンサと、
土壌体法面シミュレーションユニットの側部に設けられ、土壌体法面1の形状の変化を記録する1つまたは複数のカメラ14と、を含む。
【0034】
前記流量モニタリングユニットは、それぞれ流出導水タンク11及び浸透流導水タンク12に連通する2つの沈殿箱15を含み、前記沈殿箱15のいずれかは、それぞれ対応する第2導流管16を介して対応する集水箱17に接続され、沈殿箱15のいずれかおよび集水箱17のいずれかの下に計量装置18が協力して設けられる。
【0035】
前記第2導流管16のいずれか一方は、対応する沈殿箱15の上縁に設けられ、集水箱17のいずれか一方の水平方向の高さが対応する沈殿箱15の水平方向の高さよりも低い。
【0036】
前記センサは、降雨時の土壌体法面1の内部パラメータの変化を収集するための複数の間隙水圧センサ19及び複数の含水率センサ20を含み、前記間隙水圧センサ19及び含水率センサ20は、岩盤表面に垂直な方向に沿って土壌体法面1内のさまざまな深さに埋設される。
【0037】
本発明では、沈殿箱15は、土砂沈殿箱であり、オーバーフロー口を有する蓋のない長方形のプラスチックの箱であり、それぞれ、対応する流出導水タンク11及び浸透流導水タンク12の出水口に近い箇所に設けられる。試験にわたって、土砂沈殿箱は常に水で満たされた状態に保たれ、流出導水タンク11及び浸透流導水タンク12からの排水は、対応する第1導流管13を通じて小粒子(メッシュよりも小さい)沈殿箱15内に排水され、水流によって運び出された土砂は自重により沈殿箱15の底部に堆積される。
【0038】
本発明では、沈殿箱15を通過する水流は、オーバーフロー口を通ってオーバーフローし、対応する第2導流管16を通って対応する集水箱17内に排水され、このように、水と土を分離する目的が達成される。実施中において、集水箱17には、集水箱17の排水を制御するための排水弁23が配置されてもよい。
【0039】
本発明では、計量装置18は、集水箱17及び給水端8の質量変化をリアルタイムでモニタリングすることで、流出や浸透流の流量と降雨強度を自動的かつリアルタイムでモニタリングする。
【0040】
本発明では、間隙水圧センサ19及び含水率センサ20は、岩盤表面に垂直な方向に沿って土壌体法面1内の各種の深さに埋設され、土壌斜面パラメータを収集するものであるが、もちろん、実際に使用するときに、土壌斜面パラメータは、間隙水圧、土壌体含水率などの土壌斜面の内部パラメータを含むが、これらに限定されるものではなく、当業者がさらに追加してもよい。
【0041】
本発明では、カメラ14は一般には2つあり、それぞれ土壌体法面シミュレーションユニットのモデル箱の左側と右側の一方と前側に設けられる。
【0042】
本発明はまた、前記複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験装置による試験方法に関し、前記方法は、土壌体法面シミュレーションユニットによって土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面のさまざまな傾きをシミュレーションし、降雨シミュレーションユニットによって各種の強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発し、このプロセス中に流出-浸透流分離ユニットによって土壌体法面シミュレーションユニットにおける流出及び浸透流を分流し、モニタリングモジュールによって降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングし、多変数データに基づく共同分析により、降雨による地滑り変形・破壊メカニズムを取得する。
【0043】
本発明では、まず、流出及び浸透流を分流し、分流後、浸透流及び流出を個別の集水箱17に入れ、集水箱17の下に設けられた電子秤によって重力データをリアルタイムで読み取り、重力データのリアルタイムな変化は、流出及び浸透流の流量のリアルタイムな動的変化であり、すなわち、重力変化が速いほど、流量が大きく、それにより、リアルタイムな流量が定量化される。モニタリングの連続性を確保するために、浸透流及び流出の集水装置及び重量計測装置は、それぞれ平行する2つ設けられてもよく、2つのユニットは交互に集水を行うことにより、モニタリングが連続的に行われる。本装置によれば、手動によるリアルタイムなモニタリングに依存せずに、浸透流及び流出のそれぞれの流量の変化を取得することができる。
【0044】
本発明の実施例を示して説明したが、当業者であれば、本発明の原理及び精神から逸脱することなく、これらの実施例に対して様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその等価物によって限定される。
【要約】      (修正有)
【課題】複数の変数を同期的にモニタリングする地滑りモデル試験方法及び装置を提供する。
【解決手段】土壌体法面シミュレーションユニットは、土壌体法面モデルを土盛りにより作成して法面の各種の傾きをシミュレーションし、降雨シミュレーションユニットは、さまざまな強度の降雨をシミュレーションして地滑りを誘発し、流出-浸透流分離ユニットは、降雨時の法面の流出と浸透流を分離し、モニタリングモジュールは、降雨時の法面の流出及び浸透流の流量、斜面内の含水率と間隙水圧の変化、並びに法面の形状の変化をモニタリングし、流量の変化に基づいて降雨による地滑り変形・破壊メカニズムを取得することにより、降雨時の斜面表面の流出と斜面内の浸透流を分離し、流出及び浸透流の流量を自動的かつリアルタイムでモニタリングする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4