(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】流路部が形成された鋳造品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20250117BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20250117BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20250117BHJP
B22C 3/00 20060101ALI20250117BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20250117BHJP
B22D 18/02 20060101ALI20250117BHJP
B22D 29/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B22D19/00 A
B22C9/10 E
B22C9/10 S
B22C1/00 B
B22C1/00 C
B22C3/00 A
B22C3/00 H
B22D17/22 H
B22D18/02 T
B22D29/00 F
(21)【出願番号】P 2019210563
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0013003
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 永 來
(72)【発明者】
【氏名】朱 孝 文
(72)【発明者】
【氏名】金 ミン 秀
(72)【発明者】
【氏名】李 知 容
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-052165(JP,A)
【文献】特開平02-092447(JP,A)
【文献】特開2010-131612(JP,A)
【文献】特開2013-202636(JP,A)
【文献】特開平06-320252(JP,A)
【文献】特開昭60-170564(JP,A)
【文献】特開平10-099960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B22C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状パイプの内部に充填材が満たされたスマートコアを製造するステップと、
製造する鋳造品の形状に対応するキャビティが形成された金型内に前記スマートコアを挿入するステップと、
前記キャビティに溶湯を注入して鋳造するステップと、
前記スマートコア内の充填材を除去するステップと、を含み、
前記鋳造するステップは、高圧鋳造工法により、
前記スマートコアを製造するステップは、
前記管状パイプの内部に充填材を満たすステップと、
前記充填材が満たされた管状パイプを引抜および押出するステップと、
前記管状パイプを前記鋳造品に形成させる流路部の形状に対応してベンディング(bending)するステップと、を含むことを特徴とする流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項2】
前記管状パイプの延伸率は、15%以上であることを特徴とする請求項1に記載の流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項3】
前記充填材の粒子サイズは、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項4】
前記充填材の熱伝導度は、0.1~1W/m・℃であることを特徴とする請求項
3に記載の流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項5】
前記溶湯および前記管状パイプの材質は、同種の材質であることを特徴とする請求項1に記載の流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項6】
管状パイプの内部に充填材が満たされたスマートコアを製造するステップと、
製造する鋳造品の形状に対応するキャビティが形成された金型内に前記スマートコアを挿入するステップと、
前記キャビティに溶湯を注入して鋳造するステップと、
前記スマートコア内の充填材を除去するステップと、を含み、
前記鋳造するステップは、高圧鋳造工法により、
前記管状パイプは、アルミニウム材質であることを特徴とする流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【請求項7】
前記管状パイプの厚さは、1.25mm以上4mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の流路部が形成された鋳造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部が形成された鋳造品の製造方法およびその方法により製造される鋳造品に係り、より詳しくは、内部に流路部が形成された鋳造品を製造するための方法およびそれによる鋳造品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気車、ハイブリッド車両などの開発が活発化するにつれ、既存のエンジン/変速器などの内燃機関が、駆動モータとインバータ、コンバータのような各種電力変換部品に代替されている。
このような電力変換部品は、電気を充電し使用する電力を変換する過程で、既存の部品に比べてより多くの熱を発生させる。
そのため、熱を多く発生させる他の部品もそうであるが、このような電力変換部品には、冷却のための流路が必須として求められる。
鋳造によって製造される部品に流路を形成するために、従来は、
図1に示すように、2つの部品を別に流路が形成されるように鋳造によって作り、ボルト3などによって結合し、結合面の気密のためにガスケット2を挿入して、結合によって流路部4が形成された鋳造品1を製造する。
【0003】
このような既存の方式は、2pieceで製造および機械的結合をしなければならない複雑な過程によるのはもちろん、鋳造品の内部に欠陥がありガスケットが損傷してリーク(leak)が発生すると、電力半導体に水が浸透する恐れがあり、その場合、システムfailはもちろん、車両に火災を発生させることもあって、電力変換部品の流路部をより堅牢化する技術の開発も求められている。
以上の背景技術に記載の事項は、発明の背景に対する理解のためのものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国 公開 公報 10-2000-0017994 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであって、本発明は、より経済的に製造することができ、内部の流路部をより堅牢化して製造できる流路部が形成された鋳造品の製造方法およびその方法により製造される鋳造品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流路部が形成された鋳造品の製造方法は、管状パイプの内部に充填材が満たされたスマートコアを製造するステップと、製造する鋳造品の形状に対応するキャビティが形成された金型内に前記スマートコアを挿入するステップと、前記キャビティに溶湯を注入して鋳造するステップと、前記スマートコア内の充填材を除去するステップとを含み、前記管状パイプの硬度は、70Hv以上であることを特徴とする。
【0007】
前記鋳造するステップは、高圧鋳造工法によることを特徴とする。
【0008】
前記管状パイプの延伸率は、15%以上であることを特徴とする。
【0009】
前記充填材の粒子サイズは、100μm以下であることを特徴とする。
【0010】
前記充填材の熱伝導度は、0.1~1W/m・℃であることを特徴とする。
【0011】
また、前記スマートコアを製造するステップは、前記管状パイプの内部に充填材を満たすステップと、前記充填材が満たされた管状パイプを引抜および押出するステップと、前記管状パイプを前記鋳造品に形成させる流路部の形状に対応してベンディング(bending)するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
前記溶湯および前記管状パイプの材質は、同種の材質であることを特徴とする。
【0013】
前記管状パイプは、アルミニウム材質であり、
前記管状パイプの厚さは、1.25mm以上4mm未満であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の流路部が形成された鋳造品の製造方法は、管状パイプの内部に充填材が満たされたスマートコアを製造するステップと、製造する鋳造品の形状に対応するキャビティが形成された金型内に前記スマートコアを挿入するステップと、前記キャビティに溶湯を注入して鋳造するステップと、前記スマートコア内の充填材を除去するステップとを含み、前記充填材の粒子サイズは、100μm以下であることを特徴とする。
【0015】
前記充填材の材質は、シリカ系であることを特徴とする。
【0016】
前記充填材の熱伝導度は、0.1~1W/m・℃であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の鋳造品は、流路部形状の管状パイプが挿入されて一体に鋳造され、前記管状パイプの硬度は、70Hv以上であることを特徴とする。
【0018】
前記溶湯および前記管状パイプの材質は、同種の材質であることを特徴とする。
【0019】
前記管状パイプは、アルミニウム材質であることを特徴とする。
【0020】
前記管状パイプの厚さは、1.25mm以上4mm未満であることを特徴とする。
【0021】
前記管状パイプは、ベンディング(bending)された流路部の形状を有し、前記管状パイプの延伸率は、15%以上であることを特徴とする。
【0022】
前記管状パイプと鋳造品との接合界面は、30μm以内に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の流路部が形成された鋳造品の製造方法によれば、既存のような2pieceで製造する代わりに、スマートコアによって1pieceで一体鋳造するため、より経済的である。
また、電力変換部品をはじめとして内部に流路部が形成される部品の流路部を、既存に比べて堅牢化することができて、車両火災などの危険を予め防止することができる。
そして、管状パイプおよび充填材の材質を考慮することにより、流路部内の残留物などによる鋳造品不良を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来の流路部が形成された鋳造品を製造する方式を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る流路部が形成された鋳造品の製造方法を示す図である。
【
図3】本発明により製造された鋳造品の断面形状と、比較例による断面形状を示す図である。
【
図4】一実施形態の鋳造品の製造方法による充填材除去前の管状パイプを示す図である。
【
図5】Aは
図4の管状パイプ内の充填材除去時の問題を示す図である。Bは
図4の管状パイプ内の充填材除去時の問題を示す図である。
【
図6】Aは
図4とは異なる一実施形態の鋳造品の製造方法による充填材除去前の管状パイプを示す図である。Bは
図6Aの管状パイプ内の充填材除去後の管状パイプを示す図である。
【
図7】Aは充填材除去後の管状パイプの比較例を示す図である。Bは充填材除去後の管状パイプの比較例を示す図である。Cは充填材除去後の管状パイプの比較例を示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態の鋳造品の製造方法による鋳造品を示す図である。
【
図9】管状パイプの厚さと熱伝導効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明と本発明の動作上の利点および本発明の実施により達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好ましい実施例を例示する添付図面および添付図面に記載の内容を参照しなければならない。
本発明の好ましい実施例を説明するにあたり、本発明の要旨を不必要にあいまいにしうる公知の技術や繰り返しの説明はその説明を縮小または省略する。
図2は、本発明に係る流路部が形成された鋳造品の製造方法を示すものであって、以下、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る流路部が形成された鋳造品の製造方法およびその方法により製造される鋳造品を説明する。
本発明は、従来とは異なり、流路部が形成された鋳造品を、いわゆるスマートコアを用いて1pieceで一体鋳造製造して、流路部の堅牢性を確保しながらより経済的な製造方法を提示する。
そのため、本発明の製造方法は、流路(flow passage)になる管状パイプを準備する。
図にはアルミニウムパイプを例として記載したが、本発明において、管状パイプは、アルミニウムパイプに限らず、これについては後述する。
【0026】
ただし、製造しようとする鋳造品がアルミニウム素材の場合には、アルミニウムパイプを適用することがより好ましい。
そして、管状パイプの内部にフィーダ(feeder)を用いて充填材を最小80%程度満たす。
このような充填材は最終ステップで除去させるが、本発明は、流路部が形成された鋳造品を1pieceで一体鋳造製造するが、充填材を管状パイプに満たすことは、流路部形成のための管状パイプが高圧鋳造の鋳造圧力に耐えられるようにするためである。
次に、このように充填材が満たされた管状パイプを引抜および押出によって断面積を縮小し長手方向に伸ばすことにより、内部の充填材が最小95%程度密になるようにする(compaction)。
また、管状パイプの両端にはレジン(resin)などを満たすことにより、内部の充填材が漏れないようにすることができる。
そして、管状パイプの両端にレジンを満たした場合には、この後、充填材の除去前に、レジンが満たされた管状パイプ部分を切断した後、充填材を除去する。
【0027】
その後、鋳造品に形成させる流路部の実形状に合わせてベンディング(bending)することにより、管状パイプ11の内部に充填材12が充填されたスマートコアを完成する。
本発明は、屈曲のある流路部が形成される鋳造品にさらに好ましいが、そうでない流路部のための鋳造品の製造にも適用可能であることはもちろんである。
本発明は、以上のように製造されたスマートコアを製品形状に製造された金型内に挿入(insert)した後、鋳造(die casting)することにより、製造しようとする鋳造品31の形状を実現する。
本発明におけるスマートコアは、流路部形成のための管状パイプに充填材を密化して満たされたため、高圧鋳造による高圧で注入される溶湯によっても変形なく鋳造可能にする。
そして、製造しようとする鋳造品の材質によって、管状パイプの材質は、異なって適用することができる。
【0028】
特に、溶湯がアルミニウムで適用される場合には、管状パイプもアルミニウムパイプで製作することにより、インサート後、鋳造されることによって、管状パイプは、鋳造品内に一体に接合され、アルミニウムによって熱伝導がより良く行われて冷却性能をより高めることができる。接合界面は、30μm以内に接合され、より好ましくは、界面なしに接合される。
すなわち、管状パイプと溶湯は、同種の材質、特にアルミニウム材質であってもよいが、これは、合金の主成分(base material)が同種であることを意味し、合金を構成する細部構成は、やや異なっていてもよい。
もし、アルミニウム材質の部品を高圧鋳造して鋳造品を製造するに際して、本発明のスマートコアにスチール素材の管状パイプを適用するならば、高圧鋳造時にも圧着は発生しないが、アルミニウムと300~500μmの界面を形成して熱伝達効率が低下するしかない。
【0029】
しかし、鋳造しようとする目的によって、管状パイプと溶湯が同種ではない材質にも本発明が適用され、高圧鋳造によって堅牢な流路部が形成されるようにすることができる。
また、
図3のように、本発明により製造された鋳造品31の場合とは異なり、充填材のないアルミニウム素材の管状パイプ20の場合には、高圧鋳造時、図示のように圧着されることにより、正常な鋳造品を製造することができない。
以上の鋳造を終えると、エア(air)などの手段を用いてスマートコア内に充填された充填材を除去させることにより、製造しようとする鋳造品の形状に製造するが、充填材の除去は、使用された充填材によって異なっていてもよい。
すなわち、充填材がソルトのように結晶化されるパーティクルの場合には、管状パイプに200bar以上のウォータージェットによる物理的除去が好ましい。
そして、充填材が砂のように結晶化されていないパーティクルの場合には、管状パイプに200bar以上のウォータージェットまたは2bar以上のエアを注入して除去することができる。
【0030】
また、充填材として砂とレジンとの混合された固溶砂が全体または部分的に使用された場合には、400℃以上の熱処理により固溶砂に含まれているレジンを燃やした後、200bar以上のウォータージェットまたは2bar以上のエアを注入して除去することができる。
ただし、本発明の鋳造品の製造方法は、スマートコアが高圧の鋳造工程に変形があってはならないことはもちろん、流路部に充填材による残滓が残って鋳造品不良をもたらしうることを予め防止することも目的とすることから、そのために、より具体的な条件による管状パイプおよび充填材を適用することができる。
【0031】
すなわち、
図4のように、管状パイプ11および充填材12が高温および高圧環境を経た後、充填材の除去時、
図5Aのように、管状パイプ11の内部に充填材が残留し、
図5Bのように、管状パイプ11の内部の充填材が粉砕されないことが発生する恐れがある。
充填材が残留する場合は、高温高圧の鋳造環境によって管状パイプ11に充填材が打ち込まれて残留する場合であり、充填材が粉砕されない場合は、一部の充填材が結晶化されて粉砕が困難になる場合である。
これを解消するために、本発明の他の実施形態では、
図6Aのように、管状パイプ11-1の強度をより高めて適用するか、充填材12-1の材質をかたまることなくソフト(soft)な材質に選定することにより、
図6Bのように、充填材の除去後、流路部Pに圧着や残留が発生しないようにする。
【0032】
まず、本発明のための管状パイプは、高圧鋳造時、高圧の鋳造圧に耐えられない管状パイプを対象にし、そのような高圧の鋳造圧に耐えられない管状パイプが高圧鋳造時に高圧の鋳造圧に耐えることにより、鋳造品の流路部を堅牢に製造できるようにする。
通常の高圧鋳造の鋳造圧は60MPa以上とするので、本発明の管状パイプは、金型にインサートされた状態で、60MPa以上の鋳造圧による鋳造時、形態の変形が発生する材質および諸元を有する管状パイプにより好ましく適用される。
アルミニウム材質の管状パイプは、60MPa以上の鋳造圧による鋳造時、形態の変形が発生する管状パイプの一例とすれば良い。表1では、アルミニウム管状パイプの場合、追加の熱処理などによって60MPa以上の鋳造圧に耐えられる硬度であるか否か、およびベンディングのための延伸率、そして充填材が残留するか否かを確認した。
ここで、充填材は、100μmの大きさの砂が使用された。
【0033】
【0034】
表1にて、A6061、A6063は、アルミニウム素材を表し、T4、T6は、熱処理の種類を表す。
そして、充填材が残留する場合を○と表し、残留しない場合を×と表した。
また、ベンディングの程度によって、○は良好、◎は非常に良好、△は普通と表したものである。
充填材除去ステップを経た後にも充填材を残留させないためには、管状パイプの硬度が高いことが好ましい。
したがって、アルミニウム材質の場合に、A6061-T4、A6063-T4のように硬度70Hv以上であってこそ、高圧鋳造時、高圧の鋳造圧に耐えることはもちろん、充填材の残留も防止することができる。
反面、硬度が高ければベンディング性は低下することから、ベンディングが必要な管状パイプの場合には、硬度のほか、延伸率も考慮されなければならない。
A6061-T6、A6063-T6のように硬度が高すぎると、延伸率は低くてベンディング性が良くないことが分かる。
したがって、必要であれば、延伸率は15%以上であることがより好ましい。
【0035】
そのため、本発明の他の実施形態に係るスマートコアの管状パイプは、硬度70Hv以上、延伸率15%以上であることが好ましく、表1から参照されるように、A6061-T4またはA6063-T4であってもよい。
前記条件は、管状パイプの素材と熱処理の条件によって満足させることができることから、A6061-T4、A6063-T4のほか、A2024-T3またはA7075-T4を適用することもできる。
以上の管状パイプの条件によって充填材の除去時に充填材の残留を防止することができるが、充填材の条件も考慮することにより、充填材の残留防止効果をより極大化することができる。
すなわち、充填材が管状パイプに圧着されて残留しないためには、充填材の大きさが100μm以下であることが好ましい。
【0036】
また、アルミニウム合金材質などの管状パイプとの反応性がなければより好ましい。
充填材の粒子サイズがこれより大きいか、管状パイプと反応性がある場合には、管状パイプの内部で圧力によってディンプル(dimple)形状を作り圧着されて残留することがある。
また、充填材の熱伝導度が大きい場合には、溶湯の温度によって充填材の温度が昇温して溶けたり変形しうるので、充填材の熱伝導度は、一定の範囲内であることがより好ましい。
すなわち、熱伝導度は、0.1~1W/m・℃であることがより好ましい。
本発明における充填材は、以上の粒子サイズ、反応性および熱伝導度を満足し、充填後に除去が可能ないかなる物質も適用可能である。
そのような充填材の例として、好ましくは、砂、シリカ系の物質であってもよく、より好ましくは、粒子がさらに小さいシリカ系の物質であってもよい。
以上のような充填材に対する好ましい条件とは異なる条件の比較例を表2にまとめており、Case1の結果は
図7A、Case2の結果は
図7B、Case3の結果は
図7Cの通りである。そして、表2の充填材実験に適用されたパイプは、A6063-T4に相当する。
【0037】
【表2】
図7Aのように、化学反応性、熱伝導度は条件を満足するものの、粉末サイズが100μm以下の条件を上回る場合には、管状パイプの内部に充填材が圧着される結果が現れる。
図7Bのように、熱伝導度、粉末サイズは条件を満足するものの、分子間結合が発生する場合には、管状パイプ内部の充填材の取り出しが不可能な結果が現れる。
図7Cのように、化学反応性、粉末サイズは条件を満足するものの、熱伝導度が0.1~1W/m・℃の条件を満足しない場合には、充填材が溶融することにより、管状パイプの変形が発生する結果が現れる。
これとは異なり、一例として、A6063-T4素材の管状パイプに、化学反応性がなく、熱伝導度が0.2W/m・℃、粉末サイズが10~40μmのシリカ系充填材を充填した
図8の本発明の鋳造品32では、流路部P内に充填材の残留、圧着が全くなく、流路部Pの変形が全く発生しないことを確認することができる。
【0038】
このように、本発明により製造された鋳造品は、スマートコアの形状通りに流路部が内部に形成され、1pieceで1回の鋳造工程によって製造することができる。
それによって、鋳造品に形成された流路部の堅牢化およびコスト低減が可能になる。
さらに、本発明のスマートコアの管状パイプがアルミニウム材質の場合には、高圧鋳造時にインサートされるため、その厚さ(t)が最小1.25mmに限定される必要がある。
厚さが1.25mm未満の場合には、鋳造時、600℃以上のアルミニウム溶湯に溶けることがある。
一般的に、ダイカスト工法において、平均的な部品製造時間は45~100秒になり、この時間の80%に相当する時間が製品を冷却させるのに費やされる。
【0039】
すなわち、660~680℃の熱い溶湯がパイプと接して200~250℃に冷却するまで約35~80秒程度かかる。この時、パイプは高温の溶湯に耐えなければならないが、厚さが1.25mm未満の場合には、溶湯によって局部的に溶融してパイプの機能を失うことがある。
したがって、高圧鋳造工法に用いられる本発明のスマートコアのパイプの厚さは、最小1.25mmであることが好ましい。
そして、
図4に示す通り、パイプの厚さが4mm以上では熱伝導効率が50W/(m・K)未満に低下するため、熱伝導効率上不利でありうるので、パイプの厚さは、4mm未満であることがより好ましい。
【0040】
以上のような本発明は、例示された図面を参照して説明されたが、記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想および範囲を逸脱することなく多様に修正および変形できることは、この技術分野における通常の知識を有する者に自明である。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の特許請求の範囲に属するというべきであり、本発明の権利範囲は、添付した特許請求の範囲に基づいて解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0041】
11、11-1:管状パイプ
12、12-1:充填材
31、32:鋳造品