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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】接合体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20250117BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20250117BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250117BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20250117BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H05B3/02 B
H05B3/74
H01L21/68 N
C04B37/02 B
H01R4/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020138527
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034701
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴道
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113667(JP,A)
【文献】特開平10-273371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
H05B 3/74
H01L 21/683
C04B 37/02
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合体であって、
受電電極を有するセラミックス部材と、
導電性を有する金属端子と、
前記セラミックス部材と前記金属端子との間に配置される応力緩和部と、
を備え、
前記応力緩和部は、
第1面において、ろう材を介して前記受電電極に接合されると共に、前記第1面に接続していない第2面において、ろう材を介して前記金属端子に接合される本体部であって、W(タングステン)を主成分とし、結合相としてNi(ニッケル)と、Fe(鉄)と、Cu(銅)とを少なくとも一種類含むタングステン基焼結合金で形成される本体部と、
前記第1面と前記第2面とを接続する前記本体部の側面を被覆する酸化物保護膜と、
を有し、
前記酸化物保護膜の厚さが100nm以上かつ1000nm以下である、
ことを特徴とする、接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の接合体であって、
前記酸化物保護膜は、Cr,Ti,Zr,Hf,Nb,Al,V,Taの酸化物を1種類以上含むことを特徴とする、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際に使用され、支持した半導体ウェハーを加熱するための給電パッドを備えるセラミック基板構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたセラミック基板構造体は、セラミック基体に埋設された給電パッドと、電源に接続されて電力を供給するための給電端子と、の間に配置され、給電パッドと給電端子とを電気的に接続する緩衝部材を備えている。この緩衝部材は、外周面全面が金属により被膜されており、この金属が給電パッドよりも先に酸化することにより、給電パッドの酸化を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-165126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、緩衝部材の接合面と側面とが同じ部材で構成されているため、ろう材が接合面とは異なる側面に回り込んでしまう場合がある。このような場合、接合面のろう材が不足して、給電パッドと緩衝部材との接合強度が低下する。また、緩衝部材を被膜する金属が酸化していると、ろう材が酸化被膜を介して緩衝部材と接合される。このような場合、金属である緩衝部材と金属であるろう材の接合であるにも関わらず、緩衝部材とろう材との間の酸化被膜により緩衝部材とろう材との接合強度が低下する。そのため、特許文献1に記載のセラミック基板構造体において、給電パッドと緩衝部材との接合部における接合強度を向上させることが望まれていた。なお、セラミック基板構造体は接合体とも呼ばれ、緩衝部材は応力緩和部とも呼ばれ、給電パッドは受電電極とも呼ばれる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、接合部の接合強度を向上させた接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。接合体であって、受電電極を有するセラミックス部材と、導電性を有する金属端子と、前記セラミックス部材と前記金属端子との間に配置される応力緩和部と、を備え、前記応力緩和部は、第1面において、ろう材を介して前記受電電極に接合されると共に、前記第1面に接続していない第2面において、ろう材を介して前記金属端子に接合される本体部であって、W(タングステン)を主成分とし、結合相としてNi(ニッケル)と、Fe(鉄)と、Cu(銅)とを少なくとも一種類含むタングステン基焼結合金で形成される本体部と、前記第1面と前記第2面とを接続する前記本体部の側面を被覆する酸化物保護膜と、を有し、前記酸化物保護膜の厚さが100nm以上かつ1000nm以下である、ことを特徴とする、接合体。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、接合体が提供される。この接合体は、受電電極を有するセラミックス部材と、導電性を有する金属端子と、前記セラミックス部材と前記金属端子との間に配置される応力緩和部と、を備え、前記応力緩和部は、第1面において、ろう材を介して前記受電電極に接合されると共に、前記第1面に接続していない第2面において、ろう材を介して前記金属端子に接合される本体部と、前記第1面と前記第2面とを接続する前記本体部の側面を被覆する酸化物保護膜と、を有する。
【0008】
この構成によれば、受電電極と金属端子との間に応力緩和部が装填されることにより、受電電極と金属端子との材質の違いに起因する熱膨張率の差によって生じる熱応力を減衰させることができる。また、本構成の接合体では、本体部の側面は、酸化物保護膜により被覆されている。これにより、ろう材が応力緩和部の側面にはい上がることが抑制され、この結果、はい上がりによる接合面でのろう材の減少によって生じる接合強度の低下を抑制できる。さらに、酸化物保護膜は、受電電極と本体部との接合部、および、本体部と金属端子との接合部には形成されていない。つまり、本体部とろう材とは酸化物保護膜を介することなく接合しているため、金属である本体部とろう材との間には接合強度の低下を引き起こす可能性がある酸化物保護膜がない。これにより、本体部とろう材との接合強度を確保することができる。すなわち、本構成の接合体によれば、本体部の酸化を抑制した上で、応力緩和部と受電電極との接合部、および、応力緩和部と金属端子との接合部の接合強度を向上させることができる。
【0009】
(2)上記態様の接合体において、前記酸化物保護膜は、Cr,Ti,Zr,Hf,Nb,Al,V,Taの酸化物を1種類以上含んでいてもよい。
この構成によれば、酸化物保護膜が高温環境でも比較的安定であるため接合体の高温耐久性が向上する。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、接合体、基板保持装置、半導体製造装置、セラミックスヒータ、およびこれらを備える部品、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態としての接合体を備える基板保持部材の概略断面図である。
図2】受電電極と第2給電ロッドとの接合についての説明図である。
図3】応力緩和部の保護膜が異なる接合体の実施例1~8および比較例1~3の評価試験結果について説明図である。
図4】接合体の製造方法のフローチャートである。
図5】セラミックス部材の製造方法のフローチャートである。
図6】応力緩和部の製造方法のフローチャートである。
図7】変形例の応力緩和部および保護膜についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態としての接合体10を備える基板保持部材100の概略断面図である。基板保持部材100は、プラズマエッチングやイオン注入、電子ビーム露光等を行う半導体製造装置の一部である。基板保持部材100は、半導体ウェハーW(以下、単に「ウェハーW」とも呼ぶ)の固定・平面度矯正・搬送等を行い、かつ、ウェハーWを所定の温度に加熱する加熱装置として利用される。
【0013】
図1に示されるように、基板保持部材100は、載置面10FでウェハーWを保持する接合体10と、接合体10の載置面10Fの反対側に接続されている中空のシャフト20と、を備えている。接合体10は、セラミックスを含む受電電極(図1では不図示)を有するセラミックス部材11と、セラミックス部材11内に配置された抵抗発熱体13と、受電電極12に電力を供給するための導電性の第2給電ロッド(金属端子)15と、を備えている。
【0014】
セラミックス部材11は、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、YAG、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、イットリア、スピネル、ムライト、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムといったセラミックスにより形成されている。受電電極は、W(タングステン)とセラミックスとで形成されている。抵抗発熱体13は、ビア導体(図1では不図示)と受電電極と第2給電ロッド15とを介して電力が供給され、接合体10が保持しているウェハーWを加熱するためのヒータ電極として機能する。図1では分割して示されている抵抗発熱体13は、電気的に直列に接続されている。なお、図1に示される矩形状の抵抗発熱体13は、簡略化されて示されたものである。
【0015】
第2給電ロッド15は、シャフト20内に配置されて、一端が抵抗発熱体13に接続されて、他端が図示されていないヒータ電源に接続されている。なお、図1では、第2給電ロッド15と抵抗発熱体13との接続の詳細について図示されていないが、接続の詳細については、受電電極およびビア導体の形状も合わせて、図2と共に説明する。
【0016】
図2は、受電電極12と第2給電ロッド15との接合についての説明図である。図2には、図1のX1部を拡大した概略断面図である。図2に示されるように、接合体10は、受電電極12と、受電電極12と抵抗発熱体13とを電気的に接続しているビア導体14と、セラミックス部材11と第2給電ロッド15との間に配置された応力緩和部16と、を備えている。応力緩和部16は、セラミックス部材11と第2給電ロッド15とを電気的に接続する。図2に示されるように、応力緩和部16は、電極対向面(第1面)161F1が第1ろう材17を介して受電電極12に接合されると共に、電極対向面161F1とは接続していないロッド対向面(第2面)161F2が第2ろう材18を介して第2給電ロッド15に接合されている。なお、図2では、抵抗発熱体13の図示を省略し、抵抗発熱体13側のビア導体14の一部の図示を省略している。
【0017】
図2に示されるように、応力緩和部16の一部は、セラミックス部材11に凹むように形成された凹部11Mに挿入されている。凹部11Mおよび応力緩和部16の中心軸OLに対する横断面は、略円形状である。応力緩和部16の横断面は凹部11Mの横断面よりも小さいため、応力緩和部16と、凹部11Mとの間には間隙が形成されている。
【0018】
図2に示されるように、応力緩和部16は、受電電極12および第2給電ロッド15に接合される本体部161と、本体部161の外周側の側面161Sを被覆する保護膜(酸化物保護膜)162と、を備えている。本実施形態の本体部161は金属材料であり、Wを主成分とし、結合相としてNi(ニッケル)と、鉄と、銅とを少なくとも一種類含むタングステン基焼結合金である。本実施形態の保護膜162は、Cr(クロム),Ti(チタン),Zr(ジルコニウム),Hf(ハフニウム),Nb(ニオブ),Al(アルミニウム),V(バナジウム),Ta(タンタル)の酸化物を1種類以上含む酸化物保護膜である。なお、本実施形態における本体部161の側面161Sは、電極対向面161F1とロッド対向面161F2とを接続する面ともいえる。保護膜162の厚さは、100nm~1000nmが好ましい。
【0019】
受電電極12は、凹部11Mで一部が露出していて、第1ろう材17により電極対向面161F1で応力緩和部16と接合されている。一方で、応力緩和部16は、中心軸OLに沿って第1ろう材17の反対側のロッド対向面161F2で、第2ろう材18により第2給電ロッド15に接合されている。本実施形態の第2給電ロッド15は、柔軟性のある純ニッケルで形成されている。
【0020】
本実施形態の第1ろう材17およびろう材2としては、Ni系ろう材箔(例えば日立金属・Metglas(登録商標)のアルモルファスNiろう材箔)や金系ろう材箔(例えばJIS規格のBAu-4)が用いられる。
【0021】
図3は、応力緩和部16の保護膜162が異なる接合体10の実施例1~8および比較例1~3の評価試験結果について説明図である。図3には、実施例1~8および比較例1~3における本体部161および保護膜162の材質と、3つの評価試験結果とが示されている。なお、図3に示されていない接合体10を構成する各材質は同じである。例えば、受電電極12の材質は、タングステンと、セラミックスとしての窒化アルミとの混合物である。
【0022】
図3に示される評価試験では、接合体10の接合強度と、ろう材のはい上がりと、高温耐久性との3つが評価される。接合強度の評価試験では、実施例8種類と比較例3種類との計11種類の接合体におけるそれぞれのサンプル10個に対して引張強度試験を行った。サンプル10個の内、20MPa以上で1つも破壊されなかった接合体10を「○」と評価し、1つでも破壊された接合体10を「×」と評価した。
【0023】
ろう材のはい上がりの評価試験では、第1ろう材17および第2ろう材18の接合後に、第1ろう材17と第2ろう材18との少なくとも一方が保護膜162にはい上がっていない接合体10を「○」と評価し、はい上がっている接合体10を「×」と評価した。なお、図3における比較例2は、本体部161の側面161Sに加えて、電極対向面161F1とロッド対向面161F2とにも酸化クロムが被覆された、すなわち、本体部161の全面が被覆された接合体である。比較例2では、第1ろう材17および第2ろう材18によりろう付けできず、ろう材のはい上がりの評価ができなかったため、評価結果が「-」と示されている。
【0024】
高温耐久性の評価試験では、600℃、1000時間(h)の空気中で接合体10を放置した後の状態を評価した。第2給電ロッド15と応力緩和部16とが外れるなどの不具合があった場合には「×」と評価し、不具合がなかった場合には「○」と評価した。なお、放置後の比較例3の応力緩和部に色の変化があったため、応力緩和部に酸化が進行したと判定して「×」と評価した。
【0025】
図3に示される実施例1~8のように、本体部161の側面161Sを被覆している保護膜162が酸化物保護膜の場合には、3つの評価試験の結果が良好であった。一方で、比較例1のように保護膜162がない接合体と、比較例2のように側面161Sに加えて電極対向面161F1およびロッド対向面161F2も酸化物保護膜で被覆されている接合体と、および比較例3のように側面161Sが窒化物保護膜で被覆されている接合体とでは、3つの評価試験の内の少なくとも1つで不具合が発生している。
【0026】
図4は、接合体10の製造方法のフローチャートである。図4に示される接合体10の製造フローでは、初めに、受電電極12を有するセラミックス部材11が作製される(ステップS10)。次に、受電電極12とセラミックス部材11とに接合される応力緩和部16が作成される(ステップS20)。作製されたセラミックス部材11内の受電電極12と、応力緩和部16と、第2給電ロッド15とが接合されて(ステップS30)、接合体10が製造される。
【0027】
図5は、セラミックス部材11の製造方法のフローチャートである。図5に示されるように、セラミックス部材11の製造フローでは、初めに、セラミックス部材11の元となるグリーンシート用のスラリーが作製される(ステップS11)。本実施形態では、窒化アルミニウム(AlN)粉末100重量部に、酸化イットリウム(Y23(イットリア))粉末0.5重量部と、アクリル系バインダ20重合部と、適量の分散剤および可塑剤とが加えられた混合物に、有機溶剤(例えばトルエン)が加えられる。この混合物が、ボールミルにて20時間混合されることにより、グリーンシート用スラリーが作製される。
【0028】
キャスティング装置により、作製されたスラリーがシート上に成形され、乾燥させられてグリーンシートが作製される(ステップS12)。作製されたグリーンシートに設けられた貫通孔に電極用ペーストが印刷されることにより、グリーンシートにビア導体14が形成される(ステップS13)。
【0029】
ビア導体14が形成されたグリーンシートには、ヒータや分配等の電極パターンを有する受電電極12が形成される(ステップS14)。受電電極12は、メタライズ層の印刷および貫通孔を設けた後のビアの印刷により形成される。メタライズ層の印刷に用いられるペーストは、例えば、WやMoの粉末と、窒化アルミニウム粉末と、アクリル系バインダと、テルピネオール等の有機溶剤とを混合したペーストである。なお、ペーストとして混合される窒化アルミニウム粉末の量は、WおよびMoの量に対して調整される。
【0030】
受電電極12が形成された複数(例えば20枚)のグリーンシートが積層されることにより、グリーンシート積層体(例えば厚さ8mm)が作製される(ステップS15)。グリーンシート積層体は、複数のグリーンシートが圧着され、必要に応じて外周が切断されることにより作製される。グリーンシート積層体は、マシニングにより周囲が切削加工されて、円板状の成形体として作製される。
【0031】
作製された成形体の積層体は、450℃~600℃の範囲で脱脂された後、焼成される(ステップS16)。これにより、受電電極12を有するセラミックス部材11が作製され、セラミックス部材11の製造フローが終了する。
【0032】
図6は、応力緩和部16の製造方法のフローチャートである。図6に示されるように、応力緩和部16の製造フローでは、応力緩和部16の元となる本体部161の棒材を準備する(ステップS21)。準備される本体部161の棒材は、横断面が接合体10に用いられる場合と同じ形状に加工された材料である。
【0033】
準備された本体部161の棒材の表面が、保護膜162を形成する酸化物で被覆される(ステップS22)。酸化物で被覆された本体部161の棒材は、応力緩和部16としての所定の厚さに切断されることにより(ステップS23)、保護膜162で被覆された応力緩和部16が作成される。例えば、図3に示される実施例1の応力緩和部16は、本体部161としてのタングステン合金の棒材に金属のクロムが被覆された後に酸化熱処理が行われ、所定の厚さに切断されて製造される。また、実施例2の応力緩和部16は、42アロイの棒材に金属のチタンがPVD(physical vapor deposition)等で被覆された後に酸化熱処理が行われ、所定の厚さに切断されて製造される。また、実施例3の応力緩和部16は、SUS430の棒材に酸化ジルコニウムがPVDやCVD(chemical vapor deposition)等で被覆されて、所定の厚さに切断されて製造される。なお、実施例4~8の応力緩和部16は、実施例3と同様の製造方法で材質を変えて製造される。
【0034】
図4のステップS30では、作製されたセラミックス部材11の受電電極12と応力緩和部16との間に第1ろう材17(例えばMBF-67)を挟み、かつ、応力緩和部16と第2給電ロッド15との間に第2ろう材18(例えばBAu-4)を挟んだ状態で、加熱されることによりろう付けによる接合が行われる(ステップS30)。加熱条件としては、例えば、真空中において、10分間(min)~30分間で950℃~1150℃で加熱する。
【0035】
なお、受電電極12と応力緩和部16との間、および、応力緩和部16と第2給電ロッド15との間に、ろう材を挟む代わりに、ろう材ペーストを塗布してもよい。また、第1ろう材17および第2ろう材18は、同じ加熱条件でろう付けされなくてもよく、例えば、第1ろう材17がろう付けされた後に、異なる加熱条件で第2ろう材18がろう付けされてもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の接合体10は、セラミックス部材11と第2給電ロッド15との間に配置された応力緩和部16を備えている。応力緩和部16は、本体部161と、本体部161の側面161Sを被覆する保護膜16Cと、を備えている。本体部161は、電極対向面161F1において第1ろう材17を介して受電電極12に接合され、ロッド対向面161F2において第2ろう材18を介して第2給電ロッド15に接合されている。受電電極12と第2給電ロッド15との間に応力緩和部16が装填されることにより、低熱膨張の受電電極12と高熱膨張の第2給電ロッド15との材質の違いに起因する熱膨張率の差によって生じる熱応力を減衰させることができる。本体部161の側面161Sは、酸化物保護膜である保護膜162により被覆されている。保護膜162は、本体部161の酸化を抑制できる。さらに、第1ろう材17および第2ろう材18が応力緩和部16の側面にはい上がることが抑制される。この結果、各ろう材17,18のはい上がりによるろう材の減少によって生じる接合部の接合強度の低下を抑制できる。また、保護膜162は、受電電極12と本体部161との接合部、および、本体部161と第2給電ロッド15との接合部には形成されていない。これにより、本体部161とろう材との接合強度を確保できる。すなわち、本実施形態の接合体10によれば、本体部161の酸化を抑制した上で、応力緩和部16と受電電極12との接合部、および、応力緩和部16と第2給電ロッド15との接合部の接合強度を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の応力緩和部16が有する保護膜162は、Cr,Ti,Zr,Hf,Nb,Al,V,Taの酸化物を1種類以上含んでいる。そのため、図3に示される実施例1~8と比較例1~3の比較のように、接合体10の高温耐久性が向上する。
【0038】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
上記実施形態では接合体10の一例について説明したが、接合体10は、セラミックス部材11と第2給電ロッド15との間に配置される応力緩和部16を備え、本体部161の側面161Sが酸化物により形成された保護膜162で被覆されている範囲で変形可能である。例えば、セラミックス部材11、第2給電ロッド15、応力緩和部16、第1ろう材17、および第2ろう材18の形状および材質については変形可能である。接合体10の載置面10Fには、ウェハーWを保持しやすいような加工が施されていてもよい。図3に示される実施例1~8以外の本体部161の材質と保護膜162の材質との組み合わせであってもよく、本体部161がタングステン合金で形成され、保護膜162が酸化チタンで形成されていてもよい。
【0040】
また、本体部161を被覆する保護膜162についても種々変形可能である。図7は、変形例の応力緩和部16aについての説明図である。図7には、上記実施形態の図2に示された部分に対応する変形例の接合体10aの拡大断面の概略図が示されている。変形例の接合体10aでは、上記実施形態の接合体10と比較して、保護膜162aが応力緩和部16を被覆する部分が異なり、その結果、第1ろう材17aおよび第2ろう材18aが接合する接合部分が異なっている。なお、変形例では、上記実施形態と異なる形状等について説明し、同じ形状や材質等についての説明は省略する。
【0041】
図7に示されるように、変形例の保護膜162aは、本体部161aの側面161Sに加え、電極対向面161F1の外周側の一部と、ロッド対向面161F2の外周側の一部とを被覆している。このように、変形例の保護膜162aは、本体部161aの側面161Sのみに形成されていなくてもよく、側面161S以外の面に形成されていてもよい。保護膜162aは、本体部161aの表面の内、第1ろう材17aが接合されていない表面と、第2ろう材18aとが接合されていない表面とを被覆することが好ましい。
【0042】
応力緩和部16および第2給電ロッド15の横断面は、円形状である必要はなく、矩形状であってもよいし、一方が矩形状で、他方が円形状であってもよい。また、保護膜が被覆する本体部の側面とは、第1ろう材17により接合される面と、第2ろう材18により接合される面とを接続する面をいい、上記実施形態の円周面の側面161Sと異なる形状の面であってもよい。例えば、本体部161は、多面体形状を有し、一の面で受電電極12にろう材により接合され、かつ、他の一の面で第2給電ロッド15にろう材により接合されている場合に、ろう材により接合されていない本体部161の他の全ての面を側面とみなしてもよい。保護膜162は、本体部の側面の全面を必ずしも被覆していなくてもよい。例えば、上記実施形態の応力緩和部16の製造フローの切断時に(図6のステップS33)、側面161Sに被覆されていた保護膜162の一部が削られた結果、削られた部分以外の側面を被覆していてもよい。保護膜162は、本体部161の側面161Sの90%以上を被覆することが好ましく、側面161Sの95%以上を被覆することがより好ましい。
【0043】
接合体10を備える基板保持部材100は、接合体10を備える範囲で種々変形可能である。例えば、基板保持部材100は、シャフト20を備えていなくてもよい。
【0044】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0045】
10,10a…接合体
10F…載置面
11…セラミックス部材
11M…凹部
12…受電電極
13…抵抗発熱体
14…ビア導体
15…第2給電ロッド(金属端子)
16,16a…応力緩和部
161…本体部
161F1…電極対向面(第1面)
161F2…ロッド対向面(第2面)
161S…本体部の側面
162,162a…保護膜(酸化物保護膜)
17,17a…第1ろう材
18,18a…第2ろう材
20…シャフト
100…基板保持部材
OL…中心軸
W…半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7