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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】遠心ポンプとポンプハウジング
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/02 20060101AFI20250117BHJP
   F04D 29/048 20060101ALI20250117BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F04D13/02 C
F04D29/048
F04D29/42 A
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020144046
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2021046860
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】19198087.9
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マルセル シュテットラー
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0002794(US,A1)
【文献】米国特許第04822181(US,A)
【文献】特開2016-188590(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118325(WO,A1)
【文献】特開2004-347291(JP,A)
【文献】特開2006-057487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/02
F04D 29/048
F04D 29/42
H02K 7/09
H02K 7/14
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を搬送するために内部にロータ(3)が設けられたポンプハウジング(2)を有し、且つ、前記ロータ(3)と共に、軸方向(A)回りに前記ロータ(3)を回転させるための電磁回転駆動装置を形成するステータ(4)を有する、前記流体を搬送するための遠心ポンプであって、前記ステータ(4)が、前記ロータ(3)を非接触で磁気的に駆動可能であり、且つ、前記ロータ(3)を前記ステータ(4)に対して非接触で磁気的に浮上可能な軸受兼駆動ステータとして設計され、前記ロータ(3)が、前記軸方向(A)においては受動的に磁気浮上させられ、前記軸方向(A)に対して垂直な径方向平面内では能動的に磁気浮上させられ、前記ポンプハウジング(2)が、底部(27)及びカバー(25)を備え、前記ロータ(3)が、前記ポンプハウジング(2)内において、前記軸方向(A)における前記底部(27)と前記カバー(25)との間に配置された遠心ポンプにおいて、前記底部(27)及び/又は前記カバー(25)に、少なくとも1つの凹部(9)が設けられており、該凹部(9)が、局所的な乱流を発生させるように設計されていることを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項2】
前記ロータ(3)が、環状又は円盤状の磁気有効コア(31)と、前記流体を搬送するための複数の羽根(33)を有するインペラ(32)とを備えた、請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記流体が前記ポンプハウジング(2)内に前記軸方向(A)に流入可能に設計された前記流体用の入口(21)が、前記ポンプハウジング(2)の前記カバー(25)上に設けられ、前記ポンプハウジング(2)が、前記流体が前記ポンプハウジング(2)から前記径方向に流出可能に設計された前記流体用の出口(22)を備える、請求項1又は2に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記ステータ(4)が、環状に配置された複数のステータポール(46)を有し、内部に前記ロータ(3)が配置された前記ポンプハウジング(2)が、前記ロータ(3)の前記磁気有効コア(31)が前記ステータ(4)の前記ステータポール(46)に囲まれるように、前記ステータポール(46)間に挿入可能に設計されている、請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記ロータ(3)が、外径(D)を有し、各凹部(9)が、前記径方向において、前記ロータ(3)の前記外径(D)の少なくとも50分の1である寸法(E)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
前記ロータ(3)が、外径(D)を有し、各凹部(9)が、前記径方向において、最大で前記ロータ(3)の前記外径(D)の半分である寸法(E)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項7】
前記ロータ(3)が外径(D)を有し、各凹部(9)が、前記軸方向(A)において、前記ロータ(3)の前記外径(D)の少なくとも150分の1である深さ(T)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項8】
前記深さ(T)が、前記ロータ(3)の前記外径(D)の少なくとも100分の1である、請求項7に記載の遠心ポンプ。
【請求項9】
前記ロータ(3)が外径(D)を有し、各凹部(9)が、前記軸方向(A)において、最大で前記ロータ(3)の前記外径(D)の10分の1である深さ(T)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項10】
各凹部(9)が、前記軸方向(A)に対して垂直な円形の輪郭を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項11】
少なくとも1つの凹部(9)が、前記ポンプハウジング(2)の前記カバー(25)及び前記底部(27)の両方に設けられている、請求項1~10のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項12】
各凹部(9)が、前記ポンプハウジング(2)の径方向における外縁領域に配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項13】
前記ポンプハウジング(2)が、プラスチックで構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項14】
前記インペラ(32)が、プラスチックで構成されている、請求項2又は4に記載の遠心ポンプ。
【請求項15】
前記ロータ(3)が、前記ロータの前記磁気有効コア(31)を完全に包み込み、プラスチックで構成されているジャケット(35)を有する、請求項2又は4に記載の遠心ポンプ。
【請求項16】
流体を搬送するために内部にロータ(3)が設けられたポンプハウジング(2)であって、請求項1~15のいずれか一項に基づいて設計された遠心ポンプ(1)用に設計されていることを特徴とするポンプハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれのカテゴリにおける独立特許請求項にプリアンブルに記載された、流体を搬送するための遠心ポンプ及びポンプハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングレスモータの原理に基づいて設計され、動作する電磁回転駆動装置を備えた遠心ポンプが知られている。ここで、「ベアリングレスモータ」という用語は、ステータに対してロータを完全に磁気的に浮上させる電磁回転駆動装置を指し、これには、別体の磁気軸受が設けられていない。このため、ステータは、電気駆動用のステータ及び磁気浮上用のステータの両方を兼ねた、軸受兼駆動ステータとして設計されている。ステータの電気巻線により、ロータを回転させるトルクをロータに作用させる一方で、ロータの径方向位置を能動的に制御又は調節できるように、任意に設定可能なせん断力をロータに作用させる回転磁場を生成することができる。このように、ロータの3つの自由度、具体的には、その回転及び径方向位置(2つの自由度)を能動的に調節できる。ロータは、更に3つの自由度、具体的には、その軸方向における位置、及び所望の回転軸に対して垂直な径方向平面に対する傾き(2つの自由度)に関しては、磁気抵抗力によって受動的に磁気浮上又は安定化される、即ち、制御することができない。ベアリングレスモータは、別体の磁気軸受を設けずにロータを完全に磁気的に浮上させるという特徴が、その名前の由来になっている。
【0003】
ベアリングレスモータは、現在では当業者に十分に周知であり、多くの異なる用途に使用されている。例えば、特許文献1及び特許文献2からは、基本的な説明が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許公開第0860046号
【文献】欧州特許公開第0819330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベアリングレスモータの原理に基づいて設計された遠心ポンプは、幅広い用途において、その能力が発揮されている。
【0006】
ベアリングレスモータを有する遠心ポンプは、機械的な軸受がないことから、例えば血液ポンプ等の非常にセンシティブな物質を搬送する用途や、例えば製薬産業やバイオテクノロジー産業等の非常に高い純度が要求される用途、例えば半導体産業におけるスラリや酸性流体用のポンプ等の、機械軸受を極めて短時間で破壊し得る、研磨性又は浸食性物質を搬送する用途に特に適している。
【0007】
ベアリングレスモータの原理には、電磁駆動装置のロータ及び遠心ポンプのロータの両方を兼ねた、一体化されたロータであるロータの設計に起因して、更なる利点がある。この利点とは、非接触の磁気浮上に加えて、非常にコンパクト且つ省スペースな構成である。
【0008】
加えて、ベアリングレスモータの原理により、ロータ又は内部にロータが配置されたポンプハウジングをステータから非常に容易に分離可能な遠心ポンプの設計が可能になる。これは、ポンプハウジングを、例えば、使い捨ての用途における使い捨て部品として設計可能であるため、非常に大きな利点である。今日、このような使い捨ての用途は、これまで、非常に高い純度が要求されることから、処理中に取り扱われる流体と接触する全ての部品を、例えば蒸気消毒などの複雑な方法で洗浄・消毒しなければならなかった処理に取って代わることが多くなっている。使い捨て用の設計の場合、取り扱われる流体に接触する部品は、一度のみ使用され、その後、次の用途において新品、即ち、未使用の使い捨て部品に取り換えられる。
【0009】
遠心ポンプにベアリングレスモータが首尾よく適用されているこれら全ての用途では、基本的に、ベアリングレスモータを、インナーロータ、即ち、内部に配置されたロータとその周囲に配置されたステータ、又はアウターロータ、即ち、内部に配置されたステータとその周囲に配置されたロータとして設計することが可能である。しかし、どちらの設計でも、用途によっては、ロータの軸方向の変位や径方向平面に対する傾きに対する受動的な磁気的安定化が限界に達しする場合や、遠心ポンプの安全且つ問題のない動作を保証するには十分でない場合があることが分かっている。
【0010】
したがって、本発明は、この技術水準から、非接触で磁気的に駆動可能であり且つ非接触で磁気浮上可能であるロータを備えた電磁回転駆動装置を有し、ロータの受動的な磁気的安定化、特に軸方向の変位に対する受動的な磁気的安定化を向上させた遠心ポンプを提案することを目的とする。加えて、本発明は、このような遠心ポンプ用のポンプハウジングを提案することを目的とする。
【0011】
上記の問題を解決する本発明の目的は、それぞれのカテゴリにおける独立請求項の特徴点を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これにより、本発明によれば、流体を搬送するために内部にロータが設けられたポンプハウジングを有し、且つ、ロータと共に、軸方向回りにロータを回転させるための電磁回転駆動装置を形成するステータを有する、流体を搬送するための遠心ポンプが提案される。ステータは、ロータを非接触で磁気的に駆動可能であり、且つ、ロータをステータに対して非接触で磁気的に浮上可能な軸受兼駆動ステータとして設計され、ロータは、軸方向においては受動的に磁気浮上させられ、軸方向に対して垂直な径方向平面内では能動的に磁気浮上させられ、ポンプハウジングは、底部及びカバーを備え、ロータは、ポンプハウジング内において、軸方向における底部とカバーとの間に配置され、底部及び/又はカバーに、少なくとも1つの凹部が設けられており、該凹部が、局所的な乱流を発生させるように設計されている。
【0013】
本発明は、特にロータに対して軸方向に作用する力を低減できるように、ポンプハウジング内の少なくとも1つの凹部が、ポンプハウジング内の流れの状態に影響を与えることができるという知見に基づいている。この低減によって、ロータの軸方向における磁気的浮上が軽減されて、ロータの受動的な磁気的安定化の大幅に向上につながる。また、軸方向に垂直な径方向平面に対するロータの傾きに対する受動的な磁気的安定化が、少なくとも1つの凹部によって大幅に向上することが分かった。局所的な乱流を発生させることにより、ロータの周囲における流れの挙動に意図した変化が生じるため、ロータに作用する力、特に軸方向に作用する力が減少する。
【0014】
本発明においては、圧力側から吸引側への逆流を低減する又はこの逆流の速度を低減するための幾何学的な障壁や、圧力補償のために軸方向にロータを完全に貫通して延在する逃がし孔は、基本的に必要ない。少なくとも1つの凹部が、局所的な乱流及び/又は流れの分離をもたらし、これにより、流れに囲まれたロータの表面上の流れの力が減少する。例えば、凹部によって生じた流れの分離に起因する動的揚力の減少により、ロータに作用する力も減少する。
【0015】
好適な実施形態によれば、ロータは、環状又は円盤状の磁気有効コアと、流体を搬送するための複数の羽根を有するインペラとを備える。これにより、磁性コアがステータと相互に作用してロータを駆動し、非接触で浮上させながら、羽根を有するインペラが流体を搬送する。
【0016】
遠心ポンプは、ラジアルインペラを用いて設計されていることが好ましい。流体がポンプハウジング内に軸方向に流入可能に設計された流体用の入口が、ポンプハウジングのカバー上に設けられている。更に、ポンプハウジングが、流体がポンプハウジングから径方向に流出可能に設計された流体用の出口を備える。これは、インペラが、軸方向の流れを受け、これに垂直な方向に流体を搬送すること意味する。他の実施形態において、インペラは、半軸流インペラとしても設計可能である。
【0017】
更に、遠心ポンプの回転駆動装置は、インナーロータの原理に基づいて設計されていることが好ましい。このため、ステータは、例えば、環状に配置された複数のステータポールを有し、内部にロータが配置されたポンプハウジングが、ロータの磁気有効コアがステータのステータポールに囲まれるように、ステータポール間に挿入可能に設計されている。
【0018】
実際には、ロータが、外径を有し、各凹部が、径方向において、ロータの外径の少なくとも50分の1である寸法を有すると、有利であることが分かっている。
【0019】
更に、ロータが、外径を有し、各凹部が、径方向において、最大でロータの外径の半分である寸法を有すると有利である。
【0020】
更に好適な手段として、ロータは外径を有し、各凹部は、軸方向において、ロータの外径の少なくとも150分の1、好ましくは少なくとも100分の1である深さを有する。
【0021】
ロータが外径を有し、各凹部が、軸方向において、最大でロータの外径の10分の1である深さを有することが好ましい。
【0022】
ロータに作用する力及び傾斜モーメントを求められたように低減する上で、これに影響し得る、用途に合わせて最適化可能な要因がいくつか存在する。これらの要因には、具体的には、凹部の数、凹部の位置、及び凹部の幾何学的寸法、即ち、具体的には径方向における寸法及び軸方向における寸法が含まれる。カバー及び/又は底部に複数の凹部が設けられている場合、勿論、全ての凹部が同じ寸法である必要はない。各凹部が、異なる寸法及び/又は幾何学形状を有することも十分に可能である。
【0023】
凹部が特定の形状を有することによる影響は大きくない。各凹部は、例えば、正方形又は長方形の輪郭を有するように設計可能である。各凹部は、角錐形、円錐形、円錐台形、環状、又は自由幾何学形状に設計可能である。上記1つの凹部又は複数の凹部は、その位置において流体の流れが渦流になるように表面の状態が局所的に変わるように設計されていればよい。
【0024】
ただし、製造上の理由から、各凹部は、軸方向に対して垂直な円形の輪郭を有することが好ましい。この場合、例えば、各凹部は、直径が凹部の径方向の寸法となり、長さが凹部の軸方向の深さとなる止め穴として設計される。
【0025】
好適な実施形態において、少なくとも1つの凹部は、ポンプハウジングのカバー及び底部の両方に設けられている。
【0026】
更なる好ましい手段として、各凹部は、ポンプハウジングの径方向における外縁領域に配置されている。これは、具体的には、ポンプハウジングのカバーにおける各凹部が、カバーの中心よりも、カバーの径方向の外縁の近傍にあり、ポンプハウジングの底部における各凹部が、底部の中心よりも、底部の径方向の外縁の近傍にあることを意味する。
【0027】
ポンプハウジングは、プラスチック又は金属材料で構成されていることが好ましい。
【0028】
インペラも、プラスチック又は金属材料で構成されていることが好ましい。
【0029】
更なる有利な手段として、ロータは、ロータの磁気有効コアが流体に接触しないように、磁気有効コアを完全に包み込むジャケットを有する。ジャケットは、プラスチックで構成されることが好ましいが、金属材料で構成することも可能である。
【0030】
ポンプハウジング、インペラ、及びジャケットは、同一のプラスチック又は金属材料で構成可能であり、異なるプラスチック又は金属材料でも構成可能である。勿論、プラスチックや金属材料を組み合わせることも可能であり、例えば、ロータのジャケットをプラスチックで構成し、ポンプハウジングを金属材料で構成することが可能である。
【0031】
3つの自由度(軸方向の変位、径方向平面に対する傾斜)に対するロータの受動的な磁気的安定化または浮上を更に緩和して、これら3つの自由度に対するロータの安定化を更に向上させるために、更なる手段が可能である。網羅的ではないが、これらを挙げる。
【0032】
ロータは、インペラの羽根の入口に対向する側を覆うカバープレートを有してもよく、カバープレートには、中央に配置された開口が設けられており、流体は、これを通してインペラに流れ込むことができる。
【0033】
ロータの磁気有効コアは、磁気有効コア及び任意のジャケットを完全に貫通して軸方向に延在する中央孔を有することができる。
【0034】
ロータは、1つのバランスホール又は複数のバランスホールを備えてもよく、各バランスホールは、ロータの磁気有効コア及び任意のジャケットを完全に貫通して軸方向に延在する。各バランスホールは、分散して配置されることが好ましい、即ち、ロータの中心以外に配置されることが好ましい。
【0035】
複数のバランスホールが設けられる場合、バランスホールは、中央孔の周囲又はロータの中心の周囲において、円形の線上に配置されることが好ましい。最大で又は丁度8つのバランスホールが設けられていることが好ましく、これらは、ロータの中央孔の周囲又はロータの中心の周囲において等距離で配置されていることが好ましい。
【0036】
各バランスホールは、中央孔の直径よりも小さい直径を有していることが好ましい。
【0037】
入口に対して反対側を向いているロータの軸方向の端面には、複数の後側羽根が設けられていてもよい。動作状態において、これらの後側羽根は、ポンプハウジングの底部に対向している。
【0038】
後側羽根は、例えば、ロータのジャケットに凹みを設けて、各後側羽根を隣接する2つの凹みの間に形成することで実現可能である。
【0039】
更に、後側羽根を隆起として設計することが可能である。この場合、例えば、インペラに類似した構造体を作り、これをロータの軸方向端面に取り付けることで、後側羽根がポンプハウジングの底部に対向することになる。勿論、各後側羽根を個別に製造し、ロータの軸方向端面に取り付けることも可能である。
【0040】
各後側羽根は、径方向に延在していることが好ましい。好ましくは、各後側羽根は、ロータの軸方向端面における径方向の外縁から径方向内側に向かって延在する。各後側羽根は、軸方向端面の中心又は中央孔まで延在可能であり、又は、各後側羽根は、軸方向端面の半径よりも小さい径方向長さ、例えば、その半分の径方向長さを有する。
【0041】
出口は、出口接続部として設計されていることが好ましい。出口接続部は、軸方向に対して垂直に延在していることが好ましい。出口接続部は、流体が出口接続部に入る入口面と、流体が出口接続部から出る出口面と、を有することが好ましい。入口面は、出口面よりも小さいことが好ましい。
【0042】
出口接続部は、その外径が円筒状に設計されていることが好ましい。円筒状の設計では、出口接続部が中心軸を有し、該中心軸が、ポンプハウジングのカバーよりもロータの磁気有効コアの近傍となるように、出口接続部が軸方向に対して配置されていることが好ましい。
【0043】
ポンプハウジングの入口を入口接続部として設計することも可能である。入口接続部は、軸方向に延在していることが好ましい。入口接続部は、流体が入口接続部に入る入口面と、流体が入口接続部から出て、インペラへ向かって流れる出口面と、を有することが好ましい。入口面は、出口面よりも大きいことが好ましい。更に、入口接続部は、軸方向に対して垂直な流れの断面が、入口面よりも小さく且つ出口面よりも小さいくびれ領域を有していることが好ましい。
【0044】
別の有利な手段として、インペラ上に環状又は円盤状の圧力プレートが設けられ、軸方向に対して垂直に配設されている。圧力プレートは、軸方向において、磁気有効コアと、ポンプハウジングのカバーに対向するインペラの端部との間に配置されて、インペラの羽根間に延在している。ロータがカバープレートを有する場合、圧力プレートは、軸方向において、磁気有効コアとカバープレートとの間に配置される。圧力プレートは、全ての羽根間に延在する。
【0045】
圧力プレートは、径方向においてロータを中心に配置され、好ましくは、最長で各羽根における径方向の外端まで径方向に延在する。しかし、圧力プレートは、その直径がインペラの直径よりも大幅に小さくなるように、径方向において設計することも可能である。
【0046】
ロータが1つのバランスホール又は複数のバランスホールを有する場合、圧力プレートは、少なくとも全てのバランスホールを覆うように、径方向の寸法が設定されることが好ましい。
【0047】
ロータの受動的な磁気的安定化に対しては、ロータの磁気有効コアの直径が、ロータの磁気有効コアの軸方向における寸法である高さの2.6倍より大きいと、特に有利である。したがって、dをロータの磁気有効コアの直径、HRを磁気有効コアの軸方向における高さとすると、d>2.6×HRという条件を満たすと有利である。
【0048】
上述した手段は、例えば、それぞれ個別に設けることができ、また、複数の手段を組み合わせることもでき、例えば、全ての手段を組み合わせることができる。
【0049】
更に、本発明によって、流体を搬送するために内部にロータが設けられたポンプハウジングであって、本発明に係る遠心ポンプ用に設計されたポンプハウジングが提案される。
【0050】
本発明に係るポンプハウジングは、具体的には、使い捨て用の使い捨て部品としても設計可能である。本発明に係る遠心ポンプのステータは、複数回使用するために、再使用可能な装置として設計されていることが好ましい。
【0051】
本発明の更なる有利な手段及び実施形態が、従属請求項から得られる。
【0052】
以下、実施形態に基づき、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。概略的な図面では、以下を示している(一部は断面図)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ベアリングレスモータとして設計された電磁回転駆動装置を備える遠心ポンプの実施形態の概略断面図。
図2】本発明に係る遠心ポンプの第1の実施形態の概略断面図。
図3】凹部の拡大断面図。
図4図2における第1の実施形態のカバーの断面図。
図5図4におけるカバーをポンプハウジングの底部から見た平面図。
図6図2における第1の実施形態の収容部の断面図。
図7図6における収容部をポンプハウジングのカバーから見た平面図。
図8】本発明に係る遠心ポンプの第2の実施形態の概略断面図。
図9】第2の実施形態のロータをポンプハウジングの底部から見た平面図。
図10】ロータの変形例の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
まず、図1の断面図を参照して、ベアリングレスモータとして設計された電磁回転駆動装置を備える遠心ポンプの実施形態を説明する。勿論、本実施形態は、本発明に基づいて設計可能である。
【0055】
遠心ポンプの全体を、参照記号1で示す。流体を搬送するための遠心ポンプ1は、搬送される流体用の入口21及び出口22を有するポンプハウジング2を備える。ポンプハウジング2内には、ロータ3が配置されており、ポンプハウジング2の外側に配置されたステータ4と共に、ロータ3を軸方向A回りに回転駆動可能な電磁回転駆動装置を構成している。
【0056】
電磁回転駆動装置は、インナーロータとして設計されている。即ち、ロータ3がステータ4の内側に配置されて、ステータ4がロータ3を囲っている。ロータ3は、ステータ4に対して非接触で磁気浮上させられている。更に、ロータ3は、ステータ4により、非接触で磁気的に駆動されて、所望の回転軸回りに回転することができる。所望の回転軸は、ロータ3がステータ4に対して中心にあり且つ傾斜していない姿勢となる動作状態において、ロータ3が回転する軸である。この所望の回転軸は、軸方向Aを定義している。通常、軸方向Aを定義する所望の回転軸は、ステータ4の中心軸と一致する。
【0057】
以下では、径方向を、軸方向Aに対して垂直な方向とする。
【0058】
ロータ3は、磁気有効コア31を備えており、これは、円盤状、円筒状、又は環状に設計されている。「磁気有効コア31」とは、ステータ4と相互に作用することでトルクの生成及び磁気的な軸受力の発生を行うロータ3の部位を指す。磁気有効コア31は、設計に応じて、1つ又は複数の永久磁石を備えてよい。また、磁気有効コア31を、永久磁石を用いずに、例えばリラクタンスモータとして設計することもできる。磁気有効コア31は、少なくとも部分的に強磁性材料、例えば鉄から成る。
【0059】
磁気有効コア31は、磁気有効コア31が搬送される流体と接触しないように、磁気有効コア31を完全に包み込むジャケット35が設けられていることが好ましい。ジャケット35は、プラスチックで構成されていることが好ましいが、金属材料で構成することも可能である。
【0060】
ロータ3は、入口21から出口22へ流体を搬送するための複数の羽根33を有するインペラ32を更に備える。インペラ32は、ジャケット35上に配置されている。羽根33を有するインペラ32は、プラスチックで構成されていることが好ましく、例えば、ジャケット35と一体的に設計可能である。勿論、個別の製造処理によって各羽根33又は全羽根33を製造し、その後、例えば溶接処理によってジャケット35に接続することも可能である。また、金属材料からインペラを製造することも勿論可能である。
【0061】
インペラ32は、軸方向Aからの流体の流れを受けた後、この流体を径方向に偏向させるラジアルインペラとして設計されることが好ましい。
【0062】
ステータ4及びロータ3を有する回転駆動装置は、例えば、所謂テンプルモータとして設計されている。
【0063】
テンプルモータの設計の特徴として、ステータ4は、複数の別個のコイルコア41、例えば6つのコイルコア41を備えており、それぞれが棒状の縦脚部42を備える。縦脚部42は、第1端部から第2端部まで軸方向Aに沿って延在し、図1における図示例において下端である第1端部のそれぞれは、リフラックス45によって互いに接続されている。各コイルコア41は、横脚部43を更に備える。横脚部43は、対応する縦脚部42の第2端部に配置され、径方向に延在する、即ち、軸方向Aに対して垂直、従って、対応する縦脚部42に対して垂直に延在する。各横脚部43は、径方向内側、即ちロータ3に向かって延在する。このため、各コイルコア41は、L字状の設計を有しており、各縦脚部42が、軸方向Aに延びるLの長い線を形成し、ロータ3に向かって縦脚部42まで垂直に径方向に延在する各横脚部43が、Lの短い線を形成している。
【0064】
各横脚部43の径方向内側の端部は、ステータポール46を形成している。ステータポール46は、内部にロータ3が配置されたポンプハウジング2の周囲に環状に配置されている。ポンプハウジング2は、ステータ4内、より具体的にはステータポール46間に挿入可能に設計されている。これにより、ステータポール46が、ロータ3の磁気有効コア31を囲う。動作状態では、ロータ3がその所望の位置からずれていない場合、各ステータポール46と、ロータ3の磁気有効コア31とは、軸方向Aにおいて同じ高さに位置している。したがって、動作状態では、ロータ3は、ステータポール46間において非接触で磁気浮上させられる。
【0065】
リフラックス45及びコイルコア41は、磁束を案内するための磁束案内要素として機能するため、それぞれ柔らかい磁性材料で構成されている。軟らかい磁性材料として、例えば、フェロ磁性又はフェリ磁性材料、巣即ち、特に鉄、ニッケル-鉄、シリコン-鉄等が適している。
【0066】
全てが軸方向Aに対して平行に延在し且つロータ3を囲むコイルコア41の平行な縦脚部42は、これらの平行な縦脚部41が寺院の柱に似ていることから、テンプルモータという名称の由来となっている。
【0067】
ステータ4は、回転電磁場を発生させるための複数の巻線6を更に備えており、これらにより、ロータ3を非接触で磁気的に駆動し、ステータ4に対して非接触で磁気浮上させることができる。巻線6は、例えば6つの個別のコイルとして設計されており、縦脚部42にコイルがそれぞれ1つずつ設けられている。各コイルは、対応する縦脚部42の周囲に配置されているため、それぞれのコイル軸が、軸方向Aに対して平行になっている。例えば、各縦脚部43は、1つのコイル61のみを支持する。勿論、各縦脚部42が複数のコイルを支持する実施形態も可能である。
【0068】
ロータ3が動作状態において浮上する平面を、径方向平面とも呼ぶ。径方向平面は、z軸が軸方向Aに延在する直交座標系のx-y平面を定義する。
【0069】
好適な実施形態において、テンプルモータとして設計された電磁回転駆動装置は、ベアリングレスモータの原理に基づいて設計される。これは、遠心ポンプ1の動作中において、ロータ3が非接触で磁気的に駆動可能であり且つステータ4に対して非接触で磁気浮上可能であるという、上述のベアリングレスモータの原理に従って、ロータ3の磁気有効コア31がステータ4のステータポール46と相互に作用することを意味する。
【0070】
ベアリングレスモータの原理は、現在では当業者に十分に周知であるため、機能を詳細に説明する必要はない。ベアリングレスモータの原理は、ロータ3が磁気浮上させられ、ステータ4が、電気駆動用のステータ及び磁気浮上用のステータの両方を兼ねた、軸受兼駆動ステータとして設計されることを意味している。このため、ステータ4は、駆動機能と浮上機能の両方を実現させる巻線6を備えている。巻線6を用いて、回転電磁場を発生させることができる。この回転電磁場により、ロータ3の磁気有効コア31にトルクが作用して、磁気有効コア31を軸方向A回りに回転させる一方、ロータ3の磁気有効コア31に任意に設定可能なせん断力が作用して、その径方向位置、即ち径方向平面内の位置を能動的に制御又は調整することができる。ベアリングレスモータの場合、従来の磁気軸受とは対照的に、磁気浮上及びモータの駆動は、ロータ3の磁気有効コア31にトルクと設定可能なせん断力を作用させる回転電磁場によって実現される。これに必要な回転場は、異なるコイルを用いて生成可能であり、また、必要な流束を数学的に重畳させて、単一のコイル系、本例では巻線6を用いることでも、回転場を生成可能である。したがって、ベアリングレスモータの場合、ステータ2の巻線6によって生成された電磁束を、ロータ3の駆動のみを行う電磁束と、ロータ3の磁気浮上のみを実現する電磁束とに分けることは不可能である。
【0071】
ベアリングレスモータの原理では、ロータ3の少なくとも3つの自由度、即ち、その径方向平面内の位置と軸方向A回りの回転を能動的に調整できる。ロータ3の磁気有効コア31は、軸方向Aにおける軸方向のずれに関しては、磁気抵抗力によって受動的に磁気的に安定化される、即ち、制御がすることができない。残りの2つの自由度、即ち、所望の回転軸に対して垂直な径方向平面に対する傾きに関しても、ロータ3の磁気有効コア31は、受動的に磁気的に安定化される。これは、ロータ3が、磁気有効コア31のステータポール46との相互作用によって、軸方向Aおよび傾斜に対して受動的に磁気浮上又は受動的に磁気的に安定化させられ(合計3つの自由度)、径方向平面において能動的に磁気浮上させられる(2つの自由度)ことを意味している。
【0072】
一般的な慣例と同様に、本発明の範囲内においても、能動的な磁気浮上とは、例えば、巻線6によって生成される回転電磁場によって、能動的に制御又は調整できるものを指す。受動的な磁気浮上や受動的な磁気的安定化は、制御や調整ができないものである。受動的な磁気浮上又は安定化は、例えば、軸方向Aにおいて変位したとき又は傾いたとき等、ロータ3がその平衡位置からずれたときに、ロータ3を平衡位置に戻す磁気抵抗力に基づくものである。
【0073】
ロータ3の磁気有効コア31は、直径dを有しており、直径dは、磁気有効コア31の外径を指す。更に、磁気有効コア31は、高さHRを有しており、高さHRは、軸方向Aの寸法である。ロータ3の磁気有効コア31の直径dが、ロータ3の磁気有効コア31の高さHRの2.6倍より大きい場合、即ち、d>2.6*HRという幾何学的条件が満たされる場合は、ロータ3の受動的な磁気的安定化に特に有利である。
【0074】
図2は、図1を参照して説明した実施形態に従って設計された本発明に係る遠心ポンプ1の一実施形態の概略断面図を示す。図2では、理解する上では十分であるため、ステータポール46のみをステータ4として示している。再度述べるが、ステータ4及びロータ3は、図1に関連して説明したように、ベアリングレスモータの原理に基づいて相互に作用するように設計されている。
【0075】
ポンプハウジング2は、収容部26及びカバー25を備え、カバー25は、ポンプハウジング2を閉じるように収容部26上に配置されている。収容部26及びカバー25は、好ましくは、プラスチックから成り、例えば溶接によって互いに強固に且つ密閉するように接続されている。他の実施形態では、収容部26及び/又はカバー26は、金属材料で構成されている。
【0076】
より理解を深めるために、図4は、カバー25の軸方向Aに沿った断面における断面図を示し、図5は、カバー25を収容部26から見た平面図を示す。更に、図6は、収容部26の軸方向に沿った断面における断面図を示し、図7は、収容部26をカバー25から見た平面図を示す。
【0077】
収容部26は、軸方向Aに沿って同軸上に前後に並んで配置された下側円筒部261及び上側円筒部262を備え、上側円筒部262は、下側円筒部261よりも大きな直径を有する。収容部26の下側円筒部261は、図におけるポンプハウジング2の下端を形成し、軸方向Aに対して垂直に配置された底部27を備える。
【0078】
カバー25は、図における上側円筒部262の上端に置かれ、そこに強固に接続されている。搬送される流体用の入口21は、カバー25上に設けられている。入口21は、入口接続部として設計されており、好ましくは、カバー25と一体的に製造されている。入口接続部として設計された入口21は、軸方向Aに延在している。これにより、流体は、ポンプハウジング2内へ軸方向に流入可能である。入口接続部21は、流体が入口接続部21に入る入口面211と、流体が入口接続部21から出て、インペラ32へ流れる出口面212と、を有することが好ましい。入口面211は、出口面212以上の大きさであることが好ましい。搬送される流体用の出口22は、上側円筒部262上に設けられている。ここで、出口22は、出口接続部22として設計されており、好ましくは、収容部26と一体的に製造されている。出口接続部として設計された出口22は、径方向平面に対して平行、即ち、入口21に対して垂直に延在している。これにより、流体は、ポンプハウジング2から径方向に流出する。出口接続部22は、流体が出口接続部22に入る入口面221と、流体が出口接続部22から出る出口面222と、を有する。図2にも示したように、入口面221は、出口面222よりも小さいことが好ましい。出口接続部22は、その外形が円筒状に設計されていることが好ましい。このようにしつつも出口接続部の入口面221を出口接続部21の出口面222によりも小さくするために、出口接続部22の内径が変化するように出口接続部22の壁部の厚さが変化するテーパ領域を該壁部に設けることができる。これにより、流体が流れる出口接続部22の中心軸Mに対して垂直な面である流体の流れの断面も変化する。このような実施形態は、例えば図8において、より詳細に示されている。
【0079】
出口接続部22の円筒設計については、出口接続部22の中心軸Mがポンプハウジング2のカバー25よりもロータ3の磁気有効コア31の近傍となるように、出口接続部22が軸方向Aに対して配置されていることが好ましい。これは、出口接続部22が、収容部26の上側円筒部262における軸方向Aの中央に配置されているのではなく、底部27の方向、即ち、図における下方にずれて配置されていることを意味する。
【0080】
磁気有効コア31、ジャケット35、及びインペラ32を備えるロータ3は、ポンプハウジング2内において、ポンプハウジング2の底部27とカバー25との間に配置されており、任意のジャケット35を有する磁気有効コア31は、図におけるインペラ32の下方に配置されている。ジャケット35を含む磁気有効コア31は、円筒状に設計されていることが好ましい。
【0081】
ポンプハウジング2は、図1から分かるように、ステータ4内に挿入されて、上側円筒部262がステータ4上に置かれる一方、ポンプハウジング2の下側円筒部261がステータ4内、より具体的にはステータポール46間に配置される。ポンプハウジング2は、例えば、ねじ(不図示)を用いて、ステータ4に固定可能である。
【0082】
ロータ3は、動作状態において、ロータ3の磁気有効コア31がステータポール46に囲まれ、且つ、巻線6が生成した電磁場によって、径方向平面内におけるステータポール46間の中心に配置され、軸方向A回りに回転駆動され得るように設計・配置されている。ロータ3が中心に配置され且つ軸方向Aからずれていない場合には、磁気有効コア31は、ステータポール46間の中心に位置される。
【0083】
ロータ3は、外径Dを有する。これは、ジャケット35を含む磁気有効コア31の直径Dである。ジャケット35が設けられている場合、ロータ3の外径Dは、ロータ3の磁気有効コア31の直径d(図1)よりも大きい。
【0084】
インペラ32は、羽根33が、入口21を介して軸方向Aに流れ込む流体を径方向に偏向し、出口22へ搬送するように、ラジアルインペラ32として設計されていることが好ましい。
【0085】
本発明によれば、底部27及び/又はカバー25には、少なくとも1つの凹部が設けられており、この凹部は、局所的な乱流を発生させるように設計されている。ここで説明する実施形態では、合計8つの凹部9が設けられており、カバー25に4つ、底部27に4つ配置されている。
【0086】
他の実施形態として、凹部9が、カバーのみ又は底部のみに設けられていてもよい。凹部9の数も、一例として理解されるべきである。凹部は、1つのみ設けてもよいし、2つ又は3つの凹部を設けてもよいし、9つ以上又は9つよりも大幅に多い数の凹部、例えば、50を上回る数の凹部を設けてもよい。基本的に、凹部9の数に上限はない。用途に合わせて凹部の数及び配置を設定することで、ロータ3に作用する力、具体的には流体力を求められた通りに低減させることができる。
【0087】
上記1つの凹部9又は複数の凹部9は、それぞれインペラ32又はロータ3に作用する力、具体的には軸方向Aに作用する力及び径方向平面に対してロータ3を傾けようとするモーメントを低減することを目的としたポンプハウジング2内における流れ条件に対する幾何学的な影響を表している。このため、凹部9により、ロータ3が受動的に磁気浮上又は安定化される全て(ここでは3つ)の自由度に対するロータの安定化が向上する。したがって、底部27又はカバー25に配置された凹部9により、より少ない労力と移動でロータ3の位置を設定できるように、流れの挙動が変化する。
【0088】
力、具体的には流体力の低減は、乱流、又はポンプハウジング2の形状における局所的な変化である凹部9による乱流の生成に基づくものである。
【0089】
このため、少なくとも1つの凹部9を有する本発明に係る実施形態は、基本的に、流速を低減させる幾何学的な障壁を設けず、且つ、ロータを貫通する圧力補償孔を設けず、更に、例えば従来の流体軸受のように、局所的に圧力を上げる楔状の細い流体空隙も設けずに、実現可能である。つまり、凹部9は、局所的な乱流及び流れの分離を生じさせて、層流や乱流に曝されるロータ3の表面に対する該流れの力効果を低減する。この乱流又は流れの分離により、ロータ3に作用する動的揚力が減少し、この結果、ロータ3に作用する力が減少する。
【0090】
当然ながら、本発明の実施形態として、例えば、ロータ3を貫通する圧力均一化孔を更に設けることも可能である。このような実施形態は、第2の実施形態を参照して後述する。
【0091】
各凹部9を、ディンプル、窪み、皿穴、又はボア等に設計することで、流れを局所的に渦流にさせることができる。例えば、凹部9は、球状又は円筒状にすることができる。正方形又は長方形の輪郭を有することもできる。凹部は、角錐形、円錐形、円錐台形、環状、又は自由幾何学形状に設計可能である。しかし、製造上の理由から、凹部9には、穴あけ工具又はフライス工具で生成可能な幾何学的形状が好ましい。このため、凹部9の設計は、各凹部9が軸方向Aに対して垂直な円形の輪郭を有するものが好ましい。即ち、球状又は円筒状に設計されていることが好ましい。
【0092】
図3では、凹部9のうちの1つが、例示的な特徴を有するものとして断面図に示されており、この例においては、ポンプハウジング2の底部27に止り穴として設計されている。
【0093】
通常、各凹部9は、径方向における凹部9の最大幅を意味する径方向の寸法Eと、幅方向Aにおける凹部の最大寸法を意味する深さTと、を有する。
【0094】
図3に示した止め穴の設計の場合、寸法Eは、径方向における穴の直径Eであり、深さTは、軸方向Aにおける穴の長さである。
【0095】
実際には、各凹部9の径方向における寸法Eが、ロータ3の外径Dの少なくとも50分の1、即ち、Eが0.02D以上であると有利であることが証明されている。また、各凹部9の径方向における寸法Eが、最大でロータ3の外径Dの半分、即ち、Eが0.5D以下であると有利である。
【0096】
軸方向Aに関して、各凹部9の軸方向Aにおける深さTが、ロータ3の外径Dの少なくとも150分の1、即ち、Tが0.015D以上であると有利であることが証明されている。それぞれの軸方向Aにおける深さTが、ロータ3の外径Dの少なくとも100分の1、即ち、Tが0.01D以上であることが特に好ましい。
【0097】
更に、軸方向Aに関して、各凹部9の軸方向Aにおける深さTが、最大でロータ3の外径Dの10分の1、即ち、Tが0.1D以下であることが好ましい。
【0098】
上記1つの凹部9又は複数の凹部9の位置に関して、該1つの凹部9又は複数の凹部9は、底部27及び/又はカバー25における径方向の外縁領域に配置されていることが好ましい。これは、具体的には、図2図4図5、及び図6に示すように、ポンプハウジング2のカバー25における凹部9が、カバー25の中心よりも、カバー25の径方向における外縁の近傍に位置しており、ポンプハウジング2の円形状の底部27における凹部9が、底部27の中心よりも、底部27の径方向における外縁の近傍に位置していることを意味する。
【0099】
本発明の好適な実施形態では、ポンプハウジング2、及び/又はインペラ32、及び/又はロータ3のジャケット35は、プラスチックで構成されている。ポンプハウジング2、及びインペラ32、及びロータ3のジャケット35がプラスチックで構成されていることが好ましい。ポンプハウジング2、インペラ3、及びジャケット35は、全て同じプラスチックで構成することができ、少なくとも2種類のプラスチックで構成することもできる。
【0100】
当然ながら、用途に応じて、適切なプラスチックが選択される。適切なプラスチックとして、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリル、ポリカーボネートが挙げられる。
【0101】
本発明の他の好適な実施形態では、ポンプハウジング2、及び/又はインペラ32、及び/又はロータ3のジャケット35は、単一の金属材料又はいくつかの異なる金属材料で構成される。好ましい金属材料として、例えば、チタンやステンレス鋼が挙げられる。
【実施形態2】
【0102】
図8は、本発明に係る遠心ポンプ1の第2の実施形態の概略断面図を示す。より理解を深めるために、図9も、第2の実施形態のロータをポンプハウジングの底部から見た平面図を示す。更に、図9には、図8に示す断面が得られた断面線VIII-VIIIが示されている。
【0103】
以下では、上述した第1の実施形態との違いについてのみ述べる。具体的には、符号は、第1の実施形態に関連して既に説明したものと同じ意味を有する。前述の説明は、第2の実施形態においても、全て同一又は同等であることと理解されたい。
【0104】
第2の実施形態では、用途によっては、ロータ3の軸方向A及び径方向面に対する傾き、即ち、受動的に磁気的に安定化される3つの自由度を更に向上できる複数の更なる手段が実現されている。これらの手段は、全てを実現することが可能だが、全てを実現する必要はないことを理解されたい。これは、例えば、第2の実施形態を参照して説明される手段のうちの1つ以上を、第1の実施形態と組み合わせるような実施形態も可能であることを意味する。
【0105】
図8及び図9に示す本発明に係る遠心ポンプ1の第2の実施形態では、入口接続部として設計されたポンプハウジング2の入口21は、軸方向Aに対して垂直な流れの断面が、入口面211より小さく且つ入口接続部21の出口面212より小さいくびれ領域213を有する。また、入口接続部21の入口面211は、その出口面212よりも大きい。各面を比較すると、入口面211は、出口面212よりも大きく、出口面212は、くびれ領域213における流れの断面よりも大きい。
【0106】
ポンプハウジング2の出口22は、第1の実施形態で説明したものと同等の形態で設計されている。即ち、出口接続部22の入口面221が、出口接続部22の出口面222よりも小さく、且つ、中心軸Mがポンプハウジング2のカバー25よりも、ロータ3の環状磁気有効コア31の近傍となるように出口接続部22が軸方向Aに対して配置されるように設計されている。出口22内の点線を参照すると、図8は、出口接続部22の内部がどのように設計されているかを示しており、出口接続部22の出口面222が、出口接続部21の入口面221よりも大きくなっている。
【0107】
通常、出口接続部22の出口面222、及び入口接続部21の入口面211は、それぞれ周壁を含む大きさが、規格に基づいて予めに設定されている。入口接続部21の入口面211における外径、及び出口接続部22の出口面222における外径は、遠心ポンプ1が、流れ系における一般的な配管や管に接続可能な寸法になっている。
【0108】
更に、ロータ3は、環状の円盤のように設計されており、インペラ32の羽根33における入口21又はカバー25に対向する端縁を覆うカバープレート36を有している。カバープレート36には、中央に配置された開口361が設けられており、流体は、これを通してインペラ32へ流れ込むことができる。
【0109】
ロータ3の磁気有効コア31は、磁気有効コア31及び任意のジャケット35を完全に貫通して軸方向Aに延在する中央孔37を任意に有することができる。
【0110】
あるいは又はこれに加えて、ロータ3は、1つのバランスホール38又は複数のバランスホール38を備えてもよく、各バランスホール38は、ロータ3の磁気有効コア31及び任意のジャケット35を完全に貫通して軸方向Aに延在する。各バランスホール38は、分散して配置されることが好ましい、即ち、ロータ3の中心以外に配置されることが好ましい。
【0111】
第2の実施形態では、複数のバランスホール38、具体的には8つのバランスホール38が設けられている。
【0112】
バランスホール38は、好ましくは、円形の線上に配置され、円の中心は、ロータ3の中心に位置する。これは、ロータ3に中央孔37が設けられている場合に、バランスホール38が中央孔37の周囲において円形に配置されていることを意味する。最大で又は丁度8つのバランスホール38が設けられていることが好ましく、これらは、ロータ3の中央孔37の周囲又はロータ3の中心の周囲において等距離で配置されていることが好ましい。
【0113】
各バランスホール38は、中央孔37の直径よりも小さい直径をそれぞれ有する。
【0114】
カバー25に対して反対側に向いており、底部27に対向するロータ3の軸方向の端面には、複数の後側羽根39が設けられている。動作状態において、これらの後側羽根39は、ポンプハウジング2の底部27に対向している。第2の実施形態では、合計8つの後側羽根39が設けられている。
【0115】
後側羽根39は、例えば、ロータ3のジャケット35に凹みを設けて、各後側羽根39を隣接する2つの凹みの間に形成することで実現可能である。
【0116】
更に、後側羽根39を隆起として設計することも勿論可能である。この場合、例えば、インペラに類似した構造体を作り、これをロータ3の軸方向端面に取り付けることで、後側羽根39がポンプハウジング2の底部27に対向することになる。勿論、各後側羽根38を個別に製造し、ロータ3の軸方向端面に取り付けることも可能である。
【0117】
好ましくは、各後側羽根39は、ロータ3の軸方向端面における径方向の外縁から径方向内側に向かって延在する。各後側羽根39は、軸方向端面の中心又は中央孔37まで延在可能であり、又は、各後側羽根39は、図9に示すように、軸方向端面の半径よりも小さい径方向長さ、例えば、その半分の径方向長さを有する。他の実施形態では、後側羽根39は、曲線状にも設計可能である。
【0118】
第2の実施形態では、インペラ32上に環状又は円盤状の圧力プレート321が設けられ、軸方向Aに対して垂直に配設されている。圧力プレート321は、軸方向Aにおいて、磁気有効コアとポンプハウジング2のカバー25に対向するインペラ32の端部との間であり、例えば、インペラ32の各羽根33の中間にあたる位置に配置されている。圧力プレート321は、インペラ32の羽根間に延在する。ロータ3がカバープレート36を有する場合、圧力プレート321は、軸方向Aにおいて磁気有効コア31とカバープレート36との間に配置され、カバープレート36に対して平行になる。圧力プレート321は、全ての羽根間に延在する。圧力プレート321は、径方向においてロータ3を中心に配置され、所定の軸方向距離から全バランスホール38を覆える程度の距離だけ少なくとも径方向に延在している。図8に示した実施形態では、圧力プレート321の直径は、羽根33において測定したインペラ32の直径よりも大幅に小さい。
【0119】
図10は、ロータ3の変形例を概略断面図で示している。このロータ3は、図8に示したロータ3に対して、圧力プレート321がより大きな直径を有する点で異なる。図10に示す変形例では、圧力プレート321は、インペラ32の羽根33における径方向のほぼ外端まで径方向に延在している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10