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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】含フッ素カルボン酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/22 20060101AFI20250117BHJP
   C07C 309/82 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07C303/22
C07C309/82
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020179195
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022070145
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 開史
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-036454(JP,A)
【文献】再公表特許第98/043952(JP,A1)
【文献】国際公開第2020/012913(WO,A1)
【文献】特開2003-012634(JP,A)
【文献】ZHIYONG, Z. et al.,Study on the preparation of perfluoro(3-oxa-4-pentene)sulfonyl fluoride monomer,Youjifu Gongye,2013年,Vol.4,pp.5-6,24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(4):
FSOCFXCFOCF(CFY)COM (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素カルボン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
FSOCFXCFOCF(CFY)COF (1)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と、
下記一般式(2):
CO (2)
(式中、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属炭酸塩(2)とを、
下記一般式(3):
(OROR (3)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~10であり、RとRとは連結していてもよく;pは、0又は1である。)
で表されるエーテル系化合物(3)(但し、グライム、テトラグライム及びジエチレングリコールジメチルエーテルを除く)の存在下で反応させ
前記エーテル系化合物が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、及び1,2-ジメトキシプロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素カルボン酸塩の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記一般式(1):
FSOCFXCFOCF(CFY)COF (1)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素カルボン酸フッ化物(1)(以下、「化合物(1)」ともいう。)より、
下記一般式(4):
FSOCFXCFOCF(CFY)COM (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素カルボン酸塩(4)(以下、「化合物(4)」ともいう。)を製造できることが知られている(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、X=F、Y=Fである含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と炭酸ナトリウムとを、アセトニトリルの存在下、室温で1時間、40℃で1時間反応させた後、濾過、溶媒除去、減圧下で溶媒を留去することにより、X=F、Y=F、M=Naである含フッ素カルボン酸塩(4)を得る方法が開示されている。また、得られた含フッ素カルボン酸塩(4)は、各種の有用なフッ素化合物に変換できることも開示されている。
【0004】
非特許文献1では、X=F、Y=Fである含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と炭酸ナトリウムとを、テトラエチレングリコールジメチルエーテルの存在下、30℃以下を維持しながら3時間、40℃で1時間反応させることで、X=F、Y=F、M=Naである含フッ素カルボン酸塩(4)が生成したことを開示している。また、得られた含フッ素カルボン酸塩(4)は、各種の有用なフッ素化合物に変換できることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2002/062749号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Fluorine Chemistry 127巻(2006年)1087-1095頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、X=F、Y=Fである含フッ素カルボン酸フッ化物(1)103.8gから、X=F、Y=F、M=Naである含フッ素カルボン酸塩(4)96.0gを得ており、純度の記載がないものの、ほぼ純度100%と仮定して、収率を算出すると87%であり、より高い収率が得られる製造方法が求められている。
【0008】
非特許文献1では、X=F、Y=F、M=Naである含フッ素カルボン酸塩(4)の生成を19F-NMRにより分析しているのみで、含フッ素カルボン酸塩(4)の生成量に関する記載はなかったが、やはり収率の点で改良の余地があると考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素カルボン酸塩(4)を収率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と、特定のアルカリ金属炭酸塩(2)(以下、「化合物(2)」ともいう。)とを、特定のエーテル系化合物(3)(以下、「化合物(3)」ともいう。)の存在下で反応させることで、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(4):
FSOCFXCFOCF(CFY)COM (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素カルボン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
FSOCFXCFOCF(CFY)COF (1)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と、
下記一般式(2):
CO (2)
(式中、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属炭酸塩(2)とを、
下記一般式(3):
(OROR (3)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~10であり、RとRとは連結していてもよく;pは、0又は1である。)
で表されるエーテル系化合物(3)(但し、グライム、テトラグライム及びジエチレングリコールジメチルエーテルを除く)の存在下で反応させ
前記エーテル系化合物が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、及び1,2-ジメトキシプロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする、製造方法
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素カルボン酸塩(4)を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施形態の製造方法は、
下記一般式(4):
FSOCFXCFOCF(CFY)COM (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素カルボン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
FSOCFXCFOCF(CFY)COF (1)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素カルボン酸フッ化物(1)と、
下記一般式(2):
CO (2)
(式中、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属炭酸塩(2)とを、
下記一般式(3):
(OROR (3)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~10であり、RとRとは連結していてもよく;pは、0又は1である。)
で表されるエーテル系化合物(3)の存在下で反応させる
ことを特徴とする。
【0015】
以下、化合物(1)、(2)、及び(3)、並びに化合物(1)から化合物(4)を製造する際の反応条件等の詳細について説明する。
【0016】
<含フッ素カルボン酸フッ化物(1)(化合物(1))>
含フッ素カルボン酸フッ化物(1)は、下記一般式(1):
FSOCFXCFOCF(CFY)COF (1)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり;Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される。
化合物(1)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
Xとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましく、同様の観点からフッ素原子がより好ましい。
Yとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、同様の観点からフッ素原子がより好ましい。
XとYの組み合わせとしては、いずれもフッ素原子(X=F、Y=F)であることが、特に好ましい。
【0018】
化合物(1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、X=F、Y=Fである化合物(1)は、国際公開第1998/43952号に記載の方法により、製造することができる。また、化合物(1)は、例えば、Synquest Laboratories社から購入することもできる。
【0019】
<アルカリ金属炭酸塩(2)(化合物(2))>
アルカリ金属炭酸塩(2)は、下記一般式(2):
CO (2)
(式中、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される。
化合物(2)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
Mとしては、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、Na、K、又はCsが好ましく、同様の観点からNa又はKがより好ましい。
【0021】
化合物(2)は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
化合物(2)の含水量を低減させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、加熱する方法、真空下で加熱する方法、乾燥ガス流通下で加熱する方法などが挙げられる。
加熱する温度は、化合物(2)の含水量を低減できる温度であれば特に限定されないが、化合物(2)の分解を抑制できる傾向にあることから、600℃以下であることが好ましい。過剰な加熱を抑制し、より経済性に優れる傾向にあることから、300℃以下であることがより好ましく、同様の観点から250℃以下であることがさらに好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。また、含水量の低減が促進する傾向にあることから、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
乾燥ガスとしては、一般的に用いられる乾燥ガスであれば特に限定されず、乾燥空気、乾燥窒素などが挙げられる。
【0022】
<エーテル系化合物(3)(化合物(3))>
エーテル系化合物(3)は、下記一般式(3):
(OROR (3)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~10であり、Rと、Rは連結していてもよく;pは、0又は1である。)で表される。
化合物(3)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
化合物(3)のR、R、Rは、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。
置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトリル基(-CN)、エーテル基(-O-)、カーボネート基(-OCO-)、エステル基(-CO-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド基(-S-)、スルホキシド基(-SO-)、スルホン基(-SO-)、及びウレタン基(-NHCO-)等が挙げられる。
、R、Rとしては、化合物(1)と化合物(2)との反応性を高める観点から、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基が好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、無置換の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0024】
化合物(3)のR、R、Rの炭素数は、1~10である。
pが0の場合、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、R、Rの炭素数は6以下であることが好ましく、同様の観点から5以下であることがより好ましい。pが0であって、R、Rが連結していない場合には、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、R、Rの炭素数は1以上であることが好ましい。pが0であって、R、Rが連結している場合には、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、R、Rの炭素数は2以上であることが好ましい。
また、pが1の場合、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、R、Rの炭素数は6以下であることが好ましく、同様の観点から4以下であることがより好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、R、Rの炭素数は2以下であることがさらに好ましく、同様の観点から、1であることが特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、Rの炭素数は2以上であることが好ましく、同様の観点から、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。経済性に優れる傾向にあることから、Rの炭素数は3以下であることがさらに好ましい。化合物(1)と化合物(2)の反応性が高まる傾向にあり、経済性に優れる傾向にあることから、Rの炭素数は2であることが特に好ましい。
【0025】
化合物(3)としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン等が挙げられる。
【0026】
化合物(1)と化合物(2)の反応性が高まる傾向にあることから、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンが好ましく、同様の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンがより好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンがさらに好ましい。
【0027】
化合物(3)は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
含水量が少ない化合物(3)は、購入することもできるし、化合物(3)の含水量を減少させる方法を利用することもできる。化合物(3)の含水量を減少させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、例えば、脱水剤を利用する方法、蒸留する方法などが挙げられる。
脱水剤としては、一般的に用いられる脱水剤であれば特に限定されないが、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、及びモレキュラーシーブなどが挙げられる。脱水剤を用いた場合、化合物(1)と化合物(2)との反応に影響がなければ脱水剤を含んだ化合物(3)を利用してもよいし、ろ過などにより脱水剤を含まない化合物(3)を利用してもよい。
【0028】
<化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)>
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)は、化合物(4)の収量が増える傾向にあり、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。未反応の化合物(1)が残ることを抑制できる傾向にあることから、1以上であることがさらに好ましい。
【0029】
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)の上限は、特に限定されないが、化合物(2)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、β/αが10以下であることが好ましく、同様の観点から、β/αが7以下であることがより好ましく、β/αが5以下であることがさらに好ましい。
【0030】
<化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)>
化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)は、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、同様の観点から、δ/γが0.8以上であることがより好ましく、δ/γが1以上であることがさらに好ましい。
【0031】
化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)の上限は、特に限定されないが、化合物(3)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、δ/γが10以下であることが好ましく、同様の観点から、δ/γが7以下であることがより好ましく、δ/γが5以下であることがさらに好ましい。
【0032】
<化合物(1)と化合物(2)との反応>
化合物(1)と化合物(2)との反応温度は、一般的に用いられる反応温度であれば特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましい。
【0033】
化合物(1)と化合物(2)との反応温度の上限は、特に限定されないが、化合物(1)の揮発を抑制できる傾向にあり、含フッ素カルボン酸塩(4)の収率がより高まる傾向にあることから、160℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましい。化合物(1)と化合物(2)との反応における副反応が抑制できる傾向にあることから、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の反応温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0034】
化合物(1)と化合物(2)との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(4)の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。過剰な反応時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
【0035】
化合物(1)と化合物(2)との反応圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、化合物(1)及び/又は化合物(3)の種類によっては、標準状態での蒸気圧が低いため、化合物(1)及び/又は化合物(3)を液化させ、再利用しない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。化合物(1)及び/又は化合物(3)を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
化合物(1)と化合物(2)との反応の圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0036】
化合物(1)と化合物(2)との反応の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
化合物(1)、(2)、(3)を添加する順序は特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応は発熱反応であり、特に化合物(1)、(2)、(3)の使用量が多い場合には、副反応を抑制できる傾向にあることから、化合物(1)と化合物(3)との混合物を化合物(2)に徐々に添加する方法、化合物(1)と化合物(3)との混合物へ化合物(2)を徐々に添加する方法、化合物(2)と化合物(3)との混合物を化合物(1)に徐々に添加する方法、化合物(2)と化合物(3)の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法が、好ましい方法として例示される。
【0038】
以上のように、本発明は、従来よりも各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素カルボン酸塩(4)を収率よく製造することができる。
【実施例
【0039】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例、参考例及び比較例において使用された分析方法は、以下のとおりである。
【0041】
<核磁気共鳴分析(NMR):19F-NMRによる分子構造解析>
実施例、参考例及び比較例で得られた生成物について、19F-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:19
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(H)
パルス幅:6.5μ秒
待ち時間:2秒
積算回数:16回
【0042】
実施例、参考例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
【0043】
(含フッ素カルボン酸フッ化物(1)(化合物(1))
国際公開第1998/43952号に記載の方法に従い、CFCF(COF)OCFCFSOFを製造し、さらに蒸留精製することで、純度>99%のCFCF(COF)OCFCFSOFを得た。
【0044】
(アルカリ金属炭酸塩(2)(化合物(2))
・炭酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・炭酸カリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・炭酸ルビジウム(Aldrich社製、純度99%)
・炭酸セシウム(Aldrich社製、純度99%)
【0045】
(エーテル系化合物(3)(化合物(3))
・4-メチルテトラヒドロピラン(東京化成工業株式会社製)
・1,2-ジメトキシエタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・シクロペンチルメチルエーテル(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・2-メチルテトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・1,4-ジオキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・メチルtert-ブチルエーテル(東京化成工業株式会社製)
【0046】
(その他)
・ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・トルエン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・クロロホルム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・アセトニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)
・ベンゾトリフルオリド(東京化成工業株式会社製)
・アセトン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
【0047】
[実施例1]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と炭酸ナトリウム(0.95g、8.93mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を30℃に設定し、試験管に4-メチルテトラヒドロピラン(3.00g)を加え、攪拌した。続いてCFCF(COF)OCFCFSOF(3.00g、8.67mmol)を10分かけて滴下した。さらに2時間攪拌した後、室温に戻した。分析のため、ベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(5)で表される含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:3.08g、生成物質量:8.43mmol、生成率:97.2%)。なお、分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF及び含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)のCFの積分値より、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
NaOCCF(CF)OCFCFSOF (5)
19F-NMR:δ(ppm)43.37(1F)、-80.15(1F)、-83.12(3F)、-83.47(1F)、-112.84(2F)、-127.14(1F)
【0048】
参考例2]
4-メチルテトラヒドロピランを1,2-ジメトキシエタンとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:3.08g、生成物質量:8.42mmol、生成率:97.1%)。
また、本参考例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0049】
[実施例3]
4-メチルテトラヒドロピランをシクロペンチルメチルエーテルとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.93g、生成物質量:8.00mmol、生成率:92.3%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0050】
[実施例4]
4-メチルテトラヒドロピランをテトラヒドロフランとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.94g、生成物質量:8.02mmol、生成率:92.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0051】
[実施例5]
4-メチルテトラヒドロピランを2-メチルテトラヒドロフランとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.92g、生成物質量:7.98mmol、生成率:92.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0052】
[実施例6]
4-メチルテトラヒドロピランを1,4-ジオキサンとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.93g、生成物質量:8.01mmol、生成率:92.4%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0053】
[実施例7]
4-メチルテトラヒドロピランをメチルtert-ブチルエーテルとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.92g、生成物質量:7.97mmol、生成率:92.0%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0054】
[実施例8]
炭酸ナトリウムを炭酸カリウム(1.23g、8.93mmol)とし、加熱冷却攪拌装置を10℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸カリウム塩(KOCCF(CF)OCFCFSOF)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸カリウム塩が生成していた(生成量:3.23g、生成物質量:8.44mmol、生成率:97.4%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0055】
[実施例9]
炭酸ナトリウムを炭酸ルビジウム(2.06g、8.93mmol)とし、加熱冷却攪拌装置を0℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ルビジウム塩(RbOCCF(CF)OCFCFSOF)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ルビジウム塩が生成していた(生成量:3.53g、生成物質量:8.24mmol、生成率:95.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0056】
[実施例10]
炭酸ナトリウムを炭酸セシウム(2.91g、8.93mmol)とし、加熱冷却攪拌装置を0℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸セシウム塩(CsOCCF(CF)OCFCFSOF)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸セシウム塩が生成していた(生成量:3.93g、生成物質量:8.25mmol、生成率:95.2%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0057】
[実施例11]
炭酸ナトリウムの使用量を4.59g(43.34mmol)とし、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:3.08g、生成物質量:8.42mmol、生成率:97.1%)。
また、本実施例では、β/αは5.0であり、γ/δは1.0であった。
[実施例12]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と炭酸ナトリウム(0.32g、2.98mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を20℃に設定し、試験管に4-メチルテトラヒドロピラン(5.00g)を加え、攪拌した。続いてCFCF(COF)OCFCFSOF(1.00g、2.89mmol)を10分かけて滴下した。さらに2時間攪拌した後、室温に戻した。分析のため、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:1.03g、生成物質量:2.82mmol、生成率:97.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは5.0であった。
【0058】
[実施例13]
加熱冷却攪拌装置を60℃に設定してCFCF(COF)OCFCFSOF(3.00g、8.67mmol)を10分かけて滴下した後、1時間攪拌し、室温に戻した後ベンゾトリフルオリド(0.30g)を加えた以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:3.05g、生成物質量:8.33mmol、生成率:96.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0059】
[比較例1]
4-メチルテトラヒドロピランをヘキサンとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)は検出されなかった。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0060】
[比較例2]
4-メチルテトラヒドロピランをトルエンとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)は検出されなかった。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0061】
[比較例3]
4-メチルテトラヒドロピランをクロロホルムとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)を製造した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)は検出されなかった。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.0であった。
【0062】
[比較例4]
特許文献1の実施例1を参考に、次のように実施した。
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と炭酸ナトリウム(0.92g、8.67mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を30℃に設定し、試験管にアセトニトリル(3.38g)を加え、攪拌した。続いてCFCF(COF)OCFCFSOF(3.00g、8.67mmol)を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。加熱冷却攪拌装置を40℃に設定し、さらに1時間攪拌した。室温に戻した後、分析のため、ベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.61g、生成物質量:7.13mmol、生成率:82.3%)。
また、本実施例では、β/αは1.0であり、γ/δは1.1であった。
【0063】
[比較例5]
非特許文献1を参考に、次のように実施した。
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と炭酸ナトリウム(1.06g、9.96mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を30℃に設定し、試験管にテトラエチレングリコールジメチルエーテル(3.24g)を加え、攪拌した。続いてCFCF(COF)OCFCFSOF(3.00g、8.67mmol)を10分かけて滴下し、3時間攪拌した。加熱冷却攪拌装置を40℃に設定し、さらに1時間攪拌した。室温に戻した後、分析のため、ベンゾトリフルオリド(0.30g)、アセトン(12.00g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素カルボン酸ナトリウム塩(5)が生成していた(生成量:2.37g、生成物質量:6.48mmol、生成率:74.7%)。
また、本実施例では、β/αは1.1であり、γ/δは1.1であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の製造方法によれば、従来よりも収率よく、各種の工業的に有用なフッ素化合物に変換することができる含フッ素カルボン酸塩(4)を製造することができるため、各種フッ素含有化合物、イオン交換樹脂、イオン交換膜、食塩電解膜、燃料電池膜、レドックスフロー電池用膜、水電解用膜等の原料の製造において好適に用いることができる。