(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】情報生成装置、情報生成方法、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2020197106
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘典
(72)【発明者】
【氏名】東 和理
(72)【発明者】
【氏名】阿内 良太
【審査官】阿部 知
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-530376(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2095805(KR,B1)
【文献】特開2017-176828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得するように構成されている取得部と、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得部によって取得された前記呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成するように構成されている制御部と、を備え、
前記制御部は、前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を表示させるための表示データを生成するように構成されており、
前記呼吸波形データに基づく呼吸波形は、前記被検者による一回の呼吸に対応する単位呼吸波形を少なくとも一つは含んでおり、
前記表示データは、前記呼吸深度情報が前記単位呼吸波形の近傍に表示されるように生成される、情報生成装置。
【請求項2】
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得するように構成されている取得部と、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得部によって取得された前記呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成するように構成されている制御部と、を備え、
前記呼吸波形データに基づく呼吸波形は、前記被検者による一回の呼吸に対応する単位呼吸波形を少なくとも一つは含んでおり、
前記制御部は、前記単位呼吸波形ごとの前記呼吸深度情報を表示させるための表示データを生成するように構成されている、情報生成装置。
【請求項3】
前記呼吸基準波形データに基づく呼吸圧を示す第一の値と、前記呼吸波形データに基づく呼吸圧を示す第二の値と、を比較することで生成される、請求項1
または2に記載の情報生成装置。
【請求項4】
前記呼吸基準波形データは、前記被検者から予め取得された呼吸波形データに基づいて設定される、請求項1から
3のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項5】
前記呼吸基準波形データは、前記被検者の属性に関する属性情報に基づいて設定される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項6】
前記属性情報は、年齢情報、性別情報、持病情報および既往症情報の少なくとも一つを含む、請求項
5に記載の情報生成装置。
【請求項7】
前記呼吸基準波形データは、第一振幅を有する第一呼吸波形を含み、
前記呼吸波形データは、第二振幅を有する第二呼吸波形を含み、
前記第一振幅は、前記第一呼吸波形における呼気のピーク圧と、前記第一呼吸波形における吸気のピーク圧と、に基づいて決定され、
前記第二振幅は、前記第二呼吸波形における呼気のピーク圧と、前記第二呼吸波形における吸気のピーク圧と、に基づいて決定され、
前記制御部は、前記第一振幅と、前記第二振幅と、を比較することで、前記呼吸深度情報を生成する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項8】
前記呼吸深度情報は、前記呼吸基準波形データに基づく呼吸圧を示す第一の値に対する、前記呼吸波形データに基づく呼吸圧を示す第二の値の相対的な大きさに応じた分類情報を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項9】
前記呼吸深度情報は、前記呼吸基準波形データに基づく呼吸圧を示す第一の値に対する、前記呼吸波形データに基づく呼吸圧を示す第二の値の相対的な大きさを示す数値情報を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を表示させるための表示データを生成するように構成されており、
前記呼吸波形データに基づく呼吸波形は、前記被検者による一回の呼吸に対応する単位呼吸波形を少なくとも一つは含んでおり、
前記表示データは、前記呼吸深度情報が前記単位呼吸波形の近傍に表示されるように生成される、請求項
2に記載の情報生成装置。
【請求項11】
前記表示データは、前記呼吸深度情報が前記単位呼吸波形のピークの近傍に表示されるように生成される、請求項1または
10に記載の情報生成装置。
【請求項12】
前記呼吸波形は、前記単位呼吸波形を複数含んでおり、
前記表示データは、前記呼吸深度情報がそれぞれの前記単位呼吸波形におけるピークの近傍に表示されるように生成される、請求項1、
10または
11に記載の情報生成装置。
【請求項13】
前記制御部は、所定の時間において連続的に生成された複数の前記呼吸深度情報に基づいて、前記所定の時間における前記被検者の呼吸の深さに関する集約情報を生成するように構成されている、請求項1
または2に記載の情報生成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を表示させるための表示データを生成するように構成されており、
前記制御部は、前記表示データとして、前記呼吸波形データに基づく呼吸波形において吸気圧が呼気圧よりも上方にある第一表示データと、前記呼吸波形において前記呼気圧が前記吸気圧よりも上方にある第二表示データのどちらか一方を生成するように構成されている、請求項1から
13のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項15】
前記情報生成装置は、表示部を備え、
前記制御部は、前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を前記表示部に表示させるための表示データを生成するように構成されている、請求項1から
14のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項16】
前記制御部は、少なくとも前記呼吸深度情報に基づいて、前記被検者の呼吸の深さの状態を報知するための報知信号を生成するように構成されている、請求項1から
15のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項17】
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得するステップと、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得された前記呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成するステップと、
前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を表示させるための表示データを生成するステップと、を情報生成装置により実行する情報生成方法であって、
前記呼吸波形データに基づく呼吸波形は、前記被検者による一回の呼吸に対応する単位呼吸波形を少なくとも一つは含んでおり、
前記表示データは、前記呼吸深度情報が前記単位呼吸波形の近傍に表示されるように生成される、情報生成方法。
【請求項18】
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得する機能と、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得された呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成する機能と、
前記呼吸波形データと、前記呼吸深度情報と、を表示させるための表示データを生成する機能と、をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムであって、
前記呼吸波形データに基づく呼吸波形は、前記被検者による一回の呼吸に対応する単位呼吸波形を少なくとも一つは含んでおり、
前記表示データは、前記呼吸深度情報が前記単位呼吸波形の近傍に表示されるように生成される、コンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項
18に記載のコンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報生成装置、情報生成方法、当該装置に当該方法を実行させるためのコンピュータプログラム、および当該コンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鼻内圧呼吸気の測定結果についてリアルタイム解析を行い、その解析結果をディスプレイに表示させる生体情報処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検者の呼吸状態は一般的に、呼吸の早さと呼吸の深さに基づいて判断される。呼吸の早さは呼吸数から客観的に判断することができるが、呼吸の深さは医療従事者が呼吸波形を目視することで主観的に判断しており、客観的に判断することが難しい。特許文献1に係る生体情報処理装置は、被検者の呼吸数を算出することができるため、医療従事者はこのような生体情報処理装置を用いることで、呼吸の早さを客観的に把握することはできるものの、呼吸の深さを客観的に把握することはできない。この点において、従来の生体情報処理装置には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、被検者の呼吸の深さを客観的に把握することが可能な情報生成装置、情報生成方法、当該装置に当該方法を実行させるためのコンピュータプログラム、および当該コンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係る情報生成装置は、
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得するように構成されている取得部と、 予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得部によって取得された前記呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成するように構成されている制御部と、を備える。
【0007】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る情報生成方法は、
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得するステップと、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得された前記呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成するステップと、を情報生成装置により実行する。
【0008】
また、上記の目的を達成するための一態様に係るコンピュータプログラムは、
被検者の呼吸圧に関する呼吸波形データを取得する機能と、
予め設定された呼吸基準波形データと、前記取得された呼吸波形データと、を比較することで、前記呼吸基準波形データに対する前記呼吸波形データの呼吸の深さを示す呼吸深度情報を生成する機能と、をコンピュータに実現させる。
【0009】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る非一時的コンピュータ可読媒体には、
上記コンピュータプログラムが記憶されている。
【0010】
上記構成に係る情報生成装置、情報生成方法、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体によれば、呼吸深度情報は、被検者の呼吸の深さを判断するための基準となる呼吸基準波形データと被検者から取得された呼吸波形データを比較することで生成されるため、被検者の呼吸の深さを客観的に示す情報である。したがって、例えば医療従事者は、呼吸深度情報に基づく表示画面を視認することで、従来のように個人の経験等に基づいて呼吸の深さを判断するのではなく、客観的な指標となる呼吸深度情報に基づいて呼吸の深さを判断することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検者の呼吸の深さを客観的に把握することが可能な情報生成装置、情報生成方法、当該装置に当該方法を実行させるためのコンピュータプログラム、および当該コンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報生成装置の機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る情報生成方法のフローチャート図である。
【
図3】
図3は、被検者の呼吸波形を含む生体波形の一例である。
【
図4】
図4は、被検者の呼吸基準波形の一例である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る表示画面の一例である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る表示画面の一例である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図4および
図6に例示する各波形、または
図5および
図7~
図8に例示する表示部7において設定された相対的な方向である。
【0014】
(第一実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る情報生成装置1の機能ブロック図である。情報生成装置1は、例えば、ベッドサイドモニタである。
図1に例示するように、情報生成装置1は、取得部2と、操作部3と、記憶部4と、制御部5と、出力インターフェース6と、表示部7と、報知部8と、を備えている。これらはバス9を介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
取得部2は、被検者Pの呼吸圧に関する呼吸波形データを含む生体情報を被検者Pから取得するように構成されている。呼吸波形データは、圧力センサ10によって検出された被検者Pの口内または鼻内の少なくとも一方からの呼吸気に対応する生体信号に基づいている。取得部2が取得する生体情報は、各種センサにより検出される心電図波形データ、経皮的動脈血酸素飽和度データ等を含みうる。取得部2によって取得された生体情報は、記憶部4や制御部5に送信される。
【0016】
操作部3は、情報生成装置1を操作する者(例えば、医療従事者)の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成するように構成されている。操作部3は、例えば、表示部7上に重ねて配置されたタッチパネル、情報生成装置1の筐体に取り付けられた操作ボタン等である。操作部3は、各種入力操作等を受け付けて、当該入力操作に対応する指示信号を生成し、制御部5に送信する。
【0017】
記憶部4は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部4は、取得部2によって取得された生体情報、操作部3を介して入力された情報、制御部5により生成された情報等を記憶する。
【0018】
制御部5は、メモリ51と、プロセッサ52と、を備えている。メモリ51は、例えば、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサ52により実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサ52は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、ROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0019】
制御部5は、呼吸の深さに関する情報である呼吸深度情報を生成するように構成されている。生成された呼吸深度情報は、記憶部4に送信されうる。なお、呼吸深度情報は、分類された被検者Pの呼吸の深さの状態に応じた分類情報と、被検者Pの呼吸の深さの状態を数値で表す数値情報と、を含む。
【0020】
制御部5は、呼吸深度情報に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要があるかどうかを判断するように構成されている。なお、制御部5は、呼吸深度情報のみならず、例えば、後述する集約情報等も用いて、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要があるかどうかを判断するように構成されていてもよい。制御部5は、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要があると判断した場合、被検者Pの呼吸の深さの状態を医療従事者等に報知するための報知信号を生成するように構成されている。当該生成された報知信号は、報知部8または出力インターフェース6を介して外部装置20に送信される。
【0021】
制御部5は、所定の時間における複数の呼吸深度情報を集約した集約情報を生成するように構成されている。当該所定の時間の長さは、医療従事者等によって任意に設定される。所定の時間は、例えば10分間である。生成された集約情報は、記憶部4に送信されうる。
【0022】
制御部5は、呼吸波形データと呼吸深度情報を表示部7または外部装置20に備わる表示部に表示させるための表示データを生成するように構成されている。生成された表示データは、出力インターフェース6または表示部7に送信される。
【0023】
出力インターフェース6は、出力インターフェース6に送信された情報に対応する出力信号OSを出力するように構成されている。出力信号OSは、外部装置20に送信されうる。出力インターフェース6は、外部装置20が処理可能な出力信号OSに出力データを変換する回路を必要に応じて備えうる。
【0024】
外部装置20は、視覚的報知、聴覚的報知、および触覚的報知の少なくとも一つにより、医療従事者等に各種情報を報知するように構成されている。外部装置20は、例えばタブレット端末、スマートフォン等である。
【0025】
表示部7は、制御部5から受信した表示データに対応する表示画面を表示するように構成されている。表示部7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のタッチスクリーン型のディスプレイ等である。なお、表示部7には、呼吸波形データと呼吸深度情報のみならず、これら以外の他の情報も表示されてもよい。当該他の情報としては、例えば、経皮的動脈血酸素飽和度、心拍数、心電図等に関する情報である。
【0026】
報知部8は、制御部5から受信した報知信号に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知するように構成されている。なお、報知部8による報知の態様は、外部装置20による報知の態様と同様である。
【0027】
次に
図2から
図7を参照しつつ、本実施形態において用いられる情報生成方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る情報生成方法のフローチャート図である。
図2に例示するように、取得部2は、手術前の被検者Pから生体情報を取得する(STEP01)。例えば医療従事者が、操作部3に対して、被検者Pから生体情報を取得するための操作を行うと、当該操作に対応する指示信号が操作部3から制御部5に送信される。制御部5は、当該指示信号に基づいて、被検者Pから呼吸波形データを取得するように取得部2を制御する。本実施形態において、STEP01で被検者Pから取得された生体情報に基づく生体波形が表示部7に表示される場合、表示部7には
図3に例示する生体波形が表示される。当該生体波形は、呼吸波形71と、経皮的動脈血酸素飽和度の波形72と、心電図波形73と、を含む。なお、
図3に示す例において、呼吸数は12であり、経皮的動脈血酸素飽和度の値は98であり、心拍数は80である。また、
図3において、符号80は、呼吸波形71と、経皮的動脈血酸素飽和度の波形72と、心電図波形73と、が同位相であることを示している。取得部2は、被検者Pから生体情報を取得すると、当該取得された生体情報を記憶部4に送信する。
【0028】
本実施形態において、被検者Pは、STEP01の後に手術を受け、当該手術において被検者Pには麻酔薬が投与される。手術中に投与された麻酔薬が被検者Pの体内に残存している場合、手術後における被検者Pの呼吸は、当該残存している麻酔薬により、平常時の呼吸よりも浅くなってしまう虞がある。特に睡眠時には残存麻酔薬の影響により呼吸が浅くなる虞がある。このため、
図2に例示するように、手術が終了してからあまり時間が経過しないうちに、取得部2によって、手術後の被検者Pから生体情報が取得される(STEP02)。STEP02における生体情報の取得過程は、STEP01における生体情報の取得過程と同様である。STEP02で取得された呼吸波形データに基づく呼吸波形75(第二呼吸波形の一例)が表示部7に表示される場合、表示部7には、例えば
図5に示す波形が表示される。なお、当該呼吸波形データは、被検者Pの呼気波形データ(例えば、被検者Pの呼気量および呼気の検出時間に関するデータ)と、被検者Pの吸気波形データ(例えば、被検者Pの吸気量および吸気の検出時間に関するデータ)と、を含んでいる。
【0029】
図2に例示するように、制御部5は、手術後の被検者Pから生体情報が取得されると、被検者Pから予め取得された呼吸波形データが記憶部4にあるかどうかを判断する(STEP03)。本実施形態では、被検者Pから予め取得された呼吸波形データが記憶部4にあるので(STEP03においてYES)、制御部5は、当該予め取得された呼吸波形データに基づいて呼吸基準波形データを設定する(STEP04)。なお、呼吸基準波形データは、制御部5によって自動で設定されてもよいし、医療従事者による操作部3への入力操作により設定されてもよい。また、手術前には被験者の通常の呼吸状態(呼吸の深さ)が正常にわかるため、制御部5は、手術前に被検者Pから取得された呼吸波形データから基準となる呼吸波形データ(呼吸基準波形データ)を設定する。さらに、STEP04で設定された呼吸基準波形データに基づく呼吸基準波形74(第一呼吸波形の一例)が表示部7に表示される場合、表示部7には
図4に例示する波形が表示される。呼吸基準波形74は、被検者Pの標準的な呼吸圧レベルを示す波形である。
【0030】
一方で、
図2に例示するように、被検者Pから予め取得された呼吸波形データが記憶部4にない場合(STEP03においてNO)、制御部5は、記憶部4に記憶されている被検者Pの属性情報を取得する(STEP05)。なお、属性情報は、例えば、年齢情報、性別情報、持病情報、既往症情報等である。
【0031】
制御部5は、被検者Pの属性情報を取得すると、当該取得された属性情報に基づいて呼吸基準波形データを設定する(STEP06)。この場合、制御部5は、例えば、被検者Pの属性情報と同一または近似する属性情報を有する複数の他者から取得された統計的な呼吸波形データに基づいて、呼吸基準波形データを設定する。当該他者としては、例えば、被検者Pと年齢が近い被検者や被検者Pと同じ持病を持つ被検者等である。
【0032】
制御部5は、呼吸基準波形データを設定すると、手術後の被検者Pから取得された呼吸波形データと、呼吸基準波形データと、に基づいて、呼吸深度情報を生成する(STEP07)。
【0033】
ここで、
図4および
図5を用いて、STEP07において制御部5が行う処理について詳細に説明する。
図4に例示するように、制御部5は、呼吸基準波形74における吸気のピーク圧74aと呼気のピーク圧74bに基づいて、呼吸基準波形データに基づく呼吸圧を示す第一振幅A1(第一の値の一例)を決定する。第一振幅A1は、吸気のピーク圧74aの高さと呼気のピーク圧74bの高さの差である。
【0034】
図5に例示するように、呼吸波形75は、複数の単位呼吸波形751~753を含む。単位呼吸波形とは、被検者Pによる一回の呼吸に対応する呼吸波形である。制御部5は、単位呼吸波形751~753における吸気のピーク圧751a~753aと呼気のピーク圧751b~753bに基づいて、呼吸波形データに基づく呼吸圧を示す第二振幅A21~A23(第二の値の一例)をそれぞれ決定する。
【0035】
制御部5は、第一振幅A1に対する第二振幅A21~A23の相対的な大きさを示す相対値X1~X3(数値情報の一例)をそれぞれ算出する。制御部5は、例えば相対値X1を、以下の式(1)に基づいて算出する。
X1=A21/A1*100(%)・・・(1)
本実施形態において、第二振幅A21の大きさは第一振幅A1の大きさの3/4であるので、相対値X1は75%である。
【0036】
相対値X2~X3についても、相対値X1と同様に算出される。つまり、制御部5は、呼吸基準波形データに含まれる呼吸基準波形74の第一振幅A1と、取得部2によって取得された呼吸波形データに含まれる呼吸波形75の第二振幅A21~A23と、を比較することで、第一振幅A1に対する第二振幅A21~A23の相対的な大きさを示す相対値X1~X3を生成する。なお、相対値X1~X3は、単位呼吸波形751~753が取得される毎に生成されていく。
【0037】
制御部5は、生成された相対値X1~X3と、記憶部4に記憶されている分類基準情報と、に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を分類する。分類基準情報とは、呼吸の深さの状態を分類するのに用いる基準を設定するための情報である。呼吸の深さの状態は、例えば、「正常・注意・危険」の3つの状態に分類されうる。この場合、分類基準情報は、例えば当該3つの分類の境界(範囲)を規定するための閾値等である。本実施形態では、制御部5は、相対値が19%以下のとき、被検者Pの呼吸の深さの状態を「危険」に分類し、相対値が20%以上49%以下のとき、当該状態を「注意」に分類し、相対値が50%以上のとき、当該状態を「正常」に分類する。
【0038】
図5に例示する状態において、相対値X1~X3は50%以上であるので、制御部5は、単位呼吸波形751~753に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を「正常」に分類する。制御部5は、単位呼吸波形751~753に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を分類すると、分類された被検者Pの呼吸の深さの状態に応じた分類情報を生成する。このようにして、制御部5は、数値情報および分類情報を含む呼吸深度情報を生成する。
【0039】
図2に戻り、STEP08以降の処理について説明する。STEP08において、制御部5は、取得部2が被検者Pから手術後の呼吸波形データを取得し始めてから所定の時間が経過したかどうかを判断する。なお、本実施形態では、当該所定の時間は10分であるとして説明する。例えば、取得部2が被検者Pから手術後の呼吸波形データを取得し始めた時刻が18:00であり、現在の時刻が18:02である場合、制御部5は、18:00から所定時間(10分間)が経過していないと判断する(STEP08においてNO)。この場合、制御部5は、呼吸波形データと呼吸深度情報を表示部7または外部装置20に備わる表示部に表示させるための表示データを生成する(STEP09)。
【0040】
制御部5は、表示データとして、呼吸波形75において吸気圧が呼気圧よりも上方にある第一表示データと、呼吸波形75において呼気圧が吸気圧よりも上方にある第二表示データのどちらか一方を生成するように構成されている。例えば、医療従事者が操作部3に対して、制御部5に第一表示データを生成させるための操作を行うと、操作部3は当該入力操作に対応する指示信号を生成し、制御部5は、当該指示信号に基づき、第一表示データを生成する。
図5に例示するように、本実施形態では、呼吸波形75において吸気圧が呼気圧よりも上方にある。したがって、制御部5は第一表示データを生成している。生成された第一表示データは、出力インターフェース6または表示部7に送信される。
【0041】
制御部5は、表示データを生成すると、当該生成された表示データに対応する表示画面を表示するよう、表示部7または外部装置20に備わる表示部を制御する(STEP10)。本実施形態において、制御部5は第一表示データを表示部7に送信する。表示部7が制御部5から第一表示データを受信すると、表示部7には、受信した第一表示データに対応する表示画面が表示される。STEP10が実行されると、STEP07に戻る。
【0042】
ここで、
図5を参照しつつ、18:02時点において表示部7に表示される表示画面について説明する。18:02時点において、表示部7には、
図5に例示する表示画面が表示される。
図5に例示するように、表示部7には、呼吸基準波形74と、呼吸波形75と、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76と、心電図波形77と、が表示されている。呼吸基準波形74、呼吸波形75、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76および心電図波形77は、上下方向において並んで表示されている。これらの波形は、上から、呼吸基準波形74、心電図波形77、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76、呼吸波形75の順で並んでいる。つまり、呼吸基準波形74は、呼吸波形75、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76および心電図波形77よりも上方に表示されており、呼吸波形75は、呼吸基準波形74、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76および心電図波形77よりも下方に表示されている。呼吸基準波形の左右方向の長さは、呼吸波形の左右方向の長さの2/5程度である。呼吸波形75、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76および心電図波形77の左側近傍には、それぞれ呼吸数、経皮的動脈血酸素飽和度の値、心拍数が表示されている。なお、呼吸基準波形74、呼吸波形75、経皮的動脈血酸素飽和度の波形76および心電図波形77の表示位置等はこの例に限られないことは勿論である。
【0043】
各単位呼吸波形751~753におけるピークの近傍には、分類情報としてのマーカM1~M3と、相対値X1~X3と、が表示されている。なお、マーカM1~M3には、分類した被検者Pの呼吸の深さの状態を表すハッチングが付される。単位呼吸波形751~753に対応する相対値X1~X3はいずれも50%以上であるので、単位呼吸波形751~753に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態はいずれも「正常」である。したがって、マーカM1~M3には、「正常」を表すハッチング(横線のハッチング)が付されている。相対値X1~X3は、マーカM1~M3の左側近傍に表示されている。
【0044】
次に、
図6を参照しつつ、STEP10が実行された後のSTEP07において制御部5が行う処理について詳細に説明する。なお、
図6は、麻酔薬により被検者Pの呼吸が徐々に浅くなっていく様子を示している。制御部5は、相対値X1~X3の生成に用いられる原理と同様の原理により、単位呼吸波形754~759が取得される毎に相対値X4~X9を生成する。制御部5は、相対値X4~X9を生成すると、単位呼吸波形754~759に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を相対値X4~X9に基づいて分類し、当該分類に対応する分類情報を生成する。
図6に示す例において、相対値X4は50%以上であるので、制御部5は、単位呼吸波形754に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を「正常」に分類する。相対値X4の右側近傍には、「正常」を表すハッチング(横線のハッチング)が付されたマーカM4がある。相対値X5~X7は20%以上49%以下であるので、制御部5は、単位呼吸波形755~757に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を「注意」に分類する。相対値X5~X7の右側近傍には、「注意」を表すハッチング(縦線のハッチング)が付されたマーカM5~M7がある。相対値X8~X9は19%以下であるので、制御部5は、単位呼吸波形758~759に対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を「危険」に分類する。相対値X8~X9の右側近傍には、「危険」を表すハッチング(斜線のハッチング)が付されたマーカM8~M9がある。このようにして、制御部5は、取得部2が被検者Pから手術後の呼吸波形データを取得し始めた時刻から所定時間が経過するまでの間、呼吸深度情報を生成し続ける。
【0045】
図2に戻り、STEP11~STEP13について説明する。例えば、現在の時刻が18:10である場合、制御部5は、取得部2が被検者Pから手術後の呼吸波形データを取得し始めた時刻(18:00)から所定時間(10分間)が経過していると判断する(STEP08においてYES)。この場合、制御部5は、手術後の被検者Pから呼吸波形データを取得し始めてから10分を経過するまでの間に連続的に生成された複数の呼吸深度情報に基づいて、当該所定の時間における被検者Pの呼吸の深さに関する集約情報を生成する(STEP11)。
【0046】
図6に例示するように、制御部5は、集約情報として、平均呼吸深度情報と累積回数情報を生成する。なお、平均呼吸深度情報とは、所定の時間における第一振幅A1に対する第二振幅の相対的な大きさの平均値であり、例えば、所定の時間における第一振幅A1に対する第二振幅A21~A29の相対的な大きさ(相対値X1~X9)の平均値である。また、累積回数情報とは、呼吸の深さの状態に関する分類(すなわち、危険・注意・正常)ごとの累積該当回数を示す情報である。
【0047】
本実施形態において、平均呼吸深度情報とは、相対値X1~X9の平均値である。相対値X1~X9の平均値は46%であるため、本実施形態においては、当該平均値(46%)が平均呼吸深度情報である。ただし、平均呼吸深度情報は平均値等の数値情報に限られず、例えば、呼吸の深さの状態(正常等)を表すレベルや文字等の他の情報であってもよい。累積回数情報については、制御部5が、取得された呼吸波形データと、呼吸基準波形データと、に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を単位呼吸波形ごとに分類し、どの状態に何回分類されたかを集計することで、生成される。なお、本実施形態では、呼吸の深さの状態に関する分類を表す識別標識として、識別標識S1~S3が用いられる。識別標識S1~S3には、マーカM1~M9と同様の基準で、被検者Pの呼吸の深さの状態を表すハッチングが付されている。識別標識S1~S3の右側に表示されている数字は、各状態に分類された累積回数を示している。つまり、制御部5は、手術後の被検者Pから呼吸波形データが取得され始めてから10分間に取得された呼吸波形データに基づく被検者Pの呼吸の深さの状態が、「正常」に61回、「注意」に45回、「危険」に2回分類されたことを集計する。制御部5は、当該集計結果を示す累積回数情報を生成する。
【0048】
図2に例示するように、集約情報が生成されると、制御部5は、呼吸波形データと、呼吸深度情報と、集約情報と、を表示部7または外部装置20に備わる表示部に表示させるための表示データを生成する(STEP12)。なお、制御部5は、STEP12においてもSTEP09と同様に、第一表示データを生成する。本実施形態において、生成された第一表示データは、表示部7に送信される。
【0049】
制御部5が生成した第一表示データを表示部7に送信すると、STEP10と同様に、表示部7には第一表示データに対応する表示画面が表示される(STEP13)。
【0050】
ここで、
図7を参照しつつ、18:10時点において表示部7に表示される表示画面について説明する。ただし、
図5に例示する表示画面と同様の箇所については説明の便宜上、説明を省略する。なお、所定時間(10分間)が経過した後は、直近10分間に生成された複数の呼吸深度情報に基づいて、集約情報は更新される。18:10時点において、表示部7には、
図7に例示する表示画面が表示される。
図7に例示する表示画面は、平均呼吸深度情報が呼吸数(
図7における「8」)の左側近傍に表示されている点と、識別標識S1~S3および累積回数情報が平均呼吸深度情報の左側近傍に表示されている点で
図5に例示する表示画面と異なる。
【0051】
各単位呼吸波形757~759におけるピークの近傍には、マーカM7~M9(分類情報)と、相対値X7~X9(数値情報)と、が表示されている。マーカM7~M9は、上述したハッチングが付されている。すなわち、単位呼吸波形757に対応する相対値X7は20%であるので、マーカM7には、縦線のハッチングが付されている。また、単位呼吸波形758に対応する相対値X8は16%であり、単位呼吸波形759に対応する相対値X9は15%であるので、マーカM8~M9には、斜線のハッチングが付されている。
【0052】
次に、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する機能について説明する。制御部5は、呼吸深度情報に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態が悪いと判断した場合、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要があると判断する。例えば、呼吸深度情報に基づいて算出された相対値が49%以下である場合、制御部5は被検者Pの呼吸の深さの状態が悪いと判断し、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要があると判断する。この場合、制御部5は、被検者Pの呼吸の深さの状態を医療従事者に報知するための報知信号を生成し、当該生成された報知信号を報知部8または外部装置20に送信する。一方、制御部5は、例えば、呼吸深度情報に基づいて算出された相対値が50%以上である場合、制御部5は被検者Pの呼吸の深さの状態は良いと判断する。この場合、制御部5は、被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する必要はないと判断し、報知信号を生成しない。
【0053】
制御部5は、報知信号を生成した場合、例えば、当該生成された報知信号を報知部8に送信する。報知部8は、報知信号を受信すると、当該受信した報知信号に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を医療従事者に報知する。報知部8は、例えば、聴覚的に情報生成装置1の周囲にいる医療従事者に被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する場合、「被検者Pの呼吸状態は悪いようです。被検者Pの容態を確認してください。」といった音声を出力する。また例えば、報知部8は、視覚的に情報生成装置1の周囲にいる医療従事者に被検者Pの呼吸の深さの状態を報知する場合、「被検者Pの呼吸状態は悪いようです。被検者Pの容態を確認してください。」といった文字情報を表示部7に出力させる。
【0054】
これまで説明したような機能は、メモリ51と、プロセッサ52と、により実現されうる。メモリ51には、上述の処理を実行するためのコンピュータプログラムが記憶されうる。当該コンピュータプログラムは、予めメモリ51に格納されていてもよいし、通信ネットワークを介して外部のサーバからダウンロードされてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、コンピュータ可読媒体が利用されてもよい。コンピュータ可読媒体は、プロセッサ52が読み取ることのできる情報やデータを記憶しうる、あらゆるタイプの物理メモリ(RAM、ROM等)を指す。コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサによる実行処理に関する命令を記憶しうる。なお、「コンピュータ可読媒体」という用語は、有形の品目を包含し、かつ搬送波や一時的な信号は除外する(すなわち、非一時的なものを指す)。非一時的コンピュータ可読媒体としては、例えば、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM)である。
【0056】
ところで、被検者の呼吸状態は一般的に、呼吸の早さと呼吸の深さに基づいて判断される。呼吸の早さは呼吸数から客観的に判断することができるが、呼吸の深さは医療従事者が呼吸波形を目視することで主観的に判断しており、客観的に判断することが難しい。そこで発明者は、呼吸基準波形と、被検者から取得された呼吸波形データに含まれる呼吸波形と、を比較すれば、呼吸の深さを客観的に把握することができるのではないかと考えるに至った。
【0057】
上記のような構成によれば、制御部5によって生成された呼吸深度情報は、被検者Pの呼吸の深さを判断するための基準となる呼吸基準波形データと被検者から取得された呼吸波形データを比較することで生成される。つまり、当該呼吸深度情報は、被検者の呼吸の深さを客観的に示す情報である。したがって、例えば医療従事者は、当該呼吸深度情報が表示された表示部7を視認することで、従来のように個人の経験等に基づいて呼吸の深さを判断するのではなく、客観的な指標となる呼吸深度情報に基づいて呼吸の深さを判断することができる。その結果、医療従事者は、被検者Pの呼吸の深さを客観的に把握することができる。
【0058】
また、上記のような構成によれば、制御部5によって生成された呼吸深度情報は、呼吸基準波形データに含まれる第一呼吸波形の第一振幅A1に対する呼吸波形データに含まれる第二呼吸波形の第二振幅A21~A29の相対的な大きさを示す。したがって、この場合においても、医療従事者は、客観的な指標となる呼吸深度情報に基づいて呼吸の深さを判断することができるので、被検者Pの呼吸の深さを客観的に把握することができる。
【0059】
また、上記のような構成によれば、呼吸基準波形データは、被検者Pから予め取得された呼吸波形データに基づいて設定されうる。呼吸波形は被検者ごとに大きく異なるため、呼吸基準波形データは、対象となる被検者から予め取得された呼吸波形データに基づいて設定されるのが望ましい。そのため、上記のような構成によれば、より精度の高い呼吸深度情報を生成することができる。
【0060】
また、上記のような構成によれば、呼吸基準波形データは、被検者Pの属性情報に基づいて設定されうる。したがって、例えば、被検者Pから予め取得された呼吸波形データがない場合であっても、被検者Pの属性情報に基づいて設定された呼吸基準波形データを用いることで、呼吸深度情報を生成することができる。
【0061】
また、上記のような構成によれば、属性情報は、年齢情報、性別情報、持病情報および既往症情報等を含んでいる。したがって、被検者Pから予め取得された呼吸波形データがない場合であっても、例えば、被検者Pに近しい属性の複数の他者から取得された統計的な呼吸波形データに基づいて設定された呼吸基準波形データに基づいて呼吸深度情報が生成される。したがって、被検者Pから予め取得された呼吸波形データがない場合であっても、比較的精度のよい呼吸深度情報を生成することができる。
【0062】
また、上記のような構成によれば、呼吸深度情報は、呼吸基準波形データに含まれる第一呼吸波形が有する第一振幅A1と、呼吸波形データに含まれる第二呼吸波形が有する第二振幅A21~A29と、を比較することで生成される。そして、第一振幅A1および第二振幅A21~A29は、呼気のピーク圧と吸気のピーク圧の両方を用いて決定されるので、制御部5は、被検者Pの呼吸状態がより正確に反映された呼吸深度情報を生成させやすい。
【0063】
また、上記のような構成によれば、呼吸深度情報は、第一振幅A1に対する第二振幅A21~A29の相対的な大きさに応じた分類情報を含む。したがって、医療従事者は、分類情報を用いることで、被検者Pの呼吸の深さの状態を客観的にかつ容易に把握することができる。
【0064】
また、上記のような構成によれば、呼吸深度情報は、第一振幅A1に対する第二振幅A21~A29の相対的な大きさを示す数値情報を含む。したがって、医療従事者は、数値情報を用いることで、被検者Pの呼吸の深さの状態を、数値情報によっても知ることができるので、より客観的にかつ容易に把握することができる。
【0065】
また、上記のような構成によれば、呼吸深度情報が単位呼吸波形751~759の近傍に表示されるように、表示データが生成される。医療従事者は、このような表示データに基づく表示画面を視認することで、呼吸深度情報が呼吸波形のどの部分に対応しているかを容易に認識することができる。また、特に呼吸深度情報が単位呼吸波形751~759のピークの近傍に表示されるように、表示データが生成される場合、医療従事者は、呼吸深度情報が呼吸波形のどの部分に対応しているかをより容易に認識しやすい。
【0066】
また、上記のような構成によれば、呼吸深度情報がそれぞれの単位呼吸波形751~759に対応付けて表示されるように生成される。医療従事者は、このような表示データに基づく表示画面を視認することで、当該所定の時間における被検者の一回ごとの呼吸の深さを一覧的に把握することができる。
【0067】
また、上記のような構成によれば、制御部5は、所定の時間において連続的に生成された複数の呼吸深度情報に基づいて、当該所定の時間における被検者Pの呼吸の深さに関する集約情報を生成する。したがって、例えば医療従事者は、集約情報を用いることで、当該所定の時間における被検者Pの呼吸の深さの概略を容易に把握することができる。
【0068】
また、上記のような構成によれば、制御部5は、表示データとして、呼吸波形において吸気圧が呼気圧よりも上方にある第一表示データと、呼吸波形において呼気圧が吸気圧よりも上方にある第二表示データのどちらか一方を生成する。したがって、情報生成装置1は、呼吸波形を視認する医療従事者に対して、当該医療従事者の好みに応じた呼吸波形の表示態様を提供することができる。
【0069】
また、上記のような構成によれば、情報生成装置1は、呼吸波形データおよび呼吸深度情報を表示するための表示部7を備えている。したがって、情報生成装置1によれば、呼吸波形データおよび呼吸深度情報を表示するための外部装置20がない場合でも、医療従事者は呼吸波形データおよび呼吸深度情報を視認することができる。
【0070】
また、上記のような構成によれば、制御部5は、呼吸深度情報に基づいて、呼吸の深さの状態を報知するための報知信号を生成する。したがって、情報生成装置1によれば、例えば被検者Pの呼吸の深さが悪い状態である場合、その旨が医療従事者に報知される。その結果、医療従事者は、すぐに被検者Pの呼吸の深さの状態を把握することができるため、被検者の呼吸の深さが悪い状態である場合、被検者Pに対してすぐに適切な処置を行うことができる。
【0071】
(第一実施形態の変形例)
次に、
図7を参照しつつ、第一実施形態の変形例について説明する。本変形例においては、マーカM7~M9(分類情報)および相対値X7~X9(数値情報)が
図7において破線で示す位置のいずれかに表示されている点で第一実施形態と異なる。つまり、本変形例においては、呼吸深度情報が、単位呼吸波形の近傍に表示されている点で第一実施形態と異なる。単位呼吸波形の近傍とは、例えば、
図7において一点鎖線で囲まれた領域R1~R3である。すなわち、単位呼吸波形の近傍とは、単位呼吸波形の立ち上がりの位置や立ち下がり位置、単位呼吸波形におけるピークの上方や下方等である。
【0072】
本変形例においても、呼吸深度情報が単位呼吸波形の近傍にあるので、医療従事者は、呼吸深度情報が呼吸波形のどの部分に対応しているかを容易に認識することができる。
【0073】
(第二実施形態)
次に、
図8を参照しつつ、第二実施形態について説明する。本実施形態では、連続する3つの単位呼吸波形を含むデータセット単位で呼吸深度情報が生成される点で、第一実施形態と異なる。換言すると、本実施形態において生成される呼吸深度情報は、被検者Pによる連続する3回の呼吸の深さを一つの情報(例えば、当該連続する3回の呼吸に対応する相対値の平均値、最大値、最小値等)として示すものである。なお、当該データセットには、連続する2つ以上の単位呼吸波形が含まれていればよく、当該データセットに含まれる単位呼吸波形は3つに限られない。また、本実施形態の説明において、第一実施形態における説明と重複する部分については、適宜説明を省略する。
【0074】
例えば18:10時点において、制御部5は、第一実施形態と同様の原理により、相対値X7~X9をそれぞれ算出する。制御部5は、相対値X7~X9を算出すると、例えば、相対値X7~X9の平均値X10を算出し、算出された平均値X10と、分類基準情報と、に基づいて、被検者Pの呼吸の深さの状態を分類する。本実施形態において、相対値X7は20%、相対値X8は16%、相対値X9は15%であるので(
図6参照)、相対値X7~X9の平均値X10は17%である。したがって、制御部5は、単位呼吸波形757~759を含むデータセットに対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を「危険」に分類し、当該分類に対応する分類情報を生成する。
【0075】
制御部5は、単位呼吸波形757~759を含むデータセットに対応する被検者Pの呼吸の深さの状態を分類すると、当該呼吸の深さの状態を示す呼吸深度情報を生成し、当該生成された呼吸深度情報に基づいて、第一表示データを生成する。本実施形態において生成される第一表示データに基づく表示画面は、
図8に例示する表示画面である。
図8に例示するように、単位呼吸波形757~759は長方形状の枠線F1で囲われる。枠線F1の左辺F11は単位呼吸波形757の立ち上がりの位置を通り、枠線F1の右辺F12は単位呼吸波形759の立ち下がりの位置を通る。
【0076】
枠線F1の態様は、分類された状態に応じて変更可能である。枠線F1は、例えば、呼吸の深さの状態がよくないほど太くなるように設定されてもよいし、分類された状態に応じた色が付されてもよい。枠線F1の上方外側には、「危険」を表す斜線のハッチングが付されたマーカM10(分類情報)と平均値X10(数値情報)が表示されている。相対値X10は、マーカM10の左側近傍に表示されている。なお、マーカM10と平均値X10は、枠線F1の内側に表示されていてもよいし、枠線F1の左右近傍に表示されていてもよい。
【0077】
上記のような構成によれば、医療従事者は、このような表示画面を視認することにより、複数回の呼吸の深さを一つの情報としてまとめて視認することができる。
【0078】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されうる。
【0079】
上記の実施形態において、制御部5は、第一振幅A1と第二振幅A21~A29を比較することで算出される相対値X1~X9に基づいて、呼吸深度情報を生成しているが、本実施形態はこれに限られない。例えば制御部5は、呼吸基準波形74と呼吸波形75を比較することで算出される両波形の類似度に基づいて、呼吸深度情報を生成してもよい。
【0080】
上記の実施形態において、情報生成装置1は圧力センサ10を備えていないが、情報生成装置1の取得部2が圧力センサ10と同様の構成の圧力センサを備えていてもよい。この場合、取得部2は、被検者Pの口内または鼻内からの少なくとも一方の呼吸気を検出し、当該検出された呼吸気に基づいて、被検者Pの呼吸圧に関する呼吸波形データを取得する。
【0081】
上記の実施形態において、情報生成装置1は記憶部4を備えているが、情報生成装置1は記憶部4を備えていなくてもよい。この場合、制御部5のメモリ51が記憶部として機能する。
【0082】
上記の実施形態において、第一の値は呼吸基準波形データに含まれる第一呼吸波形の第一振幅A1であり、第二の値は呼吸波形データに含まれる第二呼吸波形の第二振幅A21~A29であるが、本実施形態はこれに限られない。例えば、第一の値は呼吸基準波形全体における最大呼吸圧であり、第二の値は呼吸波形全体における最大呼吸圧であってもよい。また、第一の値は呼吸開始時から所定時間を経過するまでの第一呼吸波形における平均呼吸圧の値であり、第二の値は呼吸開始時から所定時間を経過するまでの第二呼吸波形における平均呼吸圧の値であってもよい。さらに、第一の値は呼吸開始時から所定時間を経過するまでの第一呼吸波形における最大呼吸圧の値であり、第二の値は呼吸開始時から所定時間を経過するまでの第二呼吸波形における最大呼吸圧の値であってもよい。また、第一の値は第一呼吸波形の立ち上がりからピークまでの平均呼吸圧の値であり、第二の値は第二呼吸波形の立ち上がりからピークまでの平均呼吸圧の値であってもよい。
【0083】
上記の実施形態において、表示部7には、マーカが分類情報として表示されているが、例えば、被検者Pの呼吸の深さの状態を示す文字情報が分類情報として表示されてもよい。また、マーカの代わりに、単位呼吸波形の太さを被検者Pの呼吸の深さの状態に基づいて変化させることで、被検者Pの呼吸の深さの状態を示してもよい。この場合、単位呼吸波形の太さが分類情報に相当する。
【0084】
上記の実施形態において、表示部7には、相対値が数値情報として表示されているが、例えば、算出された相対値に対応する1~5までのレベルが表示されてもよい。なお、当該レベルは2段階以上であればよく、5段階に限られない。
【0085】
上記の実施形態において、表示部7には、マーカと相対値が表示されているが、マーカと相対値のどちらか一方は表示部7に表示されなくてもよい。つまり、呼吸深度情報は、分類情報と数値情報のどちらか一方のみを含むものであってもよい。
【0086】
上記の実施形態において、18:10時点における表示部7には、識別標識S1~S3および累積回数情報が表示されているが、識別標識S1~S3および累積回数情報は表示部7に表示されなくてもよい。
【0087】
上記の実施形態において、呼吸の深さの状態を表す各分類は、識別標識S1~S3およびマーカM1~M10に異なるハッチングが付されることで区別されているが、本実施形態はこれに限られない。各分類は、例えば、識別標識S1~S3およびマーカM1~M10に異なる色が付されることで区別されてもよいし、識別標識S1~S3およびマーカM1~M10が異なる形状にされることで区別されてもよい。また各分類は、分類情報に基づいて各単位呼吸波形の背景や各単位呼吸波形に異なる色が付されることで、区別されてもよい。
【0088】
上記の実施形態では、手術の前後において、手術中に麻酔薬を投与された被検者Pから呼吸波形データを含む生体情報が取得される例を用いて説明したが、本実施形態はこの例に限られない。例えば、被検者Pの呼吸が頻呼吸から低呼吸になる例においても、本発明は適用可能である。
【0089】
上記の実施形態において、呼吸の深さの状態は、「正常・注意・危険」に分類されているが、「レベル1・レベル2・レベル3」に分類されてもよい。
【0090】
上記の実施形態において、呼吸の深さの状態は、「正常・注意・危険」の3つの状態に分類されているが、2つまたは4つ以上の状態に分類されてもよい。
【0091】
上記の実施形態において、相対値は、マーカの左側近傍に表示されているが、マーカの上方近傍や右側近傍等に表示されていてもよい。
【0092】
上記の実施形態において、表示部7には呼吸基準波形74が表示されているが、呼吸基準波形74は表示されなくてもよい。つまり、制御部5は、呼吸基準波形データを含まない表示データを生成してもよい。
【0093】
上記の実施形態において、制御部5は、呼吸基準波形74と呼吸波形75を比較することで、呼吸深度情報を生成し、その後、呼吸波形データと呼吸深度情報を表示させるための表示データを生成しているが、例えば制御部5は、呼吸深度情報を生成せず、予め設定された呼吸基準波形データと、取得部2によって取得された呼吸波形データと、を表示させるための表示データを生成するように構成されていてもよい。この場合、制御部5は、生成した表示データに基づいて、呼吸基準波形74と呼吸波形75が表示される表示画面を表示部7または外部装置20の表示部に表示させる。また、制御部5が呼吸深度情報を生成する場合であっても、制御部5は、ユーザの設定操作に応じて、呼吸深度情報を含まない表示データを生成するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:情報生成装置、2:取得部、3:操作部、4:記憶部、5:制御部、6:出力インターフェース、7:表示部、8:報知部、9:バス、10:圧力センサ、20:外部装置、51:メモリ、52:プロセッサ