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特許7621101制御装置、電動パワーステアリング装置、ステアバイワイヤシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】制御装置、電動パワーステアリング装置、ステアバイワイヤシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250117BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20250117BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020203321
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090795
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】栗原 紘章
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149359(JP,A)
【文献】特開2009-126244(JP,A)
【文献】特開2015-042528(JP,A)
【文献】特開2014-136479(JP,A)
【文献】特開2010-111227(JP,A)
【文献】特開2007-090924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操舵入力信号の値に基づいて目標制御量を算出する目標制御量算出部と、
操舵角を算出する操舵角算出部から定期的に取得する前記操舵角の今回取得した値から前回取得した値を減算することで偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて弾性を模擬した弾性反力成分を算出する弾性成分算出部を有し、前記弾性反力成分に基づいて反力成分を算出する反力成分算出部と、
前記操舵入力信号の値又は前記目標制御量の少なくともいずれか一方を、前記反力成分に基づいて補正する補正部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記反力成分算出部は、複数の前記弾性成分算出部を有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記反力成分算出部は、複数の前記弾性成分算出部から出力された値を加算する加算部をさらに有し、
複数の前記弾性成分算出部のそれぞれは、個々に設定された所定の前記偏差の範囲で、前記偏差に応じた前記弾性反力成分を算出するとともに、前記範囲を超えた前記偏差では、予め定められた固定値を出力する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記反力成分算出部は、操舵角に基づいて粘性を模擬した粘性反力成分を算出する粘性成分算出部と、前記粘性反力成分と前記弾性反力成分とに基づいて、粘弾性を模擬した反力成分である粘弾性反力成分を算出する粘弾性成分算出部と、をさらに有し、前記粘弾性反力成分に基づいて前記反力成分を算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記粘性成分算出部は、設定された所定の前記偏差の範囲で前記偏差に応じた前記粘性反力成分を出力するとともに、前記範囲以外では、0を出力する
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記反力成分を、車速、周辺温度、又は、操舵トルクに応じて補正する車両状態補正部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記反力成分算出部は、前記反力成分としてトルク値を算出し、
前記補正部は、操舵トルクとして算出された前記操舵入力信号の値に前記反力成分を加算又は減算する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記反力成分算出部は、前記反力成分として電流値を算出し、
前記補正部は、電流値として算出された前記目標制御量に前記反力成分を加算又は減算する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置を有する、
電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置を有する、
ステアバイワイヤシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、電動パワーステアリング装置、及び、ステアバイワイヤシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置は、舵角に依存する操舵反力を電動モータが与えるための電流である舵角反力補償電流を算出する舵角反力補償電流算出部と、舵角反力補償電流を考慮して電動モータに供給する目標電流を決定する最終目標電流決定部とを備える。そして、舵角反力補償電流算出部は、実舵角の絶対値を算出する絶対値算出部と、絶対値化された実舵角に予め定められた値を加算することにより絶対値化された実舵角を補正する舵角補正部とを有する。また、舵角反力補償電流算出部は、補正後舵角と予め定めた制御マップとに基づいて仮の舵角反力補償電流を算出する仮補償電流算出部と、ステアリングホイールの操作方向に基づいて舵角反力補償電流の符号を設定する符号設定部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-136479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵トルクと操舵角との相関関係にて示される角-力特性の形が操舵フィーリングに影響を及ぼす。
特許文献1は中立位置付近に効果があると記載されているものの、角-力特性の形への影響については記載していなかった。
本発明は、角-力特性の形を制御して、狙いの操舵フィーリングを実現できる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、運転者の操舵入力信号の値に基づいて目標制御量を算出する目標制御量算出部と、操舵角に基づいて弾性を模擬した弾性反力成分を算出する弾性成分算出部を有し、前記弾性反力成分に基づいて反力成分を算出する反力成分算出部と、前記操舵入力信号の値又は前記目標制御量の少なくともいずれか一方を、前記反力成分に基づいて補正する補正部と、を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、角-力特性の形を制御して、狙いの操舵フィーリングを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図2】制御装置の一例を示す概略構成図である。
図3】ステアリング装置における角-力特性の一例を示す図である。
図4】第2の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図5】ステアリング装置における角-力特性の一例を示す図である。
図6】第3の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図7】第4の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図8】第5の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図9】第6の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図10】第7の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図11】第8の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図12】第9の実施形態に係るステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
図13】第10の実施形態に係るステアバイワイヤシステムの概略構成の一例を示す図である。
図14】制御装置における反力モータの駆動を制御する反力モータ制御部の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の一例を示す概略構成図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては車両の一例としての自動車1に適用した構成を例示している。なお、図1は、自動車1を前方から見た図である。
【0009】
ステアリング装置100は、自動車1の進行方向を変えるために運転者が操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0010】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の車輪150それぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。ピニオンシャフト106は、ラック軸105に対して、回転することにより左右の車輪150を転動させる駆動力(ラック軸力)を加える。
【0011】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギヤボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギヤボックス107内にてトーションバー112を介して下部連結シャフト108と連結されている。そして、ステアリングギヤボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度に基づいて、言い換えればトーションバー112の捩れ量に基づいて、ステアリングホイール101に加えられた操舵入力の一例としての操舵トルクを検出するトルクセンサ109が設けられている。
【0012】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギヤボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有している。減速機構111は、ピニオンシャフト106に固定されたウォームホイール111aと、軸継手(不図示)を介して電動モータ110の出力軸に連結されるウォーム111bとを有する。電動モータ110は、ピニオンシャフト106に回転駆動力を加えることにより、ラック軸105に車輪150を転動させる駆動力(ラック軸力)を加える。本実施の形態に係る電動モータ110は、電動モータ110の回転角度θmに連動した回転角度信号θmsを出力するレゾルバ120を有する3相ブラシレスモータであることを例示することができる。
【0013】
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述したトルクセンサ109からの出力信号が入力される。また、制御装置10には、自動車1に搭載される各種の機器を制御するための信号を流す通信を行うネットワーク(CAN)を介して、自動車1の移動速度である車速Vcを検出する車速センサ170からの出力信号vなどが入力される。
【0014】
(制御装置)
次に、制御装置10について説明する。
図2は、制御装置10の一例を示す概略構成図である。
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置10には、上述したトルクセンサ109、車速センサ170、レゾルバ120からの出力信号等が入力される。トルクセンサ109からの出力信号は、運転者の操舵入力信号の一例であり、トルクセンサ109が検出した操舵トルクである検出トルクTdは、運転者の操舵入力信号の値の一例である。
【0015】
制御装置10は、電動モータ110に供給するのに必要となる目標電流Itを設定する目標電流設定部20と、目標電流設定部20が算出した目標電流Itに基づいてフィードバック制御などを行う制御部30とを備えている。
また、制御装置10は、電動モータ110の回転角度θmを算出する回転角度算出部41と、回転角度算出部41にて算出された回転角度θmに基づいて、ステアリングホイール101の回転角度である操舵角θsを算出する操舵角算出部42とを備えている。
また、制御装置10は、トルクセンサ109が検出した操舵トルクである検出トルクTdを補正して補正後トルクTcを算出するトルク補正部50を備えている。
【0016】
〔目標電流設定部〕
目標電流設定部20は、トルク補正部50が算出した補正後トルクTcと、車速Vcとに基づいて目標電流Itを設定する。目標電流設定部20は、補正後トルクTcがプラスである場合には目標電流Itをプラス、補正後トルクTcがマイナスである場合には目標電流Itをマイナスとする。また、目標電流設定部20は、補正後トルクTcが0である場合には目標電流Itを0とし、補正後トルクTcの絶対値が大きいほど目標電流Itの絶対値を大きくする。また、目標電流設定部20は、補正後トルクTcの絶対値が同じである場合には、車速Vcが低速であるほど目標電流Itの絶対値を大きくすることを例示することができる。なお、目標電流設定部20は、補正後トルクTcの値に関わらず目標電流Itを0とする不感帯領域を設定しても良い。
【0017】
〔制御部〕
制御部30は、電動モータ110の作動を制御する駆動制御部(不図示)と、電動モータ110を駆動させる駆動部(不図示)と、電動モータ110に実際に流れる実電流を検出する電流検出部(不図示)とを有している。
【0018】
駆動制御部は、目標電流設定部20にて設定された目標電流Itと、電流検出部にて検出された電動モータ110へ供給される実電流との偏差に基づいてフィードバック制御を行う。
駆動部は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備えている。
【0019】
〔回転角度算出部、操舵角算出部〕
回転角度算出部41は、レゾルバ120からの出力信号に基づいて回転角度θmを算出する。
操舵角算出部42は、ステアリングホイール101の回転角度と電動モータ110の回転角度θmとの間に相関関係があることに鑑み、回転角度算出部41にて算出された回転角度θmに基づいて操舵角θsを算出する。操舵角算出部42は、例えば、回転角度算出部41にて定期的(例えば1ミリ秒毎)に算出された回転角度θmの前回値と今回値との差分の積算値に基づいて操舵角θsを算出する。
【0020】
ここで、トーションバー112の捩れ量が0の状態(中立状態)からのステアリングホイール101の右回転時におけるステアリングホイール101とピニオンシャフト106との相対回転角度が変化する方向をプラスとする。言い換えれば、操舵トルクがプラスとする。また、中立状態からのステアリングホイール101の左回転時におけるステアリングホイール101とピニオンシャフト106との相対回転角度が変化する方向をマイナスとする。言い換えれば、操舵トルクがマイナスとする。
【0021】
そして、電動モータ110を右回転方向に回転させるように目標電流設定部20にて算出された目標電流Itが流れる方向をプラスとする。例えば、補正後トルクTcがプラスのときに目標電流設定部20はプラスの目標電流Itを算出し、電動モータ110を右回転方向に回転させる方向のトルクを発生させる。補正後トルクTcがマイナスのときに目標電流設定部20はマイナスの目標電流Itを算出し、電動モータ110を左回転方向に回転させる方向のトルクを発生させる。
また、操舵角θsが0度である状態からステアリングホイール101が右方向に回転した場合に操舵角θsがプラスとなり、左方向に回転した場合に操舵角θsがマイナスとなる。
【0022】
〔トルク補正部〕
トルク補正部50は、操舵角θsの偏差Δθを算出する偏差算出部51と、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて、運転者の操舵に対する反力成分を算出する反力成分算出部52とを有している。また、トルク補正部50は、反力成分算出部52が算出した反力成分を用いて検出トルクTdを補正する補正部53を有している。
【0023】
偏差算出部51は、操舵角算出部42から定期的に取得する操舵角θsの値における、今回取得した値から前回取得した値を減算することで偏差Δθを算出する(Δθ=θs(今回取得した値)-θs(前回取得した値))。
【0024】
反力成分算出部52は、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて弾性反力トルクTeを算出する弾性成分算出部55を有している。電動モータ110と車輪150とは、減速機構111、ピニオンシャフト106、ラック軸105及びタイロッド104等から構成される伝達機構130(図1参照)を介して連結されており、電動モータ110の駆動力が伝達機構130を介して車輪150に伝達される。弾性成分算出部55は、伝達機構130の弾性を考慮して、当該弾性に起因する、運転者の操舵に対する弾性反力トルクTeを、以下の式(1)に基づいて算出する。
Te=Kt×Δθ・・・(1)
Ktは、予め定められた比例定数である。
弾性反力トルクTeは、操舵角θsに基づいて弾性を模擬した弾性反力成分の一例である。そして、第1の実施形態に係る反力成分算出部52は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeを反力成分として補正部53に出力する。
【0025】
補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdから、反力成分算出部52から出力された弾性反力トルクTeを減算することにより補正後トルクTcを算出する(Tc=Td-Te)。
上述したようにして、トルク補正部50が、補正後トルクTcを算出する。そして、目標電流設定部20が、補正後トルクTcを用いて目標電流Itを設定する。
【0026】
(作用)
以上のように構成されたステアリング装置100は、以下のように作用する。
図3は、ステアリング装置100における角-力特性の一例を示す図である。図3は、ステアリングホイール101を右方向に切り込んだ後にスラローム走行を行った場合の特性図である。以下、第1の実施形態に係る制御装置10に対して、トルク補正部50を備えておらず、目標電流設定部20が、検出トルクTdを用いて目標電流Itを設定する構成を比較例に係るステアリング装置と称する場合がある。
【0027】
例えば、ステアリングホイール101を右方向に切り込んでいるときには、偏差Δθが大きくなることから弾性反力トルクTeがプラスの値となる。それゆえ、補正後トルクTcが、検出トルクTdよりも小さくなる。他方、ステアリングホイール101を左方向に切り込んでいるときには、偏差Δθが小さくなることから弾性反力トルクTeがマイナスの値となる。それゆえ、補正後トルクTcが、検出トルクTdよりも大きくなる。その結果、ステアリングホイール101を切り込んでいるときには、目標電流Itの絶対値が比較例よりも小さくなるため、電動モータ110によるアシスト力が小さくなり、運転者の操舵力の絶対値が大きくなる。
【0028】
一方、ステアリングホイール101を右方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、偏差Δθが小さくなることから弾性反力トルクTeがマイナスの値となる。それゆえ、補正後トルクTcが、検出トルクTdよりも大きくなり、目標電流Itが、比較例よりも大きくなる。その結果、ステアリングホイール101を右方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、目標電流Itが比較例よりも大きくなるため、電動モータ110によるアシスト力が大きくなり、運転者の操舵力が小さくなる。
【0029】
他方、ステアリングホイール101を左方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、偏差Δθが大きくなることから弾性反力トルクTeがプラスの値となる。それゆえ、補正後トルクTcが、検出トルクTdよりも小さくなり、目標電流Itが、比較例よりも小さくなる。その結果、ステアリングホイール101を左方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、目標電流Itが比較例よりも小さくなるため、電動モータ110によるアシスト力が小さくなり、運転者の操舵力が大きくなる。
【0030】
以上説明したように、制御装置10は、運転者の操舵入力信号の値に基づいて目標制御量の一例としての目標電流Itを算出する目標制御量算出部の一例としての目標電流設定部20と、操舵角θsに基づいて弾性を模擬した弾性反力トルクTeを算出する弾性成分算出部55を有し、弾性反力トルクTeに基づいて反力成分の一例としての弾性反力トルクTeを算出する反力成分算出部52とを備える。制御装置10においては、反力成分算出部52は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeを反力成分とする。また、制御装置10は、運転者の操舵入力信号の値の一例としての検出トルクTdを、弾性反力トルクTeに基づいて補正する補正部53を備える。
そして、以上説明したように、ステアリング装置100によれば、図3に示すように、比較例に係るステアリング装置よりもヒステリシス幅を大きくすることができる。その結果、運転者は、旋回走行時に保舵をし易くなるので、旋回走行時の操舵フィーリングが向上する。
【0031】
なお、トルク補正部50の補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdと、反力成分算出部52が算出した弾性反力トルクTeとを加算することにより補正後トルクTcを算出しても良い(Tc=Td+Te)。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときには、目標電流Itの絶対値が比較例よりも大きくなるため、電動モータ110によるアシスト力が大きくなり、運転者の操舵力の絶対値が小さくなる。このように、この構成によれば、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの負荷を小さくすることができ、全ての操舵領域において、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0032】
また、トルク補正部50の偏差算出部51は、操舵角算出部42が算出した操舵角θsに基づいて、偏差Δθを算出するが、特にかかる態様に限定されない。ステアリング装置100に設けられて、操舵角θsを検出する操舵角センサからの出力値に基づいて偏差Δθを算出しても良い。
【0033】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係るステアリング装置200の一例を示す概略構成図である。
第2の実施形態に係るステアリング装置200は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、制御装置10が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点について説明し、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同じ点についての説明は省略する。
【0034】
第2の実施形態に係る制御装置210は、電動モータ110に供給する目標電流Itを設定する目標電流設定部220と、制御部30とを備えている。
目標電流設定部220は、目標電流Itを設定する上で基本となる基本目標電流Ibを設定する基本設定部221と、基本目標電流Ibを補正する補正電流を設定する補正設定部222とを備えている。また、目標電流設定部220は、最終的に電動モータ110に供給する目標電流Itを設定する最終設定部223を備えている。
【0035】
基本設定部221は、検出トルクTdと、車速Vcとに基づいて基本目標電流Ibを設定する。基本設定部221が基本目標電流Ibを設定する手法は、第1の実施形態に係る目標電流設定部20が目標電流Itを設定する手法と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
補正設定部222は、偏差算出部51と、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて反力成分を算出する反力成分算出部252とを有している。
反力成分算出部252は、偏差Δθに基づいて弾性補正電流Ieを算出する弾性成分算出部255を有している。弾性成分算出部255は、ステアリング装置100の弾性要素を考慮して、当該弾性に起因する、運転者の操舵に対する弾性補正電流Ieを、以下の式(2)に基づいて算出する。
Ie=Ki×Δθ・・・(2)
Kiは、予め定められた比例定数である。
弾性補正電流Ieは、操舵角θsに基づいて弾性を模擬した弾性反力成分の一例である。そして、第2の実施形態に係る反力成分算出部252は、弾性成分算出部255が算出した弾性補正電流Ieを最終設定部223に出力する。
【0037】
最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibから、補正設定部222が設定した弾性補正電流Ieを減算することにより目標電流Itを算出する(It=Ib-Ie)。
【0038】
(作用)
以上のように構成されたステアリング装置200は、以下のように作用する。
図5は、ステアリング装置200における角-力特性の一例を示す図である。図5は、ステアリングホイール101を右方向に切り込んだ後にスラローム走行を行った場合の特性図である。
例えば、ステアリングホイール101を右方向に切り込んでいるときには、偏差Δθが大きくなることから弾性補正電流Ieがプラスの値となる。それゆえ、目標電流Itが、基本目標電流Ibよりも小さくなる。他方、ステアリングホイール101を左方向に切り込んでいるときには、偏差Δθが小さくなることから弾性補正電流Ieがマイナスの値となる。それゆえ、目標電流Itが、基本目標電流Ibよりも大きくなる。その結果、ステアリングホイール101を切り込んでいるときには、目標電流Itの絶対値が比較例よりも小さくなるため、電動モータ110によるアシスト力が小さくなり、運転者の操舵力の絶対値が大きくなる。
【0039】
また、ステアリングホイール101を右方向に切り込み開始時には、切り込み終盤よりも偏差Δθが大きくなることから弾性補正電流Ieが大きくなる。それゆえ、目標電流Itと基本目標電流Ibとの差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方が大きいので、運転者の操舵力の比較例との差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方が大きい。他方、ステアリングホイール101を左方向に切り込み開始時には、切り込み終盤よりも偏差Δθが小さくなることから弾性補正電流Ieが小さくなる。それゆえ、目標電流Itと基本目標電流Ibとの差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方が大きいので、運転者の操舵力の比較例との差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方が大きい。
【0040】
一方、ステアリングホイール101を右方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、偏差Δθが小さくなることから弾性補正電流Ieがマイナスの値となる。それゆえ、目標電流Itが、基本目標電流Ibよりも大きくなり、電動モータ110によるアシスト力が大きくなるので、運転者の操舵力が比較例よりも小さくなる。他方、ステアリングホイール101を左方向に切り込んだ後に切り戻しているときには、偏差Δθが大きくなることから弾性補正電流Ieがプラスの値となる。それゆえ、目標電流Itが、基本目標電流Ibよりも小さくなり、電動モータ110によるアシスト力が大きくなるので、運転者の操舵力が比較例よりも小さくなる。
【0041】
以上説明したように、制御装置210は、運転者の操舵入力信号の値に基づいて目標制御量の一例としての基本目標電流Ibを算出する目標制御量算出部の一例としての基本設定部221と、操舵角θsに基づいて弾性を模擬した弾性補正電流Ieを算出する弾性成分算出部255を有し、弾性補正電流Ieに基づいて反力成分の一例としての弾性補正電流Ieを算出する反力成分算出部252とを備える。制御装置210においては、反力成分算出部252は、弾性成分算出部255が算出した弾性補正電流Ieを反力成分とする。また、制御装置210は、基本目標電流Ibを、弾性補正電流Ieに基づいて補正する補正部の一例としての最終設定部223を備える。
【0042】
そして、以上説明したように、ステアリング装置200によれば、図5に示すように、比較例に係るステアリング装置よりもヒステリシス幅を大きくすることができる。また、ステアリング装置200によれば、図5に示すように、比較例に係るステアリング装置との差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方を大きくすることができる。つまり、操舵角θsが小さいほど影響度が大きく、操舵角θsが大きいほど影響度が小さくなるように設定できる。そのため、切り込み終盤よりも切り込み開始時の操舵フィーリングを意識した設定とすることができる。
【0043】
なお、最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibと、補正設定部222が設定した弾性補正電流Ieとを加算することにより目標電流Itを算出しても良い(It=Ib+Ie)。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときには、目標電流Itの絶対値が比較例よりも大きくなるため、電動モータ110によるアシスト力が大きくなり、運転者の操舵力の絶対値が小さくなる。このように、この構成によれば、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができる。また、比較例に係るステアリング装置との差は、切り込み終盤よりも切り込み開始時の方を大きくすることができるので、切り込み終盤よりも切り込み開始時の操舵負荷をより小さくなる設定とすることができる。
【0044】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係るステアリング装置300の一例を示す概略構成図である。
第3の実施形態に係るステアリング装置300は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、制御装置10のトルク補正部50が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点について説明し、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同じ点についての説明は省略する。
【0045】
第3の実施形態に係る制御装置310のトルク補正部350は、偏差算出部51と、反力成分算出部352と、補正部53とを有している。反力成分算出部352は、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて、運転者の操舵に対する弾性反力成分を算出する、複数(本実施形態においては3つ)の弾性成分算出部である、第1弾性成分算出部361、第2弾性成分算出部362、第3弾性成分算出部363を有している。また、反力成分算出部352は、第1弾性成分算出部361、第2弾性成分算出部362、第3弾性成分算出部363が算出した弾性反力成分を加算する加算部370を有している。
【0046】
第1弾性成分算出部361は、0≦Δθ≦θ1の場合に、以下の式(3)に基づいて弾性反力成分の一例としての第1弾性反力トルクTe1を算出して加算部370に出力する。第2弾性成分算出部362は、θ1<Δθ≦θ2の場合に、以下の式(4)に基づいて弾性反力成分の一例としての第2弾性反力トルクTe2を算出して加算部370に出力する。第3弾性成分算出部363は、θ2<Δθの場合に、以下の式(5)に基づいて弾性反力成分の一例としての第3弾性反力トルクTe3を算出して加算部370に出力する。
Te1=Kt1×Δθ・・・(3)
Te2=Kt2×Δθ・・・(4)
Te3=Kt3×Δθ・・・(5)
また、第1弾性成分算出部361は、θ1<Δθの場合に、予め定めされた固定値の一例としてのTe1=Kt1×θ1を出力する。また、第2弾性成分算出部362は、θ2<Δθの場合に、予め定めされた固定値の一例としてのTe2=Kt2×θ2を出力する。
【0047】
Kt1、Kt2、Kt3は、予め定められた比例定数である。Kt1、Kt2、Kt3は、同一であっても良いし、異なっていても良い。θ1及びθ2は予め定められた値であり、θ1<θ2である。θ1、θ2は、それぞれ、10°、20°であることを例示することができる。上記式(3)、(4)、(5)を用いるΔθの範囲は、相互に重ならないように設定しても良いし、重なるように設定しても良い。
なお、弾性成分算出部の数は3つに限定されない。
【0048】
加算部370は、第1弾性成分算出部361が出力した第1弾性反力トルクTe1と、第2弾性成分算出部362が出力した第2弾性反力トルクTe2と、第3弾性成分算出部363が出力した第3弾性反力トルクTe3とを加算することにより得た弾性反力トルクTe(Te=Te1+Te2+Te3)を補正部53に出力する。
上述したように、第3の実施形態に係る反力成分算出部352は、第1弾性成分算出部361、第2弾性成分算出部362、第3弾性成分算出部363が算出した、第1弾性反力トルクTe1、第2弾性反力トルクTe2、第3弾性反力トルクTe3に基づいて反力成分の一例としての弾性反力トルクTeを算出し、補正部53に出力する。
【0049】
以上のように構成された第3の実施形態に係るステアリング装置300においては、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同様に、比較例に係るステアリング装置よりもヒステリシス幅が大きくなるので、旋回走行時の操舵フィーリングが向上する。また、第3の実施形態に係るステアリング装置300によれば、Kt1、Kt2、Kt3や、θ1、θ2の値を変更することで、Te1、Te2、Te3の値を調整することができるので、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となり、結果として運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0050】
また、第1弾性成分算出部361は、θ1<Δθの場合に、Te1=Kt1×θ1を出力し、第2弾性成分算出部362は、θ2<Δθの場合に、Te2=Kt2×θ2を出力する。これにより、Δθが大きいほど反力成分算出部352から出力される値が大きくなる。それゆえ、ステアリング装置300は、例えば切り込み開始時にステアリングホイール101を滑らかに回転させることができるので、運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0051】
なお、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同様に、トルク補正部50の補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdと、反力成分算出部352から出力された弾性反力トルクTeとを加算することにより補正後トルクTcを算出しても良い。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができるとともに、操舵負荷の調整をきめ細かく行うことができる。
【0052】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態に係るステアリング装置400の一例を示す概略構成図である。
第4の実施形態に係るステアリング装置400は、第2の実施形態に係るステアリング装置200に対して、制御装置210の目標電流設定部220が異なる。以下、第2の実施形態に係るステアリング装置200と異なる点について説明し、第2の実施形態に係るステアリング装置200と同じ点についての説明は省略する。
【0053】
第4の実施形態に係る制御装置410の目標電流設定部420の補正設定部422の反力成分算出部452は、運転者の操舵に対する弾性反力成分を算出する、複数(本実施形態においては3つ)の弾性成分算出部である、第1弾性成分算出部461、第2弾性成分算出部462、第3弾性成分算出部463を有している。また、反力成分算出部452は、第1弾性成分算出部461、第2弾性成分算出部462、第3弾性成分算出部463が算出した弾性反力成分を加算する加算部470を有している。
第1弾性成分算出部461は、0≦Δθ≦θ1の場合に、以下の式(6)に基づいて弾性反力成分の一例としての第1弾性補正電流Ie1を算出して加算部470に出力する。第2弾性成分算出部462は、θ1<Δθ≦θ2の場合に、以下の式(7)に基づいて弾性反力成分の一例としての第2弾性補正電流Ie2を算出して加算部470に出力する。第3弾性成分算出部463は、θ2<Δθの場合に、以下の式(8)に基づいて弾性反力成分の一例としての第3弾性補正電流Ie3を算出して加算部470に出力する。
Ie1=Ki1×Δθ・・・(6)
Ie2=Ki2×Δθ・・・(7)
Ie3=Ki3×Δθ・・・(8)
また、第1弾性成分算出部461は、θ1<Δθの場合に、予め定めされた固定値の一例としてのIe1=Ki1×θ1を出力する。また、第2弾性成分算出部462は、θ2<Δθの場合に、予め定めされた固定値の一例としてのIe2=Ki2×θ2を出力する。
【0054】
Ki1、Ki2、Ki3は、予め定められた比例定数である。Ki1、Ki2、Ki3は、同一であっても良いし、異なっていても良い。θ1及びθ2は予め定められた値であり、θ1<θ2である。θ1、θ2は、それぞれ、10°、20°であることを例示することができる。上記式(6)、(7)、(8)を用いるΔθの範囲は、相互に重ならないように設定しても良いし、重なるように設定しても良い。
なお、弾性成分算出部の数は3つに限定されない。
【0055】
加算部470は、第1弾性成分算出部461が出力した第1弾性補正電流Ie1と、第2弾性成分算出部462が出力した第2弾性補正電流Ie2と、第3弾性成分算出部463が出力した第3弾性補正電流Ie3とを加算することにより得た弾性補正電流Ieを最終設定部223に出力する。
上述したように、第4の実施形態に係る反力成分算出部452は、第1弾性成分算出部461、第2弾性成分算出部462、第3弾性成分算出部463が算出した、第1弾性補正電流Ie1、第2弾性補正電流Ie2、第3弾性補正電流Ie3に基づいて反力成分の一例としての弾性補正電流Ieを算出し、最終設定部223に出力する。
【0056】
以上のように構成された第4の実施形態に係るステアリング装置400においては、第2の実施形態に係るステアリング装置200が奏する効果に加えて、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となるので、結果として運転者の操舵フィーリングをさらに向上させることができる。
【0057】
また、第1弾性成分算出部461は、θ1<Δθの場合に、Ie1=Ki1×θ1を出力し、第2弾性成分算出部462は、θ2<Δθの場合に、Ie2=Ki2×θ2を出力する。これにより、Δθが大きいほど反力成分算出部452から出力される値が大きくなる。それゆえ、ステアリング装置400は、例えば切り込み開始時にステアリングホイール101を滑らかに回転させることができるので、運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0058】
なお、第2の実施形態に係るステアリング装置200と同様に、最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibと、補正設定部422が設定した弾性補正電流Ieとを加算することにより目標電流Itを算出しても良い。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができるとともに、操舵負荷の調整をきめ細かく行うことができる。
【0059】
<第5の実施形態>
図8は、第5の実施形態に係るステアリング装置500の一例を示す概略構成図である。
第5の実施形態に係るステアリング装置500は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、制御装置10のトルク補正部50が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点について説明し、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同じ点についての説明は省略する。
【0060】
第5の実施形態に係る制御装置510のトルク補正部550は、偏差算出部51と、反力成分算出部552と、補正部53とを有している。反力成分算出部552は、弾性成分算出部55に加えて、伝達機構130の粘性を考慮して、当該粘性に起因する、運転者の操舵に対する粘性反力トルクTvを算出する粘性成分算出部56を有している。また、トルク補正部550は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeと、粘性成分算出部56が算出した粘性反力トルクTvとを加算する加算部57を有している。
【0061】
粘性成分算出部56は、以下の式(9)に基づいて、操舵角算出部42が算出した操舵角θsの時間微分値であるdθs/dtを用いて粘性反力トルクTvを算出する。
Tv=Dt×dθs/dt・・・(9)
Dtは、予め定められた比例定数である。
粘性反力トルクTvは、操舵角θsに基づいて粘性を模擬した粘性反力成分の一例である。なお、操舵角θsの時間微分値は、偏差Δθに置き換えることができる。
【0062】
加算部57は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeと粘性成分算出部56が算出した粘性反力トルクTvとを加算することにより粘弾性反力トルクTev(Tev=Te+Tv)を算出し、粘弾性反力トルクTevを補正部53に出力する。
上述したように、第5の実施形態に係る反力成分算出部552は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeと、粘性成分算出部56が算出した粘性反力トルクTvとに基づいて粘弾性反力成分の一例としての粘弾性反力トルクTevを算出し、補正部53に出力する。
【0063】
補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdから、反力成分算出部552の加算部57が算出した粘弾性反力トルクTevを減算することにより補正後トルクTcを算出する(Tc=Td-Tev)。
上述したようにして、トルク補正部550が、補正後トルクTcを算出する。そして、目標電流設定部20が、補正後トルクTcを用いて目標電流Itを設定する。
【0064】
以上説明したように、制御装置510の反力成分算出部552は、粘性反力トルクTvを算出する粘性成分算出部56と、粘性反力トルクTvと弾性反力トルクTeとを加算することで、粘弾性を模擬した反力成分の一例としての粘弾性反力トルクTevを算出する粘弾性成分算出部の一例としての加算部57とを有する。そして、反力成分算出部552は、粘弾性反力トルクTevに基づいて反力成分を算出する。制御装置510においては、反力成分算出部552は、加算部57が算出した粘弾性反力トルクTevを反力成分とする。
【0065】
そして、以上のように構成された第5の実施形態に係るステアリング装置500によれば、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同様に、比較例に係るステアリング装置よりもヒステリシス幅が大きくなるので、運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。また、第5の実施形態に係るステアリング装置500によれば、伝達機構130の弾性に加えて、粘性をも考慮するので、ヒステリシス幅を所望の大きさに高精度に設定することができる。
【0066】
なお、粘性成分算出部56は、一部の偏差Δθの領域では機能しないように設定しても良い。つまり、粘性成分算出部56は、予め定められた偏差Δθの範囲では、式(9)に基づいて、偏差Δθに応じた粘性反力トルクTvを出力するとともに、当該範囲以外では、0を出力すると良い。例えば、粘性成分算出部56は、式(9)に基づいて算出した粘性反力トルクTvに、予め定められた偏差Δθの範囲では0より大きな値であり当該範囲以外では0であるゲインにて調整すると良い。これより、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となり、結果として運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0067】
また、トルク補正部50の補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdと、反力成分算出部552が出力した粘弾性反力トルクTevとを加算することにより補正後トルクTcを算出しても良い(Tc=Td+Tev)。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときには、目標電流Itの絶対値が比較例よりも大きくなるため、電動モータ110によるアシスト力が大きくなり、運転者の操舵力の絶対値が小さくなる。このように、この構成によれば、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの負荷を小さくすることができ、全ての操舵領域において、操舵フィーリングを向上させることができる。
【0068】
<第6の実施形態>
図9は、第6の実施形態に係るステアリング装置600の一例を示す概略構成図である。
第6の実施形態に係るステアリング装置600は、第2の実施形態に係るステアリング装置200に対して、制御装置210の目標電流設定部220が異なる。以下、第2の実施形態に係るステアリング装置200と異なる点について説明し、第2の実施形態に係るステアリング装置200と同じ点についての説明は省略する。
【0069】
第6の実施形態に係る制御装置610の目標電流設定部620の補正設定部622は、偏差算出部51と、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて反力成分を算出する反力成分算出部652とを有している。
【0070】
反力成分算出部652は、弾性成分算出部255に加えて、伝達機構130の粘性を考慮して、当該粘性に起因する、運転者の操舵に対する粘性補正電流Ivを算出する粘性成分算出部656を有している。また、反力成分算出部652は、弾性成分算出部255が算出した弾性補正電流Ieと、粘性成分算出部656が算出した粘性補正電流Ivとを加算する加算部657を有している。
粘性成分算出部656は、以下の式(10)に基づいて、操舵角算出部42が算出した操舵角θsを用いて粘性補正電流Ivを算出する。
Iv=Di×dθs/dt・・・(10)
Diは、予め定められた比例定数である。
粘性補正電流Ivは、操舵角θsに基づいて粘性を模擬した粘性反力成分の一例である。
【0071】
加算部657は、弾性成分算出部255が算出した弾性補正電流Ieと粘性成分算出部656が算出した粘性補正電流Ivとを加算することにより粘弾性補正電流Ievを算出し(Iev=Ie+Iv)、粘弾性補正電流Ievを最終設定部223に出力する。
上述したように、第6の実施形態に係る反力成分算出部652は、弾性成分算出部255が算出した弾性補正電流Ieと、粘性成分算出部656が算出した粘性補正電流Ivとに基づいて反力成分の一例としての粘弾性補正電流Ievを算出し、最終設定部223に出力する。
【0072】
最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibから、補正設定部622が設定した粘弾性補正電流Ievを減算することにより目標電流Itを算出する(It=Ib-Iev)。
【0073】
以上説明したように、制御装置610の反力成分算出部652は、粘性補正電流Ivを算出する粘性成分算出部656と、粘性補正電流Ivと弾性補正電流Ieとを加算することで、粘弾性を模擬した反力成分の一例としての粘弾性補正電流Ievを算出する粘弾性成分算出部の一例としての加算部657とを有する。そして、反力成分算出部652は、粘弾性補正電流Ievに基づいて反力成分を算出する。制御装置610においては、反力成分算出部652は、加算部657が算出した粘弾性補正電流Ievを反力成分とする。
【0074】
以上のように構成された第6の実施形態に係るステアリング装置600によれば、第2の実施形態に係るステアリング装置200が奏する効果に加えて、伝達機構130の弾性に加えて、粘性をも考慮するので、ヒステリシス幅を所望の大きさに高精度に設定することができる。
【0075】
なお、粘性成分算出部656は、一部の偏差Δθの領域では機能しないように設定しても良い。つまり、粘性成分算出部656は、予め定められた偏差Δθの範囲では、式(10)に基づいて、偏差Δθに応じた粘性補正電流Ivを出力するとともに、当該範囲以外では、0を出力すると良い。例えば、粘性成分算出部656は、式(10)に基づいて算出した粘性補正電流Ivに、予め定められた偏差Δθの範囲では0より大きな値であり当該範囲以外では0であるゲインにて調整すると良い。これより、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となり、結果として運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0076】
また、第2の実施形態に係るステアリング装置200と同様に、最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibと、補正設定部622が設定した粘弾性補正電流Ievとを加算することにより目標電流Itを算出しても良い。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができるとともに、操舵負荷の調整をきめ細かく行うことができる。
【0077】
<第7の実施形態>
図10は、第7の実施形態に係るステアリング装置700の一例を示す概略構成図である。
第7の実施形態に係るステアリング装置700は、第5の実施形態に係るステアリング装置500に対して、制御装置510のトルク補正部550が異なる。以下、第5の実施形態に係るステアリング装置500と異なる点について説明し、第5の実施形態に係るステアリング装置500と同じ点についての説明は省略する。
【0078】
第7の実施形態に係る制御装置710のトルク補正部750は、偏差算出部51と、反力成分算出部752と、補正部53とを有している。反力成分算出部752は、粘性成分算出部56と、第3の実施形態に係る第1弾性成分算出部361、第2弾性成分算出部362及び第3弾性成分算出部363とを有している。また、反力成分算出部752は、第1弾性成分算出部361が出力した第1弾性反力トルクTe1と、第2弾性成分算出部362が出力した第2弾性反力トルクTe2と、第3弾性成分算出部363が出力した第3弾性反力トルクTe3と、粘性成分算出部56が算出した粘性反力トルクTvとを加算する加算部757を有している。加算部757は、第1弾性反力トルクTe1と、第2弾性反力トルクTe2と、第3弾性反力トルクTe3と、粘性反力トルクTvとを加算することにより粘弾性反力トルクTev(Tev=Te1+Te2+Te3+Tv)を算出し、粘弾性反力トルクTevを補正部53に出力する。
【0079】
このように、第7の実施形態に係る反力成分算出部752は、第1弾性反力トルクTe1と、第2弾性反力トルクTe2と、第3弾性反力トルクTe3と、粘性反力トルクTvとに基づいて反力成分の一例としての粘弾性反力トルクTevを算出し、補正部53に出力する。
【0080】
以上のように構成された第7の実施形態に係るステアリング装置700においては、第5の実施形態に係るステアリング装置500が奏する効果に加えて、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となるので、結果として操舵フィーリングを向上させることができる。
【0081】
なお、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同様に、トルク補正部750の補正部53は、トルクセンサ109が検出した検出トルクTdと、反力成分算出部752から出力された粘弾性反力トルクTevとを加算することにより補正後トルクTcを算出しても良い(Tc=Td+Tev)。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができるとともに、操舵負荷の調整をきめ細かく行うことができる
【0082】
また、トルク補正部750は、予め定められた偏差Δθの範囲で偏差Δθに応じた弾性反力成分を算出する第1弾性成分算出部361、第2弾性成分算出部362、第3弾性成分算出部363を有している。これと同様に、トルク補正部750は、予め定められた偏差Δθの範囲で偏差Δθに応じた粘性反力トルクTvを算出する複数の粘性成分算出部56(例えば第1粘性成分算出部、第2粘性成分算出部、第3粘性成分算出部)を有していても良い。そして、複数の粘性成分算出部56(例えば第1粘性成分算出部、第2粘性成分算出部、第3粘性成分算出部)のそれぞれは、予め定められた偏差Δθの範囲を超えた偏差Δθでは、予め定められた固定値を出力するようにしても良い。これにより、きめ細かい操舵フィーリングの設定を可能にすることができる。
また、トルク補正部750は、複数の粘弾性反力トルク(例えば第1粘弾性反力トルク、第2粘弾性反力トルク、第3粘弾性反力トルク)を出力する複数の粘弾性成分算出部(例えば第1粘弾性成分算出部、第2粘弾性成分算出部、第3粘弾性成分算出部)を有しても良い。例えば、第1粘弾性成分算出部は、第1弾性成分算出部361が算出した第1弾性反力トルクTe1と第1粘性成分算出部が算出した第1粘性反力トルクとを加算することにより第1粘弾性反力トルクを算出する。そして、加算部757は、複数の粘弾性成分算出部にて算出された複数の粘弾性反力トルクを加算することにより粘弾性反力トルクTevを算出し、粘弾性反力トルクTevを補正部53に出力しても良い。あるいは、トルク補正部750は、複数の粘弾性成分算出部にて算出された複数の粘弾性反力トルクを、加算部757にて加算することなしに、補正部53に出力しても良い。
【0083】
<第8の実施形態>
図11は、第8の実施形態に係るステアリング装置800の一例を示す概略構成図である。
第8の実施形態に係るステアリング装置800は、第6の実施形態に係るステアリング装置600に対して、制御装置610の目標電流設定部620が異なる。以下、第6の実施形態に係るステアリング装置600と異なる点について説明し、第6の実施形態に係るステアリング装置600と同じ点についての説明は省略する。
【0084】
第8の実施形態に係る制御装置810の目標電流設定部820の補正設定部822は、偏差算出部51と、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて反力成分を算出する反力成分算出部852とを有している。
反力成分算出部852は、粘性成分算出部656と、第4の実施形態に係る第1弾性成分算出部461、第2弾性成分算出部462及び第3弾性成分算出部463とを有している。また、反力成分算出部852は、第1弾性成分算出部461が出力した第1弾性補正電流Ie1と、第2弾性成分算出部462が出力した第2弾性補正電流Ie2と、第3弾性成分算出部463が出力した第3弾性補正電流Ie3と、粘性成分算出部656が算出した粘性補正電流Ivとを加算する加算部857を有している。加算部857は、第1弾性補正電流Ie1と、第2弾性補正電流Ie2と、第3弾性補正電流Ie3と、粘性補正電流Ivとを加算することにより粘弾性補正電流Iev(Iev=Ie1+Ie2+Ie3+Iv)を算出し、粘弾性補正電流Ievを最終設定部223に出力する。
【0085】
このように、第8の実施形態に係る反力成分算出部852は、第1弾性補正電流Ie1と、第2弾性補正電流Ie2と、第3弾性補正電流Ie3と、粘弾性補正電流Ievとに基づいて反力成分の一例としての粘弾性補正電流Ievを算出し、最終設定部223に出力する。
【0086】
以上のように構成された第8の実施形態に係るステアリング装置800においては、第6の実施形態に係るステアリング装置600が奏する効果に加えて、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となるので、結果として運転者の操舵フィーリングをさらに向上させることができる。
【0087】
なお、第2の実施形態に係るステアリング装置200と同様に、最終設定部223は、基本設定部221が設定した基本目標電流Ibと、補正設定部822が設定した粘弾性補正電流Ievとを加算することにより目標電流Itを算出しても良い。これにより、ステアリングホイール101を切り込んでいるときの操舵負荷を小さくすることができるとともに、操舵負荷の調整をきめ細かく行うことができる。
【0088】
また、補正設定部822は、予め定められた偏差Δθの範囲で偏差Δθに応じた弾性反力成分を算出する第1弾性成分算出部461、第2弾性成分算出部462及び第3弾性成分算出部463を有している。これと同様に、補正設定部822は、予め定められた偏差Δθの範囲で偏差Δθに応じた粘性補正電流Ivを算出する複数の粘性成分算出部656(例えば第1粘性成分算出部、第2粘性成分算出部、第3粘性成分算出部)を有していても良い。そして、複数の粘性成分算出部656(例えば第1粘性成分算出部、第2粘性成分算出部、第3粘性成分算出部)のそれぞれは、予め定められた偏差Δθの範囲を超えた偏差Δθでは、予め定められた固定値を出力するようにしても良い。これにより、きめ細かい操舵フィーリングの設定を可能にすることができる。
また、補正設定部822は、複数の粘弾性補正電流(例えば第1粘弾性補正電流、第2粘弾性補正電流、第3粘弾性補正電流)を出力する複数の粘弾性成分算出部(例えば第1粘弾性成分算出部、第2粘弾性成分算出部、第3粘弾性成分算出部)を有しても良い。例えば、第1粘弾性成分算出部は、第1弾性成分算出部461が算出した第1弾性補正電流Ie1と第1粘性成分算出部が算出した第1粘性補正電流とを加算することにより第1粘弾性補正電流を算出する。そして、加算部857は、複数の粘弾性成分算出部にて算出された複数の粘弾性補正電流を加算することにより粘弾性補正電流Ievを算出し、粘弾性補正電流Ievを最終設定部223に出力しても良い。あるいは、補正設定部822は、複数の粘弾性成分算出部にて算出された複数の粘弾性補正電流を、加算部857にて加算することなしに、最終設定部223に出力しても良い。
【0089】
<第9の実施形態>
図12は、第9の実施形態に係るステアリング装置900の一例を示す概略構成図である。
第9の実施形態に係るステアリング装置900は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、制御装置10のトルク補正部50が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点について説明し、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同じ点についての説明は省略する。
【0090】
第9の実施形態に係る制御装置910のトルク補正部950は、偏差算出部51と、反力成分算出部952と、補正部53とを有している。
反力成分算出部952は、弾性成分算出部55と、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeを、車両の状態に応じて補正する車両状態補正部80とを有している。
【0091】
車両状態補正部80は、車速Vcに応じて弾性反力トルクTeを補正することを例示することができる。車両状態補正部80は、例えば車速Vcが大きいほど弾性反力トルクTeの絶対値が小さくなるように、車速Vcが大きいほど小さな値となる係数を弾性反力トルクTeに乗算するとともに、乗算することにより得た補正値Tecを反力成分算出部952の出力値として補正部53に出力すると良い。
【0092】
また、車両状態補正部80は、車両の周辺温度に応じて弾性反力トルクTeを補正することを例示することができる。車両状態補正部80は、例えば周辺温度が低いほど弾性反力トルクTeの絶対値が小さくなるように、周辺温度が低いほど小さな値となる係数を弾性反力トルクTeに乗算するとともに、乗算することにより得た補正値Tecを反力成分算出部952の出力値として補正部53に出力すると良い。
また、車両状態補正部80は、検出トルクTdに応じて弾性反力トルクTeを補正しても良い。
【0093】
以上説明したように、制御装置910は、操舵角θsに基づいて弾性を模擬した弾性反力トルクTeを算出する弾性成分算出部55を有し、弾性反力トルクTeに基づいて反力成分の一例としての補正値Tecを算出する反力成分算出部952を備える。制御装置910においては、反力成分算出部952は、弾性成分算出部55が算出した弾性反力トルクTeと予め定められた係数とを乗算することにより得た補正値Tec(Tec=Te×係数)を反力成分とする。
このように、車両の状態に応じて弾性反力トルクTeを補正することで、きめ細かい操舵フィーリングの設定が可能となり、結果として運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0094】
なお、車両状態補正部80を、第3,第5,第7の実施形態に係る反力成分算出部352,552,752が有し、当該反力成分算出部352,552,752から出力される反力成分(弾性反力トルクTe,粘弾性反力トルクTev)を補正しても良い。
また、車両状態補正部80を、第2,第4,第6,第8の実施形態に係る反力成分算出部252,452,652,852が有し、当該反力成分算出部252,452,652,852から出力される反力成分(弾性補正電流Ie,粘弾性補正電流Iev)を補正しても良い。
【0095】
<第10の実施形態>
図13は、第10の実施形態に係るステアバイワイヤシステム1000の概略構成の一例を示す図である。
第10の実施形態に係るステアバイワイヤシステム1000は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、ステアリングホイール101と前輪150とが、ステアリングシャフト102等により接続されず、機械的に分離している点が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点について説明し、第1の実施形態に係るステアリング装置100と同じ点についての説明は省略する。
【0096】
ステアバイワイヤシステム1000は、ステアリングホイール101の操舵に対して操舵反力を与える電動モータである反力モータ1001と、ステアリングシャフト102に装着されているとともに、反力モータ1001の出力軸に装着されたギヤと噛み合うギヤ1002とを備えている。また、ステアバイワイヤシステム1000は、ステアリングシャフト102を任意の回転角度で固定する固定部1003を有している。また、ステアバイワイヤシステム1000は、操舵角θs及び操舵トルクを検出する操舵検出装置1004を有している。操舵検出装置1004は、ステアリングシャフト102の回転角度に基づいて操舵角θsを検出するとともに、ステアリングシャフト102の捩れ量に基づいて操舵トルクを検出する。操舵検出装置1004が検出した操舵トルクが検出トルクTdである。
【0097】
ステアバイワイヤシステム1000は、電動モータ110の駆動を制御するとともに、反力モータ1001の駆動を制御する制御装置1010を有している。
図14は、制御装置1010における反力モータ1001の駆動を制御する反力モータ制御部1011の一例を示す概略構成図である。
反力モータ制御部1011は、反力モータ1001に供給するのに必要となる目標電流Itを設定する目標電流設定部20と、目標電流設定部20が算出した目標電流Itに基づいてフィードバック制御などを行う制御部30とを備えている。また、反力モータ制御部1011は、操舵検出装置1004が検出した検出トルクTdを補正して補正後トルクTcを算出するトルク補正部1050を備えている。
【0098】
トルク補正部1050は、操舵検出装置1004が検出した操舵角θsの偏差Δθを算出する偏差算出部51と、偏差算出部51が算出した偏差Δθに基づいて、運転者の操舵に対する反力成分を算出する反力成分算出部52とを有している。また、トルク補正部1050は、反力成分算出部52が算出した反力成分を用いて検出トルクTdを補正する補正部53を有している。
【0099】
以上説明したステアバイワイヤシステム1000によれば、第1の実施形態に係るステアリング装置100が奏する効果と同様の効果を奏するので、操舵フィーリングを向上することができる。
上述したように、反力モータ制御部1011は、第1の実施形態に係る制御装置10の機能を有する。同様に、反力モータ制御部1011は、第2~9の実施形態に係る制御装置(例えば制御装置210)のいずれかの制御装置の機能を有しても良い。
【0100】
なお、第2の実施形態に係るステアリング装置200の目標電流設定部220において、補正設定部222は、基本目標電流Ibを補正する補正電流を設定するが、特にかかる態様に限定されない。補正設定部222が補正する補正電流が、目標電流Itであっても良い。例えば、目標電流設定部220は、基本設定部221及び最終設定部223を備えていなくても良い。あるいは、目標電流設定部220において、基本設定部221が設定する基本目標電流Ibを0としても良い。同様に、第4,第6,第8の実施形態に係る目標電流設定部420,620,820において、補正設定部422,622,822が補正する補正電流が、目標電流Itであっても良い。あるいは、目標電流設定部420,620,820において、基本設定部221が設定する基本目標電流Ibを0としても良い。
【0101】
なお、第1,第3,第5,第7の実施形態に係る制御装置10,310,510,710は、運転者の操舵入力信号の値の一例としての検出トルクTdを反力成分に基づいて補正する態様であり、第2,第4,第6,第8の実施形態に係る制御装置210,410,610,810は、基本目標電流Ibを反力成分に基づいて補正する態様である。これら検出トルクTdを補正する態様と、基本目標電流Ibを補正する態様とを適宜組み合わせても良い。つまり、検出トルクTdを反力成分に基づいて補正した補正後トルクTcを用いて、基本目標電流Ibを設定するとともに、設定した基本目標電流Ibを反力成分に基づいて補正して目標電流Itを算出しても良い。
【符号の説明】
【0102】
10,210,310,410,510,610,710,810,910,1010…制御装置、20…目標電流設定部、50…トルク補正部、52,252,352,452,552,652,752,852,952…反力成分算出部、53…補正部、55,255…弾性成分算出部、56,656…粘性成分算出部、57,370,470,657,757,857…加算部、80…車両状態補正部、100,200,300,400,500,600,700,800,900…ステアリング装置、130…伝達機構、223…最終設定部、1000…ステアバイワイヤシステム
図1
図2
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図4
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図7
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図10
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図14