(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20250117BHJP
F25D 23/04 20060101ALI20250117BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F25D17/08 307
F25D23/04 K
F25D25/00 E
(21)【出願番号】P 2021008490
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 円香
(72)【発明者】
【氏名】青山 遥
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-190588(JP,A)
【文献】実開昭56-140080(JP,U)
【文献】特開2007-071497(JP,A)
【文献】特開2003-050074(JP,A)
【文献】特開2007-170778(JP,A)
【文献】特開2020-008281(JP,A)
【文献】特開2017-026207(JP,A)
【文献】特開2009-036451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
F25D 23/04
F25D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室と、
前記冷蔵室内に配置された、上方部が開口している上段ケースと、
前記冷蔵室内の前記上段ケースの下方に配置された、上方部が開口している下段ケースと
を備え、
前記上段ケースは、前記上方部を蓋部が蓋することで内部が閉鎖空間となっており、
前記下段ケースの後方で前記蓋部よりも下方となる位置には、前記下段ケース内に冷気を流入させる冷気の吐出口が設けられており、前記吐出口から前記下段ケースに流入した冷気によって前記上段ケース内が冷却され、
前記下段ケースの後方には、前記冷蔵室内の冷気を冷却室へ戻す戻り口が設けられ、
前記上段ケースの前方側の下端部は、前記下段ケースの前方側の上端部よりも前側に位置しており、
前記上段ケースの前記下端部の後方には、下方に開口して前記下段ケースの上方部まで連通する窪み部を有して
おり、
前記下段ケースに流入した冷気が前記窪み部を通って前記上段ケースの前記前方側から前記下段ケースの前面を下方へと誘導されて、前記下段ケースの底面部の下方から前記戻り口へと戻される、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記吐出口の少なくとも一部は、前記下段ケースの後面部の上端よりも上方に位置している、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記吐出口の下方側には、前方へ向かって突出する第1庇部が設けられており、
前記吐出口の上方側には、前方へ向かって突出し、前記第1庇部よりも長い第2庇部が設けられている、
請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記上段ケースには、前記前方側の前記下端部及び前記窪み部が左右方向に延在した第1取っ手部が設けられており、
前記下段ケースには、前記前方側の前記上端部に、前記下段ケースの左右方向に延在した第2取っ手部が設けられており、
前記第1取っ手部の前記窪み部は、少なくとも前記第2取っ手部の左右両側に位置している、
請求項1から3の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記下段ケースの後方には、
前記冷蔵室内に冷気を流入させる補助吐出口がさらに設けられており、
前記補助吐出口は、前記吐出口を間に挟んで前記戻り口とは左右方向の反対側に配置されている、
請求項1から4の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵室内に複数の収納ケースを備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫には、冷蔵室内に収納ケースが設けられているものがある。この収納ケースは、例えば、チルドケース、野菜ケースなどとして利用される。
【0003】
このような冷蔵庫の中には、例えば、特許文献1に開示されている冷蔵庫のように、冷蔵室内に複数の収納ケースを備えているものもある。特許文献1に開示された冷蔵庫は、冷蔵室7内の下部に2段の低温容器(上低温容器43および下低温容器44)を備えている。上低温容器43の後方には、上容器吐出口45が形成され、上容器ダクト37に連通接続されている。下低温容器44の後方には、下容器吐出口46が形成され、下容器ダクト38に連通接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に開示された冷蔵庫では、冷蔵室内に配置されている2つの収納ケース(すなわち、低温容器)のそれぞれに冷気の吐出口が設けられており、収納ケース内が冷却される構成となっている。しかしながら、収納ケース内に直接冷気が流入すると、ケースの内部が乾燥してしまう可能性がある。収納ケース内に、例えば、生鮮食品などを収容する場合には、ケース内が過度に乾燥することは望ましくない。
【0006】
そこで、本発明では、冷蔵室内に複数の収納ケースを備えている冷蔵庫において、少なくとも一つの収納ケース内の乾燥を抑えながら内部を冷却することのできる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる冷蔵庫は、冷蔵室と、前記冷蔵室内に配置された上段ケースと、前記冷蔵室内の前記上段ケースの下方に配置された下段ケースとを備えている。この冷蔵庫において、前記上段ケース内は、閉鎖空間となっており、前記下段ケースの後方には、前記下段ケース内に冷気を流入させる冷気の吐出口が設けられており、前記吐出口から前記下段ケースに流入した冷気によって前記上段ケース内が冷却される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一局面によれば、冷蔵室内に複数の収納ケースを備えている冷蔵庫において、少なくとも一つの収納ケース内の乾燥を抑えながら内部を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる冷蔵庫の正面部の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す冷蔵庫の冷蔵室内を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す冷蔵庫の冷蔵室内を示す正面図である。
【
図4】
図3に示す冷蔵室のA-A線部分の構成を示す断面図である。
【
図5】
図3に示す冷蔵室のB-B線部分の構成を示す断面図である。
【
図6】
図3に示す冷蔵室のB-B線部分の構成を示す斜視断面図である。
【
図7】
図4に示す冷蔵室内の上段ケースおよび下段ケース周辺を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図5に示す冷蔵室内の上段ケースおよび下段ケース周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
<第1の実施形態>
(冷蔵庫の全体構成)
先ず、第1の実施形態にかかる冷蔵庫1の全体構成を説明する。
図1には、冷蔵庫1を正面から見た外観を示す。
図2には、冷蔵庫1の庫内(具体的には、冷蔵室11などの内部)を示す。
図2では、冷蔵室扉11aおよび11bを取り外した状態の冷蔵庫1を示す。
【0012】
冷蔵庫1の外形は、主として断熱箱体50で構成されている。この断熱箱体50によって冷蔵庫1の貯蔵空間が形成される。断熱箱体50によって形成される貯蔵空間は、上下方向の略中央部において水平方向に延びる仕切り部55などによって、冷蔵室11、野菜室、冷凍室13、製氷室、および第2冷凍室などに区分けされている。
【0013】
冷蔵室11には、左右に分割された観音開き式の冷蔵室扉11aおよび11bが設けられている。野菜室には、引き出し式の野菜室扉12aが設けられている。冷凍室13には、引き出し式の冷凍室扉13aが設けられている。製氷室には、引き出し式の製氷室扉14aが設けられている。第2冷凍室には、引き出し式の冷凍室扉15aが設けられている。
【0014】
以上のように、本実施の形態にかかる冷蔵庫1は、複数の貯蔵空間に区分けされて、冷蔵室11および冷凍室などが設けられている。但し、各貯蔵空間の配置位置については、これに限定はされない。また、各貯蔵空間に設けられている扉の構成も、上記のものに限定はされない。
【0015】
本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫の正面または前面と呼ぶ。そして、前面を基準にして、冷蔵庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫1の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。また、冷蔵庫1を設置面に載置した状態で、冷蔵庫1を正面から見て左右の方向(上下方向と直交する横方向)のことを、冷蔵庫1(または、冷蔵室11、上段ケース61、下段ケース71など)の左右方向という。また、冷蔵庫1を設置面に載置した状態で、冷蔵庫1の上下の方向(左右方向と直交する縦方向)のことを、冷蔵庫1(または、冷蔵室11、冷蔵室11、上段ケース61、下段ケース71など)の上下方向という。また、冷蔵庫1の前面側から見て左側に位置する側のことを、冷蔵庫1の左側と呼び、冷蔵庫1の前面側から見て右側に位置する側のことを、冷蔵庫1の右側と呼ぶ。
【0016】
(冷蔵室の構成)
続いて、冷蔵庫1に設けられている冷蔵室11のより詳細な構成について説明する。
図3には、冷蔵室11の内部の構成を示す。
図3では、上段ケース61および下段ケース71を取り外した状態の冷蔵室11内を示す。
【0017】
図4から
図6には、冷蔵室11の断面構成を示す。
図4は、
図3に示す冷蔵庫1のA-A線の位置における冷蔵室11の内部構成を示す断面図である。
図5は、
図3に示す冷蔵庫1のB-B線の位置における冷蔵室11の内部構成を示す断面図である。
図6には、
図3に示す冷蔵庫1のB-B線の位置における冷蔵室11の内部構成を、斜視断面図で示す。なお、
図3では、上段ケース61および下段ケース71は図示されていないが、
図4から
図6では、上段ケース61および下段ケース71も図示している。
【0018】
冷蔵室11の内壁は、主として、断熱箱体50の内箱51で形成されている。
図2などに示すように、冷蔵室11には、複数の棚板(
図2に示す例では、上段から順に、棚板40a、棚板40b、棚板40c、および棚板40d)が配置されている。これにより、冷蔵室11の内部は、複数の収容空間に区分けされる。また、冷蔵室11内における最下方に配置されている棚板40dの下には、複数の収納ケース(すなわち、上段ケース61、および下段ケース71)が配置される。
【0019】
冷蔵室11の背面側には、冷蔵室11へ送出される冷気が通る冷気ダクト20が設けられている(
図4参照)。冷気ダクト20は、冷却器(図示せず)などが配置されている冷却室で冷やされた冷気を、冷蔵室11まで送るための通路である。冷却室で冷やされた冷気は、冷気ダクト20内を上方へと流れ、冷気ダクト形成部材30に設けられている複数の吐出口から冷蔵室11へと送出される。
【0020】
冷気ダクト20は、冷気ダクト形成部材30によって形成されている。冷気ダクト形成部材30は、冷蔵室11の背面部に配置されている。冷気ダクト形成部材30の本体部31の表面は、冷蔵室11の背面側の内壁の一部を形成している。
【0021】
冷気ダクト形成部材30には、冷気ダクト20から冷蔵室11へ冷気を吐出する複数の吐出口、および、冷蔵室11内の空気を冷却室へ戻す戻り口が設けられている。
【0022】
本実施形態では、冷気ダクト形成部材30には、冷蔵室11へ冷気を吐出する複数の吐出口として、第1吐出口32、第2吐出口33a~33d、第3吐出口34、および第4吐出口36などなどが設けられている。
【0023】
第1吐出口32は、本体部31の上端に配置されている。冷気ダクト20内を下方から上方へ流れた冷気の一部は、この第1吐出口32から冷蔵室11へ送出される
【0024】
第1吐出口32の下方には、複数個の第2吐出口が設けられている。本実施形態では、4個の第2吐出口33a・33b・33c・33dが設けられている。これらの第2吐出口33a・33b・33c・33dは、本体部31の正面部31aに配置されている。より具体的には、本体部31の正面部31aにおいて上方から順に、4個の第2吐出口33a・33b・33c・33dが縦方向(上下方向)に並んで配置されている。
図3などに示すように、各第2吐出口33a・33b・33c・33dは、縦長形状となっている。
【0025】
第2吐出口33a・33b・33c・33dがこのような縦長形状を有していることで、冷気ダクト20内の冷気の流通抵抗が低減し、冷気ダクト20の上端に設けられている第1吐出口32まで、冷気を無駄なく運ぶことができる。また、各第2吐出口33a~33dの形状が冷気ダクト20内の冷気の流通方向に沿った形状となっているため、各第2吐出口33a~33dから冷気をより均一に送出することができる。
【0026】
なお、各第2吐出口33a・33b・33c・33dの開口部には、冷気ダクト20から冷蔵室11へ送出される冷気の風向きを規定するためのルーバーが設けられている。
【0027】
第2吐出口33a~33dの下方には、第3吐出口(吐出口)34、第4吐出口(補助吐出口)36、および戻り口35が設けられている。本実施形態では、第3吐出口34、第4吐出口36、および戻り口35は、冷気ダクト形成部材30の本体部31の下方であって、最下方に位置する棚板40dよりも下側に配置されている。そして、第3吐出口34および第4吐出口36は、冷蔵室11内の棚板40dの下方に配置される収納ケース(例えば、上段ケース61、下段ケース71など)の背面側に設けられている。
【0028】
本実施形態では、
図3などに示すように、第3吐出口34は、正面から見て、冷蔵室11内の左右方向の中央部の近傍に配置されている。また、第4吐出口36は、正面から見て、第3吐出口34の右側に配置されている。
【0029】
なお、第3吐出口34および第4吐出口36の開口部には、冷気ダクト20から冷蔵室11へ送出される冷気の風向きを規定するためのルーバーが設けられている。
【0030】
また、第4吐出口36の周囲には、空間Dが設けられている。この空間Dは、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの背面側に位置している(
図5参照)。第4吐出口36から吹き出された冷気の一部は、この空間D内に留まり、上段ケース61を背面から間接的に冷却する。
【0031】
戻り口35は、冷蔵室11の背面部の下方に位置している。本実施形態では、第3吐出口34および第4吐出口36などと同様に、戻り口35は、冷蔵室11内の棚板40dの下方に配置される収納ケース(例えば、上段ケース61、下段ケース71など)の背面側に設けられている。
【0032】
本実施形態では、
図3などに示すように、戻り口35は、正面から見て、第3吐出口34の左側に配置されている。すなわち、戻り口35は、第3吐出口34を間に挟んで第4吐出口36とは左右方向の反対側に配置されている。
【0033】
冷気ダクト形成部材30に設けられている各吐出口から冷蔵室11へ送出され、冷蔵室11内を流れた冷気は、戻り口35から冷却室へと戻される。戻り口35が、第3吐出口34を間に挟んで第4吐出口36とは左右方向の反対側に配置されていることで、第4吐出口36と戻り口35との距離が大きくなり、第4吐出口36から吹き出された冷気が、左側の戻り口35へショートカットしないようにすることができる。なお、後述するように、第3吐出口34および第4吐出口36から吹き出された冷気は、戻り口35側(すなわち、本実施形態では、正面から見て左側)とは反対側(すなわち、本実施形態では、正面から見て右側)へ誘導されることが好ましい。
【0034】
第3吐出口34、第4吐出口36、および戻り口35の前方側には、上段ケース61および下段ケース71が、上下に並んで配置されている。
【0035】
上段ケース61内は、閉鎖空間となっている。そのため、上段ケース61は、ケース内の湿度が低下し過ぎることを抑制することができる。上段ケース61は、例えば、チルドケース、野菜ケースなどとして好適に使用される。
【0036】
一方、下段ケース71は、その上方の背面側が開放された状態となっており、第3吐出口34および第4吐出口36から吹き出された冷気がケース内に流入するような構成となっている。そのため、冷蔵室11内において下段ケース71内の温度をより低くすることができる。下段ケース71は、例えば、作り置きの食材、調理済みの食品などを保管するためのケースとして好適に使用される。
【0037】
(上段ケースおよび下段ケース、並びにその周辺の構成)
続いて、上段ケース61および下段ケース71のより詳細な構成について説明する。また、上段ケース61および下段ケース71の周辺の構成についても併せて説明する。
図7および
図8には、上段ケース61、下段ケース71、および第3吐出口34などの構成を模式的に示す。
図7は、冷蔵室11内に設けられている上段ケース61および下段ケース71を、
図3に示すA-A線の位置(すなわち、第2取っ手部75が設けられている位置)で切断した場合の断面図である。
図8は、冷蔵室11内に設けられている上段ケース61および下段ケース71を、
図3に示すB-B線の位置で切断した場合の断面図である。
【0038】
図2に示すように、上段ケース61は、冷蔵室11内の棚板40aの下方に配置されている。下段ケース71は、上段ケース61の下方に配置されている。上段ケース61および下段ケース71は、前後方向に摺動可能な構成となっている。また、上段ケース61および下段ケース71は、冷蔵庫1から取り外し可能な構成となっている。
【0039】
なお、本実施形態では、冷蔵室11内に上段ケース61および下段ケース71という2つの収納ケースが配置されている冷蔵庫1を例に挙げて説明しているが、冷蔵室11内の収納ケースの個数は、2個に限定はされない。すなわち、冷蔵庫1の冷蔵室11内には、上段ケース61および下段ケース71の他に、さらに別の少なくとも一つの収納ケースが設けられていてもよい。
【0040】
上段ケース61は、主として、ケース本体62、および蓋部63などを備えている。ケース本体62は、箱型の形状をしており、上方部が開口している。蓋部63は、ケース本体62の上方の開口部分を覆うように配置される。これにより、上段ケース61の内部に閉鎖空間を形成することができる。蓋部63の上面には、棚板40dが配置されている。
【0041】
ケース本体62は、主として、前面部62a、左右両側の側面部、後面部62b、および底面部62cで形成された箱型の形状を有している。これらのケース本体62の各部分の名称は、ケース本体62が冷蔵室11内に収容された状態での位置に基づいて規定されている。
【0042】
ケース本体62の前面部62aの下端部62eには、第1取っ手部65が設けられている。第1取っ手部65は、前面部62aの背面側に窪み62fを有している。使用者は、この窪み62f内に手を入れることで、ケース本体62を手前に引き出すことができる。
【0043】
本実施形態では、第1取っ手部65は、上段ケース61の左右方向の全領域に設けられている(
図2など参照)。これにより、第3吐出口34などから前方側へ吹き出された冷気は、下段ケース71内を通過した後、第1取っ手部65の窪み62fに一旦流入し、上段ケース61の左右方向の全領域から前方へ排出される。そのため、第3吐出口34などから前方側へ吹き出された冷気が、冷蔵室11の左右方向の中央部に集中することを避け、冷蔵室11の左右方向に分散させることができる。
【0044】
下段ケース71は、主として、ケース本体72で構成されている。ケース本体72は、箱型の形状をしており、上方部が開口している。
【0045】
ケース本体72は、主として、前面部72a、左右両側の側面部、後面部72b、および底面部72cで形成された箱型の形状を有している。これらのケース本体72の各部分の名称は、ケース本体72が冷蔵室11内に収容された状態での位置に基づいて規定されている。
【0046】
ケース本体72の前面部72aの上端部72eには、第2取っ手部75が設けられている。第2取っ手部75は、下段ケース71の左右方向の一部の領域に設けられている。本実施形態では、第2取っ手部75は、下段ケース71の左右方向の略中央部のみに設けられている(
図2など参照)。
【0047】
したがって、上段ケース61の第1取っ手部65の窪み62fの一部(左右方向の略中央部)は、下段ケース71の第2取っ手部75に対向しているが、その他の部分は、下段ケース71の開口部に対向している。これにより、下段ケース71内を通過した冷気が、下段ケース71の開口部から上段ケース61の第1取っ手部65の窪み62fに流入しやすくなり、下段ケース71内の冷気の滞留を抑制できる。また、下段ケース71の左右方向の略中央部には第2取っ手部75があるため、左右両端部に比べて冷気が流出しにくくなる。したがって、第3吐出口34などから前方側へ吹き出された冷気が、下段ケース71の左右方向の中央部に集中することを避け、下段ケース71の左右方向に分散して流れるとともに、上段ケース61の底面を左右均一に冷却することができる。
【0048】
なお、上段ケース61の第1取っ手部65は、上段ケース61の左右方向の全領域に設けられる構成に限らない。上段ケース61の第1取っ手部65は、例えば、下段ケース71の第2取っ手部75の左右方向の幅よりも左右方向により広い幅で形成されることが好ましく、左右方向において、上段ケース61の第1取っ手部65が下段ケース71の第2取っ手部75の2倍以上の領域にわたって設けられていることが好ましい。
【0049】
図7および
図8に示すように、上段ケース61のケース本体62の前面部62aの下端部62eは、下段ケース71の前面部72aの上端部72eよりもわずかに前側に位置している。これにより、第3吐出口34などから吹き出された冷気の一部が、下段ケース71のケース本体72内を後方から前方へと流れ、下段ケース71の前面部72aからケース外へ出るときに、上方側へ流出することを抑えることができ、下段ケース71の底面部72cの下方から戻り口35へと冷気を誘導できる。
【0050】
また、
図7および
図8に示すように、下段ケース71の後方には、第3吐出口34が設けられている。また、
図6に示すように、下段ケース71の後方には、第4吐出口36も設けられている。
【0051】
本実施形態では、第3吐出口34は、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの上端部72dよりも上方に位置している。これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気の大部分を、下段ケース71のケース本体72内へ誘導することができる。そのため、下段ケース71内を優先的に冷却することができる。
【0052】
図7には、第3吐出口34から吹き出される冷気の流れを矢印で模式的に示している。
図7に示すように、下段ケース71内に流入した冷気による冷熱は、下段ケース71の上方に配置されている上段ケース61内に間接的に伝達される。これにより、閉鎖空間となっている上段ケース61の内部も、第3吐出口34および第4吐出口36などから吹き出された冷気によって冷却される。この構成により、上段ケース61内には吐出口から直接冷気が流入することが回避できるため、上段ケース61内が冷気の風によって乾燥することを抑制することができる。
【0053】
また、第3吐出口34および第4吐出口36には、その開口部の上端辺および下端辺に沿って、冷蔵室11の前方へ突出する庇(リブ)が設けられている。例えば、第3吐出口34には、その開口部の下端辺に沿って第1庇部34aが設けられている。また、第3吐出口34には、その開口部の上端辺に沿って第2庇部34bが設けられている。
【0054】
図7などに示すように、第2庇部34bの長さ(前方への突出量)は、第1庇部34aの長さ(前方への突出量)よりも長くなっている。これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気が上方へ流れることを抑制し、第3吐出口34の下方に位置する下段ケース71へと冷気を誘導することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2庇部34bの位置は、上段ケース61のケース本体62の底面部62cの位置とほぼ同じ高さか、あるいは、底面部62cの位置のやや下側となっている。また、第2庇部34bの前端は、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの上端部72dよりも前方に位置している(
図7および
図8参照)。これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気のより多くを下段ケース71内へ誘導することができる。
【0056】
また、本実施形態では、第1庇部34aの前端は、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの上端部72dの近傍かつ上方に位置している(
図7および
図8参照)。これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気のより多くを下段ケース71内へ誘導することができる。
【0057】
このような第1庇部34aおよび第2庇部34bが設けられていることで、第3吐出口34から吹き出された冷気を下段ケース71のケース本体72内へ誘導することができる。これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気が下段ケース71内に誘導されず、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの背面側へ流入して、戻り口35へとショートカットすることを抑制することができる。
【0058】
なお、第4吐出口36にも、第3吐出口34と同様の第1庇部34aおよび第2庇部34bが設けられていることが好ましい。
【0059】
また、本実施形態では、上述したように、冷気の戻り口35は、第3吐出口34を間に挟んで第4吐出口36とは左右方向の反対側に配置されている。これにより、第4吐出口36から吹き出された冷気の流れが、左側の戻り口35へショートカットしないようにすることができる。
【0060】
そして、第3吐出口34および第4吐出口36から吹き出された冷気は、戻り口35側(すなわち、本実施形態では、正面から見て左側)とは反対側(すなわち、本実施形態では、正面から見て右側)へ誘導されることが好ましい。そのため、第3吐出口34および第4吐出口36には、その開口部の側端辺に沿って、吹出された冷気を戻り口とは反対側へ誘導するような側壁が設けられている。例えば、第3吐出口34には、正面から見て左側の側端辺に、前方へ向かって突出する側壁34cが設けられている(
図6参照)。
【0061】
これにより、第3吐出口34から吹き出された冷気を、戻り口35の配置位置とは反対の方へ流れるように誘導することができる。そして、第3吐出口34から吹き出された冷気が直ぐに戻り口35へ流入することを回避し、冷蔵室11内に冷気を循環させることができる。
【0062】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1は、冷蔵室11を備えている。冷蔵室11内には、上段ケース61と、上段ケース61の下方に配置されている下段ケース71とが備えられている。上段ケース61は、主として、ケース本体62と、蓋部63とで構成されており、上段ケース61の内部は、閉鎖空間となっている。下段ケース71は、主として、ケース本体72で構成されている。下段ケース71の後方には、下段ケース71内に冷気を流入させる冷気の吐出口(例えば、第3吐出口34など)が設けられている。上段ケース61の内部は、この吐出口から下段ケース71に流入した冷気によって冷却される。
【0063】
すなわち、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、第3吐出口34などから下段ケース71内に冷気が流入する。これにより、下段ケース71内は冷却される。そして、下段ケース71の真上に位置している上段ケース61の内部は、下段ケース71内に流入した冷気によって間接的に冷却される。下段ケース71内に流入した冷気は、下段ケース71の上端部72eと、上段ケース61の下端部62eとの間の隙間から前方へ排出される(
図7参照)。
【0064】
上記の構成によれば、上段ケース61内には第3吐出口34などの冷気の吐出口から直接冷気が流入することが回避できるため、上段ケース61内が冷気の風によって乾燥することを抑制することができる。したがって、冷蔵室11内に上段ケース61および下段ケース71を備えている冷蔵庫1において、上段ケース61内の乾燥を抑えながら、その内部を冷却することができる。また、下段ケース71内は冷気により直接冷却されるため、上段ケース61よりも低温とすることができる。例えば、上段ケース61内の温度を1℃程度に設定した場合には、下段ケース71内の温度は-2~0℃程度とすることができる。このように、下段ケース71内の温度を低温とすることで、例えば作り置きの食材を保管するための収納室とすることができる。
【0065】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第3吐出口34および第4吐出口36の構成が第1の実施形態とは異なっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0066】
本実施形態では、第3吐出口34および第4吐出口36の開口部の少なくとも一部が、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの上端部72dよりも上方に位置している。すなわち、第3吐出口34および第4吐出口36の下方部分は、下段ケース71のケース本体72の後面部72bの上端部72dよりも下方に位置している。これにより、第3吐出口34および第4吐出口36から吹き出した冷気の一部を、ケース本体72の後面部72bの背面側から底面部72cの下方を通過させることができる。これにより、下段ケース71の底面からもケース本体72内を冷却することができ、例えば下段ケース71のケース本体72の深さが深い場合などに有用である。なお、この形態においては、ケース本体72の後面部72bの背面側や底面側にリブを設置するなどで、戻り口35への冷気のショートカットを防止する構成とすることが好ましい。
【0067】
(まとめ)
本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)は、冷蔵室(例えば、冷蔵室11)と、前記冷蔵室内に配置された上段ケース(例えば、上段ケース61)と、前記冷蔵室内の前記上段ケースの下方に配置された下段ケース(例えば、下段ケース71)とを備えている。前記上段ケース内は、閉鎖空間となっている。また、前記下段ケースの後方には、前記下段ケース内に冷気を流入させる冷気の吐出口(例えば、第3吐出口34)が設けられており、前記吐出口から前記下段ケースに流入した冷気によって前記上段ケース内が冷却される。
【0068】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記吐出口(例えば、第3吐出口34)の少なくとも一部は、前記下段ケース(例えば、下段ケース71)の後面部(例えば、後面部72b)の上端(例えば、上端部72d)よりも上方に位置していてもよい。
【0069】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記吐出口(例えば、第3吐出口34)の下方側には、前方へ向かって突出する第1庇部(例えば、第1庇部34a)が設けられており、前記吐出口の上方側には、前方へ向かって突出し、前記第1庇部よりも長い第2庇部(例えば、第2庇部34b)が設けられていてもよい。
【0070】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記上段ケース(例えば、上段ケース61)の前方側の下端部(例えば、下端部62e)は、前記下段ケース(例えば、下段ケース71)の前方側の上端部(例えば、上端部72e)よりも前側に位置していてもよい。
【0071】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記上段ケース(例えば、上段ケース61)には、前記前方側の前記下端部(例えば、下端部62e)に、前記上段ケースの左右方向に延在した第1取っ手部(例えば、第1取っ手部65)が設けられており、前記下段ケース(例えば、下段ケース71)には、前記前方側の前記上端部(例えば、上端部72e)に、前記下段ケースの左右方向に延在した第2取っ手部(例えば、第2取っ手部75)が設けられており、前記第1取っ手部の左右方向の幅は、前記第2取っ手部の左右方向の幅よりも大きくてもよい。
【0072】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫(例えば、冷蔵庫1)において、前記下段ケース(例えば、下段ケース71)の後方には、前記冷蔵室(例えば、冷蔵室11)内に冷気を流入させる補助吐出口(例えば、第4吐出口36)と、前記冷蔵室内の冷気を冷却室へ戻す戻り口(例えば、戻り口35)とがさらに設けられており、前記補助吐出口は、前記吐出口(例えば、第3吐出口34)を間に挟んで前記戻り口とは左右方向の反対側に配置されていてもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 :冷蔵庫
11 :冷蔵室
20 :冷気ダクト
30 :冷気ダクト形成部材
32 :第1吐出口
33a :第2吐出口
34 :第3吐出口(吐出口)
34a :第1庇部
34b :第2庇部
34c :側壁
35 :戻り口
36 :第4吐出口(補助吐出口)
61 :上段ケース
62 :(上段ケースの)ケース本体
62a :(ケース本体の)前面部
62b :(ケース本体の)後面部
62c :(ケース本体の)底面部
62e :(ケース本体の前面部の)下端部
63 :(上段ケースの)蓋部
65 :(上段ケースの)第1取っ手部
71 :下段ケース
72 :(下段ケースの)ケース本体
72a :(ケース本体の)前面部
72b :(ケース本体の)後面部
72c :(ケース本体の)底面部
72d :(ケース本体の後面部の)上端部
72e :(ケース本体の前面部の)上端部
75 :(下段ケースの)第2取っ手部