(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】蓋体および収容パッケージ
(51)【国際特許分類】
B65D 75/32 20060101AFI20250117BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B65D75/32
B65D77/20 N
(21)【出願番号】P 2021017905
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2024-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】出水 敏博
(72)【発明者】
【氏名】榎谷 幸敏
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-114761(JP,U)
【文献】実公昭07-008438(JP,Y1)
【文献】特開2000-062835(JP,A)
【文献】特開2006-224971(JP,A)
【文献】特開2017-133128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に向けて開口する収容凹部を有する容器体に接着されることにより、収容凹部を封止する蓋体であって、
互いに積層された基材と不透明層部とを備え、
前記基材は、紙材を含み、かつ、半透明性または透明性を有し、
前記不透明層部には、前記蓋体を容器体に接着した接着状態において収容凹部と重なる位置に、前記基材を介して収容凹部に収容された収容物の少なくとも一部が視認可能となるように、開口部が設けられて
おり、
前記基材は、前記接着状態において容器体が位置する側とは反対側を向くおもて面を有し、
前記おもて面のうち、前記開口部によって外部に露出する部分に塗料が塗布されている、蓋体。
【請求項2】
前記基材は、前記接着状態において容器体が位置する側とは反対側を向くおもて面を有し、
前記不透明層部は、前記おもて面上に設けられたデザイン層、または不透明性基材を含む、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記不透明層部は、紙材を含む、請求項1に記載の蓋体。
【請求項4】
一方側に向けて開口する収容凹部を有し、前記収容凹部に収容物を収容する容器体と、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の蓋体と、を備え、
前記蓋体は、前記容器体に接着され、前記収容凹部を封止している、収容パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体および収容パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブリスター包装に用いられる蓋体として、特開平06-206285号公報(特許文献1)には、薄葉紙等の基材に目止め層、中間層、および熱封緘性層を順に積層させたものが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の蓋体にあっては、収容ポケットを形成した透明の容器体に収容物を収容した後に、熱封緘性層によって当該容器体に接着される。各層に使用する樹脂および樹脂組成物に特定の樹脂および樹脂組成物を使用することにより、容器本体に熱封緘した際に、熱封緘層の流動に伴って中間層および目止め層が流動することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境負荷を低減させることが要求されており、蓋体だけでなく、収容物を収容する容器体において、紙材等の環境に配慮した部材が用いられることがある。このような部材によって容器体が形成された場合には、容器体が不透明となる。このため、不透明な容器にも適用可能な蓋体が要求されている。
【0006】
ここで、容器体が不透明の場合に、特許文献1に開示のように目止め層、中間層、および熱封緘性層が基材の片面を全体的に覆うような構成の蓋体を用いた場合には、容器体に収容される収容物が外部から視認できなくなってしまう。
【0007】
内容物の視認性を確保するために、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムによって構成された透明の蓋体を用いることが考えられるが、合成樹脂フィルムは環境に対する負荷が大きい。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、環境に優しく、収容物を視認可能な蓋体、および当該蓋体を備えた収容パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の蓋体は、一方側に向けて開口する収容凹部を有する容器体に接着されることにより、収容凹部を封止する蓋体である。当該蓋体は、互いに積層された基材と不透明層部とを備える。上記基材は、紙材を含み、かつ、半透明性または透明性を有する。上記不透明層部には、上記蓋体を容器体に接着した接着状態において収容凹部と重なる位置に、上記基材を介して収容凹部に収容された収容物の少なくとも一部が視認可能となるように、開口部が設けられている。
【0010】
上記本開示の蓋体にあっては、上記基材は、上記接着状態において容器体が位置する側とは反対側を向くおもて面を有する。この場合には、上記不透明層部は、上記おもて面上に設けられたデザイン層または不透明性基材を含んでいてもよい。
【0011】
上記本開示の蓋体にあっては、上記不透明層部は、紙材を含んでいてもよい。
【0012】
上記本開示の蓋体にあっては、上記基材は、上記接着状態において容器体側を向く裏面を有する。上記蓋体は、上記裏面上に設けられた接着層をさらに備える。この場合には、上記接着層は、上記接着状態において収容凹部と重なる領域に、接着性を有しない非接着領域あるいは、他の部分よりも接着性が低い弱接着領域を含んでいてもよい。
【0013】
上記本開示の蓋体にあっては、上記開口部から露出する部分の上記基材に光透過性を増加させる塗料が塗布されていてもよい。
【0014】
本開示の収容パッケージは、一方側に向けて開口する収容凹部を有し、上記収容凹部に収容物を収容する容器体と、上記蓋体とを備える。上記蓋体は、上記容器体に接着され、上記収容凹部を封止している。
【0015】
上記本開示の収容パッケージにあっては、前記容器体は、不透明性を有することが好ましい。
【0016】
上記本開示の収容パッケージにあっては、前記容器体は、紙材を含むを成形体によって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境に優しく、収容物を視認可能な蓋体、および当該蓋体を備えた収容パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1に係る収容パッケージの平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る収容パッケージの断面図である。
【
図3】実施の形態2に係る収容パッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る収容パッケージの平面図である。
図2は、実施の形態1に係る収容パッケージの断面図であり、
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
図1および
図2を参照して、実施の形態1に係る収容パッケージ100について説明する。
【0021】
図1および
図2に示すように、収容パッケージ100は、容器体10、収容物20、および蓋体30を備える。
【0022】
容器体10は、本体部11と、収容凹部12とを含む。本体部11は、略板状形状を有する。本体部11は、収容凹部12の開口面に略平行となるように設けられている。本体部11は、おもて面11aを有する。おもて面11aは、蓋体30が容器体10に接着された状態において、蓋体30に対向する。
【0023】
収容凹部12は、一方側に開口するように本体部11に設けられている。より特定的には、収容凹部12は、本体部11が有するおもて面11a側に向けて開口している。収容凹部12は、収容物を収容可能に設けられている。収容凹部12の形状は、収容物に応じて適宜設定することができる。
【0024】
本実施の形態においては、1つの収容凹部12が本体部11に設けられている場合を例示するが、複数の収容凹部12が、本体部11に設けられていてもよい。
【0025】
容器体10は、たとえば、食品、薬品、衛生用品、雑貨、日用品等を収容するブリスター容器であるが、これに限定されない。容器体10は、開口部を有する紙製の箱であってもよい。この場合において、当該紙製の箱は、紙を折ることで製造されていてもよい。容器体10を紙で構成する場合には、当該紙として、上質紙、コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙等を適宜採用することができる。
【0026】
容器体10は、たとえば、紙材を含む成形体によって構成されてもよい。紙材を含む成形体として、たとえば、パルプモールド体、またはシート成形体を採用することができる。
【0027】
パルプモールド体は、新聞紙、雑誌、およびダンボール等の古紙(紙材)と水とを攪拌することにより作製したパルプ繊維の溶液を原料とする。パルプモールド体は、当該溶液中に金型を浸して当該金型の内部を真空引きし、当該金型の表面に吸着したパルプ繊維を乾燥させることにより成形されたものである。容器体10が、パルプモールド体によって構成されることにより、環境の負荷を軽減することができる。
【0028】
シート成形体は、紙材と他の材料が混合されたシート状の基材を圧縮等によって成形したものである。他の材料としては、環境に配慮した材料、植物由来樹脂、またはこれらの混合物を含む。環境に配慮した材料としては、たとえば、パルプ、毛、綿、麻等の天然繊維、レーヨン、アセテート、キュプラ等の半合成繊維、または、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等の生分解性樹脂を採用することができる。植物由来樹脂としては、ポリ乳酸、バイオポリエステル、バイオポリエチレン等を採用することができる。このようなシート成形体によって、容器体10が構成されることによっても、環境の負荷を軽減することができる。また、シート状の基材は、不織布シートであってもよい。
【0029】
収容物20としては、上述のような食品、薬品、衛生用品、雑貨、日用品等を好適に採用することができる。
【0030】
蓋体30は、一方側に向けて開口する収容凹部12を有する容器体10に接着されることにより、収容凹部12を封止する。
【0031】
蓋体30は、基材31、不透明層部32、接着層33、および塗料35を含む。基材31は、シート状に形成されており、互いに表裏関係にあるおもて面31aおよび裏面31bを有する。おもて面31aは、蓋体30を容器体10に接着した接着状態において、容器体10が位置する側とは反対側を向く。
【0032】
基材31は、植物由来性、または天然素材からなる透明性がある薄い基材であることが好ましく、紙材を使用する場合には、より環境負荷を低減することができる。基材31は、紙材を主材とすることがより好ましく、紙と植物性由来素材を積層した構成であってもよい。基材31は、紙材単体によって構成されていてもよい。
【0033】
当該紙材としては、Haze値が、99%以下であるものが好ましく、75%以下であるものがさらに好ましい。なお、上記Haze値は、たとえば、紫外可視分光光度計UV-2600(株式会社島津製作所制)およびヘーズメータNDH7000(日本電色工業株式会社制)等の機器を用いて計測された値である。
【0034】
このようなHaze値を有する紙材として、たとえば、トレーシングペーパー、グラシン紙、またはセルロースペーパー等を採用することができる。トレーシングペーパーのHaze値は、75%より大きく、99%以下であり、半透明性を有する。一方、グラシン紙のHaze値は、75%以下であり、透明性を有する。セルロースペーパーのHaze値は、10%以下であり、透明性を有する。
【0035】
本実施の形態においては、後述する不透明層部32の開口部32aから露出する部分のおもて面31aに塗料35が塗布されている。なお、塗料35は、おもて面31aの全体に塗布してもよいし、上記露出する部分のおもて面31aの一部に塗布してもよい。
【0036】
塗料35をおもて面31aに塗布することにより、おもて面31aの平滑性が向上し、これより光の散乱が抑制され、透明性が向上する。たとえば、塗料が塗布された部分のHaze値を55%以下にすることができる。これにより、上述の開口部32aおよび当該開口部32aから露出する部分の基材31を介して、収容凹部12に収容された収容物20をより視認しやすくなる。
【0037】
当該塗料35としては、たとえばワニスを採用することができる。ワニスとしては、たとえば、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はエポキシ系樹脂を用いたもの等、公知の各種のワニスを用いることができる。
【0038】
不透明層部32は、基材31に積層されている。具体的には、不透明層部32は、基材31のおもて面31a上に形成されている。本実施の形態においては、不透明層部32は、デザイン層によって構成されている。
【0039】
デザイン層は、商品名、絵柄、成分表示、バーコード、2次元コード、注意書きなどの各種デザイン表示が表された印刷層である。デザイン層は、バインダー樹脂と着色剤とを含むインキを、公知の印刷法にて印刷することによって形成される。
【0040】
不透明層部32には、上記接着状態において収容凹部12と重なる位置に開口部32aが設けられている。当該開口部32aは、半透明性または透明性を有する基材31を露出させる。
【0041】
接着層33は、基材31の裏面31b上に設けられている。接着層33は、たとえば、感圧型接着剤、感熱型接着剤等によって構成されている。
【0042】
接着層33は、上記接着状態において収容凹部12と重なる領域R1に、他の部分よりも接着性が低い弱接着領域、あるいは、接着性を有しない非接着領域を含んでいてもよい。
【0043】
弱接着領域は、領域R1に形成されている接着層33に対して、全体的あるいは部分的に弱接着処理を行なうことで形成されてもよい。また、領域R1に、部分的に、感圧型接着剤、感熱型接着剤を塗布しないことにより、接着層33が設けられた領域R1以外の領域よりも接着力が弱まるように弱接着領域を形成してもよい。
【0044】
弱接着処理としては、たとえば、シリコーン樹脂などの剥離剤を含む液体(例えば紫外線硬化型インキなど)や微粒子を含む塗工液(例えば艶消しインキなど)などの表面処理液を所定範囲に塗工する。
【0045】
接着層33に上記弱接着領域が形成される場合には、収容物20を剥離可能に弱接着領域に接着させることができ、収容物20が回転したり移動したりすることを抑制することができる。
【0046】
非接着領域は、領域R1に形成されている接着層33に対して全体的に非接着処理を施すことによって形成されてもよいし、領域R1に全体的に接着層33を設けないことにより、形成されてもよい。
【0047】
接着層33に上記非接着領域が形成される場合には、収容物20の表面に接着層33が付着してしまうことを防止できる。
【0048】
なお、上記弱接着領域、および上記非接着領域は、上記領域R1に限定されず、収容凹部12と本体部11との接続部の周縁から外側にはみ出すように設けられていてもよい。この場合には、上記領域R1の周囲から蓋体30を容易に容器体10から剥離させることができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係る蓋体30にあっては、半透明性または透明性を有する基材31に不透明層部32を積層させ、当該積層方向において収容凹部12と重なる位置に不透明層部32に開口部32aが形成されている。これにより、上記接着状態において、開口部32aおよび、当該開口部32aから露出する部分の基材31を介して、収容凹部12に収容された収容物20の少なくとも一部が視認可能となる。このような効果は、容器体10が不透明である場合により顕著に発揮される。
【0050】
また、基材31が紙材を含むことにより、環境への負荷を軽減することができる。さらに、容器体10を紙材を含む成形体によって構成する場合には、より環境への負荷を軽減させることができ、循環型社会に適用されることができる。
【0051】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係る収容パッケージの断面図である。
図3を参照して、実施の形態2に係る収容パッケージ100Aについて説明する。
【0052】
図3に示すように、実施の形態2に係る収容パッケージ100Aは、実施の形態1に係る収容パッケージ100と比較した場合に、蓋体30Aの構成(より特定的には、不透明層部32Aの構成)が相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
【0053】
不透明層部32Aは、不透明性基材を含む。不透明性基材は、たとえば、蒸着紙、グロス紙等の不透明な紙基材、または、金属箔等である。不透明な紙基材として、上質紙、コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙等を採用してもよい。
【0054】
このように構成される場合であっても実施の形態2に係る蓋体30Aおよび収容パッケージ100Aは、実施の形態1に係る蓋体30および収容パッケージ100とほぼ同様の効果を奏する。
【0055】
以上、今回発明された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 容器体、11 本体部、11a おもて面、12 収容凹部、20 収容物、30,30A 蓋体、31 基材、31a おもて面、31b 裏面、32,32A 不透明層部、32a 開口部、33 接着層、35 塗料、100,100A 収容パッケージ。