(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】トイレ管理システム
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E03D9/08 A
E03D9/08 Z
(21)【出願番号】P 2021032590
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 悦治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-193351(JP,A)
【文献】特開2019-141306(JP,A)
【文献】特開2000-232964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00- 9/16
A47K 13/00-17/02
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられたリモートコントロール装置とが設置されたトイレを管理するトイレ管理システムであって、
前記リモートコントロール装置の電池残量を取得する電池残量取得部と、
前記リモートコントロール装置のリモコン信号として、前記電池残量が所定残量以上の場合には使用者の操作に対応するコードが所定の通信フォーマットに従って格納されたフレームが所定回数送信され、前記電池残量が前記所定残量未満の場合には前記フレームが前記所定回数より少ない回数送信されるように、前記リモートコントロール装置の送信を管理する送信管理部と、
前記洗浄便座装置が受信した前記リモコン信号が受信エラーとなった場合、該洗浄便座装置または送信元の前記リモートコントロール装置から前記受信エラーとなったリモコン信号であるエラー信号を取得し、該エラー信号から前記コードを解析し、該解析したコードに基づく指示を前記受信エラーとなった洗浄便座装置に行うエラー処理部と、
を備えるトイレ管理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載のトイレ管理システムであって、
前記エラー処理部は、前記エラー信号の他に、前記送信元の前記リモートコントロール装置が操作された履歴に関する履歴情報を取得し、該取得した履歴情報を用いて前記エラー信号から前記コードを解析する
トイレ管理システム。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載のトイレ管理システムであって、
前記トイレは、前記洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられた前記リモートコントロール装置とが設置された便房を複数有するものであり、
前記エラー処理部は、前記エラー信号の他に、前記受信エラーとなった洗浄便座装置に対して前記便房が互いに隣接する前記洗浄便座装置で受信された前記リモコン信号を取得し、該取得した前記リモコン信号を用いて前記エラー信号から前記コードを解析する
トイレ管理システム。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のトイレ管理システムであって、
前記トイレは、前記洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられた前記リモートコントロール装置とが設置された便房を複数有するものであり、
前記送信管理部は、前記フレームが前記所定回数より少ない回数送信されるように前記リモートコントロール装置の送信を管理する場合、該リモートコントロール装置に対して前記便房が互いに隣接する前記リモートコントロール装置において、前記フレームが前記所定回数よりも多い回数送信されるように送信を管理し、
前記電池残量が前記所定残量未満となった前記リモートコントロール装置の電池と、前記便房が隣接する前記リモートコントロール装置の電池とを、まとめて交換させる交換指示を管理者に通知する指示通知部を備える
トイレ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトイレ管理システムとしては、洗浄便座装置とリモートコントロール装置とが設置されたトイレを管理するものが提案されている。例えば、特許文献1のシステムでは、トイレに設置された複数の洗浄便座装置の使用状況情報を取得して、洗浄便座装置の異常を検知したり、利用者に空き状況を提示したりする。また、リモートコントロール装置としては、所定の通信フォーマットに基づくリモコン信号を送信するものが用いられる。例えば特許文献2のリモートコントロール装置は、家電製品協会が規定する標準フォーマットに基づいてデータの送信開始を示すコードや操作指示を示すコードなどを含むフレームを生成し、同一フレームを二回続けて送信するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-141306号公報
【文献】特開2013-70295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリモートコントロール装置では、電池の残量が低下すると管理者が電池を交換することになるが、空港やショッピングセンタなどの比較的大きな施設に設けられたトイレの場合、トイレまでの移動距離が長くなり管理者がすぐに電池交換を行えないことがある。電池交換が遅れると、リモコン信号のコードに欠損が生じたりして受信エラーが発生しやすくなり、洗浄便座装置の作動不良が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、洗浄便座装置のリモートコントロール装置の電池残量の低下に適切に対応することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のトイレ管理システムは、
洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられたリモートコントロール装置とが設置されたトイレを管理するトイレ管理システムであって、
前記リモートコントロール装置の電池残量を取得する電池残量取得部と、
前記リモートコントロール装置のリモコン信号として、前記電池残量が所定残量以上の場合には使用者の操作に対応するコードが所定の通信フォーマットに従って格納されたフレームが所定回数送信され、前記電池残量が前記所定残量未満の場合には前記フレームが前記所定回数より少ない回数送信されるように、前記リモートコントロール装置の送信を管理する送信管理部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明のトイレ管理システムでは、リモートコントロール装置の電池残量が所定残量未満の場合には、使用者の操作に対応するコードが格納されたフレームが所定回数より少ない回数送信されるように、リモートコントロール装置の送信を管理する。このため、電池の消費を抑えて電池交換時期を先延ばしすることができるから、管理者がすぐに電池交換できなくてもリモコン信号の受信エラーが頻発するのを抑えることができる。したがって、リモートコントロール装置の電池残量の低下に適切に対応することができる。
【0009】
本発明のトイレ管理システムにおいて、前記洗浄便座装置が受信した前記リモコン信号が受信エラーとなった場合、該洗浄便座装置または送信元の前記リモートコントロール装置から前記受信エラーとなったリモコン信号であるエラー信号を取得し、該エラー信号から前記コードを解析し、該解析したコードに基づく指示を前記受信エラーとなった洗浄便座装置に行うエラー処理部を備えるものとしてもよい。こうすれば、リモコン信号の受信エラーが発生しても、洗浄便座装置を適切に作動させることができる。
【0010】
本発明のトイレ管理システムにおいて、前記エラー処理部は、前記エラー信号の他に、前記送信元の前記リモートコントロール装置が操作された履歴に関する履歴情報を取得し、該取得した履歴情報を用いて前記エラー信号から前記コードを解析するものとしてもよい。こうすれば、履歴情報から洗浄便座装置に指示された可能性を踏まえて解析するから、コード解析の信頼性を高めることができる。
【0011】
本発明のトイレ管理システムにおいて、前記トイレは、前記洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられた前記リモートコントロール装置とが設置された便房を複数有するものであり、前記エラー処理部は、前記エラー信号の他に、前記受信エラーとなった洗浄便座装置に対して前記便房が互いに隣接する前記洗浄便座装置で受信された前記リモコン信号を取得し、該取得した前記リモコン信号を用いて前記エラー信号から前記コードを解析するものとしてもよい。こうすれば、エラー信号のみで解析する場合に比して、コード解析の信頼性を高めることができる。
【0012】
本発明のトイレ管理システムにおいて、前記トイレは、前記洗浄便座装置と該洗浄便座装置に対応付けられた前記リモートコントロール装置とが設置された便房を複数有するものであり、前記送信管理部は、前記フレームが前記所定回数より少ない回数送信されるように前記リモートコントロール装置の送信を管理する場合、該リモートコントロール装置に対して前記便房が互いに隣接する前記リモートコントロール装置において、前記フレームが前記所定回数よりも多い回数送信されるように送信を管理し、前記電池残量が前記所定残量未満となった前記リモートコントロール装置の電池と、前記便房が隣接する前記リモートコントロール装置の電池とを、まとめて交換させる交換指示を管理者に通知する指示通知部を備えるものとしてもよい。こうすれば、複数のリモートコントロール装置の電池交換時期を揃えることができるから、電池交換の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】トイレ20を管理するトイレ管理システム10の概略構成図である。
【
図2】洗浄便座装置30とリモコン40の概略構成図である。
【
図3】洗浄便座装置30とリモコン40の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図5】電池残量低下対応処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】フレーム数を減らしたリモコン信号を示す説明図である。
【
図7】フレーム数を増やしたリモコン信号を示す説明図である。
【
図8】電池残量低下通知画面の一例を示す説明図である。
【
図9】受信エラー対応処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】変形例の受信エラー対応処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
図1はトイレ20を管理するトイレ管理システム10の概略構成図であり、
図2は洗浄便座装置30とリモコン40の概略構成図であり、
図3は洗浄便座装置30とリモコン40の電気的な構成を示すブロック図である。トイレ管理システム10は、複数のトイレ20を管理する管理装置50を備える。管理装置50は、インターネットなどのネットワーク5に接続されている。また、各トイレ20には、ネットワーク5に接続されたルータ12が設けられている。
【0016】
トイレ20は、空港やショッピングセンタ、高速道路のサービスエリア、オフィスビル、工場、病院、公園などに設けられて多数の使用者に使用されるものである。男性用のトイレ20(
図1の上側)は、複数の男性用の小便器21と、複数の便房(トイレ個室)22と、洗面台24とを備える。また、女性用のトイレ20(
図1の下側)は、複数の便房22と、洗面台24とを備える。各トイレ20の各便房22には、
図2に示すように、洋式便器31と、洋式便器31の上面に設置された洗浄便座装置30と、洗浄便座装置30の使用者が操作するリモコン(リモートコントロール装置)40とが設けられている。なお、各便房22の洗浄便座装置30とリモコン40とは、設置時に互いに対応付け(ペアリング)される。
【0017】
洗浄便座装置30は、洋式便器31の後方に設置される便座装置本体32と、便座装置本体32に回動自在に支持された便座33と、便座装置本体32に回動自在に支持された便蓋34とを備える。また、洗浄便座装置30は、人体の局部洗浄を行う局部洗浄ユニット35と、洗浄便座装置30の全体を制御する制御部37と、リモコン40などとの通信とを行う通信部38とを備える。
【0018】
局部洗浄ユニット35は、図示は省略するが、洗浄水を噴射するおしり洗浄ノズルやビデ洗浄ノズルと、洗浄水を加熱する熱交換器と、熱交換器を流れた洗浄水の出力先をおしり洗浄ノズルやビデ洗浄ノズル、各洗浄ノズルの外表面に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄器のいずれかに切り替える切替バルブなどを備える。局部洗浄ユニット35は、洗浄水の水温や水勢の調整が可能となっている。
【0019】
制御部37は、図示しないCPUやROM,RAM,タイマ,入出力ポートなどを備える。制御部37には、便座33への使用者の着座を検知する着座検知センサ36からの検知信号や洗浄水の温度を検出する図示しない温度センサからの検出信号などが入力される。また、制御部37には、通信部38を介してリモコン40からの操作信号や管理装置50からの各種指示などが入力される。なお、便房22に、使用者を検知する人感センサが設けられており、その人感センサからの検知信号が制御部37に入力されてもよい。制御部37からは、局部洗浄ユニット35への駆動信号などが出力される。通信部38は、リモコン40との間で信号の送受信が可能であると共に、ルータ12に無線通信可能に接続されており、ルータ12からネットワーク5を経由して管理装置50と通信可能である。制御部37は、通信部38を介してリモコン40へ各種指示を送信したり、管理装置50へ洗浄便座装置30の使用状況やリモコン40との通信状況、リモコン40から受信したリモコン信号などを送信したりする。
【0020】
リモコン40は、各種の操作スイッチ(操作ボタン)42と、制御部44と、通信部46とを備え、乾電池やボタン電池などの交換可能な電池Bにより作動する。リモコン40は、操作スイッチ42として、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチ42aやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ42b、洗浄の停止を指示する停止スイッチ42c、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ42d、洗浄水の洗浄強さ(勢い)を調整する水勢調整スイッチ42e、ノズル洗浄を指示するノズル洗浄スイッチ42fなどを有する。
【0021】
制御部44は、図示しないCPUやROM,RAM,入出力ポートなどを備える。制御部44には、操作スイッチ42からの操作信号が入力される。制御部44は、入力された操作信号に基づいて所定の通信フォーマットに従ってリモコン信号を生成する。通信フォーマットは、例えば家電製品協会が規定する標準フォーマットとすることができるが、他の通信フォーマットであってもよい。通信部46は、生成されたリモコン信号を赤外線信号として洗浄便座装置30(便座装置本体32)に送信する。なお、通信部46は、リモコン信号の送信だけでなく、洗浄便座装置30の通信部38から送信された信号(指示)を受信可能に構成されており、受信した指示を制御部44に出力する。
【0022】
図4は、リモコン信号の一例を示す説明図である。本実施形態では、リモコン信号として、送信開始を示すリーダコードや、カスタマや対象機器などの識別情報を示すカスタマコード、リモコン操作の指示内容(動作指示)を示すデータコード、終端を示すトレーラコードなどの各種コードが格納された同一のフレームが所定回数(例えば2回)送信される。なお、このリモコン信号は一例であり、例えばカスタマコードとデータコードの順番を入れ替えてもよい。このリモコン信号を受信した洗浄便座装置30では、リモコン信号の第1フレームを受信してから所定時間以内に受信したフレーム(ここでは第2フレーム)を同一信号内のフレームとして照合して、リモコン信号内のコードを解析し、解析したコード(データコード)に基づく動作を行う。また、リモコン信号として、このような2つの同一のフレーム(第1フレームおよび第2フレーム)を送信する送信モードを通常送信モードという。リモコン40は、電池Bが交換された後は通常送信モードでリモコン信号を送信するように構成され、通常送信モード以外の送信モードも有するが詳細は後述する。
【0023】
管理装置50は、
図1に示すように、CPUやROM、RAMなどにより構成され装置全体の制御を行う制御部52と、各種情報を記憶する記憶部53と、ネットワーク5を介して各トイレ20の洗浄便座装置30などと通信を行う通信部54とを備える。また、管理装置50は、トイレ20の管理状況などを表示する表示部56と、マウスやキーボードなどを備えてトイレ管理システム10の管理者(作業者)Mによる入力操作を受け付ける操作部57とを備える。制御部52は、ネットワーク5から各トイレ20の各洗浄便座装置30の使用状況や受信したリモコン信号に関する情報を通信部54を介して取得して、洗浄便座装置30の識別情報に対応付けて記憶部53に記憶する。なお、受信したリモコン信号は、時系列順にリモコン操作履歴(履歴情報,使用履歴)53aとして所定期間分が記憶部53に記憶される。また、制御部52は、洗浄便座装置30に対して必要な指示を通信部54を介して出力する。
【0024】
トイレ管理システム10の管理者Mは、リモコン40の電池Bの交換やトイレットペーパなどの消耗品の補充、トイレ20内の清掃などの管理作業を行う。管理者Mは、タッチパネル式の液晶ディスプレイとしての表示操作部62が設けられた携帯端末60を有する。携帯端末60は、ネットワーク5に接続されている。管理装置50の通信部54は、ネットワーク5を介して携帯端末60にトイレ20の使用状況や残量低下した電池Bの情報などの必要な情報を送信する。管理者Mは、管理装置50の表示部56または携帯端末60の表示操作部62により、トイレ20の使用状況などを確認することができる。
【0025】
次に、こうして構成されたトイレ管理システム10の処理、特に、リモコン40の電池残量の低下に対応する処理について説明する。
図5は、電池残量低下対応処理の一例を示すフローチャートであり、管理装置50の制御部52により所定時間毎に実行される。電池残量低下対応処理では、制御部52は、まず、各トイレ20の各リモコン40の電池残量BLをそれぞれ取得して(S100)、電池残量BLが所定残量(所定閾値)BLref未満のリモコン40(低残量リモコン)があるか否かを判定する(S110)。ここで、制御部52は、各トイレ20の各洗浄便座装置30からリモコン信号の受信に関する情報を受信しており、その情報を受信する度に洗浄便座装置30毎の受信回数即ちリモコン40毎の送信回数(操作回数)をカウントする。S100では、制御部52は、電池Bの初期残量から送信回数に応じた消費量を減じた電池残量BLを取得する。あるいは、制御部52は、電池Bの使用時間即ち交換後の経過時間から推定した電池残量BLを取得してもよい。なお、リモコン40がルータ12経由でネットワーク5に接続される構成などの場合、リモコン40から電池残量BLを直接取得してもよい。なお、リモコン40が洗浄便座装置30と双方向のやり取りができた上で、洗浄便座装置30がルータ12経由でネットワーク5に接続される構成などの場合、リモコン40から洗浄便座装置30経由で電池残量BLを直接取得してもよい。
【0026】
制御部52は、S110で低残量リモコンがないと判定すると、そのまま電池残量低下対応処理を終了する。一方、制御部52は、低残量リモコンがあると判定すると、その低残量リモコンの送信モードがフレーム数削減モードであるか否かを判定し(S120)、フレーム数削減モードであると判定すると、S180に進む。フレーム数削減モードは、通常送信モードよりも、フレーム数を減らしたリモコン信号を送信するモードである。
図6は、フレーム数を減らしたリモコン信号を示す説明図であり、図示するように、1つのフレーム(第1フレーム)のみが送信される。このため、フレーム数削減モードでは、リモコン信号の送信における電池Bの消費を抑えて電池交換時期を先延ばしすることができるから、省エネモード(電池消費抑制モード)ともいう。なお、このリモコン信号を受信した洗浄便座装置30では、1つのフレームのみを用いてコードの解析を行う。なお、フレーム数削減モードでは、
図4のリモコン信号を、上述したようにカスタマコードとデータコードの順番を入れ替えて送信してもよい。こうすれば、データコードが先に送られることになり、データコードの欠損を抑えてリモコン操作を受け付ける可能性を高めることができる。
【0027】
S120でフレーム数削減モードでないと判定すると、制御部52は、低残量リモコンの送信モードをフレーム数削減モードに変更させる変更指示を送信する(S130)。この変更指示は、低残量リモコンに対応付けられた洗浄便座装置30に送信され、洗浄便座装置30からリモコン40(低残量リモコン)に転送される。指示を受けた低残量リモコンは、制御部44が送信モードをフレーム数削減モードに設定する。なお、リモコン40がルータ12経由でネットワーク5に接続される構成などとした場合、リモコン40に送信モードの変更指示を直接送信してもよい。
【0028】
次に、制御部52は、低残量リモコンと便房22が互いに隣接するリモコン40である隣接リモコンの送信モードと電池残量BLとを取得する(S140)。続いて、制御部52は、隣接リモコンの電池残量BLが所定残量BLref以上であるか否かを判定し(S150)、所定残量BLref以上でないと判定すると、S180に進む。一方、制御部52は、所定残量BLref以上であると判定すると、隣接リモコンの送信モードがフレーム数増加モードであるか否かを判定する(S160)。制御部52は、S160でフレーム数増加モードでないと判定すると、隣接リモコンの送信モードをフレーム数増加モードに変更させる変更指示を送信し(S170)、フレーム数増加モードであると判定すると、S170をスキップしてS180に進む。変更指示を受けた隣接リモコンは、送信モードをフレーム数増加モードに設定する。
【0029】
フレーム数増加モードは、通常送信モードよりもフレーム数を増やしたリモコン信号を送信するモードである。
図7は、フレーム数を増やしたリモコン信号を示す説明図であり、例えば3つのフレーム(第1フレームと第2フレームと第3フレーム)が送信される。各フレームは、いずれも同じコードが格納された同一フレームである。上述したように、洗浄便座装置30では、第1フレームを受信してから所定時間以内に受信したフレームを同一リモコン信号内のフレームとして照合する。このため、制御部37は3つのフレームを照合しながらコードを解析するから、コードの誤解析を確実に防止することができる。なお、フレーム数増加モードでは、電池Bの消費が増えるため、隣接リモコンの電池残量BLが所定残量BLref未満となりやすくなる。
【0030】
続いて、制御部52は、残量低下の通知タイミング即ち電池交換の通知タイミングとなったか否かを判定する(S180)。本実施形態では、低残量リモコンおよび隣接リモコンの電池残量BLがいずれも所定残量BLrefとなった場合に通知タイミングと判定する。なお、所定残量BLrefよりも低残量の交換用閾値を定めておき、電池残量BLがいずれも交換用閾値未満となった場合に通知タイミングと判定してもよい。制御部52は、S180で残量低下の通知タイミングでないと判定すると、電池残量低下対応処理を終了する。一方、制御部52は、残量低下の通知タイミングであると判定すると、電池残量の低下を管理者Mに通知して(S190)、電池残量低下対応処理を終了する。なお、S190では、電池残量の低下の旨を、管理者Mの携帯端末60に送信したり、管理装置50の表示部56に表示したりすればよい。
【0031】
図8は、電池残量低下通知画面の一例を示す説明図である。本実施形態では、低残量リモコンをフレーム数削減モードとすると共に隣接リモコンをフレーム数増加モードとして、低残量リモコンの電池消費を抑えつつ隣接リモコンの電池消費を早めることで、両リモコン40の電池残量BLをいずれも所定残量BLref未満としてから残量低下(電池交換)を通知する。このように、両リモコンの電池交換時期を揃えて、例えば2つの便房22(
図8の第1便房と第2便房)のリモコン40をまとめて電池交換する指示が通知(表示)される。これにより、管理者Mは、両リモコン40の電池Bをまとめて交換することができる。上述したように、トイレ20が空港やショッピングセンタなどの比較的大きな施設に設けられている場合、電池交換のための移動に長時間がかかることが多いため、まとめて交換可能とすることで電池交換の工数を低減することができる。
【0032】
続いて、リモコン信号の受信エラーの対応処理について説明する。
図9は、受信エラー対応処理の一例を示すフローチャートであり、フレーム数削減モードに変更した低残量リモコンがある場合に管理装置50の制御部52により所定時間毎に実行される。なお、低残量リモコンの有無に拘わらず、受信エラー対応処理が実行されてもよい。受信エラー対応処理では、制御部52は、まず、各トイレ20の各便房(各洗浄便座装置30)の運転データをそれぞれ取得して(S200)、受信エラーがあるか否か(S210)、受信エラーとなったリモコン信号の生データ(以下、リモコンデータ)が残存しているか否か(S220)、をそれぞれ判定する。S220では、受信エラーのリモコンデータを洗浄便座装置30から受信して記憶部53に記憶してあるか否かが判定される。制御部52は、受信エラーがないか、受信エラーがあってもリモコンデータが残存していないと判定すると、受信エラー対応処理を終了する。この場合、受信エラーの対応はできないが、制御部52は、受信エラーとなった洗浄便座装置30のエラー回数をカウントしてもよい。そして、制御部52は、低残量リモコンに対応する洗浄便座装置30で受信エラーが頻発している場合、電池残量低下処理のS180で隣接リモコンの電池残量BLに拘わらず通知タイミングと判定して、早めの電池交換を促してもよい。
【0033】
一方、制御部52は、S220で受信エラーのリモコンデータが残存していると判定すると、受信エラーが発生した便房22であるエラー便房に対し、隣接する便房22である隣接便房(洗浄便座装置30)の運転データを確認する(S230)。なお、
図1では隣接便房は1つであるが、エラー便房の両隣に便房22があれば、隣接便房は2つとなる。次に、制御部52は、隣接便房の運転データに受信エラーのリモコンデータが残存しているか否かを判定する(S240)。ここで、エラー便房のリモコン40から送信されるリモコン信号を隣接便房で受信する場合がある。その場合でも、受信したリモコン信号に基づいて動作することはないが、受信エラーのリモコンデータを隣接便房で受信して残存していればコード解析に利用できるため、S240で残存しているか否かを判定する。制御部52は、隣接便房の運転データに受信エラーのリモコンデータが残存していないと判定すると、受信エラー対応処理を終了する。
【0034】
制御部52は、S240で隣接便房のリモコンデータが残存していると判定すると、エラー便房と隣接便房の各リモコンデータとリモコン操作履歴53aとに基づいて受信エラーのリモコンデータを解析する(S250)。エラー便房と隣接便房の各リモコンデータを解析するから、例えば両者のコード欠損箇所にずれがあれば正常箇所同士を合わせることでコード解析を正しく行えるなど、コード解析の信頼性を高めることができる。
【0035】
また、制御部52は、リモコン操作履歴53aから、受信エラーのリモコン信号の送信状況を判別することができる。例えば、おしり洗浄やビデ洗浄などの局部洗浄を指示するリモコン信号の受信後であれば局部洗浄中と判別して、通常は局部洗浄中に受信しないリモコン信号(例えばノズル洗浄を指示するリモコン信号)を排除してコード解析を行うことができる。また、局部洗浄中でも、局部洗浄を指示するリモコン信号の受信直後か、そのリモコン信号を受信してから局部洗浄に要する程度の時間経過後かなどの状況を判別することもできる。例えば前者であれば洗浄水の温度や洗浄強さを調整するリモコン信号の可能性が高く、後者であれば洗浄停止を指示するリモコン信号の可能性が高くなる。また、リモコン操作履歴53aから、操作頻度の高いリモコン信号と操作頻度の低いリモコン信号を判別することもできる。このため、制御部52は、コード解析が困難な場合には、操作頻度の高いリモコン信号とすることもできる。このように、リモコン操作履歴53aから、指示の可能性が高いコードに絞って解析することができるから、コード解析の信頼性を高めることができる。なお、リモコン操作履歴53aを季節毎や時間帯毎に分類しておき、該当する分類の履歴を参照して解析してもよい。
【0036】
こうしてコード解析を行うと、制御部52は、解析結果に基づく指示をエラー便房の洗浄便座装置30に送信して(S260)、送信エラー対応処理を終了する。これにより、受信エラーが発生した場合でも、洗浄便座装置30に指示を送信して、適切に作動させることができる。
【0037】
以上説明したトイレ管理システム10では、リモコン40の電池残量BLが所定残量BLref未満の場合にフレーム数削減モードに変更し、電池Bの消費を抑えて電池交換時期を先延ばしするから、管理者Mの都合のよいタイミングで電池交換させることが可能となり、管理者Mがすぐに電池交換できなくてもリモコン信号の受信エラーが頻発するのを抑えることができる。
【0038】
また、受信エラーとなった洗浄便座装置30から取得したリモコン信号(エラー信号)からコードを解析し、解析結果に基づく指示を行うから、洗浄便座装置30を適切に作動させることができる。また、受信エラーとなったリモコン信号の他に、リモコン操作履歴53aと隣接する洗浄便座装置30が受信したリモコン信号とを取得してコードを解析するから、解析の信頼性を高めることができる。また、隣接リモコンをフレーム数増加モードに変更して、低残量リモコンと隣接リモコンとの電池Bをまとめて交換させる交換指示を管理者Mに通知するから、電池交換の工数を低減することができる。
【0039】
上述した実施形態では、受信エラー対応処理においてエラー便房および隣接便房のリモコンデータと、リモコン操作履歴53aとを用いてコードを解析したが、これに限られない。例えば、リモコン操作履歴53aを記憶しないものとしたり、正しく記憶できてなかったり、隣接便房のリモコンデータが残存してなかったりした場合でも、コードを解析してもよい。
図10は、変形例の受信エラー対応処理を示すフローチャートである。なお、変形例では
図9と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0040】
図10の受信エラー対応処理では、制御部52は、S230で隣接便房の運転データを確認し、隣接便房の運転データに受信エラーとなったリモコンデータが残存しているか否か(S240)、エラー便房のリモコン操作履歴53aがあるか否か(S242,S244)、をそれぞれ判定する。制御部52は、S240,S242で、隣接便房のリモコンデータが残存し且つリモコン操作履歴53aがあると判定すると、実施形態と同様にS250でコードを解析する。一方、制御部52は、S242でリモコン操作履歴53aがないと判定すると、エラー便房と隣接便房のリモコンデータからコードを解析する(S252)。また、制御部52は、S244で隣接便房のリモコンデータが残存していないと判定しても、エラー便房のリモコン操作履歴53aがあると判定すると、エラー便房のリモコンデータとリモコン操作履歴53aを用いてコードを解析する(S254)。このように、受信エラーとなったリモコンデータと、リモコン操作履歴53aおよび隣接便房のリモコンデータの少なくとも一方とに基づいて、コードを解析すればよい。
【0041】
上述した実施形態や変形例では、受信エラーとなったリモコンデータが残存している場合、そのリモコンデータの他に、リモコン操作履歴53aや隣接便房のリモコンデータを用いてコード解析を行ったが、これに限られるものではない。例えば、隣接便房のリモコンデータやリモコン操作履歴53aに代えて、あるいはそれらのいずれかに加えて、受信エラーの発生履歴などの他の情報を用いてコード解析を行ってもよい。あるいは、受信エラーとなったリモコンデータだけを用いてコード解析を行ってもよく、
図10の受信エラー対応処理のS240,S244でいずれも否定的な判定をした場合にコード解析してもよい。また、受信エラーとなったリモコンデータを洗浄便座装置30から取得したが、これに限られず、リモコン40がルータ12経由でネットワーク5に接続される構成などとして送信元のリモコン40から取得してもよい。
【0042】
実施形態では、電池残量低下対応処理や受信エラー対応処理を管理装置50が行ったが、これに限られない。例えば、電池残量低下対応処理をリモコン40が行ってもよい。その場合、リモコン40の制御部44は、電池残量BLが所定残量BLref未満であることを検知すると、フレーム数削減モードへ変更すればよい。また、リモコン40の制御部44は、フレーム数削減モードへ変更した旨の通知を送信し、通知を受けた隣接リモコンの制御部44がフレーム数増加モードへ変更してもよい。あるいは、電池残量低下処理や受信エラー対応処理を、洗浄便座装置30が行ってもよい。その場合、1つのトイレ20にある各便房22のうち、いずれか1つの便房22を管理便房に指定して、その管理便房の洗浄便座装置30に実施形態の管理装置50の機能を持たせるようにしてもよい。
【0043】
実施形態では、低残量リモコンと隣接リモコンとの電池交換時期を揃えたが、これに限られない。隣接リモコン以外に、トイレ20内の他のリモコン40との電池交換時期を揃えてもよいし、トイレ20内の全てのリモコン40の電池交換時期を揃えてもよい。あるいは、他のリモコン40の電池残量BLを取得して、電池残量BLが所定残量BLref(第1残量)より高い残量(第2残量)未満のリモコン40をフレーム数増加モードに変更して電池交換時期を揃えてもよい。こうすれば、電池残量BLが十分にある(第2残量以上である)リモコン40を除いて、所定残量BLrefに近いリモコン40を対象として電池交換時期を揃えるから、より適切に電池交換を行うことができる。また、1つのトイレ20内でリモコン40の電池交換時期を揃えるものに限られず、隣接するトイレ20内でリモコン40の電池交換時期を揃えてもよい。例えば、隣接して設けられた男性用および女性用の各トイレ20にある複数のリモコン40の電池交換時期を揃えてもよい。あるいは、低残量リモコンと隣接リモコンとの電池交換時期を揃えるものに限られず、電池交換時期を揃えないもの即ち低残量リモコンのみで電池交換させるものでもよい。
【0044】
実施形態では、トイレ20として一般的な公共トイレのように便房22を複数有するものを例示したが、これに限られず、1つの便房22のみを有するものでもよい。このようにする場合、電池残量低下対応処理ではS140~S170の処理を省略し、受信エラー対応処理ではS230,S240の処理を省略し、S250では隣接便房のリモコンデータを用いずにコード解析を行う(変形例のS254の処理を行う)ものとすればよい。
【0045】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、電池残量低下対応処理のS100の処理を実行する管理装置50の制御部52が「電池残量取得部」に相当し、電池残量低下対応処理のS110~S130の処理を実行する管理装置50の制御部52が「送信管理部」に相当する。受信エラー対応処理を実行する管理装置50の制御部52が「エラー処理部」に相当する。電池残量低下対応処理のS180,S190の処理を実行する管理装置50の制御部52と携帯端末60(または表示部56)が「指示通知部」に相当する。
【0046】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、洗浄便座装置とリモートコントロール装置とが設置されたトイレの管理などに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
5 ネットワーク、10 トイレ管理システム、12 ルータ、20 公共トイレ、21 小便器、22 便房、24 洗面台、30 洗浄便座装置、31 洋式便器、32 便座装置本体、33 便座、34 便蓋、35 局部洗浄ユニット、36 着座検知センサ、37 制御部、38 通信部、40 操作パネル、42 操作スイッチ、42a おしり洗浄スイッチ、42b ビデ洗浄スイッチ、42c 停止スイッチ、42d 温度調整スイッチ、42e 水勢調整スイッチ、42f ノズル洗浄スイッチ、44 制御部、46 通信部、50 管理装置、52 制御部、53 記憶部、53a リモコン操作履歴、54 通信部、56 表示部、57 入力部、60 携帯端末、62 表示操作部、B 電池、M 管理者。