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  • 特許-バタフライ弁開放忘れ防止装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】バタフライ弁開放忘れ防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 35/00 20060101AFI20250117BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F16K35/00 A
F16K37/00 C
F16K37/00 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021054240
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151255
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘紀
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-000457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 35/00
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時又は火災時に前面パネルが枠体に取付けられた筐体に収容される、常時開で使用されるバタフライ弁に取り付けられるバタフライ弁開放忘れ防止装置であって、
少なくとも一部が弾性部材からなる先端部と、該先端部を有する開放忘れ防止部と、ギア部と、を備え、
該バタフライ弁のハンドル部の回動と連動して回動し、該バタフライ弁の動作状態を示すインジケータに取り付けられ、
該開放忘れ防止部は、該バタフライ弁を閉にすると少なくとも該先端部の一部が該筐体から突出するように回動するものとなっており、
該ギア部は、該開放忘れ防止部が該インジケータの回動と連動して回動する様に構成され、
該バタフライ弁を開にすると該筐体内に収納されると共に該バタフライ弁を閉にすると少なくとも該先端部の一部が該筐体から突出するように回動することを特徴とするバタフライ弁開放忘れ防止装置。
【請求項2】
前記ギア部は、前記インジケータと接続された第1のギアと、前記開放忘れ防止部に接続された第2のギアを有しており、
該開放忘れ防止部は、該インジケータとは逆方向に回動することを特徴とする請求項に記載のバタフライ弁開放忘れ防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁開放忘れ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内に設置され、該トンネル内で火災が発生した際に、火災を検知することにより、噴霧ヘッドより自動的に消火水を噴霧してトンネル躯体を火災から防護する水噴霧設備がある(特許文献1を参照)。この様な水噴霧設備は、自動弁装置並びに該自動弁装置の二次側であって、噴霧ヘッドの一次側に、テスト用制水弁として、バタフライ弁が設けられている。
【0003】
バタフライ弁は、常時は、開放されており、自動弁装置側と噴霧ヘッド側とを連通状態となっており、該自動弁装置が開放された際に消火水が該噴霧ヘッドへと到達し、噴霧される様になっているが、該自動弁装置の動作試験時には、閉止され、自動弁装置側と噴霧ヘッド側との連通を遮断し、該自動弁装置が開放されても消火水が該噴霧ヘッドから噴霧されない様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-59648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動弁装置の動作試験終了後には、バタフライ弁を開放し、自動弁装置側と噴霧ヘッド側とを再度連通状態とする必要がある。仮に、バタフライ弁が閉止されたまま放置されてしまった場合、自動弁装置が開放されても、噴霧ヘッドには消火水が到達しないことになり、火災時に水噴霧設備が機能しない事態に陥ることとなる。
【0006】
このバタフライ弁の開放忘れは、自動弁装置の動作試験終了の際に、細心の注意をもって確認されることとなるが、ヒューマンエラー等によって、バタフライ弁の開放し忘れが発生する可能性がないとは言い切れない。又、バタフライ弁は、常時は、外部から視認できない状態となっているため、一旦、バタフライ弁の開放し忘れが発生すると火災の発生や次の動作試験まで気付かれにくいということもある。
【0007】
そのため、バタフライ弁開放忘れ防止装置の開発が望まれている。そこで、本発明は、バタフライ弁開放忘れ防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、常時又は火災時に前面パネルが枠体に取付けられた筐体に収容される、常時開で使用されるバタフライ弁に取り付けられるバタフライ弁開放忘れ防止装置であって、
少なくとも一部が弾性部材からなる先端部と、該先端部を有する開放忘れ防止部と、ギア部と、を備え、該バタフライ弁のハンドル部の回動と連動して回動し、該バタフライ弁の動作状態を示すインジケータに取り付けられ、該開放忘れ防止部は、該バタフライ弁を閉にすると少なくとも該先端部の一部が該筐体から突出するように回動するものとなっており、該ギア部は、該開放忘れ防止部が該インジケータの回動と連動して回動する様に構成され、該バタフライ弁を開にすると該筐体内に収納されると共に該バタフライ弁を閉にすると少なくとも該先端部の一部が該筐体から突出するように回動することを特徴とするバタフライ弁開放忘れ防止装置である。
【0010】
更に、本発明は、前記ギア部を、前記インジケータと接続された第1のギアと、前記開放忘れ防止部に接続された第2のギアを有するものとし、該開放忘れ防止部を、該インジケータとは逆方向に回動するものとすることが可能である。
【0011】
尚、本発明において、「第1の」及び「第2の」という表現を用いているが、これらは、本発明の構成を区別するために用いているに過ぎず、その数字及び順番には、特に意味がないものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、バタフライ弁開放忘れ防止装置が、バタフライ弁を開にすると該筐体内に収納されると共に該バタフライ弁を閉にすると少なくとも先端部の一部が筐体から突出することによって、筐体に前面パネルを取り付けようとした際に該先端部が干渉することで、バタフライ弁の開放忘れを防止することに寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における水噴霧設備の模式図である。
図2】本発明の実施形態における筐体の正面図である。
図3】本発明の実施形態における筐体を示す図であり、(a)は側面略図であり、(b)は平面略図である。
図4】本発明の実施形態におけるバタフライ弁を示す図であり、(a)は弁体を省略した拡大斜視図であり、(b)は拡大側面図である。
図5】本発明の実施形態におけるギア部の拡大斜視図である。
図6】本発明の実施形態におけるバタフライ弁の開放忘れ防止の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、トンネル内に設置される水噴霧設備Eに設置されるバタフライ弁E1に取り付けられるバタフライ弁開放忘れ防止装置1(以下、略して、防止装置1ともいう)を例にして、図1乃至図6に基づき説明する。尚、本実施形態においては、防止装置1がバタフライ弁E1の左方に位置している関係上、クロックポジションについては、左側面視におけるものとなっている。
【0015】
先ず、防止装置1が設置される水噴霧設備E及び防止装置1が取り付けられるバタフライ弁E1について説明する。水噴霧設備Eは、一次側(上流側)より、ポンプE2、一次側配管E3、一次側弁E4、自動弁装置E5、バタフライ弁E1、二次側配管E6及び二次側配管E6に接続された水噴霧ヘッドE7を備えている。水噴霧設備Eは、常時は自動弁装置E5が閉止され、一次側配管E3側と二次側配管E6側とが連通しないものとなっており、火災時に自動弁装置E5が開放して一次側配管E3側と二次側配管E6側とが連通する様になっている。
【0016】
ポンプE2は、一次側配管E3及び二次側配管E6を介して、水噴霧ヘッドE7へと消火水を供給するために設けられている。一次側弁E4は、一次側配管E3と自動弁装置E5間の消火水の供給を遮断するために設けられており、常時は、開放され、例えば、自動弁装置E5を交換や修理する際等、一次側からの給水を停止する必要がある場合に閉止される。
【0017】
自動弁装置E5は、常時は閉止されており、前記トンネル内で火災が発生した際に、操作信号に基づいて、自動的に開放され、ポンプE2から送られた消火水を、一次側配管E3側から二次側配管E6を経て水噴霧ヘッドE7へと供給される様に構成されている。
【0018】
水噴霧ヘッドE7は、火災時に消火水を、前記トンネル内に散布するために設けられている。本実施形態において、自動弁装置E5は、加圧開放式となっており、一次側において圧力が掛かった消火水が自動弁装置E5のピストン室(図示せず)に流入することによって解放され、水噴霧ヘッドE7から供給された消火水を噴霧できる様になっている。
【0019】
バタフライ弁E1は、テスト用制水弁として設けられており、自動弁装置E5の二次側に設けられ、常時及び火災時には開放されると共に自動弁装置E5の動作試験をする際に閉止される様になっており、弁部E10及びハンドル部E11を有している。本実施形態において、バタフライ弁E1は、弁部E10が、ハンドル部E11の左方に位置する様に配設されている。尚、ハンドル部E11に対する弁部E10の位置は、必要に応じて適宜変更可能である。
【0020】
弁部E10は、消火水を一次側から二次側へと流すための開口部E12が形成されており、ハンドル部E11の動作に呼応して回動し、開口部E12を開閉する円盤状の弁体E13が設けられている。
【0021】
ハンドル部E11には、バタフライ弁E1を開閉する際に回されるハンドルE14と、バタフライ弁E1の動作状態を示す指示機器の一例であるインジケータE15と、を有している。本実施形態において、インジケータE15は、弁体E13の回動角を表示するものとなっている。
【0022】
インジケータE15は、その周囲に弁体E13の回動角に対応する目盛E16が設けられていると共に目盛E16を指すためのポインタ部E17が凸出する形で設けられている。本実施形態においては、ポインタ部E17が略12時の方向を差している時は、弁体E13が全開となっていることを示し、ポインタ部E17が略3時の方向を差してしる時は、弁体E13が全閉となっていることを示すものとなっている。
【0023】
自動弁装置E5及びバタフライ弁E1は、筐体(格納箱ともいわれる)E8に収容されている。筐体E8は、前面に開口部を有し、略箱状に形成された枠体E80と、枠体E80に着脱可能に取り付けられた前面パネルE81を有している。前面パネルE81は、常時及び火災時は、枠体E80に取り付けられた状態となっており、自動弁装置E5の動作試験をする際に取り外される。
【0024】
次に、防止装置1の構成について説明する。防止装置1は、自動弁装置E5の動作試験終了後にバタフライ弁E1の開放忘れを防止するために設けられており、バタフライ弁E1に取り付けられている。防止装置1は、バタフライ弁E1が開の状態では、筐体E8内に収容されると共にバタフライ弁E1が閉の状態では、筐体E8の開口部から少なくともその一部が突出する様になっており、防止装置1は、そのための開放忘れ防止部2(以下、略して、防止部2ともいう)と、ギア部3と、を有している。
【0025】
ギア部3は、インジケータE15の回動と防止部2の回動とを連動させる様に構成されている。本実施形態において、ギア部3は、インジケータE15と接続された第1のギア30及び防止部2と接続された第2のギア31を有しており、第1のギア30と第2のギア31とが噛み合うことでインジケータE15の回動と防止部2の回動とを連動させるものとなっている。このため、インジケータE15の回動方向と防止部2との回動方向は逆になっていることとなる。
【0026】
本実施形態において、ギア部3は、一端側が、インジケータE15のポインタ部E17と嵌着可能に設けられた軸部32を有するものとなっており、軸部32の他端側に第1のギア30が設けられている。即ち、本実施形態において、第1のギア30は、軸部32を介して間接的にインジケータE15と接続されていることとなる。尚、ギアの枚数は、2枚に限られるものではなく、必要に応じて適宜変更可能である。
【0027】
防止部2は、略L字状の本体部20と、本体部20の先端に取り付けられた先端部21と、を有しており、バタフライ弁E1が閉の状態で、先端部21の少なくとも一部が、前面パネルE81を取り外した筐体E8の開口部より突出する様に構成されている。本実施形態においては、防止部2は、ギア部3によって、インジケータE15の回動と連動する様になっており、バタフライ弁E1が開の状態においては、略6時の方向に向いており、バタフライ弁E1が閉の状態においては、図3において一点鎖線で示している様に略3時の方向に向くことで、先端部21の少なくとも一部が、筐体E8の開口部より突出する様になっている。
【0028】
先端部21は、弾性部材からなる弾性部22及び対策器具干渉部23(以下、略して、干渉部23ともいう)を有している。本実施形態において、弾性部22は、コイルバネとして形成されており、干渉部23は、略球形をなしている。尚、弾性部材としては、各種バネに限られるものではなく、ゴムやエラストマ等の素材そのものが弾性を有するものであってもよい。
【0029】
自動弁装置E5の動作試験する際には、(1)筐体E8の前面パネルE81が枠体E80から取り外される。そうすると筐体E8の前面が開放され(開口部を形成)、自動弁装置E5及びバタフライ弁E1を操作することが可能となる。
【0030】
(2)次に、消火水が、動作試験中に水噴霧ヘッドE7から噴霧されることを防止するために、ハンドルE14を回転させ、バタフライ弁E1を閉止し、二次側配管E6側と自動弁装置E5側とが連通しない様に遮断する。この際、防止装置1の防止部2は、インジケータE15の回動と連動して回動し、略6時の方向から略3時の方向へと反時計回りに回動し、防止部2の先端部21の少なくとも一部が筐体E8の開口部より突出した状態となる。
【0031】
(3)その後、自動弁装置E5のテスト放水弁(図示せず)及びパイロット弁(図示せず)又は手動起動弁(図示せず)を順次開放し、該テスト放水弁から放水し、動作試験を行う。
【0032】
(4)動作試験終了後、上記とは逆手順で自動弁装置E5及びバタフライ弁E1を元の状態へと戻し、動作試験は完了する。この際、本実施形態においては、バタフライ弁E1を開放していないと、前面パネルE81を枠体E80に取付けようとしても、防止部2と前面パネルE81が干渉することになり、筐体E8を元の状態に戻せない様になっている(図6を参照)。
【0033】
従って、本実施形態においては、バタフライ弁E1を開放しないと筐体E8を元の状態に戻せない様になってため、バタフライ弁E1の開放忘れを防止できる様になっている。尚、本実施形態においては、先端部21の少なくとも一部が弾性部材からなるため、誤って、バタフライ弁E1を開放し忘れた状態で前面パネルE81を枠体E80に取り付けようとしたとしても、先端部21によって枠体E80や前面パネルE81が損傷や変形等することを防止できる様になっており、又、同時に作業員の怪我等の防止にも寄与するものとなっている。
【0034】
本発明を、上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、適宜変更可能である。
【0035】
(i)上記実施形態においては、バタフライ弁E1が、自動弁装置E5の上方に設置され、筐体E8の比較的上方側に位置している関係上、バタフライ弁E1が開放させた状態で、防止部2が枠体E80と干渉しない様にギア部3を設け、防止部2をインジケータE15とは逆方向に回動するものとしたが、バタフライ弁E1が開放させた状態で、防止部2が枠体E80と干渉しないのであれば、防止部2をインジケータE15と同方向に回動するものとしてもよい。
【0036】
この場合、ギア部3に奇数枚のギアを設ける様にしてもよく、又、防止部2を、ギア部3を介さずに、インジケータE15に直接取り付ける様にしてもよい。
【0037】
(ii)上記実施形態においては、バタフライ弁E1は、水噴霧設備Eに設置されるものであるが、本発明は、何かしらの筐体内に設置されるバタフライ弁であれば、他の用途に用いられるバタフライ弁にも適用可能である。
【0038】
(iii)防止部2の先端部21に小型のライトを内蔵してもよい。この様にすることで、バタフライ弁E1が閉時にライトが付き、防止装置1が筐体E8から突出しているということが作業者に分かりやすくなり、防止装置1の視認性を高めることが可能である。又、メンテナンス作業時に、ライトがついていることで、暗いトンネル内でも作業しやすくする。
【符号の説明】
【0039】
1 防止装置 2 防止部 20 本体部
21 先端部 22 弾性部 23 干渉部
3 ギア部 30 第1のギア 31 第2のギア
32 軸部 E 水噴霧設備 E1 バタフライ弁
E10 弁部 E11 ハンドル部 E12 開口部
E13 弁体 E14 ハンドル E15 インジケータ
E16 目盛 E17 ポインタ部 E2 ポンプ
E3 一次側配管 E4 一次側弁 E5 自動弁装置
E6 二次側配管 E7 水噴霧ヘッド E8 筐体
E80 枠体 E81 前面パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6