IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオライティング株式会社の特許一覧 ▶ 江藤電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-金型監視装置 図1
  • 特許-金型監視装置 図2
  • 特許-金型監視装置 図3
  • 特許-金型監視装置 図4
  • 特許-金型監視装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】金型監視装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B29C45/17
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021057891
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154719
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391025512
【氏名又は名称】ウシオライティング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592065069
【氏名又は名称】江藤電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆司
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正彦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125709(JP,A)
【文献】特開2009-166323(JP,A)
【文献】特開平11-048301(JP,A)
【文献】特開平10-138314(JP,A)
【文献】特開2021-003828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置であって、
開いた金型の内側に向けられているとともに動画を撮影可能なカメラと、
カメラによる動画の撮影開始及び撮影停止を制御する制御部と、
前記カメラ又は別のカメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部と
を備えており、
一回の成形における前記カメラによる動画の撮影開始のタイミングと撮影終了のタイミングとを設定した動画撮影スパン設定部が設けられていて、前記制御部は、動画撮影スパン設定部における設定に従って前記カメラによる撮影開始と撮影終了とを制御するものであり、
動画撮影スパン設定部における設定は、前記判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングを基準としたゼロより大きい時間幅で設定されていることを特徴とする金型監視装置。
【請求項2】
前記判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングは、前記金型が開いた後であって物品の取り出し動作を行う前の一次監視のタイミングであり、
前記動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングは、一次監視のタイミングよりも前であって前記金型を開く動作が開始されるタイミングかそれより前であることを特徴とする請求項1記載の金型監視装置。
【請求項3】
前記判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングは、物品の取り出し動作の後に行われる二次監視のタイミングであり、
前記動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングは、物品の取り出し動作が開始されるタイミングかそれより前であり、撮影終了のタイミングは二次監視のタイミングかそれよりも後のタイミングであることを特徴とする請求項1又は2記載の金型監視装置。
【請求項4】
前記撮影終了のタイミングは、前記二次監視において正常であると判断された場合には当該判断された時点で撮影が終了するよう設定されているとともに異常であると判断された場合には所定の時間幅だけ撮影を延長するよう設定されていることを特徴とする請求項3記載の金型監視装置。
【請求項5】
前記判断部は、物品の取り出し動作の後の最初の二次監視のタイミングにおいて異常と判断された後に再び二次監視を行うものであり、
前記動画撮影スパン設定部における撮影終了のタイミングは、二回目以降の二次監視において正常であると判断された場合にはその時点で撮影が終了するよう設定されているとともに異常であると判断された場合には所定の時間幅だけ撮影を延長するよう設定されていることを特徴とする請求項4記載の金型監視装置。
【請求項6】
前記カメラは、可動金型である前記金型の内側を撮影するものであって、金型を開く際の当該可動金型の移動における移動開始の位置と、移動終了の位置との双方が撮影エリアに入るように設置されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の金型監視装置。
【請求項7】
前記金型の内側の複数箇所を同時に撮影できるよう前記カメラは複数設けられており、
前記動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングと撮影終了のタイミングは、各カメラにおいて共通のタイミングとして設定されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の金型監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、各種物品の成形に用いられる成形装置において金型を監視する金型監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種物品の成形のため、金型を備えた成形装置が使用されている。例えば成形装置の一種である射出成形機では、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ、金型内に充填した後に冷却することで、所望の形状の物品を成形している。金型としては、一又は複数の金型から成る一式の金型が使用される。例えば、固定金型と可動金型から成る一対の金型が使用される。以下、このように金型内に材料を充填して行う成形処理を成形サイクルという。
【0003】
このような成形装置では、金型の監視が多くの場合必要になる。このため、金型監視装置が使用される。金型監視装置は、金型の内側を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像を処理して成形状況の正常異常を判断する判断部とを有している。カメラは、可動金型の内側を撮影する位置に設けられる場合が多い。
【0004】
カメラによって金型の監視を行うのは、大きく分けて二つの理由がある。一つの理由は、成形後、物品が金型に保持されている状態で成形状況の監視を行うためである。この監視は、一次監視と呼ばれる。一次監視では、金型上の物品の形状をチェックし、正しく成形されているかどうか判断する。仮に、物品に欠け等があって、形状が正しくないと判断されると、一次監視において異常の結果となり、金型監視装置からは一次監視異常が出力される。
金型監視装置の出力は、成形装置の主制御部に入力されるようになっており、一次監視異常が出力されると、主制御部は、成形装置の動作を停止させる制御を行う。そして、作業員が、正しく成形されない原因を調査する。
【0005】
金型監視の別の目的は、主に次の成形を行うためのもので、成形後に金型が開いて物品か確実に取り出されているかを確認するための監視である。この監視は、二次監視と呼ばれる。二次監視では、物品が正しく取り出されずに残留していたり、材料が部分的に残留したりしていないかを、金型の内面の画像から判断する。物品が放出されていなかったり、材料が部分的に残留していたりしたら、二次監視異常が出力され、同様に成形装置の動作を停止させる制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6584472号公報
【文献】特許第6798794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の金型監視装置では、一次監視や二次監視は、それぞれのタイミングでの静止画によって行われている。しかしながら、静止画のみによる監視では、監視が十分にできなかったり、異常が生じた際の状況の把握が十分にできなったりする問題が生じている。したがって、動画による監視を行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、動画による監視を行う場合、カメラから送られるデータサイズが膨大となるため、動画撮影をタイミングを適切に設定しないと、監視や異常発生の分析がかえって困難となる。本願の発明は、このような点を解決課題とするものであり、動画撮影を行う金型監視において、撮影のタイミングを適切に設定することで、データ量が過大にならず、且つ異常発生の解析が十分に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この明細書において開示される金型監視装置は、少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置であり、開いた金型の内側に向けられているとともに動画を撮影可能なカメラと、前記カメラによる動画の撮影開始及び撮影停止を制御する制御部と、前記カメラ又は別のカメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部とを備えている。
この金型監視装置には、一回の成形における前記カメラによる動画の撮影開始のタイミングと撮影終了のタイミングとを設定した動画撮影スパン設定部が設けられて、制御部は、動画撮影スパン設定部における設定に従って前記カメラによる撮影開始と撮影終了とを制御するものである。
そして、動画撮影スパン設定部における設定は、判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングを基準としたゼロより大きい時間幅で設定されている。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングは、金型が開いた後であって物品の取り出し動作を行う前の一次監視のタイミングであり、動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングは、一次監視のタイミングよりも前であって前記金型を開く動作が開始されるタイミングかそれより前であるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、判断部が成形状態の正常異常を判断するタイミングは、物品の取り出し動作の後に行われる二次監視のタイミングであり、動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングは、物品の取り出し動作が開始されるタイミングかそれより前であり、撮影終了のタイミングは二次監視のタイミングかそれよりも後のタイミングであるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、撮影終了のタイミングが、二次監視において正常であると判断された場合には当該判断された時点で撮影が終了するよう設定されているとともに異常であると判断された場合には所定の時間幅だけ撮影を延長するよう設定されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、判断部が、物品の取り出し動作の後の最初の二次監視のタイミングにおいて異常と判断された後に再び二次監視を行うものであり、動画撮影スパン設定部における撮影終了のタイミングは、二回目以降の二次監視において正常であると判断された場合にはその時点で撮影が終了するよう設定されているとともに異常であると判断された場合には所定の時間幅だけ撮影を延長するよう設定されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、カメラが、可動金型である金型の内側を撮影するものであって、金型を開く際の当該可動金型の移動における移動開始の位置と、移動終了の位置との双方が撮影エリアに入るように設置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、金型の内側の複数箇所を同時に撮影できるようカメラは複数設けられており、動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングと撮影終了のタイミングは、各カメラにおいて共通のタイミングとして設定されているという構成を持ち得る。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、開示された発明に係る金型監視装置によれば、監視が行われる金型について動画が撮影されて記憶部に記憶されるので、異常が生じた場合の解析をより効果的に行うことができる。この際、動画は、一回の成形において一つの動画ファイルとなるので、記憶部におけるファイル管理が容易である。また、カメラを常時回し続けるのではなく、金型監視のタイミングを基準としたスパン(開始と終了)で動画が撮影されるので、動画のデータ量が無益に過大とならないようにしつつ、異常発生の際の解析を動画を活用して十分に行うことができる。
また、撮影開始のタイミングが一次監視のタイミングよりも前であって金型を開く動作が開始されるタイミングかそれより前であるという構成によれば、一次監視において異常と判断された場合にその異常に金型の開動作がどのように関連しているのかを解析するのに有益となる。
また、撮影開始のタイミングが物品の取り出し動作が開始されるタイミングかそれより前であり、撮影終了のタイミングは二次監視のタイミングかそれよりも後のタイミングである構成によれば、二次監視において異常と判断された場合にその異常に取り出し動作がどのように関連しているのかを解析するのに有益となる。
また、二次監視において正常であると判断された場合には当該判断された時点で撮影が終了するよう設定されているとともに異常であると判断された場合には所定の時間幅だけ撮影を延長するよう設定されている構成では、動画のデータ量が過大とならないようにしつつ二次監視で異常とされた場合の解析をより十分に行うことができるようになる。
また、物品の取り出し動作の後の最初の二次監視のタイミングにおいて異常と判断された後に再度二次監視が行われ、二回目以降の二次監視で異常と判断場合にはさらに撮影が延長される構成では、些細な不具合の場合には二次監視異常が出力されないようにすることができるとともに二回目以降の二次監視でも異常とされた場合の解析をより十分に行うことができるようになる。
また、カメラが、金型を開く際の当該可動金型の移動における移動開始の位置と、移動終了の位置との双方が撮影エリアに入るように設置されていると、可動金型の移動の動作が全て動画に収まるので、異常について金型の開動作との関連を解析する際に特に好適となる。
また、複数のカメラが設けられていて動画撮影スパン設定部における撮影開始のタイミングと撮影終了のタイミングが各カメラにおいて共通のタイミングとして設定されている構成では、大型の金型に対して上記各効果を得つつ好適に監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態の金型監視装置の平面概略図である。
図2】設定情報として入力される動画撮影のスパンについて示した概略図である。
図3】設定情報入力プログラムにより表示される動画撮影スパン設定ウインドウの一例を示した概略図である。
図4】実施形態の金型監視装置に実装された監視シーケンスプログラムの概略図である。
図5】第二の実施形態の金型監視装置の主要部を示した概略図であり、第二の実施形態における監視シーケンスプログラムの主要部の概略を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。図1は、第一の実施形態の金型監視装置の平面概略図である。
図1に示す金型監視装置は、動画を撮影可能なカメラ1a,1bと、カメラ1a,1bによる動画の撮影開始及び撮影停止を制御する制御部を含む装置本体2とを備えている。成形装置9は、可動金型91と、固定金型92と、可動金型91を移動させる移動機構93と、閉じられた金型91,92内に材料を注入する材料注入系94と、各部を制御する主制御部90等を備えている。この他、不図示ではあるが、成形後に物品を取り出すための突き出し動作を行う突き出し機構等を備えている。
【0013】
この実施形態では、カメラ1a,1bは、成形装置9の可動金型91の内面を撮影するよう取り付けられている。この実施形態では、カメラ1a,1bは2台設けられており、可動金型91の内側の異なる領域をそれぞれ撮影するようになっている。各カメラ1a,1bは、例えば200~300万画素程度のイメージセンサを備えており、モノクロであっても良いが、カラーであるとより好ましい。
【0014】
尚、図1では、各カメラ1a,1bは固定金型92に取り付けられているように描かれているが、固定金型92とは別に設置した台座等に取り付けても良い。また、図1は平面概略図であるので、各カメラ1a,1bは斜め側方から可動金型91を臨む状態となっているが、固定金型92の上面に取り付けて斜め上方から可動金型91を臨む状態として良い。カメラ1a,1bは、可動金型91の内面の撮影するものとなるが、成形された物品が保持されている場合には、その部分では内面が物品で覆われており、物品を撮影する状態となる。
【0015】
後述するように、各カメラ1a,1bは可動金型91の開動作の動画を撮影するよう撮影スパンが設定される。したがって、閉じた状態の可動金型91の位置と、開いた状態と可動金型91の位置とが撮影領域に入るように各カメラ1a,1bは設置され、撮影エリアが調整されている。この場合の撮影エリアは、各カメラ1a,1bの姿勢を固定した状態での撮影エリアである。
【0016】
装置本体2は、カメラ1a,1bの撮影の制御を行う制御部に加え、成形状態の正常異常を判断する判断部を含んでいる。この実施形態では、装置本体2は、プロセッサ21やディスプレイ22、入出力インターフェース23等を備えた携帯型のコンピュータ装置となっている。具体的には、例えば10~12インチ程度のディスプレイを備えたタブレットPCが装置本体2として使用できる。
【0017】
装置本体2は、SSD又はHDDのような記憶部3を有している。記憶部3には、カメラ1a,1bの動作の制御を含む監視シーケンスプログラム31や各カメラ1a,1bが撮影した各動画ファイル32、各カメラ1a,1bが撮影した画像に基づいて一次監視、二次監視を行う各監視プログラム331,332、各監視プログラム331,332が参照する基準画像ファイル341,342等が記憶されている。加えて、記憶部3には、各種設定情報を記録した設定情報ファイル35や設定情報を入力するための設定情報入力プログラム36等が記憶されている。したがって、この実施形態では、制御部は、装置本体2と装置本体2に実装された監視シーケンスプログラム31によって構成されている。また、判断部は、装置本体2と装置本体2に実装された各監視プログラム331,332によって構成されている。
【0018】
ディスプレイ22は、タッチパネルとしても機能するようになっていて設定情報の入力部も兼ねており、設定情報入力プログラム36は、入力画面をディスプレイ22に表示し、入力された設定情報を設定情報ファイル35に記録するプログラムとなっている。
尚、金型監視装置は、成形装置9の主制御部90に接続されており、一次監視や二次監視において異常が判断された際にその旨を入出力インターフェース23を介して主制御部90に出力するようになっている。各監視プログラム331,332は、カメラ1a,1bから送られた画像(静止画)を基準画像と比較し、その差異に基づいて正常・異常を判断するプログラムとなっている。
【0019】
次に、実施形態の金型監視装置の大きな特徴点を成すカメラ1a,1bによる動画撮影のスパンの設定情報について説明する。図2は、設定情報として入力される動画撮影のスパンについて示した概略図である。
図2に示すように、動画撮影のスパンは、一次監視のタイミングt1と二次監視のタイミングt2とを基準にして設定される。具体的には、動画撮影の開始のタイミングは、一次監視のタイミングt1を基準としてそれと同じか又はそれより前のタイミングとして設定される。即ち、動画撮影開始から一次監視までのタイムラグ(図2にT1で示す)は、0の場合もある。以下、このタイムラグT1を、撮影開始先行時間と呼ぶ。
【0020】
また、動画撮影終了のタイミングは、二次監視のタイミングt2を基準としてそれより後のタイミングとして設定される。図2において、二次監視のタイミングt2から動画撮影終了までのタイムラグをT2で示す。以下、このタイムラグT2を、撮影終了遅延時間と呼ぶ。これらの動画撮影スパン設定情報は、設定情報入力プログラム36により予め入力されることで設定される。
【0021】
図3は、設定情報入力プログラム36により表示される動画撮影スパン設定ウインドウの一例を示した概略図である。図3に示すように、動画撮影スパン設定ウインドウは、撮影開始先行時間入力欄41と、撮影終了遅延時間入力欄42とを備えている。撮影開始先行時間入力欄41は、一次監視のタイミングからの先行時間を数値(秒)で入力する欄である(0入力可)。撮影終了遅延時間入力欄42は、二次監視のタイミングからの遅延時間を数値(秒)で入力する欄である(0入力不可)。
【0022】
この実施形態では、二次監視で異常が出力されたかどうかで撮影終了遅延をさせるかどうかを選択することができるようになっている。具体的には、設定情報入力画面は、撮影終了遅延についてのオプション入力欄43を有している。オプション入力欄43は、二次監視で異常があった場合に撮影終了遅延を行うかどうかを選択する欄である。これらの入力欄が入力されてOKボタン44が押されると、設定情報入力プログラム36は、入力された情報を設定情報ファイル34に記録する。
【0023】
次に、このようにして予め設定された情報に基づいて所定のシーケンスで金型監視装置を動作させる監視シーケンスプログラム31について説明する。図4は、実施形態の金型監視装置に実装された監視シーケンスプログラム31の概略図である。
図1に示す金型監視装置に対しては、成形装置9の動作状況を示す信号が入力されるようになっている。監視シーケンスプログラム31は、成形装置9の稼働中は常に実行された状態であり、スタンバイ状態では成形装置9からの動作状況信号の入力待ちの状態である。
【0024】
監視シーケンスプログラム31に対しては、成形が開示されてから一次監視のタイミングt1までの時間が定数として与えられている。この時間は、一式の金型91,92が閉じてから金型91,92が開くまでの時間、即ち金型91,92が閉じて材料が注入され、固化完了するまでの時間を含んでおり、それより少し長い時間である。以下、この時間を成形時間といい、図2においてTmで示す。
監視シーケンスプログラム31は、ある時刻において金型91,92が閉じたことを示す信号を受信すると、タイマーのカウントをスタートする。以下、この金型91,92が閉じたことを示す信号を成形開始信号という。
【0025】
監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントが、成形時間Tm-撮影開始先行時間T1に達すると、カメラ1a,1bに対して撮影開始の制御信号を送る。そして、タイマーのカウントが成形時間Tmに達すると、監視シーケンスプログラム31は、カメラ1a,1bから送られている動画からその時点での静止画をそれぞれ取得し、一次監視プログラム331に引数としてそれぞれ渡して一次監視を行わせる。
【0026】
一次監視は、各カメラ1a,1bについて行われる。以下、説明の都合上、二つのカメラを第一のカメラ1a,第二のカメラ1bという。
一次監視プログラム331は、第一のカメラ1aの動画から取り出された静止画について第一のカメラ1a用の一次監視の基準画像と比較する。そして、その差異が限度内かどうか判断し、限度内であれば、第一のカメラ1aについての一次監視は正常とする。限度を超えていれば、第一のカメラ1aについての一次監視は異常とする。次に、一次監視プログラム331は、第二のカメラ1bの動画から取得した静止画について第二のカメラ1b用の一次監視の基準画像と比較し、その差異に限度内かどうか判断する。限度内であれば第二のカメラ1bについての一次監視は正常とし、超えていれば異常とする。
監視シーケンスプログラム31は、いずれかのカメラ1a,1bについて異常の結果であれば、一次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。この際、どのカメラ1a,1bについての結果が異常であったかを示す情報も併せて出力される。
【0027】
一方、一次監視のタイミングから二次監視のタイミングまでの時間が定数として監視シーケンスプログラム31に与えられている。この時間は、突き出し動作に要する時間を含んでいる。以下、この時間を突き出し時間と呼び、図2にTpで示す。
監視シーケンスプログラム31は、一次監視の時点で、タイマーのカウントを0にリセットして再度スタートさせる。そして、タイマーのカウントが突き出し時間Tpに達すると、監視シーケンスプログラム31は、その時点でカメラ1a,1bから送られている動画から静止画を取得し、それらを引数として渡して二次監視プログラム332を実行し、二次監視を行わせる。
【0028】
二次監視プログラム332は、第一のカメラ1aの動画から取得した静止画について第一のカメラ1a用の二次監視の基準画像と比較する。そして、その差異が限度内かどうか判断し、限度内であれば、第一のカメラ1aについての二次監視は正常とする。限度を超えていれば、第一のカメラ1aについての二次監視は異常とする。
次に、二次監視プログラム332は、第二のカメラ1bの動画から抽出した静止画について第二のカメラ1b用の二次監視の基準画像と比較し、その差異に限度内かどうか判断する。限度内であれば第二のカメラ1bについての二次監視は正常とし、超えていれば異常とする。
【0029】
そして、監視シーケンスプログラム31は、いずれかのカメラ1a,1bについて異常の結果であれば、二次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。この際、どのカメラ1a,1bについての結果が異常であったかを示す情報も併せて出力される。
図4に示すように、監視シーケンスプログラム31は、二次監視の結果が正常であった場合(いずれのカメラ1a,1bについても正常であった場合)、撮影終了の制御信号をカメラ1a,1bに送信する。二次監視の結果が正常、異常いずれの場合も、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを0にリセットする。
【0030】
そして、二次監視異常の場合、監視シーケンスプログラム31は、撮影終了の制御信号をカメラ1a,1bに送らず、タイマーのカウントを再度スタートさせる。その後、タイマーのカウントが撮影終了遅延時間T2に達したら、監視シーケンスプログラム31は、撮影終了の制御信号をカメラ1a,1bに送る。そして、タイマーのカウントを停止させ、0にリセットする。
これで、一回の成形サイクルにおける監視シーケンスは終了である。監視シーケンスプログラム31は、次の成形開始信号の受信待ちの状態となる。
【0031】
各時間の一例を示すと、例えば撮影開始先行時間T1は5秒とされ、一次監視は可動金型91の開動作完了後に1秒後に行われる設定とされる。可動金型91の開動作に要する時間は3秒程度であり、可動金型91の開動作が始まる1秒程度前から動画の撮影が開示される。
また、突き出し時間Tpは例えば5秒とされる。尚、突き出し動作は一次監視のタイミングの直後に開始され、二次監視のタイミングよりも2~3秒程度前に完了する。突き出し動作自体の時間は、1~2秒程度である。そして、撮影終了遅延時間T2は例えば5秒とされる。動画の撮影終了は、早くとも二次監視のタイミングなので、いずれの場合も突き出し動作が完了した後に動画撮影が終了することになる。
【0032】
尚、説明を省略したが、上記の例は二次監視異常の場合に動画撮影を延長させる設定の場合である。この設定情報は、前述したように設定情報入力プログラム36によって設定されるが、この設定情報は監視シーケンスプログラム31の起動時に引数として渡される。
上記監視シーケンスにおいて、一次監視で異常が出力されると、成形装置9は、通常、稼働停止の状態となる。この場合、その時点で撮影終了信号が出力されて撮影は終了され、二次監視は行われない。但し、撮影を継続しても良い。継続する場合、タイマーのカウントが突き出し時間Tpに達した段階で撮影終了とし、タイマーのカウントをゼロにリセットする。
【0033】
尚、上記監視シーケンスにおいて、一次監視は、可動金型91が開いたことを示す信号が成形装置9から送られたタイミングで行われる場合もある。この場合も、動画の撮影開始信号は、タイマーのカウントをスタートしてから、Tm-T1の時間が経過したタイミングでカメラ1a,1bに送られる。
【0034】
上記説明から解るように、上記監視シーケンスにおいて、一回の成形サイクル及び1台のカメラにつき一個の動画ファイル32が生成されて記憶される。記憶部3には、動画ファイル32の記憶用のフォルダが設けられている。
動画ファイル32の記憶用のフォルダは、金型監視が正常であった場合の動画ファイル32の記憶用のフォルダ(以下、正常用フォルダ)と、異常であった場合の動画ファイル32の記憶用のフォルダ(以下、異常用フォルダ)に分かれている。さらに、異常用フォルダには、第一のカメラ1a用のサブフォルダと、第二のカメラ1b用のサブフォルダが設けられている。
【0035】
金型監視で異常が発生した際の各動画ファイル32は、該当のカメラ用の異常用フォルダに記憶される。即ち、第一のカメラ1aについての異常の場合には第一のカメラ1a用の異常用フォルダに動画ファイル32が記憶され、第二のカメラ1bについての異常の場合には第二のカメラ1b用の異常用フォルダに動画ファイル32が記憶される。この際、各動画ファイル32は、動画が撮影された日時(撮影開始日時又は撮影終了日時)をファイル名にして記憶されるようになっている。
第一第二のいずれの金型監視も正常であった場合の動画ファイル32については、撮影日時をファイル名にせずに正常用フォルダに記憶して常時上書きする構成であっても良い。もしくは、正常用フォルダのサイズに上限を設け、上限に達した場合、古い順から動画ファイル32を削除する構成であっても良い。
尚、異常が発生した際の各動画ファイル32は、第一のカメラ1aが撮影した動画と第二のカメラ1bが撮影した動画とを識別できるようなファイル名にした上で、同一のフォルダに記憶しても良い。この点は、正常であった場合の動画ファイル32についても同様である。
【0036】
このような実施形態の金型監視装置の全体の動作、及び成形装置9の全体の動作について、以下に説明する。
成形装置9を用いて成形を行う物品の製造ラインにおいて、作業者は、金型監視装置に対して必要な設定情報の入力を行う。設定情報には、成形時間Tm、突き出し時間Tp、撮影開始先行時間T1、撮影終了遅延時間T2が含まれる。そして、金型監視装置を動作させ、成形装置9により成形を行う。
【0037】
成形装置9は、一式の金型91,92が閉じられた状態で材料を金型91,92内に注入する。この際、成形開始信号が金型監視装置に対して送られる。成形開始信号を受け、金型監視装置は、タイマーのカウントをスタートさせる。
成形装置9は、設定された成形時間Tmが経過すると、可動金型91を移動させて金型91,92を開く。この間、成形時間Tm-撮影開始先行時間T1の時間が経過した段階で、撮影開始信号がカメラ1a,1bに送られ、カメラ1a,1bが動画撮影を開始する。そして、金型91,92が開いた直後のタイミングで、金型監視装置は一次監視を行う。即ち、カメラ1a,1bから送られる各動画のデータから一次監視の時点での静止画を取得し、それぞれ基準画像と比較して成形状況の正常・異常を判断する。
【0038】
一次監視の結果、異常であると判断されると、その旨が成形装置9の主制御部90に送られる。これにより、主制御部90が動作し、成形サイクルが中断される。
一次監視異常が出力されなければ、成形装置9は、突き出し動作を行う。これにより、物品が突き出されて金型91,92から取り出される。
【0039】
一方、金型監視装置のタイマーが一次監視のタイミングで0にリセットされて再スタートしている。タイマーのカウントが突き出し時間Tpに達すると、金型監視装置は、タイマーのカウントを停止して0にリセットするとともに、二次監視を行う。即ち、カメラ1a,1bから送られる各動画から突き出し時間Tpの時点での静止画を取得し、それぞれ基準画像と比較して成形状況の正常・異常を判断する。
【0040】
二次監視において正常と判断されると、金型監視装置は、カメラ1a,1bに対して撮影終了の制御信号を出力する。二次監視において異常と判断されると、金型監視装置は、その旨を成形装置9の主制御部90に出力するとともに、タイマーのカウントを再度スタートさせる。そして、タイマーのカウントが、撮影終了遅延時間T2に達すると、金型監視装置は、カメラ1a,1bに対し撮影終了の制御信号を送る。
一方、二次監視異常の出力を受けた成形装置9の主制御部90は、次の成形サイクルを中止し、金型91,92が開いたままの状態とする。二次監視が正常である場合、成形装置9は、再び金型91,92を閉じ、材料を注入して次の成形サイクルを行う。
【0041】
上記動作において、一次監視において異常とされ、成形装置9の稼働が停止した場合、作業員は、状況を調査する。この際、金型91,92をチェックする他、金型監視装置に記憶されている動画ファイル32を再生して動画もチェックする。そして、一次監視異常の原因を特定し、必要な措置を取る。二次監視において異常と判断された場合も同様であり、金型91,92をチェックし、金型監視装置の動画をチェックして、必要な措置を取る。尚、装置本体2は、ディスプレイ22において動画ファイル32を再生するためのプログラムを実装しており、動画のチェックの際にはこのプログラムが使用される。
【0042】
上記動作に係る実施形態の金型監視装置によれば、一次監視や二次監視が行われる金型91,92について動画が撮影されて記憶部3に記憶されるので、一次監視や二次監視において異常が生じた場合の解析をより効果的に行うことができる。
この際、動画は、一回の成形サイクルにおいて一つの動画ファイル32となるので、記憶部3におけるファイル管理が容易である。例えば、成形装置9において各回の成形サイクルについてロット番号が付されている場合、このロット番号に対応させて各動画ファイル32を管理することができる。
【0043】
また、カメラ1a,1bを常時回し続けるのではなく、金型監視のタイミングを基準としたスパン(開始と終了)で動画が撮影されるので、動画のデータ量が無益に過大とならない。即ち、一次監視や二次監視に関連して必要な時間帯でのみ動画を残すことができ、動画保存のための記憶部3の記憶領域を節約しつつ必要な動画を残すことができる。このため、異常発生の際の解析を動画を活用して十分に行うことができる。
【0044】
尚、1回の成形サイクルについての1つの動画ファイル32となっている点は、特に異常が発生した成形サイクルにおける動画ファイル32を容易に特定することができる点で意義を有する。即ち、金型監視装置から異常が出力されて成形作業を停止した際の日時は、成形装置9の主制御部90に保存されている。したがって、この日時に最も近い日時がファイル名になっている動画ファイル32がその異常が発生した際の動画ファイル32であり、その動画ファイル32を再生することにより、異常の発生状況を動画で確認することができる。
【0045】
また、この実施形態では、一次監視のタイミングを基準としてそれより前の任意の時点を動画撮影開始とすることができるので、可動金型91の開動作に関連して適切なスパンの動画を記憶することができる。例えば、可動金型91が開くのに要する時間よりも少し長い時間を撮影開始先行時間T1とすることで、金型が開く状況を全て動画に収めることができる。このことは、一次監視異常が発生した場合の解析において、重要な意義を有する。即ち、一次監視異常発生の原因について、可動金型91が開く動作が関連しているかどうかを動画で解析することができる。この際、可動金型91が開くのに要する時間に合わせて動画撮影開始先行時間を設定できるので、種々の物品の成形や種々の成形装置9に応じて、一次監視異常の解析が最適化される。
【0046】
尚、上記に関連して、この実施形態では、金型91,92の開動作における可動金型91の移動開始の位置と移動終了の位置との双方が撮影エリアに入るようにカメラ1a,1bが設置されている。この点も顕著な意義を有する。即ち、可動金型91の移動の動作が全て動画に収まるので、異常について開動作との関連を解析する際に特に好適となっている。
【0047】
また、二次監視において異常が発生した際、動画撮影が撮影終了遅延時間の分だけ延長されるので、二次監視の異常発生の状況やその後の状況の確認に非常に有益となる。特に、二次監視異常が出力された場合、作業員が金型91,92のところに行って調査すると、物品は正しく突き出されて異常ではない場合がある。この状況は、二次監視の時点では物品が可動金型91にひっかかっていて異常とされたものの、その後に落下して、作業員が到着した際には正常な状態となっているという状況である場合が多い。この場合、二次監視の時点での静止画を見ただけでは、そのような状況は判らないが、二次監視後の動画を見れば、即座に判明する。このように、実施形態の金型監視装置によれば、各金型監視において異常が発生した際の状況をより詳しく正確に解析することができる。
【0048】
次に、第二の実施形態の金型監視装置について説明する。図5は、第二の実施形態の金型監視装置の主要部を示した概略図であり、第二の実施形態における監視シーケンスプログラムの主要部の概略を示したフローチャートである。
第二の実施形態の金型監視装置では、二次監視において異常と判断された場合、時間をおいて二次監視を再度行う構成が採用されている。具体的に説明すると、図5に示すように、第二の実施形態では、二次監視で異常と判断された場合、この時点では成形装置9の主制御部90に二次監視異常は出力せず、タイマーのカウントをゼロにリセットしてから再スタートする。また、この時点では撮影終了信号は各カメラ1a,1bに出力されず、撮影は延長される。
【0049】
そして、タイマーのカウントが所定の値(以下、再二次監視時間T3とする)に達した場合、監視シーケンスプロプログラム31は、その時点で各カメラ1a,1bの動画から取得した静止画を引数としてそれぞれ渡して二次監視プログラム332を実行する。そして、いずれかのカメラにおける実行結果で異常と判断された場合には成形装置9の主制御部90に二次監視異常を出力する。いずれのカメラにおける実行結果でも正常と判断された場合、主制御部90には二次監視異常は出力しない。二回目の二次監視で異常とされた場合、同様にその時点では撮影終了信号は出力せず、そこから撮影終了遅延時間T2が経過した時点で撮影終了信号を出力する。
尚、再二次監視時間T3は、最初の二次監視後に延長される撮影終了遅延時間T2よりも短い時間であり、撮影が途切れることがない。例えば撮影終了遅延時間T2が5秒であると、再二次監視時間T3は2秒とされる。
【0050】
第二の実施形態においては、二次監視でいったん異常とされても、所定時間経過後にもう一度二次監視を行い、それでも異常と判断された場合には成形装置9の主制御部90に二次監視異常を出力するので、突き出し時に物品が僅かにひっかかっていて短い時間内に自然落下するような些細な不具合が発生した場合までも二次監視異常を出力してしまう問題がなくなる。この場合も、そのような些細な不具合の発生について動画で後から確認できるので、些細な不具合について適切な措置を施すことができ、二回目の二次監視においても異常とされてしまうような事態にまで発展してしまうのを未然に防止できる。
【0051】
尚、最初の二次監視において異常とされ、二回目の二次監視において正常となった場合の動画ファイル32も、記憶部3の異常用フォルダに記憶される。この場合、一回目の二次監視で異常となった場合のフォルダとは別のフォルダに保存するようにすると、後の解析がし易くなるので好適である。
【0052】
また、第二の実施形態において、二回目の二次監視で異常となった場合には撮影終了遅延時間T2をさらに延長することも後の解析のために有益である。例えば、上記の例では、再二次監視時間T3が2秒で、その時点でやはり異常となった場合、タイマーのカウントをゼロにして再度5秒間の撮影終了遅延時間を設けるようにする。この例では、最初の二次監視のタイミングからは7秒の撮影終了遅延となる。
尚、二次監視でも異常とされた場合、再二次監視時間T2をおいてさらに三回目以降の二次監視を行う構成が採用されることもある。この場合も、二回目の二次監視で異常となった際に撮影終了遅延時間T2がさらに加算されて撮影が延長されるようにしておけば、三回目以降の二次監視までの間に撮影が途切れてしまうことはなくなる。
【0053】
上述した各実施形態において、一次監視や二次監視の手法については、カラー画像による方法を採用することができる。具体的には、特開2019-197146号公報に開示された手法を採用することができる。
また、一次監視や二次監視のために取得される静止画については、各カメラ1a、1bが撮影した動画から取得するのではなく、静止画用の別のカメラを設け、別のカメラが撮影した静止画で一次監視や二次監視をしても良い。但し、動画撮影用のカメラ1a,1bを静止画取得用としても使用すると、カメラの台数が節約できるので、コストのメリットが大きい。
【0054】
各実施形態において、カメラは2台としたが、1台のみのカメラでも良く、3台以上のカメラが使用される場合もある。3台以上のカメラが使用される場合も、それぞれのカメラについて基準画像が記憶され、いずれかのカメラからの画像について基準画像からの乖離が限度以上である場合、一次監視又は二次監視は異常とされる。そして、動画の撮影スパンの設定は、各カメラにおいて共通の設定とされる。
また、監視の対象は可動金型91ではなく固定金型92の場合もあり得る。さらに、可動金型91と固定金型92の双方が監視対象になる場合もあり、一対の金型の双方が可動金型でそれぞれ監視対象になる場合もある。
【0055】
尚、前述したように、撮影開始先行時間T1は0より大きい値であったが、0とされる場合もある。例えば、可動金型91の開動作に要する時間が非常に短い場合であるとか、可動金型91の開動作が一次監視異常の原因となることがない場合には、0とされる。動画の全体の撮影時間が短くなるので、撮影先行時間を0にしておくと、動画の保存のための記憶容量が小さくて済むというメリットがある。
撮影終了についても、上記各実施形態では二次監視異常の場合には0より大きい時間で遅延される構成であったが、二次監視異常の場合でも遅延させない構成が採用されることもある。動画の全体の撮影時間が短くなるので、同様に動画保存のための記憶容量を小さくできる。
【0056】
また、上述した各実施形態では、一次監視において異常とされた場合、動画の撮影は中止されると説明したが、一時的な中断の後に再開される(同一ロットの動画として再開される)場合もある。即ち、一次監視で異常とされた場合、作業員がチェックして問題がないとして成形装置の動画が再開されたり、必要な措置が取られて再開される場合がある。このような場合、動画の撮影も再開し、タイマーをゼロから再度スタートさせて突き出し時間Tpに達した時点で二次監視が行われる。このような場合、再開後の動画ファイルは再開前の動画ファイルと別ファイルとされる場合もあるし、同一の動画ファイル(録画の一時停止機能の利用)とされる場合もある。
【0057】
尚、上記各実施形態では、熱可塑性樹脂を材料とした射出成形装置を成形装置9の例として説明したが、本願発明の金型監視装置の用途は、これには限られない。本願発明の金型監視装置は、他の材料を使用した射出成形装置や、プレス成形を行う成形装置、鍛造や鋳造を行う成形装置等の各種の成形装置における金型監視に使用することができる。
また、装置本体2はタブレッドPCと同様の携帯型のコンピュータ装置であったが、デスクトップPCの同様のコンピュータ装置であっても良い。さらに、成形装置9の主制御部90内に搭載されたコンピュータ装置であっても良い。但し、装置本体2が携帯型であると、作業員が工場内のどこにいても動画を見ることができるので好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 カメラ
2 装置本体
21 プロセッサ
22 ディスプレイ
23 入出力インターフェース
3 記憶部
31 監視シーケンスプログラム
32 動画ファイル
331 一次監視プログラム
332 二次監視プログラム
36 設定情報入力プログラム
9 成形装置
90 主制御部
91 可動金型
92 固定金型
図1
図2
図3
図4
図5