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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両管制装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250117BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250117BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20250117BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250117BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250117BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20250117BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
B60W50/04
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021069894
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164417
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒寄 剛
(72)【発明者】
【氏名】新 吉高
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-31125(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033632(WO,A1)
【文献】特開2020-60553(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077739(WO,A1)
【文献】特開2020-46427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両制御装置による前記車両の自動運転を管制する車両管制装置であって、
前記車両制御装置と通信可能に接続される通信部と、
前記通信部を介して前記車両制御装置から自動運転の制御指令値と前記車両の走行軌跡とを取得して自動運転に用いられる車両特性を同定する車両特性同定部と、
前記車両特性同定部による前記車両特性の同定精度を推定する同定精度推定部と、
前記同定精度推定部によって推定された前記同定精度に基づいて前記車両の自動運転を管制する自動運転管制部と、
を備えることを特徴とする車両管制装置。
【請求項2】
前記車両特性同定部は、前記車両制御装置の制御により所定の同定エリアを走行した前記車両の前記車両特性を同定することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記同定エリアに設置された外界センサと通信可能に接続され、
前記車両特性同定部は、前記通信部を介して取得した前記外界センサによる前記車両の検出結果に基づいて前記車両の走行軌跡を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記同定エリアに設置された重量センサと通信可能に接続され、
前記車両特性同定部は、前記通信部を介して取得した前記重量センサによる前記車両の重量の検出結果に基づいて前記車両特性を同定することを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【請求項5】
前記車両制御装置は、前記車両に搭載された車載外界センサに接続され、
前記車両特性同定部は、前記同定エリアに設置された物体の前記車載外界センサによる検知結果を前記車両制御装置から前記通信部を介して取得して、前記車載外界センサによる物体検知機能を同定することを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【請求項6】
前記車両特性同定部は、前記通信部を介して前記同定エリアにおける制御指令値を前記車両制御装置へ送信して、前記車両制御装置によって前記車両を前記同定エリアで走行させることを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【請求項7】
前記車両制御装置は、前記車両に搭載された車載外界センサに接続され、
前記車両特性同定部は、前記車両制御装置により、前記同定エリアに表示されて前記車載外界センサによって検出された参照経路に沿って前記車両を走行させ、前記車両特性を同定することを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【請求項8】
前記自動運転管制部は、前記同定精度推定部によって推定された前記同定精度がしきい値よりも高い前記車両特性を、前記通信部を介して前記車両制御装置へ送信して前記車両制御装置に格納された前記車両特性を更新することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項9】
前記自動運転管制部は、前記同定精度推定部によって推定された前記同定精度に応じて前記車両制御装置による前記自動運転の制限を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項10】
前記自動運転管制部は、複数の前記車両のうち前記同定精度推定部によって推定された前記同定精度がより高い前記車両を優先的に運行させることを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項11】
前記車両特性および前記同定精度を格納するデータベースを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項12】
前記車両特性同定部は、前記車両制御装置の制御により前記同定エリアよりも広いメンテナンスエリアを走行した前記車両の前記車両特性を同定することを特徴とする請求項2に記載の車両管制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両管制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から駐車制御装置に関する発明が知られている。特許文献1に記載された駐車制御装置は、取得部と、決定部とを備える。前記取得部は、車両の周辺センシング機能の性能に関する性能情報を取得する。前記決定部は、前記取得部によって取得された性能情報に基づいて車両の駐車位置を決定する(要約、請求項1、第0006段落等)。
【0003】
この従来の駐車制御装置は、駐車場に駐車された駐車車両からセンサの検知結果を収集する収集部と、駐車場を走行する走行車両の性能が低性能である場合、前記収集部が収集した検知結果に基づき当該走行車両の走行を補助する補助情報を出力する出力部とを備える(特許文献1、請求項4、第0030段落、第0060段落-第0063段落)。これにより、高性能な車両のセンサの検知結果を用いることで、インフラセンサが不要となるため、駐車システムの初期導入のコストが嵩むことを抑制できる(同、第0027段落)。
【0004】
また、従来から車両制御装置に関する発明が知られている。特許文献2に記載された車両制御装置は、車両に搭載される。この車両制御装置は、自動運転実行部と、第1の目標位置取得部と、第2の目標位置取得部と、目標位置設定部と、を備える(要約、請求項1、第0006段落)。
【0005】
前記自動運転実行部は、所定の領域内に設定される目標位置に車両を到達させるように自動運転を実行する。前記第1の目標位置取得部は、所定の領域に対して予め設定された領域データに基づいて特定される目標位置の候補としての第1の目標位置を取得する。前記第2の目標位置取得部は、車両の周辺の状況を検出するセンサによって得られるセンサデータに基づいて特定される目標位置の他の候補としての第2の目標位置を取得する。前記目標位置設定部は、第1の目標位置と第2の目標位置との関係に基づいて、第1の目標位置と第2の目標位置とのうちいずれか一方を目標位置として設定する。
【0006】
上記従来の車両制御装置によれば、第1の目標位置と第2の目標位置とのうちいずれか一方を目標位置として選択的に設定することができるので、たとえば目標位置の候補が第1の目標位置だけしか存在しない場合と異なり、自動運転の精度の向上を実現することができる(特許文献2、第0007段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-149334公報
【文献】特開2020-035108公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の駐車制御装置では、前記収集部が出力した補助情報に基づいて駐車場を走行する走行車両の目標経路に対する追従精度が低い場合、当該車両が目標位置に到達できないおそれがある。同様に、上記従来の車両制御装置では、第1の目標位置と第2の目標位置とのうちいずれか一方を目標位置として選択的に設定したとしても、車両の目標経路に対する追従精度が低い場合、当該車両が目標位置に到達できないおそれがある。
【0009】
本開示は、車両の目標経路に対する追従精度を向上させることが可能な車両管制装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、車両に搭載された車両制御装置による前記車両の自動運転を管制する車両管制装置であって、前記車両制御装置と通信可能に接続される通信部と、前記通信部を介して前記車両制御装置から自動運転の制御指令値と前記車両の走行軌跡とを取得して自動運転に用いられる車両特性を同定する車両特性同定部と、前記車両特性同定部による前記車両特性の同定精度を推定する同定精度推定部と、前記同定精度推定部によって推定された前記同定精度に基づいて前記車両の自動運転を管制する自動運転管制部と、を備えることを特徴とする車両管制装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、車両の目標経路に対する追従精度を向上させることが可能な車両管制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る車両管制装置の実施形態1を示すブロック図。
図2図1の車両管制装置による車両管制の一例を示す模式的な平面図。
図3図1の車両管制装置による処理の流れを示すフロー図。
図4図1の車両管制装置による車両の自動運転の制限の一例を示す平面図。
図5図1の車両管制装置による図2の車両管制の変形例を示す模式的な平面図。
図6】本開示に係る車両管制装置の実施形態2を示すブロック図。
図7図6の車両管制装置による車両管制の一例を示す模式的な平面図。
図8図6の車両管制装置による処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示に係る車両管制装置の実施形態を説明する。
【0014】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る車両管制装置の実施形態1を示すブロック図である。図2は、図1の車両管制装置1による車両管制の一例を示す模式的な平面図である。本実施形態の車両管制装置1は、たとえば、オンデマンド交通やラストワンマイルモビリティに使用される車両2に搭載された車両制御装置21による車両2の自動運転を管制する装置である。車両管制装置1は、たとえば、複数の車両2に搭載された複数の車両制御装置21と通信可能に接続され、複数の車両2の自動運転を管制する。
【0015】
車両管制装置1によって管制される車両2は、たとえば、車両制御装置21と、通信装置22と、車載外界センサ23と、車両センサ24と、記憶装置25と、駆動装置26とを備えている。車両制御装置21は、たとえば、車両2に搭載され、車両2の自動運転を行うための電子制御装置(ECU)である。車両制御装置21は、通信装置22、車載外界センサ23、車両センサ24、記憶装置25、および駆動装置26に対して接続されている。
【0016】
通信装置22は、たとえば、無線通信回線3、無線基地局4、インターネット回線5、有線通信回線6などを介して、車両管制装置1と通信可能に接続されている。車載外界センサ23は、たとえば、車両2の周囲の物体を検知するセンサである。車載外界センサ23は、たとえば、単眼カメラ、ステレオカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ、赤外線センサなどを含む。車両センサ24は、たとえば、車両2の状態を検知するセンサである。車両センサ24は、たとえば、車輪速センサ、加速度センサ、角速度センサ、全球衛星測位システム(GNSS)の端末などを含む。
【0017】
記憶装置25は、たとえば、車両2に搭載された不揮発メモリであり、車両2の自動運転に使用される車両特性を含むデータや、プログラムなどが記憶されている。なお、車両2の自動運転に使用される車両2の車両特性は、車両制御装置21の内部の不揮発メモリに格納されていてもよい。駆動装置26は、たとえば、車両2の自動運転に使用される各種のアクチュエータや、車両2を走行させる駆動力を発生するモータまたはエンジンなどを含む。
【0018】
車両制御装置21による車両2の自動運転に使用される車両2の車両特性は、たとえば、車両2のタイヤ径、コーナリングパワー、アクチュエータの応答性、旋回曲率半径など、車両2の各種のパラメータを含む。また、車両特性は、たとえば、車両2に搭載された車載外界センサ23の外界認識機能の特性、車両2に搭載された車両センサ24の位置推定機能の特性を含んでもよい。
【0019】
車両管制装置1は、たとえば、図示を省略する中央処理装置(CPU)、記憶装置、タイマーおよび入出力部などを備えたコンピュータ、サーバ、またはコンピュータシステムなどによって構成することができる。
【0020】
車両管制装置1は、たとえば、図1に示すように、通信部11と、車両特性同定部12と、同定精度推定部13と、自動運転管制部14と、を備えている。また、車両管制装置1は、たとえば、データベース15を備えていてもよい。図1に示す車両管制装置1の各部は、たとえば、記憶装置に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現される車両管制装置1の機能を表す機能ブロックである。
【0021】
車両管制装置1は、異なる場所に設置された複数の装置によって構成されていてもよく、図1に示す各部をそれぞれ別の装置に分割して備えていてもよい。なお、車両管制装置1の一部または全部を、たとえば、専用の装置、汎用の機械学習マシン、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(programmable logic device)などによって代替することも可能である。
【0022】
通信部11は、一以上の車両2に搭載された一以上の車両制御装置21と通信可能に接続される。より具体的には、通信部11は、少なくとも無線通信回線3を介して一以上の車両制御装置21と通信可能に接続される。また、通信部11は、たとえば、各々の車両2に搭載された通信装置22、ならびに、無線通信回線3、無線基地局4、インターネット回線5、および有線通信回線6を含むデータ通信網を介して、一以上の車両制御装置21と通信可能に接続されていてもよい。
【0023】
車両特性同定部12は、通信部11を介して、車両制御装置21による車両2の自動運転の制御指令値と、車両2の走行軌跡とを取得して、車両2の自動運転に用いられる車両特性を同定する。車両特性同定部12は、たとえば、車両制御装置21の制御によって所定の同定エリアIAを走行した車両2の車両特性を同定する。同定エリアIAは、たとえば、一以上の車両2が待機している待機エリアWAと、一以上の車両2が自動運転によるモビリティサービスを提供するモビリティエリアMAとの間の領域である。
【0024】
同定エリアIAは、たとえば、第1直線部分IA1と、第2直線部分IA2と、屈曲部分IA3とを含む。第1直線部分IA1は、待機エリアWAに接続されて直線状に延びている。第2直線部分IA2は、第1直線部分IA1に対して直交または交差する方向へ延びてモビリティエリアMAに接続されている。屈曲部分IA3は、これら第1直線部分IA1と第2直線部分IA2とを接続している。屈曲部分IA3は、所定の角度で屈曲していてもよく、滑らかにカーブしていてもよい。また、同定エリアIAは、直線部分のみで構成されていてもよい
【0025】
同定エリアIAには、たとえば、一以上の外界センサESが設置されている。外界センサESは、同定エリアIAを走行する車両2の位置、姿勢、移動方向、速度などを検知する。外界センサESとしては、たとえば、単眼カメラ、ステレオカメラ、レーザレーダ、またはミリ波レーダなどを使用することができる。
【0026】
車両管制装置1の通信部11は、たとえば、無線通信回線3、無線基地局4、インターネット回線5、有線通信回線6などを介して、同定エリアIAに設置された外界センサESと通信可能に接続されている。この場合、車両管制装置1の車両特性同定部12は、たとえば、通信部11を介して取得した同定エリアIAの外界センサESによる車両2の検出結果に基づいて車両2の走行軌跡を算出する。
【0027】
同定エリアIAには、たとえば、参照経路RPが表示されていてもよい。参照経路RPは、たとえば、同定エリアIAの路面に描かれた直線および曲線を含む白線や、同定エリアIAの路面にプロジェクターによって投影された直線および曲線である。車両2の車両特性の同定に参照経路RPを用いる場合、車両特性同定部12は、車両制御装置21により、同定エリアに表示されて車載外界センサ23によって検出された参照経路RPに沿って車両2を走行させ、車両特性を同定する。
【0028】
また、車両特性同定部12は、たとえば、同定エリアIAに設置されたダミー人形などの物体Dの車載外界センサ23による検知結果を車両制御装置21から通信装置22を介して取得して、車載外界センサ23による物体検知機能を同定するようにしてもよい。また、車両特性同定部12は、たとえば、通信部11を介して同定エリアIAにおける制御指令値を車両制御装置21へ送信して、車両制御装置21によって車両2を同定エリアIAで走行させてもよい。
【0029】
同定精度推定部13は、車両特性同定部12による車両特性の同定精度を推定する。より具体的には、車両特性同定部12は、たとえば、車両2の車両特性の同定を複数回にわたって実行する。同定精度推定部13は、たとえば、車両特性同定部12による複数回の同定によって得られた複数の車両特性の同定結果に基づいて、車両特性の同定精度を推定する。より詳細には、同定精度推定部13は、たとえば、複数の車両特性の同定結果から分散値を算出し、算出した分散値を同定精度として用いる。
【0030】
自動運転管制部14は、同定精度推定部13によって推定された同定精度に基づいて、車両2の自動運転を管制する。自動運転管制部14は、たとえば、同定精度推定部13によって推定された同定精度がしきい値よりも高い車両特性を、通信部11を介して車両制御装置21へ送信して、車両制御装置21または記憶装置25に格納された車両特性を更新する。
【0031】
自動運転管制部14は、たとえば、同定精度推定部13によって推定された同定精度に応じて、車両制御装置21による自動運転の制限を設定する。また、自動運転管制部14は、たとえば、複数の車両2のうち、同定精度推定部13によって推定された同定精度がより高い車両2を優先的に運行させる。
【0032】
データベース15は、車両特性同定部12によって同定された車両特性および同定精度推定部13によって推定された同定精度を格納する。データベース15は、たとえば、ROM、フラッシュメモリ、磁気記憶装置などを含む不揮発メモリによって構成されている。
【0033】
図3は、本実施形態の車両管制装置1と、車両2に搭載された車両制御装置21の処理の流れを示すフロー図である。なお、図3において、左側のフロー図は、車両管制装置1による処理P1の流れを示し、右側のフロー図は、車両2に搭載された車両制御装置21による処理P2の流れを示している。
【0034】
車両管制装置1は、図3に示す処理P1を開始すると、たとえば、モビリティサービスの要求の有無を判定する処理P101を実行する。より具体的には、モビリティサービスの利用者は、たとえば、インターネット回線5に接続された情報端末のアプリケーションを通じて、モビリティサービスの要求を車両管制装置1へ送信する。車両管制装置1は、通信部11を介して、モビリティサービスの要求を受信する。
【0035】
この処理P101において、車両管制装置1は、たとえば、自動運転管制部14により、モビリティサービスの要求の有無を判定する。より具体的には、自動運転管制部14は、通信部11がモビリティサービスの要求を受信していない場合は、要求なし(NO)と判定して、図3に示す処理P1を終了する。一方、自動運転管制部14は、通信部11がモビリティサービスの要求を受信した場合、要求あり(YES)と判定して、走行指示処理P102を実行する。
【0036】
この処理P102において、車両管制装置1の自動運転管制部14は、たとえば、通信部11を介して、車両2の車両制御装置21へ走行指示を送信する。このとき、自動運転管制部14は、たとえば、データベース15に格納された複数の車両2の同定精度を参照し、図2に示す待機エリアWAに待機している複数の車両2のうち、最も同定精度が高い車両2に対して走行指示を送信して優先的に運行させる。その後、車両管制装置1は、たとえば、車両2の車両特性を受信する処理P103を実行する。
【0037】
一方、各々の車両2に搭載された車両制御装置21は、図3に示す処理P2を開始すると、たとえば、車両管制装置1からの走行指示の有無を判定する処理P201を実行する。この処理P201において、車両制御装置21は、通信装置22を介して車両管制装置1から走行指示を受信していない(NO)と判定すると、図3に示す処理P2を終了する。一方、この処理P201において、車両制御装置21は、通信装置22を介して車両管制装置1から走行指示を受信した(YES)と判定すると、車両制御装置21または記憶装置25に格納された車両2の車両特性を送信する処理P202を実行する。
【0038】
この処理P202において、車両制御装置21は、たとえば、通信装置22、無線通信回線3、無線基地局4、インターネット回線5、有線通信回線6などを介して、車両管制装置1へ車両2の車両特性を送信する。一方、車両管制装置1は、前述の処理P103において、たとえば、車両特性同定部12により、通信部11を介して車両制御装置21から送信された車両2の車両特性を受信する。なお、この処理P103において、車両管制装置1は、データベース15に格納された車両2の車両特性を取得してもよい。
【0039】
また、前述の処理P202で車両特性の送信が終了した車両制御装置21は、車載外界センサ23および車両センサ24の検出結果に基づいて駆動装置26を制御して車両2を自律的に走行させて待機エリアWAから退出させる自動運転処理P203を実行する。また、自動運転処理P203を実行中の車両制御装置21は、車載外界センサ23および車両センサ24の検出結果に基づいて、車両2が待機エリアWAを退出したか否かを判定する処理P204を実行する。
【0040】
この処理P204において、車両制御装置21は、車両2が待機エリアWAを退出していない(NO)と判定すると自動運転処理P203を継続し、車両2が待機エリアWAを退出した(YES)と判定すると一時停止処理P205を実行する。この処理P205において、車両制御装置21は、たとえば、駆動装置26を制御して車両2を停車させるとともに、通信装置22を介して、車両管制装置1へ車両2が待機エリアWAを退出して停止したことを示す停止信号を送信する。その後、車両制御装置21は、時刻同期処理P206を実行する。
【0041】
一方、車両管制装置1は、前述の処理P103において、車両制御装置21またはデータベース15から車両2の車両特性を取得した後、車両2が待機エリアWAを退出して停止したか否かを判定する処理P104を実行する。この処理P104において、車両管制装置1は、たとえば、自動運転管制部14により、通信部11を介して車両管制装置1から停止信号を受信したか否かを判定する。車両管制装置1は、たとえば、自動運転管制部14が停止信号を受信していないと判定するとこの処理P104を繰り返し、自動運転管制部14が停止信号を受信した(YES)と判定すると、時刻同期処理P105を実行する。
【0042】
時刻同期処理P105,P206において、車両管制装置1の車両特性同定部12と車両2の車両制御装置21とは、互いに通信を確立させて時刻同期を行う。これにより、後述する車両特性の同定処理において、車両制御装置21の制御指令値の時系列と、車両2の走行軌跡の時系列との関係が明確になり、車両特性の同定が容易になる。
【0043】
その後、車両制御装置21は、車両2を同定エリアIAで自律的に走行させる自動運転処理P207と、その処理P207で演算している制御指令値を車両管制装置1へ送信する処理P208とを実行する。一方、車両管制装置1は、たとえば、車両制御装置21から送信された制御指令値を、たとえば、車両特性同定部12によって、通信部11を介して受信する処理P106を実行する。
【0044】
車両制御装置21の制御指令値は、たとえば、車速指令値および操舵角指令値などの上位指令値、ならびに、スロットル開度、ブレーキ圧、およびピニオン角などの下位指令値を含む。車両管制装置1は、たとえば、前述の処理P106において、車両制御装置21の制御指令値とともに、その制御指令値が出力された時刻を取得する。すなわち、車両管制装置1は、前述の処理P106において、たとえば、車両制御装置21の制御指令値の時系列を取得する。
【0045】
車両制御装置21は、前述の自動運転処理P207において、通常、駆動装置26などの車両2の各部の制御を一定の周期で行うことから、制御指令値も一定の周期で演算される。そのため、車両管制装置1は、たとえば、前述の処理P106において、車両制御装置21から一周期または数周期分の制御指令値を周期的に取得する。また、車両管制装置1は、たとえば、同定エリアIAにおいて事前に設定された複数の基準点BM1,BM2,BM3に車両2が到達したときに、車両制御装置21の制御指令値を取得するようにしてもよい。
【0046】
より具体的には、車両制御装置21は、たとえば、車両2が基準点BM2に到達したときに、前述の処理P208を実行して基準点BM1から基準点BM2までの制御指令値の時系列を送信する。この場合、車両管制装置1は、たとえば、前述の処理P106において、車両制御装置21から送信された基準点BM1から基準点BM2までの制御指令値の時系列を受信する。
【0047】
また、車両制御装置21は、たとえば、車両管制装置1の車両特性同定部12が通信部11を介して送信する同定エリアIAにおける制御指令値を受信し、自動運転処理P207において車両管制装置1から受信した制御指令値を用いて車両2を自律的に走行させてもよい。また、車両制御装置21は、たとえば、自動運転処理P207において、同定エリアIAに表示されて車載外界センサ23によって検出された参照経路RPに沿って車両2を走行させてもよい。
【0048】
また、車両制御装置21は、たとえば、前述の処理P207,P208の後に、車載外界センサ23および車両センサ24の検出結果に基づいて、車両2が同定エリアIAの走行を終了したか否かを判定する処理P209を実行する。この処理P209において、車両制御装置21は、車両2が同定エリアIAの走行を終了していない(NO)と判定すると、前述の処理P207,P208を繰り返し実行する。一方、この処理P209において、車両制御装置21は、車両2が同定エリアIAの走行を終了した(YES)と判定すると、同定エリアIAの終端で車両2を停車させる一時停止処理P210を実行する。
【0049】
また、車両管制装置1は、前述の制御指令値を受信する処理P106の後に、車両2の走行軌跡を取得する処理P107を実行する。この処理P107において、車両管制装置1の車両特性同定部12は、たとえば前述のように、通信部11を介して、同定エリアIAに設置された一以上の外界センサESによる車両2の検出結果を取得し、その検出結果に基づいて車両2の走行軌跡を取得する。ここで、複数の外界センサESによる車両2の検出結果に基づいて車両2の走行軌跡を算出することで、走行軌跡の推定精度を向上させることができる。
【0050】
また、前述の自動運転処理P207では、前述のように、車両制御装置21により、同定エリアIAに表示されて車載外界センサ23によって検出された参照経路RPに沿って、車両2を走行させる場合がある。この場合、車両管制装置1の車両特性同定部12は、前述の処理P208において、車両2を参照経路RPに沿って走行させるように車両2を制御している車両制御装置21から制御指令値を受信する。また、車両特性同定部12は、たとえば、前述の処理P107において、あらかじめデータベース15に格納された参照経路RPの情報を、車両2の走行軌跡として取得してもよい。
【0051】
前述の車両軌跡を取得する処理P107の終了後、車両管制装置1は、車両2が同定エリアIAの終端に接近しているか否かを判定する処理P108を実行する。この処理P108において、車両特性同定部12は、たとえば、前述の車両軌跡取得処理P107において算出した車両2の位置情報と、同定エリアIAの終端の位置情報とに基づいて、車両2が同定エリアIAの終端に接近しているか否かを判定する。
【0052】
より具体的には、この処理P108において、車両特性同定部12は、たとえば、車両2から同定エリアIAの終端までの距離を算出し、その算出した距離が所定の距離よりも遠い場合には、接近していない(NO)と判定する。この場合、車両特性同定部12は、前述の処理P107からP108までを繰り返し実行する。一方、車両特性同定部12は、算出した距離が所定の距離以下の場合には、接近している(YES)と判定し、同定条件が成立しているか否かを判定する処理P109を実行する。
【0053】
なお、前述の処理P108において、車両2が同定エリアIAの終端に接近しているか否かを判定するしきい値となる所定の距離は、特に限定されないが、たとえば、同定エリアIAを走行した車両2が同定エリアIAの終端で安全に停止可能な距離に設定される。具体的には、この所定の距離は、たとえば、10[m]から30[m]程度の距離に設定することができる。
【0054】
車両管制装置1は、同定条件が成立しているか否かを判定する処理P109を開始すると、たとえば、車両特性同定部12により、車両制御装置21の制御指令値の受信成否と、車両2の走行軌跡の取得成否を確認する。車両特性同定部12は、たとえば、制御指令値の受信と走行軌跡の取得の少なくとも一方が失敗している場合、同定条件不成立(NO)を判定し、図3に示す処理P1を終了する。この場合、車両2の車両制御装置21は、演算結果の受信処理P211において、車両管制装置1から演算結果を受信することなく、図3に示す処理P2を終了する。
【0055】
一方、車両特性同定部12は、たとえば、制御指令値の受信と走行軌跡の取得の双方が成功している場合、同定条件成立(YES)を判定し、車両特性同定処理P110を実行する。この処理P110において、車両特性同定部12は、前述の処理P106で取得した車両制御装置21による自動運転の制御指令値と、前述の処理P107で取得した車両2の走行軌跡とを用いて、車両2の自動運転に用いられる車両特性を同定する。
【0056】
より具体的には、この処理P110において、車両特性同定部12は、たとえば、車両2が前後方向の運動のみを行っている区間で、速度の制御指令値と、走行軌跡に含まれる位置および時間の情報とに基づいて、車両2の車速制御の応答性やタイヤ径を同定する。また、車両特性同定部12は、たとえば、車両2の速度が一定で横方向の運動を行っている区間で、操舵角の制御指令値と、走行軌跡に含まれる位置および時間の情報とに基づいて、コーナリングパワーや旋回曲率半径を同定する。なお、コーナリングパワーや旋回曲率半径の同定方法は、公知の方法を適用可能であるため、説明を省略する。
【0057】
ここで、車両特性同定部12は、たとえば、車載外界センサ23による物体検知機能や、車両センサ24による車両2の位置の検知機能を同定してもよい。この場合、車両特性同定部12は、たとえば、前述の処理P106において、同定エリアIAに設置された物体Dの車載外界センサ23による検知結果と、車両センサ24による車両2の位置の検知結果を車両制御装置21から通信部11を介して取得する。さらに、車両特性同定部12は、たとえば、車両管制装置1の不揮発メモリにあらかじめ記録された物体Dの絶対位置を取得する。
【0058】
そして、車両特性同定部12は、前述の車両特性同定処理P110において、たとえば、物体Dの絶対位置と、車両2の走行軌跡に含まれる位置および時間の情報と、車載外界センサ23の検知結果とに基づいて、車載外界センサ23による物体検知機能を同定する。また、車両特性同定部12は、たとえば、車両2の走行軌跡に含まれる位置および時間の情報と、車両センサ24による車両2の位置の検知結果とに基づいて、車両センサ24による車両2の位置検知機能を同定する。
【0059】
車両特性同定処理P110の終了後、車両管制装置1は、同定精度推定処理P111を実行する。この処理P111において、車両管制装置1の同定精度推定部13は、車両特性同定部12による車両特性の同定精度を推定する。より具体的には、同定精度推定部13は、たとえば前述のように、車両特性同定部12による複数回の同定によって得られた複数の車両特性の同定結果の分散値を、同定精度として算出する。
【0060】
また、この処理P111において、同定精度推定部13は、たとえば、車載外界センサ23の物体検知精度と、車両センサ24の位置検知精度とを算出してもよい。この場合、同定精度推定部13は、たとえば、物体Dの絶対位置と、車両2の走行軌跡に含まれる位置および時間の情報と、車載外界センサ23の検知結果とに基づいて、車載外界センサ23の物体検知精度を算出する。また、同定精度推定部13は、たとえば、車両2の走行軌跡に含まれる位置および時間の情報と、車両センサ24による車両2の位置の検知結果とに基づいて、車両センサ24の位置検知精度を算出する。
【0061】
同定精度推定処理P111の終了後、車両管制装置1は、運行管理演算処理P112を実行する。この処理P112において、車両管制装置1の自動運転管制部14は、同定精度推定部13によって推定された車両特性の同定精度に基づいて、車両2の自動運転を管制する。より具体的には、自動運転管制部14は、たとえば、車両2の車両特性の同定精度に基づいて、目的地までの経路における制限を設定する。
【0062】
図4は、自動運転管制部14によって設定される車両2の自動運転の制限の一例を示す平面図である。自動運転管制部14は、たとえば、車両2の車両特性の同定精度に基づいて、目的地Gまでの経路における道路幅の制限を設定する。より具体的には、自動運転管制部14は、たとえば、車両特性の同定精度が所定のしきい値以上である車両2に対しては、道路幅の制限を、比較的に狭い道路幅W1に設定する。また、自動運転管制部14は、たとえば、車両特性の同定精度が所定のしきい値よりも低い車両2に対しては、道路幅の制限を、比較的に広い道路幅W2に設定する。
【0063】
これにより、車両管制装置1は、車両特性の同定精度が高い車両2が、狭い道路幅W1を含む目的地Gまでの最短経路R1を走行するように、車両2の自動運転を管制することができる。また、車両管制装置1は、車両特性の同定精度が低い車両2が、狭い道路幅W1を含む経路R1を回避して、より広い道路幅W2の経路R2を走行するように、車両2の自動運転を管制することができる。
【0064】
なお、自動運転管制部14は、前述の運行管理演算処理P112において、車両2の車両特性の同定精度に応じて設定した制限に基づいて、各々の車両2に最適な経路R1,R2を演算するようにしてもよい。また、ラストワンマイルモビリティに使用される車両2の場合、自動運転管制部14は、車両特性の同定精度に応じて目的地を変更してもよい。たとえば、車両特性の同定精度が低い車両2は、数センチメートル単位での自動運転が困難である。そのため、自動運転管制部14は、たとえば、目的地の周囲に十分なスペースが確保できない場合、周囲により広いスペースがある地点を新たな目的地に設定する。
【0065】
運行管理演算処理P112の終了後、車両管制装置1は、演算結果の送信処理P113を実行する。この処理において、車両管制装置1の車両特性同定部12は、たとえば、通信部11を介して、同定された車両2の車両特性および推定された同定精度を車両2の車両制御装置21へ送信する。また、車両2の車両制御装置21は、たとえば、車両管制装置1から送信された車両特性および同定精度を、通信装置22を介して受信する処理P211を実行する。なお、車両管制装置1は、前述の処理P113において、車両2の同定精度に応じて演算した目標経路を、車両2の車両制御装置21へ送信してもよい。
【0066】
なお、自動運転管制部14は、たとえば前述の処理P113において、同定精度推定部13によって推定された同定精度がしきい値よりも高い車両特性を、通信部11を介して車両制御装置21へ送信してもよい。この場合、前述の処理P211において、車両制御装置21に格納された車両特性を更新してもよい。これらの処理P113,P211の終了後、車両管制装置1および車両2の車両制御装置21は、図3に示す処理P1,P2を終了する。その後、車両2は、車両制御装置21の制御により、モビリティエリアMAにおける自動運転を開始して、オンデマンド交通やラストワンマイルモビリティなどのモビリティサービスを提供する。
【0067】
車両2は、たとえば、モビリティエリアMAにおけるサービスの提供後、車両制御装置21の制御により、同定エリアIAを通過して待機エリアWAへ戻る。このとき、車両管制装置1および車両2の車両制御装置21により、前述の処理P1,P2を実行してもよい。また、車両管制装置1は、たとえば、待機エリアWAに戻った車両2の車両制御装置21との通信を行って、新たに同定した車両特性およびその同定精度を車両管制装置1から車両制御装置21へ送信してもよい。また、車両管制装置1は、新たに同定した車両特性およびその同定精度を、たとえば、データベース15に格納してもよい。
【0068】
なお、図3に示す例では、車両管制装置1は、車両2が同定エリアIAに進入する前の処理P103において車両2から車両特性を受信しているが、車両2が同定エリアIAに進入した後に、車両2の車両特性を取得するようにしてもよい。この場合、車両管制装置1は、たとえば、前述の処理P105において、車両2の車両特性を取得済みであるか否かを確認し、取得していない場合に、車両2から車両特性を受信するか、または、データベース15に格納された車両特性を取得する。その後、車両管制装置1は、前述の処理P106を実行することができる。
【0069】
以下、本実施形態の車両管制装置1の作用を説明する。
【0070】
本実施形態の車両管制装置1は、車両2に搭載された車両制御装置21による車両2の自動運転を管制する装置である。車両管制装置1は、車両制御装置21と通信可能に接続される通信部11と、その通信部11を介して車両制御装置21から自動運転の制御指令値と車両2の走行軌跡とを取得して自動運転に用いられる車両特性を同定する車両特性同定部12と、を備える。また、車両管制装置1は、車両特性同定部12による車両特性の同定精度を推定する同定精度推定部13と、その同定精度推定部13によって推定された同定精度に基づいて車両2の自動運転を管制する自動運転管制部14と、を備える。
【0071】
このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、車両2の目標経路に対する追従精度を向上させることができ、オンデマンド交通やラストワンマイルモビリティにおける車両2の運用稼働率を向上させることができる。すなわち、車両制御装置21による車両2の自動運転に使用されるパラメータである車両特性を随時更新することができ、経時的な車両特性の変動を車両2の自動運転に反映させることができる。換言すると、車両2の制御において、フィードバック項よりもフィードフォワード項が更新されることで、車両2の自動運転時の目標経路に対する追従精度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の車両管制装置1によれば、車両2の車両特性を同定してその同定精度を推定することで、車両2に搭載された車両センサ24による位置検出精度の低下や経時的な車両特性の変化による追従精度の低下を検知することができる。そのため、本実施形態の車両管制装置1は、たとえば、モビリティサービスの利用者によるサービスの要求があった場合に、待機エリアWAに待機している複数の車両2の中から、車両特性の同定精度がより高い車両2を選択して優先的に運行させることができる。これにより、モビリティサービスを提供する車両2による目標経路の追従精度が向上し、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の車両管制装置1によれば、モビリティサービスの利用者によるサービスの要求に応じた車両特性の同定精度を有する車両2を選択して運用させることができる。より具体的には、たとえば、車両2によるモビリティサービスが提供されるモビリティエリアMAが、左側通行であるとする。この場合、サービスの要求に基づく目的地までの経路が直進と左折のみであれば、車両2に要求される目標経路の追従精度は、比較的に低くなる。一方、目的地までの経路が、狭路や右折を含む場合は、車両2に要求される目標経路の追従精度は、比較的に高くなる。このように、本実施形態の車両管制装置1によれば、要求される目標経路の追従精度に応じた車両特性の同定精度を有する車両2を選択して運用することで、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の車両管制装置1において、車両特性同定部12は、車両制御装置21の制御により所定の同定エリアIAを走行した車両2の車両特性を同定する。このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、同定エリアIAを車両制御装置21の制御による自動運転で走行する車両2に対して、直進、加速、減速、旋回、転回、右左折など、同定エリアIAの形状に応じた所望の動作をさせることが可能になる。したがって、本実施形態の車両管制装置1によれば、車両2の車両特性の同定精度を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態の車両管制装置1において、通信部11は、同定エリアIAに設置された外界センサESと通信可能に接続されている。また、車両特性同定部12は、通信部11を介して取得した外界センサESによる車両2の検出結果に基づいて、車両2の走行軌跡を算出する。このような構成により、車両管制装置1は、車両2に搭載された車両センサ24の位置検出精度に関わらず、同定エリアIAを走行する車両2の走行軌跡を正確に算出することが可能になる。
【0076】
本実施形態において、車両2に搭載された車両制御装置21は、その車両2に搭載された車載外界センサ23に接続されている。また、本実施形態の車両管制装置1において、車両特性同定部12は、同定エリアIAに設置された物体Dの車載外界センサ23による検知結果を車両制御装置21から通信部11を介して取得して、車載外界センサ23による物体検知機能を同定する。このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、車両2の車両特性として、車両2に搭載された車載外界センサ23の検知特性を同定することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の車両管制装置1において、車両特性同定部12は、通信部11を介して同定エリアIAにおける制御指令値を車両制御装置21へ送信して、車両制御装置21によって車両2を同定エリアIAで走行させる。このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、車両制御装置21へ送信した制御指令値と、同定エリアIAを走行する車両2の走行軌跡とに基づいて、車両2の車両特性を同定し、その同定精度を推定することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態において、車両2に搭載された車両制御装置21は、その車両2に搭載された車載外界センサ23に接続されている。そして、本実施形態の車両管制装置1において、車両特性同定部12は、車両制御装置21により、同定エリアIAに表示されて車載外界センサ23によって検出された参照経路RPに沿って車両2を走行させ、車両特性を同定する。
【0079】
このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、同定エリアIAに設置された外界センサESを使用することなく、車両制御装置21の制御指令値と、車両2の走行軌跡としての参照経路RPとに基づいて、車両2の車両特性を同定することができる。また、参照経路RPが直線および曲線を含むことで、車両2の前後方向および横方向の車両特性を同定することが可能になり、車両2の目標経路に対する追従精度を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の車両管制装置1において、自動運転管制部14は、同定精度推定部13によって推定された同定精度がしきい値よりも高い車両特性を、通信部11を介して車両制御装置21へ送信して、車両制御装置21に格納された車両特性を更新する。このような構成により、車両制御装置21の制御による車両2の自動運転において、目標経路の追従精度を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態の車両管制装置1において、自動運転管制部14は、同定精度推定部13によって推定された同定精度に応じて、車両制御装置21による自動運転の制限を設定する。このような構成により、本実施形態の車両管制装置1は、車両2の自動運転の安全性を向上させ、車両2の車両特性の同定精度に応じた最適な管制を行うことが可能になり、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態の車両管制装置1において、自動運転管制部14は、複数の車両2のうち、同定精度推定部13によって推定された同定精度がより高い車両を優先的に運行させる。このような構成により、本実施形態の車両管制装置1によれば、モビリティサービスを提供する車両2による目標経路の追従精度を向上させ、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態の車両管制装置1は、車両2の車両特性およびその同定精度を格納するデータベース15を備える。このような構成により、車両管制装置1は、データベース15に格納された車両2の車両特性およびその同定精度を利用することができ、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両2の目標経路に対する追従精度を向上させることが可能な車両管制装置1を提供することができ、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率を向上させることができる。なお、本実施形態の車両管制装置1は、前述の構成に限定されない。以下、図5を参照して、本実施形態の車両管制装置1の変形例を説明する。
【0085】
図5は、図1の車両管制装置1による図2の車両管制の変形例を示す模式的な平面図である。この変形例において、車両管制装置1の車両特性同定部12は、車両制御装置21の制御により同定エリアIAよりも広いメンテナンスエリアTAを走行した車両2の車両特性を同定する。ここで、メンテナンスエリアTAは、たとえば、同定エリアIAにおける車両2の旋回よりも大きな旋回半径の車両2の旋回や、車両2のスラローム走行などが可能な面積および形状を有している。
【0086】
車両管制装置1は、たとえば、同定エリアIAにおける車両2の車両特性の同定を車両2がモビリティエリアMAを走行する都度行うのに対し、メンテナンスエリアTAにおける車両2の車両特性の同定は、たとえば1カ月や数カ月などの所定の周期で行う。この変形例に係る車両管制装置1によれば、車両2の車両特性の同定をより網羅的に行うことができ、車両特性の同定精度を向上させることができる。
【0087】
したがって、この変形例に係る車両管制装置1によれば、モビリティサービスを提供する車両2による目標経路の追従精度をより向上させ、複数の車両2によって提供されるモビリティサービス全体の運用稼働率をより向上させることができる。
【0088】
[実施形態2]
以下、図6から図8を参照して、本開示に係る車両管制装置の実施形態2を説明する。図6は、本開示に係る車両管制装置の実施形態2を示すブロック図である。図7は、図6の車両管制装置1Aによる処理を説明する模式的な平面図である。
【0089】
前述の実施形態1では、オンデマンド交通やラストワンマイルモビリティに使用される車両2に搭載された車両制御装置21による車両2の自動運転を管制する車両管制装置1について説明した。これに対し、本実施形態では、たとえば、荷物の積み下ろしが発生する大型貨物自動車などの車両2Aの自動運転を管制する車両管制装置1Aについて説明する。なお、本実施形態において、前述の実施形態1の車両管制装置1、車両2、および同定エリアIAと同様の構成については、前述の実施形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
本実施形態の車両管制装置1Aは、たとえば、同定エリアIAに設置された外界センサESおよび重量センサWSを含む。車両管制装置1Aにおいて、通信部11、車両特性同定部12、同定精度推定部13、および自動運転管制部14は、前述の実施形態1の車両管制装置1と同様に、一以上のコンピュータ、サーバ、またはコンピュータシステムによって構成されている。外界センサESおよび重量センサWSは、通信部11、車両特性同定部12、同定精度推定部13、および自動運転管制部14に対して通信可能に接続されている。
【0091】
車両2Aは、たとえば、図7に示すように、トラックヤード、ディストリビューションセンター、倉庫などの積降エリアPAにおいて荷物の積み下ろしを行う。また、車両2Aは、積降エリアPAにおいて荷物の積み下ろしを行った後、その積降エリアPAからモビリティエリアMAの積降エリアまでの間に、車両制御装置21の制御による自動運転で同定エリアIAを走行する。
【0092】
図7に示す積降エリアPAから同定エリアIAへ進入した車両2Aは、重量センサWSの上で一時停止する。車両管制装置1Aは、重量センサWSによって車両2Aの重量を測定する。車両管制装置1Aは、たとえば、車両2Aの全体の重量だけでなく、車両2Aの各車輪に作用している荷重を測定してもよい。
【0093】
本実施形態の車両管制装置1Aは、同定エリアIAの重量センサWSによって測定した車両2Aの重量や各車輪に作用する荷重を、車両2Aの車両特性の同定に使用する。これにより、荷物の積み下ろしによって車両2Aの重量や各車輪に作用する荷重が変化した場合でも、車両2Aの車両特性を高精度に同定することができ、車両2Aの目標経路に対する追従精度を向上させることができる。
【0094】
その後、車両2Aは、同定エリアIAを走行し、車両管制装置1Aは、車両2Aの車両制御装置21から制御指令値を受信する。また、車両管制装置1Aの車両特性同定部12は、同定エリアIAに設置された外界センサESによる車両2Aの検知結果を受信して、車両2Aの走行軌跡を取得する。また、車両特性同定部12は、受信した制御指令値と取得した走行軌跡に基づいて、車両2Aの車両特性を同定する。
【0095】
また、車両管制装置1Aの同定精度推定部13は、前述の実施形態1と同様に、車両特性同定部12による車両特性の同定精度を推定する。また、車両管制装置1Aの自動運転管制部14は、同定精度推定部13によって推定された同定精度に基づいて、たとえば、車両2Aの走行経路を演算して、車両特性およびその同定精度とともに、車両制御装置21へ送信する。これにより、車両管制装置1Aは、車両2Aの自動運転を管制する。その後、車両2Aは、モビリティエリアMAにおいて自動運転を行って、モビリティエリアMAに存在する積降エリアへ移動する。
【0096】
以上のように、本実施形態の車両管制装置1Aにおいて、通信部11は、同定エリアIAに設置された重量センサWSと通信可能に接続されている。また、車両特性同定部12は、通信部11を介して取得した重量センサWSによる車両2Aの重量の検出結果に基づいて車両特性を同定する。
【0097】
本実施形態の車両管制装置1Aによれば、重量センサWSを用いて荷物の積み下ろし後の車両2Aの車両特性を同定することで、荷物の積み下ろしによって車両特性が変化する車両2Aの自動運転時の目標経路に対する追従精度を向上させることができる。これにより、モビリティエリアMAの積降エリアにおいて、車両2Aの停車位置や角度に誤差が生じるのを防止して、荷物の積み下ろしを効率よく行うことが可能になる。
【0098】
また、車両2Aが牽引自動車である場合、トレーラーに対する荷物の積み下ろしが行われている間に、同定エリアIAにトレーラーヘッドのみを走行させ、車両管制装置1Aの車両特性同定部12によって車両特性の同定を行ってもよい。トレーラーに対する荷物の積み下ろしの終了後は、トレーラーとトレーラーヘッドを連結して同定エリアIAを走行させ、車両管制装置1Aの車両特性同定部12によって同様に車両特性の同定を行うことができる。
【0099】
これにより、トレーラーヘッドのみの車両2Aの車両特性と、トレーラーヘッドとトレーラーを連結した状態の車両2Aの車両特性を個別に同定することが可能になる。したがって、車両2Aにおいて、トレーラーヘッドとトレーラーの車両特性を同時に同定した場合と比較して、車両特性の同定精度が向上し、車両2Aの自動運転時の目標経路に対する追従精度を向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態の車両管制装置1Aは、たとえば、モビリティエリアMAにおいて、車両2Aの荷物の積み下ろしが発生する都度、車両2Aの車両特性の同定とその同定精度の推定を行ってもよい。この場合の車両管制装置1Aと、車両2Aの車両制御装置21の処理を、図8を参照して説明する。図8は、図6の車両管制装置1Aと、車両2Aの車両制御装置21による処理の流れを示すフロー図である。
【0101】
車両管制装置1Aと、車両2Aの車両制御装置21は、それぞれ、図8に示す処理P1A,P2Aを開始する。車両2Aの車両制御装置21は、まず、荷物の積み下ろしが発生したか否かを判定する処理P201Aを実行する。車両2Aは、たとえば、車両制御装置21の制御による自動運転時に、既定の走行経路を走行し、既定の積降エリアで荷物の積み下ろしを行う。
【0102】
そのため、処理P201Aにおいて、車両2Aの車両制御装置21は、たとえば、車両2Aの位置情報に基づいて、積み下ろしの有無を判定することができる。この処理P201Aにおいて、車両2Aの車両制御装置21は、荷物の積み下ろしが発生していない(NO)と判定すると、図8に示す処理P2Aを終了し、荷物の積み下ろしが発生した(YES)と判定すると、車両特性を送信する処理P202Aを実行する。この処理202Aは、図3に示す実施形態1における処理P202と同様である。
【0103】
一方、車両管制装置1Aは、図8に示す処理P1Aを開始すると、まず、車両2Aの車両制御装置21から、車両特性を受信する処理P101Aを実行し、その後、車両特性の受信の有無を判定する処理P102Aを実行する。車両管制装置1Aは、処理P101Aで車両特性を受信できなかった場合、処理P102Aで受信なし(NO)と判定して、図8に示す処理P1Aを終了する。
【0104】
一方、車両管制装置1Aは、処理P101Aで車両特性を受信した場合、処理P102Aで受信あり(YES)と判定する。この場合、車両管制装置1Aと車両2Aの車両制御装置21は、それぞれ、時刻同期処理P103A,P203Aを実行する。これらの処理P103A,P203Aは、図3に示す実施形態1の処理P105,P206と同様の処理である。
【0105】
その後、車両2Aの車両制御装置21は、モビリティエリアMAにおける自動運転処理P204Aおよび自動運転情報の送信処理P205Aを実行し、車両2Aが所定距離の走行を行ったか否かを判定する処理P206Aを実行する。この処理P206Aにおいて、車両制御装置21は、所定の距離を走行していない(NO)と判定すると、前述の処理P204A,P205Aを繰り返す。
【0106】
一方、車両管制装置1Aは、車両2Aの車両制御装置21から送信された自動運転情報を周期的に受信する処理P104Aを実行する。この自動運転情報は、たとえば、車両制御装置21による車両2Aの自動運転の制御指令値や車両2Aの位置情報など、自動運転機能の出力結果を含む。車両管制装置1Aは、前述の処理P104において、自動運転情報が受信できなかった場合、所定の時間が経過したか否かを判定する処理P105Aを実行し、この処理P105Aにおいて所定の時間が経過していない(NO)と判定すると、前述の処理P104Aを繰り返す。
【0107】
また、車両管制装置1Aは、前述の処理P105Aにおいて、所定の時間が経過した(YES)と判定すると、図3に示す前述の実施形態1における処理P110,P111と同様の車両特性同定処理P106Aと同定精度推定処理P107Aを実行する。その後、車両管制装置1Aは、車両特性送信処理P108Aを実行し、前述の処理P106A,P107Aにおいて取得した車両2Aの車両特性およびその同定精度を、車両2Aの車両制御装置21へ送信する。
【0108】
車両2Aの車両制御装置21は、前述の処理P206Aにおいて、車両2Aが所定の距離を走行したこと(YES)を判定すると、車両管制装置1Aから送信された車両特性およびその同定精度を受信する処理P207Aを実行する。その後、車両2Aの車両制御装置21は、車両2Aが停止中であるか否かを判定する処理P208Aを実行し、車両2Aが走行中である(NO)と判定すると、車両2Aの自動運転を継続して、この処理P208Aを繰り返す。
【0109】
車両2Aの車両制御装置21は、車両2Aが一時停止して、この処理P208Aにおいて一時停止中である(YES)と判定すると、車両特性更新処理P209Aを実行する。この処理P209Aにおいて、車両制御装置21は、車両制御装置21のメモリまたは記憶装置25に格納されていた車両特性およびその同定精度を、前述の処理P207で受信した車両2Aの車両特性およびその同定精度に更新して格納する。
【0110】
このような構成により、車両2Aによる目標軌道の追従精度を向上させることができるだけでなく、自動運転による車両2Aの走行中に車両特性が変更されることによる車両2Aの挙動の変化を防止することができ、自動運転の安定性を向上させることができる。また、車両2Aによる目標軌道の追従精度が向上することで、車両管制装置1Aによる物流サービスの効率を向上させることができる。
【0111】
以上、図面を用いて本開示に係る車両管制装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0112】
1 車両管制装置、11 通信部、12 車両特性同定部、13 同定精度推定部、
14 自動運転管制部、15 データベース、2 車両、2A 車両、
21 車両制御装置、23 車載外界センサ、D 物体、ES 外界センサ、
IA 同定エリア、RP 参照経路、TA メンテナンスエリア、WS 重量センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8