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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】キャッピング装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021072965
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167268
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 直人
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-123038(JP,A)
【文献】特開2015-217593(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102317080(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口を有する吐出部の前記吐出口を密閉するキャップ部と、
前記キャップ部が設けられた土台と、
前記土台の前記キャップ部の設置面に設けられ、前記キャップ部を清掃するクリーニングローラを支持してガイドするガイドレールとを備え、
前記キャップ部の設置面における前記キャップ部の長さ方向に対して、前記キャップ部の設置面における前記ガイドレールの長さ方向が傾斜しているキャッピング装置。
【請求項2】
前記ガイドレールが、曲率を有する形状である請求項1記載のキャッピング装置。
【請求項3】
前記ガイドレールが、S字形状を有する請求項1または2記載のキャッピング装置。
【請求項4】
第1の液体を吐出する第1の吐出部の吐出口を密閉する第1のキャップ部と、
前記第1の液体とは異なる第2の液体を吐出する第2の吐出部の吐出口を密閉する第2のキャップ部と、
前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部が設けられた土台と、
前記土台の前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面に設けられ、前記第1のキャップ部を清掃するクリーニングローラを支持してガイドする第1のガイドレールと、
前記土台の前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面に設けられ、前記第2のキャップ部を清掃するクリーニングローラを支持してガイドする第2のガイドレールとを備え、
前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面における前記第1のキャップ部の長さ方向に対して、前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面における前記第1のガイドレールの長さ方向が傾斜するとともに、前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面における前記第2のキャップ部の長さ方向に対して、前記第1のキャップ部および前記第2のキャップ部の設置面における前記第2のガイドレールの長さ方向が傾斜し、
前記第1のキャップ部の両側に設けられた前記第1のガイドレールの間隔と、前記第2のキャップ部の両側に設けられた前記第2のガイドレールの間隔とが異なるキャッピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する吐出部の吐出口を密閉するキャップ部を有するキャッピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙およびフィルムなどの印刷媒体に対して、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1においては、インクジェットヘッドのインク吐出口を密閉するキャップ部を備えたインクジェット印刷装置が提案されている。
【0004】
インクジェット印刷装置のキャップ部は、印刷処理を行わない待機中などにおいて、インクジェットヘッドのインク吐出口を密閉することによって、インクジェットヘッドのインク吐出口の乾燥を防止し、インクの固化を防止する。また、キャップ部は、インクジェットヘッドのクリーニング動作時において、いわゆるパージによって吐出されたインクを受けて排出する役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-149461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したキャップ部に、固化したインクや埃などが付着した場合、密閉能力が低下したり、パージの際に受け付けたインクの排出が困難となるため、定期的な清掃が必要である。
【0007】
キャップ部の清掃方法として、たとえばスポンジからなるクリーニングローラに洗浄液を塗布し、そのクリーニングローラをキャップ部上に沿って移動および回転させることによって、清掃する方法がある。
【0008】
しかしながら、このようなクリーニングローラを用いた清掃方法においては、クリーニングローラに過剰な洗浄液が塗布された場合、クリーニングローラに塗布された洗浄液が周辺に飛散し、汚してしまう問題がある。
【0009】
本発明は、クリーニングローラからの洗浄液の飛散を防止することができるキャッピング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャッピング装置は、液体を吐出する吐出口を有する吐出部の吐出口を密閉するキャップ部と、キャップ部を清掃するクリーニングローラを支持してガイドし、キャップ部の長さ方向に対して傾きを有するガイドレールとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキャッピング装置によれば、キャップ部を清掃するクリーニングローラを支持してガイドし、キャップ部の長さ方向に対して傾きを有するガイドレールを備えるようにしたので、上述したガイドレールに沿ってクリーニングローラを移動および回転させることによって、キャップ部からクリーニングローラに対して力を作用させることができ、これによりクリーニングローラを絞ることができる。したがって、クリーニングローラに過剰に塗布された洗浄液を下に落とすことができるので、クリーニングローラからの洗浄液の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のキャッピング装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2図1に示すインクジェット印刷装置を矢印A方向から見た図
図3】ヘッドユニットの一例の概略構成を示す図
図4】キャッピングユニットの概略構成を示す斜視図
図5図4に示すキャッピングユニットの上面図
図6】キャップ部の一例の概略構成を示す図
図7】クリーニングローラの一例を示す図
図8図4に示すキャッピングユニットを前側から見た図
図9】クリーニングローラの移動経路を説明するための図
図10】ガイドレールのその他の形状の例を示す図
図11】インクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明のキャッピング装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、本発明のキャッピング装置に相当するキャッピングユニットの構成に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。また、図2は、図1に示すインクジェット印刷装置1を矢印A方向から見た図である。なお、以下に示す実施形態の説明では、図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1における上下左右前後方向とする。
【0014】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、基台2と、脚台3と、プラテン4と、レール部5と、ヘッドユニット10と、キャッピングユニット20とを備えている。
【0015】
基台2は、前後方向に延設された柱状部材であって、左右方向に間隔を空けて平行に配置されている。2本の基台2の底面には、それぞれ2つの車輪2aが設けられている。
【0016】
各基台2上には、それぞれ脚台3が立設されている。そして、互いに向かい合う2つの脚台3の上面に、プラテン4が支承されている。
【0017】
プラテン4の前後には、弧状に形成された前方用紙ガイド4aおよび後方用紙ガイド4bが延設されている。また、プラテン4の下部には、図2に示すように、ファン4dが設置されたバキューム室4cが設けられている。なお、図1においては、バキューム室4cは図示省略している。
【0018】
バキューム室4cのファン4dが回転することによってバキューム室4c内が負圧となり、プラテン4に形成された吸引孔(図示省略)に吸引力が発生する。プラテン4の吸引孔に発生した吸引力によって、プラテン4上に印刷用紙Pが吸着する。
【0019】
また、プラテン4の後方には、図2に示すように、駆動ローラ6および加圧ローラ7が対向して設けられている。なお、図1においては、駆動ローラ6および加圧ローラ7は図示省略している。
【0020】
駆動ローラ6は、プラテン4の延伸方向に延設された長尺状のローラであって、後述する搬送駆動モータ61(図11参照)によって回転する。
【0021】
加圧ローラ7は、駆動ローラ6と同様に、プラテン4の延伸方向に延設された長尺状のローラであって、図示省略した昇降機構によって昇降可能に支持されている。
【0022】
そして、後方用紙ガイド4b上の印刷用紙Pが、駆動ローラ6と加圧ローラ7によって挟持され、加圧ローラ7によって印刷用紙Pが押圧された状態で駆動ローラ6が回転することによって、印刷用紙Pが前方に送り出される。
【0023】
インクジェット印刷装置1の基台2の前側には、印刷用紙Pを巻き取る芯体8aを着脱可能に保持する巻き取り側芯体保持部8が設けられている。巻き取り側芯体保持部8は、トルクリミッタ(図示省略)を介して巻き取り駆動モータ81(図11参照)に連係しており、巻き取り駆動モータ81によって巻き取り側芯体保持部8が回転するよう構成されている。
【0024】
また、インクジェット印刷装置1の基台2の後ろ側には、印刷用紙Pがロール状に巻かれたロール紙の芯体9aを着脱可能に保持する供給側芯体保持部9が設けられている。供給側芯体保持部9は、トルクリミッタ(図示省略)を介して供給駆動モータ91(図11参照)に連係しており、供給駆動モータ91によって供給側芯体保持部9が回転するよう構成されている。
【0025】
そして、図2に示すように、供給側芯体保持部9に保持されたロール紙(印刷用紙P)が引き出され、後方用紙ガイド4b、駆動ローラ6と加圧ローラ7との間、プラテン4上、前方用紙ガイド4aを経由して、巻き取り側芯体保持部8に保持された芯体8aに巻き取られるように構成されている。
【0026】
2つの脚台3の上部には、図示省略した支持部材を介してレール部5が架設されている。レール部5は、左右方向に延設されたレール(図示省略)とレール上においてヘッドユニット10を左右方向に往復移動させる主走査駆動モータ54(図11参照)を備えている。
【0027】
また、レール部5の一方の端部には、キャッピングユニット20が設けられている。ヘッドユニット10が、キャッピングユニット20内に配置されることによって、キャッピングユニット20によるキャッピングが行われる。なお、本実施形態においては、キャッピングユニット20が、本発明のキャッピング装置に相当する構成を含む。
【0028】
図3は、ヘッドユニット10の概略構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態のヘッドユニット10は、第1のヘッド11~第5のヘッド15までの5つのヘッドが設けられている。第2のヘッド12、第3のヘッド13および第4のヘッド14は、それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドであり、たとえばC(シアン)、M(マゼンタ)およびY(イエロー)のインクを吐出する。
【0029】
第5のヘッド15は、第2のヘッド12~第4のヘッド14と同様の構成であるが、吐出する液体がインクではなく、前処理液を吐出する。前処理液とは、印刷用紙Pに対してインクを吐出して印刷処理を行う前に、前処理のための塗布される液体である。前処理液としては、たとえばインクの発色性や均一塗布性を向上させるための液体が用いられるが、既に公知な前処理液を用いることができる。
【0030】
第1のヘッド11は、第2~第4のヘッド12~14と同様にインクを吐出するインクジェットヘッドである。たとえば黒の下地の上に模様を印刷する場合に、下地の黒色が透けないように第1のヘッド11は、黒の下地の上に白のインクを吐出する。
【0031】
第1~第5のヘッド11~15は、図3に示すように、ヘッドユニット10の移動方向(左右方向)に並べて配列されるものであるが、第1のヘッド11と第2~第4のヘッド12~14はスタガ配列され、また、第5のヘッド15と第2~第4のヘッド12~14もスタガ配列される。
【0032】
すなわち、第2~第4のヘッド12~14と、第1および第5のヘッド11,15は、ヘッドユニット10の移動方向に直交する方向(前後方向)について異なる位置に配置されている。そして、第1のヘッド11と第5のヘッド15が、ヘッドユニット10の移動方向に直交する方向(前後方向)について同じ位置に配置されている。また、第2~第4のヘッド12~14が、ヘッドユニット10の移動方向に直交する方向(前後方向)について同じ位置に配置されている。
【0033】
次に、本実施形態のキャッピングユニット20について説明する。図4は、本実施形態のキャッピングユニット20の概略構成を示す斜視図である。図5は、図4に示すキャッピングユニット20の上面図である。
【0034】
キャッピングユニット20は、インクジェット印刷装置1が印刷処理を行わない待機中において、第1~第5のヘッド11~15の吐出面(吐出口)の乾燥を防ぐため、第1~第5のヘッド11~15の吐出面(吐出口)を密閉する。第1~第5のヘッド11~15の吐出面とは、インクまたは前処理液を吐出するノズルの吐出口が配列された面である。
【0035】
キャッピングユニット20は、具体的には、第1~第5のキャップ部21~25を備えている。
【0036】
第1~第5のキャップ部21~25は、第1~第5のヘッド11~15に対応するキャップ部であり、筐体20a上に、第1~第5のヘッド11~15に対応する位置に設けられている。
【0037】
図6は、第1のキャップ部21の構成を示す図であるが、第2~第5のキャップ部22~25についても、その構成および機能は第1のキャップ部21と同様である。
【0038】
第1のキャップ部21は、図6に示すように、土台21aと、土台21a上に形成されたキャッピング部材21bとを備えている。キャッピング部材21bは、底部21cと、底部21cの周縁に立設された周壁21dとを備えている。底部21cには、2つの排出孔21eが形成されている。
【0039】
キャッピング部材21bの前後方向の長さは、第1のヘッド11の前後方向の長さと同等の長さである。そして、キャッピング部材21bの周壁21dは、たとえばゴムなどの樹脂から形成されており、第1のヘッド11に当接して密着することによって、第1のヘッド11の吐出面を密閉する。
【0040】
また、第1のヘッド11のパージが行われた場合には、第1のヘッド11から吐出された液体が、キャッピング部材21bによって受け付けられ、底部21cに形成された排出孔21eから排出される。
【0041】
そして、筐体20a内には排出経路および吸引ポンプなどが設けられており、第1~第5のキャップ部21~25に排出されたインクまたは前処理液が、吸引ポンプによって吸引され、排出経路を経由して図示省略した廃液タンクに排出される。
【0042】
ここで、上述したように第1~第5のキャップ部21~25に、固化したインクや埃などが付着した場合、密閉能力が低下したり、排出孔21eからのインクなどの排出が困難となるため、定期的な清掃が必要である。
【0043】
そこで、本実施形態においては、ユーザが、図7Aに示すようなクリーニングローラ30と、図7Bに示すようなクリーニングローラ31を用いて、第1~第5のキャップ部21~25の清掃を行う。具体的には、インクを吐出する第1~第4のヘッド11~14に対応する第1~第4のキャップ部21~24を清掃する道具としてクリーニングローラ30を用い、前処理液を吐出する第5のヘッド15に対応する第5のキャップ部25を清掃する道具としてクリーニングローラ31を用いる。
【0044】
クリーニングローラ30は、図7Aに示すように、円筒形状のスポンジから形成され、その中心にローラ軸Asが配置されたスポンジ部30aと、スポンジ部30aのローラ軸Asに接続された把手部30bとを備えている。また、クリーニングローラ31は、図7Bに示すように、円筒形状のスポンジから形成され、その中心にローラ軸Asが配置されたスポンジ部31aと、スポンジ部31aのローラ軸Asに接続された把手部31bとを備えている。
【0045】
クリーニングローラ30とクリーニングローラ31は、図7Aおよび図7Bに示すように、そのローラ軸方向の長さが異なり、クリーニングローラ30は、4つの第1~第4のキャップ部21~24を一度に清掃可能な長さを有し、クリーニングローラ31は、1つの第5のキャップ部25を一度に清掃可能な長さを有する。このように、2種類のクリーニングローラ30,31を用いて清掃を行うことによって、インクと前処理液とが第1~第5のキャップ部21~25において混ざり、インクが固化してしまうのを防止することができる。
【0046】
そして、本実施形態のキャッピングユニット20の筐体20a上には、上述したクリーニングローラ30,31をガイドするための第1~4のガイドレール26~29が設けられている。
【0047】
第1のガイドレール26と第2のガイドレール27は、図4および図5に示すように、第1~第4のキャップ部21~24の両側に設けられ、第1~第4のキャップ部21~24の長さ方向(前後方向)に延設されている。
【0048】
第1のガイドレール26および第2のガイドレール27は、前後方向に異なる位置に配置された第1のキャップ部21と第2~第4のキャップ部22~24の両方の前後方向の長さに亘ってS字形状で形成されている。具体的には、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27は、第1のキャップ部21の左右方向両側の範囲では、左側に凸を成すような曲率を有する曲線で形成され、第2~第4のキャップ部22~24の左右方向両側の範囲では、右側に凸を成すような曲率を有する曲線で形成されている。第1のガイドレール26および第2のガイドレール27は、上述したようにS字形状で形成されることによって、第1~第5のキャップ部21~25の長さ方向(前後方向)に対して傾きを有するように形成されている。本実施形態においては、第1~第5のキャップ部21~25の長さ方向は、第1~第5のヘッド11~15における印刷用紙Pの搬送方向に沿ったノズルの配列方向である。
【0049】
また、図8は、図4に示すキャッピングユニット20を前側から見た図である。図8に示すように、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27は、筐体20aの上面に対して垂直に立設される壁部Wと、その壁部Wの上端部に対して垂直に交わり、第1~第4のキャップ部21~24側に水平方向に延びる水平部Hとから形成されている。すなわち、第1のガイドレール26と第2のガイドレール27は、断面L字形状で形成されている。
【0050】
壁部Wは、第1~第4のキャップ部21~24の高さよりも高く形成されており、水平部Hと第1~第4のキャップ部21~24の上面との間に、クリーニングローラ30のローラ軸Asの端部E1,E2が挿入可能な高さで形成されている。また、水平部Hは、クリーニングローラ30のローラ軸Asの端部E1,E2の上下方向の移動を規制するのに十分な幅を有するが、第1~第4のキャップ部21~24と第1~第4のヘッド11~14との密着を妨げない幅で形成されている。
【0051】
このように、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27が、断面L字形状で形成されることによって、後で詳述するが、水平部Hによってクリーニングローラ30のローラ軸Asの上下方向の位置を規制することができるとともに、壁部Wの厚さを薄くすることができるので、狭いスペースでも第1のガイドレール26および第2のガイドレール27を設けることができる。
【0052】
そして、第1~第4のキャップ部21~24の清掃を行う際には、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27に対して、クリーニングローラ30の両端部が設置される。この際、図8に示すように、クリーニングローラ30のローラ軸Asの一端部E1が、第1のガイドレール26の水平部Hの下面側に配置されるとともに、他端部E2が、第2のガイドレール27の水平部Hの下面側に配置されることが好ましい。
【0053】
このようにクリーニングローラ30のローラ軸Asの両端部E1,E2を配置させることによって、クリーニングローラ30のローラ軸Asの位置を、第1および第2のガイドレール26,27によって規制することができる。これにより、クリーニングローラ30をより簡易に第1および第2のガイドレール26,27に沿って押し進めることができる。
【0054】
さらに、第1~第4のキャップ部21~24の清掃を行う際には、図9に示すように、クリーニングローラ30のローラ軸Asの延伸方向が、第1~第4のキャップ部21~24の長さ方向に直交する方向(左右方向)となるように設置され、ローラ軸Asの延伸方向をその状態で維持させつつ、クリーニングローラ30を移動および回転させる。
【0055】
これにより、クリーニングローラ30は、図9に示すように、ローラ軸Asの中心がS字形状を成すように、第1および第2のガイドレール26,27に沿って押し進められる。なお、クリーニングローラ30を前後方向に往復移動させてもよい。
【0056】
このようにクリーニングローラ30が押し進められることによって、第1~第4のキャップ部21~24におけるキャッピング部材21bの前後方向に延びる周壁21dが、クリーニングローラ30に対して押し付けられ、これによりクリーニングローラ30のスポンジ部30aに対して左右方向(第1~第4のキャップ部21~24の長さ方向に直交する方向)の力が作用する。この力の作用によってクリーニングローラ30のスポンジ部30aを絞ることができるので、クリーニングローラ30のスポンジ部30aに過剰に吸収された洗浄液を下に落とすことができ、周辺への飛び散りを防止することができる。
【0057】
また、クリーニングローラ30の移動および回転にともなって、第1~第4のキャップ部21~24とスポンジ部30aとの接触部分が変更されるので、第1~第4のキャップ部21~24をスポンジ部30aの綺麗な部分で払拭することができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27を、曲率を有する形状で形成するようにしたので、クリーニングローラ30を滑らかに移動させることができ、清掃作業をより素早く行うことができる。
【0059】
さらに、上記実施形態においては、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27を、S字形状で形成するようにしたので、前後方向の異なる位置にキャップ部が配置されている場合でも、クリーニングローラ30を滑らかに移動させることができ、清掃作業をより素早く行うことができる。
【0060】
なお、上記説明では、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27について説明したが、第3のガイドレール28および第4のガイドレール29についても、その形状および構造については同様である。ただし、第3のガイドレール28と第4のガイドレール29は、図7Bに示すクリーニングローラ31をガイドするものであるので、その間隔が、第1のガイドレール26と第2のガイドレール27との間隔よりも狭い。
【0061】
このように、第1のガイドレール26と第2のガイドレール27の間隔と、第3のガイドレール28と第4のガイドレール29の間隔とを異なる間隔とすることによって、第5のキャップ部25を清掃する際、誤って第1~第4のキャップ部21~24を清掃する際に用いられるクリーニングローラ30が用いられるのを防止することができる。また、逆に、第1~第4のキャップ部21~24を清掃する際、誤って第5のキャップ部25を清掃する際に用いられるクリーニングローラ31が用いられるのを防止することができる。これにより、第1~第5のキャップ部21~25においてインクと前処理液が混ざって固化するのを防止することができる。
【0062】
そして、第3のガイドレール28と第4のガイドレール29は、図4および図5に示すように、第5のキャップ部25の両側に設けられ、第5のキャップ部25の長さ方向(前後方向)に延設されている。
【0063】
第3のガイドレール28および第4のガイドレール29は、第1のガイドレール26および第2のガイドレール27と同じ長さで、S字形状で形成されている。そして、第3のガイドレール28および第4のガイドレール29は、第5のキャップ部25の両側の範囲では、左側に凸を成すような曲率を有する曲線で形成されている。第3のガイドレール28および第4のガイドレール29は、上述したようにS字形状で形成されることによって、第5のキャップ部25の長さ方向(前後方向)に対して傾きを有するように形成されている。
【0064】
また、図8に示すように、第3のガイドレール28および第4のガイドレール29も、断面L字形状で形成されている。
【0065】
そして、第5のキャップ部25の清掃を行う際には、第3のガイドレール28および第4のガイドレール29に対して、クリーニングローラ31の両端部E1,E2が設置される。この際も、クリーニングローラ31のローラ軸Asの一端部E1が、第3のガイドレール28の水平部Hの下面側に配置されるとともに、他端部E2が、第4のガイドレール29の水平部Hの下面側に配置されることが好ましい。
【0066】
そして、第1~第4のキャップ部21~24の清掃を行う場合と同様に、クリーニングローラ31のローラ軸Asの延伸方向が、第5のキャップ部25の長さ方向に直交する方向(左右方向)となるように設置され、ローラ軸Asの延伸方向をその状態で維持させつつ、クリーニングローラ31を移動および回転させる。
【0067】
これにより、クリーニングローラ31は、そのローラ軸Asの中心がS字形状を成すように、第3および第4のガイドレール28,29に沿って前後方向に押し進められる。なお、クリーニングローラ31を前後方向に往復移動させてもよい。
【0068】
このようにクリーニングローラ31が押し進められることによって、第5のキャップ部25によってクリーニングローラ31のスポンジ部31aに対して左右方向の力を作用させることができる。これにより、クリーニングローラ31のスポンジ部31aを絞ることができるので、クリーニングローラ31のスポンジ部31aに過剰に吸収された洗浄液を下に落とすことができ、周辺への飛び散りを防止することができる。
【0069】
また、クリーニングローラ31の移動および回転にともなって、第5のキャップ部25とスポンジ部31aとの接触部分が変更されるので、第5のキャップ部25をスポンジ部31aの綺麗な部分で払拭することができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、第1~第4のガイドレール26~29をS字形状で形成するようにしたが、これに限らず、たとえば図10に示すようにV字形状で形成することによって、第1のキャップ部21~第5のキャップ部25の長さ方向に対して、第1~第4のガイドレール26~29が傾きを有するように形成してもよい。
【0071】
次に、図11は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の構成を示すブロック図である。インクジェット印刷装置1は、印刷制御装置16からの制御信号に応じて、図11に示す制御対象の各部を動作させる。なお、本実施形態においては、印刷制御装置16が、本発明の制御部に相当する。
【0072】
印刷制御装置16とインクジェット印刷装置1とは、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などの通信回線によって接続されており、互いに通信可能に構成されている。通信回線は、有線でも無線でもよい。
【0073】
印刷制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えたコンピュータから構成される。印刷制御装置16は、入力された印刷ジョブなどに基づいて、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された印刷制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって図11に示す各部を制御する。
【0074】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の印刷動作について説明する。なお、ここでは、第1のヘッド11は使用せず、第5のヘッド15から前処理液を吐出させて印刷用紙Pに塗布し、その後、第2~第4のヘッド12~14からインクを吐出させて前処理液が塗布された印刷用紙Pに印刷を施す場合について説明する。
【0075】
まず、図2に示すように、供給側芯体保持部9にロール紙が設置され、そのロール紙(印刷用紙P)が引き出され、後方用紙ガイド4b、駆動ローラ6と加圧ローラ7との間、プラテン4上、前方用紙ガイド4aを経由して、巻き取り側芯体保持部8に保持された芯体8aに巻き付けられる。
【0076】
そして、印刷制御装置16は、供給側芯体保持部9、巻き取り側芯体保持部8および駆動ローラ6を回転させることによって、印刷用紙Pを送り出し、印刷初期位置まで到達した時点で印刷用紙Pの送り出しを一旦停止する。
【0077】
次に、印刷制御装置16は、主走査駆動モータ54を動作させ、レール部5上においてヘッドユニット10を第1の方向(左右方向のいずれかの方向)に移動させる。そして、印刷制御装置16は、ヘッドユニット10の移動とともに、ヘッドユニット10の第5のヘッド15を動作させ、第1の走査ラインに前処理液を塗布する。なお、最初の第1の走査ラインの走査の際には、第2~第4のヘッド12~14からのインク吐出は行わない。
【0078】
次いで、印刷制御装置16は、第2~第4のヘッド12~14の直下に、前処理液を塗布した第1の走査ラインが配置されるように、印刷用紙Pを1走査ライン分だけ送り出す。
【0079】
そして、印刷制御装置16は、レール部5上においてヘッドユニット10を第1の方向とは逆の第2の方向に移動させ、その移動とともに、第2~第4のヘッド12~14からインクを吐出させ、第1の走査ラインに印刷を施す。また、印刷制御装置16は、第1の走査ラインに印刷を施すとともに、第5のヘッド15を動作させ、第1の走査ラインの次の第2の走査ラインに前処理液を塗布する。
【0080】
続いて、印刷制御装置16は、印刷用紙Pを1走査ライン分だけ送り出し、第2~第4のヘッド12~14の直下に第2の走査ラインを配置し、第5のヘッド15の直下に、第2の走査ラインの次の第3の走査ラインを配置させる。
【0081】
そして、印刷制御装置16は、レール部5上においてヘッドユニット10を第1の方向に移動させ、その移動とともに、第2~第4のヘッド12~14および第5のヘッド15を動作させることによって、第3の走査ラインに前処理液を塗布するとともに、第2の走査ラインに印刷を施す。
【0082】
以後、印刷制御装置16は、上記と同様に、1走査ライン分の印刷用紙Pの送り出しと、レール部5上におけるヘッドユニット10の第1の方向または第2の方向への移動とを交互に繰り返しながら、第n+1の走査ラインへの前処理液の塗布と第nの走査ラインへの印刷を順次行う。
【0083】
なお、上記説明では、第1のヘッド11を使用せず、第5のヘッド15によって前処理液を塗布する場合の動作について説明したが、第5のヘッド15を使用せず、第1のヘッド11を使用して下地を印刷するようにしてもよい。この場合の第1のヘッド11からのインク吐出タイミングについては、上述した説明における第5のヘッド15の吐出タイミングと同様である。
【0084】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0085】
本発明のキャッピング装置において、ガイドレールは、曲率を有する形状とすることが好ましい。
【0086】
本発明のキャッピング装置において、ガイドレールは、S字形状を有することが好ましい。
【0087】
本発明のキャッピング装置においては、第1の液体を吐出する第1の吐出部の吐出口を密閉する第1のキャップ部と、第1の液体とは異なる第2の液体を吐出する第2の吐出部の吐出口を密閉する第2のキャップ部とを備え、第1のキャップ部の両側に設けられた第1のガイドレールの間隔と、第2のキャップ部の両側に設けられた第2のガイドレールの間隔とは異なることが好ましい。
【符号の説明】
【0088】
1 インクジェット印刷装置
2 基台
2a 車輪
3 脚台
4 プラテン
4a 前方用紙ガイド
4b 後方用紙ガイド
4c バキューム室
4d ファン
5 レール部
6 駆動ローラ
7 加圧ローラ
8 巻き取り側芯体保持部
8a 芯体
9 供給側芯体保持部
9a 芯体
10 ヘッドユニット
11~15 第1~第5のヘッド
16 印刷制御装置
20 キャッピングユニット
20a 筐体
21~25 第1~第5のキャップ部
21a 土台
21b キャッピング部材
21c 底部
21d 周壁
21e 排出孔
26~29 第1~第4のガイドレール
30,31 クリーニングローラ
30a,31a スポンジ部
30b,31b 把手部
31 クリーニングローラ
54 主走査駆動モータ
61 搬送駆動モータ
81 巻き取り駆動モータ
91 供給駆動モータ
As ローラ軸
E1,E2 端部
H 水平部
P 印刷用紙
W 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11