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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ターゲット固定治具
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20250117BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
E01D22/00 B
G01B5/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021078662
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172649
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】萬田 亮太
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157378(JP,A)
【文献】特開平08-086654(JP,A)
【文献】特開2020-165829(JP,A)
【文献】特開平06-212873(JP,A)
【文献】米国特許第05461793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
G01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔の中心位置を計測するためのターゲットを孔に固定するターゲット固定治具であって、
棒材又は管材からなる枢軸シャフトと、この枢軸シャフトを板面に対して直交するように支持固定する軸固定プレートと、この軸固定プレートに取り付けられた前記ターゲットと、揺動することで先端が前記枢軸シャフトに対して均等に放射状に広がり又は閉じる複数のウィング部材と、これらの複数のウィング部材を互いに連動させて揺動するウィングリンク機構と、を備え、
前記ウィングリンク機構は、前記枢軸シャフトに装着されて回転自在なウィング可動ハンドルを有し、このウィング可動ハンドルの回転と連動して前記複数のウィング部材が揺動すること
を特徴とするターゲット固定治具。
【請求項2】
前記複数のウィング部材を広がる方向に付勢するバネ材と、このバネ材の一端が固定されて前記枢軸シャフトにラチェット機構を介して装着されたバネロックハンドルと、をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載のターゲット固定治具。
【請求項3】
前記ウィングリンク機構は、前記枢軸シャフトに複数装着されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のターゲット固定治具。
【請求項4】
前記複数のウィングリンク機構は、スペーサー部材を介して離間して前記枢軸シャフトに装着されていること
を特徴とする請求項3に記載のターゲット固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔の中心位置を計測するためのターゲットを孔に固定するターゲット固定治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旧規格の支承を新規格に適合したより大きな沓の支承に取り換えたり、水平変位を拘束する水平力分担構造を取り付けたり、落橋防止装置を後付けしたりするために、鋼製ブラケットで橋台などの橋梁の下部構造物の上面スペースを拡張することが行われている。この後付け鋼製ブラケットは、既設の鉄筋コンクリート製の下部構造物にアンカー孔を削孔して、あと施工アンカーで取り付けられる。このとき、既設の下部構造物の鉄筋の配筋位置が正確には分からないため、アンカー孔を削孔して鉄筋に当接した場合、それを避けて近接位置に再度削孔している。そして、最終的に削孔した孔の中心位置を計測して、そのアンカー孔に応じて鋼製ブラケットを工場で製作し、完成後、現地の橋台に取り付けることが行われている。
【0003】
このため、橋梁の下部構造物に削孔した孔の中心位置を正確に計測する必要があり、従来は、シート等に書き写して計測していた。しかし、平滑でないコンクリート構造物に対して、その鉛直な側面から書き写すことは、困難で手間がかかる上、ずれて正確に計測できない場合があるという問題があった。そこで、近年、所定の模様がマーキングされたターゲットをアンカー孔の中心位置に設置し、それをデジタルカメラ等で撮影し、撮影した画像をコンピュータ処理して計測することが行われるようになってきた。
【0004】
しかし、前述のように、コンクリート構造物の側面は、平滑面ではなく、特に経年劣化した下部構造物の鉛直面や傾斜面において、真円とは限らないアンカー孔の中心位置にターゲットを正確に設置することは困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するべく、特許文献1には、所定の長さを有する支持ロッド1と、この支持ロッド1上に離間して設けられた傘状に開脚アーム23を開く2以上の開脚装置2と、前記支持ロッド1の端部に設けられたターゲット板32から構成されたターゲット取付部材が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0021]、図面の図1図2等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のターゲット取付部材は、所定の長さを有する開脚アーム23を押し開いて固定するため、1つの開脚装置2だけで一定の孔の深さが必要であり、しかも間隔をあけて開脚装置2を複数設ける必要があった。このため、アンカー孔のような一定以上の深さがある孔には適用できるが、深さが浅い孔には適用できないという問題があった。また、アンカー孔の途中に鉄筋や骨材が突出している場合も、上手く固定できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載のターゲット取付部材は、開脚アーム23を開くように付勢するバネ部材25を保持している保持スリーブ4を外すと開脚アーム23が開く構成となっている。このため、ターゲット取付部材をアンカー孔に挿入するのが困難なだけでなく、やり直しや微調整の際には、ターゲット取付部材を孔から引き抜く必要があり、作業効率が悪いという問題もあった。
【0008】
その上、特許文献1に記載のターゲット取付部材は、複数の開脚装置2,2,2の各開脚装置2を個別に開く必要があるため、手間がかかるだけでなく、いずれかの開脚装置2の開きが不十分である場合、上手く固定できないという問題もあった。
【0009】
さらに、特許文献1に記載のターゲット取付部材は、非特許文献1にも記載の通り、その素材については全体的に金属製であることを念頭においており、しかも1つの孔に装着するのに、複数の開脚装置2が必要である。このため、鋼製ブラケットの取付に必要なアンカー孔を一度の撮影から計測しようとすると一人では運べない程の重量のターゲット取付部材が必要であり、その点でも作業効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-157378号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】”新技術情報提供システム”[online]、[2021年2月22日検索]、インターネット、<URL:https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=QS-180029%20>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、誰でも簡単に短時間で正確に装着でき、浅い孔にも装着が可能で、全体としてコンパクトなサイズで持ち運びが容易なターゲット固定治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のターゲット固定治具は、孔の中心位置を計測するためのターゲットを孔に固定するターゲット固定治具であって、棒材又は管材からなる枢軸シャフトと、この枢軸シャフトを板面に対して直交するように支持固定する軸固定プレートと、この軸固定プレートに取り付けられた前記ターゲットと、揺動することで先端が前記枢軸シャフトに対して均等に放射状に広がり又は閉じる複数のウィング部材と、これらの複数のウィング部材を互いに連動させて揺動するウィングリンク機構と、を備え、前記ウィングリンク機構は、前記枢軸シャフトに装着されて回転自在なウィング可動ハンドルを有し、このウィング可動ハンドルの回転と連動して前記複数のウィング部材が揺動することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載のターゲット固定治具は、請求項1に記載のターゲット固定治具において、前記複数のウィング部材を広がる方向に付勢するバネ材と、このバネ材の一端が固定されて前記枢軸シャフトにラチェット機構を介して装着されたバネロックハンドルと、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載のターゲット固定治具は、請求項1又は2に記載のターゲット固定治具において、前記ウィングリンク機構は、前記枢軸シャフトに複数装着されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載のターゲット固定治具は、請求項3に記載のターゲット固定治具において、前記複数のウィングリンク機構は、スペーサー部材を介して離間して前記枢軸シャフトに装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1~4に係る発明によれば、ウィング可動ハンドルの回転と連動して複数のウィング部材が揺動し、枢軸シャフトに対して無段階で均等に拡がり又は閉じるので、ウィング部材が開き切らないという事態が生じず、ウィング可動ハンドルを手動で回転するだけで誰でも簡単に短時間でターゲットを正確に孔の中心位置に装着することができる。また、ターゲット固定治具は、ウィング可動ハンドルの回転と連動する複数のウィング部材で固定するので、奥行きが短い治具となっており、浅い孔にも装着が可能で全体としてコンパクトなサイズとすることができる。このため、複数のターゲット固定治具を一人で沢山持ち運ぶことが容易であり、ブラケット等を取り付けるのに必要な複数孔分のターゲット固定治具を一人で一度に持ち運ぶことができる。
【0018】
特に、請求項2に係る発明によれば、ラチェット機構で適切に付勢されたバネの力でターゲット固定治具を孔に装着することができ、さらに容易に短時間でターゲットを正確に孔の中心位置に装着することができる。
【0019】
特に、請求項3及び4に係る発明によれば、複数個所でターゲット固定治具を孔に固定することができ、より安定してターゲットを孔に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るターゲット固定治具を示す斜視図である。
図2図2は、同上のターゲット固定治具を示す分解斜視図である。
図3図3は、同上のターゲット固定治具を示す側面図である。
図4図4は、同上のターゲット固定治具の構成を模式的に示す軸方向に沿って切断した模式断面図である。
図5図5は、同上のターゲット固定治具の軸固定プレートの正面プレートを示す正面図である。
図6図6は、同上の軸固定プレートのラチェットプレートを示す正面図である。
図7図7(a)は、同上のターゲット固定治具の操作ハンドル部のバネロックハンドルを示す正面図であり、図7(b)は、同バネロックハンドルの掛止め片を示す正面図である。
図8図8は、同上の操作ハンドル部のウィング可動ハンドルを示す正面図である。
図9図9(a)は、第1のウィング部材を示す正面図であり、図9(b)は、第2のウィング部材を示す正面図であり、図9(c)は、第1のウィング部材と第2のウィング部材を連結した状態を示す正面図である。
図10図10は、同上のウィング部材の揺動動作を示す図であり、(a)が32mmの直径の孔に合わせてウィング部材が広がった状態を示し、(b)が45mmの直径の孔に合わせた状態を示し、(c)が62mmの直径の孔に合わせた状態を示す。
図11図11は、同上のウィング部材を開いた状態を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るターゲット固定治具を示す側面図である。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係るターゲット固定治具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るターゲット固定治具について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1図11を用いて、本発明の第1実施形態に係るターゲット固定治具1について説明する。ターゲット固定治具1は、橋台などのコンクリート構造物に削孔された円形の孔にターゲット固定治具1を固定してデジタルカメラで撮影してコンピュータ処理により削孔された孔の中心位置を計測するのに用いることを想定している。図1は、本発明の第1実施形態に係るターゲット固定治具1を示す斜視図であり、図2は、ターゲット固定治具1を示す側面図である。また、図3は、ターゲット固定治具1を示す分解斜視図であり、図4は、ターゲット固定治具1の構成を一部を省略して模式的に示す軸方向に沿って切断した模式断面図である。
【0023】
図1図4に示すように、ターゲット固定治具1は、棒材又は管材からなる枢軸シャフト2と、この枢軸シャフト2を板面に対して直交するように支持固定する軸固定プレート3と、枢軸シャフト2に装着されて、後述の複数のウィング部材6を互いに連動させて揺動するウィングリンク機構4など、から構成されている。
【0024】
(枢軸シャフト)
枢軸シャフト2は、鋼棒や鋼製パイプなどの金属製の棒材又は管材であり、軸芯が取り付ける孔の中心に設置され、回転動作や揺動動作の軸となる基本部材である。勿論、落下等の衝撃荷重に耐え得る耐久性及び強度を有していれば、樹脂製など金属製でない素材から構成することも可能である。
【0025】
図4に示すように、この枢軸シャフト2の長手方向の両端部には、アクリル樹脂(PMMA)などの樹脂からなるハット状のシャフトホルダー21,22がビス止めや接着などで固着されている。これらのシャフトホルダー21,22は、正面側(コンクリート構造物の表面側)のシャフトホルダー21も背面側のシャフトホルダー22のいずれも鍔状に枢軸シャフトから外側に張り出した部分が正面側となるように固着されている。
【0026】
(軸固定プレート)
軸固定プレート3は、図4に示すように、例えば、アクリル樹脂(PMMA)などの光線透過率が80%を超えるような透明な2枚の樹脂プレートからなり、シャフトホルダー21及び枢軸シャフト2の正面側の端面に回転不能に固着されている。軸固定プレート3は、孔の中心位置を計測するためのターゲット模様が表示されたターゲット表示Tを取り付けるためのプレートである。
【0027】
この軸固定プレート3は、図5に示す正面プレート31と、図6に示すラチェットプレート32と、から構成され、これらのプレート同士が図示しないボルトやリベットなどの連結部材で機械的に接合されている。勿論、これらのプレート同士は、接着剤や熱溶着などで接合されていても構わない。図5は、軸固定プレート3の正面プレート31を示す正面図であり、図6は、軸固定プレート3のラチェットプレート32を示す正面図である。
【0028】
((正面プレート))
図5に示すように、正面プレート31は、円盤状のプレート本体310と、そのプレート本体310の円周外面から外側に張り出した指孔部311など、を有している。このプレート本体310には、軸固定プレート3とシャフトホルダー21とを連結するための連結部材のボルト頭を収容する4つのボルト孔312が穿設されている。また、プレート本体310には、レーザー光線によりマーキングされた十字線313が形成されている。この十字線313は、プレート本体310の円盤の中心点で交差する。
【0029】
指孔部311は、2つの指孔314,314が形成された部位であり、これらの2つの指孔314,314に指を挿入してターゲット固定治具1を保持するための部位である。また、この指孔部311には、正面プレート31とラチェットプレート32とを連結する連結部材を挿通する2つの連結孔315が形成されている。
【0030】
また、この正面プレート31の表面には、図1に示すように、ターゲット表示Tが貼着されている。但し、このターゲット表示Tは、正面プレート31と後述のラチェットプレート32との間に介装されていても構わない。要するに、ターゲット表示Tが正面プレート31の正面側から視認又は撮影可能に取り付けられていればよい。また、正面プレート31には、十字線313が形成されているので、ターゲット表示Tの中心をターゲット固定治具1の枢軸シャフト2の軸芯に正確に装着することができる。
【0031】
なお、ターゲット表示Tには、図1に示すように、デジタルカメラで撮影された撮影データをコンピュータで画像処理することにより、ターゲットの中心位置を自動で計測するためのRAD (Ringed Automatically Detected)ターゲットと呼ばれる円形状のマークが印刷されている。また、これらのターゲット表示Tは、複数のターゲット表示Tを一度に撮影して、自動でナンバリングできるように、部分的に全て異なるマークとなっている。勿論、ターゲットは、撮影データからコンピュータの画像処理で自動に中心位置を計測できるものであれば、RADターゲットに限られないことは言うまでもない。
【0032】
((ラチェットプレート))
図6に示すように、ラチェットプレート32は、概略が円盤状のプレート本体320と、そのプレート本体320の円周外面から外側に張り出した指孔部321など、を有している。このプレート本体320には、プレート本体320の外縁に沿って鋸状の鋸歯322が形成されている。この鋸歯322は、後述の爪片とともにバネ材(コイルスプリング40)でウィング部材を開く方向に段階的に付勢するラチェット機構を構成する(図1参照)。
【0033】
また、プレート本体320には、軸固定プレート3とシャフトホルダー21とを連結するための連結部材のボルトを挿通する4つのボルト孔323が穿設されている。
【0034】
指孔部321は、前述の正面プレート31の指孔部311と一体となり機能する部位であり、2つの指孔324,324が形成され、これらの2つの指孔324,324に指を挿入してターゲット固定治具1を保持するための部位である。また、この指孔部321には、ラチェットプレート32と正面プレート31とを連結する連結部材を挿通する2つの連結孔325が穿設されている。
【0035】
(ウィングリンク機構)
ウィングリンク機構4は、図1に示すように、軸固定プレート3の背面側の枢軸シャフト2に軸着されて回転自在な操作ハンドル部5を有し、この操作ハンドル部5の回転操作と連動して複数のウィング部材6,6が揺動して放射状に広がり又は閉じるように動作する機構である。
【0036】
(操作ハンドル部)
操作ハンドル部5は、アクリル樹脂(PMMA)などの樹脂からなり、図7に示すバネロックハンドル51と、図8に示すウィング可動ハンドル52など、から主に構成されている。これらのバネロックハンドル51及びウィング可動ハンドル52は、シャフトホルダー21に外嵌されて回転自在となっており(図4参照)、操作ハンドル部5の手動による回転操作に連動して複数のウィング部材6,6を揺動する機能を有している。図7(a)は、操作ハンドル部5のバネロックハンドル51を示す正面図であり、図7(b)は、掛止め片512を示す正面図である。また、図8は、操作ハンドル部5のウィング可動ハンドル52を示す正面図である。
【0037】
((バネロックハンドル))
図7に示すように、バネロックハンドル51は、軸固定プレート3の円盤部分(プレート本体310,プレート本体320)と略同径の円盤状の円盤部510と、この円盤部510の外縁から外側に突出して回転動作のハンドル(取っ手)となるハンドル部511など、が形成されている。図7(b)に示すように、このバネロックハンドル51には、ラチェットプレート32の鋸歯322とともに、ラチェット機構を構成する掛止め片512が取り付けられている。また、図7(a)に示すように、円盤部510の中央には、シャフトホルダー21に嵌め込むためのシャフト孔513が形成されている。
【0038】
そして、円盤部510には、ウィング部材6を広がる方向に付勢するバネ材であるコイルスプリング40の一端を掛け止める直線状に延びた掛止め孔514が形成されている。なお、このコイルスプリング40の他端は、シャフトホルダー21等に固定されている(図4参照)。
【0039】
さらに、円盤部510には、円弧状の3つのボルト孔515が形成されている。これらのボルト孔515は、図4に示すように、枢軸シャフト2に嵌着された他部材にウィング可動ハンドル52を連結して枢軸シャフト2の周りに固定するためのボルト頭を収容する孔である。これらの3つのボルト孔515は、枢軸シャフト2を中心に回転自在とするために枢軸シャフト2の軸芯を中心とする所定半径の曲率の円弧状の孔となっている。なお、バネロックハンドル51は、シャフトホルダー21に外嵌されるとともに、ラチェットプレート32とウィング可動ハンドル52との間に介装されることで、枢軸シャフト2を中心に回転自在となっている。
【0040】
なお、掛止め片512は、円盤部510に形成された掛止め孔516と掛止め片512に形成されたボルト孔518に連結部材であるボルトが挿通されることで、円盤部510にボルト接合されている。
【0041】
また、ハンドル部511には、指孔517が形成されており、この指孔517は、指孔517に指を差し込んでバネロックハンドル51を回転させるのに用いられる。
【0042】
掛止め片512には、爪部519が形成され、この爪部519の先端でラチェットプレート32の鋸歯322に掛け止めることにより、バネロックハンドル51を回転不能とする。バネロックハンドル51は、ウィング可動ハンドル52に対する相対的な回転角度の違いにより、掛止め孔514で一端を掛け止めたコイルスプリング40を巻き上げて、その復元力でウィング部材6を広がる方向に付勢する。
【0043】
((ウィング可動ハンドル))
図8に示すように、ウィング可動ハンドル52は、軸固定プレート3の円盤部分(プレート本体310,プレート本体320)と略同径の円盤状の円盤部520と、この円盤部520の外縁から外側に突出して回転動作のハンドル(取っ手)となるハンドル部521など、が形成されている。また、円盤部520の中央には、シャフトホルダー21に嵌め込むためのシャフト孔522が穿設されている。
【0044】
また、この円盤部520には、前述のコイルスプリング40を挿通した状態で、ウィング可動ハンドル52が回転可能なように円弧状のバネ挿通孔523が形成されている。
【0045】
そして、この円盤部520には、他部材を介して枢軸シャフト2に固着するための3つのボルト孔524が形成されている。枢軸シャフト2に固着することにより、手動によるウィング可動ハンドル52の回転で、枢軸シャフト2を回転することが可能となっている。
【0046】
また、ハンドル部521には、指孔525が形成されており、前述の指孔517と同様に、この指孔525は、指孔525に指を差し込んでウィング可動ハンドル52を回転させるのに用いられる。
【0047】
((ウィング部材))
次に、図4図9図11を用いて、ターゲット固定治具1のウィングリンク機構4の各ウィング部材6について説明する。図9(a)は、第1のウィング部材61を示す正面図であり、図9(b)は、第2のウィング部材62を示す正面図であり、図9(c)は、これらの第1のウィング部材61と第2のウィング部材62を連結した状態を示す正面図である。また、図10は、ウィング部材6の揺動動作を示す図であり、(a)が32mmの直径の孔に合わせてウィング部材6が広がった状態を示し、(b)が45mmの直径の孔に合わせ広がった状態を示し、(c)が62mmの直径の孔に合わせ広がった状態を示す。なお、図11は、ターゲット固定治具1のウィング部材6を開いた状態を示す斜視図である。
【0048】
図4に示すように、ウィング部材6は、連結部材を除きアクリル樹脂(PMMA)などの樹脂からなり、略同構成からなる第1のウィング部材61と第2のウィング部材62の一対の部材から構成されている。そして、図9(a),図9(b)に示すように、これらの第1のウィング部材61と第2のウィング部材62は、枢軸シャフト2に外嵌されるリング部610,620と、このリング部610,620から放射状に延びる円弧状の3つの腕部612,622と、これらの腕部612,622の先端に連結された空豆状の3つの先端部613,623と、を備えている。これらのリング部610,620、腕部612,622、先端部613,623は、互いにリベットなどの連結部材で揺動自在に連結されている。
【0049】
また、リング部610,620には、3つの腕部612,622の基端部と対応する位置に3つの爪部611,621が形成されている。
【0050】
第1のウィング部材61と第2のウィング部材62は、略同構成であるが、図9(a),図9(b)に示すように、腕部612と先端部613が、先端に行くにしたがって右に曲がるのに対し、腕部622と先端部623は、先端に行くにしたがって左に曲がるように曲がる方向が正面視で反対となっている。
【0051】
また、第1のウィング部材61のリング部610は、枢軸シャフト2に固着されて枢軸シャフト2の回転と供回りして回転するのに対し、第2のウィング部材62のリング部620は、枢軸シャフト2に固着されておらず回転しない。
【0052】
一方、第1のウィング部材61と第2のウィング部材62は、連結リベット614で腕部612,622の先端部同士が連結されている。このため、ウィング可動ハンドル52の回転操作により枢軸シャフト2が回転すると、第1のウィング部材61のリング部610は回転するが第2のウィング部材62のリング部610は回転しないこととなり、これらのリング部610,リング部620の回転角度の差が生じる。
【0053】
これにより、図9(c)に示すように、リング部610に連結されて移動する腕部612の基端部と移動しない腕部622の基端部に位置の差(距離)が生じる。よって、連結リベット614で腕部612,622の先端部同士が連結されていることにより、腕部612,622が揺動して起き上がり、各先端部613,623が枢軸シャフト2から離れて放射状に広がる構成となっている。
【0054】
このように、各ウィング部材6は、腕部612,622と先端部613,623とからなるウィング63が、ウィング可動ハンドル52の回転操作に連動して放射状に起き上って広がり、又は反対に倒れて閉じる揺動動作を徐々に無段階で行うことができる(図9(c)参照)。例えば、図10に示すように、32mmの直径の孔h1に装着する場合は、図10(a)の状態となり、45mmの直径の孔h2に装着する場合は、図10(b)の状態となり、62mmの直径の孔h3に装着する場合は、図10(c)の状態となる。
【0055】
つまり、図1の矢印方向に、操作ハンドル部5のバネロックハンドル51及びウィング可動ハンドル52を回転すると、各ウィング63が起き上って放射状に広がり、孔(h1~h3)の内周壁に各ウィング63が当接し、ウィング可動ハンドル52及び枢軸シャフト2が矢印方向に回転不能となる。その後、さらにバネロックハンドル51を図1の矢印方向に回転すると、前述のように、掛止め孔514で一端を掛け止めたコイルスプリング40を巻き上げて、その復元力でウィング部材6を広がる方向に付勢する。そして、ラチェット機構の掛止め片512で鋸歯322に掛け止めることにより、バネロックハンドル51がコイルスプリング40の復元力で矢印反対方向に戻ることを防いでコイルスプリング40の付勢力を保持する。このため、ターゲット固定治具1は、誰でも簡単に短時間でターゲットを正確に孔の中心位置に装着することができる。
【0056】
以上のように、ターゲット固定治具1は、一つのターゲット固定治具1で様々な径の孔に対応することができ、常時ストックするターゲット固定治具1の種類を低減することにより、アンカー孔などの孔の中心位置の計測作業のコストダウンを達成することができる。本実施形態に係るターゲット固定治具1は、一般的なアンカー孔として想定される32mm~62mmの径の孔全てに対応可能となっている。勿論、ターゲット固定治具1自体の大きさを変えれば、62mmを超えるような大口径の孔にも32mm未満の小口径の孔にも対応することは可能である。
【0057】
また、ターゲット固定治具1は、各ウィング63が放射状に均等に起き上って広がる揺動動作を徐々に無段階で行うことができるので、特許文献1のターゲット取付部材の開脚装置のように開き切らないという事態が生じない。このため、ターゲット固定治具1は、ターゲット固定治具1を装着する孔の内周面に部分的に骨材や鉄筋が突出している場合でも確実に孔の中心位置にターゲット表示Tの中心を一致させて固定することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るターゲット固定治具1は、図1図2に示すように、枢軸シャフト2の軸方向に間隔をあけて、ウィング部材6を2セット備えている。このため、ターゲット固定治具1は、ウィング部材6で孔の内周面に間隔をあけて2カ所で支持・固定することができる。よって、ターゲット固定治具1は、1カ所で支持・固定するより安定的に固定することができる。
【0059】
(スペーサー部材)
なお、図1図2に示すように、本実施形態に係るターゲット固定治具1には、2セットのウィング部材6と操作ハンドル部5との間に、アクリル樹脂(PMMA)などの樹脂からなるスペーサー部材7が介装されている。このスペーサー部材7は、枢軸シャフト2を挿通するシャフト孔70が形成されており、枢軸シャフト2の回転を阻害せずに、ウィング部材6と操作ハンドル部5との間に介装されることで孔にターゲット固定治具1を支持固定するウィング部材6をコンクリート構造物の表面からより奥側に配置するスペースを確保する機能を有している。
【0060】
このため、ターゲット固定治具1は、孔に固定・支持するウィング部材6を、孔が削孔されているコンクリート構造物の表面から離れた孔の奥に配置することが可能となる。よって、劣化のおそれが高いコンクリートのかぶり部分より奥で固定することが可能となり、より安定してターゲット固定治具1を孔に固定することが可能となる。
【0061】
以上説明した本発明の第1実施形態に係るターゲット固定治具1によれば、操作ハンドル部5のウィング可動ハンドル52の回転と連動して複数のウィング部材6が揺動し、枢軸シャフト2に対して無段階で均等に拡がり又は閉じるので、ウィング部材6が開き切らないという事態が生じない。このため、ウィング可動ハンドル52を手動で回転するだけで誰でも簡単に短時間でターゲット表示Tを正確に孔の中心位置に装着して固定することができる。
【0062】
また、ターゲット固定治具1によれば、操作ハンドル部5の回転と連動するウィングリンク機構4で固定するので、特許文献1のターゲット取付治具と比べて、奥行きが短い治具となっており、浅い孔にも装着が可能で全体としてコンパクトなサイズとすることができる。このため、複数のターゲット固定治具1を一人で沢山持ち運ぶことが容易であり、ブラケット等を取り付けるのに必要な複数孔分のターゲット固定治具1を一人で一度に持ち運ぶことができる。
【0063】
その上、ターゲット固定治具1によれば、バネロックハンドル51を回転させる極めて簡単な操作だけでコイルスプリング40のバネの力で適切に付勢してターゲット固定治具1を孔に装着することができる。このため、ターゲット固定治具1によれば、容易に短時間でターゲット表示Tを正確に孔の中心位置に装着することができる。
【0064】
また、ターゲット固定治具1は、主要な部材が鋼材と比べて軽量な樹脂や軽金属から構成されているので、持ち運ぶことが容易であり、ブラケット等を取り付けるのに必要な複数孔分のターゲット固定治具1を一人で一度に持ち運ぶことができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図12を用いて、本発明の第2実施形態に係るターゲット固定治具1’について説明する。図12は、第2実施形態に係るターゲット固定治具1’を示す側面図である。前述の第1実施形態に係るターゲット固定治具1と相違する点は、主に、スペーサー部材7がウィング部材6と操作ハンドル部5との間に介装されているのではなく、2つのウィング部材6の間に介装されている点である。よって、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0066】
図12に示すように、第2実施形態に係るターゲット固定治具1’は、スペーサー部材7が2つのウィング部材6の間に介装されている。このため、ターゲット固定治具1’によれば、ターゲット固定治具1よりウィング部材6の一方がコンクリート構造物の表面側に配置されることとなる。しかし、その反面、2つのウィング部材6同士の間が、スペーサー部材7で離れることとなる。このため、ターゲット固定治具1の先端部である軸固定プレート3に何かが接触してターゲット固定治具1に回転モーメントが生じた場合でも、支持するウィング部材6同士の間隔が広がっているため、この回転モーメントによる反力が小さくなり、より安定して支持固定することができる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、図13を用いて、本発明の第3実施形態に係るターゲット固定治具1”について説明する。図13は、第3実施形態に係るターゲット固定治具1”を示す側面図である。前述の第1実施形態に係るターゲット固定治具1と相違する点は、主に、スペーサー部材7が装着されていない点である。よって、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図13に示すように、第3実施形態に係るターゲット固定治具1”は、スペーサー部材7が装着されていない。このため、前述の第1実施形態に係るターゲット固定治具1や第2実施形態に係るターゲット固定治具1’と比べて、枢軸シャフト2の軸方向に短いものとなっている。
【0069】
このため、ターゲット固定治具1”によれば、ターゲット固定治具1やターゲット固定治具1’と比べても、よりコンパクトで軽量なものとすることができる。よって、複数のターゲット固定治具1”を一人で沢山持ち運ぶことがさらに容易となり、ブラケット等を取り付けるのに必要な複数孔分のターゲット固定治具1”を一人で一度に持ち運ぶことができる。
【0070】
以上、本発明の第1~第3実施形態に係るターゲット固定治具1~1”ついて詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明に係る技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0071】
特に、ターゲット固定治具の主要部材の素材としてアクリル樹脂(PMMA)を例示したが、鋼材より比重が軽い他の樹脂や鋼材と比べて比重が軽いアルミ合金などの軽金属とすることも可能である。なお、ここで軽金属とは、アルミニウム(比重2.7)、マグネシウム(比重1.7)、ベリリウム(比重1.9)、チタン(比重4.5)などの比重が5以下の鉄(比重7.85)より比重が軽い金属を指している。
【0072】
また、第1~第3実施形態に係るターゲット固定治具1~1”として、孔に支持・固定するウィング部材6を2セット有するものを例示したが、ウィング部材6を1セットしか有さないものとすることもできる。
【符号の説明】
【0073】
1,1’,1”:ターゲット固定治具
2:枢軸シャフト
21,22:シャフトホルダー
3:軸固定プレート
31:正面プレート
310:プレート本体
311:指孔部
312:ボルト孔
313:十字線
314:指孔
315:連結孔
32:ラチェットプレート
320:プレート本体
321:指孔部
322:鋸歯
323:ボルト孔
324:指孔
325:連結孔
4:ウィングリンク機構
40:コイルスプリング(バネ材)
5:操作ハンドル部
51:バネロックハンドル
510:円盤部
511:ハンドル部
512:掛止め片
513:シャフト孔
514:掛止め孔
515:ボルト孔
516:掛止め孔
517:指孔
518:ボルト孔
519:爪部
52:ウィング可動ハンドル
520:円盤部
521:ハンドル部
522:シャフト孔
523:バネ挿通孔
524:ボルト孔
525:指孔
6:ウィング部材
61:第1のウィング部材
610:リング部
611:爪部
612:腕部(ウィング)
613:先端部(ウィング)
614:連結リベット
62:第2のウィング部材
620:リング部
621:爪部
622:腕部(ウィング)
623:先端部(ウィング)
63:ウィング
7:スペーサー部材
70:シャフト孔
T:ターゲット表示
h1,h2,h3:孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13