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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】角度誤差検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/32 20060101AFI20250117BHJP
   G01S 13/44 20060101ALI20250117BHJP
   G01S 3/42 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G01S3/32
G01S13/44
G01S3/42 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021088680
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181637
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-16556(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143462(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358695(US,A1)
【文献】特開昭63-163184(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2098862(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - G01S 3/74
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの正面方向に対する、追尾対象からの周波数信号の受信方向の角度誤差を検出する角度誤差検出装置において、
前記アンテナに設けられ、搬送波により変調された前記周波数信号を受信し、第1の受信信号として出力する第1の受信部と、前記第1の受信部で受信した周波数信号とは異なる位置にて前記周波数信号を第2の受信信号として受信すると共に、前記第1の受信信号及び前記第2の受信信号から得られる和信号と、差信号との位相が90°ずれた状態となる位置に配置された第2の受信部と、
前記第1の受信信号と前記第2の受信信号とに基づき和信号と、差信号とを取得し、各々、和信号用信号路、差信号用信号路へと出力する受信信号出力部と、
前記和信号用信号路を介して得られた前記和信号、及び前記差信号用信号路を介して得られた前記差信号を、各々、前記搬送波を用いて直交復調し、これら和信号及び差信号について、各々、同相成分(I成分)、直交成分(Q成分)を取得する復調部と、
前記同相成分を複素平面上の実部、前記直交成分を虚部として複素ベクトル表示したとき、前記差信号のベクトルと、前記和信号のベクトルの共役ベクトルとを乗算して得られる乗算ベクトルの虚部の値に基づき前記角度誤差を検出する角度誤差検出部と、
前記乗算ベクトルの実部の値に基づき、前記差信号の位相を補正して当該実部の値をゼロにするための補正値を取得する補正値取得部と、
前記補正値取得部にて補正した補正値に基づき、前記差信号の位相を補正する位相補正部と、を備えたことを特徴とする角度誤差検出装置。
【請求項2】
前記位相補正部は、前記差信号用信号路を通過した前記差信号が、前記復調部に入力される位置にて当該差信号の位相を補正することを特徴とする請求項1に記載の角度誤差検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は追尾対象に対するアンテナの角度誤差を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信衛星や航空機などの追尾対象から出力される周波数信号である通信信号を受信する受信システムには、アンテナの正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ(角度誤差)を検出した結果に基づいて、通信信号の受信方向がアンテナの正面方向と揃うようにアンテナの向きを変えることができるもの(追尾受信システム)がある。
【0003】
角度誤差の検出手法としては、アンテナ内に設けられた、配置位置の異なる2つの開口部(第1の受信部、第2の受信部)にて各々、受信された通信信号の振幅差を求め、この振幅差に基づいて角度誤差を求める手法が知られている。
この手法においては、第1の受信部にて受信した通信信号Aと、第2の受信部にて受信した通信信号Bとの和信号A+B、及び差信号A-Bを用いて角度誤差を求める計算が行われる。
【0004】
一方、追尾受信システムにおいては、角度誤差の計算を行う演算機をアンテナの近傍位置に配置できるとは限らず、例えばアンテナと演算機とを、数十メートル~数百メートル離して配置しなければならない場合がある。
この場合には、アンテナ側で得られた和信号、差信号は、通信ケーブルなどを含む信号路(和信号用信号路、差信号用信号路)を介して演算機側に供給される。
【0005】
しかしながら、これらの信号路の長さが厳密に揃っていないと、和信号と差信号との間に位相差が形成され、正確な角度誤差の算出を阻む要因となる。また、通信ケーブルの劣化の度合いの違いや通信ケーブルが配置されている空間の温度の違いなども、和信号と差信号との間に位相差を形成する要因となる。
【0006】
ここで特許文献1、2には、和信号や差信号が送信される各信号路(特許文献1には「受信チャンネル」と記載され、特許文献2には「系統」と記載されている)に対し、これら和信号や差信号と切り替えてパイロット信号を供給し、異なる信号路を通過したパイロット信号の位相差を検出した結果に基づいて和信号や差信号の補正を行う技術が記載されている。
しかしながら、これら特許文献1、2には、和信号・差信号とパイロット信号との切り替えを行わずに、各信号路に起因する位相差をリアルタイムで検出し、補正に活用する技術は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表昭56-500394号公報
【文献】特開2010-66069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、追尾受信に用いられるアンテナの角度誤差検出を行う際に、和信号や差信号が信号路(和信号用信号路、差信号用信号路)を通過することに伴う位相の変化をリアルタイムで把握し、補正することが可能な角度誤差検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本角度誤差検出装置は、アンテナの正面方向に対する、追尾対象からの周波数信号の受信方向の角度誤差を検出する角度誤差検出装置において、
前記アンテナに設けられ、搬送波により変調された前記周波数信号を受信し、第1の受信信号として出力する第1の受信部と、前記第1の受信部で受信した周波数信号とは異なる位置にて前記周波数信号を第2の受信信号として受信すると共に、前記第1の受信信号及び前記第2の受信信号から得られる和信号と、差信号との位相が90°ずれた状態となる位置に配置された第2の受信部と、
前記第1の受信信号と前記第2の受信信号とに基づき和信号と、差信号とを取得し、各々、和信号用信号路、差信号用信号路へと出力する受信信号出力部と、
前記和信号用信号路を介して得られた前記和信号、及び前記差信号用信号路を介して得られた前記差信号を、各々、前記搬送波を用いて直交復調し、これら和信号及び差信号について、各々、同相成分(I成分)、直交成分(Q成分)を取得する復調部と、
前記同相成分を複素平面上の実部、前記直交成分を虚部として複素ベクトル表示したとき、前記差信号のベクトルと、前記和信号のベクトルの共役ベクトルとを乗算して得られる乗算ベクトルの虚部の値に基づき前記角度誤差を検出する角度誤差検出部と、
前記乗算ベクトルの実部の値に基づき、前記差信号の位相を補正して当該実部の値をゼロにするための補正値を取得する補正値取得部と、
前記補正値取得部にて補正した補正値に基づき、前記差信号の位相を補正する位相補正部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上述の角度誤差検出装置は、以下の構成を備えていてもよい。
(a)前記位相補正部は、前記差信号用信号路を通過した前記差信号が、前記復調部に入力される位置にて当該差信号の位相を補正すること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、角度誤差検出に用いられる和信号及び差信号を直交復調して複素ベクトル表示した際、これらのベクトルが直交した状態を維持するように復調前の差信号をフィードバック補正するので、信号路を通過することに起因する和信号、差信号間の位相の変化をリアルタイムで把握し、補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】角度誤差検出装置を備えた追尾受信システムの構成図である。
図2】角度誤差検出装置の概要構成を示すブロック図である。
図3】比較形態に係る角度誤差検出装置のブロック図である。
図4】直交復調された和信号及び差信号を用いて角度誤差を求める手法に係る説明図である。
図5】前記和信号及び差信号の位相のずれが角度誤差の検出結果へ及ぼす影響を示す説明図である。
図6】実施形態に係る角度誤差検出装置のブロック図である。
図7】前記実施形態に係る角度誤差検出装置に含まれる回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る角度誤差検出装置を備えた追尾受信システム1の構成例を示している。
当該追尾受信システム1は、追尾対象から出力された通信信号(周波数信号)を受信するアンテナ11と、このアンテナ11の向きを変化させるアンテナ駆動機構15と、アンテナ11から取得した通信信号の和信号及び差信号に基づき、アンテナ11の正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ(角度誤差)を検出する角度誤差検出装置12と、角度誤差検出装置12にて検出された角度誤差に基づいてアンテナ11の駆動方向や駆動量を求める追尾制御部13と、追尾制御部13にて決定された駆動方向や駆動量に基づき、アンテナ駆動機構15の駆動制御を行うアンテナ駆動部14と、を備える。
【0014】
図2は、上述の追尾受信システム1に含まれるアンテナ11及び角度誤差検出装置12を示すブロック図である。
例えば図2に示す追尾対象8は、予め設定された周波数の通信信号を出力する。この通信信号は、前記予め設定された周波数を有する搬送波によって変調されたベースバンド信号を含んでいる。
【0015】
アンテナ11は、互いに受信位置が異なる第1の受信部2a、第2の受信部2bを備える。方位方向の測角を行う場合は、第1の受信部2a、第2の受信部2bは横方向に異なる位置に配置され、高さ方向の測角を行う場合は、第1の受信部2a、第2の受信部2bは高さ方向に異なる位置に配置される。
【0016】
これら第1、第2の受信部2a、2bにて受信された通信信号A、Bは、例えばアンテナ11側に設けられた加算部21、22を経て、各々、和信号A+B、差信号A-Bとして出力される。
なお、図2に示した例においては、アンテナ11側で和信号、差信号を得る場合について説明したが、これらの信号を得る加算部21、22は、角度誤差検出装置12側に設けてもよい。
【0017】
図3は、本発明を適用する前の比較形態に係る角度誤差検出装置12aのブロック図を示している。角度誤差検出装置12aは、不要な成分をろ波する受信フィルタ31a、31bや、ろ波後の和信号、差信号を増幅する可変増幅器32a、32bが設けられた受信処理部3と、信号処理ブロック4とを備える。受信処理部3と信号処理ブロック4との間は、和信号が通過する和信号用信号路33a、及び差信号が通過する差信号用信号路33bによって接続されている。
アンテナ11に設けられた加算部21、22と、前記受信処理部3とは、本例の受信信号出力部を構成している。
【0018】
信号処理ブロック4は、受信処理部3にて増幅された和信号、差信号のA/D変換を行うA/D変換部43と、ディジタル変換された和信号、差信号を復調する復調部41と、差信号の信号レベルに基づき角度誤差を求める角度誤差検出部42と、を備える。
ここで受信処理部3側に設けられた既述の可変増幅器32a、32bは、A/D変換部43側に設けられたAGC制御部432と組み合わせて動作するAGC(自動利得制御部)を構成している。
【0019】
次に、図4図5を参照し、上述の構成を備える角度誤差検出装置12aにより、和信号、差信号を用いて角度誤差を検出する手法の一例、及び図3に示す比較形態に係る角度誤差検出装置12aの問題点について説明する。
【0020】
図4(a)は、加算部21、22から出力された和信号、差信号を直交復調して得られた直交成分(Q成分)を実軸(Re軸)、同相成分(I成分)を虚軸(Im)軸にプロットしてベクトル表示した図である。図4(a)に示すように、通常、和信号及び差信号は、互いに異なる信号レベルを有し、和信号のベクトル、差信号のベクトルの長さが異なっている場合がある。
【0021】
また、図4(a)に示す和信号、差信号の信号レベルは角度誤差(アンテナ11の正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ)に応じても変化する。このとき、角度誤差が小さい範囲においては、和信号(Σ)に対する差信号(Δ)の信号レベルの比が、角度誤差(θ)にほぼ対応する関係(θ∝Δ/Σ)があることを利用して角度誤差を検出する。
【0022】
一方、追尾受信システム1が設けられている通信施設などにおいては、和信号をメインの復調系(不図示)にて復調し、後段の処理が行われるため、復調される和信号の信号レベルが一定であることが求められる。
【0023】
そこで、和信号、差信号の増幅を行う可変増幅器32a、32bにおいて、和信号側の可変増幅器32aは、出力される信号レベルが一定となるように和信号を増幅する。一方、差信号側の可変増幅器32bは、和信号側の可変増幅器32aと同じゲインにて増幅を行う。
この結果、可変増幅器32bから出力される差信号の信号レベル(複素ベクトル表示された差信号のベクトルの長さ)は、可変増幅器32aから出力される和信号の信号レベル(一定値)にて規格化された値(「Δ/Σ」に対応する値)になる(図4(c))。
【0024】
またここで、第1の受信部2a、第2の受信部2bは、直交復調され、複素ベクトル表示された和信号のベクトルと差信号のベクトルとが直交する関係、即ち、和信号と差信号との位相が90°ずれた関係となる位置に配置されている。この直交関係を利用し、図4(b)に示すように、差信号のベクトルが虚軸方向を向くように、ベクトルを回転させることにより、演算後の差信号のベクトルの虚部の値が「Δ/Σ」に対応する値となる。
【0025】
差信号のベクトルを回転させる手法として、本例の復調部41は、差信号のベクトルに対し、和信号のベクトルと共役なベクトル(図4(a)中に破線で示してある)を乗算する演算を行う。この演算の結果得られた乗算ベクトルの虚部に対応する値を読み取ることにより、角度誤差に対応する「Δ/Σ」の値を取得することができる。
【0026】
ここで図4(a)~(c)を用いて説明した上述の手法は、和信号用信号路33a、差信号用信号路33bを介して取得した和信号、差信号の位相関係が直交した状態を維持しつつ、これらの信号が復調部41に入力される場合に正しい角度誤差を得ることができる。
【0027】
一方で、既述のように、これらの信号路33a、33bは、例えば長さが数十メートル~数百メートルの通信ケーブルを備える場合がある。この際、双方の通信ケーブルの長さが厳密に揃っていなかったり、劣化の度合や配置環境の温度が異なっていたりすることにより、これらの信号路33a、33bを通過する際に和信号-差信号の位相にずれが生じる場合がある。
【0028】
図5(a)は、前記位相のずれに伴い、和信号のベクトルと差信号のベクトルとが互いに直交する関係でなくなった状態を示している。同図中には、差信号用信号路33bを通過する前の真の差信号のベクトル(図4(a)に記載の差信号のベクトルに対応する)を破線で示している。
【0029】
和信号のベクトルと差信号のベクトルとの直交関係が崩れてしまうと、和信号と共役なベクトルにより差信号のベクトルを回転させても、演算後の乗算ベクトルは、虚軸方向からずれてしまう。このため、乗算ベクトルの虚部の値を読み取っただけでは、正しいベクトルの長さを読み取ることができず、角度誤差の検出結果にずれ(検出誤差)が生じてしまう。
なお図示の便宜上、図5においては、差信号に位相のずれが生じ、和信号と差信号との直交関係が崩れてしまった場合について説明したが、和信号側で位相のずれが生じた場合や、差信号と和信号との双方で位相のずれが生じた場合も同様の問題が生じる。
【0030】
以上に説明した課題に対応するため、図6に示すように、本例の角度誤差検出装置12は、図5(a)、(b)を用いて説明した和信号のベクトルに対する差信号のベクトルの直交関係のずれの大きさを検出し、当該検出結果に基づいて補正値を取得する補正値取得部44を備え、この補正値に基づき復調部41に入力される差信号の位相の補正を行う機能を有する。
【0031】
図7は、復調部41、角度誤差検出部42及びA/D変換部43の回路の構成例を示している。
図7の復調部41は、搬送波の周波数に対応する周波数信号(例えば余弦波)を出力する周波数発振部411と、当該周波数信号の位相を90°進めた周波数信号(例えば正弦波)を得る位相回転器412とを備える。
【0032】
乗算器413aは、和信号用信号路33aを介してA/D変換部43に供給され、ディジタル変換された後の和信号に周波数発振部411からの周波数信号を乗算する。そして、ローパスフィルタ(LPF)414aにて不要成分を取り除くことによりI成分(I1)を取り出す。また、乗算器413bは、前記ディジタル変換された和信号に位相回転器412にて位相を90°進めた周波数信号を乗算し、LPF414bにて不要成分を取り除くことにより、Q成分(Q1)を取り出す。
【0033】
同様に乗算器413cは、差信号用信号路33bを介してA/D変換部43に供給され、ディジタル変換された後の差信号に周波数発振部411からの周波数信号を乗算する。そしてLPF414cにて不要成分を取り除くことによりI成分(I2)を取り出す。また、乗算器413dは、前記ディジタル変換された差信号に位相回転器412にて位相を90°進めた周波数信号を乗算し、LPF414dにて不要成分を取り除くことにより、Q成分(Q2)を取り出す。
【0034】
角度誤差検出部42は、和信号のI1、Q1、差信号のI2、Q2を用い、図4(a)、(b)を用いて説明した考え方に基づき差信号のベクトルを回転させる。即ち、複素ベクトル表示された差信号のベクトル(I2,Q2)に対し、和信号と共役なベクトル(I1,-Q1)を乗算し、演算後の乗算ベクトル(I1I2+Q1Q2,I1Q2-I2Q1)の虚部の値である「I1Q2-I2Q1」を取得する。具体的には、乗算器421bにて得られた「I1Q2」と乗算器421aにて得られた「I2Q1」との差分値が加算器422より出力される。
【0035】
そして、係数乗算器423にて、当該差分値を実際の角度誤差に変換するための、予め設定された変換係数を乗算すると、アンテナ11の正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ量である角度誤差を得ることができる。
【0036】
ここで図5(a)、(b)を用いて説明したように、和信号のベクトルと差信号のベクトルとの直交関係が崩れている場合には、演算後の乗算ベクトルに実部の値が発生する(図5(b))。乗算ベクトルと虚軸との成す角度φが十分に小さい場合には、前記角度φは、乗算ベクトルの実部の値にほぼ等しい。
【0037】
そこで補正値取得部44は、差信号のベクトルと、和信号と共役なベクトルとの乗算結果に基づき、実部の値である「I1I2+Q1Q2」を求める。具体的には、乗算器441aにて得られた「I1I2」と乗算器441bにて得られた「Q1Q2」との加算値が加算器442より出力される。
【0038】
そして、ディジタル変換後、復調部41に入力される前の差信号が、同じく復調部41に入力される前の和信号と直交した状態を維持するように、補正値算出部443にて、前記角度φを相殺するための補正値を取得する。例えば補正値算出部443は、前記差信号のベクトルの実部の値に所定の係数を乗算すると共に、当該乗算結果の正負の符号を反転させる。
【0039】
しかる後、補正値算出部443にて取得された補正値は、復調部41に差信号を入力する位置の手前に配置された位相補正部45に入力される。位相補正部45においては、補正値算出部443から取得した補正値に基づき、差信号の位相を遅らせ、または進ませる位相補正を行う。なお、補正値の符号の反転は、位相補正部45側で行ってもよい。
【0040】
上述の構成を備える補正値取得部44、位相補正部45を用いることにより、和信号との間に位相のずれが発生した場合であっても、復調部41、補正値取得部44を用いた各種演算を行うことにより、当該位相のずれに対応する値(既述の乗算ベクトルの実部の値)を得ることができる。
【0041】
そして、この値に基づいて補正値を取得し、差信号の位相のフィードバック補正に用いることにより、和信号との間の位相のずれを小さくすることができる。この結果、角度誤差検出部42にて取得される乗算ベクトルの虚部の値を、実際の「Δ/Σ」の値に近づけ、より正しい角度誤差を検出することができる。
【0042】
また、図5(b)に示す乗算ベクトルと虚軸とが成す角度φは、差信号のベクトルと和信号のベクトルとが直交した状態からの相対的なずれ量である。このため、和信号が和信号用信号路33aを通過する過程にて位相のずれが生じた場合、または和信号及び差信号の双方においてずれが生じた場合であっても、差信号側の位相を補正することにより、これらのずれの補正を行うことができる。
【0043】
本実施の形態に係る角度誤差検出装置12によれば以下の効果がある。角度誤差検出に用いられる和信号及び差信号を直交復調して複素ベクトル表示した際、これらのベクトルが直交した状態を維持するように復調前の差信号をフィードバック補正するので、信号路33a、33bを通過することに起因する和信号、差信号間の位相の変化をリアルタイムで把握し、補正することができる。
【0044】
なお、補正値取得部44を用いた差信号の位相の補正は、ディジタル変換された後の差信号に対して実施する場合に限定されない。例えばディジタル変換前のアナログの差信号の位相を補正してもよい。
【0045】
また、本発明の角度誤差検出装置の適用対処は、通信用の追尾受信システムに限定されない。例えばレーダーシステム内に本発明の角度誤差検出装置を設けてもよい。この場合は、追尾対象は探知目標となり、追尾対象からの周波数信号は、探知対象に周波数信号を照射して、反射された信号となる。
【符号の説明】
【0046】
1 追尾受信システム
2a、2b 受信部
21、22 加算部
3 受信処理部
33a 和信号用信号路
33b 差信号用信号路
41 復調部
42 角度誤差検出部
44 補正値取得部
8 追尾対象
11 アンテナ
12、12a
角度誤差検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7