(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂発泡成形体、スライス体、スチレン系樹脂発泡粒子および発泡性スチレン系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/22 20060101AFI20250117BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20250117BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08J9/22 CET
C08J9/36
C08L25/04
(21)【出願番号】P 2021104035
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】道畑 直起
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-277541(JP,A)
【文献】特開2002-284917(JP,A)
【文献】特開2005-187778(JP,A)
【文献】特開平01-299843(JP,A)
【文献】米国特許第04420448(US,A)
【文献】国際公開第2009/084456(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102405253(CN,A)
【文献】特開2024-92402(JP,A)
【文献】特開2021-102750(JP,A)
【文献】特開2021-8547(JP,A)
【文献】特開2008-156585(JP,A)
【文献】国際公開第2021/187142(WO,A1)
【文献】国際公開第98/29485(WO,A1)
【文献】特開平1-299843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0069455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスチレン系樹脂発泡粒子を含むスチレン系樹脂発泡成形体であって、
密度が0.007g/cm
3~0.0145g/cm
3であり、
JIS A9511に準じて測定される曲げ強さが0.05MPa以上0.25MPa以下であり、
前記スチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に700μmの位置までの領域Aに存在する気泡の平均径D
Aと、前記領域Aに囲まれる領域Bに存在する気泡の平均径D
Bとの差の絶対値|D
B-D
A|が、
80μm以下であ
り、
複数の該スチレン系樹脂発泡粒子のそれぞれは、最表面に位置するセル膜を有し、
該スチレン系樹脂発泡粒子のセル膜は、隣接するスチレン系樹脂発泡粒子のセル膜と接合しており、
該セル膜の厚みは、0.25μm以上3.5μm以下である、
スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項2】
ブロック形状を有する、請求項
1に記載のスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のスチレン系樹脂発泡成形体を、薄板状にスライスカットして形成される、スライス体。
【請求項4】
請求項1
または2に記載のスチレン系樹脂発泡成形体を構成する、スチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、発泡により請求項
4に記載のスチレン系樹脂発泡粒子を形成する、発泡性スチレン系樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂発泡成形体、スライス体、スチレン系樹脂発泡粒子および発泡性スチレン系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、用途・目的等に応じて所定形状にカットされる。例えば、梱包用の緩衝材に使用される場合には、緩衝材として効果を発揮する高発泡倍率のものが望まれ、高発泡倍率のブロック形状を有するスチレン系樹脂発泡成形体を、厚み2mm~10mm程度にスライスカットして、薄板状のスライス体とする場合がある。しかし、高発泡倍率のスライス体は、「しなり」が不十分となり、取扱時において脆性破壊(割れ)が生じる場合や、スライス体の加工効率が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-003235号公報
【文献】特開2004-137448号公報
【文献】特開平8-295756号公報
【文献】特開平8-295757号公報
【文献】特開2007-246606号公報
【文献】特開平7-188454号公報
【文献】特開2011-074144号公報
【文献】特開2003-277541号公報
【文献】特開平7-292150号公報
【文献】特開2006-316240号公報
【文献】特開2009-108237号公報
【文献】特許第3502472号
【文献】特開2004-307729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、靭性および可撓性をバランスよく備え、スライス体に優れたしなり性を付与でき得るスチレン系樹脂発泡成形体、および、スチレン系樹脂発泡成形体から形成されるスライス体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、複数のスチレン系樹脂発泡粒子を含むスチレン系樹脂発泡成形体であって、密度が0.007g/cm3~0.0145g/cm3であり、JIS A9511に準じて測定される曲げ強さが0.05MPa以上0.25MPa以下であり、前記スチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に700μmの位置までの領域Aに存在する気泡の平均径DAと、前記領域Aに囲まれる領域Bに存在する気泡の平均径DBとの差の絶対値|DB-DA|が、100μm以下である。
一つの実施形態においては、複数の前記スチレン系樹脂発泡粒子のそれぞれは、最表面に位置するセル膜を有し、前記スチレン系樹脂発泡粒子のセル膜は、隣接するスチレン系樹脂発泡粒子のセル膜と接合しており、前記セル膜の厚みは、0.2μm以上5.0μm以下である。なお、セル膜の厚みとは、隣接するスチレン系樹脂発泡粒子のセル膜が互いに密着する場合、密着する2つのセル膜の総和ではなく、1つのスチレン系樹脂発泡粒子表面のセル膜の厚みを意味する。セル膜の厚みについては、詳しくは後述する。
一つの実施形態においては、上記したスチレン系樹脂発泡成形体は、ブロック形状を有する。
本発明の別の局面によるスライス体は、上記したスチレン系樹脂発泡成形体を、薄板状にスライスカットして形成される。
本発明のさらに別の局面によるスチレン系樹脂発泡粒子は、上記したスチレン系樹脂発泡成形体を構成する。
本発明のさらに別の局面による発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、発泡により上記したスチレン系樹脂発泡粒子を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、靭性および可撓性をバランスよく備え、スライス体に優れたしなり性を付与できるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することができる。また、本発明の別の局面によれば、優れたしなり性を有し、脆性破壊(割れ)を抑制できながら円滑に加工でき得るスライス体を提供することができる。また、本発明のさらに別の局面によれば、上記したスチレン系樹脂発泡成形体を構成し得るスチレン系樹脂発泡粒子を提供することができる。また、本発明のさらに別の局面によれば、発泡により上記したスチレン系樹脂発泡粒子を形成し得る発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体の概略断面図である。
【
図2】
図1のスチレン系樹脂発泡成形体の概略斜視図である。
【
図3】
図1のスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法を説明する概略説明図であって、スチレン系樹脂一次発泡粒子が成形型に充填された状態を示す。
【
図4】
図2のスチレン系樹脂発泡成形体からカットされるスライス体の概略斜視図である。
【
図5】実施例5のスライス体の切断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書における用語の定義は以下のとおりである。
発泡性スチレン系樹脂粒子(単に発泡性粒子と称する場合がある):発泡前の発泡剤を含む粒子を意味する。
スチレン系樹脂発泡粒子(単に発泡粒子と称する場合がある):発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させた粒子を意味する。スチレン系樹脂発泡粒子には、スチレン系樹脂一次発泡粒子と、スチレン系樹脂二次発泡粒子とが含まれる。
スチレン系樹脂一次発泡粒子(単に一次発泡粒子と称する場合がある):発泡性スチレン系樹脂粒子を一次発泡させた粒子を意味する。
スチレン系樹脂二次発泡粒子(単に二次発泡粒子と称する場合がある):スチレン系樹脂一次発泡粒子をさらに発泡(二次発泡)させた粒子を意味する。
スチレン系発泡樹脂成形体(単に発泡成形体と称する場合がある):スチレン系樹脂発泡粒子の成形体を意味する。スチレン系発泡樹脂成形体には、スチレン系樹脂一次発泡粒子の成形体と、スチレン系樹脂二次発泡粒子の成形体とが含まれる。
スチレン系樹脂一次発泡粒子の成形体:発泡性スチレン系樹脂粒子を一次発泡させて成形した成形体を意味する。
スチレン系樹脂二次発泡粒子の成形体:予め準備したスチレン系樹脂一次発泡粒子を二次発泡させて成形した成形体を意味する。ここで、予め準備されるスチレン系樹脂一次発泡粒子を、予備発泡粒子と称する場合がある。
【0009】
A.スチレン系樹脂発泡成形体
図1は、本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体の概略断面図であり;
図2は、
図1のスチレン系樹脂発泡成形体の概略斜視図である。
図1に示すように、本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体1(以下、発泡成形体1とする。)は、複数のスチレン系樹脂発泡粒子を含む。詳しくは後述するが、スチレン系樹脂発泡粒子は、好ましくは、スチレン系樹脂二次発泡粒子12(以下、二次発泡粒子12とする。)である。スチレン系樹脂発泡粒子は、複数の気泡(気孔)を有する。
発泡成形体1の密度は、代表的には0.007g/cm
3~0.0145g/cm
3であり、好ましくは0.0083g/cm
3~0.013g/cm
3であり、より好ましくは0.0085g/cm
3~0.0125g/cm
3である。発泡成形体1の発泡倍率は、代表的には69倍~140倍であり、好ましくは75倍~120倍であり、より好ましくは80倍~115倍である。密度および発泡倍数は、発泡成形体から切り出した試験片を用いて、下記式に基づいて求めることができる。なお、スチレン系樹脂の比重は1.0として計算され得る。また、下記式では、比重が無次元数であるため、発泡倍数の単位をcm
3/gとして示すが、発泡倍数の単位は、上記のように「倍」であってもよい。
密度(g/cm
3)=試料片質量(g)/試験片体積(cm
3)
発泡倍数(cm
3/g)=試験片体積(cm
3)/試料片質量(g)×樹脂比重
JIS A9511に準じて測定される発泡成形体1の曲げ強さは、代表的には0.05MPa以上、好ましくは、0.10MPa以上、0.25MPa以下、好ましくは、0.22MPa以下である。
成形体を構成するスチレン系樹脂発泡粒子は、代表的には、球形状が変形した異形状を有する。スチレン系樹脂発泡粒子は、スチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に700μmの位置(
図1においてXで示す。)までの領域A(外側領域A)と、領域Aに囲まれる領域B(内側領域B)とを有する。外側領域Aは、好ましくはスチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に600μmの位置までの領域であり、より好ましくはスチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に500μmの位置までの領域である。内側領域Bは、スチレン系樹脂発泡粒子における外側領域A以外の領域である。
内側領域Bに存在する気泡の平均径D
Bと外側領域Aに存在する気泡の平均径D
Aとの差の絶対値|D
B-D
A|は、代表的には100μm以下、好ましくは、90μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下、とりわけ好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下、より特に好ましくは30μm以下であり、さらに特に好ましくは20μm以下である。
発泡成形体は、スライスカットされて薄板状のスライス体とされる場合がある。そのため、発泡成形体には、円滑なスライスカットが可能となる特性が要求される。これに対して、上記の構成であれば、発泡成形体の密度および曲げ強さが上記範囲内であり、かつ、絶対値|D
B-D
A|が上記上限以下であるので、発泡成形体は、靭性および可撓性をバランスよく備えることができ得る。このような発泡成形体であれば、スライスカットを円滑に実施でき得る。また、発泡成形体をスライスカットして形成されるスライス体は、薄板形状であるために脆性破壊(割れ)が生じやすく、必要に応じてさらに加工(例えば、打ち抜き加工等)される場合がある。この点、靭性および可撓性をバランスよく備える発泡成形体から形成されるスライス体は、優れたしなり性を有しており、脆性破壊(割れ)を抑制できながら加工(例えば、打ち抜き加工等)に好適な弾性を確保し得る。つまり、上記構成を備える発泡成形体であれば、スライス体に優れたしなり性を付与でき、脆性破壊(割れ)を抑制できながら円滑に加工できるスライス体を実現でき得る。
とりわけ、発泡成形体の曲げ強さが上記上限より大きければ、発泡成形体の靭性、ひいてはスライス体の靭性の向上を図ることができない。また、発泡成形体の曲げ強さが上記下限よりも小さければ、発泡成形体をより円滑にスライスカット可能となり、かつ、スライス体に加工(例えば、打ち抜き加工等)に好適な弾性を安定して付与できなくなる。
【0010】
内側領域Bに存在する気泡の平均径DBと外側領域Aに存在する気泡の平均径DAとの大小関係は、絶対値|DB-DA|が上記所定の範囲内であれば、DAが大きくてもよくDBが大きくてもよい。
【0011】
内側領域Bに存在する気泡の平均径DBは、代表的には30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり、代表的には200μm以下、好ましくは190μm以下、より好ましくは180μm以下である。
外側領域Aに存在する気泡の平均径DAは、代表的には30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり、代表的には200μm以下、好ましくは190μm以下、より好ましくは180μm以下である。
【0012】
なお、発泡成形体1は、本発明の効果を阻害しない範囲で、平均径DBと平均径DAとの差の絶対値|DB-DA|が上記上限を超過するスチレン系樹脂発泡粒子を含んでいてもよい。絶対値|DB-DA|が上記上限を超過する発泡粒子の含有割合は、発泡成形体に含まれる複数の発泡粒子のうち、代表的には20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、複数のスチレン系樹脂発泡粒子のそれぞれは、セル膜12aと、多孔質骨格12bとを備える。セル膜12aは、発泡粒子の最表面に位置し、多孔質骨格12bの全体を覆っている。外側領域Aは、具体的にはセル膜12aの表面から上記位置までの領域であり、セル膜12aは、外側領域Aに含まれる。スチレン系樹脂発泡粒子のセル膜12aは、隣接するスチレン系樹脂発泡粒子のセル膜12aと接合している。多孔質骨格12bは、セル膜12aの内側に位置する。
図1では便宜上省略しているが、多孔質骨格12bは、複数の気孔を画定している(
図5参照)。
セル膜12aの厚みは、代表的には0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、代表的には5.0μm以下、好ましくは3.5μm以下、より好ましくは2.5μm以下である。
発泡粒子のセル膜の厚みが上記下限以上であれば、スライス体に力が加わったときに、発泡粒子のセル膜が破れることを抑制でき得る。セル膜の厚みが上記上限以下であれば、セル膜同士の接合強度の向上を図ることができ得る。これらによって、スライス体のしなり性を十分に確保でき得る。また、セル膜が上記より小さい場合、成形時にセル膜が破れ、成形体が収縮してしまう。一方、セル膜が上記より大きい場合、発泡粒子同士の融着や曲げ強度が悪化するため、スライス体のしなり性が悪くなる。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、発泡成形体を構成するスチレン系樹脂発泡粒子の重量平均分子量Mwは、代表的には150000以上、好ましくは200000以上、より好ましくは210000以上であり、代表的には400000以下、好ましくは350000以下、より好ましくは340000以下である。
スチレン系樹脂発泡粒子の重量平均分子量Mwが上記の範囲であれば、スライス体のしなり性を良くすることができ得る。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、
図2に示すように、発泡成形体1は、ブロック形状を有する。より詳しくは、発泡成形体1は、角柱形状を有する。
発泡成形体1の各寸法に限定はない。一例として、寸法L1×L2×L3は、2m×0.5m×1mや、1.8m×0.53m×0.92mがある。
【0016】
B.スチレン系樹脂発泡成形体の製造方法
図1~3を参照して、上記した発泡成形体1の製造方法について説明する。
発泡成形体1は、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることにより形成される。より詳しくは、発泡成形体1の製造方法は、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を準備する工程(準備工程)と、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を予め一次発泡させて、複数の一次発泡粒子11とする工程(予備発泡工程)と、複数の一次発泡粒子11を成形型3内でさらに発泡させて成形する工程(発泡成形工程)とを含む。なお、発泡成形体は、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を、予備発泡することなく成形型内に仕込み、成形型内で発泡させて形成することもできる。
【0017】
B-1.発泡性スチレン系樹脂粒子の準備工程
一つの実施形態では、まず、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を準備する。
【0018】
B-1-1.発泡性粒子
発泡性粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、全体として粒子の形状を有する。発泡性粒子の粒径は、例えば0.3mm~3.0mmであり、好ましくは0.3mm~1.7mmである。粒径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、粒径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性粒子の形状としては、任意の適切な形状を採用することができる。形状の具定例としては、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状が挙げられる。発泡性粒子の形状は、代表的には、得られる発泡粒子の形状に対応しており、好ましくは、球形状である。
【0019】
B-1-2.スチレン系樹脂
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を含む単量体成分の重合体(高分子化合物)である。スチレン系樹脂は、スチレン系単量体由来の構成単位を含む。スチレン系単量体として、例えば、スチレン単量体、および、スチレン誘導体が挙げられる。スチレン誘導体として、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、スチレン単量体を含有する。スチレン系単量体は、スチレン単量体をスチレン系単量体の全量に対して好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含有する。
【0020】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体由来の構成単位を主成分として含んでいれば、スチレン系単量体と他の共重合単量体との共重合体であってもよい。つまり、スチレン系樹脂の原料としての単量体成分は、スチレン系単量体に加えて、他の共重合単量体を含んでもよい。他の共重合単量体として、例えば、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、スチレン系樹脂が、スチレン系単量体由来の構成単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有することをいう。
【0021】
ビニル単量体として、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体が挙げられる。ビニル単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
多官能単量体として、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、スチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。スチレン系樹脂における多官能単量体由来の構造単位の含有割合は、好ましくは、0質量%~0.2質量%であり、より好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体のなかでは、好ましくは、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチルが挙げられ、より好ましくは、アクリル酸ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。スチレン系樹脂におけるアクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有割合は、好ましくは、0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0質量%~3.0質量%である。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0024】
マレイン酸エステル単量体として、例えば、マレイン酸ジメチルが挙げられる。
【0025】
フマル酸エステル単量体として、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルが挙げられる。
【0026】
このようなスチレン系樹脂のなかでは、好ましくは、スチレン系単量体からなる単量体成分の重合体が挙げられ、より好ましくは、スチレン単量体のホモポリマーが挙げられる。
【0027】
B-1-3.発泡剤
発泡剤としては、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。発泡剤として、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素が挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。発泡剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。発泡剤のなかでは、好ましくは、脂肪族炭化水素が挙げられる。発泡剤が脂肪族炭化水素であると、オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制でき得る。発泡剤としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせがより好ましい。
【0028】
発泡性粒子における発泡剤の含有量は、発泡粒子および発泡成形体の形成に十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~13質量部である。
とりわけ、発泡剤が脂肪族炭化水素(好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせ)であり、発泡剤の含有量が上記の範囲であると、発泡性粒子の発泡により形成されるスチレン系樹脂発泡粒子において、絶対値|DB-DA|を上記所定範囲内に安定して調整できる。そのため、発泡成形体に靭性および可撓性をバランスよく付与でき、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性の向上を図ることができる。一方、上記の範囲より少ないと成形倍率を0.007~0.0145g/cm3にできない場合があり、上記範囲より多いとセル膜が破れ、成形時に形状が維持できず収縮するおそれがある。
【0029】
B-1-4.その他
発泡性粒子は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤として、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、植物油(例えば、ヤシ油)、グリセリン酢酸脂肪酸エステル等が挙げられる。上記発泡助剤により、気泡を調整することができ、その結果、発泡成形体の靭性および可撓性を好適に調整できる。また、発泡助剤として、RоHS指令(RоHS2)や食品衛生法などの法令で使用が禁止されている化学物質を用いないことが好ましい。当該化学物質として、例えば、フタル酸エステルが挙げられる。フタル酸エステルとして、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸-n-オクチルが挙げられる。
発泡性粒子における発泡助剤の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~5.0量部であり、より好ましくは0.1質量部~4.8質量部である。
発泡性粒子が発泡助剤を上記の範囲で含んでいると、発泡性粒子の発泡により形成されるスチレン系樹脂発泡粒子において、絶対値|DB-DA|を上記所定範囲内に安定して調整できる。そのため、発泡成形体に靭性および可撓性をバランスよく付与でき、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性の向上を図ることができる。一方、上記の範囲より少ないと成形倍率を0.007~0.0145g/cm3にできなかったり、スライス体に十分な靭性および可撓性をバランスよく付与できなくなる場合がある。上記範囲より多いとその可塑効果より気泡が形状維持できず、一次発泡時や成形時に収縮するおそれがある。
【0030】
発泡性粒子は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤として、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0031】
発泡性粒子の表面には、表面処理剤が塗布されていてもよい。表面処理剤として、例えば、ポリエチレングリコール;ステアリン酸亜鉛等の粉末状金属石鹸類;脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド;などが挙げられる。このような構成であれば、発泡性粒子の予備発泡において、発泡粒子同士の合着を減少させることができる。
【0032】
B-1-5.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
上記した発泡性粒子は、上記所定の密度、上記所定の曲げ強さ、および、上記所定の|DB-DA|を有する発泡成形体を形成し得る限りにおいて、任意の適切な方法により製造され得る。
【0033】
発泡性粒子の製造方法は、代表的には、スチレン系単量体を含む単量体成分を重合させる工程と、重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、を含む。単量体成分の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体を含む単量体成分に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性粒子を得る方法である。重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、分散剤を含む水性媒体の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性粒子が得られるという利点がある。
【0034】
スチレン系単量体を含む単量体成分の重合においては、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤と重合開始剤とを併用することにより、得られる発泡性粒子(実質的には、スチレン系樹脂)の分子量等を調整することができる。連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤として、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、α―メチルスチレンダイマー(2,4-ジフェニルー4―メチル-1-ペンテン)が挙げられる。
【0035】
B-1-5-1.シード重合法
スチレン系樹脂の製造方法の一つの実施形態として、シード重合法が採用され得る。シード重合において、種粒子の重合条件(例えば、重合開始剤、重合温度、重合時間、懸濁液の粒子径)、種粒子の粒子径および重量平均分子量、ならびに、スチレン系樹脂粒子の重合条件(例えば、重合開始剤、重合温度、重合時間、種粒子へのスチレン系単量体の添加様式および添加速度)を適切に調整することにより、上記所定の密度、上記所定の曲げ強さ、および、上記所定の|DB-DA|を有する発泡成形体を形成し得る発泡性粒子が得られ得る。以下、シード重合法について簡単に説明する。
【0036】
種粒子は、代表的には、スチレン系単量体の懸濁重合により形成される。懸濁重合は、代表的には、分散剤を含む水性媒体中に、スチレン系単量体と、重合開始剤と、必要に応じて添加剤(例えば、連鎖移動剤)とを入れ、加熱および撹拌することによりスチレン系単量体を重合する。
【0037】
スチレン系単量体は、上記B-1-1項で説明したとおりである。重合開始剤としては、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物のような有機化合物;が挙げられる。これらの重合開始剤は単独でまたは2種以上併用して使用できる。重合開始剤のなかでは、好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートとの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本工程における重合温度は、70℃~130℃が好ましく、75℃~125℃がより好ましい。また、重合時間は、15時間以内が好ましく、4時間~10時間がより好ましい。重合温度および重合時間が上記の範囲であれば、発泡性粒子の発泡により形成されるスチレン系樹脂発泡粒子において、絶対値|DB-DA|を上記所定範囲内に安定して調整できる。そのため、発泡成形体に靭性および可撓性をバランスよく付与でき、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性の向上を図ることができる。また、上記の範囲より小さい場合、分子量が小さくなりスライス体のしなり性に必要となってくる成形体の柔軟性を持たせることができない場合があり、一方、上記の範囲より大きい場合、分子量が大きくなり発泡性が低下することにより、成形体表面の伸びや発泡粒子間の融着が悪くなる場合がある。
【0039】
分散剤として、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤;ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤;が挙げられる。分散剤は単独でまたは2種以上併用して使用できる。分散剤のなかでは、好ましくは、無機系分散剤が挙げられる。無機系分散剤としては、ピロリン酸マグネシウムがより好ましい。無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。界面活性剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(ナトリウム)、α-オレフィンスルホン酸ソーダ(ナトリウム)が挙げられる。
【0040】
種粒子は、別の実施形態においては、水中カット法により形成される。水中カット法は、適切な重量平均分子量を有するポリスチレン系樹脂を押出機に投入し、ダイの細孔から押し出すと同時に水中に導いてカットし、略球状のペレットを得ることを含む。種粒子は、ストランドカット法により形成されてもよい。ストランドカット法は、ポリスチレン系樹脂を押出機に投入し、ダイの細孔から押出してから水中を通して樹脂を冷却して細長のストランドを形成し、当該ストランドをカットして円柱等のペレットを得ることを含む。
【0041】
上記のようにして得られる種粒子の平均粒子径および重量平均分子量は、目的に応じて適切に設定され得る。種粒子の平均粒子径は、例えば0.3mm~1.3mmであり、種粒子の重量平均分子量は、例えば150000~400000である。
【0042】
次いで、種粒子を、目的とする粒子径を有するスチレン系樹脂粒子まで成長させる。より詳しくは、上記した分散剤および種粒子を含む水性媒体を、所定温度まで昇温した後、上記した重合開始剤を溶解したスチレン系単量体を反応系に供給して重合させる。本工程において好ましい重合開始剤は、ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートとの組み合わせである。重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して0.02質量部~2.0質量部が好ましく、0.1質量部~1.0質量部がより好ましい。重合開始剤は、スチレン系単量体ではなく種粒子に含有させてもよく、スチレン系単量体および種粒子の両方に含有させてもよい。スチレン系単量体は、目的に応じた任意の適切な様式で反応系に供給され得る。例えば、スチレン系単量体は、連続的に滴下して添加されてもよく、一括で添加されてもよく、複数回に分割して添加されてもよい。スチレン系樹脂粒子の形成は、上記種粒子の形成から連続して行ってもよく、上記種粒子に一旦処理(例えば、洗浄、乾燥、篩い分け)を施してから行ってもよい。
【0043】
種粒子の外側に形成されるスチレン系樹脂の重量平均分子量は、重合開始剤の濃度、重合温度、重合開始剤と連鎖移動剤の併用、重合開始剤と連鎖移動剤の組み合わせ、等を適切に設定することにより調整することができる。連鎖移動剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。さらに、連鎖移動剤と重合開始剤の使用比A/Bは、100以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、Aは、スチレン系単量体に対する連鎖移動剤の使用量(質量部)であり、Bは、スチレン系単量体に対する重合開始剤の使用量(質量部)である。なお、連鎖移動剤については、上記のとおりである。
【0044】
本工程における重合温度は、60℃~135℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましい。また、重合時間は、24時間以内が好ましく、4時間~20時間がより好ましく、4.5時間~15時間がさらに好ましい。さらに、スチレン系単量体の添加速度は、重合温度が低いほど遅く、高いほど早くすることが好ましい。重合温度および重合時間が上記の範囲であれば、発泡性粒子の発泡により形成されるスチレン系樹脂発泡粒子において、絶対値|DB-DA|を上記所定範囲内に安定して調整できる。そのため、発泡成形体に靭性および可撓性をよりバランスよく付与でき、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性のさらなる向上を図ることができる。また、上記の範囲より小さい場合、分子量が小さくなりスライス体のしなり性に必要となってくる成形体の柔軟性を持たせることができない場合があり、一方、上記の範囲より大きい場合、分子量が大きくなり発泡性が低下することにより、成形体表面の伸びや発泡粒子間の融着が悪くなる場合がある。
【0045】
本工程における種粒子の使用量は、重合終了時のスチレン系樹脂全量に対して、好ましくは10重量%~75重量%であり、より好ましくは15重量%~35重量%である。種粒子の使用量が10重量%未満では、以下のような問題が生じる場合がある:(1)スチレン系単量体を添加する際に、スチレン系樹脂粒子の重合率を適正範囲に制御することが困難となり、得られるスチレン系樹脂粒子の分子量が過度に大きくなる;(2)微粉末状重合体が多量に発生し、製造効率が低下する。種粒子の使用量が75重量%を越えると、発泡成形性が不十分となる場合がある。
【0046】
以上によって、スチレン系樹脂粒子が得られ得る。発泡性スチレン系樹脂粒子が、上記のような特定の重合条件で重合したスチレン系樹脂粒子を含むと、発泡性スチレン系樹脂粒子から製造される発泡成形体に靭性および可撓性をよりバランスよく付与することができ、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性のさらなる向上を図ることができる。
【0047】
B-1-5-2.発泡剤の含浸
1段法、2段法またはシード重合法により得られたスチレン系樹脂粒子に、上記した発泡剤を添加(実質的には、含浸)することにより、発泡性粒子が得られ得る。発泡剤は、スチレン系樹脂粒子を反応系(水性媒体)から取り出した後に添加してもよく、水性媒体に圧入して水性媒体中のスチレン系樹脂粒子に添加してもよい。あるいは、発泡剤は、スチレン系樹脂粒子の重合中に添加してもよい。一つの実施形態においては、発泡剤を含浸する前に、発泡時の気泡を調整するために気泡調整剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等などが挙げられる。気泡調整剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して0.01質量部~0.25質量部が好ましく、0.01質量部~0.15質量部がより好ましい。
【0048】
また、必要に応じて、発泡性粒子と上記した表面処理剤とを混合して、発泡性粒子の表面を表面処理剤で被覆してもよい。
【0049】
このように、発泡性粒子が、上記特定の重合条件(例えば、温度、時間、開始剤量、連鎖移動剤量)で重合したスチレン系樹脂粒子と、上記特定の発泡剤(例えば、種、量)と、必要に応じて、上記特定の発泡助剤(例えば、種、量)とを含むことにより、発泡性粒子の発泡により形成されるスチレン系樹脂発泡粒子において、絶対値|DB-DA|を上記所定範囲内に、より一層安定して調整できる。そのため、発泡性粒子から製造される発泡成形体に靭性および可撓性をより一層バランスよく付与することができ、発泡成形体から形成されるスライス体のしなり性のさらなる向上を図ることができる。
【0050】
B-1-6.発泡性スチレン系樹脂粒子の別の製造方法
別の実施形態においては、発泡性粒子は、溶融押出法により製造され得る。溶融押出法は、スチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法は水中カット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法と呼ばれる。水中カット法、ストランドカット法のいずれの方法によっても、発泡性粒子を製造することができる。水中カット法によれば、ほぼ球状の発泡性粒子が得られるという利点がある。
【0051】
B-2.発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡工程
上記のように準備した複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を、予め一次発泡(予備発泡)して複数の一次発泡粒子11とする。より詳しくは、複数の発泡性スチレン系樹脂粒子を、例えば、水蒸気を用いて所定の嵩密度(嵩発泡倍率)に発泡させる。
【0052】
一次発泡粒子11の嵩密度は、代表的には0.007g/cm3~0.0145g/cm3であり、好ましくは0.0083g/cm3~0.013g/cm3であり、より好ましくは0.0085g/cm3~0.0125g/cm3である。一次発泡粒子11の嵩発泡倍率は、代表的には69倍~140倍であり、好ましくは75倍~120倍であり、さらに好ましくは80倍~115倍である。嵩発泡倍率は、嵩密度の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。
一次発泡粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の容積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定試料の質量および容積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。なお、スチレン系樹脂の比重は1.0として計算され得る。また、下記式では、比重が無次元数であるため、嵩発泡倍数の単位をcm3/gとして示すが、嵩発泡倍数の単位は、上記のように「倍」であってもよい。
嵩発泡倍数(cm3/g)=メスシリンダー中の試料容積(cm3)/試料質量(g)×樹脂比重
嵩密度(g/cm3)=試料質量(g)/メスシリンダー中の試料容積(cm3)
【0053】
図3に示すように、一次発泡粒子11は、代表的には、球形状を有する。一次発泡粒子11は、粒子の中心Cから表面までの距離をtとしたとき、中心Cから距離t/2の位置までの領域B´(内側領域B´)と、距離t/2の位置から表面までの領域A´(外側領域A´)とを有する。
内側領域B´に存在する気泡の平均径D
B´と外側領域A´に存在する気泡の平均径D
A´との差の絶対値|D
B´-D
A´|は、代表的には100μm以下、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下、とりわけ好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下、より特に好ましくは30μm以下であり、さらに特に好ましくは20μm以下である。
一次発泡粒子における絶対値|D
B´-D
A´|が上記範囲内であると、発泡成形体が含む二次発泡粒子における絶対値|D
B-D
A|を上記所定範囲内に安定して調整できる。
【0054】
内側領域B´に存在する気泡の平均径DB´と外側領域A´に存在する気泡の平均径DA´との大小関係は、絶対値|DB´-DA´|が上記所定の範囲内であれば、DA´が大きくてもよくDB´が大きくてもよい。
【0055】
内側領域B´に存在する気泡の平均径DB´は、代表的には30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり、代表的には200μm以下、好ましくは190μm以下、より好ましくは180μm以下である。
外側領域A´に存在する気泡の平均径DA´は、代表的には30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり、代表的には200μm以下、好ましくは190μm以下、より好ましくは180μm以下である。
【0056】
一次発泡粒子11は、代表的には、最表面に位置するセル膜11aと、セル膜11aの内側に位置する多孔質骨格11bとを備える。
図3では便宜上省略しているが、多孔質骨格11bは、複数の気孔を画定している。
【0057】
一つの実施形態において、一次発泡粒子11は、粒子全体の重量平均分子量が150000~400000である。
【0058】
B-3.発泡成形工程
図1および
図3に示すように、発泡成形工程は、代表的には、(i)予め調製した複数の一次発泡粒子11を成形型3に充填する工程と、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で一次発泡粒子11を加熱発泡させて二次発泡粒子12とする工程と、(iii)当該加熱発泡により、複数の二次発泡粒子12間の空隙を埋めると共に、複数の二次発泡粒子12を相互に融着させることにより一体化させる工程と、を含む。
【0059】
成形型3は、目的に応じた所定形状のキャビティを有する。成形型3は、代表的には、多数の小孔を有する閉鎖金型である。
【0060】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは100℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは1分~30分であり、より好ましくは2分~20分である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、二次発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0061】
必要に応じて、発泡成形体を熟成させてもよい。発泡成形体の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、発泡成形体中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0062】
以上によって、上記した発泡成形体1が製造される。
図4に示すように、発泡成形体1は、目的に応じて所定形状にカットされる。一つの実施形態においては、発泡成形体1を機械的にスライスカットすることにより、薄板形状を有するスライス体2が形成される。スライス体2は、優れたしなり性を有しているので、取扱時などにおける脆性破壊(割れ)を抑制できながら、種々の加工処理(例えば、打ち抜き加工)に好適に供することができ得る。
一つの実施形態においては、スライス体2は、厚み方向から見て矩形状を有する。
スライス体2の寸法に限定はない。例えば、長さ方向L4×幅方向L5は、2m×1mや、1.8m×0.92mがある。
スライス体2の厚みTは、代表的には1mm以上、好ましくは2mm以上であり、代表的には30mm以下、好ましくは20mm以上である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0064】
(1)スチレン系樹脂発泡成形体(発泡成形体)の特性の測定方法および評価方法
(1-1)スチレン系樹脂二次発泡粒子(二次発泡粒子)の|DB-DA|の算出
成形体の断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU3800」走査電子顕微鏡を用いて、12倍~100倍に拡大して撮影した。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。
具体的には、上記のように印刷した画像上に、タテ方向(画像の上下方向)、ヨコ方向(画像の左右方向)の各方向に平行する任意の長さ(目安:60mm)の直線を描いた際に、この任意の直線上に存在する気泡の数が5個~30個程度となるように電子顕微鏡での撮影倍率を調整した。
なお、スチレン系樹脂発泡粒子の表面から内側に700μmの位置までの範囲を領域A(外側領域A)とし、領域Aに囲まれる領域を領域B(内側領域B)とした。
領域Aにおける発泡粒子断面の2つの画像のそれぞれに、タテ方向およびヨコ方向に平行な3本の任意の直線(目安:長さ60mm)を描き、任意の直線を各方向6本ずつ描いた。なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。タテ方向、ヨコ方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数を算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tAを次式により算出した。
平均弦長tA(mm)=(任意の長さ[目安60])/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
さらに、次式により各方向における気泡径を算出し、それらの積の2乗根を平均気泡径とした。
気泡径DA(mm)=tA/0.616
領域Bにおける発泡粒子断面についても、上記方法を実施し、気泡径DBを求めた。
得られた気泡径DAと気泡径DBより、その差|DB-DA|を算出した。
なお、表1では、気泡径DA、気泡径DBおよびその差|DB-DA|の単位を、μmに換算して記載した。
【0065】
(1-2)二次発泡粒子のセル膜の厚み
発泡成形体の二次発泡粒子同士の接点を日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、500~5000倍に拡大して撮影した。その時の二次発泡粒子の最も表層の気泡膜厚を5点測長し、その平均を取った。その結果を表1に示す。
【0066】
(1-3)発泡成形体の曲げ強さ
ブロック形状を有する発泡成形体から、75mm×300mm×厚み30mmの形状をバーチカルカット機にて3枚切り出し、その曲げ強さをJIS A9511に準じて測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
(1-4)スライス体のしなり評価
上記した(1-3)発泡成形体の曲げ強さと同様にして、厚み5mmのスライス体を得た。そして、300mmの長手方向同士の75mmの辺を近づけていった際、中心部で破断する際の75mmの辺同士の距離を測定した。スライス体のしなりを以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
◎:0mm以上50mm以下
○:50mm以上100mm以下
△:100mm以上200mm以下
×:200mm以上300mm以下
【0068】
[実施例1]
(発泡性粒子の作製;準備工程)
内容積100リットルの攪拌機付反応器に、リン酸三カルシウム(分散剤)120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)1g、過酸化ベンゾイル(純度75重量%;重合開始剤)140g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(重合開始剤)30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、粒子径が0.5mm~0.7mmとなるように撹拌することにより懸濁液を形成した。その後、反応器内の温度を90℃まで昇温した後、6時間保持した。その後、さらに反応器内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が0.5mm~0.7mmで重量平均分子量が30万のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を得た。
【0069】
100リットルの攪拌機付反応器に、純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)2g、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)100gを入れ、さらに、上記で得られたスチレン系樹脂粒子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。
次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.6gの分散液に、過酸化ベンゾイル(純度75重量%;重合開始剤)190g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(重合開始剤)34g、2,4-ジフェニルー4―メチル―1-ペンテン(連鎖移動剤)29gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。
その後、ポリスチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、上記80℃で120分間保持し、その後、0.08℃/分の割合で85℃まで昇温した。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから45分間85℃を保持した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.6g、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)15gの分散液に、トルエン(発泡助剤)195g、エチレンビスステアリン酸アマイド(気泡調整剤)19gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)3210gとペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80)1146gとを圧入し、その状態で15分保持した後、100℃まで30分かけ昇温した後、3時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得た。
発泡性粒子40kgと、表面処理剤としてのポリエチレングリコール20g及びステアリン酸亜鉛60g、脂肪酸トリグリセライド40g、脂肪酸モノグリセライド20gとをタンブラーミキサーに投入し、30分間撹拌し、発泡性粒子を表面処理剤で被覆した。
【0070】
(一次発泡粒子の作製;予備発泡工程)
表面処理剤で被覆された発泡性粒子を15℃の保冷庫にて7日間保管後、容積量が330リットルである円筒型バッチ式加圧発泡機に投入し、蒸気により2分間加熱して、一次発泡粒子を得た。一次発泡粒子の嵩密度は0.011g/cm3、嵩発泡倍数は90倍であった。一次発泡粒子の嵩密度および嵩発泡倍数は、以下のようにして測定した。
<嵩密度の測定方法><嵩発泡倍数の測定方法>
嵩密度および嵩発泡倍数は一次発泡粒子を試料としてメスシリンダー内に自然落下させたのち、メスシリンダーの底をたたいて試料容積を一定にさせ、その容積と質量を測定し次式により算出した。樹脂比重は、スチレン系樹脂の場合1.0とした。
嵩密度(g/mL)=試料質量(g)/メスシリンダー中の試料容積(mL)
嵩発泡倍数(倍)=メスシリンダー中の試料容積(mL)/試料質量(g)×樹脂比重
【0071】
(発泡成形体の作製;発泡成形工程)
一次発泡粒子を室温雰囲気下で24時間放置後、キャビティのサイズ:高さ1.83m、幅0.53m、奥行0.92mの成形型を有する成形機を用い、成形型のキャビティ内に上記一次発泡粒子を充填し、0.05MPa(ゲージ圧)の蒸気圧で70秒間加熱し、次いで成形型内圧力が-0.01MPaになるまで冷却した後、成形型から離型し、成形型に対応するブロック状の発泡成形体を得た。その後、発泡成形体を、50℃乾燥室に1日間保管後、常温にて1週間保管した。また、発泡成形体の密度は0.0111g/cm3、発泡倍数は90倍であった。発泡成形体の密度および発泡倍数は、以下のようにして測定した。その結果を表1に示す。
<密度の測定方法><発泡倍数の測定方法>
発泡成形体の密度および発泡倍数のそれぞれは、試験片の寸法と質量を有効数字3桁以上になるように測定し、次式により算出した。樹脂比重は、スチレン系樹脂の場合1.0とした。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
発泡倍数(倍)=試験片体積(cm3)/試験片質量(g)×樹脂比重
【0072】
[実施例2]
実施例1と同様にしてスチレン系樹脂粒子を作製した。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、このスチレン系樹脂粒子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。
次いで、予め用意しておいた乳濁液を75℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)151g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート8.6gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。
その後、ポリスチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを150分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、上記75℃から105℃までで150分間かけて昇温した。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから30分かけて110℃まで昇温させ、20分かけて120℃とし、30分間120℃を保持した。
その後、50分かけて95℃まで冷却しながら、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、トルエン382g、スチレン単量体268g、エチルベンゼン172g、エチレンビスステアリン酸アマイド11gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。
この乳濁液を添加してから95℃に達した後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)4204gを反応器に圧入し、その状態で3時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
(スチレン系樹脂粒子の作製)
内容積100リットルの攪拌機付反応器にリン酸三カルシウム120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1g、過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、粒子径が1.0mm~1.4mmとなるように撹拌、溶解及び分散させて懸濁液を形成した。引き続き、反応器内の温度を90℃まで昇温した後、90℃で6時間保持した。その後、さらに反応器内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が1.0mm~1.4mmで重量平均分子量が30万のスチレン系樹脂粒子を得た。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作製)
次いで、100リットルの攪拌機付反応器に純水33kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、上記で得られたスチレン系樹脂粒子38kgを加えて攪拌した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水4kgに、アジピン酸ジイソブチル191g、シクロヘキサン573g、エチレンビスステアリン酸アマイド31gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)4204gを圧入し、その状態で15分保持した後、100℃まで30分かけ昇温した後、8時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
(スチレン系樹脂粒子の作製)
内容積100リットルの攪拌機付反応器にリン酸三カルシウム120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1g、過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、粒子径が1.0mm~1.4mmとなるように撹拌、溶解及び分散させて懸濁液を形成した。引き続き、反応器内の温度を90℃まで昇温した後、90℃で6時間保持した。その後、さらに反応器内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が1.0mm~1.4mmで重量平均分子量が30万のスチレン系樹脂粒子を得た。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作製)
次いで、100リットルの攪拌機付反応器に純水33kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、上記で得られたスチレン系樹脂粒子38kgを加えて攪拌した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水4kgに、トルエン380g、スチレン単量体300g、エチルベンゼン150gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)5050gを圧入し、その状態で15分保持した後、100℃まで30分かけ昇温した後、8時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
実施例1と同様にしてスチレン系樹脂粒子を作製した。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、このスチレン系樹脂子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)190g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート34g、2,4-ジフェニル-4―メチル-1-ペンテン29gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、スチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、80℃で120分間保持した後、スチレン単量体を同温度で重合させ、その後、0.08℃/分の割合で85℃まで昇温した。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから45分間85℃を保持した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、アジピン酸ジイソブチル230g、シクロヘキサン306g、エチレンビスステアリン酸アマイド6gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、イソブタン2350gとノルマルブタン1010gとペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80)1150gとを圧入し、その状態で15分保持した後、110℃まで45分かけて昇温し、110℃で3時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0100g/cm
3、成形倍数は100倍であった。その結果を表1に示す。
得られたブロック形状を有する発泡成形体から、スライサーによって、平板形状を有するスライス体をカットした。スライス体の厚みは、5mmであった。スライス体の切断面は、厚み方向に沿っており、その面積は、1.66mm
2(1.8m×0.92m)であった。
また、ブロック状の成形体から10mm×10mm×厚み2mmの試料を剃刀で切り出し、その切り出し断面を、走査電子顕微鏡(SU3800;日立ハイテク社製)によって撮影した。当該走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図5に示す。
【0076】
[実施例6]
(スチレン系樹脂粒子の作製)
内容積100リットルの攪拌機付反応器にリン酸三カルシウム120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1g、過酸化ベンゾイル(純度75%)171g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、粒子径が0.85mm~1.4mmとなるように撹拌、溶解及び分散させて懸濁液を形成した。引き続き、反応器内の温度を90℃まで昇温した後、90℃で6時間保持した。その後、さらに反応器内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却し、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が0.85mm~1.4mmで重量平均分子量が25万のスチレン系樹脂粒子を得た。
その後、100リットルの攪拌機付反応器に純水33kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、上記で得られたスチレン系樹脂粒子38kgを加えて攪拌した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水4kgに、アジピン酸ジイソブチル230g、エチレンビスステアリン酸アマイド31gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、イソブタン2370g、ペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80)1450gを圧入し、その状態で15分保持した後、110℃まで30分かけ昇温した後、3時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0105g/cm3、成形倍数は95倍であった。その結果を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
実施例1と同様にしてスチレン系樹脂粒子を作製した。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、このスチレン系樹脂粒子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。
次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)190g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート34g、2,4-ジフェニル―4―メチル―1-ペンテン7gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。
その後、スチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、80℃で180分間保持し重合させた。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから45分間80℃を保持した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.8g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、トルエン380g、スチレン単量体80g、エチレンビスステアリン酸アマイド38gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、イソブタン2000gとノルマルブタン1340gとを圧入し、その状態で15分保持した後、110℃まで45分かけ昇温した後、3時間保持し、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0100g/cm3、成形倍数は100倍であった。その結果を表1に示す。
【0078】
[実施例8]
成形倍数が69倍(密度0.0143g/cm3)であること以外は、実施例5と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0079】
[実施例9]
成形倍数が80倍(密度0.0125g/cm3)であること以外は、実施例5と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0080】
[実施例10]
成形倍数が120倍(密度0.0083g/cm3)であること以外は、実施例5と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0081】
[実施例11]
成形倍数が130倍(密度0.0077g/cm3)であること以外は、実施例5と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0082】
[実施例12]
実施例1と同様にしてスチレン系樹脂粒子を作製した。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、このスチレン系樹脂子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)190g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート34g、2,4-ジフェニル-4―メチル-1-ペンテン29gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、スチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、80℃で120分間保持した後、スチレン単量体を同温度で重合させ、その後、0.08℃/分の割合で85℃まで昇温した。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから45分間85℃を保持した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、アジピン酸ジイソブチル459g、エチレンビスステアリン酸アマイド68gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、イソブタン4204gを圧入し、その状態で15分保持した後、110℃まで45分かけて昇温し、100℃で3時間保持した後、反応器内の温度を25℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0100g/cm3、成形倍数は100倍であった。その結果を表1に示す。
【0083】
[実施例13]
実施例1と同様にしてスチレン系樹脂粒子を作製した。
100リットルの攪拌機付反応器に純水35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、ピロリン酸マグネシウム100gを入れ、さらに、このスチレン系樹脂子10kgを加えて攪拌し懸濁させた。次いで、予め用意しておいた乳濁液を80℃に保持した反応器に添加した。この乳濁液は、純水5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gの分散液に、重合開始剤の過酸化ベンゾイル(純度75%)190g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート34g、2,4-ジフェニル-4―メチル-1-ペンテン29gを溶解したスチレン単量体4kgを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化させたものである。その後、スチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体と重合開始剤とがよく吸収されるように15分間保持し、保持した直後からスチレン単量体25kgを180分かけて連続的に滴下した。反応器の温度としては、80℃で120分間保持した後、スチレン単量体を同温度で重合させ、その後、0.08℃/分の割合で85℃まで昇温した。次に、スチレン単量体の滴下が終了してから45分間85℃を保持した。
その後、予め調製しておいた乳濁液を反応器に添加した。この乳濁液は、純水2.5kg、ドデシルベンンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ピロリン酸マグネシウム15gの分散液に、シクロヘキサン530gを加え、ホモミキサーで攪拌して乳濁化したものである。この乳濁液を添加してから20分後に、発泡剤として、ノルマルブタン3350gとペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80)1150gとを圧入し、その状態で15分保持した後、110℃まで45分かけて昇温し、110℃で3時間保持した後、反応器内の温度を40℃まで冷却した。
その後、反応器から内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級し、発泡性粒子を得たのち、実施例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0100g/cm3、成形倍数は100倍であった。その結果を表1に示す。
【0084】
[比較例1]
特開平8-295757号公報の実施例4の手順に従って発泡成形体を得た。なお、発泡成形体の密度は0.0111g/cm3、成形倍数は90倍であった。その結果を表1に示す。
【0085】
[比較例2]
成形倍数が100倍(密度0.0100g/cm3)であること以外は、比較例1と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0086】
[比較例3]
成形倍率が60倍(密度0.0167g/cm3)であること以外は、実施例5と同様にしてブロック状の発泡成形体を得た。その結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、発泡成形体の密度および曲げ強さと、発泡成形体における二次発泡粒子の|DB-DA|とを適切に調整することにより、発泡成形体に可撓性および靭性をバランスよく付与でき、スライス体に優れたしなりを付与することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。これらは、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。