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特許7621221複合アミン吸収液、除去装置及び除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】複合アミン吸収液、除去装置及び除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20250117BHJP
   B01D 53/52 20060101ALI20250117BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250117BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20250117BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/52 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021138177
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032195
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕士
(72)【発明者】
【氏名】平田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】上條 孝
(72)【発明者】
【氏名】登里 朋来
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0321139(US,A1)
【文献】特表2013-516304(JP,A)
【文献】特開2005-296897(JP,A)
【文献】特表2007-527791(JP,A)
【文献】特表平02-504367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中のCO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収する複合アミン吸収液であって、
(a)鎖状モノアミンと、
(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、
(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンと、
(d)水と、を含み、
(a)の鎖状モノアミンは、吸収液全体の15重量%以上60重量%以下であり、
(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンは、吸収液全体の1重量%以上15重量%以下であり、
(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、吸収液全体の5重量%より多く35重量%以下であり、
(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン/(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンの重量比が1以上16.5以下である
む複合アミン吸収液。
【請求項2】
(a)の鎖状モノアミンは、1級鎖状モノアルカノールアミン、2級鎖状モノアルカノールアミンまたは3級鎖状モノアルカノールアミンの少なくとも一種を含む請求項1に記載の複合アミン吸収液。
【請求項3】
(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンは、1級鎖状ポリアミン、2級鎖状ポリアミン、2級環状ポリアミンの少なくとも一種を含む請求項1または請求項2に記載の複合アミン吸収液。
【請求項4】
(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、3級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液。
【請求項5】
(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、3級アミノ基と1級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液。
【請求項6】
(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、3級アミノ基と2級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液。
【請求項7】
(a)の鎖状モノアミンと、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、の合計濃度は、吸収液全体の20質量%以上65重量%である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液。
【請求項8】
((b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン+(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン)/((a)の鎖状モノアミン)の重量比が0.16以上3.5以下である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液。
【請求項9】
CO2及びH2Sの少なくとも一方を含有するガスと吸収液とを接触させてCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去する吸収塔と、CO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収した溶液を再生する吸収液再生塔とを有し、前記吸収液再生塔でCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去して再生した溶液を前記吸収塔で再利用する除去装置であって、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液を用いる除去装置。
【請求項10】
前記吸収塔は、吸収温度が、30~80℃であり、
前記吸収液再生塔は、再生温度が、110℃以上である請求項に記載の除去装置。
【請求項11】
CO2及びH2Sの少なくとも一方を含有するガスと吸収液とを接触させてCO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収塔内で除去し、CO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収した溶液を吸収液再生塔内で再生し、前記吸収液再生塔でCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去して再生した溶液を前記吸収塔で再利用する除去方法であって、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複合アミン吸収液を用いる除去方法。
【請求項12】
前記吸収塔の吸収温度が、30~80℃であり、
前記吸収液再生塔の再生温度が、110℃以上である請求項11に記載の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合アミン吸収液、除去装置及び除去方法に関する。
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去・回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。また、のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する工程としては、吸収塔において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させ、CO2を吸収した吸収液を再生塔において加熱し、CO2を放出させると共に吸収液を再生して再び吸収塔に循環して再使用するものが採用されている。
【0003】
CO2吸収液としては、例えばプロパンジアミン化合物を含む吸収液が提案されている(特許文献1から特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-296897号公報
【文献】特表2007-527791号公報
【文献】特許第4634384号公報
【文献】特開2018-122278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献4に記載されている吸収液を用いることで、処理対象のガスに含まれるCO2、HSの少なくとも一方を吸収液でガスから分離させることができる。ここで、吸収液は、反応速度が速いほど、吸収する対象のCO2、H2Sを効率よく回収することができる。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑み、反応速度がより速い複合アミン吸収液、除去装置及び除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本開示の複合アミン吸収液は、ガス中のCO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収する複合アミン吸収液であって、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンと、(d)水と、を含む。
【0008】
上述した課題を解決するための本開示の除去装置は、CO2及びH2Sの少なくとも一方を含有するガスと吸収液とを接触させてCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去する吸収塔と、CO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収した溶液を再生する吸収液再生塔とを有し、前記吸収液再生塔でCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去して再生した溶液を前記吸収塔で再利用する除去装置であって、上記に記載の複合アミン吸収液を用いる。
【0009】
上述した課題を解決するための本開示の除去方法は、CO2及びH2Sの少なくとも一方を含有するガスと吸収液とを接触させてCO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収塔内で除去し、CO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収した溶液を吸収液再生塔内で再生し、前記吸収液再生塔でCO2及びH2Sの少なくとも一方を除去して再生した溶液を前記吸収塔で再利用する除去方法であって、上記に記載の複合アミン吸収液を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、(a)の直鎖モノアミンと、(b)のジアミンと、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとを、水に溶解して吸収液とすることによって、複合的に絡み合い、これらの相乗効果により、CO2又はH2S又はその双方の吸収性が良好なものとなり、吸収液流量や吸収塔高さの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の吸収液を用いるCO2回収装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、表1の実施例と第1比較例との反応速度の増加率の各結果を示す図である。
図3図3は、表1の実施例と第2比較例との反応速度の増加率の各結果を示す図である。
図4図4は、表2の実施例と第1比較例との反応速度の増加率の各結果を示す図である。
図5図5は、表2の実施例と第2比較例との反応速度の増加率の各結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本開示が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
本開示による複合アミン吸収液は、ガス中のCO2及びH2Sの少なくとも一方を吸収する複合アミン吸収液であって、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンと、(d)水と、を含む。つまり、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンと、が、水に溶解した液体である。本開示では、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとを、水に溶解して吸収液とすることによって、複合的に絡み合い、これらの相乗効果により、CO2及びH2Sの少なくとも一方が含まれたガスに対するCO2又はH2S又はその双方の吸収性が良好となる。つまり、吸収液の反応速度を高くすることができる。
【0014】
ここで、(a)直鎖モノアミン(a成分)は、1級直鎖モノアミン(a1成分、1級鎖状モノアルカノールアミン)、2級直鎖モノアミン(a2成分、2級鎖状モノアルカノールアミン)、3級直鎖モノアミン(a3成分、3級鎖状モノアルカノールアミン)の少なくとも一つを含むものである。また、1級直鎖モノアミンと2級直鎖モノアミンとの2成分直鎖アミンの組合せ、1級直鎖モノアミンと3級直鎖モノアミンとの2成分直鎖アミンの組合せ、さらには1級直鎖モノアミン、2級直鎖モノアミン及び3級直鎖モノアミンの3成分直鎖アミンの組合せとしてもよい。
【0015】
また、1級直鎖モノアミン(a1成分、1級鎖状モノアルカノールアミン)としては、立体障害性の低い1級モノアミン(a1L成分)又は立体障害性の高い1級モノアミン(a1H成分)とするのが好ましい。ここで、1級直鎖モノアミンにおいて、立体障害性の低い1級モノアミン(a1L成分)としては、例えばモノエタノールアミン(MEA)、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、ジグリコールアミンから選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0016】
また、1級直鎖モノアミンにおいて、立体障害性の高い1級モノアミン(a1H成分)としては、下記「化1」に示す化学式で表される化合物であることが好ましい。
【化1】

【0017】
具体的には、立体障害性の高い1級モノアミン(a1H成分)としては、例えば2-アミノ-1-プロパノール(2A1P)、2-アミノ-1-ブタノール(2A1B)、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール(AMB)、1-アミノ-2-プロパノール(1A2P)、1-アミノ-2-ブタノール(1A2B)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0018】
また、2級直鎖モノアミン(a2)としては、下記「化2」に示す化学式で表される化合物であることが好ましい。
【化2】

【0019】
具体的には、2級直鎖モノアミン(2a、2級鎖状モノアルカノールアミン)としては、例えばN-メチルアミノエタノール、N-エチルアミノエタノール、N-プロピルアミノエタノール、N-ブチルアミノエタノール等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0020】
また、3級直鎖モノアミン(a3)としては、下記「化3」に示す化学式で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

【0021】
具体的には、3級直鎖モノアミン(a3、3級鎖状モノアルカノールアミン)としては、例えばN-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジ-n-ブチルアミノエタノール、N-エチル-N-メチルエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0022】
(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)としては、1級直鎖ポリアミン、2級直鎖ポリアミン、2級環状ポリアミンの少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0023】
ここで、1級直鎖ポリアミン群としては、例えばエチレンジアミン(EDA)、プロパンジアミン(PDA)等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。2級直鎖ポリアミン群としては、例えば、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、N,N’-ジエチルエチレンジアミン(DEEDA)、N,N’-ジメチルプロパンジアミン(DMPDA)等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0024】
また、2級環状ポリアミンとしては、例えばピペラジン(PZ)、2-メチルピペラジン(2MPZ)、2,5-ジメチルピペラジン(DMPZ)、等の少なくとも一種から選ばれた化合物を挙げることができるが本開示はこれに限定されるものではない。なお、これらを組み合わせるようにしてもよい。
【0025】
また、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のうち2つの等級のアミノ基を含有する。(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとしては、3級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むことが好ましい。さらに、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとしては、3級アミノ基と1級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0026】
3級アミノ基と1級アミノ基を含有する鎖状ジアミンとしては、N,N-ジエチルプロパンジアミン、N,N-ジブチルプロパンジアミン等から選ばれる少なくとも一種が例示される。
【0027】
また、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとしては、3級アミノ基と2級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むこともより好ましい。3級アミノ基と2級アミノ基を含有する鎖状ジアミンとしては、N,N,N’-トリメチルプロパンジアミン、N,N,N’-トリエチルプロパンジアミン、N’-エチル-N,N-ジメチルプロパンジアミン,N,N-ジエチル-N’-メチルプロパンジアミン等から選ばれる少なくとも一種が例示される。
【0028】
次に、各成分(a成分、b成分、c成分)の配合割合については、以下のような規定することが好ましい。(a)の直鎖モノアミン(a成分)と、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)との濃度合計は、吸収液全体の20重量%以上65重量%以下であることが好ましく、さらに好適には、吸収液全体の30重量%以上60重量%以下とすることがよりが好ましい。この範囲とすることで吸収液として良好に機能させることができる。(a)の直鎖モノアミン(a成分)は、吸収液全体の15重量%以上60重量%以下であることが好ましく、さらに好適には、吸収液全体の20重量%以上55重量%以下とすることがより好ましい。(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)は、吸収液全体の1重量%以上15重量%以下であることが好ましく、さらに好適には、吸収液全体の2重量%以上10重量%以下とすることがより好ましい。(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、吸収液全体の5重量%より多く35重量%以下であることが好ましく、さらに好適には、吸収液全体の9重量%より多く25重量%以下とすることがより好ましい。
【0029】
また、(a)の直鎖モノアミン(a成分)に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)及び(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)との配合割合は、((b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン+(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン)/((a)の鎖状モノアミン)の重量比が0.16以上3.5以下、つまり、0.16≦(b+c)/a≦3.5の配合とすることが好ましく、0.23≦(b+c)/a≦1.5の配合とすることがより好ましい。
【0030】
また、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンと(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンとの配合割合は、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン/(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンの重量比が1以上16.5以下であることが好ましい、つまり、1≦c/b≦16.5の配合とすることが好ましく、3≦c/b≦12.5の配合とすることがより好ましい。
【0031】
また、水分(d成分)の配合割合(重量%)は、(a)の直鎖モノアミンと、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの合計重量の残りを、水の重量割合としている。
【0032】
本開示において、例えばCO2等を含有する排ガスとの接触時の化学吸収法の吸収塔の吸収温度は、通常30~80℃の範囲とするのが好ましい。また本開示で用いる吸収液には、必要に応じて腐食防止剤、劣化防止剤などが加えられる。
【0033】
また、処理されるガス中のCO2を吸収する吸収時のCO2吸収塔入口のCO2分圧としては、低CO2分圧(例えば0.003~0.1MPa)とするのが化学吸収法の適用から好ましい。
【0034】
本開示において、CO2等を吸収した吸収液から、CO2等を放出する再生塔での再生温度は、再生塔内圧力が130~200kPa(絶対圧)の場合、吸収液再生塔の塔底温度が110℃以上であることが好ましい。これは、110℃未満での再生では、システム内での吸収液の循環量を多くすることが必要となり、再生効率の点から好ましくないからである。より好適には115℃以上での再生が好ましい。
【0035】
本開示により処理されるガスとしては、例えば石炭ガス化ガス、合成ガス、コークス炉ガス、石油ガス、天然ガス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、CO2やH2S等の酸性ガスを含むガスであれば、いずれのガスでもよい。
【0036】
本開示のガス中のCO2又はH2S又はその双方を除去する方法で採用できるプロセスは、特に限定されないが、CO2を除去する除去装置の一例について図1を参照しつつ説明する。
【0037】
図1は、実施例1に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、実施例1に係るCO2回収装置12は、ボイラやガスタービン等の産業燃焼設備13から排出されたCO2とO2とを含有する排ガス14を冷却水15によって冷却する排ガス冷却装置16と、冷却されたCO2を含有する排ガス14とCO2を吸収するCO2吸収液(以下、「吸収液」ともいう。)17とを接触させて排ガス14からCO2を除去するCO2回収部18Aを有するCO2吸収塔18と、CO2を吸収したCO2吸収液(以下、「リッチ溶液」ともいう。)19からCO2を放出させてCO2吸収液を再生する吸収液再生塔20と、を有する。そして、このCO2回収装置12では、吸収液再生塔20でCO2を除去した再生CO2吸収液(以下、「リーン溶液」ともいう。)17はCO2吸収塔18でCO2吸収液として再利用する。
【0038】
なお、図1中、符号13aは煙道、13bは煙突、34はスチーム凝縮水である。前記CO2回収装置12は、既設の排ガス源からCO2を回収するために後付で設けられる場合と、新設排ガス源に同時付設される場合とがある。なお、排ガス14のラインには開閉可能なダンパを設置し、CO2回収装置12の運転時は開放する。また排ガス源は稼動しているが、CO2回収装置12の運転を停止した際は閉止するように設定する。
【0039】
このCO2回収装置12を用いたCO2回収方法では、まず、CO2を含んだボイラやガスタービン等の産業燃焼設備13からの排ガス14は、排ガス送風機22により昇圧された後、排ガス冷却装置16に送られ、ここで冷却水15により冷却され、CO2吸収塔18に送られる。
【0040】
前記CO2吸収塔18において、排ガス14は本実施例に係るアミン吸収液であるCO2吸収液17と向流接触し、排ガス14中のCO2は、化学反応によりCO2吸収液17に吸収される。CO2回収部18AでCO2が除去された後のCO2除去排ガスは、CO2吸収塔18内の水洗部18Bでノズルから供給されるCO2吸収液を含む循環する洗浄水21と気液接触して、CO2除去排ガスに同伴するCO2吸収液17が回収され、その後CO2が除去された排ガス23は系外に放出される。また、CO2を吸収したCO2吸収液であるリッチ溶液19は、リッチ溶液ポンプ24により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器25において、吸収液再生塔20で再生されたCO2吸収液17であるリーン溶液により加熱され、吸収液再生塔20に供給される。
【0041】
吸収液再生塔20の上部から内部に放出されたリッチ溶液19は、底部から供給される水蒸気により吸熱反応を生じて、大部分のCO2を放出する。吸収液再生塔20内で一部または大部分のCO2を放出したCO2吸収液はセミリーン溶液と呼称される。このセミリーン溶液は、吸収液再生塔20の底部に至る頃には、ほぼ全てのCO2が除去されたCO2吸収液(リーン溶液)17となる。このリーン溶液17はその一部がリボイラ26で水蒸気27により過熱され、吸収液再生塔20内部にCO2脱離用の水蒸気を供給している。
【0042】
一方、吸収液再生塔20の塔頂部からは、塔内においてリッチ溶液19およびセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴ったCO2同伴ガス28が導出され、コンデンサ29により水蒸気が凝縮され、分離ドラム30にて水が分離され、CO2ガス40が系外に放出されて、別途圧縮器41により圧縮され、回収される。この圧縮・回収されたCO2ガス42は、分離ドラム43を経由した後、石油増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)を用いて油田中に圧入するか、帯水層へ貯留し、温暖化対策を図っている。水蒸気を伴ったCO2同伴ガス28から分離ドラム30にて分離・還流された還流水31は還流水循環ポンプ35にて吸収液再生塔20の上部と洗浄水21側に各々供給される。再生されたCO2吸収液(リーン溶液)17は、リッチ・リーン溶液熱交換器25にて、リッチ溶液19により冷却され、つづいてリーン溶液ポンプ32にて昇圧され、さらにリーン溶液クーラ33にて冷却された後、CO2吸収塔18内に供給される。なお、この実施の形態では、あくまでその概要を説明するものであり、付属する機器を一部省略して説明している。
【0043】
以下、本開示の効果を示す好適な試験例について説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0044】
[試験例]
図示しない吸収試験装置を用いて、CO2の吸収を行った。図2及び図3は、試験例1-1から1-20における3成分系の複合アミン吸収液(直鎖モノアミン(a成分)、等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)、等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)を水(d成分)に溶解したもの)と比較例との吸収速度の関係を計測した結果を示す図である。試験例の成分一覧を下記[表1]に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
[試験例1-1から1-3]
試験例1-1では、(a)の直鎖モノアミン(a成分)として、モノエタノールアミンを用い、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)としてプロパンジアミンを用い、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)として、N,N-ジエチルプロパンジアミンを用い、水(d成分)に溶解混合させて吸収液とした。試験例1では、(b+c)/aの重量比を1.0とし、c/bの重量比を10.5とした。
【0047】
試験例1-2では、試験例1-1と同様のアミン成分を用い、配合比を(b+c)/aの重量比を1.5とし、c/bの重量比を12.5とした。試験例1-3では、試験例1-1と同様のアミン成分を用い、配合比を(b+c)/aの重量比を3.5とし、c/bの重量比を16.5とした。
【0048】
次に、試験例1-4から1-20では、試験例1-1に対してアミン成分を変更し、配合比を(b+c)/aの重量比を0.16以上3.5以下とし、c/bの重量比を1以上16.5以下とした。
【0049】
試験例1-4では、試験例1-1に対して、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)をN,N-ジブチルプロパンジアミンとした以外は試験例1-1と同様の組成の吸収液とした。
【0050】
試験例1-5では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとモノエタノールアミンを用いた以外は同様の組成の吸収液とした。
【0051】
試験例1-6では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-エチルアミノエタノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0052】
試験例1-7では、試験例1-6に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-ブチルアミノエタノールとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0053】
試験例1-8では、試験例1-6に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-メチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0054】
試験例1-9では、試験例1-6に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-エチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0055】
試験例1-10では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)を2-メチルピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0056】
試験例1-11では、試験例1-10に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0057】
試験例1-12では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)を2-メチルピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0058】
試験例1-13では、試験例1-12に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0059】
試験例1-14では、試験例1-12に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0060】
試験例1-15では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとN-メチルジエタノールアミンとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0061】
試験例1-16では、試験例1-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとN-エチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0062】
試験例1-17では、試験例1-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとN-メチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0063】
試験例1-18では、試験例1-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとN-エチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0064】
試験例1-19では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-メチルジエタノールアミンと2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0065】
試験例1-20では、試験例1-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルジエタノールアミンと2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0066】
上記試験例のそれぞれについて吸収液がCOを吸収した速度を測定した。試験条件は、温度が40℃であり,CO分圧が10kPaである。比較例として、それぞれの試験例について、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分の重量分を(a)の直鎖モノアミンとした吸収液を作成して、同様の吸収速度を算出した。各試験例について、比較例を1として、試験例の反応速度の増加率を算出した結果を図2に示す。
【0067】
また、別の比較例として、アミン成分として、モノエタノールアミンを30重量%(30w%)含む吸収液を基準として、各試験例の反応速度の増加率を算出した結果を図3に示す。
【0068】
次に、アミンの合計濃度を55w%とし、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分として、N,N-ジエチルプロパンジアミンを用いた吸収液と、比較例として、c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンに代えて、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンを用いた吸収液との吸収速度を比較した。その結果、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分を用いた吸収液の反応速度が94%上昇した。つまり、1.94倍の反応速度となった。
【0069】
次に、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンを変更して行った試験例について説明する。図4及び図5は、試験例2-1から2-21における3成分系の複合アミン吸収液(直鎖モノアミン(a成分)、等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)、等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)を水(d成分)に溶解したもの)と比較例との吸収速度の関係を計測した結果を示す図である。試験例の成分一覧を下記[表2]に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
[試験例2-1から2-3]
試験例2-1では、(a)の直鎖モノアミン(a成分)として、モノエタノールアミンを用い、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)としてプロパンジアミンを用い、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)として、N,N-トリメチルプロパンジアミンを用い、水(d成分)に溶解混合させて吸収液とした。試験例2では、(b+c)/aの重量比を1.0とし、c/bの重量比を10.5とした。
【0072】
試験例2-2では、試験例2-1と同様のアミン成分を用い、配合比を(b+c)/aの重量比を1.5とし、c/bの重量比を12.5とした。試験例2-3では、試験例2-1と同様のアミン成分を用い、配合比を(b+c)/aの重量比を3.5とし、c/bの重量比を16.5とした。
【0073】
次に、試験例2-4から2-21では、試験例2-1に対してアミン成分を変更し、配合比を(b+c)/aの重量比を0.16以上3.5以下とし、c/bの重量比を1以上16.5以下とした。
【0074】
試験例2-4では、試験例1-1に対して、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)をN,N,N‘-トリエチルプロパンジアミンとした以外は試験例2-1と同様の組成の吸収液とした。
【0075】
試験例2-5では、試験例2-1に対して、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)をN’-エチル-N,N-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0076】
試験例2-6では、試験例2-1に対して、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミン(c成分)をN,N-ジエチル-N’-メチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0077】
試験例2-7では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとモノエタノールアミンとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0078】
試験例2-8では、試験例2-7に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-エチルアミノエタノールとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0079】
試験例2-9では、試験例2-7に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと、N-ブチルアミノエタノールとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0080】
試験例2-10では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)を2-メチルピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0081】
試験例2-11では、試験例2-10に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0082】
試験例2-12では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)を2-メチルピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0083】
試験例2-13では、試験例2-12に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0084】
試験例2-14では、試験例2-12に対して、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0085】
試験例2-15では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとN-メチルジエタノールアミンとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をピペラジンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0086】
試験例2-16では、試験例2-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルアミノエタノールとN-エチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0087】
試験例2-17では、試験例2-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとN-メチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0088】
試験例2-18では、試験例2-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-ブチルアミノエタノールとN-エチルジエタノールアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0089】
試験例2-19では、試験例2-15に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)を3-ジメチルアミノ-1-プロパノールとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0090】
試験例2-20では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-メチルジエタノールアミンと2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0091】
試験例2-21では、試験例2-1に対して、(a)の直鎖モノアミン(a成分)をN-エチルジエタノールアミンと2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとし、(b)の等級が同じアミノ基を含有するジアミン(b成分)をN,N’-ジメチルプロパンジアミンとした以外は同様の組成の吸収液とした。
【0092】
比較例として、それぞれの試験例について、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分の重量分を(a)の直鎖モノアミンとした吸収液を作成して、同様の吸収速度を算出した。各試験例について、比較例を1として、試験例の反応速度の増加率を算出した結果を図4に示す。
【0093】
また、別の比較例として、アミン成分として、モノエタノールアミンを30重量%(30w%)含む吸収液を基準として、各試験例の反応速度の増加率を算出した結果を図5に示す。
【0094】
次に、アミンの合計濃度を55w%とし、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分として、N,N,N’-トリメチルプロパンジアミンを用いた吸収液と、比較例として、c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンに代えて、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミンを用いた吸収液との吸収速度を比較した。その結果、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンの成分を用いた吸収液の反応速度が124%上昇した。つまり、2.24倍の反応速度となった。
【0095】
以上の試験例に示すように、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンと、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンと、(d)水と、を含む複合アミン吸収液を用いることで、吸収液としての反応速度を早くでき、吸収液としての性能を高くすることができる。特に、(c)等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンを含むことで、等級が同じアミノ基を含有する鎖状ジアミンを含む場合や、(a)鎖状モノアミンと、(b)等級が同じアミノ基を含有するジアミンとのみで構成されている吸収液よりも吸収液の性能を高くすることができる。
【0096】
また、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、3級アミノ基と1級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むまたは3級アミノ基と2級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むことで、吸収速度をより速くすることができる。特に、(c)の等級が異なるアミノ基を含有する鎖状ジアミンは、3級アミノ基と2級アミノ基を含有する鎖状ジアミンの少なくとも一種を含むことでより吸収速度を速くすることができる。
【符号の説明】
【0097】
12 CO2回収装置
13 産業燃焼設備
14 排ガス
16 排ガス冷却装置
17 CO2吸収液(リーン溶液)
18 CO2吸収塔
19 CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)
20 吸収液再生塔
21 洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5