(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】導電性高分子含有液、並びに前記導電性高分子含有液の硬化層を備えた導電性積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20250117BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20250117BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20250117BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20250117BHJP
C08K 5/19 20060101ALI20250117BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250117BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08L65/00
C08G61/12
C08L25/18
C08K5/05
C08K5/19
B32B27/00 A
H01B1/12 F
(21)【出願番号】P 2021138613
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】市川 宗樹
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115807(WO,A1)
【文献】特開2008-147035(JP,A)
【文献】特開2020-097681(JP,A)
【文献】特開2014-189597(JP,A)
【文献】特開2022-075086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08G
B32B
H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、イソプロピルアルコールとを含有する導電性高分子含有液であり、
前記ポリアニオンが、前記ポリアニオンの一部のアニオン基と、第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されており、
前記導電性高分子含有液の総質量に対する前記イソプロピルアルコールの含有量が84質量%以上であ
り、
前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含み、
前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸を含み、
前記第四級アンモニウム化合物がテトラアルキルアンモニウムハライドを含み、
前記テトラアルキルアンモニウムハライドが有する4つのアルキル基は、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基である、導電性高分子含有液。
【請求項2】
前記テトラアルキルアンモニウムハライドが、テトラブチルアンモニウムハライド、及びテトラオクチルアンモニウムハライドのうち少なくとも一方を含む、請求項
1に記載の導電性高分子含有液。
【請求項3】
さらに高導電化剤を含む、請求項1
又は2に記載の導電性高分子含有液。
【請求項4】
前記高導電化剤が、不飽和結合を1つ以上又はヒドロキシ基を1つ以上有し、炭素数3~5である化合物を含む、請求項
3に記載の導電性高分子含有液。
【請求項5】
前記高導電化剤が、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2,3-ブテンジオール、及び2,3-ブチンジオールから選択される少なくとも1種を含む、請求項
3に記載の導電性高分子含有液。
【請求項6】
基材の少なくとも一部に、請求項1~
5の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の硬化物からなる導電層を備えた、導電性積層体。
【請求項7】
基材の少なくとも一部に、請求項1~
5の何れか一項に記載の導電性高分子含有液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子含有液、並びに前記導電性高分子含有液の硬化層を備えた導電性積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電層を形成するための塗料又はその成分として、π共役系導電性高分子にポリアニオンがドープした導電性複合体を含む導電性高分子分散液を使用することがある。例えば、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は水に対して分散し難いが、これにポリスチレンスルホン酸がドープしてPEDOT-PSSを形成することにより、水に対する分散性が高まる。
導電性高分子分散液をプラスチック製の基材に塗工して導電層を形成する場合、導電性高分子分散液の基材に対する濡れ性が高いことが求められる。この目的のため、水系分散媒に変えてアルコール等の有機溶剤に導電性複合体を分散させるべく、導電性複合体にアミン化合物を反応させ、疎水化する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の方法においては、導電性複合体に結合させるアミン化合物の他にヒドロキシピリジン化合物を必須成分としなければならない制約がある。
【0005】
本発明は、ヒドロキシピリジン化合物を使用せずともイソプロピルアルコールに対する分散安定性に優れた導電性複合体を含む導電性高分子含有液、並びに前記導電性高分子含有液の硬化層を備えた導電性積層体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、イソプロピルアルコールとを含有する導電性高分子含有液であり、前記ポリアニオンが、前記ポリアニオンの一部のアニオン基と、第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されており、前記導電性高分子含有液の総質量に対する前記イソプロピルアルコールの含有量が84質量%以上である、導電性高分子含有液。
[2] 前記第四級アンモニウム化合物が非水溶性第四級アンモニウム化合物を含む、[1]に記載の導電性高分子含有液。
[3] 前記第四級アンモニウム化合物がテトラアルキルアンモニウムハライドを含む、[1]又は[2]に記載の導電性高分子含有液。
[4] 前記テトラアルキルアンモニウムハライドが、テトラブチルアンモニウムハライド、及びテトラオクチルアンモニウムハライドのうち少なくとも一方を含む、[3]に記載の導電性高分子含有液。
[5] さらに高導電化剤を含む、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[6] 前記高導電化剤が、不飽和結合を1つ以上又はヒドロキシ基を1つ以上有し、炭素数3~5である化合物を含む、[5]に記載の導電性高分子含有液。
[7] 前記高導電化剤が、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2,3-ブテンジオール、及び2,3-ブチンジオールから選択される少なくとも1種を含む、[5]に記載の導電性高分子含有液。
[8] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む、又は、前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸を含む、[1]~[7]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[9] 基材の少なくとも一部に、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の硬化物からなる導電層を備えた、導電性積層体。
[10] 基材の少なくとも一部に、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性高分子含有液は、分散安定性に優れる。換言すれば保存安定性に優れる。
本発明の導電性積層体は導電性が良好な導電層を備える。
本発明に関する導電性積層体の製造方法によれば、使用する導電性高分子含有液の分散安定性が優れ、基材に対する濡れ性も優れるので、導電性積層体を容易に製造できる。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【0010】
≪導電性高分子含有液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、イソプロピルアルコール(イソプロパノール)とを含有する導電性高分子含有液である。
前記ポリアニオンは、前記ポリアニオンの一部のアニオン基と、第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されており、前記導電性高分子含有液の総質量に対する前記イソプロピルアルコールの含有量が84質量%以上である。
本態様の導電性高分子含有液において、導電性複合体は、分散状態であってもよいし、溶解状態であってもよい。本明細書において、特に明記しない限り、分散状態と溶解状態とを区別せず、単に分散状態ということがある。
【0011】
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、この余剰のアニオン基が修飾されていない導電性複合体は水分散性を有する。
【0012】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0013】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0014】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下が好ましく、10万以上50万以下がより好ましい。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0015】
ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0016】
本発明のポリアニオンは、ポリアニオンが有するドープに関与しない余剰のアニオン基(以下、「一部のアニオン基」ともいう)と、第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されている。すなわち、本発明のポリアニオンは、第四級アンモニウム化合物と一部のアニオン基との反応によって形成された置換基(C)を有する。
【0017】
(置換基C)
置換基(C)は下記式(C)で表される基であると推測される。
【0018】
-N+R11R12R13R14 ・・・(C)
[式(C)中、R11~R14はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0019】
置換基(C)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、第四級アンモニウムカチオンの正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO3
-」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0020】
化学式(C)におけるR11~R14は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(C)におけるR11~R14は第四級アンモニウム化合物に由来する置換基である。
化学式(C)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0021】
有機溶剤への分散性が高くなり、導電性が向上することから、第四級アンモニウム化合物は、窒素原子上に炭素数が3以上の置換基を有することが好ましく、5以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が7以上の置換基を有することがさらに好ましい。この窒素原子上の各置換基の炭素数の上限値は特に制限されず、溶剤への溶解性や反応性を考慮して、例えば、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。
また、第四級アンモニウム化合物が有する前記R11~R14の合計の炭素数は、8~44が好ましく、12~40がより好ましく、16~36がさらに好ましい。
前記窒素原子上の各置換基の炭素数の数は同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0022】
第四級アンモニウム化合物は非水溶性であることが好ましい。ここで、非水溶性であるとは、20℃の水100gに対する溶解性が1g未満であることをいう。
非水溶性第四級アンモニウム化合物は、後述する反応液においてポリアニオンに対する反応性が高いので、目的の置換基(C)を容易に形成することができる。
【0023】
第四級アンモニウム化合物はテトラアルキルアンモニウムハライドであることが好ましい。ポリアニオンに対する反応性が高く、反応生成物が水系分散媒に溶解し難くなり容易に析出するからである。カウンターアニオンのハロゲンイオンとしては、臭素イオン、塩素イオンが好ましく、臭素イオンがより好ましい。
【0024】
第四級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラ-n-オクチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
アンモニウムカチオンのカウンターアニオンとしては、例えば、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオンが挙げられる。
【0025】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、ドープに関与しないアニオン基の量が適度に抑えられ、アニオン基に第四級アンモニウム化合物を反応させる際に疎水性に容易に変換できる。
【0026】
導電性高分子含有液の総質量に対する、前記導電性複合体の含有量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
【0027】
[分散媒]
本態様の導電性高分子含有液に含まれるイソプロピルアルコールは、第四級アンモニウム化合物との反応によって疎水化された導電性複合体を分散する分散媒である。
導電性高分子含有液の総質量に対するイソプロピルアルコールの含有量は、84質量%以上であり、86質量%以上が好ましく、88質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、92質量%以上が特に好ましい。イソプロピルアルコールの含有量の上限値としては、導電性複合体を含有する余地を残して、例えば、99.9質量%以下が目安として挙げられる。上記の好適な範囲であると、導電性複合体の分散安定性が向上し、基材に対する濡れ性も優れる。
【0028】
本態様の導電性高分子含有液は、少量の水を含んでいても構わない。
導電性高分子含有液の総質量に対する水の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。水の含有量が少ないと、導電性複合体の分散安定性が向上し、基材に対する濡れ性も優れる。
【0029】
本態様の導電性高分子含有液は、イソプロピルアルコール以外の有機溶剤を含んでいてもよい。
前記有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、窒素原子含有化合物系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記の中でも、イソプロピルアルコールとの相溶性が高いアルコール系溶剤が好ましく、エタノール又は1-プロパノールがより好ましい。
【0030】
(高導電化剤)
本態様の導電性高分子含有液は、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、有機溶剤、及び第四級アンモニウム化合物は、高導電化剤に分類しない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上の水酸基を有する化合物、1個以上の水酸基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物、不飽和結合及びヒドロキシ基のうち少なくとも一方を1つ以上有し、かつ炭素数3~5である化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なかでも、イソプロピルアルコールに対する溶解性が良好であり、高導電化の効果が容易に得られることから、不飽和結合及びヒドロキシ基のうち少なくとも一方を1つ以上有し、かつ炭素数3~5である化合物がより好ましい。ここで、不飽和結合は、隣接する炭素原子同士の不飽和結合に限らず、炭素原子同士以外の隣接する原子同士の不飽和結合も含む。
本態様の導電性高分子含有液に含有される高導電化剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0031】
好適な高導電化剤の具体例として、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2,3-ブテンジオール、及び2,3-ブチンジオールから選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
導電性高分子含有液の総質量に対する高導電化剤の含有量は、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上7質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、上記範囲の上限値以下であれば、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
【0033】
(その他の添加剤)
本態様の導電性高分子含有液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性高分子含有液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0034】
<粒度>
本態様の導電性高分子含有液の分散安定性は、液中の導電性複合体の粒度によって評価することができる。製造直後の粒度Q0と、保存後の粒度Q1とを比較して、Q1/Q0で表される比が1に近いほど、分散安定性が優れるといえる。導電性複合体の粒子は、製造後に徐々に凝集し、目視できる程に凝集すると、沈降して沈殿を形成する。このように凝集した導電性複合体を含む導電性高分子含有液は、塗工が難しく、塗工できたとしても塗膜に含まれる導電性複合体の分布にムラが生じ、塗膜からなる導電層の導電性が不良となる。
【0035】
本態様の導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体の粒度は、前記導電性高分子含有液の総質量に対する導電性複合体の濃度を0.1~0.5質量%に調整した時に、25℃において、10nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上450nm以下がより好ましく、100nm以上400nm以下がさらに好ましい。これらの好適な範囲であると、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
上記粒度は、動的光散乱法によって、キュムラント平均粒径を測定した値として求められる。
【0036】
≪導電性高分子含有液の製造方法≫
本発明の第二態様は、第四級アンモニウム化合物を含む有機溶液(反応液)に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する導電性高分子水系分散液を加えて、前記ポリアニオンの一部のアニオン基と前記第四級アンモニウム化合物とを反応させ、反応生成物を析出させる反応析出工程と、前記反応生成物を回収する回収工程と、回収した前記反応生成物を、イソプロピルアルコールを含む有機溶剤に分散させて導電性高分子含有液を得る調製工程と、を有し、前記導電性高分子含有液の総質量に対する前記イソプロピルアルコールの含有量を84質量%以上とする、導電性高分子含有液の製造方法である。
本態様の製造方法により、第一態様の導電性高分子含有液を製造することができる。
【0037】
本態様の製造方法は、回収工程と調製工程との間に洗浄工程をさらに有してもよい。また、調製工程において、さらに高導電化剤等を添加してもよい。
【0038】
[反応析出工程]
本工程は、導電性高分子水系分散液を第四級アンモニウム化合物が含まれる有機溶液(反応液)に加えることにより、導電性複合体と前記第四級アンモニウム化合物との反応生成物を反応液中に析出させる工程である。
【0039】
前記反応液に導電性高分子水系分散液を加えると、第四級アンモニウム化合物が、導電性複合体のポリアニオンの一部のアニオン基と安定に反応する。これにより前述の置換基(C)が形成されて導電性複合体が疎水性になり、イソプロピルアルコールに対する分散安定性が向上した状態になり、反応液中での安定的な分散が困難になり、析出して析出物となる。
【0040】
前記反応液に含まれる有機溶剤は1種でもよく、2種以上でもよい。
前記有機溶剤としては、既に例示した有機溶剤を適用でき、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
【0041】
前記反応液中の第四級アンモニウム化合物の含有量としては、加える導電性複合体の総質量100質量部に対して、10質量部以上5000質量部以下が好ましく、100質量部以上1000質量部以下がより好ましく、150質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体と第四級アンモニウム化合物との反応効率が高まり、反応生成物を容易に得られる。
上記範囲の上限値以下であると、未反応の第四級アンモニウム化合物が混入することによる導電性複合体の導電性低下を防止できる。
【0042】
導電性高分子水系分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる分散液である。
ここで、水系分散媒は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液である。水溶性有機溶剤は水100g(20℃)に対して1g以上溶解するものをいう。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水系分散媒に含まれる水溶性有機溶剤は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、50質量%超が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。水の含有量が多いと、導電性複合体の分散性が高まり、ひいては第四級アンモニウム化合物との反応効率が高まる。さらに反応生成物が反応液中に析出し易くなる。
【0043】
導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、導電性高分子水系分散液は市販のものを使用してもよい。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。
【0044】
導電性高分子水系分散液の総質量に対する、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの含有量としては、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、導電性複合体の分散性が高まり、第四級アンモニウム化合物との反応効率が高まる。
【0045】
前記反応液の体積V1に対する、加える導電性高分子水系分散液の体積V2の体積比(V1/V2)は、0.3~3.0が好ましく、0.5~2.5がより好ましく、0.8~2.0がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、反応が安定に進み、反応生成物が容易に析出する。
【0046】
前記反応液に導電性高分子水系分散液を加える方法は特に制限されず、所望量を一気に数秒で加えてもよいし、ゆっくりと滴下してもよい。粒度が小さい導電性複合体を得て、導電性を高める観点から、ゆっくりと滴下する方法が好ましい。
前記反応液に導電性高分子水系分散液を滴下する速度としては、一定の量を滴下し続けるとして、滴下開始から滴下終了まで、1分~3時間が好ましく、10分~2時間がより好ましい。滴下中、前記反応液を穏やかに撹拌することが好ましい。
上記好適な範囲であると、反応が安定に進み、反応生成物が容易に析出する。
【0047】
前記反応液に導電性高分子水系分散液を滴下する分量としては、0.1~100ml/分が好ましく、1~10ml/分がより好ましい。滴下中、前記反応液を穏やかに撹拌することが好ましい。
上記好適な範囲であると、反応が安定に進み、反応生成物が容易に析出する。
【0048】
前記反応液に導電性高分子分散液を加えて穏やかに撹拌すると、数分~数時間のうちに、反応生成物が析出する。反応の終了は反応生成物の析出の終了を目視で観測して確認することができる。
【0049】
前記反応液の温度は特に制限されず、例えば、5~40℃とすればよい。
【0050】
[回収工程]
本工程は、前記反応生成物を析出物として回収する工程である。
回収方法は特に制限されず、例えば、デカンテーションやろ過処理によって回収することができる。
回収した反応生成物(析出物)の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでもよい。
水分量を少なくする方法としては、例えば、有機溶剤で析出物を洗い流す方法、析出物を乾燥する方法等が挙げられる。
【0051】
[洗浄工程]
回収工程と調製工程との間に洗浄工程を加えることが好ましい。洗浄工程は、洗浄用有機溶剤で前記析出物を洗浄する工程である。この洗浄工程によって、残留する水、未反応の第四級アンモニウム化合物、導電性高分子水系分散液に含まれていた不純物等を除去することができる。
【0052】
洗浄用有機溶剤は、析出物の溶解を最低限に抑えつつ洗浄可能なものが好ましい。このため、洗浄用有機溶剤としては、イソプロピルアルコール以外のアルコール系溶剤が好ましい。洗浄用有機溶剤に含まれる有機溶剤は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
洗浄方法としては特に制限はなく、例えば、析出物の上から洗浄用有機溶剤をかけ流して析出物を洗浄してもよいし、洗浄用有機溶剤中で析出物を攪拌して析出物を洗浄してもよい。
【0053】
[調製工程]
本工程は、前記析出物にイソプロピルアルコールを含む有機溶剤を添加して、導電性高分子含有液を得る工程である。
【0054】
本工程の有機溶剤としては、第一態様の導電性高分子含有液に含まれる有機溶剤を適用することができる。導電性複合体が第四級アンモニウム化合物によって修飾されているので、導電性複合体を充分に分散させるためにイソプロピルアルコールを用いる。また、イソプロピルアルコールに加えて、任意に添加する有機溶剤、例えばイソプロピルアルコール以外のアルコール系溶剤から選択される1種類以上を加えてもよい。
前記有機溶剤に含まれる各溶剤の含有量は、第一態様で例示した好ましい範囲であることが好ましい。
【0055】
析出物に有機溶剤を添加して得た導電性高分子含有液を、攪拌して分散処理を施してもよい。攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよいし、高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いて攪拌してもよい。
【0056】
高圧ホモジナイザーで分散する導電性高分子含有液の総質量に対する、導電性複合体の含有量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の濃度であると、導電性複合体の分散性を充分に高めることができる。
【0057】
(高導電化剤、その他の添加剤の添加)
前記導電性高分子含有液に前記高導電化剤やその他の添加剤を添加してもよい。
【0058】
≪導電性積層体≫
本発明の第三態様は、基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された、第一態様の導電性高分子含有液の硬化物からなる導電層を備えた、導電性積層体である。
【0059】
[導電層]
基材の少なくとも一つの面に備えられた前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下であることが好ましく、20nm以上50μm以下であることがより好ましく、30nm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0060】
本態様の導電性積層体が備える導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する。
基材に塗布した導電性高分子含有液が、バインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分若しくはバインダ成分が硬化した硬化物が含まれる。
【0061】
[基材]
本態様の導電性積層体を構成する基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0062】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はバインダ樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
【0063】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電性高分子含有液から形成される導電層の接着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0064】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0065】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0066】
ガラス基材の平均厚みとしては、100μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0067】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第四態様は、基材の少なくとも一つの面に、第一態様の導電性高分子含有液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第三態様の導電性積層体を製造することができる。
【0068】
第一態様の導電性高分子含有液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0069】
導電性高分子含有液の基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m2以上10.0g/m2以下の範囲であることが好ましい。
【0070】
基材上に塗工した導電性高分子含有液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒を除去することにより、前記塗膜が硬化してなる導電層(導電膜)が形成された導電性積層体を得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、1分以上30分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。
【0071】
前記導電性高分子含有液が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、前記乾燥工程後に、乾燥した導電性高分子の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線照射工程を有する場合、使用される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
【実施例】
【0072】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で撹拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間撹拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0073】
(製造例2)π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む導電性高分子分散液の合成
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)水分散液を得た。なお、PEDOT-PSSにおけるPSSの含有量は75質量%であった。
【0074】
(製造例3)第四級アンモニウム塩との反応A
テトラブチルアンモニウムブロミド2.9gをエタノール100gに溶解させた有機層(有機溶液)に、製造例2で調製したPEDOT-PSS水分散液100gを滴下して加えて30分撹拌した。この結果、テトラブチルアンモニウムブロミドと導電性複合体の反応生成物が析出した。この析出物をろ取し、イソプロピルアルコール100gを加えて析出物を軽く懸濁しながら30分撹拌後、再度析出物をろ取した。この洗浄操作をもう1度繰り返した。これにより、前述の置換基(C)を有する導電性複合体1.1gを得た。
【0075】
(製造例4)第四級アンモニウム塩との反応B
テトラオクチルアンモニウムブロミド2.4gをエタノール200gに溶解させた有機層に、製造例2で調製したPEDOT-PSS水分散液100gを滴下して加えて30分撹拌した。この結果、テトラオクチルアンモニウムブロミドと導電性複合体の反応生成物が析出した。この析出物をろ取し、製造例3と同様に洗浄操作を行い、前述の置換基(C)を有する導電性複合体1.1gを得た。
【0076】
(製造例5)アミン化合物との反応
トリオクチルアミン5gをエタノール200gに溶解させた有機層に、製造例2で調製したPEDOT-PSS水分散液100gを滴下して加えて30分撹拌した。この結果、トリオクチルアミンと導電性複合体の反応生成物が析出した。この析出物をろ取し、製造例3と同様に洗浄操作を行い、トリオクチルアミンと反応した導電性複合体1.1gを得た。
【0077】
(実施例1)
製造例3で得た導電性複合体1.1gとイソプロピルアルコール274gを加えて高圧ホモジナイザーで処理することで、初期の導電性高分子含有液を得た。この導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体の粒度(キュムラント平均粒径)Q0を動的光散乱法で測定した結果を表1に示す。続いて導電性高分子含有液をバーコーター#8にてPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布し、120℃で2分間乾燥することで導電性フィルムを得た。この導電性フィルムの表面抵抗率R0を測定した結果を表1に示す。
次に、この導電性フィルムを80℃環境下に4日間静置した。この加熱処理後の導電性フィルムの表面抵抗率R1を測定した結果を表1に示す。また、初期の導電性高分子含有液を40℃で10日間静置した後の導電性高分子含有液を得て、これに含まれる導電性複合体の粒度(キュムラント平均粒径)Q1を動的光散乱法で測定した結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
実施例1で得た初期の導電性高分子含有液95gにプロピレングリコール(PG)5gを混合した。これを初期の導電性高分子含有液として用いたこと以外は、実施例1と同様にして保存後の導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例3)
プロピレングリコール5gをジメチルスルホキシド(DMSO)5gに変更した以外は実施例2と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4)
プロピレングリコール5gを2-ヒドロキシアクリルアミド(HEAA)5gに変更した以外は実施例2と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
プロピレングリコール5gをN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)5gに変更した以外は実施例2と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
プロピレングリコール5gを2,3-ブテンジオール5gに変更した以外は実施例2と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
プロピレングリコール5gを2,3-ブチンジオール5gに変更した以外は実施例2と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例8)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール248gとエタノール26gに変更した以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例9)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール248gと1-プロパノール26gに変更した以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例10)
製造例3で得た導電性複合体1.1gを、製造例4で得た導電性複合体1.1gに変更したこと以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例11)
実施例10で得た初期の導電性高分子含有液95gとプロピレングリコール5gを混合した。これを初期の導電性高分子含有液として用いたこと以外は、実施例1と同様にして保存後の導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例12)
プロピレングリコール5gをジメチルスルホキシド5gに変更した以外は実施例11と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例13)
プロピレングリコール5gを2-ヒドロキシアクリルアミド5gに変更した以外は実施例11と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0090】
(実施例14)
プロピレングリコール5gをN,N-ジメチルアクリルアミド5gに変更した以外は実施例11と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
(実施例15)
プロピレングリコール5gを2,3-ブテンジオール5gに変更した以外は実施例11と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
(実施例16)
プロピレングリコール5gを2,3-ブチンジオール5gに変更した以外は実施例11と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
(実施例17)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール248gとエタノール26gに変更した以外は実施例10と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
(実施例18)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール248gと1-プロパノール26gに変更した以外は実施例10と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
(比較例1)
製造例3で得た導電性複合体1.1gを、製造例5で得た導電性複合体1.1gに変更した以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
(比較例2)
イソプロピルアルコール274gをエタノール274gに変更した以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
(比較例3)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール220gとエタノール54gに変更した以外は実施例1と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
(比較例4)
イソプロピルアルコール274gを、イソプロピルアルコール220gとエタノール54gに変更した以外は実施例10と同様にして各導電性高分子含有液を得て、粒度Q0及び粒度Q1を測定し、導電性フィルムを作製して表面抵抗率R0及びR1を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
(比較例5)
テトラブチルアンモニウムブロミド2.9gをエタノール100gに溶解させた有機層(有機溶液)を、製造例2で調製したPEDOT-PSS水分散液100gに滴下して加えたが、テトラブチルアンモニウムブロミドが析出し、反応が不十分のため導電性複合体の析出物を得られなかった。
【0100】
[粒度の測定方法]
各例で作製した導電性高分子含有液を試料(25℃)として、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ-2000ZS、大塚電子社製)を用い、動的光散乱法によって、光子相関法で求めた自己相関関数からキュムラント法で平均粒子径d(流体力学的径)および多分散指数を求めた値を粒度とした。
【0101】
[表面抵抗率の測定]
各例で作製した導電性フィルムについて、導電層の表面抵抗率を、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。
【0102】
【0103】
【0104】
本発明に係る各実施例の導電性高分子含有液にあっては、導電性複合体を第四級アンモニウム化合物と反応させたことにより、イソプロパノールを含む分散媒に対して導電性複合体が充分に分散し、分散安定性に優れていた。この結果、導電性複合体の粒度が静置中に増加することが抑制されていた。また、導電性フィルムの導電層は加熱した後であっても良好であり、導電層の耐熱性が向上した。
比較例1では導電性複合体を3級アミンと反応させたので、イソプロピルアルコールに対する分散安定性が劣っていた。また、初期の導電性も劣り、耐熱性も劣っていた。
比較例2では導電性複合体をエタノールに分散させたので、分散安定性が劣っていた。また、初期の導電性も劣っていた。
比較例3,4では導電性複合体の分散媒におけるイソプロピルアルコール濃度が低いため、分散安定性が劣っていた。また、初期の導電性も劣り、耐熱性も劣っていた。
比較例5では、導電性高分子水系分散液に対して、第四級アンモニウム化合物を含むアルコール溶液を滴下したので、第四級アンモニウム化合物と導電性複合体を充分に反応させることができなかった。