(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250117BHJP
A01B 69/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303Z
A01B69/02 A
(21)【出願番号】P 2021206428
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
(72)【発明者】
【氏名】吉水 健悟
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕佑
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-029230(JP,A)
【文献】特開2018-186760(JP,A)
【文献】特開2014-180227(JP,A)
【文献】特開2020-103144(JP,A)
【文献】特開2018-148857(JP,A)
【文献】特開2021-108611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0288621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0041885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01B 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席と、前記運転座席よりも前方における機体横側位置に設けられ、後行程用の走行目標線を圃場に形成するためのラインマーカと、運転開始条件が成立すると自動運転制御を実行する自動運転制御部と、が備えられ、
前記ラインマーカは、上下方向に沿う縦軸心周りで左右揺動可能に機体に対して支持されたサポート部と、前記サポート部の先端部に設けられた水平方向に沿う第一横軸心周りで起伏揺動可能に支持された延出杆部と、を備え、
前記サポート部が、
前記縦軸心から機体横外方へ向けて延出される
横向き作業姿勢と、
前記縦軸心から機体後方向きに延出される後向き格納姿勢と、に姿勢切換可能に構成され、
前記サポート部が前記
後向き格納姿勢に切り換えられている格納状態であるか否かを検出する格納状態検知手段が備えられ、
前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていなければ、前記自動運転制御を実行しないように構成されている水田作業機。
【請求項2】
前記サポート部と一体に前記縦軸心回りで回動可能な操作レバーと、
前記操作レバーが前記
後向き格納姿勢に対応する位置にあるときに前記操作レバーが係合して前記縦軸心回りでの回動を規制する回動規制部と、が備えられ、
前記格納状態検知手段が、前記回動規制部に設けられ、前記操作レバーが前記回動規制部に係合しているか否かを検知するように構成されている請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記操作レバーを、前記回動規制部に対して係合する側へ付勢する付勢手段が備えられている請求項2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記サポート部が、前記縦軸心か
ら前方向きに延出される前向き格納姿勢
に姿勢切換可能に構成
されている請求項1から3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項5】
機体周辺の所定の領域を検知範囲として障害物を検知する障害物検知装置が備えられ、
前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていれば、運転開始時に要求指令が起動されて前記運転開始条件が成立すると、前記自動運転制御として、前記障害物検知装置の動作チェックを実行する請求項1から4のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項6】
機体の位置を算出する機体位置算出部が備えられ、
前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていれば、自動運転モードへのモード切り換えが指令されて前記運転開始条件が成立すると、前記自動運転制御として、前記機体位置算出部の検出情報に基づいて機体が予め設定された走行経路に沿って走行するように機体の走行状態を制御する自動走行制御を実行する請求項1から5のいずれか一項に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等において機体を走行させながら作業を行う水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、作業労力の軽減を図るために、畦際等では手動運転による操縦を行えるものでありながら、圃場の内部では自動で走行しながら作業を行うことが可能な水田作業機が提案されている。又、手動運転による操縦の際に、次回の作業行程における走行指標を圃場面に形成するラインマーカが、運転座席よりも後方に位置する状態で備えられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、ラインマーカが運転座席よりも後方に位置するので、運転者がラインマーカの作動状況を目視で確認し難い不利があった。そこで、運転者が作動状況を目視で確認し易くするために、ラインマーカを運転座席の前方に位置する状態で設ける構成が提案されている。
【0005】
上記したような自動運転として、オペレータが搭乗せずに、無人状態で自動走行を行う場合がある。このような無人での自動走行を行うときは、オペレータが走行機体の運転部に誤って搭乗しないようにする必要がある。
【0006】
そこで、手動運転を行う場合における運転者の操作性の向上を図り、且つ、自動走行を行う場合における作業の安全性の向上を図ることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水田作業機の特徴構成は、運転座席と、前記運転座席よりも前方における機体横側位置に設けられ、後行程用の走行目標線を圃場に形成するためのラインマーカと、運転開始条件が成立すると自動運転制御を実行する自動運転制御部と、が備えられ、前記ラインマーカは、上下方向に沿う縦軸心周りで左右揺動可能に機体に対して支持されたサポート部と、前記サポート部の先端部に設けられた水平方向に沿う第一横軸心周りで起伏揺動可能に支持された延出杆部と、を備え、前記サポート部が、前記縦軸心から機体横外方へ向けて延出される横向き作業姿勢と、前記縦軸心から機体後方向きに延出される後向き格納姿勢と、に姿勢切換可能に構成され、前記サポート部が前記後向き格納姿勢に切り換えられている格納状態であるか否かを検出する格納状態検知手段が備えられ、前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていなければ、前記自動運転制御を実行しないように構成されている点にある。
【0008】
本発明によれば、ラインマーカが、運転座席よりも前方における機体横側位置に設けられるので、オペレータが運転座席に着座して手動運転により走行するときに、オペレータがラインマーカの作動状況を目視で確認し易い。
【0009】
無人での自動運転制御を実行するときには、オペレータはラインマーカのサポート部を格納姿勢に切り換える。そうすると、格納状態検知手段にてサポート部が格納状態であることが検出されるので、自動運転制御部が自動運転制御を適正に実行する。
【0010】
しかし、オペレータがラインマーカのサポート部を格納姿勢に切り換えていなければ、格納状態検知手段にてサポート部が格納状態であることが検出されないので、自動運転制御部が自動運転制御を実行しない。その結果、無人状態で自動走行を行う場合に、サポート部を格納姿勢に無いことに起因して、オペレータが走行機体に誤って搭乗することがあっても、自動走行運転が行われないので、安全性を確保することができる。
【0011】
従って、手動運転を行う場合における運転者の操作性の向上を図り、且つ、自動走行を行う場合における作業の安全性の向上を図ることが可能となった。
又、手動運転にて走行しているときは、サポート部を横向き作業姿勢に切り換えた状態で、後行程用の走行目標線を圃場に形成する。自動走行を行う場合には、サポート部を後向き格納姿勢に切り換えることにより、横側方への突出量を少なくすることができ、旋回走行するときに、畦や他の機外の障害物にラインマーカが接触して損傷することを回避できる。サポート部を後向き格納姿勢に切り換えると、ラインマーカが運転座席の横側方に近い箇所にまで姿勢変更するので、オペレータが走行機体に乗り込もうとしても、ラインマーカによって邪魔されるので、誤って搭乗することを牽制することができる。
【0012】
本発明においては、前記サポート部と一体に前記縦軸心回りで回動可能な操作レバーと、前記操作レバーが前記後向き格納姿勢に対応する位置にあるときに前記操作レバーが係合して前記縦軸心回りでの回動を規制する回動規制部と、が備えられ、前記格納状態検知手段が、前記回動規制部に設けられ、前記操作レバーが前記回動規制部に係合しているか否かを検知するように構成されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、オペレータは操作レバーを操作してサポート部を格納姿勢に切り換えることができる。そして、操作レバーを回動規制するための回動規制部を利用して格納状態検知手段が設けられ、格納姿勢にあることを確実に検知することができる。
【0014】
本発明においては、前記操作レバーを、前記回動規制部に対して係合する側へ付勢する付勢手段が備えられていると好適である。
【0015】
本構成によれば、機体振動等により操作レバーが揺れ動くような力が作用しても、付勢手段の付勢力により操作レバーと回動規制部との係合状態を維持することができる。
【0016】
本発明においては、前記サポート部が、前記縦軸心から前方向きに延出される前向き格納姿勢に姿勢切換可能に構成されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、自動走行を行う場合には、サポート部を前向き格納姿勢に切り換えることにより、横側方への突出量を少なくすることができ、旋回走行するときに、畦や他の機外の障害物にラインマーカが接触して損傷することを回避できる。
【0018】
【0019】
本発明においては、機体周辺の所定の領域を検知範囲として障害物を検知する障害物検知装置が備えられ、前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていれば,運転開始時に要求指令が起動されて前記運転開始条件が成立すると、前記自動運転制御として、前記障害物検知装置の動作チェックを実行すると好適である。
【0020】
本構成によれば、ラインマーカが自動運転用の格納状態にあれば、運転開始時に要求指令が起動されて運転開始条件が成立すると、自動運転制御部が障害物検知装置の動作チェックを実行する。障害物検知装置に異常がある状態で、自動走行が行われることを回避できる。
【0021】
そして、ラインマーカが自動運転用の格納状態になければ、障害物検知装置の動作チェックを実行しないので、オペレータはそのことに気づくので格納状態に切り換える処理を実行することになる。
【0022】
本発明においては、機体の位置を算出する機体位置算出部が備えられ、前記自動運転制御部は、前記格納状態検知手段にて前記格納状態であることが検出されていれば、自動運転モードへのモード切り換えが指令されて前記運転開始条件が成立すると、前記自動運転制御として、前記機体位置算出部の検出情報に基づいて機体が予め設定された走行経路に沿って走行するように機体の走行状態を制御する自動走行制御を実行すると好適である。
【0023】
本構成によれば、ラインマーカが自動運転用の格納状態にあれば、自動運転モードへのモード切り換えが指令されて運転開始条件が成立すると、自動運転制御部が自動走行制御を実行する。
【0024】
そして、ラインマーカが自動運転用の格納状態になければ、自動運転制御を実行しないので、オペレータが誤って走行機体に乗り込んだ状態で自動走行が開始されることを回避でき、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】ラインマーカの姿勢切り換え状態を示す正面図である。
【
図5】ラインマーカの支持構成を示す正面図である。
【
図6】ラインマーカの支持構成を示す平面図である。
【
図7】横ソナーの支持構成を示す分解斜視図である。
【
図8】横ソナーの支持構成を示す横断平面図である。
【
図9】横ソナーの支持構成を示す縦断側面図である。
【
図12】障害物検知装置の配置状態を示す平面図である。
【
図14】ソナーチェック処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を、水田作業機の一例としての乗用型の田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印「F」の方向を「機体前側」(
図1及び
図2参照)、矢印「B」の方向を「機体後側」(
図1及び
図2参照)、矢印「L」の方向を「機体左側」(
図2参照)、矢印「R」の方向を「機体右側」(
図2参照)とする。
【0027】
〔全体構造〕
図1~
図3に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の走行機体1を備える。走行機体1は、後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構3、リンク機構3の後端部にローリング可能に連結される苗植付装置4、走行機体1の後端部領域から苗植付装置4にわたって架設されている施肥装置5、および、苗植付装置4の後端部領域に設けられる薬剤散布装置6等を備える。苗植付装置4、施肥装置5および薬剤散布装置6は、作業装置58の一例である。
【0028】
走行機体1は、走行のための機構として左右一対の操向操作自在な前車輪1F,1Fと、左右一対の駆動輪としての後車輪1B,1Bとを備え、動力源としてのエンジン7、および主変速装置である油圧式の無段変速装置8を備える。無段変速装置8は、例えばHST(Hydro-Static Transmission)であり、モータ斜板およびポンプ斜板の角度を調節することにより、エンジン7から出力される駆動力(回転数)を変速する。エンジン7および無段変速装置8は、走行機体1の前部に搭載される。エンジン7からの動力は、無段変速装置8等を介して前車輪1F、後車輪1B、作業装置等に供給される。
【0029】
図1,2に示すように、苗植付装置4は、10条植え型式であり、リンク機構3の後部に連結されている。リンク機構3の後部には、苗植付装置4の植付フレーム9の前端部が連結されている。植付フレーム9に機体横方向に一列に並べて取り付けられた10個の苗植付機構10と、植付フレーム9の前部の上方に設けられた苗載せ台11と、植付フレーム9の下部に走行機体横方向に並べて取り付けられた5つの接地フロート12と、が備えられている。
【0030】
植付フレーム9には、走行機体横方向に所定間隔を隔て、前後方向に沿う姿勢で並ぶ5つの植付伝動ケース13が連結されている。10個の苗植付機構10は、各植付伝動ケース13の後端部の両横側に1つずつ支持される状態で植付フレーム9に取り付けられている。
【0031】
苗載せ台11は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動する。10個の苗植付機構10は、ロータリ式であり、苗載せ台11に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗とも称す)を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。
【0032】
図1~
図3に示すように、走行機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール15、無段変速装置8の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー16等の各種操作具類、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有する情報端末19、および、オペレータ(運転者・オペレータ)用の運転座席20等を備える。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置21が予備苗支持フレーム22に支持される状態で備えられている。
【0033】
図3に示すように、予備苗収納装置21は、予備苗支持フレーム22における機体の左右両側に位置する左右の下端側部22aにて支持されている。予備苗収納装置21は、機体の左右両側において上下方向に並ぶ状態で夫々5台ずつ備えられている。
【0034】
右側の下端側部22aにおける予備苗収納装置21の上側には、積層灯23が取り付けられている。積層灯23は、後述する無人自動走行を行っているときに、車体外部から運転制御状態を確認するためのものである。詳述はしないが、複数の色の表示灯を有し、運転状況に応じた色で表示するように構成されている。
【0035】
〔ラインマーカ〕
運転座席20よりも前方における走行機体横側位置に、後行程用の走行目標線を圃場に形成するためのラインマーカ24が備えられている。
【0036】
手動走行の際には、走行機体1の横側方の圃場面箇所にラインマーカ24によって走行目標線を圃場面に形成する。左右のラインマーカ24は突出向きが異なる以外は同じ構成であるから、以下、左側のラインマーカ24について説明する。
【0037】
図6に示すように、ラインマーカ24は、走行機体1の前部の横側部位であって、運転部ステップ25と側部ステップ26とにわたって設けられた丸筒状の支持フレーム27に取り付けられている。支持フレーム27の横側面に断面L字形の取付ブラケット28が固定され、チャンネル状の断面形状の連結ブラケット29が、取付ブラケット28にボルト連結にて取り付けられている。
【0038】
ラインマーカ24は、上下方向に沿う縦軸心Y1周りで左右揺動可能に、走行機体1に対して支持されたサポート部30と、サポート部30に対して、そのサポート部30の先端部に設けられた水平方向に沿う第一横軸心X1周りで起伏揺動可能に支持された延出杆部31と、を備えている。サポート部30の走行機体1側の端部が、軸部材33を介して縦軸心Y1周りで回動可能に連結ブラケット29に支持されている。
【0039】
サポート部30は、
図4及び
図6に示すように、縦軸心Y1から走行機体1の横外方へ向けて延出される横向き作業姿勢PSと、縦軸心Y1から走行機体1に沿って前方向きに延出される前向き格納姿勢PFと、縦軸心Y1から走行機体1の斜め後方向きに延出される後向き格納姿勢PRと、に姿勢切換可能に構成されている。後向き格納姿勢PRにおけるサポート部30の斜め後方向きの姿勢は、運転部ステップ25との干渉を避けるためである。尚、図中、符号80は隣接マーカである。
【0040】
手動走行の際に、走行機体1の横側方の圃場面箇所に走行目標線を圃場面に形成する場合には、ラインマーカ24は、
図4に示すように、横向き作業姿勢PSに切り換えられる。走行目標線を圃場面に形成しない場合には、ラインマーカ24は、前向き格納姿勢PF、あるいは、後向き格納姿勢PRのいずれかに切り換えられる。
【0041】
図5及び
図6に示すように、サポート部30の先端部、つまりサポート部30において、連結ブラケット29が備えられた側の端部とは反対側の端部に、水平方向に沿う第一横軸心X1周りで起伏揺動可能に延出杆部31が支持されている。
【0042】
延出杆部31は、駆動モータ34a付きの起伏操作機構34に連結されている。つまり、起伏操作機構34と延出杆部31の基部ブラケット35が操作バネ材36を介して連結されており、駆動モータ34aの駆動により、延出杆部31を起伏揺動させることができる。
【0043】
延出杆部31の先端部には、先端側部分が折れ曲がった形状に形成されたアーム部37と、アーム部37の先端部に回転自在に支持された回転マーカ38とが備えられている。
【0044】
〔ロック機構〕
ラインマーカ24の走行機体1に連結される側の端部近くに、走行機体1に対するラインマーカ24の選択された装着姿勢を固定、及び固定解除するためのロック機構40が設けられている。ロック機構40は、ラインマーカ24のサポート部30に取り付けられた操作レバー41と、走行機体1の支持フレーム27に溶接固定された位置固定部材42と、を備えている。
【0045】
操作レバー41は、サポート部30に対して縦軸心Y1と交差する方向の第二横軸心X2回りで起伏揺動可能に装着されている。つまり、操作レバー41を把持して、操作レバー41を水平方向に押し引き操作することで、サポート部30を縦軸心Y1周りで旋回させると、サポート部30と操作レバー41とを一体的に縦軸心Y1周りで旋回操作することができる。そして、把持した操作レバー41を上下方向に揺動させると、サポート部30に対して第二横軸心X2回りで起伏揺動する。この起伏揺動操作によって、位置固定部材42に対して操作レバー41を係脱することができる。操作レバー41の先端部には握り部43が設けられている。
【0046】
操作レバー41の中間部が位置固定部材42の後述する係合凹部48に対して係脱可能に構成されている。操作レバー41を下向きに押し付け付勢して、係合凹部48に対する係合を深める側へ揺動付勢するつる巻きバネ44(付勢手段に相当する)が基端部に設けられている。
【0047】
位置固定部材42は、屈曲形成された板金部材で構成されている。この板金部材の下部が、平面視でU字状に屈曲形成された支持フレーム27の前後方向に沿う箇所に設けられたものである。
【0048】
位置固定部材42を構成する板金部材は、平面視でチャンネル状に形成され、下端部が支持フレーム27の前後方向に沿う箇所を跨ぐ状態で溶接固定された第一固定部材45と、同じく平面視でチャンネル状の開放側が走行機体1の横外方に向けられ、かつ、第一固定部材45を外側(走行機体内方側)から抱き込む状態で、第一固定部材45の上部に溶接固定された第二固定部材46と、平面視略三角形状に形成され、かつ、第二固定部材46の前部側に溶接固定された第三固定部材47と、を備えている。
【0049】
位置固定部材42の上端縁部分には、操作レバー41の中間部と係合する複数の係合凹部48が設けられている。これらの係合凹部48は、操作レバー41が入り込む深さの凹入溝によって形成され、操作レバー41が入り込んだ係合状態で、操作レバー41の水平方向移動を制限するものである。この操作レバー41の水平方向移動が制限されることにより、ラインマーカ24のサポート部30の縦軸心Y1周りで旋回が規制されたロック状態となる。係合凹部48との係合を解除すると、ラインマーカ24のサポート部30の縦軸心Y1周りでの旋回が許容される。
【0050】
3つの姿勢のうち後向き格納姿勢PRでは、操作レバー41が第二固定部材46の前側に形成された係合凹部48aと、第三固定部材47の前側に形成された係合凹部48bとの二箇所に係合してロック状態となる。他の姿勢においても同様に、操作レバー41が係合凹部48に係合してロック状態となる。
【0051】
後向き格納姿勢PRが自動運転用の格納姿勢に対応しており、第二固定部材46の係合凹部48aと、第三固定部材47の係合凹部48bとにより、回動規制部49が構成されている。そして、サポート部30が後向き格納姿勢PRに切り換えられているか否かを検出する格納状態検知手段としての格納検知センサ50が備えられている。
【0052】
格納検知センサ50は第三固定部材47に備えられている。格納検知センサ50は、リミットスイッチにて構成されている。サポート部30が係合凹部48bに入り込むと、そのことを検知することができるように、格納検知センサ50の検知片50aが、後向き格納姿勢PRの係合凹部48bに備えられている。
【0053】
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場を田植作業する作業走行について説明する。
【0054】
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。
手動走行と自動走行とは、運転操作パネル51に備えられたモード切替スイッチ52を切り替えることにより選択される。手動走行は、運転者が手動で、ステアリングホイール15、主変速レバー16等の操作具を操作して作業走行を行うものである。
【0055】
自動走行は、あらかじめ設定された走行経路に沿って、田植機が自動制御で走行及び作業を行うものである。自動走行は、運転者の搭乗を要する有人自動走行(有人自動走行モード)と、運転者の搭乗を要しない無人自動走行(無人自動走行モード)とを行うことができる。有人自動走行は、田植機から提供されるガイダンスに沿って一部の操作を運転者が行いながら、その他の走行および作業に伴う動作を田植機が自動制御するものである。
無人自動走行では、運転者が搭乗することは要しないが、無人自動走行中に運転者が搭乗していても良い。無人自動走行は、運転者が自動走行の開始操作を行うことにより、自動制御で作業走行を開始し、あらかじめ設定された作業走行を自動制御で行うものである。
有人自動走行が行われる有人自動モードと無人自動走行が行われる無人自動モードとは、情報端末55を用いて設定される。
【0056】
無人自動走行を行う場合には、ラインマーカ24は後向き格納姿勢PRに切り換えた状態で実行するようになっている。ラインマーカ24の切り換え操作は手動が行われるので、ラインマーカ24が確実に後向き格納姿勢PRに切り換えられているか否かが格納検知センサ50により検知される。
【0057】
田植機による具体的な作業走行形態について簡単に説明する。
【0058】
植え付け作業を行う際には、まず、圃場の外周に沿って、運転者が手動操作で、作業を行わずに田植機を走行させる。この外周走行によって、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成される。圃場マップが生成される際には、田植機が作業走行を行う走行経路が設定される。
【0059】
有人自動走行は、少なくとも運転者が搭乗していることと、主変速レバー16が中立位置にあることとが自動走行の開始条件である。運転者が搭乗しているか否かは、運転座席20に備えられた図示しない着座センサによって検知される。主変速レバー16が中立位置にあるか否かは主変速レバー16の近傍に備えられた中立センサによって検知される。
開始条件を満たした状態において、主変速レバー16が進行方向に移動されると自動走行が開始される。有人自動走行において、苗植付装置4の昇降は自動制御により行われる。
【0060】
無人自動走行は、オペレータからの開始指令により自動走行が開始され、あらかじめ設定された走行経路で自動制御により作業走行が行われる。無人自動走行においても、苗植付装置4の昇降は自動制御により行われる。
【0061】
〔制御系〕
次に、田植機の制御系について説明する。
【0062】
田植機の制御系の中核をなす制御ユニット53が備えられている。制御ユニット53は、マイクロコンピュータ等を備えて種々の制御をプログラム型式で実行するように構成されている。
【0063】
図13に示すように、制御ユニット53は、自車位置を算出するための測位ユニット54、各種設定や操作を行うと共に各種情報を表示する情報端末55、田植機の各種状態を検出するセンサ群56、各種操作具57、各種作業装置58、操舵に係る前車輪1Fや無段変速装置8等を含む走行機器59等と接続される。なお、操作具57の1つであるモード切替スイッチ52は、手動走行を行う手動走行モード、有人で自動走行を行う有人自動走行モード、無人で自動走行を行う無人自動走行モードのいずれかを選択ためのスイッチである。センサ群56には、格納検知センサ50、後述する物体検知センサ60等が含まれる。
【0064】
制御ユニット53は、田植機の走行制御や各種作業装置58の動作制御を行う。手動走行の際には運転者が行う各種操作具57の操作に応じて制御を行い、自動走行の際には自車位置を取得しながら、自車位置に応じた制御を行う。
【0065】
測位ユニット54は、走行機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット54には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール54Aと、走行機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール54Bが含まれている。
【0066】
手動走行モードにおいて、制御ユニット53は、操作具57の操作や情報端末55の設定状態に応じて走行機器59を制御し、車速や操舵量を制御することにより、走行を制御する。制御ユニット53は、操作具57の操作や情報端末55の設定状態に応じて作業装置58の動作を制御する。
【0067】
有人自動走行モード又は無人自動走行モードにおいて、制御ユニット53は、測位ユニット54から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、機体1の地図座標(自車位置)を算出する。制御ユニット53は、圃場マップを取得し、圃場マップおよび情報端末55の設定や操作に応じて走行経路を設定する。同時に、制御ユニット53は、走行経路中の位置に応じた作業装置58の動作を決定する。そして、制御ユニット53は、自車位置に基づいて走行経路中の走行位置を算出し、走行経路中の走行位置および情報端末55の設定状態に応じて、走行機器59および作業装置58を制御する。このようにして、制御ユニット53は、自動走行モードでの作業走行を制御する。詳述はしないが、走行機器59の制御には、エンジン7の回転制御、走行速度の自動調整制御、前車輪1Fの自動操向制御、等があり、作業装置58の制御には、図示しない植付クラッチの入り切り、苗植付装置4の昇降操作等がある。
【0068】
従って、制御ユニット53は、測位ユニット54の計測結果に基づいて走行機体1の位置を算出する機体位置算出部100と、運転開始条件が成立すると自動運転制御を実行する自動運転制御部101と、を制御プログラムにて備えている。
【0069】
〔障害物検知装置〕
自動走行による走行開始時や自動走行中に、進行方向の前方や走行機体1の周囲に障害物があると、走行や作業に問題が生じる場合がある。そのため、本実施形態の田植機は、走行機体1の周囲の障害物を検知する障害物検知装置としての物体検知センサ60を備える。障害物の検知は、基本的には自動走行中に行われるが、手動走行中に障害物の検知が行われる構成とすることもできる。
【0070】
具体的には、
図12に示すように、走行機体1の前方の領域の障害物を検知する4つの前障害物検知装置としての前ソナー61と、走行機体1の後方の領域の障害物を検知する4つの前障害物検知装置としての後ソナー62と、走行機体1の側方の領域の障害物を検知する横障害物検知装置としての2つの横ソナー63と、が備えられている。前ソナー61、後ソナー62、及び、横ソナー63は、超音波を発信したのち、反射波を受信することにより、障害物の存在を検知する周知構成の超音波センサにて構成されている。
【0071】
〔前ソナー〕
4つの前ソナー61のうちの左右中央側に位置する2つの前ソナー61は、機体前部側面に走行機体1の左右方向に並んで設けられる。前ソナー61のうちの左右外側に設けられる2つの前ソナー61は、夫々、左右の予備苗支持フレーム22から前方に突出するステー64に支持される。4つの前ソナー61の対地高さは、略同じである。
【0072】
夫々の前ソナー61の平面方向の検知範囲(平面視での検知範囲)は、前ソナー61から扇状に広がる。前ソナー61の前方方向の検知範囲は、最大の走行車速で走行した場合に、障害物を検知してから走行機体1が障害物の手前で停止できる長さが確保できるように調整される。前ソナー61は、隣り合う前ソナー61の水平方向の検知範囲の少なくとも一部が互いに重複するように配置される。
【0073】
〔後ソナー〕
後ソナー62は、苗植付装置4の左右中央位置に対して左右両側に2個ずつ振り分け配置された状態で備えられている。そして、4個の後ソナー62は4個の植付伝動ケース13に各別に支持されている。
【0074】
説明を加えると、
図10及び
図11に示すように、最も左側の植付伝動ケース13及びそれに右側に隣接する植付伝動ケース13の夫々から上方に向けて側面視U字状の支持フレームとしての支持杆65が固定延設されている。その2つの支持杆65の上部同士に亘って架設される状態で連結部材66が備えられている。その連結部材66に左側に位置する2つの後ソナー62が取り付けられている。右側に位置する2つの後ソナー62も同様に、最も右側の植付伝動ケース13及びそれに左側に隣接する植付伝動ケース13に支持杆65を介して支持された連結部材66に取り付けられている。
【0075】
後ソナー62は、主に後進時の障害物を検知する。
図12に示すように、後ソナー62の平面方向の検知範囲は、後ソナー62から扇状に広がる。そして、苗植付装置4の左右中央位置に対して左右両側に振り分け配置された2個の後ソナー62は、左右外側に位置するほど検知範囲が左右方向外方側に向かう状態で備えられている。すなわち、4個の後ソナー62のうち左右方向中央側に位置する2個の後ソナー62は検知範囲が略真後ろを向く状態で配置され、左右方向外方側に位置する2個の後ソナー62は、検知範囲はやや外向きに偏っている。複数の後ソナー62の水平方向の検知範囲は、互いに一部で重複しながら、広範囲に設けられる。
【0076】
苗植付装置4の左右中央位置における苗植付機構10よりも高い位置に薬剤散布装置6が備えられている。薬剤散布装置6は、中央の植付伝動ケース13とそれに隣接する植付伝動ケース13から上方に向けて延設された支持アーム67により支持されている。そして、後ソナー62の検知範囲の上端が薬剤散布装置6の下端よりも低い位置に設定されている。これにより後ソナー62が、薬剤散布装置6を障害物として誤検知することを回避できる。
【0077】
後ソナー62の下方には泥除けカバー68が備えられている。泥除けカバー68は、4個の後ソナー62の夫々に対応して4個備えられている。各泥除けカバー68は、植付伝動ケース13から上方に向けて延びる支持ステー69により支持されている。泥除けカバー68によって、苗植付機構10の植付作動に伴って跳ね飛ばされる泥土が後ソナー62に降りかかるのを防止することができる。
【0078】
〔横ソナー〕
横ソナー63は、ラインマーカ24よりも前方に位置する状態で、機体横側方を検知範囲とするように構成されている。横ソナー63は、検知範囲を前後に変更調整可能に構成されている。さらに、横ソナー63は、検知範囲を上下に変更調整可能に構成されている。
【0079】
説明を加えると、
図7~
図9に示すように、横ソナー63は支持フレーム27に支持されている。支持フレーム27に溶接にて固定される状態で台座部70が備えられている。
横ソナー63は中継部材71を介して台座部70に支持されている。中継部材71は、水平姿勢の底面部71Aと、底面部71Aの中央に溶接にて固定されて立設された縦面部71Bと、を備えている。
【0080】
中継部材71の底面部71Aが台座部70の上部面に略前後に並ぶ2つのボルト72により連結されている。底面部71Aにおける2つのボルト挿通孔73が並び方向と直交する方向に沿って長い長孔に形成されている。
【0081】
中継部材71の縦面部71Bに、横ソナー63の支持部材74が上下に並ぶ2つのボルト75により連結されている。縦面部71Bにおける2つのボルト挿通孔76が並び方向と直交する方向に沿って長い長孔に形成されている。
【0082】
支持部材74は、横ソナー63を位置固定状態で支持すると共に、中継部材71の縦面部71Bにボルト連係される取付部74Aと、取付部74Aから一連に延びる状態で設けられ、横ソナー63の機体横外側方及び上方を覆うカバー部74Bと、を備えている。
【0083】
底面部70Aを台座部70に連結する2つのボルト72を緩めて、ボルト挿通孔73の長孔の範囲内で横ソナー63及び支持部材74を一体的に縦軸芯周りで所定範囲内において回動させることができ、その姿勢変更により、横ソナー63の検知範囲を前後に変更調整させることができる。
【0084】
又、支持部材74を縦面部71Bに連結する2つのボルト75を緩めて、ボルト挿通孔76の長孔の範囲内で支持部材74を水平軸芯周りで所定範囲内で回動させることができ、その姿勢変更により、横ソナー63の検知範囲を上下に変更調整させることができる。
【0085】
すなわち、物体検知センサ60は、上述のように特定の検知範囲内に存在する物体を検知する。また、圃場の泥面が検知範囲に存在すると、物体検知センサ60は泥面を障害物として検知してしまう。泥面が障害物として検知されると、自動走行が開始されず、走行が継続されない。そのため、物体検知センサ60の検知範囲は、泥面を検知しないように調整される。
【0086】
〔制御動作〕
自動運転制御部101は、運転開始条件が成立すると、自動運転制御の一例として、物体検知センサ60に動作不良が生じていないかどうかをチェックするセンサチェック処理を実行するように構成されている。センサチェック処理では、オペレータが田植機の周囲を、疑似障害物となる反射体を持って歩く。ここでのソナーチェック処理は、物体検知センサ60に泥や水滴などの異物が付着することによる動作不良を見つけ出し、異物が付着していれば、オペレータは付着した異物を除去する。故障であれば、交換が必要となる。
【0087】
又、自動運転制御部101は、運転開始条件が成立していれば、自動運転制御の他の例として、有人で自動走行を行う有人自動走行制御、及び、無人で自動走行を行う無人自動走行制御等を実行するように構成されている。
【0088】
しかし、自動運転制御部101は、格納検知センサ50にて格納状態であることが検出されていなければ、自動運転制御を実行しないように構成されている。すなわち、操作レバー41が後向き格納姿勢PRに格納されていることが、運転開始条件の1つとして設定されている。
【0089】
図14を参照しながら、自動運転制御部101によりソナーチェックを行う場合の動作について説明する。
【0090】
最初に、田植機を起動させるため、メインスイッチがONにされる(#S01)。これにより、制御系の初期処理が行われ、動作確認フラグに「0」をセットする(#S02)。次に、初期ソナーチェック要求指令を出力し(#S03)、情報端末55の表示画面を通じて、ソナーチェックを実施するかどうかを、オペレータに問う(#S04)。オペレータがソナーチェックを行うことが指示されると(#S04Yes分岐)、そのとき、格納検知センサ50により、ラインマーカ24のサポート部30が後向き格納姿勢PRに切り換えられている格納状態であるか否かを確認する(#S05)。格納状態であることが確認されると(#S05Yes分岐)、ソナーチェック処理を実行する(#S06)。このとき、ソナーチェック処理が完了すると(#S07)、動作確認フラグに「1」をセットする(#S08)。
【0091】
格納検知センサ50により格納状態であることが確認されなければ(#S05No分岐)、ソナーチェック処理を行わない。この場合には、ラインマーカ24が格納状態でないことを情報端末55の表示画面に表示してオペレータに報知する(#S09)。
【0092】
ソナーチェック処理については、詳述しないが、オペレータが、田植え機の周囲を移動しながら、物体検知センサ60における前ソナー61、後ソナー62、横ソナー63の夫々について、正常に検知処理を実行するか否かを順次、検査する。そして、その検査結果を情報端末55の表示部に表示する。
【0093】
次に、
図15を参照しながら、自動運転制御部101により無人走行制御を行う場合の動作について説明する。
【0094】
モード切替スイッチ52により無人自動走行モードが選択されると(#S10)、動作確認フラグが「1」であること、すなわち、ソナーチェック処理が完了していることを確認する(#S11)。そして、情報端末55あるいは他の指令操作具等によりオペレータが自動運転の開始が指令されると(#S12)、格納検知センサ50により、ラインマーカ24のサポート部30が後向き格納姿勢PRに切り換えられている格納状態であるか否かを確認する(#S13)。格納状態であることが確認されると(#S13Yes分岐)、自動走行制御を実行する(#S15)。しかし、格納状態であることが確認されなければ(#S13No分岐)、自動走行制御を実行しない。この場合には、ラインマーカ24が格納状態でないことを情報端末55の表示画面に表示してオペレータに報知する(#S14)。
【0095】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ラインマーカ24のサポート部30が、横向き作業姿勢PS、前向き格納姿勢PF、後向き格納姿勢PRの3位置に姿勢切換可能に構成されるものを示したが、この構成に代えて、横向き作業姿勢PSと後向き格納姿勢PRとの2位置に切り換える構成を採用することができる。
【0096】
(2)上記実施形態では、格納検知センサ50が回動規制部49に設けられる構成としたが、この構成に代えて、サポート部30の回動支点位置の近くに備える構成でよく、設置位置は適宜変更して実施してもよい。又、格納検知センサ50は、リミットスイッチに代えて、光学式センサ、磁気センサ等、種々の型式のセンサを用いることができる。
【0097】
(3)上記実施形態では、格納検知センサの検出情報に基づいて実行を停止する自動運転制御として、動作チェック(ソナーチェック処理)と自動運転制御とを例示したが、その制御以外にも、種々の制御において、実行を停止するようにしてもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では、前ソナー61が4個、後ソナー62が4個、横ソナー63が左右に1個ずつ備えられる構成としたが、この構成に代えて、個数は適宜変更してもよく、障害物の検知が行えるものであえば、個数は1個あるいは2個以上備えるものであればよい。
【0099】
(5)上記実施形態では、横ソナー63が、検知範囲を前後並びに上下に変更調整可能に構成されるものを示したが、この構成に代えて、上下にのみ変更調整可能な構成、前後にのみ変更調整可能な構成、あるいは、位置固定状態で備えられる構成等、種々の形態で実施してもよい。
【0100】
(6)上記実施形態では、横ソナー63が、検知範囲を上下に変更調整可能に構成されるものを示したが、この構成に代えて、上下に位置固定される状態で設置するものでよい。
【0101】
(7)上記実施形態では、物体検知センサ60(障害物検知センサ)として、超音波式のソナーを用いるようにしたが、この構成に代えて、撮像装置(カメラ)、温度検知センサ、ミリ波レーダ、レーザースキャナ等を用いることができる。
【0102】
(8)上記実施形態では、操作レバー41を回動規制部49に対して係合する側へ付勢する付勢手段としてつるまきバネ44を用いたが、これに代えて、板バネ、コイルバネ、ゴム部材等の他の弾性部材を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、苗植付装置を備えた水田作業機の他、直播装置を備えた水田作業機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
20 運転座席
24 ラインマーカ
30 サポート部
31 延出杆部
41 操作レバー
44 つるまきバネ(付勢手段)
49 回動規制部
50 格納検知センサ(格納状態検知手段)
60 障害物検知センサ(障害物検知装置)
100 機体位置算出部
101 自動走行制御部
PS 作業姿勢
PF 前向き格納姿勢
PR 後向き格納姿勢(格納姿勢)
Y1 縦軸心