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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】初代NK CAR構築物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20250117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 35/545 20150101ALN20250117BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20250117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20250117BHJP
   A61K 38/19 20060101ALN20250117BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20250117BHJP
   A61K 39/12 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/545
A61P35/02
A61P35/00
A61K38/19
A61K39/395 D
A61K39/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021520551
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2019063454
(87)【国際公開番号】W WO2021107940
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-01-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100219988
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット、ダッガール
(72)【発明者】
【氏名】フェレシュテ、パービッツ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0361360(US,A1)
【文献】国際公開第2014/099671(WO,A1)
【文献】米国特許第09745368(US,B2)
【文献】国際公開第2013/033626(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T7プロモーター配列部分、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、ポリ-A配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分を含む組み換え核酸であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有する、組み換え核酸。
【請求項2】
前記ヒンジ配列部分は、前記一本鎖抗体フラグメント配列部分の移動範囲を提供する、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項3】
前記膜貫通ドメイン配列部分は、前記膜貫通ドメイン配列部分によってコードされる膜貫通ドメインの膜への挿入を可能にする、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項4】
前記細胞内ドメイン配列部分は、CD28及び/又はCD3ζを含む、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項5】
前記細胞内ドメイン配列部分は、CD28及び/又はFcεRIγを含む、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項6】
前記細胞内ドメイン配列部分は、腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を提供する、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項7】
ベクター中にある、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項8】
CD16aをコードする配列部分をさらに含む、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項9】
ER-IL2をコードする配列部分をさらに含む、請求項1に記載の組み換え核酸。
【請求項10】
CAR-NK細胞を生成する方法であって、初代NK細胞を、請求項1~9のいずれか一項に記載の組み換え核酸でトランスフェクトすることを含む方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組み換え核酸を含む組み換え細胞であって、細菌細胞であるか、又は自己NK細胞であるか、又は遺伝子組み換えNK細胞である、組み換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
42KBのサイズであり、2019年11月6日に作成され、本出願とともにEFS-Webを介して電子的に提出された104077.00016Pro_ST25という名称の配列表のASCIIテキストファイルの内容は、その全体が参照により援用される。
【0002】
本発明の分野は、特に癌の治療に関する際の組み換え核酸及びそれを含有する細胞である。
【背景技術】
【0003】
背景の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書に提供される情報のいずれも、先行技術であるか若しくは本出願で特許請求される発明に関連すると認めるものではないか、又は明示的若しくは黙示的に言及されるいずれの刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞に基づく癌免疫療法は、近年、著しい進歩を遂げた。NK細胞は、自然免疫系の重要な構成要素である細胞傷害性リンパ球である。ほとんどの場合、NK細胞は、循環リンパ球の約4~10%を占め、標的とする細胞(ウイルス感染細胞及び多くの悪性細胞を含む)に結合し、それを殺滅する。NK細胞による殺滅は、特定の抗原に対して非特異的であり、以前の免疫感作なしで起こり得る。標的とする細胞の殺滅は、典型的に、パーフォリン、グランザイム及びグラニュライシンを含む細胞溶解性タンパク質によって媒介される。
【0005】
NK細胞は、治療用物質として使用されている。そのために、NK細胞は、全血の末梢血リンパ球分画から単離され、十分な数の細胞を得るために細胞培養物中で増殖され、次に対象に再注入される。NK細胞は、少なくとも一部の症例では、生体外治療及び生体内治療の両方において中程度の有効性を示した。しかしながら、癌は、様々な戦略を用いて、抗腫瘍免疫を遅らせるか、変化させるか又は停止させて腫瘍成長の制御をできなくする。
【0006】
NK細胞の抗腫瘍反応は、多くの制限にも直面している。第一に、腫瘍組織に達するNK細胞の低い能力は、固形腫瘍の治療法としてのそれらの用途を制限する。これは、細胞免疫療法手法のよく見られる問題である。第二に、腫瘍におけるNK細胞活性化受容体及びそれらのリガンドの変化は、低下した治療反応及び腫瘍進行をもたらし得る。例えば、高いレベルのNKG2D(ナチュラルキラー群2、メンバーD)リガンドが大腸癌の初期に検出されるが、それらの発現は、疾患が進行するにつれて低下する。第三に、腫瘍微小環境(TME)は、依然として、適合移植されたNK細胞の有効性に対する大きい障害となっている。例えば、細胞外基質中に埋め込まれた樹状細胞(DC)、抑制性又は寛容原性マクロファージ及び制御性T(Treg)細胞並びに癌関連線維芽細胞などの腫瘍浸潤免疫細胞は、免疫抑制性サイトカインの分泌によるか又は受容体発現を妨げることにより、NK細胞活性化に干渉し得る。
【発明の概要】
【0007】
上記の課題を克服するための技術及び方法であって、癌細胞の特異的な標的化のためにNK細胞を修飾することが可能な技術及び方法が当技術分野において依然として必要とされている。
【0008】
本発明の主題は、T7プロモーター配列部分、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分を含む組み換え核酸に関する。組み換え核酸は、CD64をコードする配列をさらに含み得る。さらに、5’-UTR配列部分は、コザック配列をさらに含み得る。
【0009】
好ましくは、一本鎖抗体フラグメント配列部分は、PDL1抗原又は他の腫瘍抗原に結合するように適合される一本鎖可変フラグメントをコードする配列を含む。ある実施形態において、組み換え核酸は、CD16a及び/又はER-IL2をコードする配列部分をさらに含み得る。
【0010】
ヒンジ配列部分は、一本鎖抗体フラグメント配列部分の移動範囲を提供する一方、膜貫通ドメイン配列部分は、膜への組み換え核酸の挿入を可能にする。
【0011】
本明細書に開示される組み換え核酸の細胞内ドメイン配列部分は、共刺激又はシグナル伝達配列部分を含むことが想定される。一実施形態において、細胞内ドメイン配列部分は、CD28及び/又はCD3ζを含む。別の実施形態において、細胞内ドメイン配列部分は、CD28及び/又はFcεRIγを含む。先行する請求項のいずれか1つに記載の組み換え核酸であり、さらに、細胞内ドメイン配列部分は、腫瘍細胞に対する促進された細胞傷害活性を提供し得る。
【0012】
好ましくは、本開示の組み換え核酸は、3’-非翻訳領域(3’-UTR)及びポリ-A配列部分を含む。3’-UTR配列部分は、RNA安定性及び翻訳開始を提供する。ポリ-A配列部分は、好ましくは、少なくとも150のアデニンヌクレオチドを含む。ポリ-A配列部分は、RNA安定性及び翻訳開始を提供する。
【0013】
本開示の組み換え核酸ベクターは、好ましくは、腫瘍抗原を標的とするように最適化される。ある実施形態において、組み換え核酸は、配列番号1に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。他の実施形態において、組み換え核酸は、配列番号2に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。さらに他の実施形態において、組み換え核酸は、配列番号3に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。さらに他の実施形態において、組み換え核酸は、配列番号4に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0014】
本発明の主題の別の態様において、本発明者らは、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分をコードする1つ以上の核酸を含む修飾NK細胞であって、核酸配列は、単一のポリヌクレオチドとして互いに作動可能に連結される、修飾NK細胞を開示している。この修飾NK細胞は、腫瘍細胞を特異的に標的とすることが想定される。
【0015】
別の態様において、本発明者らは、修飾NK細胞又はCAR-NK細胞を生成する方法であって、初代NK細胞を、上記に開示される組み換え核酸でトランスフェクトすることを含む方法を開示している。さらに、修飾NK細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物も開示される。さらに、修飾NK細胞は、キットにおいて提供され得、例えば、キットは、本明細書に開示されるNK細胞と、使用説明書とを含み得る。
【0016】
さらに別の態様において、対象における癌又は腫瘍を治療する方法であって、治療有効量の、修飾NK細胞又は修飾NK細胞を含む組成物を対象に投与することを含み、投与は、対象における癌を治療するか又は腫瘍のサイズを減少させる、方法が開示される。患者における癌転移を減少させる方法も想定され、ここで、治療有効量の、修飾NK細胞又は修飾NK細胞を含む組成物は、癌転移を有する対象に投与される。好ましくは、1m当たり1×10~1×1010個のNK細胞が対象に投与される。投与は、非経口的に、静脈内に、腫瘍周辺に又は注入によって行われ得る。本方法は、追加的な治療剤の対象へのさらなる投与も含み得る。
【0017】
別の実施形態において、本発明者らは、癌の治療を、それを必要としている患者において行う方法であって、治療有効量の、本明細書に開示される遺伝子組み換えNK細胞のいずれか1つを患者に投与し、それにより癌を治療することを含む方法を開示している。本方法は、ウイルス性癌ワクチン、細菌性癌ワクチン、酵母癌ワクチン、N-803、抗体、幹細胞移植及び腫瘍標的化サイトカインからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な治療用物質を投与する工程をさらに含み得る。癌は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、限定はされないが、肉腫及び癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍から選択される。
【0018】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、類似の数字が類似の構成要素を表す添付の図面とともに好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】PDL1タンパク質:pNBS-XL53において標的化されるキメラ抗原の生成の一実施形態を示す。
図2】エレクトロポレーション後のXL53 PDL1 CAR発現の時間経過の一実施形態を示す。
図3】fLuc発現U251及びMS1標的細胞における細胞傷害活性の一実施形態を示す。
図4】XL53構築物のベクターマップの一実施形態を示す。
図5】PDL1タンパク質、pNBS-XL53-150Aにおいて標的化されるキメラ抗原の生成の一実施形態を示す。
図6】エレクトロポレーション後のXL53-150A PDL1 CAR発現の時間経過の一実施形態を示す。
図7】XL53-150AでトランスフェクトされるNK細胞の細胞傷害活性の一実施形態を示す。
図8】XL53-150A構築物のベクターマップの一実施形態を示す。
図9】PDL1タンパク質、NKW29-150Aにおいて標的化されるキメラ抗原の生成の一実施形態を示す。
図10】NK細胞内のNKW29-150A PDL1 CAR発現の時間経過の一実施形態を示す。
図11】NKW29-150A構築物のベクターマップの一実施形態を示す。
図12】PDL1タンパク質、トリシストロン性(tricistronic)XL35において標的化されるキメラ抗原の生成の一実施形態を示す。
図13】エレクトロポレーションの24時間後のXL53-トリシストロン性PDL1 CAR発現の一実施形態を示す。
図14】MS1 fLuc標的細胞におけるCAR感染細胞の細胞傷害活性の一実施形態を示す。
図15】XL53-トリシストロン性構築物のベクターマップの一実施形態を示す。
【発明の具体的説明】
【0020】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的且つ個別に示される場合と同程度に参照により援用される。援用される参考文献中の用語の定義又は使用が、本明細書に示されるその用語の定義と矛盾するか又は相反する場合、本明細書に示されるその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義は、適用されない。特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
本発明者らは、癌及び腫瘍に対する免疫療法を改善するための基礎として、様々な操作されたNK細胞を本明細書に開示している。異なる観点から見て、本発明者らは、腫瘍抗原を標的とする核酸構築物を開示している。好ましくは、ある実施形態において、腫瘍抗原は、PDL1である。一実施形態において、これらの核酸構築物は、初代NK細胞をトランスフェクトしてCAR-NK細胞を生成するためのキメラ抗原受容体構築物であり得る。
【0022】
本発明の概念の一態様において、本明細書における本開示は、PDL1及び潜在的に他の腫瘍抗原標的に対するキメラ抗原RNA分子(CAR)の生成を含む。これらのタイプのDNA構築物から生成されるRNAは、腫瘍細胞の特異的な標的化のためにナチュラルキラー細胞に送達されることが想定される。
【0023】
一実施形態において、T7プロモーター配列部分、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分を含む組み換え核酸が本明細書に開示される。一実施形態において、組み換え核酸は、配列番号1~4のヌクレオチド配列に対する少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるか、又はそれから本質的になる。
【0024】
本明細書においてXL53とも呼ばれる、配列番号1の組み換え核酸構築物は、PDL1と呼ばれるPD1リガンドに対して標的化される。この分子は、癌患者における免疫療法のためにナチュラルキラー細胞に送達されるであろうRNA分子のインビトロ合成のために設計される。インビトロ転写は、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼを用いて、T7プロモーターにおいて開始され得る。T7プロモーターには、CAR遺伝子の上流にコザック配列も含む42-bp非翻訳配列(5’UTR:5’非翻訳)が隣接している。コザック配列を伴う5’UTRの二次構造は、翻訳開始を促進する。CD64タンパク質からの短鎖シグナルペプチド(15-アミノ酸)は、CARタンパク質のN末端を示す。シグナルペプチドは、新生ポリペプチド鎖を細胞質ゾルから小胞体に送達する、細胞質ゾル中のシグナル認識ペプチド(SRP)によって認識される。PDL1結合部位は、可変軽鎖及び重鎖ドメインのヘテロ二量体である。2つのドメインは、20-aa(アミノ酸)リンカーを介して互いに接続される。分子のこのヒンジ及び膜貫通ドメインは、CD28タンパク質に由来する。ヒンジ領域は、結合ドメインのための移動範囲及び柔軟性を提供する一方、膜貫通領域は、正確な膜内挿入を可能にする。CD28及びCD3ζの細胞質ドメインは、トランスフェクトされた細胞の細胞傷害活性を促進する細胞内シグナル伝達経路に関与する共刺激ドメインである。構築物の3’非翻訳末端において、ハツカネズミ(Mus musculus)ヘモグロビンα遺伝子の3’UTRからの94-bp配列は、構築物をさらに安定させる。この3’UTR後、22-bpポリA伸長が続く。3’UTRとポリAとの組合せは、RNA分子に安定性を与える。配列番号1の構築物の主な特徴は、(a)それがPDL1タンパク質に対する高い結合親和性を有すること、(b)それが、標的細胞に対する促進された細胞傷害活性のためにCD28及びCD3ζの細胞内ドメインの組合せを使用すること、及び(c)それがRNAベースであり、それにより宿主ゲノムへの構築物の組み込みに関して何らの問題もないことである。
【0025】
図1は、PDL1タンパク質において標的化されるキメラ抗原の生成を示す。RNAの転写は、T7プロモーターによって開始される。ヌクレオチドの5’-UTR/コザック領域は、翻訳開始に有意に役立つ。CD64シグナルペプチドをコードする核酸配列がUTR/コザック領域の3’末端に存在し、それが新生タンパク質をERに向ける。その後、PDL1抗原に結合するscFv領域が続く。ヒンジ領域がscFv領域に隣接して存在し、それがscFvに移動範囲を提供する。ヒンジ領域後、膜へのヌクレオチド構築物の挿入を可能にする膜貫通ドメインが続く。その後、共刺激及び/又はシグナル伝達要素を含む1つ以上の細胞内ドメインが続く。最後に、3’-UTR及びポリ-A領域は、RNAへの安定性及び翻訳開始を提供するために存在する。
【0026】
図2は、エレクトロポレーション後のXL53 PDL1 CAR発現の時間経過を示す一方、fLuc発現U251及びMS1標的細胞における細胞傷害活性が図3に示される。図3に示される細胞傷害性アッセイは、トランスフェクションの2時間後まで及び一晩のインキュベーション後に準備された。XL53構築物のベクターマップが図4に示される。最後に、以下の表1は、XL53構築物の様々な配列部分を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
別の実施形態において、本発明者らは、配列番号2の組み換え核酸構築物を含む分子XL53-150Aを開示している。この分子は、以下の変更を除いて、XL53分子に類似している:150-ポリA伸長が、RNA分子をさらに安定させるために構築物の3’非翻訳末端に加えられる。また、内部のSapI制限部位が構築物から除去される一方、同じ部位がポリAテイルの末端に加えられる。SapIによるDNA鋳型の線形化後、Aヌクレオチドのみが残る。これは、RNA分子の翻訳をさらに促進する。この構築物の主な特徴は、それがより長いポリAテイルを有すること及びそれがXL53と比較してより長い半減期を有することである。
【0029】
図5は、PDL1タンパク質、pNBS-XL53-150Aにおいて標的化されるキメラ抗原の生成を示す。図1中の説明と同様に、RNAの転写は、T7プロモーターによって開始される。ヌクレオチドの5’-UTR/コザック領域は、翻訳開始に有意に役立つ。CD64シグナルペプチドをコードする核酸配列がUTR/コザック領域の3’末端に存在し、それが新生タンパク質をERに向ける。その後、PDL1抗原に結合するscFv領域が続く。ヒンジ領域がscFv領域に隣接して存在し、それがscFvに移動範囲を提供する。ヒンジ領域後、膜へのヌクレオチド構築物の挿入を可能にする膜貫通ドメインが続く。その後、共刺激及び/又はシグナル伝達要素を含む1つ以上の細胞内ドメインが続く。最後に、3’-UTR及びポリ-A領域は、RNAへの安定性及び翻訳開始を提供するために存在する。この構築物中のより長いポリ-A領域は、より高い安定性及びより長い半減期を有するRNA構築物を提供する。
【0030】
図6は、エレクトロポレーション後のXL53-150A PDL1 CAR発現の時間経過を示す一方、XL53-150AでトランスフェクトされるNK細胞の細胞傷害活性が図7に示される。XL53-150A構築物のベクターマップが図8に示される。最後に、以下の表2は、XL53-150A構築物の様々な配列部分を示す。
【0031】
【表2】
【0032】
別の実施形態において、本発明者らは、配列番号3の組み換え核酸構築物を含む分子NKW29を開示している。この分子は、以下の変更を除いて、XL53-150A構築物と非常に類似している:XL53-150AのCD3ζ細胞内ドメインがFcεRIγの細胞内ドメインで置換される。この構築物の主な特徴は、(i)それが、標的細胞に対する促進された細胞傷害活性のためにCD28及びFcεRIγの細胞内ドメインの組合せを使用すること、及び(ii)それが長いポリAテイルのために比較的安定していることである。
【0033】
図9は、PDL1タンパク質、NKW29-150Aにおいて標的化されるキメラ抗原の生成を示す。図1及び5中の説明と同様に、RNAの転写は、T7プロモーターによって開始される。ヌクレオチドの5’-UTR/コザック領域は、翻訳開始に有意に役立つ。CD64シグナルペプチドをコードする核酸配列がUTR/コザック領域の3’末端に存在し、それが新生タンパク質をERに向ける。その後、PDL1抗原に結合するscFv領域が続く。ヒンジ領域がscFv領域に隣接して存在し、それがscFvに移動範囲を提供する。ヒンジ領域後、膜へのヌクレオチド構築物の挿入を可能にする膜貫通ドメインが続く。その後、共刺激及び/又はシグナル伝達要素を含む1つ以上の細胞内ドメインが続く。細胞内ドメインは、図9に示され、配列番号3は、FcεRIγの細胞内ドメインである。最後に、3’-UTR及びポリ-A領域は、RNAへの安定性及び翻訳開始を提供するために存在する。この構築物中のより長いポリ-A領域は、より高い安定性及びより長い半減期を有するRNA構築物を提供する。
【0034】
図10は、エレクトロポレーションの24及び48時間後のNK細胞内のNKW29-150A PDL1 CAR発現の時間経過を示す。インビトロ転写を、Sapl消化NKW29-150A DNAを用いて行った。NK細胞を、インビトロ転写されたRNA(2ug/1e6個の細胞)でトランスフェクトした。PDL1発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化PDL1/ストレプトアビジンAPCを用いて決定した。
【0035】
NKW29-150A構築物のベクターマップが図11に示される。最後に、以下の表3は、NKW29-150A構築物の様々な配列部分を示す。
【0036】
【表3】
【0037】
別の実施形態において、本発明者らは、配列番号4の組み換え核酸構築物を示すXL53-トリシストロン性分子を開示している。この分子は、それが3つの遺伝子:PDL1 CAR、CD16a及びER保持されたIl2を共発現することを除いて、XL53に類似している。P2A配列及びEMCV IRESがそれぞれCD16a及びER-IL2遺伝子の前にあり、これらの遺伝子の独立した翻訳を可能にする。この構築物の主な特徴は、以下のとおりである:(a)それが、ADCC(抗体依存性細胞傷害)に関与するCD16aを発現し、標的細胞のNK細胞溶解をさらに引き起こし、(b)それが、NK細胞の成長及び細胞傷害活性のための重要な成長因子であるサイトカインであるIL-2を発現する。
【0038】
図12は、PDL1タンパク質、トリシストロン性XL53において標的化されるキメラ抗原の生成を示す。図1中の説明と同様に、RNAの転写は、T7プロモーターによって開始される。ヌクレオチドの5’-UTR/コザック領域は、翻訳開始に有意に役立つ。CD64シグナルペプチドをコードする核酸配列がUTR/コザック領域の3’末端に存在し、それが新生タンパク質をERに向ける。その後、PDL1抗原に結合するscFv領域が続く。ヒンジ領域がscFv領域に隣接して存在し、それがscFvに移動範囲を提供する。ヒンジ領域後、膜へのヌクレオチド構築物の挿入を可能にする膜貫通ドメインが続く。その後、共刺激及び/又はシグナル伝達要素を含む1つ以上の細胞内ドメインが続く。共刺激及び/又はシグナル伝達要素後、リボソーム進入のためのP2A、ADCCのために重要なCD16a、リボソーム進入部位であるEMCV及びER-IL2が続く。最後に、3’-UTR及びポリ-A領域は、RNAへの安定性及び翻訳開始を提供するために存在する。この構築物中のより長いポリ-A領域は、より高い安定性及びより長い半減期を有するRNA構築物を提供する。
【0039】
図13は、エレクトロポレーションの24時間後のXL53-トリシストロン性PDL1 CAR発現を示す。MS1 fLuc標的細胞におけるCAR感染細胞の細胞傷害活性が図14に示される。この場合、トランスフェクトされた細胞を一晩のインキュベーションのためにエレクトロポレーションの2時間後に標的細胞と混合した。XL53-トリシストロン性構築物のベクターマップが図15に示される。最後に、以下の表4は、XL53-トリシストロン性構築物の様々な配列部分を示す。
【0040】
【表4】
【0041】
ほとんどの現在利用可能なCAR技術は、細胞へのDNA分子の送達の手段としてウイルスベクターを使用する。ウイルスDNAは、核に進入し、宿主ゲノムに融合し得る。本発明者らは、RNAのみが細胞質に進入し、翻訳される準備がされるため、RNA分子を使用する新たな手法を開発した。本発明者らは、本明細書に開示される分子の安定性を向上させるために、5’及び3’UTR並びに長いポリ-Aなどのいくつかの要素を導入することにより、RNA分子の分解の問題を克服した。
【0042】
本発明者らによって想定される本発明の概念のいくつかの変形形態は、RNA分子の安定性を向上させ得る様々な5’又は3’UTR要素の導入であろう。構築物は、さらなる共刺激ドメインの付加(又はスワッピング)によっても改変され得る。同じ構築物(バイシストロン性又はトリシストロン性として)への他のサイトカイン遺伝子の付加も分子の活性を向上させ得る。
【0043】
一実施形態において、T7プロモーター配列部分、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分を含む組み換え核酸が本明細書に開示される。シグナルペプチド配列部分は、CD64をコードする配列をさらに含む。組み換えDNA核酸から形成されるRNAは、5’-UTR配列部分及び/又はコザック配列によって安定される。コザック配列(又はコザックコンセンサス配列)は、ほとんどのmRNA転写物中で翻訳開始部位として機能する核酸モチーフである。それは、真核生物において翻訳を開始させるのに最適な配列と見なされ、この配列は、タンパク質調節の不可欠な側面である。この配列は、一般に、5’-(gcc)gccRccAUGG-3’として定義され、ここで、Rは、プリン(アデニン又はグアニン)を示す。当然のことながら、コザック配列の変形形態は、当業者に公知であり、本発明者らによって本明細書において想定される。
【0044】
組み換え核酸の一本鎖抗体フラグメント配列部分は、PDL1抗原に結合するように適合される一本鎖可変フラグメントをコードする配列を含む。ヒンジ部分は、一本鎖抗体フラグメント配列部分の移動範囲を提供する役割を果たす。膜貫通ドメイン配列部分は、膜への組み換え核酸の挿入を可能にする。細胞内ドメイン配列部分は、CD28、CD3ζ及び/又はFcεRIγなどの共刺激又はシグナル伝達配列部分を含む。細胞内ドメイン配列部分は、腫瘍細胞に対する促進された細胞傷害活性を提供するように選択される。組み換え核酸の3’末端に対する3’-UTR領域は、RNAへの安定性及び翻訳開始を提供する。さらに、ポリ-A配列部分は、追加的な安定性のために存在し得る。ある実施形態において、ポリ-A配列部分は、少なくとも150のアデニンヌクレオチドを含む。ある実施形態において、組み換え核酸は、トリシストロン性であり得、換言すると、核酸は、PDL1-CAR、CD16a及びER-IL2をコードする配列を有し得る。
【0045】
本発明の開示の別の態様において、T7プロモーター配列部分、5’非翻訳(5’-UTR)配列部分、シグナルペプチド配列部分、一本鎖抗体フラグメント配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通ドメイン配列部分及び1つ以上の細胞内ドメイン配列部分をコードする1つ以上の核酸を含む修飾NK細胞であって、核酸配列は、単一のポリヌクレオチドとして互いに作動可能に連結される、修飾NK細胞が本明細書に提供される。
【0046】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、特異的抗原刺激の非存在下において且つ主要組織適合性複合体(MHC)クラスに応じて制限なしで標的細胞を殺滅する免疫系の細胞である。NK細胞は、CD56の存在及びCD3表面マーカーの非存在によって特徴付けられる。内因性NK細胞は、一般に、NK細胞が富化された細胞の不均一な集団である。内因性NK細胞は、患者の自己移植又は同種異系移植の治療のために意図され得る。
【0047】
本明細書において使用される際、「免疫療法」は、単独であるか又は組合せであるかにかかわらず、標的細胞に接触させると細胞毒性を誘発することが可能な修飾若しくは非修飾のNK細胞、天然若しくは修飾NK細胞又はT細胞の使用を指す。
【0048】
癌の治療
対象における癌又は腫瘍を治療する方法であって、それを必要としている患者に対して、治療有効量の、上記に開示される修飾NK細胞又は上記に開示される修飾NK細胞を含む組成物を対象に投与することを含む方法が本明細書に提供される。投与は、癌を治療するか、対象における腫瘍のサイズを減少させるか又は対象における癌転移を減少させることが想定される。
【0049】
「癌」という用語は、白血病、癌腫及び肉腫を含む、哺乳動物において見られるあらゆるタイプの癌、新生物又は悪性腫瘍を指す。例示的な癌としては、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮の癌及び髄芽腫が挙げられる。追加的な例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、癌、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、内分泌性及び外分泌性膵臓の新生物並びに前立腺癌が挙げられる。
【0050】
「転移」、「転移性」及び「転移性癌」という用語は、同義的に使用可能であり、1つの器官又は別の非隣接器官又は身体部分からの増殖性疾患又は障害、例えば癌の伝播を指す。癌は、発生部位、例えば乳房において発生し、この部位は、原発腫瘍、例えば原発性乳癌と呼ばれる。原発腫瘍又は発生部位中の一部の癌細胞は、局所において周囲の正常な組織に浸透及び浸潤する能力及び/又はリンパ系又は血管系の壁を貫通して、系を通して身体における他の部位及び組織に循環する能力を獲得する。原発腫瘍の癌細胞から形成される第2の臨床的に検出可能な腫瘍は、転移性又は二次性腫瘍と呼ばれる。癌細胞が転移すると、転移性腫瘍及びその細胞は、原発腫瘍のものと同様であると推定される。したがって、肺癌が乳房に転移する場合、乳房の部位における二次性腫瘍は、異常な乳房細胞ではなく、異常な肺細胞からなる。乳房における二次性腫瘍は、転移性肺癌と呼ばれる。したがって、転移性癌という語句は、対象が原発腫瘍を有するか又は有していた、且つ1つ以上の二次性腫瘍を有する疾患を指す。非転移性癌又は非転移性の癌を有する対象という語句は、対象が原発腫瘍を有するが、1つ以上の二次性腫瘍を有さない疾患を指す。例えば、転移性肺癌は、原発性肺腫瘍を有するか又は原発性肺腫瘍の病歴を有し、且つ第2の場所又は複数の場所、例えば乳房に1つ以上の二次性腫瘍を有する対象の疾患を指す。
【0051】
本明細書において使用される際、病態、疾患若しくは障害又は病態、疾患若しくは障害に関連する症状を「治療すること」又はそれらの「治療」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための手法を指す。有益な又は所望の臨床結果は、限定はされないが、部分的であるか又は全体的であるかにかかわらず、1つ以上の症状又は病態の緩和又は改善、病態、障害又は疾患の程度の減少、病態、障害又は疾患の状態の安定化、病態、障害又は疾患の発生の予防、病態、障害又は疾患の伝播の予防、病態、障害又は疾患の進行の遅延又は減速、病態、障害又は疾患の発症の遅延又は減速、病態、障害又は疾患の状態の改善又は緩和及び寛解を含み得る。「治療すること」は、治療しないときに予想される生存期間を超えて対象の生存期間を延長することも意味し得る。「治療すること」は、病態、障害又は疾患の進行を阻害すること、病態、障害又は疾患の進行を一時的に減速することも意味し得るが、場合により、それは、病態、障害又は疾患の進行を永続的に停止させることを含む。本明細書において使用される際、治療、治療する又は治療することという用語は、プロテアーゼの発現を特徴とする疾患若しくは病態の1つ以上の症状の影響又はプロテアーゼの発現を特徴とする疾患若しくは病態の症状を低減する方法を指す。したがって、開示される方法において、治療は、罹患している疾患、病態又は疾患若しくは病態の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の減少を指し得る。例えば、疾患を治療するための方法は、対照と比較して、対象における疾患の1つ以上の症状の10%の減少がある場合、治療であると見なされる。したがって、減少は、未処置又は対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又は10%~100%の任意のパーセントの減少であり得る。治療は、疾患、病態又は疾患若しくは病態の症状の治癒又は完全除去を必ずしも指すわけではないことが理解される。さらに、本明細書において使用される際、低減、減少又は阻害への言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれを超える変化を含み、このような用語は、完全除去を含み得るが、必ずしも完全除去を含むものではない。
【0052】
対象、患者、個体などの用語は、限定であることを意図されず、一般に置き換え可能である。すなわち、患者として記載される個体は、必ずしも所与の疾患を有するわけではなく、単に医師の診察を受けているに過ぎない場合もある。全体を通して使用される際、対象は、脊椎動物、より具体的には哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット及びモルモット)、鳥類、は虫類、両生類、魚類及び任意の他の動物であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示さない。したがって、雄であるか又は雌であるかにかかわらず、成熟及び新生対象が含まれることが意図される。本明細書において使用される際、患者、個体及び対象は、同義的に使用され得、これらの用語は、限定であることを意図されていない。すなわち、患者として記載される個体は、必ずしも所与の疾患を有するわけではなく、単に医師の診察を受けているに過ぎない場合もある。患者又は対象という用語は、ヒト及び動物対象を含む。
【0053】
本明細書において使用される際の「投与」又は「投与すること」は、所望の効果を達成するための任意の適切な経路により、1つ又は複数の化合物を提供すること、それに接触させること及び/又はそれを送達することを指す。投与は、限定はされないが、経口、舌下、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内又は頭蓋内注入)、経皮、局所、口腔、直腸、膣内、経鼻、眼内、吸入及び埋め込みによるものを含み得る。任意選択的に、NK細胞は、非経口的に投与される。任意選択的に、NK細胞は、静脈内に投与される。任意選択的に、NK細胞は、腫瘍周辺に投与される。
【0054】
本明細書に開示される修飾NK細胞は、細胞の絶対数によって対象に投与され得、例えば前記対象に約1000個の細胞/注入~最大で約100億個の細胞/注入、例えば1注入当たり、約、少なくとも約又は多くとも約1×1010、1×10、1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10個(など)のNK細胞又は数値のいずれか2つの間の任意の範囲(端点を含む)が投与され得る。任意選択的に、1×10~1×1010個の細胞が対象に投与される。任意選択的に、細胞は、1週間以上にわたって週に1回以上投与される。任意選択的に、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間又はそれを超えて週に1回又は2回投与される。
【0055】
別の実施形態において、総用量は、体表面積のmによっても計算され得る。対象に約1000個の細胞/注入/m~最大で約100億個の細胞/注入/m、例えば1注入当たり、約、少なくとも約又は多くとも約1×1010個/m、1×10個/m、1×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m(など)のNK細胞又は数値のいずれか2つの間の任意の範囲(端点を含む)が投与され得る。任意選択的に、1m当たり1×10~1×1010個のNK細胞が対象に投与される。任意選択的に、2×10個/mのNK細胞が対象に投与される。
【0056】
任意選択的に、NK細胞は、細胞の相対数によってこのような個体に投与され得、例えば前記個体に個体の1キログラム当たり約1000個の細胞~最大の約100億個の細胞、例えば個体の1キログラム当たり、約、少なくとも約又は多くとも約1×1010、1×10、1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10個(など)のNK(登録商標)細胞又は数値のいずれか2つの間の任意の範囲(端点を含む)が投与され得る。
【0057】
ある実施形態において、NK細胞は、NK細胞及び培地、例えばヒト血清又はその均等物を含む組成物中で投与される。培地は、ヒト血清アルブミン及び/又はヒト血漿を含み得る。任意選択的に、培地は、約1%~約15%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約1%~約10%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約1%~約5%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約2.5%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、血清は、ヒトAB血清である。任意選択的に、ヒト治療薬に使用するために許容される血清代替物がヒト血清の代わりに使用される。このような血清代替物は、当技術分野において公知であり得る。任意選択的に、NK細胞は、NK細胞及び細胞生存を補助する等張液体溶液を含む組成物中で投与される。任意選択的に、NK細胞は、凍結保存された試料から再構成された組成物中で投与される。
【0058】
本明細書に提供される方法に従い、有効量の、本明細書に提供される薬剤の1つ以上が対象に投与される。有効量及び有効な投与量という用語は、同義的に使用される。有効量という用語は、所望の生理反応(例えば、炎症の減少)を発生させるのに必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、当業者によって経験的に決定され得る。投与のための投与量範囲は、疾患又は障害の1つ以上の症状に影響を及ぼす(例えば、減少させるか又は遅らせる)所望の効果を発生させるのに十分多いものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの実質的な有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投与量は、年齢、病態、性別、疾患のタイプ、疾患若しくは障害の程度、投与経路又は他の薬剤が治療計画に含まれるかどうかによって異なり、当業者によって決定され得る。投与量は、何らかの禁忌がある場合には個々の医師によって調整され得る。投与量は、変化され得、1つ以上の用量の投与で毎日、1日又は数日間にわたって投与され得る。所与の種類の医薬品のための適切な投与量についての指針が文献に見出され得る。例えば、所与のパラメータについて、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。有効性は、「-倍」の増加又は減少としても表され得る。例えば、治療有効量は、対照と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれを超える効果を有し得る。正確な用量及び配合は、治療の目的に応じて決まり、公知の技術を用いて当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Editor(2012)及びPickar,Dosage Calculations(1999)を参照されたい)。
【0059】
提供される方法は、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/又は免疫療法などの他の腫瘍治療とさらに組み合わされ得る。したがって、提供される方法は、1つ以上の追加的な治療剤を対象に投与することをさらに含み得る。好適な追加的な治療剤としては、限定はされないが、鎮痛薬、麻酔薬、蘇生薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、抗コリンエステラーゼ、抗けいれん薬、抗腫瘍薬、アロステリック阻害剤、アナボリックステロイド、抗リウマチ薬、精神治療薬、ニューロン遮断薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗生物質、抗凝固剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗ムスカリン剤、抗抗酸菌薬、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作動薬、血液作用薬、免疫剤、ムスカリン作動薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子及びホルモンが挙げられる。薬剤及び投与量の選択は、治療される所与の疾患に基づいて当業者によって容易に決定され得る。任意選択的に、追加的な治療剤は、酢酸オクトレオチド、インターフェロン、ペムブロリズマブ、グルコピラノシル脂質A、カルボプラチン、エトポシド又はそれらの任意の組合せである。
【0060】
ある実施形態において、追加的な治療用物質は、ウイルス性癌ワクチン、細菌性癌ワクチン、酵母癌ワクチン、N-803、抗体、幹細胞移植及び腫瘍標的化サイトカインからなる群から選択され得る。
【0061】
任意選択的に、追加的な治療剤は、化学療法剤である。化学療法治療計画は、1つの化学療法剤又は化学療法剤の組合せの対象への投与を含み得る。化学療法剤としては、限定はされないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金系化合物、レチノイド及びビンカアルカロイド及び誘導体が挙げられる。任意選択的に、化学療法剤は、カルボプラチンである。
【0062】
薬剤又は組成物の組合せは、併用して(例えば、混合物として)、別々であるが、同時に(例えば、別個の静脈ラインを介して)又は連続して(例えば、1つの薬剤がまず投与された後、第2の薬剤が投与される)のいずれかで投与され得る。したがって、組合せという用語は、2つ以上の薬剤又は組成物の併用、同時又は連続投与を指すのに使用される。治療過程は、対象の特定の特性及び選択される治療のタイプに応じて、個別に最良に決定される。本明細書に開示されるものなどの治療は、1日1回、1日2回、隔週で、月に1回又は治療的に有効な任意の適用可能な基準で対象に投与され得る。治療は、単独で又は本明細書に開示されるか若しくは当技術分野において公知の任意の他の治療と組み合わせて投与され得る。追加的な治療は、第1の治療と同時に、異なる時点において又は全く異なる治療スケジュールで(例えば、第1の治療が1日1回であり得る一方、追加的な治療が週に1回である)投与され得る。
【0063】
ある実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明及び特許請求するのに使用される、成分、濃度などの特性、反応条件などの量を表す数値は、場合により、「約」という用語によって修飾されることが理解されるべきである。したがって、ある実施形態において、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、近似値であり、これは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲に含まれるそれぞれの別個の値を個々に示す簡単な方法としての機能を果たすことが意図されるに過ぎない。本明細書に特に示されない限り、それぞれの個々の値は、それが本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に援用される。
【0064】
状態、疾患の発症に対する感受性又は意図される治療に対する応答を「予後診断する」又は「予測する」という用語は、対象における状態の進行の速度、改善及び/又は持続期間を含む、状態、感受性及び/又は応答を予測する行為又は予測を(治療又は診断ではなく)包含することが意図されることがさらに留意されるべきである。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特に示されない限り又は文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行われ得る。本明細書における特定の実施形態に関して示されるあらゆる例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、本発明をよりよく説明することを意図されるに過ぎず、別途特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいずれの文言も、本発明の実施に不可欠である、特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0065】
本明細書中の説明及びそれに続く特許請求の範囲を通して使用される際、単数形(「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」)の意味は、文脈上特に明記されない限り、複数の言及を含む。また、本明細書中の説明において使用される際、「~の中」の意味は、文脈上特に明記されない限り、「~の中」及び「~の上」を含む。同様に本明細書において使用される際及び文脈上特に示されない限り、「結合される」という用語は、直接の結合(ここで、互いに結合される2つの要素が互いに接触する)及び間接的な結合(ここで、少なくとも1つの追加的な要素が2つの要素間に位置する)の両方を含むことが意図される。したがって、「~に結合される」及び「~と結合される」という用語は、同義的に使用される。
【0066】
既に説明されたものの他に多くのさらなる変更形態が本明細書における本発明の概念から逸脱せずに可能であることは、当業者に明らかであるはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際、全ての用語は、文脈と一致する可能な最も広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む」及び「含んでいる」という用語は、非排他的な方法で要素、成分又は工程を指すものとして解釈されるべきであり、言及される要素、成分又は工程は、明示的に言及されていない他の要素、成分又は工程とともに存在するか、又は用いられるか又は組み合わされ得ることを示す。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C...及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つを指す場合、本文は、AプラスN又はBプラスNなどではなく、その群からの1つのみの要素を必要とするものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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