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特許7621258アルミニウム合金シート製コイル用の連続表面処理
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  • 特許-アルミニウム合金シート製コイル用の連続表面処理 図1a
  • 特許-アルミニウム合金シート製コイル用の連続表面処理 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】アルミニウム合金シート製コイル用の連続表面処理
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/20 20060101AFI20250117BHJP
   C23C 22/78 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C23C22/20
C23C22/78
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021541574
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020051082
(87)【国際公開番号】W WO2020148412
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】62/794,069
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1900471
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(73)【特許権者】
【識別番号】521315755
【氏名又は名称】コンステリウム ボウリング グリーン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM BOWLING GREEN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ボエム,マチュ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジチャオ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-161876(JP,A)
【文献】特表2018-513280(JP,A)
【文献】特開2016-176097(JP,A)
【文献】特開2003-313678(JP,A)
【文献】特表平09-511548(JP,A)
【文献】特開2010-163641(JP,A)
【文献】特開2010-013677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00-22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する5XXXアルミニウム合金シートおよび6XXXアルミニウム合金シートのコイルを交互に処理するための連続コイル表面処理方法において、
b)アルミニウム合金シートの表面を、フッ素を含まない酸性溶液でエッチングするステップと、
c)エッチング済みアルミニウム合金シートの表面を、脱イオン水ですすぐステップと、
d)エッチング済みアルミニウム合金シートの表面に対して、3.0~5.0のジルコニウム対チタン重量比でチタンとジルコニウムを含む変換溶液を適用するステップと、
f)アルミニウム合金シートの表面を乾燥させるステップ
という連続的ステップを含む方法であって、
前記変換溶液がチタンとジルコニウムを含み、チタン含有量が60~140mg/lである、方法。
【請求項2】
ステップ(b)の前に、
a)アルミニウム合金シートの表面を清浄するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)の後であって、ステップ(f)の前に、
e)変換済みアルミニウム合金シートの表面を、脱イオン水ですすぐステップ
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記変換溶液がチタンとジルコニウムを含み、3.2~4.0のジルコニウム対チタン重量比である、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記変換溶液が、六フッ化チタン酸、六フッ化ジルコニウム酸、フッ化水素酸そして任意には一水素二フッ化アンモニウムを含む、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素を含まない酸性溶液が、硫酸、硝酸、リン酸、またはその混合物を含む、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素を含まない酸性溶液の硫酸濃度が、2g/l~60g/lである、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記フッ素を含まない酸性溶液の硫酸濃度が、15g/l~50g/lである、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記アルミニウム合金シートが、AA5754、AA5182、AA6451、AA6005、AA6605、AA6005A、AA6016、AA6116、AA6022、AA6013、AA6056、AA6156、AA6111およびAA6014からなる群の中から選択されたアルミニウム合金から製造されている、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(d)中の適用が、前記アルミニウム合金シートを前記変換溶液中に浸漬することによって行なわれる、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)中の適用が、前記アルミニウム合金シートに前記変換溶液を噴霧することによって行なわれる、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)中のエッチングが、前記アルミニウム合金シートに前記フッ素を含まない酸性溶液を噴霧することによって行なわれる、請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)中のフッ素を含まない酸性溶液が、2g/l未満のアルミニウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む、請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記フッ素を含まない酸性溶液が、界面活性剤添加物または促進剤を含み、55℃~85℃の温度で5~30秒の期間にわたり使用される、請求項1から13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製のシートおよびストリップならびにこれらのシートから抜打ち加工された部品の連続表面処理の分野に関し、詳細には、自動車両用の車体部品を製造するための、アルミニウム協会に準じた5XXXまたは6XXXタイプの合金に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造においては、車両の重量ひいては燃料消費量および汚染物質や温室効果ガスの排出を削減するために、増々アルミニウムが使用されてきている。シートは、特にフードおよびドアおよび構造部品などの車体外板部品を製造するために使用される。このタイプの利用分野では、大量生産にとって許容可能なコストと時として矛盾する、機械的強度、耐腐食性および成形性という1組の特性が求められる。
【0003】
自動車部品のためには、組立て作業、特に接着結合および溶接に適応された表面の調製が必要となり得る。これらの前処理は、特に浸液が腐食性で健康および環境上の特別な配慮を必要とするために時間そしてコストがかかる。近年の処理は、環境上の理由からクロムを含まず、有機リン、シランおよび誘導体、チタンおよび/またはジルコニウムなどの元素を使用する。例えば、このような処理は、米国特許第5514211号明細書、米国特許第5879437号明細書、米国特許第6167609号明細書、米国特許出願公開第2013/284049号明細書、米国特許出願公開第2011/041957号明細書、米国特許出願公開第2016/319440号明細書という特許および特許出願中に記載されている。
【0004】
仏国特許発明第2856079号明細書は、大気プラズマを使用することによって単純化された代替的処理について記述している。
【0005】
米国特許第5868872号明細書は、特に食品包装業界における利用分野に対する、クロムを含まない無すすぎ方法を開示している。この特許は、処理に先立つエッチングステップを開示せず、単に酸性またはアルカリ性洗浄剤のみを開示している。
【0006】
米国特許第6562148号明細書は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製表面を有する加工中の製品の前処理方法において、鉱酸を含有する酸性水溶液ですすぐステップ、水ですすぐステップ、2:1~1:2のTi:Zr重量比でフッ化物錯体としてTiおよびZrを含有し、クロムもポリマも含まない酸性水溶液と接触させるステップを含む方法を開示している。
【0007】
欧州特許出願公開第2537674号明細書は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成された基板の表面上に表面処理コーティングフィルムを有するアルミニウムまたはアルミニウム合金において、表面処理コーティングフィルムが、長期にわたり親水性、高い耐腐食性、抗菌性および脱臭特性を維持する能力を有している、アルミニウムまたはアルミニウム合金を開示している。
【0008】
表面の調製は、通常、シートコイルの表面処理を可能にする連続コイル表面処理ラインを用いて実施される。
【0009】
表面処理ラインは、連続溶体化処理および焼入れを含んでいてもよいし、または、表面処理専用のラインであってもよい。化学層の重量を最適化することによって、自動車部門における製品の利用分野に適合させるべく表面特性を漸進的に修正するために、複数の表面処理ステップが適用される。第1の表面処理ステップは通常、最終的な圧延ステップの後に存在する、シート上の油残渣を除去するために使用されるシートの脱脂ステップである。圧延プロセスの後、アルミニウムの表面は、「変質層」または「変質表面層」とも呼ばれる「変質領域」を含み、酸化物層および擾乱部域を除去するために第2の表面処理ステップにおいてエッチングが用いられて均一な表面を保証し、これは、Ti/Zr変換層などの製品を被着させるため、およびさらなる腐食/接着耐久性特性のためにより有利である。第3の表面処理ステップは変換コーティングであり、この変換の目的は、(例えばTiおよび/またはZrからなる)粘着性および耐腐食性を促進する層の重みを正確に被着させることにある。概して、第2のエッチング処理におけるフッ素の使用は「擾乱部域」を除去し、変換層を被着させるのに有利な表面を得るために必要であることが認められている。しかしながら、フッ素含有浴の使用には、健康および環境面の特別な配慮が求められる。別の要件は、自動車の利用分野専用の表面処理ラインが、5XXXおよび6XXX合金シートのコイルを交互に処理できなければならない、というものである。したがって、異なるタイプの合金のために同じ処理を維持することが経済的に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5514211号明細書
【文献】米国特許第5879437号明細書
【文献】米国特許第6167609号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/284049号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/041957号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/319440号明細書
【文献】仏国特許発明第2856079号明細書
【文献】米国特許第5868872号明細書
【文献】米国特許第6562148号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2537674号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、5XXXおよび6XXX合金の両方のための処理済み表面を提供する効率的かつ信頼できるやり方で処理済み表面を生成するための、より環境に優しい改良型表面処理方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の対象は、表面を有する5XXXアルミニウム合金シートおよび6XXXアルミニウム合金シートの両方のコイルに好適である連続コイル表面処理方法において、
a)アルミニウム合金シートの表面を任意に清浄するステップと、
b)任意に清浄されたアルミニウム合金シートの表面を、フッ素を含まない酸性溶液でエッチングするステップと、
c)エッチング済みアルミニウム合金シートの表面を、脱イオン水ですすぐステップと、
d)エッチング済みアルミニウム合金シートの表面に対して、約3.0~約5.0、好ましくは3.2~4.0のジルコニウム対チタン重量比でチタンとジルコニウムを含む変換溶液を適用するステップと、
e)変換済みアルミニウム合金シートの表面を、脱イオン水で任意にすすぐステップと、
f)アルミニウム合金シートの表面を乾燥させるステップ
という連続的ステップを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】含フッ素エッチング溶液でエッチングされた6016表面のSEM顕微鏡写真である。
図1b】フッ素を含まないエッチング溶液でエッチングされた6016表面のSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で言及されている全てのアルミニウム合金は、別段の記載の無いかぎり、アルミニウム協会が定期的に公開する登録記録シリーズ中で定義している規則および呼称を用いて示されている。
【0015】
別段の規定の無いかぎり、EN12258規格の定義が適用される。
【0016】
本発明に係る方法は、5XXX合金シートおよび6XXX合金シートの両方のコイルに好適である連続コイル表面処理方法である。本発明の1つの有意な利点は、5XXX合金から6XXX合金にラインを切換える場合に処理を変更または修正する必要性が全く無いということにある。
【0017】
該方法は、5XXX合金シート製のコイルの処理および6XXX合金シート製のコイルの処理のために好適である。好ましくは、コイルは、AA5754、AA5182、AA6451、AA6605、AA6005、AA6005A、AA6016、AA6116、AA6022、AA6013、AA6056、AA6156、AA6111およびAA6014からなる群の中から選択されたアルミニウム合金から製造されたシートのコイルである。
【0018】
第1のステップにおいて、シート表面は、任意に清浄され得る。清浄は、圧延プロセスによって残された残留油を除去するために使用されてよい。任意には、清浄は、温水噴霧によって、および/または有機溶剤を使用することによって、および/またはアルカリ性洗剤などの洗剤および/または界面活性剤を使用することによって実施可能である。いくつかの連続処理ラインについて、シートは、先行熱処理によって十分に脱脂されている可能性があり、清浄ステップが必要でない場合もある。同様に、いくつかの事例において、清浄およびエッチングは、プロセスを簡略化するために同時に実施されてよい。生産性およびコスト上の理由から、清浄ステップの存在を回避することが通常好ましい。
【0019】
次のステップにおいて、任意に清浄されたアルミニウム合金シートの表面は、フッ素を含まない酸性溶液でエッチングされる。本発明者らは、フッ素を含まない酸性溶液を特定の数量でTiおよびZrを含む変換浴と組み合わせることによって、同じ浴で5XXXおよび6XXXシートを処理し、満足のいく変換を得ることが可能である、ということを発見した。好ましくは、フッ素を含まない酸性溶液でのエッチングは、電気化学的にではなく化学的に実施される。
【0020】
好ましくは、フッ素を含まない酸性溶液は、硫酸、硝酸、リン酸、またはそれらの混合物を含む。有利には、フッ素を含まない酸性溶液は、少なくとも80%の硫酸およびリン酸、またはそれらの混合物を含む。一実施形態において、フッ素を含まない酸性溶液は硝酸を含有しない。酸混合物が使用される場合、この混合物が少なくとも80%の硫酸を含むことが有利である。有利には、フッ素を含まない酸性溶液の硫酸濃度は、約2g/l~約60g/l、好ましくは15g/l~50g/lである。任意には、フッ素を含まない酸性溶液は、1つ以上の添加物(例えば界面活性剤および/または洗剤)および/または1つ以上の促進剤を含むことができる。界面活性剤および/または洗剤添加物は、フッ素を含まない酸性溶液中に、約0.05重量%から3重量%の範囲内の濃度で含まれ得る。好ましくは、界面活性剤および/または洗剤添加物は、フッ素を含まない酸性溶液中に、約0.1重量%~2.5重量%、約0.2重量%~2重量%、約0.3重量%~1.5重量%または約0.4重量%~1.3重量%の範囲内の濃度で含まれ得る。フッ素を含まない酸性溶液中に含まれ得る好適な促進剤は、硫酸第二鉄を含む。促進剤は、約0.005重量%~0.4重量%の範囲内の濃度でフッ素を含まない酸性溶液中に含まれ得る。例えば促進剤は、フッ素を含まない酸性溶液中に、約0.01重量%~0.3重量%、約0.03重量%~0.2重量%の範囲内の濃度で含まれ得る。
【0021】
フッ素を含まない酸性溶液は、約55℃~約85℃の温度まで加熱され得る。フッ素を含まない酸性溶液は、例えば熱交換器および定量ポンプおよび排水口を用いて、概略決定された温度および濃度範囲内に制御され得、好適な形で交換または補充され得る。
【0022】
フッ素を含まない酸性溶液は、シート上に溶液を噴霧することによってまたは浴中にシートを浸漬することによって、適用され得る。好ましくは、フッ素を含まない酸性溶液は浸漬によって適用される。任意には、シート表面に対して新鮮な溶液が連続して曝露されることを保証するために、フッ素を含まない酸性溶液を循環させることができる。有利な実施形態においては、溶液中に限定数量のAlおよびMgイオンを維持する目的で、フッ素を含まない酸性溶液は交換樹脂で連続的に処理される。好ましくは、フッ素を含まない酸性溶液は、約3g/l未満のアルミニウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む。有利には、フッ素を含まない酸性溶液は、2g/l未満のアルミニウムおよびマグネシウムイオンを含有し得る。酸エッチングステップのための接触時間は、約5秒~約30秒、または好ましくは約10~約20秒であり得る。
【0023】
有利には、エッチング除去は、6XXX合金については0.01~0.2g/m、好ましくは0.01~0.1g/m、そして5XXX合金については0.1~0.2g/mである。本発明のフッ素を含まない酸性溶液では、エッチング除去は、先行技術のフッ素含有酸性溶液から知られているエッチング除去よりも実質的に低い。これは、溶液中のAlおよびMgイオンを制限するために有利である。同様に、本発明のエッチングは、詳細には点食がより少ないかさらには全く無い状態で、先行技術のエッチングに比べて有利なより平滑な表面を提供する。
【0024】
エッチングの後、エッチング済みのアルミニウム合金シートの表面を脱イオン水ですすぐことが必要である。好ましくは、このステップ中の脱イオン水は、50μS/cm以下の伝導度を有する。すすぎステップは、好ましくは約37℃~約70℃の範囲内の温度で行なわれる。有利には、すすぎステップは、約40℃~約65℃、好ましくは約45℃~約60℃の温度で行なわれ得る。すすぎは、進行性のカスケーディングシステムであり得る。好ましくは、すすぎステップのために噴霧が使用される。
【0025】
後続するステップは、エッチング済みアルミニウム合金シートの表面に対して、約3.0~約5.0、好ましくは3.2~4.0のジルコニウム対チタン重量比で、チタンとジルコニウムを含む変換溶液を適用するステップである。本発明者らは、本発明に係るフッ素を含まない酸性溶液でのエッチングおよび変換溶液での変換を組み合わせることによって、5XXXおよび6XXX合金について約0.8~約1.3の処理済みシート表面上のZr/Ti重量比を得ることができるということを発見した。この比は、シートの接着結合特性にとって重要である。本発明の1つのメリットは、5XXXおよび6XXXの両方の合金を処理するために変換溶液の組成を修正する必要がないという点にある。変換溶液は、約35℃~約65℃の温度で適用され得る。好ましくは、変換溶液は、5XXXおよび6XXXについて異なる温度で、典型的には5XXX合金については約40℃~約50℃の温度でかつ6XXX合金については約45℃~55℃の温度で適用される。変換溶液は、約5秒~約20秒の接触時間にわたり適用されてよい。好ましくは、変換溶液は、5XXXおよび6XXXについて異なる接触時間にわたって、好ましくは5XXX合金について約5秒~約9秒の接触時間、典型的には5XXX合金について約7秒の接触時間、そして好ましくは6XXX合金について約8秒~約12秒の接触時間、典型的には6XXX合金について約10秒の接触時間で適用される。
【0026】
好ましくは、変換溶液は、約20~約200mg/l、好ましくは60~140mg/lのチタン含有量で、チタンとジルコニウムを含む。有利には、変換溶液は、六フッ化チタン酸、六フッ化ジルコニウム酸、フッ化水素酸そして任意には一水素二フッ化アンモニウムを含む。追加のフッ化物(フッ化水素酸および任意には一水素二フッ化アンモニウムの形態の)は、有利には、変換溶液での処理中に生成されたAlを錯化するために添加される。変換溶液のpHは、有利には、水酸化アンモニウムまたは一水素二フッ化アンモニウムなどのアルカリを添加することによって約2.5~約4.5、好ましくは3.5~4のpHまで上向きに調整される。有利な実施形態において、変換溶液は、溶液中の限定数量のAlおよびMgイオンを維持する目的で、交換樹脂で連続処理される。好ましくは、変換溶液は、約80ppm未満のアルミニウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む。
【0027】
変換溶液は、シート上に溶液を噴霧することによって、またはシートを浴中に浸漬させることによって適用され得る。好ましくは、変換溶液は、好ましくは少なくとも5つの噴霧ランプで、変換溶液をアルミニウム合金シートに噴霧することによって適用される。発明力ある記載の変換溶液をロールコーティングによって適用することは、シート上のTi/Zr比が変換溶液中のTi/Zr比と同じになることから、最適ではないと思われる。
【0028】
後続するステップは、変換済みアルミニウム合金シートの表面を脱イオン水で任意にすすぐステップである。
【0029】
最終ステップは、アルミニウム合金シートの表面を乾燥させるステップである。乾燥ステップは、シートの表面からあらゆる水分を除去する。乾燥ステップは、空気乾燥機または赤外線乾燥機を用いて行なうことができる。乾燥ステップは、最高5分間にわたって行なうことができる。乾燥ステップは同様に、必要な場合特に6XXX合金のために、冶金目的でも使用され得、これによりコイリング温度は有利には50℃~120℃または好ましくは60℃~100℃となる。
【実施例
【0030】
本明細書中に記載の方法にしたがって、アルミニウム合金シートの表面を連続ライン上で処理した。シートは、5182アルミニウム合金シートと6016アルミニウム合金シートを含んでいた。シートを清浄し、試験1および2についてはスルホフッ化水素浴(8g/lのHSO、0.4g/lのHF、50℃)、または試験3~6については硫酸浴(43g/lのHSO、70℃)を噴霧することによってエッチングした。スルホフッ化水素浴でエッチングした6016合金について得られた表面のSEM顕微鏡写真(試験2)および硫酸浴でエッチングした6016合金について得られた表面の顕微鏡写真(試験6)が、それぞれ図1aおよび1bに提示されている。本発明のエッチングは、先行技術のエッチングに比べて、有利なより平滑な表面を提供し、点食は遥かに少ない。エッチングの後、シートを脱イオン水ですすぎ、六フッ化チタン酸、六フッ化ジルコニウム酸、フッ化水素酸および一水素二フッ化アンモニウムを含むpH3.8のTi/Zr化成表面処理を用いて噴霧により処理した。接触時間、濃度および温度は、表1に示されている。
【0031】
表面上に被着したZrおよびTiの数量を、6つの試料について幅を横断した3つの位置でXRFにより測定した。測定の平均値は、表1に提供されている。
【0032】
【表1】
【0033】
浴Cを用いた変換コーティングは、本発明に係るものである。本発明の方法によると、5XXXおよび6XXX合金の両方のために単一の浴で0.8~1.3のZr/Ti比を得ること、そして有利なより平滑な表面を得ることが可能である。
図1a
図1b