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特許7621265非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20250117BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20250117BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 10/04 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M50/119
H01M50/133
H01M50/586
H01M50/591
H01M10/04 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021550340
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025843
(87)【国際公開番号】W WO2021065128
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019180169
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大門 徹也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 将史
(72)【発明者】
【氏名】新井 友春
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 篤
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219143(JP,A)
【文献】特開2016-105415(JP,A)
【文献】特開2005-149763(JP,A)
【文献】特開2015-065065(JP,A)
【文献】特開2010-021104(JP,A)
【文献】特開2007-103295(JP,A)
【文献】特開2001-291526(JP,A)
【文献】特開2009-104902(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/0587
H01M 50/00-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板、負極板、及び、前記正極板と前記負極板との間に配置されイオン透過性を有するセパレータとを用いて扁平状巻回形電極体を作製する工程、
前記扁平状巻回形電極体を含む挿入物を、開口を有する電池ケースに収容する工程、
前記電池ケースの前記開口を蓋体を用いて閉じる工程、
前記電池ケース内に非水電解液を注入する工程、
を含む非水電解質二次電池の製造工程を経た後、
前記電池ケースの外側の所定押圧領域を押圧治具で押圧し、
押圧状態の前記電池ケースにおいて前記扁平状巻回形電極体の厚さ方向に平行な方向に沿って前記扁平状巻回形電極体を含む前記電池ケース内への挿入物の合計厚さE1と前記電池ケースの内寸T1の比率(E1/T1)を前記挿入物の電池ケース内占有率N1として、0.92≦N1<0.98の所定押圧状態とし、
前記所定押圧状態の下で充放電検査を実行する工程を含み、
前記挿入物は、前記扁平状巻回形電極体、及び、前記電池ケースと前記扁平状巻回形電極体との間の電極体ホルダーを備え、
前記扁平状巻回形電極体は、厚さがM0であり、
前記電極体ホルダーは、肉厚がt1であり、
前記1は(M0+2×t1)であり、
前記挿入物の前記電池ケース内占有率N1は、N1=(M0+2×t1)/T1であり、
前記電極体ホルダーが、絶縁性のシート体であり、
所定の前記充放電検査の実行後において、前記扁平状巻回形電極体の最内周巻回部分の両端を結ぶ最内周巻回軌跡の軌跡経路に沿った実際の長さをC1とし、前記最内周巻回軌跡の両端を結ぶ直線距離をS1として、1.000<(C1/S1)<1.001であり、
前記電池ケースの外寸厚さは、12mm以上27mm以下であり、
前記所定押圧状態は、
前記電池ケースの外寸厚さが12mm以上17mm未満の場合には、0.92≦N1<0.98であり、
前記電池ケースの外寸厚さが17mm以上27mm以下の場合には、0.94<N1<0.98であり、
前記充放電検査には、初期充電工程、前記初期充電工程の後に前記初期充電工程を行った温度よりも高温で12~24時間放置する高温エージング工程、及び前記高温エージング工程の後に充電を行った後に放電を行う特性確認工程が含まれる、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項2】
正極板、負極板、及び、前記正極板と前記負極板との間に配置されイオン透過性を有するセパレータとを用いて扁平状巻回形電極体を作製する工程、
前記扁平状巻回形電極体を含む挿入物を、開口を有する電池ケースに収容する工程、
前記電池ケースの前記開口を蓋体を用いて閉じる工程、
前記電池ケース内に非水電解液を注入する工程、
を含む非水電解質二次電池の製造工程を経た後、
前記電池ケースの外側の所定押圧領域を押圧治具で押圧し、
押圧状態の前記電池ケースにおいて前記扁平状巻回形電極体の厚さ方向に平行な方向に沿って前記扁平状巻回形電極体を含む前記電池ケース内への挿入物の合計厚さE1と前記電池ケースの内寸T1の比率(E1/T1)を前記挿入物の電池ケース内占有率N1として、0.92≦N1<0.98の所定押圧状態とし、
前記所定押圧状態の下で充放電検査を実行する工程を含み、
前記挿入物は、前記扁平状巻回形電極体、及び、前記電池ケースと前記扁平状巻回形電極体との間の電極体ホルダーを備え、
前記扁平状巻回形電極体は、厚さがM0であり、
前記電極体ホルダーは、肉厚がt1であり、
前記1は(M0+2×t1)であり、
前記挿入物の前記電池ケース内占有率N1は、N1=(M0+2×t1)/T1であり、
前記電極体ホルダーが、絶縁性のシート体であり、
所定の前記充放電検査の実行後において、前記扁平状巻回形電極体の最内周巻回部分の両端を結ぶ最内周巻回軌跡の軌跡経路に沿った実際の長さをC1とし、前記最内周巻回軌跡の両端を結ぶ直線距離をS1として、1.000<(C1/S1)<1.001であり、
前記扁平状巻回形電極体において巻回軸方向に垂直で且つ扁平状の平坦部が延伸する方向を第1方向として、
前記扁平状巻回形電極体の扁平状の前記平坦部の前記第1方向に沿った長さをL2とし、
前記扁平状巻回形電極体の前記第1方向に沿った全体の長さをL3とし、
前記扁平状巻回形電極体の最内周巻回部分の前記第1方向に沿った両端部間の長さをL4として、
前記所定押圧領域の前記第1方向に沿った長さL1は、L1≦L2,L1<L3,L1≧L4に設定され、
前記充放電検査には、初期充電工程、前記初期充電工程の後に前記初期充電工程を行った温度よりも高温で12~24時間放置する高温エージング工程、及び前記高温エージング工程の後に充電を行った後に放電を行う特性確認工程が含まれる、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電池ケースは、アルミニウム、またはアルミニウム合金で構成され、
前記電池ケースにおける前記所定押圧領域に対応する部分の肉厚は1.00mm以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池に係り、特に扁平状巻回形電極体を含む非水電解質二次電池の製造方法及びその非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、携帯電話、ノートパソコン等の民生用途に加えて、電気自動車、ハイブリッド車両等への車載用途に広がりつつある。特に、モジュール化した際の体積効率が優れている角形リチウムイオン電池が用いられ、そこでは、高容量化、すなわち体積当たりの電極占有率を上げるために、電極体として、内周部に空間をもたない扁平状巻回形電極体が用いられている。
【0003】
電極体に扁平状巻回形電極体を採用すると、充放電の際に電極体が膨張、収縮を繰り返すことで、電極体の平坦部に波打ちによる撓みが発生し、また、巻回張力が低下して巻きがほどける緩みが生じることがある。扁平状巻回形電極体に撓みや緩みが発生すると、二次電池としての性能が低下する。
【0004】
特許文献1では、角形リチウムイオン電池における扁平状巻回形電極体の撓みや緩みは、扁平状巻回形電極体の巻回方向に沿った長さをLとし、厚さをWとして、(L/W)が1.7以上3.8以下とすることで抑制できる、と述べている。
【0005】
特許文献2では、角形リチウムイオン電池における扁平状巻回形電極体の撓みは、電池ケース等によって扁平状巻回形電極体が厚さ方向に押圧されることで抑制されると述べている。ここでは、「扁平状巻回形電極体を収容する前の電池ケース」の内寸に対する「電池ケースに収容された扁平状巻回形電極体の放電時の厚さ方向」の外寸の比を電極体厚さ比率として、8つの実施例と4つの比較例の実験結果を述べている。電極体厚さ比率が1.01よりも小さいと放電時の扁平状巻回形電極体に十分な拘束力が与えられず扁平状巻回形電極体が撓み、サイクル容量維持特性が低下する。電極体厚さ比率が1.03よりも大きいと、放電時の扁平状巻回形電極体に対する電池ケースの寸法が小さすぎて扁平状巻回形電極体の撓みと電池ケースの膨れが大きくなる。そこで、電極体厚さ比率は1.01から1.03の範囲が好ましいと述べている。
【0006】
本開示に関連する技術として、特許文献3では、密閉型リチウムイオン電池で初回充電の際に電池部材に含まれる微量の水分や電解質成分の一部が電極表面で分解されガスが発生し電池内圧が高くなることを指摘している。ここでは、電極体と電解液とを収容した電池ケースを減圧下で封止した後、初回充電を行う際に電池ケースに拘束板等で圧力を加える。これにより、電解液の一部が分解してガスが発生するとともに負極活物質表面に被膜が形成されて負極表面と電解液との界面が安定すると述べている。発生したガスは、封止の際の減圧及び初回充電の際の圧力負荷によって、スムーズに電極表面から抜けるので、内圧の上昇を抑制できる、と述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-115033号公報
【文献】特開2014-082157号公報
【文献】特開2013-125650号公報
【発明の概要】
【0008】
非水電解質二次電池において充放電時の際に扁平状巻回形電極体が膨張収縮することで生じ得る撓みを抑制するためには、電池ケースの外側から扁平状巻回形電極体を押圧することが効果的であるが、押圧が強すぎると、電池ケースの変形や押圧治具の変形が生じる。押圧が弱いと、撓みを効果的に抑制できない。そこで、扁平状巻回形電極体が膨張収縮することで生じ得る撓みを効果的に抑制できる非水電解質二次電池の製造方法が要望される。
【0009】
本開示に係る非水電解質二次電池の製造方法は、正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に配置されイオン透過性を有するセパレータとを用いて扁平状巻回形電極体を作製する工程、扁平状巻回形電極体を含む挿入物を、開口を有する電池ケースに収容する工程、電池ケースの開口を蓋体を用いて閉じる工程、電池ケース内に非水電解液を注入する工程、を含む非水電解質二次電池の製造工程を経た後、電池ケースの外側の所定押圧領域を押圧治具で押圧し、押圧状態の電池ケースにおいて扁平状巻回形電極体の厚さ方向に平行な方向に沿って扁平状巻回形電極体を含む電池ケース内への挿入物の合計厚さE1と電池ケースの内寸T1の比率(E1/T1)を挿入物の電池ケース内占有率N1として、0.92≦N1<0.98の所定押圧状態とし、所定押圧状態の下で充放電検査を実行する工程を含む。
【0010】
本開示に係る非水電解質二次電池は、正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に配置されイオン透過性を有するセパレータを備える扁平状巻回形電極体を、非水電解質と共に電池ケースに収納する非水電解質二次電池であって、扁平状巻回形電極体は、最内周巻回部分の両端を結ぶ最内周巻回軌跡の軌跡経路に沿った実際の長さをC1とし、最内周巻回軌跡の両端を結ぶ直線距離をS1として、1.000<(C1/S1)<1.001である。
【0011】
上記構成の非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池によれば、扁平状巻回形電極体が膨張収縮することで生じ得る撓みを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態における非水電解質二次電池の製造方法を用いて製造された非水電解質二次電池の外観図である。
図2図1の非水電解質二次電池の分解図である。
図3】実施の形態における非水電解質二次電池の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4】巻回形電極体を図4(a)に示し、図4(b)には、扁平状巻回形電極体を示す図である。
図5図4(b)の扁平状巻回形電極体についての断面図である。
図6図5のVI部の拡大図である。
図7】非水電解質二次電池の断面図である。
図8】押圧治具を用いて押圧される非水電解質二次電池を示す図である。
図9図8について押圧方向に沿って切断した断面図である。
図10】X線CTを用いて扁平状巻回形電極体の撓みを測定する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて、本開示の実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる材質、寸法、形状等は説明のための例示であって、非水電解質二次電池の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、非水電解質二次電池10の外観斜視図である。以下では、特に断らない限り、非水電解質二次電池10を、二次電池10と呼ぶ。この二次電池10は、天井側に矩形開口を有する有底筒状の直方体の電池ケース12と、電池ケース12の矩形開口を閉じる蓋体14とを有する角形リチウムイオン電池である。
【0015】
図2は、電池ケース12と蓋体14とを分離して、二次電池10の内部構造を示す断面図である。二次電池10の内部には、正極と負極とがセパレータを介して積層巻回されて扁平状に巻回された扁平状巻回形電極体16が含まれる。以下では、特に断らない限り、扁平状巻回形電極体16を、電極体16と呼ぶ。二次電池10の内部には、電極体16の他に、電極体16に含浸された非水電解液18、及び、電極体16と電池ケース12とを電気的に絶縁するための絶縁体である電極体ホルダー20が含まれる。
【0016】
図1に、直交する三方向として、第1方向、第2方向、第3方向を示す。第1方向は、電池ケース12の底部から蓋体14に向かう方向であり、電池ケース12の高さ方向に相当する。第2方向は、電池ケース12の矩形開口の長辺が延伸する方向であり、電池ケース12の幅方向に相当する。第3方向は、電池ケース12の矩形開口の短辺が延伸する方向であり、電池ケース12の外形厚さ方向に相当する。以下の図でも同様である。
【0017】
電池ケース12は、矩形開口を有する角形の缶体で、適当な金属材料を所定の形状に一体化成形したものが用いられる。電池ケース12の単体としての第1方向に沿った外形寸法である外寸高さをH12、第2方向に沿った外形寸法である外寸幅をW12、第3方向に沿った外形寸法である外寸厚さをD12と示す。電池ケース12の単体としての外形寸法とは、天井側に矩形開口を有する有底筒状の直方体に何も収容されていない状態の電池ケース12の外形寸法である。
【0018】
単体としての電池ケース12の矩形開口の長辺の長さは、第2方向に沿った外形寸法でW12である。電池ケース12の矩形開口の短辺の長さは、第3方向に沿った外形寸法でD12である。電池ケース12の5つの側面の外形寸法は、矩形開口の長辺を有する2つの側面が(W12×H12)であり、矩形開口の短辺を有する2つの側面が(D12×H12)であり、矩形開口の長辺と短辺で構成される1つの側面が(W12×D12)である。単体としての電池ケース12の大きさは、二次電池10の電池容量(Ah)に応じて設定される。
【0019】
電池ケース12の各壁部の肉厚t12は、電池ケース12全体の大きさに応じて適宜設定してよいが、後述する充放電検査の際に行われる押圧によって電極体16が所定押圧状態となるように、肉厚を適当に薄くする必要がある。車載用の二次電池10の電池ケース12の材質としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられることが多いが、その場合の各壁部の肉厚は、t12≦1.0mmに設定する。充放電検査、所定の押圧状態については後述する。
【0020】
蓋体14は、電池ケース12の矩形開口を液密に塞ぐことができる大きさを有する矩形板部15を含む。矩形板部15の材質は、電池ケース12との間で溶接等の接合によって一体化可能な材質が選択される。矩形板部15の材質として、電池ケース12と同じ材質を用いることができる。
【0021】
蓋体14は、電池ケース12と一体化された場合に二次電池10の第1方向の外側に突き出す正極外部端子22及び負極外部端子24の2つの外部端子と、注液口26と、ガス排出口28とを矩形板部15に備える。正極外部端子22は、絶縁部材を介して矩形板部15と電気的に絶縁される。負極外部端子24は、絶縁部材を介して矩形板部15と電気的に絶縁される。
【0022】
正極外部端子22、負極外部端子24は、それぞれ、正極集電板30、負極集電板32を介して、電極体16の電極体正極34、電極体負極36と接続される。これらの接続によって、電極体16と蓋体14とが機械的電気的に一体化された電極体付蓋体38が形成される。機械的電気的に一体化された直後の電極体付蓋体38には、非水電解液18は、まだ含まれていない。
【0023】
電極体ホルダー20は、電極体付蓋体38と電池ケース12とを一体化する際に、電極体付蓋体38の電極体16の部分が電池ケース12の内壁部分と電気的に接触しないように、電極体16に関する部分を覆う形状に成形された絶縁体のシート体である。電極体ホルダー20の材質としては、非水電解液18に耐性を有する電気絶縁性の樹脂が用いられる。図2に、電極体ホルダー20の肉厚をt1と示す。t1の一例は、約0.15mmである。
【0024】
注液口26は、電極体ホルダー20が配置された電池ケース12に、電極体付蓋体38の電極体16の部分が挿入され、溶接等で電池ケース12と蓋体14とが一体化された後に、電池ケース12内に非水電解液18を注入するための開口である。非水電解液18が注入されて電極体16が浸漬されると、注液口26は封止され、これによって検査前の非水電解質二次電池40が形成される。検査前の非水電解質二次電池40は、所定の充放電検査を経て、商品としての二次電池10になる。
【0025】
ガス排出口28は、二次電池10が充放電する際にガスが発生して二次電池10の内圧が所定値を超える場合に、ガスを二次電池10の外部に放出するためのガス抜き穴である。
【0026】
次に、上記構成の二次電池10の製造方法について述べる。図3は、二次電池10の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0027】
図3では、巻回形電極体42(図4参照)の形成から始まる(S10)。形成された巻回形電極体42は、プレス加工によって扁平化成形されて、電極体16となる(S12)。
【0028】
図4(a)に、巻回形電極体42の斜視図を示し、(b)に電極体16の展開図を示す。図4(b)の展開図を用いて説明すると、巻回形電極体42は、1枚のセパレータ46、1枚の正極板48、1枚のセパレータ50、1枚の負極板52を、厚さ方向にこの順に重ねて、巻回軸R-Rまわりに筒状に巻き取った巻取体である。図4(a)において、dは、巻回形電極体42の内径寸法で、例えば、巻取軸体の外径寸法に相当する。
【0029】
電極体16は、巻回形電極体42の筒状の巻取体をプレス加工で所定の電極体厚さM0に圧縮成形したものである。電極体16は、巻回形電極体42に対し、プレス加工機を用い、巻回軸R-Rに垂直なP-P方向にプレス圧を加え、巻回形電極体42の筒状形状を扁平状形状に成形して得られる。図4の例では、巻回形電極体42の内径dはプレス加工によって押しつぶされ、内周部に隙間がほとんどなく、直線状の最内周巻回部分の寸法S0を有する電極体16となる。
【0030】
図4(b)に、電極体16に関し、直交する三方向として、R-R方向、P-P方向、及び、F-F方向を示す。図4(a)を参照して、R-R方向は巻回軸方向であり、P-P方向は、扁平状に加工するプレス加工のプレス圧方向である。F-F方向は、R-R方向及びP-P方向のいずれにも直交し、プレス加工によって扁平状の平坦部が延伸する方向であるので、扁平方向と呼ぶ。図2を参照して、二次電池10の電池ケース12内に電極体16を収容する場合には、扁平方向のF-F方向を第1方向に平行とし、巻回軸方向のR-R方向を第2方向に平行とし、プレス圧方向のP-P方向を第3方向に平行として配置される。
【0031】
図4の展開図では、最外周側の展開の様子が示される。すなわち、最外周はセパレータ46で、セパレータ46の上に正極板48、正極板48の上にセパレータ50、セパレータ50の上に負極板52が積層される。この例では、最内周側は、負極板52となるが、これは説明のための例示であって、最外周側を負極板52、最内周側を正極板48としてもよい。
【0032】
正極板48は、導電性を有する金属集電板としての正極芯体であるアルミニウム系金属箔48aの両面に、正極スラリーとしての正極活物質合剤層48bを塗布乾燥させて形成される。正極活物質合剤層48bは、正極活物質を有する。アルミニウム系金属とは、アルミニウムまたはアルミニウムが主体のアルミニウム合金である。正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵と放出が可能なリチウム遷移金属複合酸化物を含有する。
【0033】
負極板52は、導電性を有する金属集電板としての負極芯体である銅系金属箔52aの両面に負極スラリーとしての負極活物質合剤層52bを塗布乾燥させて形成される。負極活物質合剤層52bは、負極活物質を有する。銅系金属とは、銅または銅が主体の銅合金である。負極活物質は、炭素質材料である。
【0034】
セパレータ46,50は、正極板48と負極板52との間に配置され、イオン透過性の材料で構成されるフィルムである。
【0035】
図4(b)に、電極体16の巻回軸方向に沿った正極板48、負極板52、セパレータ46,50の各寸法を示す。正極板48のアルミニウム系金属箔48aの幅寸法は、正極芯体幅w48aと示し、正極活物質合剤層48bの幅寸法は、正極塗布幅w48bと示す。負極板52の銅系金属箔52aの幅寸法は、負極芯体幅w52aと示し、負極活物質合剤層52bの幅寸法は、負極塗布幅w52bと示す。セパレータ46,50の幅寸法は、セパレータ幅w4650と示す。これらの幅寸法は、巻回軸方向に沿った寸法である。
【0036】
正極板48においては、正極塗布幅w48bは正極芯体幅w48aより狭く設定され、且つ、正極芯体幅w48aの幅方向両端の他方端側に寄せて正極塗布幅w48bが配置される。図4(b)の例では、正極板48において、巻回軸方向に沿った一方端側に、正極活物質合剤層48bが塗布されずアルミニウム系金属箔48aが露出する幅領域ができる。このアルミニウム系金属箔48aが露出する幅領域は、電極体16の巻回軸に沿った一方端部で電極体正極34として用いられる。
【0037】
負極板52においては、負極塗布幅w52bは負極芯体幅w52aより狭く設定され、且つ、負極芯体幅w52aの幅方向両端の一方端側に寄せて負極塗布幅w52bが配置される。図4(b)の例では、負極板52において、巻回軸方向に沿った他方端側に、負極活物質合剤層52bが塗布されず銅系金属箔52aが露出する幅領域ができる。この銅系金属箔52aが露出する幅領域は、電極体16の巻回軸に沿った他方端部で電極体負極36として用いられる。
【0038】
図5は、電極体16について、巻回軸方向に垂直な断面図である。電極体16の厚さM0は、プレス圧方向に平行な厚さ寸法で、電極体16が電池ケース12内に収容された場合には、電池ケース12の厚さ方向である第3方向に平行な厚さ寸法となる。電極体16の扁平方向に沿った全長L0は、電極体16が電池ケース12内に収容された場合には、電池ケース12の高さ方向である第1方向に平行な寸法となる。電極体16の扁平状の平坦部が扁平方向に延伸する寸法F0は、全長L0よりも短く、扁平方向に沿った最内周巻回部分の寸法S0よりも長くなる。即ち、L0>F0>S0の関係となる。
【0039】
図6は、図5のVI部の拡大図である。正極板48は、アルミニウム系金属箔48aの両面に正極活物質合剤層48bが塗布され、負極板52は、銅系金属箔52aの両面に負極活物質合剤層52bが塗布される。セパレータ46,50は、正極活物質合剤層48bと負極活物質合剤層52bとの間に配置される。セパレータ46,50はイオン透過性を有するので、電極体16が非水電解液18に浸漬されると、正極板48と負極板52の間でイオンの流通が可能となり、電極体16は充放電可能な状態となる。
【0040】
図3に戻り、電極体16が成形されると、電極体付蓋体38の形成が行われる(S14)。電極体16は巻回方向の一方端部に電極体正極34を有し、他方端部に電極体負極36を有する。そこで、電極体16の電極体正極34を、正極集電板30を介して、蓋体14の正極外部端子22に接続し、電極体16の電極体負極36を、負極集電板32を介して、蓋体14の負極外部端子24に接続して、電極体付蓋体38を形成する(図2参照)。
【0041】
次に、電池ケース12と蓋体14の一体化が行われる(S16)。ここでは、電池ケース12の矩形筒状の内部空間に電極体ホルダー20を配置する。そして、電極体付蓋体38について、電極体16の巻回軸方向を電池ケース12の第2方向に平行とし、電極体付蓋体38の電極体16の周囲が電極体ホルダー20で覆われるように位置決めする。そして、電極体付蓋体38を電池ケース12の第1方向に沿って電池ケース12の内部空間に挿入する。電極体付蓋体38が電池ケース12の天井側開口を覆って隙間なく配置されると、次に、電池ケース12と蓋体14との合わせ部について、溶接等の接合手段を用いて、電池ケース12と蓋体14とが一体化される。
【0042】
電池ケース12と蓋体14の一体化が終了すると、蓋体14の注液口26を用いて、所定の注液量Qの非水電解液18の注液が行われる。非水電解液18としては、非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等を用い、これにヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を電解質塩として添加したものが用いられる。これは説明のための例示であって、非水電解質二次電池10の仕様により、これ以外の組成物質を用いることができる。注液後、電極体16が非水電解液18に十分浸漬される時間をおいて、仮性充電を行い、注液口26を封口する。これによって、検査前の非水電解質二次電池40が形成される(S18)。図7は、検査前の非水電解質二次電池40の断面図である。
【0043】
検査前の非水電解質二次電池40が形成されると、製品としての非水電解質二次電池10として出荷する前に、充放電検査が行われるが、充放電によって電極体16に撓みが発生しないように、所定押圧状態で充放電検査が行われる。そのために、充放電検査の前に、非水電解質二次電池40を所定押圧状態で押圧する(S20)。
【0044】
押圧は、電池ケース12の第3方向に垂直な側面で、電池ケース12の矩形開口の長辺を含み、外形面積が(W12×H12)を有する2つの側面56,58に対し、電池ケース12の外側から押圧治具60,62を用いて印加される。図8は、押圧治具60を側面56に宛がい、押圧治具62を側面58に宛がって、対向する方向で押圧Jを印加する状態を示す。
【0045】
押圧治具60,62は、側面56,58の所定押圧領域に宛がわれる。所定押圧領域は、電池ケース12内の電極体16の収容位置に合わせて設定される。所定押圧領域の第2方向に沿った長さは、電極体16の第2方向に沿った全長でよい。所定押圧領域の第1方向に沿った長さL1は、電極体16の扁平状巻回形の形状に応じて設定される。
【0046】
図9は、図8の押圧Jの押圧方向に沿って切断した断面図である。図9を用いて、所定押圧領域の第1方向に沿った長さL1の設定について説明する。図9において、電極体16の扁平状の平坦部の第1方向に沿った長さがL2である。また、電極体16の第1方向に沿った全体の長さがL3である。そして、電極体16の最内周巻回部分の第1方向に沿った両端部間の長さがL4である。電極体16の最内周巻回部分の両端部間の長さL4は、電極体16の最内周巻回部分における巻始めに最も近い折り曲げ部の位置を第1折曲部Aとし、第1方向に沿って第1折曲部Aとは反対側の最初の折り曲げ部の位置を第2折曲部Bとして、AB間の長さである。上記L2,L3,L4を用いて、所定押圧領域の第1方向に沿った長さL1は、L1≦L2、L1<L3、L1≧L4を満たすように設定される。
【0047】
所定押圧状態は、電池ケース12の内寸T1に対する電池ケース12内に配置される挿入物の合計厚さE1の比率を、挿入物の電池ケース内占有率N1と定義して、0.92≦N1<0.98となるように、押圧Jが設定されている状態である。N1を定めるT1,E1は、押圧状態における値である。挿入物の合計厚さE1は、電極体16の厚さM0と、電極体ホルダー20の肉厚t1の2倍との和で、E1=(M0+2×t1)である。図9に、押圧状態におけるT1,M0,t1の関係を示す。
【0048】
電池ケース12の内寸T1は、電池ケース12の内部空間に挿入物及び非水電解液18が配置された状態において押圧Jを受けた場合の矩形開口の短辺における開口内側寸法である。内寸T1は、図1で述べた単体としての電池ケース12における矩形開口の短辺における開口内側寸法とは異なる。
【0049】
電極体16の厚さM0は、図5で述べた単体としての電極体16の厚さM0である。電極体ホルダー20の肉厚t1は、T1,M0に比較すると小さい値であるので、非水電解液18や、押圧Jの影響を無視してよい。
【0050】
図3に戻り、検査前の非水電解質二次電池40が所定押圧状態で押圧されると、所定押圧状態の非水電解質二次電池40に対して、所定の充放電検査が行われる(S22)。所定の充放電検査には、例えば、初期充電工程、高温エージング工程、特性確認工程を含むことができる。初期充電工程は、例えば、25℃の環境下で、SOC40~80%まで充電を行う。高温エージング工程は、例えば、60℃以上の環境下で12~24時間放置する。特性確認工程は、例えば、25℃の環境下で、SOC100%まで充電し、その後0%まで放電する。
【0051】
所定の充放電検査において、あらかじめ定めた検査仕様を満たせば、製品として出荷できる非水電解質二次電池10となる(S24)。
【0052】
以上が非水電解質二次電池10の製造方法の説明である。次に、所定の充放電検査を所定押圧状態の下で実行することの効果について、実際に9つの二次電池を作成し、所定の充放電検査後に電極体16における撓みの状態を調べた結果について述べる。
【0053】
プレス加工で成形した直後の電極体16は、図5に示すように、内周部に隙間がほとんどなく、最内周巻回部分は寸法S0で直線状に延伸している状態を有する。この電極体16を電池ケース12に収納し、非水電解液18に浸漬して充放電すると、最内周巻回部分が直線状でなく、撓みが生じる。直線状から非直線状に変形するのは、一種の座屈と考えることが出来る。そこで、充放電による電極体16の撓みの評価を、以下で述べる座屈指標値を用いて行う。
【0054】
所定の充放電検査の実行後において、電極体16の最内周巻回部分の両端を結ぶ最内周巻回軌跡の軌跡経路に沿った実際の長さをC1とし、最内周巻回軌跡の両端を結ぶ直線距離をS1とする。ここで、最内周巻回部分に撓みが全くない場合は、(C1/S1)=1.000になり、最内周巻回部分に撓みが生じると、C1>S1となり、(C1/S1)は1.000を超え、撓みが大きいほど、(C1/S1)は大きくなる。そこで、(C1/S1)を座屈指標値とする。
【0055】
充放電検査後の電極体16における最内周巻回軌跡は、X線CT法を用いて測定できる。図10に、充放電検査後の電極体16についてのX線CT画像の例を示す。ここでは、正極板48、負極板52、セパレータ46,50の複数の巻回の画像を省略した。図10の例では、最内周巻回軌跡70に撓みがかなり発生している。最内周巻回軌跡70の両端を結ぶ直線72の両端距離S1に対し、最内周巻回軌跡70の軌跡経路に沿った実際の長さC1はかなり長く、(C1/S1)は1.000をかなり超える値となる。
【0056】
ここで、実施例として4つ、比較例として5つの合計9つの二次電池を作成し、それぞれの各種パラメータと共に、挿入物の電池ケース内占有率N1と、座屈指標値(C1/S1)の関係を表1にまとめた。表1の縦軸には、二次電池における各種パラメータを並べ、横軸には、実施例1から実施例4、比較例1から比較例5を並べた。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の縦軸の各種パラメータの内容は、紙面上における上段側から下段側に向って以下のように並べた。寸法の単位は、mmであり、注液量の単位は、gであり、電池容量の単位は、Ahである。
【0059】
最上段から数えて5段目までは、正極芯体幅w48a、正極塗布幅w48b、負極芯体幅w52a、負極塗布幅w52b、セパレータ幅w4650である。最上段から数えて6段目は、プレス後の電極体16の厚さM0である。最上段から数えて7段目から10段目は、単体としての電池ケース12についての第3方向に沿った外寸厚さD12、第2方向に沿った外寸幅W12、第1方向に沿った外寸高さH12、電池ケース12の肉厚t12である。最上段から数えて11段目は、非水電解液18の注液量Qである。
【0060】
最上段から数えて12段目は、充放電検査前で押圧状態における電池ケース12の第3方向に沿った内寸T1である。最上段から数えて13段目は、挿入物の電池ケース内占有率N1=(E1/T1)の計算値である。電池ケース12内の挿入物の全厚さE1は、電極体16の厚さM0に、電極体ホルダー20の厚さ(t1=0.15mm)の2倍を加えて計算される。
【0061】
最上段から数えて14段目から17段目は、第1方向に沿った所定押圧領域の長さL1と、図9で述べた長さL2,L3,L4である。最上段から数えて18段目は、座屈指標値(C1/S1)である。最上段から数えて19段目は、電池容量である。
【0062】
表1の横軸の二次電池は、紙面上における左側から右側に向って、最も左側から数えて3番目までは、電池ケース12の第3方向に沿った外寸厚さD12が17mm未満の例としての実施例1、比較例1、実施例2を並べた。最も左側から数えて4番目以降は、電池ケース12の第3方向に沿った外寸厚さD12が17mm以上27mm以下の例として、比較例2、実施例3、比較例3、比較例4、比較例5、実施例4を並べた。これら9つの二次電池の詳細な内容は以下の通りである。
【0063】
実施例1は、正極芯体幅w48a=121mm、正極塗布幅w48b=105mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=123mm、負極塗布幅w52b=110mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=115mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成し、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=11.2mmである。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=13.4mm、外寸幅W12=137mm、外寸高さH12=63.3mm、肉厚t12=0.4mmの電池ケース12に挿入する。そして、注液量Q=50gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は4Ahである。
【0064】
実施例1の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。なお、以下特記なき限り押圧治具60,62は非水電解質二次電池40の側面56,58の全面を押圧するものを用いた。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=12.3mmで、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.93である。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0005であり、1.001以下であった。
【0065】
比較例1は、正極芯体幅w48a=105mm、正極塗布幅w48b=90mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=107mm、負極塗布幅w52b=95mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=100mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成し、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=10.3mmである。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=12.5mm、外寸幅W12=120mm、外寸高さH12=85mm、肉厚t12=0.5mmの電池ケース12に挿入する。そして、注液量Q=50gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は5Ahである。
【0066】
比較例1の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=11.8mmで、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.90である。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0171であり、1.001以上であった。
【0067】
実施例2は、正極芯体幅w48a=105mm、正極塗布幅w48b=90mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=107mm、負極塗布幅w52b=95mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=100mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成した。これらの条件は比較例1と同じである。そして、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=10.6mmである。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=12.5mm、外寸幅W12=120mm、外寸高さH12=85mm、肉厚t12=0.5mmの電池ケース12に挿入した。電池ケース12の条件は比較例1と同じである。そして、注液量Q=60gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は5Ahである。
【0068】
実施例2の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=11.8mmで、比較例2と同じであるが、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.92である。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0006であり、1.001以下であった。
【0069】
比較例2は、正極芯体幅w48a=127mm、正極塗布幅w48b=108mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=130mm、負極塗布幅w52b=113mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=119mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成し、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=15.5mmである。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=17.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=65mm、肉厚t12=0.5mmの電池ケース12に挿入する。そして、注液量Q=60gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は8Ahである。
【0070】
比較例2の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=16.8mmで、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.94である。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0052であり、1.001以上であった。
【0071】
実施例3は、正極芯体幅w48a=127mm、正極塗布幅w48b=108mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=130mm、負極塗布幅w52b=113mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=119mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成し、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=15.5mmである。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=17.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=65mm、肉厚t12=0.5mmの電池ケース12に挿入する。そして、注液量Q=60gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は8Ahである。これらは、比較例2と同じ条件である。
【0072】
実施例3の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=16.42mmであり、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.96である。
【0073】
ここで、押圧時に電池ケース12の外寸よりも圧縮するための図9で述べた所定押圧領域は、H12=65mm、L1=41.4mm、L2=42.0mm、L3=57.5mm、L4=40.1mmである。ここで、L1≦L2、L1<L3、L1≧L4である。この所定押圧領域で押圧し、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.96とした。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0007であり、1.001以下であった。
【0074】
比較例3は、正極芯体幅w48a=132mm、正極塗布幅w48b=117mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=134mm、負極塗布幅w52b=122mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=127mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成し、プレス加工により電極体16を成形した。プレス後の電極体16の厚さM0=23.0mmである。これらの条件は、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2のいずれよりも大きい値である。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=26.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=91mm、肉厚t12=0.7mmの電池ケース12に挿入する。そして、注液量Q=150gの非水電解液18を注液して注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は25Ahである。
【0075】
比較例3の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=25.4mmで、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.92である。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0128であり、1.001以上であった。
【0076】
比較例4は、正極芯体幅w48a=132mm、正極塗布幅w48b=117mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=134mm、負極塗布幅w52b=122mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=127mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成した。これらの条件は、比較例3と同じである。プレス加工により電極体16を成形し、プレス後の電極体16の厚さM0=23.1mmであり、比較例3より厚い。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=26.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=91mm、肉厚t12=0.7mmの電池ケース12に挿入し、注液量Q=150gの非水電解液18を注液した。これらの条件は比較例3と同じである。そして、注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は35Ahである。
【0077】
比較例4の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=25.4mmで、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.92である。これらは、比較例3と同じである。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0148であり、1.001以上であった。
【0078】
比較例5は、正極芯体幅w48a=132mm、正極塗布幅w48b=117mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=134mm、負極塗布幅w52b=122mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=127mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成した。これらの条件は、比較例3、比較例4と同じである。プレス加工により電極体16を成形し、プレス後の電極体16の厚さM0=23.3mmであり、比較例3、比較例4よりも厚い。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=26.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=91mm、肉厚t12=0.7mmの電池ケース12に挿入した。これらの条件は比較例3、比較例4と同じである。そして、注液量Q=150gの非水電解液18を注液した。これは比較例3、比較例4と同じである。そして注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は30Ahである。
【0079】
比較例5の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=25.4mmであり、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.93である。これは、比較例3、比較例4より大きい。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0079であり、1.001以上であった。
【0080】
実施例4は、正極芯体幅w48a=132mm、正極塗布幅w48b=117mmで正極板48を形成し、負極芯体幅w52a=134mm、負極塗布幅w52b=122mmで負極板52を形成した。そして、セパレータ幅w4650=127mmのセパレータ46,50を用いて、巻回形電極体42を形成した。これらの条件は、比較例3、比較例4、比較例5と同じである。プレス加工により電極体16を成形し、プレス後の電極体16の厚さM0=24.0mmであり、比較例3、比較例4、比較例5よりも厚い。これを厚さ0.15mmの電極体ホルダー20で覆い、外寸厚さD12=26.5mm、外寸幅W12=148mm、外寸高さH12=91mm、肉厚t12=0.7mmの電池ケース12に挿入し、注液量Q=150gの非水電解液18を注液した。これらの条件は比較例3~比較例5と同じである。そして、注液口26を閉じて、検査前の非水電解質二次電池40を形成した。電池容量は25Ahである。
【0081】
実施例4の非水電解質二次電池40について、所定の充放電検査を行った。充放電検査前に押圧治具60,62で押圧した。充放電検査前の押圧時の電池ケース12の内寸T1=25.4mmであり、挿入物の電池ケース内占有率N1=0.96である。これは、比較例3、比較例4、比較例5のいずれよりも大きい。充放電検査後の座屈指標値(C1/S1)=1.0004であり、1.001以下であった。
【0082】
表1から、4つの実施例、5つの比較例について、挿入物の電池ケース内占有率N1と、座屈指標値(C1/S1)の関係を抜き出して表2に示す。ここで、それぞれの電池ケース12の外寸厚さD12も併せて示す。
【0083】
【表2】
【0084】
電池ケース12の外寸厚さが12mm以上27mm以下の範囲における4つの実施例、5つの比較例についての図12の結果について、座屈指標値(C1/S1)≦1.001を電極体16の撓みについての合格基準値とすると、次のことが分かる。
【0085】
所定押圧状態を示す値として、挿入物の電池ケース内占有率N1を用いると、座屈指標値(C1/S1)≦1.001とするには、電池ケース12の外寸厚さが12mm以上17mm未満の場合には、0.92≦N1<0.98となるように押圧する。電池ケース12の外寸厚さが17mm以上27mm以下の場合には、0.94<N1<0.98となるように押圧する。このように、電池ケース12の大きさに応じて、挿入物の電池ケース内占有率N1を適切になるように押圧することで、電極体16の撓みを効果的に抑制できる。
【0086】
上記構成の非水電解質二次電池10の製造方法によれば、電池ケース12の大きさに応じて、挿入物の電池ケース内占有率N1が適切になるように、電池ケース12の外部から押圧して充放電検査を行う。これによって、充放電によって生じる極板の膨張収縮に伴う歪みの発生を抑制し、扁平状巻回形電極体16についての座屈である撓みの発生を抑制することができる。扁平状巻回形電極体16に撓みが発生すると、極間距離が増加し、セル抵抗が増加する。加えて、撓みにより高応力部が発生し、反力が増加する。また、撓みによる極間距離の増加により、過電圧が増加し、電解液の分解、Li析出、正極活物質の溶出などの不可逆劣化が起き、耐久性が低下する。上記構成の非水電解質二次電池10の製造方法によれば、これらを抑制し、低抵抗、低反力、耐久性に優れた非水電解質二次電池10を提供することができる。さらに、非水電解質二次電池40の充放電検査時に、検査前の非水電解質二次電池40を外部から拘束することで、充放電検査時に発生するガス溜りを抑制することができ、充放電検査の時間短縮、電圧検査の精度向上が可能になる。
【符号の説明】
【0087】
10 (非水電解質)二次電池
12 電池ケース
14 蓋体
15 矩形板部
16 (扁平状巻回形)電極体
18 非水電解液
20 電極体ホルダー(絶縁体)
22 正極外部端子
24 負極外部端子
26 注液口
28 ガス排出口
30 正極集電板
32 負極集電板
34 電極体正極
36 電極体負極
38 電極体付蓋体
40 (検査前の)非水電解質二次電池
42 巻回形電極体
46,50 セパレータ
48 正極板
48a アルミニウム系金属箔
48b 正極活物質合剤層
52 負極板
52a 銅系金属箔
52b 負極活物質合剤層
56,58 側面
60,62 押圧治具
70 最内周巻回軌跡
72 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10