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特許7621280平滑筋の非アドレナリン作動性収縮及び前立腺細胞増殖を阻害するためのオンバンサーティブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】平滑筋の非アドレナリン作動性収縮及び前立腺細胞増殖を阻害するためのオンバンサーティブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20250117BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P13/08
A61P21/02
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/517
A61K31/18
A61K31/4045
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021573134
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020019647
(87)【国際公開番号】W WO2020176470
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】62/810,171
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520305502
【氏名又は名称】カーディフ・オンコロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARDIFF ONCOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アーランダー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ライディンガー マヤ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス トーマス エイチ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513389(JP,A)
【文献】特表2012-528099(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/013624(JP,A1)
【文献】国際公開第2018/062831(WO,A1)
【文献】再公表特許第2006/038611(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61P 13/08
A61P 21/02
A61P 43/00
A61K 45/00
A61K 31/517
A61K 31/18
A61K 31/4045
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活動電位によって誘導される平滑筋の収縮を伴う良性前立腺肥大症(BPH)を、(a)オンバンサーティブ及び(b)シロドシンまたはタムスロシンで治療する方法において使用するための、オンバンサーティブを含む医薬組成物
【請求項2】
前記治療する方法が、BPHの症状を軽減する、又は尿流量(Qmax)を50%を超えて改善する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
活動電位によって誘導される平滑筋の収縮を阻害する方法において使用するための、オンバンサーティブを含む医薬組成物であって、前記方法が(a)オンバンサーティブ及び(b)シロドシンまたはタムスロシンにより平滑筋を処置することを含、上記医薬組成物。
【請求項4】
前記平滑筋が前立腺組織である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記前立腺組織がヒト前立腺組織である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記前立腺組織が良性前立腺肥大症(BPH)患者のものである、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年2月25日に出願され、参照によりその全内容が本明細書に援用される米国仮出願第62/810171号の利益を主張するものである。
【0002】
(1)発明の分野
本願は、一般に、良性前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia)(BPH)の治療に関する。より具体的には、選択性の高いpolo様キナーゼ1(polo-like kinase 1)(PLK1)阻害薬でのBPHの治療が提供される。
【背景技術】
【0003】
(2)関連分野の説明
良性前立腺肥大症(BPH)は一般に、BPHの前立腺拡張及び前立腺平滑筋緊張の増大から生じる尿管圧迫による下部尿路症状(lower urinary tract symptoms)(LUTS)に関連している(Hennenberg et al.,2014)。膀胱出口閉塞(bladder outlet obstruction)(BOO)と呼ばれるこの症候性BPHの病態は、多くの場合、医学的治療を必要とする(Oelke et al.,2013)。しかしながら、これは、軽度~中等度LUTSであっても有効性が制限され、重度LUTSには利用できない(Oelke et al.,2013)。この改善の限定は、2018年に世界で、閉塞症状を有する60億前後に及ぶ患者という高い症例数に対比される(Irwin et al.,2011)。人口転換と共に有病率が年齢に依存するために、BPHを示唆するLUTSの重要性は更に高まり、より高い有効性を備えた新たな医学的療法の高い需要が浮上している。
【0004】
BPHを示唆するLUTSへの前立腺平滑筋緊張及び前立腺成長の寄与によれば、BPHにおける医学的治療は、1)症状の速やかな改善のための前立腺平滑筋収縮の阻害、並びに2)BPHの進行及び合併症を予防するための前立腺成長の阻害を目的とする(Oelke et al.,2013)。前立腺平滑筋収縮は、アドレナリン作動性神経伝達の際に放出されるノルアドレナリンによるα1-アドレノセプターの活性化によって部分的に誘導される(Hennenberg et al.,2014)。結果として、α1-アドレノセプター拮抗剤(「α1遮断薬」)は、前立腺平滑筋の弛緩によりBOOを軽減し得るので、BPHを示唆するLUTSの治療の第一選択となる(Caine et al.,1975、1976;Oelke et al.,2013)。しかしながら、これらの拮抗剤は、症状(国際前立腺症状スコア(international prostate symptom scores)、IPSS)を軽減し、尿流量(Qmax)を多くて50%改善するが、プラセボであっても最大30%の改善を生じ得る(Hennenberg et al.,2014、2017;Oelke et al.,2013;Strand et al.,2017)。ホスホジエステラーゼ-5阻害薬タダラフィルは、閉塞性LUTSの治療に関して最近承認されたものであるが、その有効性はα1遮断薬より高いわけではない(Dahm et al.,2017)。5α-レダクターゼ阻害薬(5-ARI)は、前立腺の大きさを縮小し、BPHの進行を予防する目的で前立腺成長を停止させるために適用される(Oelke et al.,2013)。しかしながら、症状進行のリスクの低減は、単剤療法では35~40%を超えず、併用療法では66%を超えないものであり得る(Strand et al.,2017)。医学的LUTS療法の不本意な結果は高い中断率に寄与し、最初の処方の後12か月以内に投薬を中断する患者は最大70%に上る(Cindolo et al.,2015)。結果は、疾病の進行、入院、及びBPHの手術である(Cindolo et al.,2015)。このα1遮断薬の制限は、α1-アドレノセプターと同時に前立腺平滑筋収縮を誘導するエンドセリン-1を含む非アドレナリン作動性メディエーターの前立腺平滑筋緊張への寄与によるものであり得る(Hennenberg et al.,2014、2017)。
【0005】
Polo様キナーゼ(PLK)は、セリン-トレオニンキナーゼであり、主として、気道平滑筋細胞、前立腺癌細胞、及びその他を含む種々の細胞種において増殖の促進に関連付けられている(Jiang and Tang、2015;Lin et al.,2019;Shao et al.,2015)。加えて、最近の知見では、気道、血管、及びヒト前立腺平滑筋収縮の促進に関するPLK1の機能が示唆された(de Carcer et al.,2017;Hennenberg et al.,2018;Li et al.,2016)。しかしながら、前立腺平滑筋収縮におけるPLK阻害薬とα1遮断薬との相加作用、及び前立腺間質細胞の増殖におけるそれらの効果は知られていない。
【0006】
オンバンサーティブ
【化1】
オンバンサーティブ
【0007】
オンバンサーティブ(PCM-075、NMS-1286937、NMS-937、米国特許第8,927,530号の「式(I)の化合物」;IUPAC名1-(2-ヒドロキシエチル)-8-{[5-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ}-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドとも呼ばれる)は、種々の前臨床モデルで抗腫瘍活性が証明され、臨床試験に入るために経口経路により投与された最初のPLK1特異的ATP競合阻害薬である。オンバンサーティブは、有利な薬理学的パラメーターと良好な経口バイオアベイラビリティを有する。オンバンサーティブは、PLK1アイソザイムに対する極めて高い選択性、及び経口バイオアベイラビリティを含め、他のPLK1阻害薬に優るいくつかの利点を有する。オンバンサーティブは、PLK1については2nM、PLK2及びPLK3については>10,000のIC50を有する。
【発明の概要】
【0008】
患者において良性前立腺肥大症(BPH)を治療する方法が提供される。この方法は、患者を(a)オンバンサーティブ及び(b)α1遮断薬、5-α-レダクターゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼ-5酵素阻害薬、又はこれらの組合せで処置することを含む。
又、平滑筋の非アドレナリン作動性収縮を阻害する方法も提供される。この方法は、平滑筋をオンバンサーティブで処置することを含む。
加えて、ヒト前立腺細胞の増殖を阻害する方法も提供される。この方法は、ヒト前立腺細胞をそのヒト前立腺細胞の増殖を阻害するために十分な様式で、オンバンサーティブで処置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A、1B及び1Cは、ヒト前立腺試験片のアドレナリン作動性収縮に対するオンバンサーティブの効果を示すグラフである。ヒト前立腺試験片の収縮は、100nM若しくは1μM濃度のオンバンサーティブ、又はDMSO(対照)の添加の後に臓器浴にてノルアドレナリン(図1A)、又はα1-アドレノセプター作動薬フェニレフリン及びメトキサミン(図1B)により誘導するか、或いは30分間のDMSO及びオンバンサーティブ(100nM)のウォッシュアウト後にノルアドレナリン(図1C)により誘導した。各実験において、DMSO及びオンバンサーティブは、同じ前立腺から得られた別々のサンプルに適用した。個々の変動、BPH程度の違い又は平滑筋含量のその他の変動による不均一性を排除するために、張力は、オンバンサーティブ又はDMSOの適用前に評価される高モルKClによる収縮に対する%として表した。データは、n=5(ウォッシュアウト無しのノルアドレナリンと100nMオンバンサーティブ)、n=6(ノルアドレナリンと1μMオンバンサーティブ)、n=5(フェニレフリン)、n=5(メトキサミン)、及びn=5(ウォッシュアウト後のノルアドレナリン)の患者からの組織シリーズの平均±S.E.M.であり、各患者からのサンプルを対照群及び阻害薬群の両方に割り当てた(#示された濃度での多変量解析の後にP<0.05;P値は挿入で示されるように2元配置ANOVA後の全群に対するもの)。
図2図2は、ヒト前立腺試験片の非アドレナリン作動性収縮に対するオンバンサーティブの効果を示すグラフである。ヒト前立腺試験片の収縮は、100nM濃度のオンバンサーティブ、又はDMSO(対照)の添加後、臓器浴にてエンドセリン-1、ATP、又はトロンボキサンA2類似体U46619により誘導した。各実験において、DMSO及びオンバンサーティブは、同じ前立腺から得られた別々のサンプルに適用した。個々の変動、BPH程度の違い又は平滑筋含量のその他の変動による不均一性を排除するために、張力は、オンバンサーティブ又はDMSOの適用前に評価される高モルKClによる収縮に対する%として表した。データは、n=6(エンドセリン-1)、n=5(ATP)、及びn=5(U46619)の患者からの組織シリーズの平均±S.E.M.であり、各患者からのサンプルを対照群及び阻害薬群の両方に割り当てた(P値は挿入で示されるように2元配置ANOVA後の全群に対するもの)。
図3図3A及び3Bは、ヒト前立腺試験片のEFS誘導性収縮に対するオンバンサーティブの効果を示すグラフである。ヒト前立腺試験片の収縮は、100nM若しくは1μMの濃度のオンバンサーティブ、又はDMSO(対照)の添加後(図3A)、並びに30分間のDMSO及びオンバンサーティブ(100nM)のウォッシュアウト後(図3B)に、臓器浴にてEFSにより誘導した。各実験において、DMSO及びオンバンサーティブは、同じ前立腺から得られた別々のサンプルに適用した。個々の変動、BPH程度の違い又は平滑筋含量のその他の変動による不均一性を排除するために、張力は、オンバンサーティブ又はDMSOの適用前に評価される高モルKClによる収縮に対する%として表した。データは、n=6(ウォッシュアウト無しのDMSO対100nMオンバンサーティブ)、n=7(DMSO対1μMオンバンサーティブ)、及びn=5(ウォッシュアウト後のDMSO対100nMオンバンサーティブ)の患者からの組織シリーズの平均±S.E.M.であり、各患者からのサンプルを対照群及び阻害薬群の両方に割り当てた(P値は挿入で示されるように2元配置ANOVA後の全群に対するもの)。
図4図4A及び4Bは、ヒト前立腺試験片の収縮に対するα1遮断薬の効果を示すグラフである。ヒト前立腺試験片の収縮は、タムスロシン(300nM)、シロドシン(100nM)、又は1%DMSOを含有する等容量の蒸留水(対照)の添加後に、臓器浴にてEFS(図3A)又はノルアドレナリン(図4B)により誘導した。各実験において、溶媒又はα1遮断薬は、同じ前立腺から得られた別々のサンプルに適用した。個々の変動、BPH程度の違い又は平滑筋含量のその他の変動による不均一性を排除するために、張力は、α1遮断薬又は溶媒の適用前に評価される高モルKClによる収縮に対する%として表した。データは、n=5(EFS/タムスロシン)、n=5(EFS/シロドシン)、n=5(ノルアドレナリン/タムスロシン)、及びn=6(ノルアドレナリン/シロドシン)の患者からの組織シリーズの平均±S.E.M.であり、各患者からのサンプルを対照群及び阻害薬群の両方に割り当てた(#示された濃度での多変量解析の後にP<0.05;P値は挿入で示されるように2元配置ANOVA後の全群に対するもの)。
図5図5A及び5Bは、EFS誘導ヒト前立腺試験片の収縮に対するオンバンサーティブとα1遮断薬の組合せの効果を、α1遮断薬単剤と比較して示すグラフである。ヒト前立腺試験片の収縮は、タムスロシン(300nM)、シロドシン(100nM)、オンバンサーティブ(100nM)、又はオンバンサーティブ(100nM)とタムスロシン若しくはシロドシンの組合せ、及び等量の溶媒(α1遮断薬単剤に対してオンバンサーティブを欠く場合の対照としてDMSO、又はオンバンサーティブ単剤に対してα1遮断薬を欠く場合の対照として水/DMSO)の添加後に、臓器浴にてEFSにより誘導した。各実験において、α1遮断薬又はオンバンサーティブ及び組合せは、同じ前立腺から得られた別々のサンプルに適用した。各図は、異なる前立腺組織を用いた独立した実験系を表す(ただし、各図の両群には同じ前立腺からのサンプルを割り当てた)。個々の変動、BPH程度の違い又は平滑筋含量のその他の変動による不均一性を排除するために、張力は、オンバンサーティブ、α1遮断薬、又はDMSOの適用前に評価される高モルKClによる収縮に対する%として表した。データは、n=7(タムスロシン対タムスロシンとオンバンサーティブ)、n=5(シロドシン対シロドシンとオンバンサーティブ)、n=5(オンバンサーティブ対タムスロシンとオンバンサーティブ)、及びn=5(オンバンサーティブ対シロドシンとオンバンサーティブ)の患者からの組織シリーズの平均±S.E.M.であり、各患者からのサンプルを対照群及び阻害薬群の両方に割り当てた(#示された濃度での多変量解析の後にP<0.05;P値は挿入で示されるように2元配置ANOVA後の全群に対するもの)。
図6図6A、6B、6C及び6Dは、ヒト前立腺組織及びWPMY-1細胞におけるPLK1検出を示す写真(図6A)及びグラフである。図6Aは、PLK1に対して生じた抗体を用い、ヒト前立腺組織(n=4患者)及びWPMY-1細胞(n=4の独立した実験からのサンプル)で行ったウエスタンブロット分析の結果を示す。PLK1の予想分子量のサイズ(68kDa)を有するバンドを示す。マーカーバンドの位置及びサイズを各ブロットの右側に示す(kDaサイズ)。図6Bは、推定されるPLK1バンドの相対強度を示す。(図6A)における68kDaバンドの濃度測定定量の後、全サンプルの任意単位を前立腺組織に関して得られた値の平均に対して正規化した。両群の全サンプルの値及び中央値を示す。図6Cは、ヒト前立腺組織(n=6の患者)及びWPMY-1細胞(n=4の独立した実験からのサンプル)におけるPLK1の相対mRNA発現を示す。RT-PCRからのCt値は2-ΔCPとして表し、最後に、前立腺組織に関して得られた平均値に対して正規化した。両群の全サンプルの値及び中央値を示す。図6Dは、ヒト前立腺組織におけるRT-PCRによるPLK1及びPSAの検出からの2-ΔCP値を互いにプロットし、スピアマンの相関分析を行ったものを示す。
図7図7A、7B及び7Cは、WPMY-1細胞の生存率及び増殖に対するオンバンサーティブの効果を示すグラフ及び顕微鏡写真である。図7Aは、示された通りの濃度及び期間でオンバンサーティブ又は溶媒に曝した後の、CCK-8アッセイにより評価したWPMY-1細胞の生存率を示すグラフである。データは、各条件に関してn=5の独立した実験の平均±S.E.M.である(#対応する対照に対してP<0.05)。図7Bは、コロニー形成アッセイにより評価した増殖を示すグラフ及び顕微鏡写真である。WPMY-1細胞を示された濃度のオンバンサーティブに曝した。代表的な顕微鏡写真、及びn=5の独立した実験の平均±S.E.M.(#対照に対してP<0.05)を示す。図7Cは、EdUアッセイにより評価した増殖を示すグラフ及び顕微鏡写真である。WPMY-1細胞は、示された濃度で24時間オンバンサーティブに曝した。増殖細胞の核をピンクで示し、非増殖細胞の核を青で示す。代表的な像、及びn=5の独立した実験の平均±S.E.M.(#対照に対してP<0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り、複数形も同様に含むことを意図する。加えて、「又は」の使用は、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り、「及び/又は」を含むことを意図する。
本発明は、一部には、選択性の高いpolo様キナーゼ1(PLK1)阻害薬オンバンサーティブがヒト前立腺組織などの平滑筋のアドレナリン作動性収縮及び非アドレナリン作動性収縮の両方を有効に阻害するという発見に基づく。他のPLK1阻害薬は平滑筋のアドレナリン作動性収縮を阻害するが非アドレナリン作動性収縮は阻害しない(Hennenberg et al.,2018)ので、このことは驚くべきことである。オンバンサーティブは、平滑筋の非アドレナリン作動性収縮、具体的には、エンドセリン-1誘導性、及びATP(プリン作動性)誘導性の平滑筋収縮を阻害する(以下の実施例を参照)ので、オンバンサーティブは、良性前立腺肥大症(BPH)を治療するために、アドレナリン作動性の平滑筋収縮の阻害薬、例えば、α1遮断薬と効果的に組み合わせることができる。
【0011】
よって、いくつかの実施形態において、患者において良性前立腺肥大症(BPH)を治療する方法が提供される。この方法は、患者を(a)オンバンサーティブ及び(b)α1遮断薬、5-α-レダクターゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼ-5酵素阻害薬、又はこれらの組合せで処置することを含む。オンバンサーティブは、α1遮断薬、5-α-レダクターゼ阻害薬、又はホスホジエステラーゼ-5酵素阻害薬とは異なる機序によって平滑筋収縮を阻害するので、この併用処置は、個々の阻害薬単剤のいずれよりも良好となるであろう。実際に、オンバンサーティブとタムスロシン又はシロドシン(両方ともα1遮断薬)のいずれかとの併用処置は、個々化合物単剤のいずれよりも高い程度で前立腺平滑筋組織を阻害した(以下の実施例を参照)。
いくつかの実施形態において、この方法は、BPHの症状を軽減するか、又は尿流量(Qmax)を30%より大きく改善する。他の実施形態において、この方法は、尿流量(Qmax)を50%より大きく改善する。
種々の実施形態において、患者をオンバンサーティブ及びα1遮断薬で処置する。α1遮断薬の限定されない例としては、シロドシン、タムスロシン、アルフゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン及びテラゾシンがある。5-α-レダクターゼ阻害薬の限定されない例としては、デュタステライド及びフィナステリドがある。ホスホジエステラーゼ-5阻害薬の限定されない例としては、アバナフィル、ロデナフィル、ミロデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、ザプリナスト、ベンズアミドナフィル、及びダサンタフィルがある。
【0012】
又、平滑筋の非アドレナリン作動性収縮を阻害する方法も提供される。この方法は、平滑筋をオンバンサーティブで処置することを含む。
この方法は、いずれの非アドレナリン作動性平滑筋収縮を阻害するためにも使用可能である。いくつかの実施形態において、平滑筋収縮は、エンドセリン-1誘導性又はATP誘導性(プリン作動性)である。
この方法の種々の実施形態において、平滑筋は、前立腺組織、例えば、ヒト前立腺組織であるが、この方法は、いずれの哺乳動物のいずれの組織の非アドレナリン作動性平滑筋収縮を阻害する場合にも有効であるはずである。いくつかの実施形態において、前立腺組織は、良性前立腺肥大症(BPH)患者のものである。
【0013】
加えて、前立腺細胞の増殖を阻害する方法も提供される。この方法は、前立腺細胞をオンバンサーティブで、ヒト前立腺細胞の増殖を阻害するのに十分な様式で処置することを含む。種々の実施形態において、前立腺細胞はヒトBPH患者のものであるが、この方法は、いずれの哺乳動物においてもin vitro又はin vivoで前立腺細胞増殖を阻害する場合にも有効であるはずである。
これらの方法のいくつかの実施形態において、これらの細胞は、ヒト前立腺細胞の増殖を阻害する第2の薬剤にも曝される。この第2の薬剤は、ヒト前立腺細胞の増殖を阻害する場合に少なくとも部分的に有効であることが知られるいずれの薬剤であってもよい。このような第2の薬剤の限定されない例としては、メトホルミンがある(Wang et al.,2017)。
【0014】
本明細書で提供されるいずれの方法においても、オンバンサーティブは、当技術分野で公知のいずれの手段によって投与してもよい。いくつかの実施形態において、オンバンサーティブは、薬学上許容される賦形剤中で経口投与される。任意の特定の患者に対して、平滑筋組織収縮又は前立腺細胞増殖を阻害する場合に有効なオンバンサーティブの用量の決定は、当技術分野で公知の方法により、過度な実験を行わずに行うことができる。いくつかの実施形態において、投与するオンバンサーティブの用量は、6、12、又は24mg/m2/日である。これらの実施形態のいくつかにおいて、オンバンサーティブの用量は、50mg/m2/日、例えば、24又は36mg/m2/日未満である。
オンバンサーティブが付加的薬剤と共に投与される実施形態において、オンバンサーティブは、付加的薬剤の前、同時、又は後に投与することができる。加えて、オンバンサーティブ及び第2の薬剤は、例えば、毎日、5日投薬+2日休薬などの異なる又は同じ計画で投与することができる。
【0015】
好ましい実施形態を以下の実施例に記載する。本明細書の特許請求の範囲内の他の実施形態は、本明細書又は本明細書で開示されるような本発明の実施を考慮すれば当業者に明らかとなる。本明細書は、実施例と共に単に例に過ぎないことが意図され、本発明の範囲及び趣旨は、実施例に後に続く特許請求の範囲によって示される。
【実施例
【0016】
実施例 ヒト良性前立腺肥大症における前立腺平滑筋機能に対するオンバンサーティブの効果
前立腺平滑筋収縮及び前立腺拡張は、良性前立腺肥大症を示唆する下部尿路症状に寄与する。最近の証拠で、polo様キナーゼ(PLK)の阻害薬がヒト前立腺組織の平滑筋収縮を阻害することが証明された。しかしながら、それらのα1遮断薬との相加作用、及び前立腺成長に対する効果は知られていない。ここで、本発明者らは、前立腺平滑筋収縮に対する新規且つ選択性の高いPLK1阻害薬オンバンサーティブの効果を単剤で及びα1遮断薬と組み合わせて、又、前立腺間質細胞(WPMY-1)の増殖及び生存率に対する効果を検討した。前立腺組織は根治的前立腺全摘除術から取得した。収縮は臓器浴にて検討した。増殖及び生存率は、プレートコロニー、EdU、及びCCK-8アッセイによって評価した。ヒト前立腺組織の電場刺激(EFS)誘導性収縮は、32Hzで100nM及び1μMオンバンサーティブにより34%に阻害され、α1遮断薬タムスロシン及びシロドシンにより48%及び47%に阻害された。オンバンサーティブとタムスロシン又はシロドシンの組合せは、α1遮断薬単剤(それぞれ59%及び61%)、及びオンバンサーティブ単剤(両方とも68%)に比べてEFS誘導性収縮を更に低減した。ノルアドレナリン、フェニレフリン、メトキサミン、エンドセリン-1、及びATPにより誘導される収縮は、オンバンサーティブ(100nM)によって同等の程度に阻害された。WPMY-1細胞の生存率及び増殖は、濃度及び時間に依存的に低下した(24~72時間、10~100nM)。オンバンサーティブは、神経原性、アドレナリン作動性、及びエンドセリン-1及びATP誘導性のヒト前立腺平滑筋の収縮、及び間質細胞の増殖を阻害する。収縮は、α1遮断薬により多くて50%低減される。α1遮断薬とオンバンサーティブの組合せは、前立腺収縮の相加的阻害を提供する。
【0017】
材料及び方法
ヒト前立腺組織
ヒト前立腺組織は、前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術を受けている患者から取得した(n=107)。過去に経尿道的前立腺切除術(TURP)を受けている患者は除外した。この試験は、世界医師会(World Medical Association)のヘルシンキ宣言に従って行い、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学、ミュンヘン、ドイツの倫理委員会によって承認された(Ethikkommission bei der LMU Munchen、承認番号19-737)。全ての患者からインフォームド・コンセントを得た。倫理承認に従い、患者の特徴に関するデータが保管されないように、無記名でサンプル及びデータを収集した。サンプルは、泌尿器病理学者による肉眼検査の後、前立腺全摘除術の直後に採取した。ほとんどの前立腺癌が末梢領域に生じる(Pradidarcheep et al.,2011;Shaikhibrahim et al.,2012)ことを考慮して、尿道周囲領域から全組織を採取した。病理学的評価の際に、新生物、癌、又は炎症の組織学的徴候を示していなかった組織サンプルのみを収集した。BPHは、前立腺癌患者の80~83%に存在する(Alcaraz et al.,2009;Orsted and Bojesen、2013)。一般に、このような組織は、前立腺特異的抗原(PSA)含量の変動、並びに平滑筋及び腺上皮の含量の違いを示し、これはBPHが異なる程度で存在することを反映している(Wang et al.,2016a、2016c)。肉眼検査及びサンプル採取のために、前立腺を被膜から尿道まで単一縦切開により切開した。次に、両方の交点を、明らかな腫瘍浸潤があるかどうか肉眼で確認した。腫瘍は通常、末梢領域に位置するので、尿道周囲領域(三サンプル採取を行った場所)の腫瘍浸潤は極めて希であった(前立腺の1%未満に見られた)。肉眼検査で尿道周囲領域に腫瘍を示す前立腺のサンプル採取は行わず、本試験に含めなかった。臓器浴試験はサンプル採取直後に行ったが、分子分析用のサンプルは液体窒素中で衝撃凍結させ、-80℃で保存した。
【0018】
張力測定
前立腺試験片(6×3×3mm)を、以下の組成:118mM NaCl、4.7mM KCl、2.55mM CaCl2、1.2mM KH2PO4、1.2mM MgSO4、25mM NaHCO3、7.5mMグルコースを有するクレブス・ヘンゼライト溶液(37℃、pH7.4)を含有する10mlの曝気した(95%O2及び5%CO2)組織浴(Danish Myotechnology、オーフス、デンマーク)に挿入した。各単一の試験で、同じ前立腺から得た4つの試験片のうち2つを対照群(阻害薬又は拮抗剤無し)に、他の2つを阻害薬/拮抗剤群に割り当てた(各単一の試験の各群について2反復の測定となった)。1回の実験の4サンプル全てを同じ臓器浴の4つのチャンバーで調べた。結果として、各シリーズ/図における対照及び阻害薬曲線は同じ前立腺から得られたが、異なるシリーズ/図については異なる前立腺が調べられた。溶媒の量は、阻害薬濃度の違い(100nM、1μM)及びオンバンサーティブとα1遮断薬の組合せのためにシリーズ間で異なり、これは異なるシリーズの収縮レベル間の比較を排除するものである。従って、根治的前立腺全摘除術からの前立腺組織は著しい不均一性を示し得るということを考慮して、統計学的比較は同じシリーズ(すなわち、阻害薬及び対照群に関して同じ前立腺からの組織を含有する)内の群間でのみ行われ、異なる前立腺から得られたシリーズ間では行われなかった(すなわち、臓器浴実験の異なるシリーズにわたらなかった)。各サンプルで、すなわち、1種類の作動薬、又は電場刺激(EFS)について曲線を1つだけ記録した。
【0019】
臓器浴チャンバーに挿入した後、調製物を4.9mNに伸展し、45分間平衡化した。平衡化期間の初期相においては、通常、緊張の自発的低下が見られる。従って、平衡化期間中、4.9mNの安定な安静時緊張が達成されるまで、3回、張力を調整した。平衡化期間の後、80mM KClにより誘導された最大収縮を評価した。次に、チャンバーをクレブス・ヘンゼライト溶液で3回、合計30分間洗浄した。ノルアドレナリン、フェニレフリン、メトキサミン、エンドセリン-1、及びU46619に関する累積濃度応答曲線、又はEFSにより誘導される周波数応答曲線を、オンバンサーティブ、タムスロシン、シロドシン、及び/又は対照としてのジメチルスルホキシド(DMSO)の添加30分後に作成した。オンバンサーティブ効果の可逆性は、DMSO又はオンバンサーティブの適用30分後に始めて30分以内にクレブス・ヘンゼライト溶液に3回置き換えることによりDMSO及びオンバンサーティブをウォッシュアウトした別のシリーズで評価し、その後、ノルアドレナリンに関する濃度応答曲線又はEFSによつ周波数応答曲線を作成した。
【0020】
EFSの適用は、活動電位を模擬し、ノルアドレナリンを含む内因性神経伝達物質の放出を生じる。神経伝達物質放出の阻害薬テトロドトキシンを用い、これがヒト前立腺におけるEFS誘導性収縮の2/3を説明することが従前に示されている(Angulo et al.,2012)。EFSの場合、組織試験片は、CS4刺激装置(Danish Myotechnology)に接続した2本の平行白金電極の間に配置した。電圧50V、1ミリ秒間隔にて、パルス列持続時間10秒、単一パルス間1ミリ秒の遅延を用い、方形波を適用した。EFS誘導性の収縮応答は、周波数2、4、8、16、及び32Hzで、刺激間30秒のパルス列間隔で調べた。
データ分析及び計算は、収縮の最大ピーク高に基づいた。作動薬又はEFS誘導性収縮の計算のために、張力はKCl誘導性収縮に対する%として表すが、これは間質/上皮比の違い、平滑筋含量の違い、BPH程度の変動、又は前立腺サンプル及び患者間の任意の他の不均一性を補正し得るからである。
【0021】
ウエスタンブロット解析
凍結前立腺組織を、25mM Tris/HCl、10μMフッ化フェニルメタンスルホニル、1mMベンズアミジン、及び10μg/mlヘミ硫酸ロイペプチンを含有するバッファー中、マトリックスAを用いるFastPrep(登録商標)-24システム(MP Biomedicals、イルキルシュ、フランス)を使用してホモジナイズした。遠心分離(20,000g、4分)の後、Dcアッセイキット(Biorad、ミュンヘン、ドイツ)を用い、上清のタンパク質濃度をアッセイし、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)サンプルバッファー(Roth、カールスルーエ、ドイツ)で10分間煮沸した。培養間質細胞サンプルを以下に記載のように調製した。サンプル(20μg/レーン)をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、タンパク質をProtran(登録商標)ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、ダッセル、ドイツ)にブロットした。膜を5%粉乳(Roth、カールスルーエ、ドイツ)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で一晩ブロッキングし、ウサギ抗PLK1(208G4)(#4513)(Cell Signalling Technology、ダンバース、MA、USA)、及びマウスモノクローナル抗β-アクチン抗体(sc-47778)(Santa Cruz Biotechnology、サンタクルーズ、CA、USA)と共にインキュベートした。
【0022】
一次抗体を、0.1%Tween 20(PBS-T)及び5%粉乳を含有するPBSで希釈した。次に、ビオチン化ヤギ抗ウサギ又はウマ抗マウス二次IgG(BA-1000、BA-2000)(Vector Laboratories、バーリンゲーム、CA、USA)を用いて検出を続け、次いで、「Vectastain ABCキット」(Vector Laboratories、バーリンゲーム、CA、USA)からのアビジン及びビオチン化セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)(両方ともPBSで1:200希釈)と共にインキュベートした。一次抗体若しくは二次抗体、又はビオチン-HRPでのインキュベーション後には膜をPBS-Tで洗浄した。最後に、ブロットを、ECL Hyperfilm(GE Healthcare、フライブルク、ドイツ)を用いて増強化学発光(ECL)で現像した。PLK1に関して得られたバンドの強度を、「Image J」(米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、USA)を用いて濃度測定により定量した。
【0023】
RT-PCR
凍結前立腺組織又は細胞からのRNAは、RNeasyミニキット(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて単離した。組織からの単離については、30mgの組織を、マトリックスAを用いたFastPrep(登録商標)-24システム(MP Biomedicals、イルキルシュ、フランス)を使用してホモジナイズした。RNA濃度は、分光光度の測定により測定した。cDNAへの逆転写は、1μgの単離RNAで、逆転写システム(Promega、マディソン、WI、USA)を用いて行った。PLK1、PSA、及びグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のRT-PCRは、Roche Light Cycler(Roche、バーゼル、スイス)で、PLK1はRef-Seq受託番号snM_005030、KLK3(同義語PSA)はNM_001030047、及びGAPDHはnM_002046に基づく使用準備済み混合物としてQiagen(ヒルデン、ドイツ)により提供されるプライマーを用いて行った。PCR反応は、5μlのLightCycler(登録商標)FastStart DNA MasterPlus SYBR Green I(Roche、バーゼル、スイス)、1μlの鋳型、1μlのプライマー、及び18μlの水を含有する25μl容量で行った。変性は95℃で10分、増幅は95℃で15秒、次いで60℃で60秒の45サイクルで行った。プライマー及び増幅の特異性はその後の融点分析により示され、これは各標的に対する単一のピークを明らかにした。結果はΔΔCP法を用いて表し、蛍光シグナルがGAPDHに対して定義された閾値を超えたサイクル数(Ct)を、PLKのCt値から差し引き(Cttarget-CtGAPDH=ΔCP)、値を2-ΔCPとして計算し、互いに対して又は前立腺組織の平均値に対して正規化した。
【0024】
細胞培養
WPMY-1細胞は、前立腺癌の無いヒト前立腺間質から得られた不死化細胞株である(Webber et al.,1999)。細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC;マナサス、VA、USA)から入手し、10%ウシ胎仔血清(FCS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Gibco、カールスバッド、CA、USA)中、37℃、5%CO2で維持した。オンバンサーティブ又はDMSOの添加の前に、培地をFCS不含培地に替えた。ウエスタンブロット解析のために、細胞を、ラジオ免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファー(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、USA)を用いて溶解させ、氷上で15分のインキュベーションの後にフラスコから取り出した。細胞残渣を遠心分離(10,000g、10分、4℃)により除去し、上清の異なるアリコートに対してタンパク質測定を行うか、又はSDSサンプルバッファーと共に煮沸した。
【0025】
細胞傷害性アッセイ
細胞の生存率は、Cell Counting Kit-8(CCK-8)(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、USA)を用いて評価した。細胞を96ウェルプレート(5000細胞/ウェル)で24時間増殖させ、その後、オンバンサーティブ又は溶媒を示された濃度で添加した。次に、細胞を種々の期間、増殖させた(24、48、72時間)。各期間について、別に対照実験を行った。この期間の終了時に、CCK-8からの10μlの[2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-tetrアゾリウム一ナトリウム塩(WST-8)を添加し、37℃で2時間のインキュベーションの後に、各ウェルの吸光度を450nMで測定した。
【0026】
コロニー形成アッセイ
約100細胞を6ウェルの培養プレートの各ウェルに入れ、オンバンサーティブ(終濃度10、50、100nM)又は溶媒で処理した。細胞を37℃で14日間インキュベートした後、PBSで2回洗浄し、2mlの10%トリクロロ酢酸で一晩(4℃)固定した。次に、全てのプレートを冷水で5回洗浄し、0.4%スルホローダミンB溶液(1%酢酸中に希釈)で、室温にて30分間染色した。写真を撮影する前に、全てのプレートにラベルを付け、1%酢酸で5回洗浄した。50細胞以上を含有するコロニーの数を顕微鏡下で計数した。
【0027】
EdU増殖アッセイ
WPMY-1細胞を16ウェルチャンバーカバーガラス(Thermo Scientific、ウォルサム、MA、USA)上に細胞株特異的密度(50,000/ウェル)で播種した。24時間後、細胞をオンバンサーティブ(終濃度10、50、100nM)又は溶媒で処理した。更に24時間後、培地を、オンバンサーティブ又は溶媒を含有するFCS不含培地中、10mMの5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU)溶液に替えた。20時間後、細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定した。EdUの組み込みは、「EdU-Click 555」細胞増殖アッセイ(Basecぃck、トゥッツィング、ドイツ)を製造者の説明書に従って用いて決定した。このアッセイでは、EdUのDNAへの組み込みを蛍光性の5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA)で検出することにより評価する。全ての核の対比染色をDAPIで行った。細胞は蛍光顕微鏡(励起:546nM;発光:479nM)により分析した。
【0028】
薬物及び命名法
オンバンサーティブ(PCM-075)(1-(2-ヒドロキシエチル)-8-[5-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメトキシ)アニリノ]-4,5-ジヒドロピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド)は、PLK1に対して高い選択性を有するPLK阻害薬である(Beria et al.,2011)。フェニレフリン((R)-3-[-1-ヒドロキシ-2-(メチルアミノ)エチル]フェノール)及びメトキサミン(α-(1-アミノエチル)-2,5-ジメトキシベンジルアルコール)は、α1-アドレノセプターの選択的作動薬である。U46619((Z)-7-[(1S,4R,5R、6S)-5-[(E、3S)-3-ヒドロキシオクタ-1-エニル]-3-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-6-イル]ヘプタ-5-エン酸)は、トロンボキサンA2受容体を特異的に活性化し、トロンボキサンA2受容体の作動薬としてしばしば使用される、トロンボキサンA2(TXA2)の類似体である(Malmsten,1976;Shen and Tai,1998)。タムスロシン(5-[(2R)-2-[2-(2-エトキシフェンオキシ)エチルアミノ]プロピル]-2-メトキシベンゼンスルホンアミド)及びシロドシン(1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-[(2R)-2-[2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチルアミノ]プロピル]-2,3-ジヒドロインドール-7-カルボキサミド)は、α1Aサブタイプに対して高い選択性を有するα1-アドレノセプター拮抗剤である。双方とも、BPHを示唆するLUTSの治療に利用可能であり、慣用されている(Oelke et al.,2013)。オンバンサーティブ(10mM)の保存溶液及び適当な希釈液はDMSOで調製し、使用まで-20℃で保存した。ノルアドレナリン、フェニレフリン、メトキサミン(全て10mM)の保存水溶液、及びアデノシン5‘-三リン酸(ATP)(500mM懸濁液)は各実験の前に新たに調製した。U46619(10mM)の保存溶液は、エタノールで調製し、使用まで-80℃で保存した。エンドセリン-1(0.4mM)の保存水溶液は、使用まで-20℃で保存した。タムスロシン及びシロドシン(10mM)の保存溶液はDMSOで調製し、蒸留水で更に希釈し(1:100、100μMとする)、使用まで-20℃で保存した。オンバンサーティブは、Trovagene Inc.(サンジエゴ、CA、USA)から供給された。ノルアドレナリン、フェニレフリン、メトキサミン、及びATPはSigma(ミュンヘン、ドイツ)から、U46619、タムスロシン、及びシロドシンはTocris(ブリストル、UK)から、エンドセリン-1はEnzo Life Sciences(レハラ、ドイツ)から入手した。
【0029】
統計学的分析
データは、実験数(n)の表示と共に平均±平均の標準誤差(S.E.M.)として示す。対応のない観測には多変量分散分析(ANOVA)及び2元配置ANOVAを使用し、SPSS(登録商標)バージョン20(IBM SPSS Statistics、IBM Corporation、アーモンク、ニューヨーク州、USA)を用いて行った。P値<0.05を統計的に有意と見なした。統計学的分析に含まれる全ての群は5回以上の独立した実験に基づき、ヒト組織で行われた実験の場合には、各群5名以上の患者からの組織を含んだ。よって、統計学的検定を受けた最小の群サイズはn=5であった。更に、統計学的検定によって互いに比較された全ての群が同じ群サイズを示し、結果として、サンプルサイズの異なる群間、又は異なる患者からの組織からなる群間の統計学的比較は行われなかった。スピアマンの相関分析及び曲線フィッティングによるpEC50値の計算は、GraphPadPrism 6(Statcon、ヴィッツェンハウゼン、ドイツ)を用いて行った。
【0030】
結果
アドレナリン作動性収縮に対するオンバンサーティブの効果
前立腺平滑筋収縮に対するオンバンサーティブ及びα1遮断薬の効果を評価するために、ヒト前立腺組織の収縮を臓器浴にて誘導した。ヒト前立腺組織のノルアドレナリン誘導性収縮に対するオンバンサーティブの効果は、2種類の異なる濃度のオンバンサーティブを用いて試験した。両濃度、すなわち、100nM及び1μMは、ノルアドレナリン誘導性収縮の有意な阻害を引き起こした(図1A)。この阻害の程度は両濃度で同等であり、従って、オンバンサーティブ濃度を100nMから1μMに高めても阻害の程度は上昇しなかった(100nMオンバンサーティブにより100μMノルアドレナリン誘導性収縮は45±9.7%阻害、1μMオンバンサーティブにより100μMノルアドレナリン誘導性収縮は41±6.2%阻害)。これらの収縮力とは対照的に、オンバンサーティブは、ノルアドレナリンのpEC50は変化させなかった(100nMオンバンサーティブの後に5.9±0.2M及び対応する対照では5.5±0.2M;1μMオンバンサーティブの後に5.7±0.3M及び対応する対照では6±0.3M)。
【0031】
α1-アドレナリン作動性前立腺平滑筋収縮に対するオンバンサーティブの効果は、2種類のα1-アドレノセプター作動薬としてフェニレフリン及びメトキサミンを用いて確認した。オンバンサーティブ(100nM)は、フェニレフリン誘導性収縮及びメトキサミン誘導性収縮の有意な阻害を引き起こした(図1B)。阻害の程度は両作動薬で同等であり、オンバンサーティブによるノルアドレナリン誘導性収縮の阻害と類似していた(100nMオンバンサーティブにより30μMフェニレフリン誘導性収縮は47±16.2%阻害、100nMオンバンサーティブにより100μMメトキサミン誘導性収縮は43±19.4%阻害)。これらの収縮力とは対照的に、オンバンサーティブは、フェニレフリン又はメトキサミンのpEC50値を変化させなかった(100nMオンバンサーティブ後のフェニレフリンでは7.8±1.3M及び対応する対照では6.7±0.8M;100nMオンバンサーティブ後のメトキサミンでは5.2±0.2及び対応する対照では5±0.1)。
アドレナリン作動性収縮に対するこのオンバンサーティブ効果の可逆性を評価するために、ノルアドレナリン誘導性収縮を、別の実験系でDMSO及びオンバンサーティブ(100nM)のウォッシュアウト後に評価した。これらの条件下、ノルアドレナリン誘導性収縮は異ならず、すなわち、DMSO及びオンバンサーティブのウォッシュアウト後に同等であった(図1C)。
【0032】
非アドレナリン作動性収縮に対するオンバンサーティブの効果
エンドセリン-1、ATP、又はトロンボキサンA2類似体U46619により誘導された前立腺平滑筋収縮に対してオンバンサーティブの効果を試験した。オンバンサーティブ(100nM)は、エンドセリン-1誘導性収縮の有意な阻害(100nMオンバンサーティブにより3μMエンドセリン-1誘導性収縮の45±6.6%阻害)、及びATP誘導性収縮の有意な阻害(100nMオンバンサーティブにより10mM ATP誘導性収縮の51±18.6%阻害)を引き起こした(図2)。オンバンサーティブ(100nM)は、U46619誘導性収縮を変化させなかった(図2)。
【0033】
EFS誘導性収縮に対するオンバンサーティブの効果
EFSにより誘導されたヒト前立腺組織の神経原性収縮に対するオンバンサーティブの効果を、2種類の異なる濃度のオンバンサーティブを用いて試験した。両濃度、すなわち、100nM及び1μMとも、EFS誘導性収縮の有意な阻害を引き起こした(図3A)。この阻害の程度は両濃度で同等であり、従って、オンバンサーティブ濃度を100nMから1μMに高めても阻害の程度は上昇しなかった(100nMオンバンサーティブにより32Hz誘導性収縮は34±11.3%阻害、1μMオンバンサーティブにより32Hz誘導性収縮は34±14%阻害)。
EFS誘導性収縮に対するこのオンバンサーティブ効果の可逆性を評価するために、EFS誘導性収縮を、別の実験系でDMSO及びオンバンサーティブ(100nM)のウォッシュアウト後に評価した。これらの条件下、EFS誘導性収縮は異ならず、すなわち、DMSO及びオンバンサーティブのウォッシュアウト後に同等であった(図3B)。
【0034】
EFS誘導性収縮及びノルアドレナリン誘導性収縮に対するα1遮断薬の効果
α1遮断薬タムスロシン及びシロドシンは、ヒト前立腺組織のEFS誘導性収縮を有意に、且つ、同程度に阻害した(図4A)。この阻害の程度は両化合物で同等であった(300nMタムスロシンにより32Hz誘導性収縮は48±18.3%阻害、100nMシロドシンにより32Hz誘導性収縮は47±16.4%阻害)。このEFS誘導性収縮の不完全な阻害とは対照的に、同濃度のタムスロシン及びシロドシンは、ノルアドレナリン誘導性収縮をほぼ完全に阻害した(300nMタムスロシンにより100μMノルアドレナリン誘導性収縮は93±3.5%阻害、100nMシロドシンにより100μMノルアドレナリン誘導性収縮は84±4.99%阻害)(図4B)。
【0035】
EFS誘導性収縮に対するオンバンサーティブとα1遮断薬の組合せの効果
EFS誘導性収縮を、α1遮断薬単剤の添加後又はα1遮断薬と100nMオンバンサーティブの組合せの添加後のヒト前立腺組織間で比較した(図5a)。α1遮断薬とオンバンサーティブの組合せを添加した後のEFS誘導性収縮は、α1遮断薬単剤の添加後のEFS誘導性収縮に比べて有意に低かった(図5a)。このオンバンサーティブの付加効果は、タムスロシン及びシロドシンを用いた場合に同等であった(タムスロシン単剤に比べてオンバンサーティブにより32Hz誘導性収縮は59±11.5%阻害、シロドシン単剤に比べてオンバンサーティブにより32Hz誘導性収縮は61±9.8%阻害)。
2つの別の実験系で、EFS誘導性収縮に対するオンバンサーティブとα1遮断薬の組合せの効果を、オンバンサーティブ(100nM)単剤の効果と比較した(図5b)。オンバンサーティブとα1遮断薬の組合せを添加した後のEFS誘導性収縮は、オンバンサーティブ単剤の添加後のEFS誘導性収縮に比べて有意に低かった(図5b)。このα1遮断薬の付加効果は、タムスロシン及びシロドシンを用いた場合に同等であった(オンバンサーティブ単剤に比べてタムスロシンにより32Hz誘導性収縮は68±12.2%阻害、オンバンサーティブ単剤に比べてシロドシンにより32Hz誘導性収縮は68±12.7%阻害)。
【0036】
WPMY-1細胞におけるPLK1の検出
ヒト前立腺間質細胞株WPMY-1におけるPLK1の潜在的発現レベルをヒト前立腺組織と比較するために、PLK1に対して生じた抗体を用い、ウエスタンブロット解析を行った。検出は、PLK1の予想分子量のサイズを有するバンドを明らかにした(図6)。従前の知見(Hennenberg et al.,2018)と一致して、これらのバンドの強度は、異なる患者からの前立腺組織のサンプル間で変動が大きかった(図6A)。対照的に、この強度はWPMY-1細胞の4つの異なるサンプルで一定であり、ヒト前立腺組織で見られた最高の発現レベルの範囲にあった(図6B)。類似のパターンが、RT-PCRによるPLK1 mRNAの検出後にも見られた(図6C)。よって、PLK1 mRNA含量は、ヒト前立腺組織において高い変動を示した(図6C)。WPMY-1細胞において、PLK1 mRNAの含量は一定であり、前立腺組織で見られた最高含量と同等のレベルの範囲にあった(図6C)。ヒト前立腺組織では、PLK1とPSAのmRNAレベルの間には相関が見られた(R=-0.543、P=0.297)(図6D)。
【0037】
WPMY-1細胞の生存率及び増殖に対するオンバンサーティブの効果
WPMY-1細胞の生存率に対するオンバンサーティブの効果を、CCK-8アッセイにより評価した。オンバンサーティブは、生存率の濃度依存的(10nM、50nM、100nM)及び時間依存的(24~72時間)低下を誘導した(図7A)。低下は、24時間後は10nMの15±8.8%~100nMの63±2.2%、48時間後は10nMの28±8.3%~100nMの86±1.9%、及び72時間後の10nMの40±4.4%~100nMの89±1.4%の範囲であった(図7A)。
WPMY-1細胞の増殖に対するオンバンサーティブの効果は、2つの異なる読み取りにより評価し、結果を互いに確認した(図7B及びC)。プレートコロニーアッセイにおいて、コロニー形成はオンバンサーティブにより濃度依存的に低減され、10nMにより39±4.5%、50nMにより89±1.9%、及び100nMにより97±0.4%の低下に達した(図7B)。EdUアッセイにおいて、増殖細胞のパーセンテージは、オンバンサーティブにより濃度依存的に低減され、24時間後に、10nMにより18±0.1%、50nMにより24±2.1%、及び100nMにより35±2.0%の低下に達した(図7C)。
【0038】
考察
本発明者らの知見は、PLK1阻害薬オンバンサーティブが1)ヒト前立腺における神経原性収縮、α1-アドレナリン作動性収縮、及びエンドセリン誘導性収縮、並びに2)前立腺間質細胞の増殖を阻害することを示唆する。特に、オンバンサーティブとα1遮断薬の組合せは、α1遮断薬単剤よりも大きな神経原性収縮阻害を引き起こした。このオンバンサーティブとα1遮断薬の相加作用は、成長に対する同時効果と共に、臨床的観点から特に注目されるものであり得る。前立腺平滑筋収縮及び前立腺成長は両方とも、BPHにおけるBOO及びLUTSに寄与し得る(Hennenberg et al.,2014)。結果として、両方とも医学的両方の標的となるが、それらは不十分な有効性、併用療法の一般的使用、及び遵守の低さによってなお影響を受け、最終的に合併症、入院、及び手術に至る(Hennenberg et al.,2014;Oelke et al.,2013)。新規な標的の同定は、これらの制限を今後克服するための必要条件である。本発明者らの知見に基づけば、オンバンサーティブは、in vivoにおいてBPHを示唆するLUTSに関して試験されるべき魅力的な化合物であり得る。
【0039】
本発明者らは、2種類の異なる濃度を用いて、EFS誘導性収縮及びノルアドレナリン誘導性収縮に対するオンバンサーティブの効果を試験した。オンバンサーティブの100nM及び1μMの両方の濃度は収縮を同程度に阻害した。従って、報告されたIC50値と共に、本発明者らは、収縮の阻害はPLK1阻害に依存するところが大きく、1μMまでというこの範囲では、他の収縮媒介キナーゼが関与することはなかったと結論付けた。実際に、オンバンサーティブはPLK1特異性が高いことが報告され、生化学アッセイにおいて、PLK1では2nM、PLK2では10μM、及びPLK3では10μMのIC50値を示す(Beria et al.,2011)。生化学アッセイによる他のスクリーンにおいて、オンバンサーティブは296のキナーゼに対して試験され、1μMで試験した場合には11のキナーゼ(PLK1を含む)の活性化(<50%)に低下を示し、
100nMで試験した場合にはPLK1のみの阻害を示した(Valsasina et al.,2012)。63のキナーゼで行った同じ研究の別系列の生化学アッセイで、FLT3では510nM、MELKでは744nM、及びCK2では826nMのIC50値が明らかになった(Valsasina et al.,2012)。従って、本発明者らの実験のほとんどで使用した100nMの濃度は、PLK1に特異性が高い可能性があり、それらの効果の大部分はPLK1阻害によるものであり得る。1μMの濃度は、100nMから得られる阻害よりも大きい阻害を提供するわけではなかったことから、本発明者らは、1)1μMは収縮媒介キナーゼの標的外阻害を生じないこと、及び2)100nMは最大PLK1依存効果を得るのに十分であることを仮定する。オンバンサーティブは水素結合によりPLK1のATPポケットに結合し、結果として、可逆的な解離を有するATP競合阻害薬として働くことを報告する従前の研究(Beria et al.,2011;Valsasina et al.,2012)と一致して、他の研究においてもオンバンサーティブの効果は可逆的であることが判明した。よって、オンバンサーティブのウォッシュアウト後に、収縮は対応する対照のレベルに回復した。
【0040】
本発明者らの臓器浴実験において、含まれる患者の病歴は考慮しなかったが、平滑筋収縮の阻害が見られた。よって、組織サンプルは無記名とし、本研究に関しては患者のデータは収集、保管、又は解析しなかった。個々の変動又は過去の処置からの不均一性を排除するために、本発明者らは、収縮を高モルKCl誘導性収縮と呼称し、種々の状況により、すなわち、異なるα1-アドレノセプター作動薬又は異なる組合せ状態を用いて本発明者らの知見を確認した。しかしながらやはり、患者の特徴、特に、収縮性に影響を及ぼし得る過去の投薬に対して参照がないことは、潜在的制限として考慮することが必要である。神経原性収縮及びα1-アドレナリン作動性前立腺平滑筋収縮の阻害は、PLK1に対する選択性が仮定される他の4つの阻害薬で得られた最近の知見と一致している(Hennenberg et al.,2018)。本発明者らの今般の結果と同様に、他のPLK1阻害薬によるEFS誘導性収縮の阻害は50%前後の範囲であった(Hennenberg et al.,2018)。ここで、本発明者らは、EFS誘導性収縮に対する2つのα1遮断薬の効果を試験し、オンバンサーティブとα1遮断薬の組合せをα1遮断薬及びオンバンサーティブ単剤と比較した。両α1遮断薬タムスロシン及びシロドシンは極めて類似した結果を示し、EFS誘導性収縮を50%未満で阻害した。α1遮断薬によるこの不完全な阻害は、ヒト前立腺組織のEFS誘導性収縮におけるα1遮断薬の同等又は更にはより小さい効果を報告している従前の結果と一致している(Angulo et al.,2012;Buono et al.,2014;Chueh et al.,1996;Oger et al.,2009,2010)。本発明者らは、タムスロシン及びシロドシンによるEFS誘導性収縮のこの不完全な阻害が低過ぎるα1遮断薬濃度によるものであったということを除外する。実際に、EFS実験で使用された同じ濃度は、ノルアドレナリン誘導性前立腺収縮を完全に低下させた(少なくとも本明細書で適用されたノルアドレナリン濃度の範囲では)。本発明者らは、オンバンサーティブとα1遮断薬の組合せの適用後のEFS誘導性収縮は、α1遮断薬又はオンバンサーティブ単剤の後の張力に比べて有意に低かったことを見出し、このことは本発明者らの研究の重要な知見として考えられ得る。α1遮断薬へのオンバンサーティブ又は他のPLK1阻害薬の付加は、BPH患者において、α1遮断薬単剤よりも高いLUTS改善をもたらし得ることが推測できる。タンパク質レベルで得られた従前の結果と一致して、本発明者らは、ここで、PLK1 mRNA発現がPSA発現と相関しないことを確認し、それがBPH程度とは独立に作用することが示唆される(Hennenberg et al.,2018)。
【0041】
PLK1阻害薬SBE 13及びシクラポリンがヒト前立腺組織のエンドセリン-1誘導性収縮を変化させなかったという最近の知見とは対照的に、本発明者らは、本明細書で、オンバンサーティブによるエンドセリン-1誘導性収縮の阻害を見出した(Hennenberg et al.,2018)。この不一致の理由は、この段階では推測のままであるが、発散性の薬理学的プロファイルを反映している可能性はある。しかしながら、アドレナリン作動性収縮の阻害(ノルアドレナリン、フェニレフリン、及びメトキサミンにより誘導される)であってもオンバンサーティブに関しては、SBE 13及びシクラポリン9で報告されている阻害(Hennenberg et al.,2018)よりも大きいと思われることは注目に値する。エンドセリン-1誘導性収縮に加えて、オンバンサーティブは、ATPにより誘導される収縮を阻害した。特に、前立腺におけるATP誘導性収縮に取り組む従前の検討は動物モデルに限定された本発明者ら知り限りの知識に対するものであったことから(Brandli et al.,2010;Buljubasich and Ventura、2004;Hennenberg et al.,2017;White et al.,2015;Xu and Ventura、2010)、本発明者らのデータは、ヒト前立腺におけるプリン作動性平滑筋収縮を示唆する初めての証拠となり得る。他のPLK阻害薬と一致して、U46619誘導性収縮はこの場合にも、オンバンサーティブに対して耐性があった。エンドセリン-1、トロンボキサンA2、及び恐らくはATPを含む非アドレナリン作動性メディエーターは、BPHにおいてα1-アドレノセプターと並行して前立腺平滑筋緊張に寄与する可能性があり、従って、それらはα1遮断薬で処置しても尿道閉塞を維持することができ、これはα1遮断薬の制限又は多数の不応答者を説明し得る(Hennenberg et al.,2014、2017)。エンドセリン-1誘導性収縮及びATP誘導性収縮に対する効果を考慮すれば、in vivoにおけるオンバンサーティブによる、BPHを示唆するLUTSの改善は、α1遮断薬のそれを超える可能性がある。
【0042】
別の重要な知見として、本発明者らは、オンバンサーティブが前立腺間質細胞の増殖を阻害したことを見出した。オンバンサーティブによる増殖の阻害を報告している従前の研究は種々のタイプの腫瘍細胞で行われたものであった(Casolaro et al.,2013;Hartsink-Segers et al.,2013;Sero et al.,2014;Valsasina et al.,2012)。前立腺では、他のPLK阻害薬又はPLK1のノックダウンが腫瘍細胞の増殖及び腫瘍成長を阻害し、抗腫瘍治療の有効性を高める(Lin et al.,2019;Reagan-Shaw and Ahmad、2005;Shao et al.,2015;Zhang et al.,2014)。一般に、オンバンサーティブを含むPLK阻害薬は、G2-M細胞周期の遮断によって増殖を低下させる(Valsasina et al.,2012)。PLK阻害による有糸分裂の遮断の延長の後にアポトーシス及び細胞死が起こり得る(Valsasina et al.,2012)。両方のプロセスが、本発明者らの研究のWPMY-1細胞の増殖及び生存率に対するオンバンサーティブの効果を説明し得る。WPMY-1細胞における生存率の低下は、24時間といった早期に起こったが、明らかに時間依存的であった。平滑筋細胞については、PLK1ノックダウンが増殖因子誘導性増殖を阻害した気道平滑筋細胞に関して、増殖促進に対するPLK1の役割が示唆された(Jiang and Tang、2015)。考え合わせると、WPMY-1細胞の増殖及び生存率がPLK1阻害薬により影響を受けるという本発明者らの所見は、他の細胞種で実施された従前の研究と一致している。WPMY-1細胞は非悪性ヒト前立腺間質に由来し、前立腺平滑筋細胞によく似ており、そのようなものと見なすことができる
(Wang et al.,2015)。平滑筋細胞は前立腺間質において主要な細胞種であり、BPHにおいて増殖の増加を示し得る(Strand et al.,2017)。これらはBPHにおいて前立腺肥大に寄与する(Strand et al.,2017)。ウエスタンブロット及びRT-PCRによる発現レベルの比較は、WPMY-1細胞は、PLK1含量に変動のあるヒト前立腺組織における最高レベルと同等の一定レベルでPLK1を発現することを示唆した。オンバンサーティブはBPHにおいて前立腺成長を防ぎ得るか、又は前立腺サイズを縮小し得ると予想することができ、これは、BPHの進行を予防するため並びに合併症及び手術のリスクを軽減するための5-ARI処置における主目的である(Oelke et al.,2013)。
【0043】
前立腺成長と平滑筋収縮はBPHにおける医学的療法の標的であるが、多くの場合、互いに独立であると長い間考えられてきた。前立腺平滑筋収縮と間質細胞の成長が同じ阻害薬に感受性があることを示す最近の証拠に基づけば、今般、両プロセスが互いに密接に結びついていることが明らかになりつつある(Hennenberg et al.,2014)。RhoキナーゼであるRac GTPアーゼ、又はSrcファミリーキナーゼの阻害薬は、ヒト前立腺組織の作動薬誘導性収縮と前立腺間質細胞の成長を同時に阻害した(Rees et al.,2003;Wang et al.,2015,2016b)。これは、RhoA/Rhoキナーゼが収縮及び増殖を媒介する他の平滑筋細胞、例えば、血管平滑筋細胞における状況と似ていると言える(Shimokawa et al.,2016)。特に、増殖及び収縮の両方がPLK1に依存する気道平滑筋細胞のPLK1に関して同様の役割が示唆されている(Jiang and Tang、2015;Li et al.,2016)。同じことが前立腺平滑筋にも明らかに当てはまる。よって、α1遮断薬、又は5-ARIとは対照的に、オンバンサーティブは、前立腺平滑筋の緊張と成長を一度に低減し得る。オンバンサーティブは、平滑筋収縮及び増殖を阻害するために同じ細胞内シグナル伝達経路に接近するのか異なる細胞内シグナル伝達経路に接近するのか、又、他のどのエフェクターが、PLK1と一緒に、オンバンサーティブ感受性シグナル伝達に加わるのかは、本発明者らのデータに基づいては評価することができない。心血管副作用を引き起こすことがあり、in vivo適用を制限し得る、血管平滑筋収縮に対するPLK阻害薬の効果は、これまでに報告されてない本発明者らの知識の限りを尽くさなければならない。
【0044】
考え合わせると、オンバンサーティブは、それがBPHを示唆するLUTSの治療に適用される場合にin vivoにおいて極めて有効であり得ることが、3つの理由で推測できる。第1に、α1遮断薬へのオンバンサーティブの付加によるLUTSの改善はα1遮断薬単剤によるものよりも高くなり得ることが仮定でき、これはEFS誘導性収縮における組合せ実験からの本発明者らの置換に基づく。第2に、オンバンサーティブは、α1遮断薬に感受性はないがBPHにおける前立腺平滑筋緊張に寄与する(Hennenberg et al.,2014、2017)エンドセリン-1誘導性収縮を阻害したことから、高い程度の症状軽減及びQmaxの改善が期待できる。第3に、オンバンサーティブは間質細胞の生存率を強く低減したことから、症状軽減と並行して前立腺サイズの縮小が期待できる。in vivoにおいて平滑筋細胞の数が低減され得ることから、in vivoにおける慢性適用の後に、抗増殖性の効果は、臓器浴での短時間の曝露よりも更に強く収縮性を低減し得る。臓器浴では、1時間の曝露は、生存率に影響を及ぼすことにより収縮性を低減するのに通常十分でなく(Yu et al.,2018.2019a.2019b)、従って、この抗収縮効果は、収縮を促進する、PLK1により媒介されるシグナル伝達機構から生じた可能性が最も高い。α1遮断薬と5-ARIの併用療法は、男性のLUTSの治療に一般に適用される(Oelke et al.,2013)。しかしながら、副作用が付帯し、中断率が高い(Fullhase et al.,2013)。成長と共にアドレナリン作動性及び非アドレナリン作動性前立腺平滑筋緊張に一度に取り組み得るオンバンサーティブなどの単一の化合物は、それらがα1遮断薬と5-ARIの併用療法に取って代わり得、α1遮断薬を用いた単剤療法の有効性を超え得るので、臨床試験に魅力的であり得る。オンバンサーティブは、経口的に利用可能である(Beria et al.,2011;Valsasina et al.,2012)。最近、第1相試験で薬物動態学及び安全性が検討され、ヒトにおいて、試験した最低の用量であって3桁ナノモル範囲の血漿濃度が達成された(Weiss et al.,2018)。結果として、本発明者らの臓器浴実験の場合(100nM)と似た濃度が経口投与により前立腺で得られる得る可能性が見られ、従って、BPHを示唆するLUTSに関す臨床試験は有望であり得る。
【0045】
結論
オンバンサーティブは、ヒト前立腺平滑筋の神経原性収縮及びα1-アドレナリン作動性収縮並びに前立腺間質細胞の増殖を阻害する。α1遮断薬による神経原性収縮の低減は高くても50%であるが、α1遮断薬とオンバンサーティブの組合せは、神経原性前立腺収縮の相加的でより強い阻害を提供する。オンバンサーティブはBPHにおいて前立腺平滑筋緊張と成長を一度に低減し得る可能性が見られ、従って、オンバンサーティブは、BPHを示唆するLUTSに関してin vivoで試験されるべき魅力的な化合物であり得る。
【0046】
〔参考文献〕





【0047】
上記を鑑みれば、本発明のいくつかの目的が達成され、その他の利点も得られることが分かるであろう。
上記の方法及び組成物において、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができるので、上記の明細書に含まれる事項及び添付の図面に示される事項は全て例示であって限定の意味で無いと解釈されるべきであることが意図される。
本明細書に引用される参考文献は全て、参照により本明細書の一部として援用される。単に著者らによってなされた主張を要約することを意図し、参考文献が従来技術を構成することを認めるものではない。出願人らは、引用された参考文献の正確性及び適切性に異議を申し立てる権利を留保する。
【0048】
本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り、複数形も同様に含むことを意図する。加えて、「又は」の使用は、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り、「及び/又は」を含むことを意図する。
本明細書において、特に、実施形態において使用する場合、数値に先行する際の用語「約」又は「およそ」は、10%の範囲のプラス又はマイナスの値を示す。値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り下限の単位の10分の1までの各介在値及び他のいずれかの記載の範囲又はその記載の範囲内の介在値が本開示に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立にその小さい範囲内に含まれ得ることも本開示内に包含される(ただし、記載の範囲において特に除外される限界を仮定する)。記載の範囲が一方又は療法の限界を含む場合、含まれる限界の一方又は両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0049】
本明細書及び実施形態において使用する場合、「及び/又は」という句は、このように連合した要素、すなわち、ある場合には連結して存在する,又、他の場合には分離して存在する要素の「一方又は両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」を用いて挙げられた複数の要素は、同様に、すなわち、このようにして連合した「1以上の」要素と解釈されるべきである。場合により、具体的に特定された要素に関連するものであれ無関連のものであれ、「及び/又は」の条項により具体的に特定された要素以外の他の要素も存在することができる。よって、限定されない例として、「を含む」などのオープンエンド形式の用語と共に使用される場合、「A及び/又はB」という言及は、一実施形態においては、Aのみ(場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態においては、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む);更に別の実施形態においては、AとBの両方(場合により他の要素を含む)などを指し得る。
【0050】
ここで、本明細書及び実施形態において使用する場合、「又は」は、上記に定義するような「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧において項目間に挿入される場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含する、と解釈されるべきであり、すなわち、複数の要素又は要素の一覧のうち少なくとも1つ(2以上も含む)、及び場合により列挙されていない付加的項目の包含と解釈されるべきである。「のうち1つのみ」若しくは「のうち正確に1つ」、又は実施形態において使用される場合の「からなる」など、対照的に明示される「のみ」という用語は、複数の要素又は要素の一覧のうち正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書において使用する場合の「又は」という用語は、「のいずれか」、「のうち1つ」、「のうち1つのみ」、又は「のうち正確に1つ」など、排除の用語により先行される場合、排他的選択肢(すなわち、「両方でなく一方又は他方」)としてのみ解釈されるべきである。実施形態において使用される場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0051】
ここで、本明細書及び実施形態において使用する場合、1以上の要素の一覧に関して「少なくとも1つの」とは、要素の一覧中の要素のうちいずれか1以上から選択される少なくとも1つの要素を意味し、要素の一覧に具体的に挙げられている各要素及び全要素のうち少なくとも1つを必ずしも含まなくてもよく、且つ、要素の一覧中の要素のいずれの組合せも排除しないと理解されるべきである。この定義は又、場合により、具体的に特定された要素に関連するものであれ無関連のものであれ、「少なくとも1つの」という句が指す、要素の一覧に具体的に特定される要素以外の要素が提示され得ることも許容する。よって、限定されない例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、Bの存在を伴わない、場合により2つ以上を含む少なくとも1つのA(及び場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態において、Aの存在を伴わない、場合により2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び場合によりA以外の要素を含む);更に別の実施形態において、場合により2つ以上を含む少なくとも1つのA、及び場合により2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び場合により他の要素を含む)などを指し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7