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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/26 20060101AFI20250117BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20250117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
F27B9/26
F27D3/12 Z
H01M4/36 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022151256
(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公開番号】P2024046084
(43)【公開日】2024-04-03
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚村 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大山 智明
(72)【発明者】
【氏名】磯野 隆規
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-162244(JP,A)
【文献】特開平06-154582(JP,A)
【文献】特開2000-081284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/26
F27D 3/12
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口と搬出口とを備え、前記搬入口から前記搬出口に匣鉢を搬送する間に、上下方向に段積みされた前記匣鉢に収容された被処理物を熱処理する1つの熱処理炉と、
前記被処理物が収容されていない前記匣鉢に、熱処理前の前記被処理物を供給する供給装置と、
前記供給装置で前記被処理物が供給された複数の前記匣鉢を上下方向に段積みする段積み装置と、
前記段積み装置で上下方向に段積みされた前記匣鉢を、前記1つの熱処理炉の前記搬入口に搬送する第1搬送装置と、
前記1つの熱処理炉の前記搬出口から搬出される上下方向に段積みされた複数の前記匣鉢を段ばらしする段ばらし装置と、
前記段ばらし装置で段ばらしされた前記匣鉢から前記1つの熱処理炉で熱処理された前記被処理物を回収する回収装置と、
前記1つの熱処理炉の前記搬出口から搬出された前記匣鉢を前記段ばらし装置まで搬送する第2搬送装置と、を備えており、
前記回収装置及び前記供給装置の少なくとも1つは、前記匣鉢を第1搬送経路に沿って搬送する第1搬送機構と、前記匣鉢を前記第1搬送経路とは異なる第2搬送経路に沿って搬送する第2搬送機構と、を少なくとも備えており、
前記第1搬送経路と前記第2搬送経路のそれぞれに、前記匣鉢内の前記被処理物を回収する回収部又は前記匣鉢内に前記被処理物を供給する供給部が設けられている、熱処理システム。
【請求項2】
前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路の上流に設けられ、前記匣鉢を前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路のいずれか一方に分岐させる分岐部と、
前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路の下流に設けられ、前記第1搬送経路を搬送された匣鉢と前記第2搬送経路を搬送された匣鉢を合流させる合流部と、をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
搬入口と搬出口とを備え、前記搬入口から前記搬出口に匣鉢を搬送する間に、上下方向に段積みされた前記匣鉢に収容された被処理物を熱処理する熱処理炉と、
前記被処理物が収容されていない前記匣鉢に、熱処理前の前記被処理物を供給する供給装置と、
前記供給装置で前記被処理物が供給された複数の前記匣鉢を上下方向に段積みする段積み装置と、
前記段積み装置で上下方向に段積みされた前記匣鉢を、前記熱処理炉の前記搬入口に搬送する第1搬送装置と、
前記熱処理炉の前記搬出口から搬出される上下方向に段積みされた複数の前記匣鉢を段ばらしする段ばらし装置と、
前記段ばらし装置で段ばらしされた前記匣鉢から前記熱処理炉で熱処理された前記被処理物を回収する回収装置と、
前記熱処理炉の前記搬出口から搬出された前記匣鉢を前記段ばらし装置まで搬送する第2搬送装置と、を備えており、
前記回収装置及び前記供給装置の少なくとも1つは、前記匣鉢を第1搬送経路に沿って搬送する第1搬送機構と、前記匣鉢を前記第1搬送経路とは異なる第2搬送経路に沿って搬送する第2搬送機構と、を少なくとも備えており、
前記第1搬送経路と前記第2搬送経路のそれぞれに、前記匣鉢内の前記被処理物を回収する回収部又は前記匣鉢内に前記被処理物を供給する供給部が設けられており、
前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路の上流に設けられ、前記匣鉢を前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路のいずれか一方に分岐させる分岐部と、
前記第1搬送経路及び前記第2搬送経路の下流に設けられ、前記第1搬送経路を搬送された匣鉢と前記第2搬送経路を搬送された匣鉢を合流させる合流部と、をさらに備えている、熱処理システム。
【請求項4】
前記第1搬送経路と前記第2搬送経路の少なくとも一方には、前記第1搬送経路を搬送された匣鉢と前記第2搬送経路を搬送された匣鉢について、前記合流部に搬入される順番を調整する調整機構がさらに設けられている、請求項2又は3に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物を熱処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルンやプッシャーキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。例えば、粉体等の被処理物を熱処理炉で熱処理する際には、被処理物は匣鉢に収容された状態で熱処理される。匣鉢は、再利用して繰り返し用いられる。例えば、特許文献1には、匣鉢に被処理物を供給する供給装置と、匣鉢内の被処理物を熱処理する熱処理炉と、匣鉢内から被処理物を回収する回収装置を備える熱処理システムの一例が開示されている。匣鉢は、供給装置と熱処理炉と回収装置との間を搬送されて、熱処理炉での被処理物の熱処理に繰り返し使用される。
【0003】
熱処理炉で熱処理する際には、生産性を向上させるために、被処理物を収容した複数の匣鉢を上下方向に段積みして熱処理されることがある。一方で、匣鉢内に被処理物を供給したり、匣鉢内の被処理物を回収したりするときには、匣鉢は段積みされてない状態にされる。このため、熱処理炉内において段積みされて搬送された匣鉢は、熱処理炉から搬出された後に段ばらしされ、回収装置で各匣鉢から被処理物が回収される。そして、供給装置で匣鉢内に再び被処理物が供給された後、匣鉢は再び段積みされて、熱処理炉内に搬入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7041300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱処理システムでは、匣鉢は、供給装置と熱処理炉と回収装置との間を搬送される。このような熱処理システムにおいて被処理物を段積みして熱処理する場合には、一般的に、段ばらしや段積みは、匣鉢を搬送する搬送機構(例えば、搬送ローラを用いた搬送機構等)を利用して行われる。すなわち、段ばらしの際には、上の匣鉢を把持した状態で下の匣鉢を先に搬送した後、把持していた匣鉢を搬送機構上に載置する。このため、下に配置されていた匣鉢が先に搬送され、上に積まれていた匣鉢が続いて搬送される。続いて、回収装置において匣鉢内の被処理物が回収され、供給装置において未処理の被処理物が匣鉢に供給された後、匣鉢は段積みされる。段積みの際には、先に搬送される匣鉢を持ち上げて把持した状態で次の匣鉢を搬送し、次の匣鉢が把持されている匣鉢の下方に来ると、把持されている匣鉢が次の匣鉢の上に積まれる。したがって、先に搬送される匣鉢が上方に積まれ、後に搬送される匣鉢が下方に位置する。このように、段ばらし前と段積み後では、匣鉢の上下の順番が入れ替わることになる。
【0006】
しかしながら、段積みする匣鉢の上下の順番を、ユーザの所望の順番にしたいことがある。例えば、匣鉢の上面に蓋をして熱処理を行う場合は、段積みされた匣鉢のうち一番上の匣鉢のみ、その上面に蓋を載せることになる。このため、匣鉢を複数回にわたって熱処理に用いると、熱変形によって一番上の匣鉢と、下に配置される匣鉢の形状が異なってくることがある。このような場合には、蓋を載せるための形状を有する匣鉢を、必ず一番上に積む必要がある。従来の熱処理システムでは、段ばらし前と段積み後で匣鉢の上下の順番が入れ替わるため、蓋を載せる匣鉢を必ず一番上に積むことはできない。このように、従来の熱処理システムでは、段積みする匣鉢の上下の順番を所望の順番にすることができないという問題があった。
【0007】
本明細書は、匣鉢を上下方向に重ねる際に、所望の順番で重ねることが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、熱処理システムは、熱処理炉と供給装置と段積み装置と第1搬送装置と段ばらし装置と回収装置と第2搬送装置と、を備えている。熱処理炉は、搬入口と搬出口とを備え、搬入口から搬出口に匣鉢を搬送する間に、上下方向に段積みされた匣鉢に収容された被処理物を熱処理する。供給装置は、被処理物が収容されていない匣鉢に、熱処理前の被処理物を供給する。段積み装置は、供給装置で被処理物が供給された複数の匣鉢を上下方向に段積みする。第1搬送装置は、段積み装置で上下方向に段積みされた匣鉢を、熱処理炉の搬入口に搬送する。段ばらし装置は、熱処理炉の搬出口から搬出される上下方向に段積みされた複数の匣鉢を段ばらしする。回収装置は、段ばらし装置で段ばらしされた匣鉢から熱処理炉で熱処理された被処理物を回収する。第2搬送装置は、熱処理炉の搬出口から搬出された匣鉢を段ばらし装置まで搬送する。回収装置及び供給装置の少なくとも1つは、匣鉢を第1搬送経路に沿って搬送する第1搬送機構と、匣鉢を第1搬送経路とは異なる第2搬送経路に沿って搬送する第2搬送機構と、を少なくとも備えている。第1搬送経路と第2搬送経路のそれぞれに、匣鉢内の被処理物を回収する回収部又は匣鉢内に被処理物を供給する供給部が設けられている。
【0009】
上記の熱処理システムでは、回収装置及び供給装置の少なくとも1つにおいて、第1搬送経路と第2搬送経路が設けられることにより、回収装置及び/又は供給装置では、匣鉢が並列に搬送される。これにより、段ばらしして匣鉢から熱処理後の被処理物を回収し、さらに匣鉢に未処理の被処理物を供給した後、再び匣鉢を段積みする際に、匣鉢の上下方向の順番が固定されず、所望の順番に積むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る熱処理システムの概略構成を示す図。
図2】実施例1に係る熱処理システムの制御系を示すブロック図。
図3】熱処理炉の概略構成を示す図であり、匣鉢の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
図4図3のIV-IV線における断面図。
図5】段積み装置で匣鉢を段積みする動作を説明するための側面図。
図6】段積みされた匣鉢を段ばらし装置で段ばらしする動作を説明するための側面図。
図7】実施例1の回収装置の制御系を示すブロック図。
図8】第1搬送経路と第2搬送経路を示す図。
図9】実施例2に係る熱処理システムの概略構成を示す図。
図10】実施例3に係る熱処理システムの概略構成を示す図。
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、第1搬送経路及び第2搬送経路の上流に設けられ、匣鉢を第1搬送経路及び第2搬送経路のいずれか一方に分岐させる分岐部と、第1搬送経路及び第2搬送経路の下流に設けられ、第1搬送経路を搬送された匣鉢と第2搬送経路を搬送された匣鉢を合流させる合流部と、をさらに備えていてもよい。このような構成によると、搬送経路全体のうち、分岐部から合流部までの間以外の部分については、搬送経路を直列にすることができる。このため、並列にする領域を必要最小限に抑えることができ、熱処理システム全体の設備のコストを抑制することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第2の態様において、第1搬送経路と第2搬送経路の少なくとも一方には、第1搬送経路を搬送された匣鉢と第2搬送経路を搬送された匣鉢について、合流部に搬入される順番を調整する調整機構がさらに設けられていてもよい。このような構成によると、合流部に搬入される順番を好適に調整することができ、所望の順番で匣鉢を段積みすることができる。
【実施例
【0014】
(実施例1)
図面を参照して、本実施例に係る熱処理システム100について説明する。図1及び図2に示すように、熱処理システム100は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、段積み装置50と、段ばらし装置54と、回収装置60と、清掃装置44と、割れ検知装置46と、管理装置48を備えている。
【0015】
熱処理システム100は、匣鉢2(図3参照)に収容された被処理物を熱処理する。本実施例では、匣鉢2に収容される被処理物は、リチウムイオン電池正極材の粉体である。本実施例の熱処理システム100では、匣鉢2は、供給装置40、段積み装置50、熱処理炉10、段ばらし装置54、回収装置60、清掃装置44及び割れ検知装置46の間を循環するように構成されている。被処理物は、匣鉢2が熱処理炉10内を搬送される間に熱処理される。図2に示すように、管理装置48は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、段積み装置50と、段ばらし装置54と、回収装置60と、清掃装置44と、割れ検知装置46と接続している。管理装置48は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、段積み装置50と、段ばらし装置54と、回収装置60と、清掃装置44と、割れ検知装置46の動作を制御している。
【0016】
熱処理炉10は、匣鉢2内の被処理物を熱処理する。図3及び図4に示すように、熱処理炉10は、炉体12と、搬送装置(24、26)を備えている。熱処理炉10は、搬送装置(24、26)によって匣鉢2が炉体12内を搬送される間に、匣鉢2内に収容される被処理物を熱処理する。本実施例の熱処理炉10では、複数の匣鉢2を上下方向に重ねた状態(すなわち、複数の匣鉢2を段積みした状態)で搬送することができる。
【0017】
炉体12は、外形が略直方体形状であり、その内部の熱処理空間が天井壁14aと、底壁14bと、炉入口壁14cと、炉出口壁14dと、側壁14e、14fによって囲まれている。図3に示すように、天井壁14aは、底壁14bに対して平行に(すなわち、XY平面と平行に)配置されている。炉入口壁14cは、搬送経路の入口端に配置されており、搬送方向に対して垂直に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。炉出口壁14dは、搬送経路の出口端に配置されており、炉入口壁14cに対して平行に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。図4に示すように、側壁14e、14fは、搬送方向に対して平行、かつ、天井壁14a及び底壁14bに対して垂直に(すなわち、XZ平面と平行に)配置されている。炉体12内の熱処理空間には、複数のヒータ16a、16bと、複数の搬送ローラ24が配置されている。ヒータ16aは、搬送ローラ24の上方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置され、ヒータ16bは、搬送ローラ24の下方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置されている。ヒータ16a、16bが発熱することで、炉体12内の空間18が加熱されると共に匣鉢2内に収容される被処理物が加熱される。図3に示すように、炉入口壁14cには、開口15aが形成されており、炉出口壁14dには、開口15bが形成されている。匣鉢2は、搬送装置(24、26)によって開口15aから熱処理炉10内に搬送され、開口15bから熱処理炉10外へ搬送される。すなわち、開口15aは搬入口として用いられ、開口15bは搬出口として用いられる。
【0018】
搬送装置(24、26)は、複数の搬送ローラ24と、駆動装置26を備えている。搬送ローラ24は、搬送ローラ24上に載置された匣鉢2を搬送する。搬送装置(24、26)は、開口15aから熱処理炉10内に匣鉢2を搬送し、開口15bから匣鉢2を熱処理炉10外に搬送する。搬送ローラ24は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に(すなわち、Y方向に)伸びている。複数の搬送ローラ24は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ24は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置26の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置26は、搬送ローラ24を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置26は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置26の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ24に伝達されると、搬送ローラ24は回転するようになっている。駆動装置26は、搬送ローラ24が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ24のそれぞれを駆動する。駆動装置26は、制御装置28によって制御されている。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ24は、全て同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。熱処理炉10内には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。さらに、本実施例では、複数の搬送ローラ24は、一定のピッチで等間隔に配置されているが、このような構成に限定されない。熱処理炉10内には、ピッチの異なる不等ピッチで搬送ローラが設置されていてもよい。
【0019】
図1に示すように、循環搬送装置30は、熱処理炉10の搬出口(すなわち、開口15b)から搬出された匣鉢2を、段ばらし装置54、回収装置60、清掃装置44、割れ検知装置46、供給装置40及び段積み装置50を介して、熱処理炉10の搬入口(すなわち、開口15a)まで搬送する。循環搬送装置30は、複数の搬送ローラ32(図5及び図6参照)と、駆動装置36(図2参照)を備えている。搬送ローラ32は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に伸びている。複数の搬送ローラ32は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ32は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置36の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置36は、搬送ローラ32を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置36は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置36の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ32に伝達されると、搬送ローラ32は回転するようになっている。駆動装置36は、複数の搬送ローラ32が略同一の速度で回転するように、複数の搬送ローラ32のそれぞれを駆動する。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ32は、全て同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。循環搬送装置30の搬送経路には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。さらに、本実施例では、複数の搬送ローラ32は、一定のピッチで等間隔に配置されているが、このような構成に限定されない。循環搬送装置30の搬送経路には、ピッチの異なる不等ピッチで搬送ローラが設置されていてもよい。
【0020】
図1に示すように、供給装置40は、割れ検知装置46と段積み装置50との間に配置されている。供給装置40は、第1供給部42aと第2供給部42bを備えている。第1供給部42a及び第2供給部42bは、循環搬送装置30の搬送経路34上に配置されている。第1供給部42aは、供給装置40の上流側(図1の+X方向側)に配置されており、第2供給部42bは、供給装置40の下流側(図1の-X方向側)に配置されている。第1供給部42aと第2供給部42bは、循環搬送装置30の搬送経路34上に直列に配置されている。すなわち、匣鉢2は、供給装置40内において、第1供給部42aに搬送された後、第2供給部42bに搬送される。
【0021】
第1供給部42a及び第2供給部42bは、匣鉢2内に被処理物(すなわち、粉体)を供給する装置である。第1供給部42aと第2供給部42bは、同一の構成を有している。第1供給部42aと第2供給部42bのいずれか一方において匣鉢2に被処理物が供給され、他方では匣鉢2に被処理物が供給されずに匣鉢2は通過する。なお、第1供給部42a及び第2供給部42bは、匣鉢2内に粉体を供給するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、第1供給部42a及び第2供給部42bはそれぞれ、粉体供給部と均し部を備えている。粉体供給部は、匣鉢2の内部に粉体を供給するように構成されている。具体的には、粉体供給部は、粉体を貯留する粉体ホッパーを備え、粉体ホッパーは匣鉢2の上方から匣鉢2の内部に粉体を落下させる供給口を備えている。供給口は、粉体供給部内に匣鉢2を配置したときに、匣鉢2の中心部の上方に位置するように配置されている。粉体供給部は、位置決め装置を備えており、位置決め装置は、粉体供給部に搬送された匣鉢2を、供給口の下方に位置するように位置決めする。なお、粉体供給部には、複数の供給口が配置されていてもよい。粉体供給部は、粉体を上方から落下させることで匣鉢2内に粉体を供給するため、粉体供給部で匣鉢2に粉体が供給されると、匣鉢2内の粉体の上面は、供給口の下方の位置で盛り上がった状態となる。均し部は、粉体供給部で匣鉢2内に供給された粉体を均す。具体的には、均し部は、平板の側面で匣鉢2内の粉体の上面を押さえることで粉体の上面を均すように構成されている。均し部で粉体の上面を均すことによって、匣鉢2に収容された粉体の上面は略水平面となる。
【0022】
段積み装置50は、循環搬送装置30の搬送経路34上に配置されている。段積み装置50は、供給装置40と熱処理炉10の搬入口との間に配置されている。段積み装置50は、供給装置40で被処理物が供給された匣鉢2を上下方向に段積みする装置である。図5に示すように、段積み装置50は、把持部52と昇降装置53を備えている。把持部52は、匣鉢2の一対の側面に当接して、匣鉢2を把持する。すなわち、把持部52は、図示しないアクチュエータによって開閉動作が可能となっている。把持部52に閉動作を行わせると匣鉢2を把持し、把持部52に開動作を行わせると匣鉢2を開放する。昇降装置53は、把持部52の下方に配置されており、把持部52の下方において搬送ローラ32上に位置する匣鉢2を昇降させる。本実施例では、昇降装置53は、リフターであるが、匣鉢2を昇降可能であればよく、例えば、昇降ピンであってもよい。昇降装置53は、上下方向に移動可能に構成されている。昇降装置53が上昇すると、昇降装置53の上端は、搬送ローラ32の間を通過して、昇降装置53の上方に位置する匣鉢2の下面に当接し、匣鉢2を持ち上げる。
【0023】
ここで、段積み装置50で匣鉢2を段積みする動作について説明する。以下では、2つの匣鉢2を区別するために、2つの匣鉢2を段積み装置50内に搬入される順に匣鉢2a、2bと称する。また、説明を容易にするために、2つの匣鉢2a、2bを段積みする例について説明するが、段積み装置50は、匣鉢2を3段以上に段積みしてもよい。
【0024】
供給装置40で被処理物が供給された匣鉢2a、2bは、搬送ローラ32によって段積み装置50内に搬送される。供給装置40では、段積みされていない状態で匣鉢2に被処理物が供給される。このため、匣鉢2a、2bは、段積みされていない状態で段積み装置50に搬入される。段積み装置50に先に搬入された匣鉢2aが把持部52の下方まで搬送されると、昇降装置53が上昇する(図5(a)の状態)。すると、昇降装置53の上端が匣鉢2aの下面に当接し、匣鉢2aが上昇する。これにより、匣鉢2aは、搬送ローラ32から離れ、搬送ローラ32の上方に移動する(図5(b)の状態)。次いで、把持部52は、匣鉢2aを把持する。匣鉢2aが把持部52に把持されると、昇降装置53が下降する。すると、昇降装置53は、把持部52に把持された匣鉢2aから離れる。
【0025】
次いで、匣鉢2aに続いて段積み装置50内に搬入された匣鉢2bが搬送ローラ32によって搬送される。匣鉢2bが把持部52の下方まで搬送されると、昇降装置53が上昇する(図5(c)の状態)。すると、昇降装置53の上端が匣鉢2bの下面に当接し、匣鉢2bが上昇する。匣鉢2bの上面が匣鉢2aの下面に当接すると(図5(d)の状態)、把持部52は、匣鉢2aを把持した状態を解除する。次いで、昇降装置53が下降する。匣鉢2aは把持部52に把持されていないため、昇降装置53が下降すると、匣鉢2aが匣鉢2b上に段積みされた状態で、匣鉢2bと匣鉢2aは、搬送ローラ32上に戻される(図5(e)の状態)。その後、匣鉢2a、2bは、段積みされた状態で搬送ローラ32によって段積み装置50外に搬送される。このように、段積み装置50は、先に搬入された匣鉢2aが上方に位置し、続いて搬入された匣鉢2bが下方に位置するように、複数の匣鉢2a、2bを段積みする。
【0026】
図1に示すように、段ばらし装置54は、循環搬送装置30の搬送経路34上に配置されている。段ばらし装置54は、熱処理炉10の搬出口と回収装置60との間に配置されている。段ばらし装置54は、上下方向に段積みされている匣鉢2を段ばらしする装置である。図6に示すように、段ばらし装置54は、把持部56と昇降装置57を備えている。把持部56は、匣鉢2の一対の側面に当接して、匣鉢2を把持する。すなわち、把持部56は、図示しないアクチュエータによって開閉動作が可能となっている。把持部56に閉動作を行わせると匣鉢2を把持し、把持部56に開動作を行わせると匣鉢2を開放する。昇降装置57は、把持部56の下方に配置されており、把持部56の下方において搬送ローラ32上に位置する匣鉢2を昇降させる。本実施例では、昇降装置57は、リフターであるが、匣鉢2を昇降可能であればよく、例えば、昇降ピンであってもよい。昇降装置57は、上下方向に移動可能に構成されている。昇降装置57が上昇すると、昇降装置57の上端は、搬送ローラ32の間を通過して、昇降装置57の上方に位置する匣鉢2の下面に当接し、匣鉢2を持ち上げる。
【0027】
ここで、段積みされている匣鉢2を段ばらし装置54で段ばらしする動作について説明する。以下では、2つの匣鉢2を区別するために、段積みされている状態において、上に位置するものを匣鉢2cと称し、下に位置するものを匣鉢2dと称する。また、説明を容易にするために、2つの匣鉢2c、2dが段積みされている状態から段ばらしされる例について説明するが、段ばらし装置54は、3つ以上段積みされている匣鉢2を段ばらししてもよい。
【0028】
熱処理炉10から搬出された匣鉢2c、2dは、段積みされた状態で搬送ローラ32によって段ばらし装置54内に搬送される。段積みされた匣鉢2c、2dが把持部56の下方まで搬送されると、昇降装置57が上昇する(図6(a)の状態)。すると、昇降装置57の上端が下段に位置する匣鉢2dの下面に当接し、段積みされた状態の匣鉢2cと匣鉢2dが上昇する(図6(b)の状態)。次いで、把持部56は、上に位置する匣鉢2cを把持する。
【0029】
把持部56が匣鉢2cを把持すると、昇降装置57が下降する。すると、把持部56に把持された匣鉢2cは、把持部56に把持された状態で搬送ローラ32の上方に留まり、把持部56に把持されていない下段の匣鉢2dのみが下降する(図6(c)の状態)。匣鉢2dが搬送ローラ32上に戻されると、匣鉢2dのみを搬送ローラ32によって搬送する。すなわち、匣鉢2dが先に搬送される。次いで、昇降装置57が再び上昇する(図6(d)の状態)。昇降装置57の上端が匣鉢2cの下面に当接すると、把持部56は、匣鉢2cを把持した状態を解除する。次いで、昇降装置57が下降する。匣鉢2cは把持部56に把持されていないため、昇降装置57が下降すると、匣鉢2cも下降する。すると、匣鉢2cは、搬送ローラ32上に載置される(図6(e)の状態)。その後、匣鉢2c、2dは、搬送ローラ32によって匣鉢2d、2cの順で段ばらし装置54外に搬送される。このように、段ばらし装置54は、下に位置していた匣鉢2dを先に搬送し、上に位置していた匣鉢2cが続いて搬送されるように、複数の匣鉢2c、2dを段ばらしする。
【0030】
図1に示すように、回収装置60は、段ばらし装置54と清掃装置44との間に配置されている。図1及び図7に示すように、回収装置60は、分岐部62と、合流部64と、第1回収部66aと、第2回収部66bと、制御装置68を備えている。
【0031】
分岐部62は、回収装置60の上流側に配置されており、循環搬送装置30の搬送経路34を第1搬送経路34aと第2搬送経路34bに分岐させる。また、合流部64は、回収装置60の下流側に配置されており、分岐部62で分岐された第1搬送経路34aと第2搬送経路34bを合流させる。第1搬送経路34a及び第2搬送経路34bは、回収装置60内に設けられている。第1搬送経路34a及び第2搬送経路34bは、分岐部62と合流部64の間に設けられている。
【0032】
図8に示すように、第1搬送経路34aには、複数の搬送ローラ32a(以下、第1搬送経路34aに配置される搬送ローラ32aを「第1搬送ローラ32a」ともいう)が配置されている。第1搬送ローラ32aは、第1回収部66aの上流側と下流側に循環搬送装置30の搬送経路34と平行な方向(図8のX方向)に間隔を空けて配置されており、第1搬送経路34aは、循環搬送装置30の搬送経路34と平行になっている。また、図1に示すように、第1搬送経路34aは、循環搬送装置30の搬送経路34に対して+Y方向にオフセットされている。
【0033】
図8に示すように、第2搬送経路34bには、複数の搬送ローラ32b(以下、第2搬送経路34bに配置される搬送ローラ32bを「第2搬送ローラ32b」ともいう)が配置されている。第2搬送ローラ32bは、第2回収部66bの上流側と下流側に循環搬送装置30の搬送経路34と平行な方向(図8のX方向)に間隔を空けて配置されており、第2搬送経路34bは、循環搬送装置30の搬送経路34と平行になっている。また、図1に示すように、第2搬送経路34bは、循環搬送装置30の搬送経路34に対して+Y方向にオフセットされている。すなわち、第2搬送経路34bは、第1搬送経路34aと平行に配置されており、第1搬送経路34aと第2搬送経路34bは、並列に配置されている。
【0034】
第1回収部66aは、第1搬送経路34a上に配置されており、第2回収部66bは、第2搬送経路34b上に配置されている。上述したように、第1搬送経路34aと第2搬送経路34bは並列に配置されているため、第1回収部66aと第2回収部66bも並列に配置されている。
【0035】
第1回収部66a及び第2回収部66bは、熱処理炉10で熱処理された被処理物(すなわち、粉体)を匣鉢2から回収する装置である。第1回収部66aと第2回収部66bは、同一の構成を有している。なお、第1回収部66a及び第2回収部66bは、匣鉢2から粉体を回収するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、第1回収部66a及び第2回収部66bはそれぞれ、匣鉢2を上下方向に反転させて回収する反転回収部と、匣鉢2の表面に付着した被処理物(本実施例では、粉体)をエアで剥離して回収するエア回収部を備えている。反転回収部は、匣鉢2を上下方向に反転させることによって、匣鉢2内の粉体を回収用容器に移動させる。これにより、匣鉢2内に収容されていた粉体のほぼ全てが回収用容器に移動する。その後、反転回収部は、匣鉢2を再び上下方向に反転させて元の向きに戻す。エア回収部は、反転回収部で匣鉢2内の粉体が回収された後に使用される。エア回収部は、匣鉢2の内表面にエアを吹き付けながら匣鉢2内のエアを吸引する。匣鉢2の内表面にエアを吹き付けることによって、匣鉢2の内表面に付着している粉体が内表面から剥離する。匣鉢2の内表面にエアを吹き付けながら匣鉢2内のエアを吸引すると、匣鉢2の内表面から剥離された粉体がエアと共に吸引される。これにより、匣鉢2の内表面に残留した粉体が回収され、粉体の回収率が上昇する。なお、上記の例では、第1回収部66a及び第2回収部66bはエア回収部を備えていたが、このような構成に限定されない。例えば、匣鉢2の内表面に残留した粉体は、回転ブラシで匣鉢2の内表面から剥離して回収するように構成されていてもよい。
【0036】
図7に示すように、制御装置68は、分岐部62と、合流部64と、第1回収部66aと、第2回収部66bと接続している。制御装置68は、分岐部62と、合流部64と、第1回収部66aと、第2回収部66bの動作を制御している。
【0037】
ここで、回収装置60において匣鉢2内の被処理物を回収する動作について説明する。匣鉢2は、搬送ローラ32によって段ばらし装置54から分岐部62まで搬送される(図1参照)。上述したように、段ばらし装置54は、上下方向に段積みされた匣鉢2を段ばらしする。このため、分岐部62には、段積みされていない匣鉢2が搬送される。制御装置68は、分岐部62に搬送された匣鉢2を、第1搬送経路34a及び第2搬送経路34bのいずれかに搬送させる。例えば、先に搬送されている匣鉢2を第1搬送経路34aに搬送させ、続いて搬送される匣鉢2を第2搬送経路34bに搬送させる。
【0038】
第1搬送経路34aに搬送された匣鉢2が第1搬送ローラ32aによって第1回収部66aまで搬送されると、匣鉢2内に収容されている被処理物が、第1回収部66aで回収される。その後、匣鉢2は、第1搬送ローラ32aによって合流部64まで搬送される。同様に、第2搬送経路34bに搬送された匣鉢2が第2搬送ローラ32bによって第2回収部66bまで搬送されると、匣鉢2内に収容されている被処理物が、第2回収部66bで回収される。その後、匣鉢2は、第2搬送ローラ32bによって合流部64まで搬送される。このように、分岐部62で第1搬送経路34aと第2搬送経路34bに分岐して搬送された2つの匣鉢2は、合流部64で合流する。
【0039】
次いで、制御装置68は、合流部64に搬送された2つの匣鉢2(すなわち、第1搬送経路34aで搬送された匣鉢2と、第2搬送経路34bで搬送された匣鉢2)を、予め設定された順番で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送させる。匣鉢2は、合流部64から循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される順番に応じて、段積み装置50で段積みされる上下方向の順番が決定される。
【0040】
回収装置60から搬出される匣鉢2の順番と、段積み装置50で段積みされる匣鉢2の上下方向の順番との関係についてさらに詳細に説明する。回収装置60から搬出された匣鉢2は、循環搬送装置30の搬送経路34を搬送され、清掃装置44、割れ検知装置46及び供給装置40を介して段積み装置50に搬入される。図5に示すように、段積み装置50では、先に搬送される匣鉢2aが上に位置し、続いて搬送される匣鉢2bが下に位置するように段積みされる。回収装置60では、第1搬送経路34aで搬送された匣鉢2と第2搬送経路34bで搬送された匣鉢2を合流部64で合流させるときに、上に段積みする匣鉢2を先に循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送し、段積みするときに下に位置する匣鉢2を後で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送させる。このように、合流部64で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整することによって、複数の匣鉢2を所望の順番で上下方向に段積みすることができる。
【0041】
例えば、従来の熱処理システムでは、回収装置は、匣鉢2が、回収装置内も循環搬送装置30の搬送経路34上に沿って搬送されるように構成されていた。すなわち、従来の熱処理システムでは、匣鉢2は、回収装置内も直列に搬送されていた。この場合、段積みされた匣鉢2を回収装置に搬入される前に段ばらしし、供給装置から搬出された後で再び段積みするときに、匣鉢2は、先に段積みされていた順番とは逆の順番で段積みされる。すなわち、図6に示すように、段ばらし装置54では、下に位置する匣鉢2dが先に搬送され、上に位置する匣鉢2cが続けて搬送されるように段ばらしされる。匣鉢2d、2cは、回収装置、清掃装置、割れ検知装置及び供給装置を通過し、段積み装置50に搬入される。このとき、段積み装置50には、匣鉢2dが先に搬入され、匣鉢2cが続けて搬入される。図5に示すように、段積み装置50では、先に搬送される匣鉢2d(図5では、匣鉢2a)が上に位置し、続いて搬送される匣鉢2c(図5では、匣鉢2b)が下に位置するように段積みされる。すなわち、匣鉢2c、2dは、段ばらし前の状態(すなわち、図6(a)に示す状態)とは逆の順番で上下方向に段積みされる。
【0042】
本実施例では、合流部64で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整することによって、複数の匣鉢2を所望の順番で上下方向に段積みすることができる。例えば、匣鉢2は、段積みされるときの位置に応じて異なる形状に変化していることがある。具体的には、最上段に位置する匣鉢2は、その上面に蓋を載せることがある。この場合、蓋を載せる匣鉢2が、蓋を載せない(すなわち、上面に他の匣鉢2を載せる)匣鉢2とは異なる形状を有していることがある。また、最上段に位置する匣鉢2の上面に蓋を載せない場合にも、最上段に位置する匣鉢2には、側面に切り欠きが設けられず、下段に位置する匣鉢2には、側面に切り欠きが設けられることがある。切り欠きは、熱処理時に被処理物から発生するガスを抜くために設けられる。最上段に位置する匣鉢2には、蓋が載せられないので上面が開放している。このため、最上段に位置する匣鉢2には切り欠きを設ける必要がない。このように、匣鉢2の種類に応じて段積みされる上下方向の位置が決められていることがあり、各匣鉢2が適切な位置に段積みされるように、各匣鉢2が段積みされる位置を調整する必要が生じる。また、匣鉢2の形状が同一である場合にも、匣鉢2の上下方向の順番を所望の順番に入れ替えることがある。例えば、最下段に位置する匣鉢2は、搬送の際の搬送ローラ32との接触により摩耗するため、上段に位置する匣鉢2より劣化し易い。特定の匣鉢2のみが劣化することを抑制するために、段積みするときに匣鉢2の上下方向の順番を入れ替えることがある。本実施例では、合流部64で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整することによって、匣鉢2が段積みされる上下方向の順番を容易に調整することができる。すなわち、毎回同じ順番で段積みするように容易に調整できると共に、毎回順番を入れ替えて段積みするようにも容易に調整できる。
【0043】
清掃装置44は、回収装置60において被処理物(すなわち、粉体)が回収された後の匣鉢2の内表面を清掃する装置である。なお、清掃装置44は、匣鉢2の内表面を清掃するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、清掃装置44は、回転ブラシを用いて匣鉢2の内表面に付着している物質を剥離させながら、匣鉢2内の空気等を吸引する。吸引した空気等には、剥離された物質が含まれる。清掃装置44で匣鉢2の内表面を清掃することにより、匣鉢2の内表面に残留した粉体等を完全に除去することができる。
【0044】
割れ検知装置46は、匣鉢2の割れを検知することによって、匣鉢2が割れていないか否かを検査するための装置である。匣鉢2は、熱処理炉10において被処理物の熱処理に繰り返し使用される。割れ検知装置46は、匣鉢2が熱処理炉10において被処理物の熱処理に使用された後、再使用する前に割れていないか否かを検査する。なお、割れ検知装置46は、匣鉢2の割れを検知するように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、割れ検知装置46は、レーザを用いて匣鉢2の割れを検出してもよい。また、割れ検知装置46は、匣鉢2にガスを封入し、匣鉢2内の圧力を測定することによって匣鉢2の割れを検出してもよい。匣鉢2の割れが検知された場合、匣鉢2は循環搬送装置30の搬送経路34から取り出される。匣鉢2の割れが検知されなかった場合、匣鉢2は、循環搬送装置30によって供給装置40に搬送される。
【0045】
なお、本実施例では、循環搬送装置30は、搬送ローラ32によって匣鉢2を搬送するローラコンベアであったが、このような構成に限定されない。匣鉢2を熱処理炉10の搬出口から搬出された匣鉢2を、熱処理炉10の搬入口まで搬送するように構成されていればよく、例えば、循環搬送装置は、ベルトによって匣鉢2を搬送するベルトコンベアであってもよい。
【0046】
また、本実施例では、回収装置60の制御装置68が、合流部64から循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整していたが、このような構成に限定されない。例えば、管理装置48が、合流部64から循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整してもよい。
【0047】
また、本実施例では、匣鉢2のみを段積みしていたが、最上段に位置する匣鉢2の上に蓋を載せてもよい。この場合、蓋は、段ばらし装置54で段ばらしされて循環搬送装置30の搬送経路34上に配置され、その後、段ばらしされた匣鉢2と同様の経路で段積み装置50まで搬送され、段積み装置50で最上段に位置する匣鉢2の上に載せられてもよい。また、段ばらし装置54と段積み装置50との間に別の搬送経路を設け、段ばらし装置54で段ばらしされた蓋は、別の搬送経路で段積み装置50まで搬送されてもよい。
【0048】
(実施例2)
上記の実施例では、回収装置60内に、第1搬送経路34a及び第2搬送経路34bが並列に設けられていたが、このような構成に限定されない。段ばらし装置54で段ばらしされた匣鉢2を段積み装置50で段積みする際に、匣鉢2が段積みされる上下方向の順番を容易に調整できればよく、例えば、図9に示すように、供給装置140内に2つの搬送経路が並列に設けられていてもよく、回収装置160内には2つの搬送経路が並列に設けられていなくてもよい。なお、本実施例の熱処理システム200は、供給装置140及び回収装置160が、実施例1の熱処理システム100の供給装置140及び回収装置160と相違しており、その他の構成は略同一である。そこで、実施例1の熱処理システム100と同一の構成については、その説明を省略する。
【0049】
供給装置140は、分岐部162と、合流部164と、第1供給部142aと、第2供給部142bと、制御装置(図示省略)を備えている。分岐部162は、供給装置140の上流側に配置されており、循環搬送装置30の搬送経路34を第1搬送経路134aと第2搬送経路134bに分岐させる。また、合流部164は、供給装置140の下流側に配置されており、分岐部162で分岐された第1搬送経路134aと第2搬送経路134bを合流させる。第1搬送経路134a及び第2搬送経路134bは、供給装置140内に設けられている。第1搬送経路134a及び第2搬送経路134bは、分岐部162と合流部164の間に設けられている。第1供給部142aは、第1搬送経路134a上に配置されており、第2供給部142bは、第2搬送経路134b上に配置されている。なお、分岐部162、合流部164、第1搬送経路134a及び第2搬送経路134bは、上記の実施例1の回収装置60に設けられる分岐部62、合流部64、第1搬送経路34a及び第2搬送経路34bと略同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、第1供給部142a及び第2供給部142bも、上記の実施例1の第1供給部42a及び第2供給部42bと略同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。本実施例では、供給装置140に、第1搬送経路134aと第2搬送経路134bが並列に配置されており、第1供給部142a及び第2供給部142bも並列に配置されている。
【0050】
回収装置160は、第1回収部166aと、第2回収部166bを備えている。第1回収部166a及び第2回収部166bは、循環搬送装置30の搬送経路34上に配置されている。すなわち、第1回収部166aと第2回収部166bは、循環搬送装置30の搬送経路34上に直列に配置されている。なお、第1回収部166a及び第2回収部166bは、上記の実施例1の第1回収部66a及び第2回収部66bと略同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。第1回収部166aと第2回収部166bは同一の構成を有しているため、第1回収部166aと第2回収部166bのいずれか一方において匣鉢2から被処理物が回収され、他方では匣鉢2から被処理物が回収されずに匣鉢2は通過する。
【0051】
本実施例では、回収装置160内に2つの搬送経路が並列に設けられていない代わりに、供給装置140内に2つの搬送経路134a、134bが並列に設けられている。段ばらし装置54で段ばらしされた匣鉢2は、回収装置160、清掃装置44及び割れ検知装置46を直列に搬送され、供給装置140に搬送される。供給装置140では、匣鉢2は、分岐部162で分岐して2つの搬送経路134a、134bのいずれかを並列に搬送され、合流部164において循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される順番が調整される。その後、匣鉢2は、合流部164で調整された順番で段積み装置50に搬入される。このため、本実施例においても、供給装置140に設けられる合流部64で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整することによって、匣鉢2が段積みされる上下方向の順番を容易に調整することができる。
【0052】
(実施例3)
上記の実施例1及び2では、回収装置60、160及び供給装置40、140のいずれか一方のみに、第1搬送経路34a、134a及び第2搬送経路34b、134bが並列に設けられていたが、このような構成に限定されない。例えば、図10に示すように、熱処理システム300では、回収装置260と供給装置240のそれぞれに、2つの搬送経路が並列に設けられていてもよい。なお、回収装置260は、上記の実施例1の回収装置60と略同一の構成であり、供給装置240は、上記の実施例2の供給装置140と略同一の構成である。このため、回収装置260と供給装置240の詳細な説明は省略する。本実施例においても、回収装置260及び供給装置240に設けられる合流部で循環搬送装置30の搬送経路34上に搬送される匣鉢2の搬送順を調整することによって、匣鉢2が段積みされる上下方向の順番を容易に調整することができる。
【0053】
実施例で説明した熱処理システム100、200及び300に関する留意点を述べる。実施例の循環搬送装置30は、「第1搬送装置」及び「第2搬送装置」の一例であり、搬送ローラ32aを用いた搬送機構は、「第1搬送機構」の一例であり、搬送ローラ32bを用いた搬送機構は、「第2搬送機構」の一例であり、第1回収部66a、166a及び第2回収部66b、166bは、「回収部」の一例であり、第1供給部42a、142a及び第2供給部42b、142bは、「供給部」の一例であり、制御装置68は、「調整機構」の一例である。
【0054】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
2:匣鉢
10:熱処理炉
30:循環搬送装置
32、32a、32b:搬送ローラ
36:駆動装置
40、140、240:供給装置
42a、142a:第1供給部
42b、142b:第2供給部
44:清掃装置
46:割れ検知装置
48:管理装置
50:段積み装置
54:段ばらし装置
60、160、260:回収装置
62、162:分岐部
64、164:合流部
66a、166a:第1回収部
66b、166b:第2回収部
68:制御装置
100、200、300:熱処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10