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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】難燃性布帛及びそれを用いた防護服
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/513 20210101AFI20250117BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20250117BHJP
   D03D 15/225 20210101ALI20250117BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
D03D15/513
A41D13/00 102
D03D15/225
D03D15/283
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022551103
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036656
(87)【国際公開番号】W WO2022064703
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大野 重樹
(72)【発明者】
【氏名】大関 達郎
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201063(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111116(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194766(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057973(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03480349(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 15/513
A41D 13/00
D03D 15/225
D03D 15/283
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系繊維、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる一種以上の再生セルロース繊維、及びポリイミド繊維を含む難燃性布帛であり、
前記難燃性布帛は、前記アクリル系繊維を44.5~79重量%、前記再生セルロース繊維を18~48重量%、及び前記ポリイミド繊維を3~8重量%含み、
前記ポリイミド繊維及び前記アクリル系繊維は、いずれも、繊維長は45~127mmであり、
GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mm以下であることを特徴とする難燃性布帛。
【請求項2】
前記難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる一種以上の再生セルロース繊維の繊維長は45~127mmである請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項3】
前記アクリル系繊維は、アクリロニトリルを35~85重量%、ハロゲン含有ビニル単量体及びハロゲン含有ビニリデン単量体からなる群から選ばれる1以上のハロゲン含有単量体15~65重量%、及びスルホン酸基含有ビニル単量体を3重量%以下含むアクリロニトリル系共重合体で構成されている請求項1又は2に記載の難燃性布帛。
【請求項4】
前記アクリル系繊維は、アンチモン化合物を3.9~20重量%含む請求項1~3のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項5】
前記難燃レーヨン繊維は、リン系難燃剤を含む請求項1~4のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項6】
前記難燃性布帛は、前記アクリル系繊維を44.5~79重量%、前記再生セルロース繊維を18~48重量%、及び前記ポリイミド繊維を3~7.5重量%含む請求項1~5のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項7】
前記再生セルロース繊維は、リヨセル繊維である請求項1~6のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項8】
前記アクリル系繊維、前記再生セルロース繊維及び前記ポリイミド繊維は、いずれも、繊維長が45~64mmである請求項1~7のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項9】
前記アクリロニトリル系共重合体はハロゲン含有ビニル単量体を含み、前記再生セルロース繊維は難燃レーヨン繊維を含む請求項に記載の難燃性布帛。
【請求項10】
難燃性布帛は織物である請求項1~9のいずれかに記載の難燃性布帛。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の難燃性布帛を用いたことを特徴とする防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性布帛及びそれを用いた防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石化、石炭鉱山、電力及び溶接などの作業現場では火災などの事故が起きることがあり、金属加工などの作業現場では粉塵爆発などの事故が起きることがあるため、このような作用現場で着用する防護服は、難燃性を有することが求められている。
【0003】
難燃性を有する防護服用布帛として、様々な構成のものが提案されている。例えば、特許文献1には、パラ系アラミド繊維やメタ系アラミド繊維などのアラミド繊維を主体とする布帛が記載されている。しかしながら、アラミド繊維は高価であるため、安全な製品の普及の障害となっている。一方、特許文献2には、モダアクリル繊維、セルロース繊維、及びポリイミド繊維を含む難燃性布帛が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-525520号公報
【文献】中国特許出願公報第105926097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の難燃性布帛の場合、燃焼試験において炭化長が長くなる場合があり、難燃性をさらに向上することが求められている。
【0006】
本発明は、燃焼試験において炭化長が短く、良好な難燃性を有する難燃性布帛及びそれを用いた防護服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル系繊維、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる一種以上の再生セルロース繊維、及びポリイミド繊維を含む難燃性布帛であり、前記難燃性布帛は、アクリル系繊維を26~79重量%、再生セルロース繊維を18~48重量%、及びポリイミド繊維を3~26重量%含み、前記ポリイミド繊維の繊維長は45~127mmであり、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mm以下であることを特徴とする難燃性布帛に関する。
【0008】
本発明は、また、前記の難燃性布帛を用いたことを特徴とする防護服に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、燃焼試験において炭化長が短く、良好な難燃性を有する難燃性布帛及びそれを用いた防護服を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者は、アクリル系繊維、セルロース繊維、及びポリイミド繊維を含む難燃性布帛の難燃性を向上させることについて検討を重ねた。その結果、布帛にアクリル系繊維、難燃レーヨン繊維及び/又はリヨセル繊維、及びポリイミド繊維を所定量含ませるとともに、ポリイミド繊維の繊維長を45~127mmにすることで、驚くことに、該布帛を用いて燃焼試験を行った場合、炭化長が短くなる、具体的には50mm以下になることを見出した。特に、ポリイミド繊維の繊維長を45mm以上にすることで、ポリイミドの含有量が少ない場合でも、燃焼試験における布帛の炭化長が短くなる、具体的には50mm以下になることを見出した。本発明において、「炭化長」は、それぞれ、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験により測定することができる。なお、本発明において、GBは、中国国家標準を意味する。
【0011】
本発明者は、具体的には、アクリル系繊維、難燃レーヨン繊維及び/又はリヨセル繊維、及びポリイミド繊維を含む紡績糸で構成された難燃性布帛において、各繊維の配合量が同様である場合、ポリイミド繊維の繊維長を45~127mmにすることで、燃焼試験において炭化長が格段に短くなり、難燃性が格段に向上することを見出した。従来、難燃性布帛において、難燃性を向上するためには、主に布帛に難燃性を付与する繊維の種類やその配合量などを調整することが行われており、繊維の繊維長が難燃性に影響を及ぼすことを見出したのは画期的なものである。布帛、特に紡績糸を用いた布帛において、ポリイミド繊維の繊維長を所定範囲に調整することで、難燃性を向上させ、燃焼試験において布帛の炭化長を格段に短くしたことは、当業者にとって、予想外の革新的な手段である。
【0012】
前記難燃性布帛は、アクリル系繊維を26~79重量%、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる再生セルロース繊維を18~48重量%、及びポリイミド繊維を3~26重量%含む。コスト及び難燃性の観点から、前記難燃性布帛は、アクリル系繊維を44.5~79重量%、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる再生セルロース繊維を18~48重量%、及びポリイミド繊維を3~7.5重量%含むことが好ましい。
【0013】
前記難燃性布帛は、具体的には、アクリル系繊維を26~79重量%、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる再生セルロース繊維を18~48重量%、及びポリイミド繊維を3~26重量%含む紡績糸で構成することができる。コスト及び難燃性の観点から、前記難燃性布帛は、アクリル系繊維を44.5~79重量%、難燃レーヨン繊維及びリヨセル繊維からなる群から選ばれる再生セルロース繊維を18~48重量%、及びポリイミド繊維を3~7.5重量%含む紡績糸で構成することが好ましい。前記紡績糸は、公知の紡績方法で製造することができる。紡績方法として、特に限定されず、例えば、リング紡績、空気紡績、およびエアジェット紡績等を挙げることができる。
【0014】
前記ポリイミド繊維は、繊維長が45~127mmである。前記ポリイミド繊維の繊維長が45mm以上であれば、、難燃性を向上させ、燃焼試験において布帛の炭化長を格段に短くすることができる。前記ポリイミド繊維の繊維長が127mm以下であれば、汎用の紡績装置で紡績糸を生産することができ、生産性が良好になる。難燃性及び紡績工程の生産性の観点から、前記ポリイミド繊維は、繊維長が45~76mmであることが好ましく、45~64mmであることがより好ましく、45~55mmであることがさらに好ましい。
【0015】
前記ポリイミド繊維は、特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合したポリイミドで構成されたポリイミド繊維を適宜用いることができる。
【0016】
テトラカルボン酸成分としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物として、特に限定されないが、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)などを好適に用いることができる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ジアミン成分としては、例えば、ジイソシアネート化合物、ジアミン化合物などが挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネートなどを好適に用いることができる。ジアミン化合物は、芳香族ジアミン化合物であることが好ましい。芳香族ジアミン化合物として、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-トリジン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンなどを好適に用いることができる。ジアミン成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記難燃性布帛は、特に限定されないが、例えば、難燃性及びコストの観点から、ポリイミド繊維を、3~7.5重量%含むことが好ましく、4~7重量%含むことがより好ましく、4.5~6.5重量%含むことがさらに好ましく、5~6.5重量%含むことが特に好ましい。
【0019】
前記ポリイミド繊維としては、例えば、China Jiangsu Aoshen Hi-Tech Materials Co., LTD製のASPI(登録商標)ポリイミド繊維などの市販品を用いてもよい。
【0020】
前記アクリル系繊維は、35~85重量%のアクリロニトリルと、15~65重量%の他の成分とを共重合したアクリロニトリル系共重合体で構成されることが好ましい。他の成分としては、難燃性の観点から、例えば、ハロゲン含有ビニル単量体及びハロゲン含有ビニリデン単量体からなる群から選ばれる1以上を用いることが好ましい。前記アクリロニトリル系共重合体におけるアクリロニトリルの含有量は35~65重量%であることがより好ましい。前記アクリロニトリル系共重合体におけるハロゲン含有ビニル単量体及び/又はハロゲン含有ビニリデン単量体の含有量は35~65重量%であることがより好ましい。前記アクリロニトリル系共重合体は、さらにスルホン酸基を含有する単量体を含んでもよい。前記アクリロニトリル系共重合体におけるスルホン酸基を含有する単量体の含有量は0~3重量%であることが好ましい。
【0021】
前記アクリロニトリル系共重合体は、アクリロニトリルを35~85重量%、ハロゲン含有ビニル単量体及びハロゲン含有ビニリデン単量体からなる群から選ばれる1以上のハロゲン含有単量体を15~65重量%、スルホン酸基を含有する単量体を0~3重量%含むことが好ましく、アクリロニトリルを40~75重量%、ハロゲン含有ビニル単量体及びハロゲン含有ビニリデン単量体からなる群から選ばれる1以上のハロゲン含有単量体を24.5~60重量%、スルホン酸基を含有する単量体を0.5~3重量%含むことがより好ましい。
【0022】
前記アクリロニトリル系共重合体中のアクリロニトリルの含有量が35~85重量%であれば、アクリル系繊維の繊維物性が良好になり、ひいてはそれを含む難燃性布帛の物性も良好になる。
【0023】
前記アクリロニトリル系共重合体中のハロゲン含有ビニル単量体及び/又はハロゲン含有ビニリデン単量体の含有量が15~65重量%であれば、アクリル系繊維の難燃性が良好になり、ひいてはそれを含む難燃性布帛の難燃性も良好になる。
【0024】
前記ハロゲン含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、臭化ビニルなどが挙げられる。前記ハロゲン含有ビニリデン単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどが挙げられる。これらのハロゲン含有ビニル及びハロゲン含有ビニリデン単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
前記スルホン酸基を含有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの塩などが挙げられる。前記において、塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのスルホン酸基を含有する単量体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルホン酸基を含有する単量体は必要に応じて使用されるが、前記アクリロニトリル系共重合体中のスルホン酸基を含有する単量体の含有量が3重量%以下であれば紡糸工程の生産安定性に優れる。
【0026】
前記アクリル系繊維はアンチモン化合物を含有することが好ましい。前記アクリル系繊維におけるアンチモン化合物の含有量は、繊維全体重量に対して3.9~20重量%であり、好ましくは4.2~18重量%であり、より好ましくは4.5~16重量%であり、さらに好ましくは4.7~14重量%である。アンチモン化合物の含有量が上述した範囲であると、燃焼試験における炭化長がより短くなりやすい上、残燼時間も短くなる。
【0027】
前記アンチモン化合物は、特に限定されないが、紡糸工程の生産安定性の面から、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン及び五酸化アンチモンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0028】
前記アクリル系繊維として、例えば、強度及び紡糸工程の生産性の観点から、繊維長が30~127mmの短繊維を適宜用いることができ、45~127mmであることが好ましく、45~76mmであることがより好ましく、45~64mmであることがさらに好ましい。前記アクリル系繊維は、ポリイミド繊維とほぼ同等の繊維長を有することが好ましい。これにより、紡績性を向上させて強度などの糸質を高めることができ、ひいては難燃性布帛の物性も向上し得る。
【0029】
前記難燃性布帛は、難燃性及び耐熱性の観点から、前記アクリル系繊維を44.5~65重量%含むことが好ましく、より好ましくは50~65重量%含み、さらに好ましくは50~60重量%含む。
【0030】
前記難燃レーヨン繊維は、リン系難燃剤を含有するレーヨン繊維であることが好ましい。前記リン系難燃剤は、特に限定されず、リン酸エステル系化合物、ハロゲンリン酸エステル系化合物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸塩系化合物、ポリリン酸エステル系化合物などが挙げられる。前記リン系難燃剤を含有する難燃レーヨン繊維は、特に限定されないが、例えば、繊維の全体重量に対して前記リン系難燃剤を0.5重量%以上含むことが好ましく、0.8重量%以上含むことがより好ましい。前記リン系難燃剤を含有する難燃レーヨン繊維としては、例えば、Lenzing社製の難燃レーヨン「Lenzing FR(登録商標)」、吉林化繊社製の難燃レーヨン「JWELL FR(商標)」などの市販のものを用いてもよい。
【0031】
前記難燃性布帛は、布帛全体重量に対して、リンを0.3重量%以上含み、好ましくは0.4重量%以上含み、より好ましくは0.5重量%以上含む。前記難燃性布帛におけるリンの含有量が0.3重量%以上であると、炭化長がより短くなりやすく、難燃性がより向上する。なお、前記難燃性布帛におけるリンの含有量の上限は特に限定されないが、難燃性布帛の炭化長をより短くする観点から、布帛全体重量に対して、リンを1.1重量%以下含むことが好ましい。前記難燃性布帛において、リンの含有量は、蛍光X線分析方法で測定することができる。
【0032】
前記難燃性布帛は、難燃性をより向上させる観点から、アクリロニトリルとハロゲン化ビニル単量体を共重合したアクリロニトリル系共重合体で構成されているアクリル系繊維を含む場合は、前記再生セルロース繊維として難燃レーヨン繊維を含むことが好ましい。
【0033】
前記難燃性布帛は、前記ポリイミド繊維及び前記アクリル系繊維に加えて前記再生セルロース繊維を含むことで、難燃性が向上しつつ、優れた風合いや吸湿性を与えることができる。
【0034】
前記難燃性布帛は、難燃性及び風合いの観点から、前記再生セルロース繊維を18~45重量%含むことが好ましく、より好ましくは20~40重量%含む。
【0035】
前記難燃レーヨン繊維及び前記リヨセル繊維として、例えば、強度及び紡績工程の生産性の観点から、繊維長が30~127mmの短繊維を適宜用いることができ、45~127mmであることが好ましく45~76mmであることがより好ましく、45~64mmであることがさらに好ましい。前記難燃レーヨン繊維及び前記リヨセル繊維は、ポリイミド繊維とほぼ同等の繊維長を有することが好ましい。これにより、紡績性を向上させて強度などの糸質を高めることができ、ひいては難燃性布帛の物性も向上し得る。前記アクリル系繊維、前記難燃レーヨン繊維及び前記リヨセル繊維が、ポリイミド繊維とほぼ同等の繊維長を有することが特に好ましい。
【0036】
前記難燃性布帛は、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、例えば、導電性繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。前記難燃性布帛は、他の繊維を5重量%以下含んでもよく、3重量%以下含んでもよく、1重量%以下含んでもよい。
【0037】
前記他の繊維は、例えば、強度及び紡績工程の生産性の観点から、繊維長が30~127mmの短繊維を適宜用いることができ、紡績工程における生産性の観点から、45~127mmであることが好ましく45~76mmであることがより好ましく、45~64mmであることがさらに好ましい。前記他の繊維は、ポリイミド繊維とほぼ同等の繊維長を有することが好ましい。これにより、紡績性を向上させて強度などの糸質を高めることができ、ひいては難燃性布帛の物性も向上し得る。紡績糸を構成するすべての繊維がポリイミド繊維とほぼ同等の繊維長を有することが特に好ましい。
【0038】
前記難燃性布帛において、強度の観点から、前記アクリル系繊維、前記難燃レーヨン繊維、前記リヨセル繊維及び前記他の繊維の単繊維繊度は、いずれも、好ましくは1~20dtexであり、より好ましくは1.5~15dtexである。
【0039】
前記難燃性布帛は、特に限定されないが、柔軟性及び触感の観点から、目付が100~500g/m2であることが好ましく、より好ましくは130~480g/m2であり、さらに好ましくは150~460g/m2である。
【0040】
前記難燃性布帛の形態としては、特に限定されず、例えば織物及び編物などが挙げられる。耐久性や難燃性の観点から、織物であることが好ましい。前記織物の組織については、特に限定されず、平織、綾織、朱子織などの三原組織でもよく、ドビーやジャガードなどの特殊織機を用いた柄織物でもよい。
【0041】
前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mm以下である。炭化長が50mm以下であれば、GB8965.1-2009に規定の「難燃防護服」の炭化長のA級基準を満たすことになる。好ましくは、前記難燃性布帛は、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mm以下である。
【0042】
また、前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した残燼時間が2.0秒以下であることが好ましい。より好ましくは、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した残燼時間が2.0秒以下である。残燼時間が2.0秒以下であれば、GB8965.1-2009に規定の「難燃防護服」の残燼時間のA級又はB級基準を満たすことになる。前記難燃性布帛は、炭化長が50mm以下であり、且つ、残燼時間が2.0秒以下であることがさらに好ましく、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、炭化長が50mm以下であり、且つ、残燼時間が2.0秒以下であることが特に好ましい。
【0043】
また、前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した残炎時間が2.0秒以下であることが好ましい。より好ましくは、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した残炎時間が2.0秒以下である。残炎時間が2.0秒以下であれば、GB8965.1-2009に規定の「難燃防護服」の残炎時間のA級又はB級基準を満たすことになる。
【0044】
本発明の難燃性布帛は、難燃性が求められる防護服用布帛として好適に用いることができ、該難燃性布帛を用いた難燃性に優れる防護服を安価に提供することができる。本発明の防護服は、前記の難燃性布帛を用い、公知の縫製方法により製造することができる。前記難燃性布帛が優れた難燃性を有するため、本発明の防護服も、難燃性に優れる。また、前記難燃性布帛が繰り返し洗濯した後においても優れた難燃性を有するため、前記防護服は、洗濯を繰り返しても、その難燃性が維持される。本発明の防護服は、難燃性が求められるあらゆる作業時の防護服として用いることができる。例えば、特に限定されないが、石油、石化、石炭鉱山、電力及び溶接などの火災が起こり得る作業現場で着用する防護服、並びに金属加工などの粉塵爆発が想定される作業現場で着用する防護服として使用することができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例において下記の繊維を用いた。
<繊維>
アクリル系繊維Iとして、アクリロニトリル49.5重量%と塩化ビニル49.5重量%及びスチレンスルホン酸ナトリウム1.0重量%からなるアクリル系共重合体で構成され、繊維全体重量に対して三酸化アンチモンを9.1重量%含有するアクリル系繊維を用いた。
アクリル系繊維I:繊度1.7dtex、繊維長51mm
難燃レーヨン繊維:レンチング社製の「LenzingFR」、リン系難燃剤含有、繊度2.2dtex、繊維長51mm
リヨセル繊維:レンチング社製の「Tencel(登録商標)」、繊度1.3dtex、繊維長51mm
ポリイミド繊維I:China Jiangsu Aoshen Hi-Tech Materials Co., LTD製「ASPI(登録商標)」、繊度1.67dtex、繊維長51mm
ポリイミド繊維II:China Jiangsu Aoshen Hi-Tech Materials Co., LTD製「ASPI(登録商標)」、繊度1.67dtex、繊維長38mm
【0047】
(実施例1~3、比較例1~3)
下記表1に示した配合量で上述したアクリル系繊維、難燃レーヨン繊維、リヨセル繊維及びポリイミド繊維を混合し、下記表1に示す綿番手の紡績糸を製造した。これらの紡績糸をタテ糸及びヨコ糸として用いて、通常の製造方法により、2/1綾組織の織物を作製した。打ち込み本数は、下記表1に示すとおりとした。
【0048】
実施例1~3、比較例1~3で得られた布帛の難燃性を下記のとおりに測定評価し、その結果を下記表1に示した。
【0049】
(難燃性)
GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験を行い、布帛の炭化長(炭化部分の長さ)、残炎時間及び残燼時間を測定した。なお、実施例1~3及び比較例1~3の布帛の燃焼性試験は、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯した布帛を用いて行った。
【0050】


【表1】
【0051】
上記表1の結果から分かるように、実施例1~3の布帛は、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mm以下であり、難燃性に優れていた。一方、繊維長が45mm未満のポリイミド繊維を用いた比較例1~3の布帛は、GB/T 5455-1997に基づいた燃焼性試験によって測定した炭化長が50mmを超えており、難燃性が劣っていた。