(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電池、電気設備、電池の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20250117BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20250117BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20250117BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/209
H01M10/04 W
H01M50/103
H01M50/242
H01M50/271 S
(21)【出願番号】P 2022551538
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(86)【国際出願番号】 CN2021142273
(87)【国際公開番号】W WO2023123006
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲ゆう▼
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬
(72)【発明者】
【氏名】呉 夏逸
(72)【発明者】
【氏名】李 振華
(72)【発明者】
【氏名】李 星
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/196796(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111106279(CN,A)
【文献】特開2015-011919(JP,A)
【文献】特開2009-187781(JP,A)
【文献】国際公開第2021/098466(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209344217(CN,U)
【文献】中国実用新案第212725451(CN,U)
【文献】特開2014-072055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面に平行に設置されている複数の電池セル(5)と、
拘束部材(7)であって、前記複数の電池セル(5)を収容および拘束し、前記拘束部材(7)の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セル(5)の外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材(7)の拘束力を高めるように、前記拘束部材(7)の強度を増強するための補強部(71)が設けられる拘束部材(7)と、
を備え、
前記補強部(71)は、隣接する2つの前記電池セル(5)の間の領域(R
1)および/または前記電池セル(5)と前記拘束部材(7)との間の領域(R
2)に対応して設置され
、
前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部(71)は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、
前記拘束部材(7)は、前記電池セル(5)から離れる方向へ突出して前記補強部(71)を形成し、
前記拘束部材(7)の前記電池セル(5)に近い表面の、前記補強部(71)の反対側の領域には、凹溝(74)が形成される、電池。
【請求項2】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面に平行に設置されている複数の電池セル(5)と、
拘束部材(7)であって、前記複数の電池セル(5)を収容および拘束し、前記拘束部材(7)の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セル(5)の外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材(7)の拘束力を高めるように、前記拘束部材(7)の強度を増強するための補強部(71)が設けられる拘束部材(7)と、
を備え、
前記補強部(71)は、隣接する2つの前記電池セル(5)の間の領域(R
1)および/または前記電池セル(5)と前記拘束部材(7)との間の領域(R
2)に対応して設置され
、
前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部(71)は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、
前記補強部(71)は、第1補強部(71a)を含み、
前記電池セル(5)は、エンドカバー(51)およびハウジング(52)を含み、
前記エンドカバー(51)が水平面に垂直に設置され、前記ハウジング(52)の、前記エンドカバー(51)から離れる底部に、R面取りが設けられ、
前記第1補強部(71a)は、隣接する2つの前記電池セル(5)の隣接する前記R面取りを垂直方向に沿って覆う、電池。
【請求項3】
前記ハウジング(52)は、水平面に垂直の第1壁(521a)を含み、
前記第1補強部(71a)の縁部と前記第1壁(521a)との間の水平距離(L)は5mm以下である
請求項
2に記載の電池。
【請求項4】
前記補強部(71)は、第1補強部(71a)を含み、前記第1補強部(71a)は、隣接する2つの前記電池セル(5)の間の領域を垂直方向に沿って覆う、請求項1~
3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記拘束部材(7)は、
少なくとも一部が前記複数の電池セル(5)の頂部に設置されている上蓋(72)と、
少なくとも一部が前記複数の電池セル(5)の底部に設置されている下筐体(73)と、を備え、
前記上蓋(72)の、前記複数の電池セル(5)の頂部に設置される部分、および/または前記下筐体(73)の、前記複数の電池セル(5)の底部に設置される部分に、前記補強部(71)が設置される
請求項1
~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記電池は、さらに上筐体(21)を備え、前記上筐体(21)と前記下筐体(73)はその内部を密封するように合体する、請求項
5に記載の電池。
【請求項7】
前記下筐体(73)にはさらに固定梁(22)が設けられ、
前記上蓋(72)は、前記複数の電池セル(5)が前記上蓋(72)と前記下筐体(73)との間に拘束されるように、前記固定梁(22)に固定される、請求項
5または6に記載の電池。
【請求項8】
前記上蓋(72)および前記下筐体(73)のそれぞれに前記補強部(71)が設置され、前記上蓋(72)の前記補強部(71)の形成位置は、垂直方向において前記下筐体(73)の前記補強部(71)の形成位置と対応しており、
前記上蓋(7
2)の前記補強部(71)と前記下筐体(73)の前記補強部(71)とを接続するように、前記上蓋(72)の前記補強部(71)と前記下筐体(73)の前記補強部(71)との間の領域に接着剤(8)が充填される
請求項
5~7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記電池セル(5)は、エンドカバー(51)およびハウジング(52)を備え、
前記エンドカバー(51)は水平面に垂直に設置され、前記ハウジング(52)の前記エンドカバー(51)から離れる底部にR面取りが設けられ、
前記接着剤(8)は
前記R面取りを覆っている
請求項
8に記載の電池。
【請求項10】
前記補強部(71)は前記拘束部材(7)と一体
の成形
体である、請求項1
~9のいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記電池セル(5)は、電極ユニット(53)を含み、前記電極ユニット(53)は、第1極板(531)および第2極板(532)を含み、
前記第1極板(531)および前記第2極板(532)は、水平面と平行な巻軸線の周りに巻き付けられて巻構造が形成され、または、
前記電極ユニット(53)は、複数の前記第1極板(531)および複数の前記第2極板(532)を含み、前記複数の第1極板(531)および前記複数の第2極板(53
2)は垂直方向に沿って互いに積み重ねられ、または、
前記電極ユニット(53)は、複数の前記第2極板(532)を含み、前記第1極板(531)は、積み重ねられた複数の重ねセグメント(531a)および複数の折り曲げセグメント(531b)を含み、各折り曲げセグメント(531b)で隣接する2つの重ねセグメント(531a)を接続し、前記複数の重ねセグメント(531a)および前記複数の第2極板(532)は、垂直方向に沿って互いに積み重ねられる
請求項1~
10のいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
請求項1~1
1のいずれか1項に記載の電池(2)を備え、前記電池(2)は電気エネルギーを提供する、電気設備。
【請求項13】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供することと、
拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられ、前記補強部は、隣接する2つの前記電池セルの間の領域
(R
1
)および/または前記電池セルと前記拘束部材との間の領域
(R
2
)に対応して設置され
、前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、前記拘束部材は、前記電池セルから離れる方向へ突出して前記補強部を形成し、前記拘束部材の前記電池セルに近い表面の、前記補強部の反対側の領域には、凹溝が形成される拘束部材を提供することと、
前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束することと
を含む電池の製造方法。
【請求項14】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セル
であって、前記電池セルは、エンドカバーおよびハウジングを含み、前記エンドカバーが水平面に垂直に設置され、前記ハウジングの、前記エンドカバーから離れる底部に、R面取りが設けられた前記電池セルを提供することと、
拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられ、前記補強部は、隣接する2つの前記電池セルの間の領域
(R
1
)および/または前記電池セルと前記拘束部材との間の領域
(R
2
)に対応して設置され
、前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、前記補強部は、第1補強部を含み、前記第1補強部は、隣接する2つの前記電池セルの隣接する前記R面取りを垂直方向に沿って覆う拘束部材を提供することと、
前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束することと
を含む電池の製造方法。
【請求項15】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供するように構成される第1提供装置(11)と、
拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられ、前記補強部は、隣接する2つの前記電池セルの間の領域
(R
1
)および/または前記電池セルと前記拘束部材との間の領域
(R
2
)に対応して設置され
、前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、前記拘束部材は、前記電池セルから離れる方向へ突出して前記補強部を形成し、前記拘束部材の前記電池セルに近い表面の、前記補強部の反対側の領域には、凹溝が形成される拘束部材を提供するように構成される第2提供装置(12)と、
前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束するように構成される組立装置(13)と、
を備える電池の製造装置。
【請求項16】
外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セル
であって、前記電池セルは、エンドカバーおよびハウジングを含み、前記エンドカバーが水平面に垂直に設置され、前記ハウジングの、前記エンドカバーから離れる底部に、R面取りが設けられた前記電池セルを提供するように構成される第1提供装置(11)と、
拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、前記最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられ、前記補強部は、隣接する2つの前記電池セルの間の領域
(R
1
)および/または前記電池セルと前記拘束部材との間の領域
(R
2
)に対応して設置され
、前記領域(R
2
)に対応して設置される前記補強部は、前記平行な部分の外縁に対応して設置されており、前記補強部は、第1補強部を含み、前記第1補強部は、隣接する2つの前記電池セルの隣接する前記R面取りを垂直方向に沿って覆う拘束部材を提供するように構成される第2提供装置(12)と、
前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束するように構成される組立装置(13)と、
を備える電池の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は、電池の技術分野に属し、特に、電池、電気設備、電池の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度、長寿命、エコロジーなどのメリットを有するため、近年、コンピューター、携帯電話などの電子製品、及び新エネルギー自動車の動力電池システムに広く応用されている。
【0003】
電池の使用過程は、電池セルの複数回の充放電サイクル過程である。電池セルの充放電サイクル過程で、電池セルの電極ユニットにおける正極板および負極板は、活物質の構造変化や副反応が発生すると、電池セルの周期的な膨張を引き起こすことがある。電池の寿命が長くなることにより、周期的な膨張による膨張力が徐々に大きくなる傾向が見られる。電池セルの膨張と変形が大きくなりすぎると、電池が過大な応力で故障してしまい、サイクル中の電池セルの性能に影響を与える。したがって、如何に電池セルの変形を拘束するかが、解決すべき技術的な課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施形態は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、電池セルに対する拘束力を高め、電池セルの過大な膨張および変形を回避することができ、電池セルの膨張による電池の他の構造部品を押圧することで発生する電池故障の可能性を低減することができる電池、電気設備、電池の製造方法および製造装置を提供する。
【0005】
本出願の実施形態の第1の態様は、電池を提供し、前記電池は、外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルと、拘束部材であって、前記複数の電池セルを収容および拘束し、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられる拘束部材と、を備える。
【0006】
本出願の実施形態では、電池内の電池セルは、平置き配置で筐体内に設置され、すなわち、電池内の電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行するよう設置される。拘束部材で電池の電池セルを収容して拘束し、拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行する部分に補強部を設け、補強部により拘束部材の強度を増強することで、複数の電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁に対する拘束部材の拘束力を高め、電池セルの外壁のうちの、最大面積を有する壁による電池セルの過大な変形の発生を回避することができる。これによって、電池セルの膨張により電池の他の構造部品を押圧することにより引き起こされる電池の故障率を低減でき、サイクル中の電池性能を保証できる。したがって、拘束部材全体の厚さを増加する必要がなく、電池のエネルギー密度を可能な限り確保することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記補強部は、隣接する2つの前記電池セルの間の領域および/または前記電池セルと前記拘束部材との間の領域に対応して設置される。
【0008】
補強部を、隣接する2つの電池セルの間の領域および/または電池セルと拘束部材との間の領域に対応して設置することによれば、補強部を他の領域に配置する方法に比べて、補強部での拘束部材の構造強度が増強され、電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁の周囲を固定することができ、電池セルに対する拘束力を高めることができる。これによって、電池セルに同じ膨張力が作用したときの膨張変形量を減らすことができるとともに、電池の故障をより効果的に防止でき、電池の性能をより確実に保証することができる。また、上記領域は、電池セルの縁部であり、膨張変形が最も小さい箇所である。上記の領域での補強部の設置は、電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁の膨張空間を占有しないので、電池セルの膨張隙間に影響を及ぼさず、電池の性能をさらに確保できる。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記拘束部材は、少なくとも一部が前記複数の電池セルの頂部に設置されている上蓋と、少なくとも一部が前記複数の電池セルの底部に設置されている下筐体と、を備え、前記上蓋の、前記複数の電池セルの頂部に設置される部分、および/または前記下筐体の、前記複数の電池セルの底部に設置される部分に、前記補強部が設置される。
【0010】
拘束部材は、上蓋および下筐体を備えるように構成され、上蓋の少なくとも一部が、複数の電池セルの頂部に設置され、下筐体の少なくとも一部が、複数の電池セルの底部に設置され、上蓋の前記複数の電池セルの頂部に設置されている部分および/または下筐体の前記複数の電池セルの底部に設置されている部分に、補強部が設置されるので、拘束部が容易に組み立てられ、実際の必要に応じて柔軟に補強部を設置することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記補強部は、前記拘束部材と一体成形されている。
【0012】
補強部と拘束部材を一体成形することにより、両者の結合度合いを向上させることができ、拘束部材の強度に対する補強部の補強効果を高めることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記拘束部材は、前記電池セルから離れる方向へ突出して前記補強部を形成し、前記拘束部材の前記電池セルに近い表面の、補強部の反対側の領域には、凹溝が形成される。
【0014】
拘束部材が電池セルから離れる方向へ突出するように補強部を有することで、加工に便利であり、コストを低くすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記上蓋および前記下筐体のそれぞれに前記補強部が設置され、前記上蓋の前記補強部の形成位置は、垂直方向において前記下筐体の前記補強部の形成位置と対応しており、前記上蓋の前記補強部と前記下筐体の前記補強部とを接続するように、前記上蓋の前記補強部と前記下筐体の前記補強部との間の領域に接着剤が充填される。
【0016】
上蓋の補強部の形成位置と下筐体の補強部の形成位置とが垂直方向に対応するように設定され、上蓋の補強部と下筐体の補強部との間の領域に接着剤が充填され、接着剤で上蓋の補強部と下筐体の補強部が接続されることによって、拘束部材全体の強度をさらに向上させることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記電池セルは、エンドカバーおよびハウジングを備え、前記エンドカバーは水平面に垂直に設置され、前記ハウジングの前記エンドカバーから離れる底部にR面取りが設けられ、前記接着剤はR面取りを覆っている。
【0018】
接着剤でR面取りを覆うことにより、隣接する2列の電池セル群の間または隣接する2行の電池セル群の間で、接着剤により形成される釘状構造が形成される。これによって、拘束部材の構成強度、および拘束部材と電池セルとの結合強度を向上することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記補強部は、第1補強部を含み、前記第1補強部は、隣接する2つの電池セルの間の領域を垂直方向に沿って覆う。
【0020】
第1補強部は、隣接する2つの電池セルの間の領域を垂直方向に沿って覆う。この領域は、電池セルと上蓋と下筐体との接着位置である。第1補強部がこの領域に設置され、且つ隣接する2つの電池セルの間の領域を覆うようにすることで、接着剤の脱離を低減でき、電池全体の構造強度を増強することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記電池セルは、エンドカバーおよびハウジングを含み、前記エンドカバーは水平面に垂直に設置され、前記ハウジングの、前記エンドカバーから離れる底部には、R面取りが設けられ、前記第1補強部は、隣接する2つの前記電池セルの隣接するR面取りを垂直方向に沿って覆う。
【0022】
第1補強部は、隣接する2つの電池セルの隣接するR面取りを垂直方向に沿って覆う。この領域は、電池セルと上蓋と下筐体との接着位置である。第1補強部がこの領域に設置されることで、接着剤の脱離を低減でき、電池全体の構造強度を増強することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記ハウジングは、水平面に垂直の第1壁を含み、前記第1補強部の縁部と前記第1壁との間の水平距離は5mm以下である。
【0024】
第1補強部の縁部と第1壁との間の水平距離が5mm以下であるため、第1補強部が過大に電池セルの第1側壁を覆わず、電池セルの側壁のうちの最大面積を有する壁の膨張空間を確保でき、電池の性能をさらに保証することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記電池セルは、電極ユニットを含み、前記電極ユニットは、第1極板および第2極板を含み、前記第1極板および前記第2極板は、水平面と平行な巻軸線の周りに巻き付けられて巻構造が形成され、または、前記電極ユニットは、前記複数の第1極板および前記複数の第2極板を含み、前記複数の第1極板および前記複数の第2極板は垂直方向に沿って互いに積み重ねられ、または、前記電極ユニットは、前記複数の第2極板を含み、第1極板は、積み重ねられた複数の重ねセグメントおよび複数の折り曲げセグメントを含み、各折り曲げセグメントで隣接する2つの重ねセグメントを接続し、前記複数の重ねセグメントおよび前記複数の第2極板は、垂直方向に沿って互いに積み重ねられる。
【0026】
上記により得られた電池セルは、電池セルの主な膨張方向が垂直方向である。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記電池は、さらに上筐体を備え、前記上筐体と前記下筐体はその内部を密封するように合体する。
【0028】
上筐体を設置することにより、上筐体と下筐体が密封状態で合体することができ、電池セルを保護しながら収容することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記下筐体にはさらに固定梁が設けられ、前記上蓋は、前記複数の電池セルが前記上蓋と前記下筐体との間に拘束されるように、前記固定梁に固定される。
【0030】
固定梁を設置し、上蓋を固定梁に固定することにより、上蓋を固定することができるとともに、拘束部材の強度を高め、電池セルに対する拘束部材の拘束力を向上させることができる。
【0031】
本出願の実施形態の第2の態様は、電気設備を提供し、前記電気設備は、上記の実施形態の電池を含み、前記電池は電気エネルギーを提供する。
【0032】
本出願の実施形態の第3の態様は、電池の製造方法を提供し、前記電池の製造方法は、外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供することと、拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられる拘束部材を提供することと、前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束することと、を含む。
【0033】
本出願の実施形態の第4の態様は、電池の製造装置を提供し、前記電池の製造装置は、外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供するように構成される第1提供装置と、拘束部材であって、前記拘束部材の、前記最大面積を有する壁と平行な部分に、前記複数の電池セルの外壁のうちの、最大面積を有する壁に対する前記拘束部材の拘束力を高めるように、前記拘束部材の強度を増強するための補強部が設けられる拘束部材を提供するように構成される第2提供装置と、前記拘束部材内に前記複数の電池セルを収容し、前記拘束部材で前記複数の電池セルを拘束するように構成される組立装置と、を備える。
【0034】
上記の説明は、本出願の技術案の概要に過ぎず、本出願の技術的手段をより明確に理解させるために、明細書の内容に基づいて実施することが可能である。また、本出願の上記および他の目的、特徴および利点を、より明瞭にするために、以下、本出願の具体的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図面を参照しながら、本出願の例示的な実施形態の特徴、利点および技術的効果を説明する。
【0036】
【
図1】
図1は、筐体内の電池セルの異なる配置の模式図である。
【
図2】
図2は、本出願のいくつかの実施形態による車両の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本出願のいくつかの実施形態による電池の分解模式図である。
【
図4】
図4は、本出願のいくつかの実施形態による電池の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本出願のいくつかの実施形態による電池の平面構成を示す図である。
【
図7】
図7の(a)は、
図5の
B-
B方向の断面図である。
図7の(b)は、
図5の
A-
A方向の断面図である。
【
図9】
図9は、本出願のいくつかの実施形態による電池の構成を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本出願のいくつかの実施形態による電池の上蓋の構成を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本出願のいくつかの実施形態による電池の下筐体の構成を示す模式図である。
【
図12】
図12は、本出願の実施形態による電池内の電池セルの電極ユニットの断面を示す模式図である。
【
図13】
図13は、本出願のいくつかの実施形態による電池の分解構成図である。
【
図14】
図14は、本出願のいくつかの実施形態による電池の製造方法を模式的に示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、本出願のいくつかの実施形態による電池の製造装置の構成を示す模式図である。
【0037】
各図面は、必ずしも実際の縮尺で描かれているわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願の実施形態の目的、技術案及び利点をより明瞭にするため、以下、本出願の実施形態の図面を参照しながら、本出願の実施形態の技術案を明瞭に説明する。当然のことながら、説明する実施形態は、本出願の一部の実施形態にすぎず、全ての実施形態ではない。本出願の実施形態をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得ることができる他の実施形態は、すべて本出願の保護範囲に属する。
【0039】
本出願の実施形態の目的、技術案及び利点をより明瞭にするため、以下、本出願の実施形態の図面を参照しながら、本出願の実施形態の技術案を明瞭且つ完全に説明する。説明する実施形態は、本出願の一部の実施形態にすぎず、全ての実施形態ではないことが無論である。本出願の実施形態をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得た全ての他の実施形態も、本出願の保護範囲に属する。
【0040】
別段に定義されない限り、本出願の実施形態で用いるすべての技術的および科学的用語は、本出願の実施形態が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することに留意すべきである。
【0041】
本出願の実施形態の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」等の用語で表された方向又は位置関係は、図面に基づくものであり、本出願の実施形態を便宜的に及び簡略に説明するためのものにすぎず、該当装置又は要素が、必ずしも特定の方向を有したり、特定の方向に構成されたり、操作されたりすることを明示又は暗示するものではないため、それらは本出願の実施形態を限定するものではないと理解すべきである。
【0042】
また、用語「第1」及び「第2」は、説明するためのものにすぎず、相対的な重要性を明示又は暗示したり、技術的特徴の数を暗示したり、特定の順序や従属関係を表したり、するものではない。
【0043】
本明細書に使用される用語「及び/又は」は、関連する対象の関連関係を説明するためのものに過ぎず、3つの関係が存在できることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在することの3つの状態を示すことができる。また、本明細書の文字「/」は一般的に前後の関連する対象が「又は」の関係であることを示す。
【0044】
本出願において、「複数」は、2つ以上(2つを含む)であることを意味し、同様に、「複数群」は、2群以上(2群を含む)であることを意味する。
【0045】
本出願の実施形態の説明において、明確な定義や限定がない限り、「取付」、「連係」、「接続」、「固定」などの用語は、広義に理解すべきである。例えば、固定接続でもよいし、取外し可能な接続でもよいし、一体的な接続でもよい。そして、機械的な接続でもよいし、電気的な接続でもよい。また、直接接続してもよいし、中間物を介して間接的に接続してもよいし、2つの要素の内部が連通し又は2つの要素が相互に作用してもよい。当業者は、本出願の実施形態における上記用語の具体的な意味を、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0046】
本明細書で言及する「実施形態」は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が本出願の少なくとも一実施形態に含まれ得ることを意味する。明細書における様々な部分で使用されるこの表現は、全てが同じ実施形態を参照しているのではなく、他の実施形態を互いに除いた別個のまたは代替的な実施形態でもない。本明細書に記載された実施形態は、他の実施形態と組み合わせてもよいことは、当業者が理解できることである。
【0047】
本技術分野で言及されている電池は、充電可能かどうかによって一次電池と充電式電池に分けることができる。一次電池は、電力が枯渇した後は使用できないため、「使い捨て」電池およびプライマリバッテリとも呼ばれる。充電式電池は、セカンダリバッテリ、二次電池、蓄電池とも呼ばれ、一次電池とは製造材料や工程が異なり、充電後に何度もリサイクル可能である。充電式電池の出力電流負荷容量はほとんどの一次電池よりも高いというメリットがある。現在、よく見られる充電式電池のタイプは、鉛酸電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池がある。リチウムイオン電池は、軽量、大容量(同重量のニッケル水素電池の1.5倍~2倍)、メモリ効果が起こらないなどのメリットがあり、自己放電率も非常に低いため、価格が比較的高くても広く使用されている。本出願の実施形態に記載されている電池は、充電式リチウムイオン電池を指す。
【0048】
本出願の実施形態で言及される電池は、より高い電圧および容量を提供するために1つまたは複数の電池セルを含む単一の物理モジュールである。例えば、本出願で言及される電池は、電池モジュールまたは電池パックなどを含み得る。電池セルは、リチウムイオン二次電池の電池セル、リチウムイオン一次電池の電池セル、リチウム・硫黄電池の電池セル、ナトリウムリチウムイオン電池の電池セル、ナトリウムイオン電池の電池セルまたはマグネシウムイオン電池などを含み得る。電池セルは、偏平体状、長方体状またはその他の形状を呈することができる。また、電池セルは、通常、ハードハウジングを用いた電池セル及びパウチ電池セルを含む。
【0049】
電池セルは、正極板、負極板、電解液、セパレータを含み、電池モジュールと電池パックを構成する基本的なユニットである。リチウムイオン電池に一般的に使用される正極材料(正極活物質とも称する)は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、および3元系材料(例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなど)などを含む。一般的に使用される負極材料(負極活物質とも称する)は、炭素材料(例えば、グラファイト)やシリコン材料などを含む。一般的に使用されるセパレータは、ポリエチレン(polyethylene、PE)またはポリプロピレン(polypropylene、PP)を主とするポリオレフィン(Polyolefin)材料を含む。電池セルは、パッケージング方式により、一般的に、柱状電池セル、トップ電池セル、パウチ電池セルの3種類に分けられる。
【0050】
複数の電池セルは、電極端子を介して直列接続および/または並列接続され、さまざまな用途に使用される。電気自動車などの高出力用途では、電池の用途には、電池セル、電池モジュール、電池パックの3つの段階が含まれる。電池モジュールは、外部の衝撃、熱、振動などから電池セルを保護するために、一定量の電池セルを電気的に接続して1つのフレームに入れて形成されるものである。電池パックは、自動車の電池システムに装着される最終状態である。現在のほとんどの電池パックは、1つまたは複数の電池モジュールに電池管理システム(Battery Management System、BMS)、熱管理部材などの各種制御および保護システムを装着して製造されるものである。技術の発展に伴い、電池モジュールを省略でき、言い換えれば、電池セルで直接電池パックを形成できる。このような改良により、電池システムの重量エネルギー密度、体積エネルギー密度を向上させるとともに、部品数も大幅に減少することになった。本出願で言及される電池は、電池モジュールまたは電池パックを含む。
【0051】
電池は、通常、筐体と複数の電池セルを含み、複数の電池セルが筐体に収められる。筐体は、上筐体と下筐体とを含み得るものであり、上筐体と下筐体が合体し、複数の電池セルを収容するための収容スペースを形成する。電池が通常に配置される場合、上筐体は、通常、少なくとも水平面にほぼ平行な頂板を含み、下筐体は、通常、一端が開口された中空構造であり、少なくとも、水平面にほぼ平行な底板及び底板の周りを囲んで底板と接続する側板を含む。
【0052】
角型電池セルは、通常、エンドカバーとハウジングを含む。ハウジングは、略角柱状を呈し、エンドカバーに対向するハウジング底壁と、エンドカバーとハウジング底壁との間に配置されるハウジング側壁とを含む。ハウジング側壁は、通常、対向するように配置される2つの第1側壁と、2つの第1側壁の間に接続され且つ対向するように配置される2つの第2側壁を含み、第1側壁の面積が第2側壁の面積よりも大きい。第1側壁の面積もエンドカバーと底壁の面積よりも大きい。第1側壁は、電池セルの外壁の中で最大の面積を持つ壁である。
【0053】
筐体内の電池セルの配置方法は、縦置き配置、平置き配置(つまり、仰向き配置)、横向き配置、および逆立ち配置を含む。
図1は、筐体内の電池セルの異なる配置の模式図を示すものである。
図1(a)に示す筐体内の電池セル5の「縦置き配置」では、電池セル5は、エンドカバー51が頂板に隣接し且つほぼ平行するように、筐体内に装着されることを意味する。
図1(b)に示す筐体内の電池セル5の「平置き配置」では、電池セル5は、エンドカバー51が頂板にほぼ垂直に、筐体内に装着され、且つ電池セル5の側壁のうちで最大面積を有する壁(すなわち、第1側壁521)が頂板に平行(すなわち、水平面に平行)に配置されることを意味する。
図1(c)に示す筐体内の電池セル5の「横向き配置」では、電池セル5は、エンドカバー51が頂板にほぼ垂直に、筐体内に装着されることを意味する。「平置き配置」との相違は、「横向き配置」の場合、電池セル5の側壁のうちの最大面積を有する壁(すなわち、第1側壁521)が頂板に垂直に配置される。
図1(d)に示す筐体内の電池セル5の「逆立ち配置」は、電池セル5は、エンドカバー51が底板に隣接し且つほぼ平行するように、筐体内に装着されることを意味する。
【0054】
電池の使用過程は、電池セルの複数回の充放電サイクル過程である。電池セルの充放電サイクル過程で、電池セルの電極ユニットにおける正極板および負極板は、活物質の構造変化や副反応が発生すると、電池セルの周期的な膨張を引き起こすことがある。電池の寿命が長くなることにより、周期的な膨張による膨張力が徐々に大きくなる傾向が見られる。電池セルの膨張と変形が大きくなりすぎると、電池が過大な応力で故障してしまい、サイクル中の電池セルの性能に影響を与える。
【0055】
膨張力の増加に耐えられるようにするために、通常、電池セルと上筐体との間に上蓋を設置し、上蓋を下筐体に固定装着するようにする。上蓋が取り付けられると、電池セルの頂部が拘束され、電池セルが垂直方向に大きく変形できないようになる。これによって、電池セルの過大な膨張および変形によるサイクル中の電池セルの性能に対する悪影響を避けることができる。また、上蓋の電池セルに対する圧力が過大になってはならない。過大になると、充放電サイクル中に、電池セルのリチウム金属の析出が発生しやすくなり、電池セルのサイクル寿命が短くなる。電池のエネルギー密度を確保するために、通常、比較的薄い上蓋が設置される。
【0056】
電池セルが縦置き、横向き配置、逆立ち配置で筐体内に配置される場合、上蓋および下筐体の底板に隣接し且つ平行な壁は、エンドカバー、ハウジングの底壁および/または第2側壁である。第1側壁と比べて、エンドカバー、ハウジングの底壁および/または第2側壁の面積が小さい。したがって、比較的薄い上蓋により、エンドカバー、ハウジングの底壁および/または第2側壁の拘束要件を満たすことができる。面積の大きい第1側壁に対して、通常、その側面側にエンドプレートが設置される。エンドプレートは、下筐体に締結され、第1側壁に対して、第1側壁の拘束要件を満たす強力な拘束力を提供できる。
【0057】
電池セルが平置き配置で筐体内に配置される場合、上蓋と下筐体の底板に隣接し且つ平行な壁は、第1側壁になる。第1側壁の面積が比較的大きいため、薄い上蓋による第1側壁への拘束力は、第1側壁を拘束するためには十分ではない。したがって、第1側壁は、膨張しやすくなる。第1側壁の膨張が一定の範囲(例えば、16%以上)を超えると、上蓋や電池筐体など電池の構造部品を押圧し、電池全体の応力が過大になり、変形して故障する場合がある。上蓋全体の肉厚を増加し、第1側壁に対する拘束力を向上させることができるが、電池のエネルギー密度を低下させる場合がある。
【0058】
したがって、電池セルが平置き配置で筐体内に配置される電池について、如何に、電池のエネルギー密度をできるだけ低下させることなく、電池の電池セルの第1側壁に対して強い拘束力を与えるかは、解決しようとする技術的な解題である。
【0059】
本出願は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、電池セルが平置き配置で筐体内に設置され、すなわち、電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置される電池を提供する。拘束部材で電池の電池セルを収容して拘束し、拘束部材の、最大面積を有する壁と平行する部分に補強部を設け、補強部により拘束部材の強度を増強することで、複数の電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁に対する拘束部材の拘束力を高め、電池セルの過大な膨張および変形の発生を回避することができる。これによって、電池セルの膨張で電池の他の構造部品を押圧することにより引き起こされる電池の故障率を低減でき、サイクル中の電池性能を保証できる。したがって、上蓋全体の厚さを増加する必要がなく、電池のエネルギー密度を可能な限り確保することができる。
【0060】
本出願の実施形態に記載の電気設備とは、車両、携帯電話、携帯型機器、ノートパソコン、船、航空機、電動玩具および電動工具などが挙げられる。車両には、ガソリン自動車、天然ガス自動車または新エネルギー自動車が含まれ、新エネルギー自動車には、電気自動車、ハイブリッド車またはレンジエクステンダー式電気自動車などが含まれる。航空機には、飛行機、ロケット、スペースシャトルおよび宇宙船などが含まれる。電動玩具には、固定式または移動式のものが含まれ、例えば、ゲーム機、電動車玩具、電動船玩具および電動飛行機玩具などが挙げられる。電動工具には、金属切削電動工具、研磨電動工具、組立用電動工具および鉄道用電動工具が含まれ、例えば、電動ドリル、電動グラインダー、電動レンチ、電動ドライバー、電動ハンマー、インパクト電動ドリル、コンクリートバイブレーターおよび電動カンナなどが挙げられる。本出願の実施形態では、上記の電気設備に対して特に限定しない。
【0061】
以下の実施形態では、説明の便宜のために、電気設備が車両である場合を説明する。
【0062】
図2は、本出願のいくつかの実施形態による車両の構成模式図である。
図2に示すように、車両1の内部に、電池2が設置されている。電池2は、より高い電圧および容量を提供するために1つまたは複数の電池セル5を含む単一の物理モジュールである。例えば、本出願で言及される電池2は、電池モジュールまたは電池パックなどを含み得る。電池2は、車両1の底部、前部または後部に設置されることが可能である。電池2は、車両1に給電するためのものであり、例えば、車両1の動作電源として使用することができる。車両1は、さらに、制御器3およびモータ4を備えてもよい。制御器3は、モータ4に給電するように電池2を制御するためのものであり、例えば、車両1の始動、ナビゲート、および走行に必要な電力を供給するように、電池2を制御する。
【0063】
本出願のいくつかの実施形態では、電池2は、車両1の動作電源として使用可能だけでなく、ガソリンや天然ガスの代わりに車両1に駆動電力を提供するための車両1の駆動電源としても使用することができる。
【0064】
以下、本出願のいくつかの実施形態の電池2を詳細に説明する。
【0065】
図3は、本出願のいくつかの実施形態による電池の分解模式図である。
図3に示すように、電池2は、複数の電池セル5と拘束部材7とを備える。電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁は、水平面と平行に設置されている。拘束部材7は、複数の電池セル5を収容および拘束し、電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁を拘束するように構成される。拘束部材7の、前記最大面積を有する壁と平行な部分には、補強部71が設けられる。補強部71は、拘束部材7の強度を増強し、複数の電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁に対する拘束部材7の拘束力を高めるためのものである。
【0066】
図面において、OXY平面が水平面であり、Z軸の方向が垂直方向である。
【0067】
以下の説明では、X軸方向に配列された電池セル5の群を1行の電池セル群と称し、Y軸方向に配列された電池セル5の群を1列の電池セル群と称する。例えば、
図3において、1行の電池セル群は、6×2合計12個の電池セル5を含み、1列の電池セル群は、2×2合計4個の電池セル5を含む。
【0068】
電池セル5は、エンドカバー51およびハウジング52を備える。ハウジング52は、エンドカバー51に対向する底壁523と、エンドカバー51とハウジング52の底壁523との間に設けられるハウジング側壁とを備える。ハウジングの側壁は、対向に設置される2つの第1側壁521と、2つの第1側壁521との間に接続され対向に設置される2つの第2側壁522とを備える。第1側壁521の面積は、第2側壁522の面積、エンドカバー51およびハウジングの底壁523の面積よりも大きい。上記電池セル5の「外壁」は、エンドカバー51およびハウジング52のそれぞれの壁を含み、「外壁のうちの最大面積を有する壁」は、第1側壁521を指す。そのうち、第1側壁521は、水平面(XOY平面)と平行であり、エンドカバー51およびハウジング52のその他の側壁は、いずれも水平面に垂直である。
【0069】
水平面と平行な第1側壁521の配置は、第1側壁521が水平面とほぼ平行な状態を含む。本出願の実施形態における電池セル5の配置は、上記「平置き配置」である。
【0070】
図4は、本出願のいくつかの実施形態による電池の構成を示す模式図である。
図4に示すように、拘束部材7は、複数の電池セル5を収容するための収容スペースを有するか、形成するものである。拘束部材7による電池セル5への拘束は、少なくとも電池セル5に対するZ軸方向の拘束を含み、電池セル5に対するX軸方向および/またはY軸方向の拘束も含み得る。ここで、電池セル5に対する拘束部材7によるZ軸方向の拘束力は、Z軸のマイナス方向に沿う電池セル5に対する下向き拘束力と、Z軸のプラス方向に沿う電池セル5に対する上向き拘束力とを含む。X軸方向とY軸方向についても同様である。
【0071】
図面に示す拘束部材7は、両側が開口する中空構造である。図示は例示に過ぎないと、当業者によって理解される。他の実施形態で、拘束部材7は、電池セル5に対するZ軸方向の拘束を生じれば、完全に封止されて開口がない構造でもよいし、一方側に開口を有する構造でもよい。
【0072】
本出願の実施形態では、電池2の電池セル5は、平置き配置で筐体内に配置され、すなわち、電池2の電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁が、水平面と平行に設置される。拘束部材7で電池2の電池セル5を収容して拘束し、拘束部材7の、最大面積を有する壁と平行な部分に補強部71を設け、補強部71により拘束部材7の強度を増強することで、複数の電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁に対する拘束部材7の拘束力を高め、電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁の膨張および変形による電池セル5の過大な変形の発生を回避することができる。これによって、電池セル5の膨張で電池2の他の構造部品を押圧することにより引き起こされる電池2の故障率を低減でき、サイクル中の電池2の性能を保証できる。
【0073】
また、拘束部材7全体の厚さを増加する方法と比べると、拘束部材7に補強部71を設置することにより、電池2のエネルギー密度を低下させることなく、拘束部材7の強度を増強でき、拘束部材7の電池セル5に対する拘束力を高めることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、補強部71は、隣接する2つの電池セル5の間の領域および/または電池セル5と拘束部材7との間の領域に対応して設置される。
【0075】
図5は、本出願のいくつかの実施形態による電池の平面構成図である。
図6は、
図5の部分模式図である。
図7(a)は、
図5の
B-B方向の断面図である。
図7(b)は、
図5の
A-
A方向の断面図である。
図8は、
図7(a)の部分模式図である。
図3および
図4に示す実施形態との相違点は、
図5から
図8に示す電池2の拘束部材7が、開口部を備えない封止構造である。
【0076】
図5~
図8に示すように、隣接する2つの電池セル5は、X軸方向および/またはY軸方向で隣接しており、隣接する2つの電池セル5の間の領域は、R
1領域のいずれか1つまたは複数を含む。「電池セル5と拘束部材7との間の領域」という表現における電池セル5は、拘束部材7に隣接する電池セル5を指し、図に示す電池セル5は、いずれも拘束部材7に隣接している。図示は例示にすぎないと、当業者によって理解される。他の実施形態では、
図4に示す拘束部材7が使用され、X軸方向に沿って3行以上の電池セル群が設置される場合、外側の2行の電池セル群のうちの電池セル5のみが拘束部材7に隣接する電池セル5であり、その間の電池セル群が拘束部材7に隣接していない。電池セル5と拘束部材7との間の領域は、
図5に示すR
2領域のうちのいずれか1つまたは複数を含む。
【0077】
「対応」は、
図5の断面図において、補強部71のZ軸方向の第1投影と、隣接する2つの電池セル5との間の領域および/または電池セル5と拘束部材7との間の領域のZ軸方向の第2投影とが、重なるか、ほぼ重なるか、部分的に重なるか、第1投影が第2投影を覆うか、または第1投影が第2投影の範囲内に位置することを指す。
【0078】
補強部71を他の領域に設置する方法と比べて、補強部71を、隣接する2つの電池セル5の間の領域および/または電池セル5と拘束部材7との間の領域に対応して設置することによって、補強部71の位置での拘束部材7の構造強度が増強され、電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁の周囲を固定することができ、電池セル5に対する拘束力を高めることができる。これによって、電池セル5に同じ膨張力が作用するときの膨張変形量を減らすことができるとともに、電池2の故障をより効果的に防止でき、電池2の性能をより確実に保証することができる。また、上記領域は、電池セル5の縁部であり、膨張変形が最も小さい箇所である。上記の領域での補強部71の設置は、電池セル5の外壁のうちの最大面積を有する壁の膨張空間を占有しないので、電池セル5の膨張隙間に影響を及ぼさず、電池2の性能をさらに確保できる。
【0079】
隣接する各行の電池セル群の間、および隣接する各列の電池セル群の間に、いずれも補強部71が設置される。また、最外側の行の電池セル群と拘束部材7との間の領域、最外側の列の電池セル群と拘束部材7との間の領域にも、補強部71が設置される。これによって、電池2内のすべての電池セル5に対する拘束力を高めることができる。
【0080】
さらに、補強部71を、隣接する2つの電池セル5の間の領域および/または電池セル5と拘束部材7との間の領域に対応して設置することにより、電池セル5のハウジング52およびエンドカバー51の肉厚を小さくすることができる。例えば、肉厚の薄いハウジングを有する電池セル5を利用することで、肉厚の厚いハウジングを有する電池セル5により得られる効果を奏することができるので、電池2のエネルギー密度を高めることができる。
【0081】
図9は、本出願のいくつかの実施形態による電池の構成を示す模式図である。
図9に示すように、いくつかの実施形態では、拘束部材7は、上蓋72および下筐体73を備える。上蓋72の少なくとも一部は、複数の電池セル5の頂部に設置されている。下筐体73の少なくとも一部は、複数の電池セル5の底部に設置されている。上蓋72の、複数の電池セル5の頂部に設置されている部分および/または下筐体73の、複数の電池セル5の底部に設置されている部分に補強部71が設置されている。
【0082】
図に示すように、上蓋72は、上蓋本体721および固定部722を含む。「上蓋72の少なくとも一部」は、上蓋本体721を指す。下筐体73は、底板(図には示されていない)と、底板の周りを囲んで底板に接続される側板731とを含む。「下筐体73の少なくとも一部」は、下筐体73の底板を指す。
【0083】
複数の電池セル5の頂部と底部は、それぞれ、
図9のすべての電池セルからなる全体のZ軸方向の頂部と底部を指す。
【0084】
図10は、本出願のいくつかの実施形態による電池の上蓋の構成を示す模式図である。
図10に示すように、補強部71は、上蓋本体721に設置される。
【0085】
図11は、本出願のいくつかの実施形態による電池の下筐体の構成を示す模式図である。
図11に示すように、補強部71は、下筐体73の底板732に設置される。
【0086】
図9に示す実施形態では、上蓋72および下筐体73に補強部71が設置され、電池セル5に対するZ軸のマイナス方向に沿う下向きの拘束力および電池セル5に対するZ軸のプラス方向に沿う上向きの拘束力が形成されるので、電池セル5の膨張および変形をより効果的に防止することができる。図示は例示に過ぎないと、当業者によって理解される。他の実施形態では、電池セル5に対する拘束力の要求が比較的に低い場合、電池セル5に対するZ軸のマイナス方向に沿う下向きの拘束力を形成するように、上蓋72のみに補強部71を設置することが可能であり、または電池セル5に対するZ軸のプラス方向に沿う上向きの拘束力を形成するように、下筐体73のみに補強部71を設置することも可能である。これによって、コストを削減し、生産性を高めることができる。
【0087】
上記の実施形態では、拘束部材7は、上蓋72および下筐体73を備えるように構成され、上蓋72の少なくとも一部が、複数の電池セル5の頂部に設置され、下筐体73の少なくとも一部が、複数の電池セル5の底部に設置され、上蓋72の、複数の電池セル5の頂部に設置されている部分および/または下筐体73の、複数の電池セル5の底部に設置されている部分に、補強部71が設置されるので、拘束部材7を容易に組み立てることができ、実際の必要に応じて柔軟に補強部71を設置することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、補強部71は、拘束部材7と一体成形される。
【0089】
補強部71は、拘束部材7の強度を増強する部品であり、拘束部材7と一体成形される。例えば、補強部71と拘束部材7は、板金プレス加工により一体成形することができる。無論、補強部71は、個別に拘束部材7に取り付けられる部品であってもよく、例えば、補強部71は溶接で拘束部材7に溶接されるものでもよい。
【0090】
補強部71と拘束部材7とを一体成形することにより、両者の結合度合いを向上させることができ、拘束部材7の強度に対する補強部71の補強効果を高めることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、
図7、
図8および
図10に示すように、拘束部材7が電池セル5から離れる方向へ突出して補強部71を形成し、拘束部材7の電池セル5に近い表面の、補強部71の反対側の領域には、凹溝74が形成される。
図11に示す下筐体73についても同様である。
【0092】
ここで、「補強部71の反対側の領域」という表現における「反対側」は、
図7に示す断面において、補強部71のZ軸方向の第3投影が、凹溝74のZ軸方向の第4投影と重なるか、またはほぼ重なることを指す。
【0093】
本実施形態では、補強部71と拘束部材7とが一体成形され、拘束部材7が電池セル5から離れる方向へ突出するように補強部71を形成することで、加工に便利であり、コストを低くすることができる。
【0094】
拘束部材7が電池セル5から離れる方向へ突出するように形成される補強部71の構造は、リブであってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、
図7および
図8に示すように、上蓋72および下筐体73のそれぞれに補強部71が設置され、上蓋72の補強部71の形成位置が、垂直方向において下筐体73の補強部71の形成位置に対応する。上蓋72の補強部71と下筐体73の補強部71とを接続するように、上蓋72の補強部71と下筐体73の補強部71との間の領域に接着剤8が充填される。
【0096】
上蓋72の補強部71の形成位置と下筐体73の補強部71の形成位置とが垂直方向に対応するように設定され、上蓋72の補強部71と下筐体73の補強部71との間の領域に接着剤8が充填され、接着剤8で上蓋72の補強部71と下筐体73の補強部71が接続されることによって、拘束部材7全体の強度をさらに向上させる。
【0097】
いくつかの実施形態では、
図3および
図8に示すように、電池セル5は、エンドカバー51およびハウジング52を備え、エンドカバー51が水平面に垂直に設置され、ハウジング52のエンドカバー51から離れる底部にR面取りが設けられ、接着剤8がR面取りを覆っている。
【0098】
ハウジング52のエンドカバー51から離れる底部は、ハウジング52の側壁と底壁523との接続箇所を指し、例えば、第1側壁521と底壁523との接続箇所および/または第2側壁522と底壁523との接続箇所である。すなわち、ハウジング52の側壁と底壁523との接合箇所にR面取りが設けられている。
【0099】
接着剤8でR面取りを覆うことは、
図7および8に示す断面において、接着剤8のZ軸方向の第5投影が、R面取りのZ軸方向の第6投影を覆うことを意味する。つまり、第6投影が第5投影の範囲内にある。
【0100】
接着剤8でR面取りを覆うことにより、隣接する2列の電池セル群に間または隣接する2行の電池セル群の間で、接着剤により形成される釘状構造が形成される。これによって、拘束部材7の構成強度、および拘束部材7と電池セル5との結合強度を向上することができる。
【0101】
図7(a)に示すように、いくつかの実施形態では、補強部71は、第1補強部71aを含み、第1補強部71aは、隣接する2つの電池セル5の間の領域R
1を垂直方向に沿って覆う補強部71である。
【0102】
上記「覆う」は、第1補強部71aのZ軸方向の第7投影が、隣接する2つの電池セル5間の領域R1のZ軸方向の第8投影を覆うことを意味し、すなわち、第8投影は第7投影の範囲内にある。
【0103】
第1補強部71aは、隣接する2つの電池セル5の間の領域R1を垂直方向に沿って覆う。この領域は、電池セル5と上蓋72および下筐体73との接着位置である。第1補強部71aがこの領域に設置され、且つ隣接する2つの電池セル5の間の領域R1を覆うようにすることで、接着剤の脱離を低減でき、電池2全体の構造強度を増強することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、
図3および
図8に示すように、電池セル5は、エンドカバー51およびハウジング52を備え、エンドカバー51が水平面に垂直に配置され、ハウジング52のエンドカバー51から離れる底部にR面取りが設けられ、第1補強部71aが、隣接する2つの電池セル5の隣接するR面取りを垂直方向に沿って覆っている。
【0105】
上記「覆う」は、第1補強部71aのZ軸方向の第7投影が、隣接する2つの電池セル5の隣接するR面取りのZ軸方向の第6投影を覆うことを意味し、すなわち、第6投影は第7投影の範囲内にある。
【0106】
第1補強部71aは、隣接する2つの電池セル5の隣接するR面取りを垂直方向に沿って覆う。この領域は、電池セル5と上蓋72および下筐体73との接着位置である。第1補強部71aがこの領域に設置されることで、接着剤の脱離を低減でき、電池2全体の構造強度を増強することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、
図8のC部拡大図に示すように、ハウジング52は、水平面と垂直な第1壁521aを含む。第1補強部71aの縁部と第1壁521aとの間の水平距離Lは、5mm以下である。
【0108】
第1壁521aは、ハウジング52の側壁のうちの、他の電池セル5に隣接する壁、すなわち、第2側壁522のうちの壁を指す。
【0109】
第1補強部71aの縁部と第1壁521aとの間の水平距離は、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、または5mm以下の他の任意の値であり得る。
【0110】
第1補強部71aの縁部と第1壁521aとの間の水平距離Lが5mm以下であるため、第1補強部71aが過大に電池セル5の第1側壁521を覆わず、電池セル5のうちの最も膨張が発生しやすい第1側壁521の膨張空間を確保でき、電池2の性能をさらに保証することができる。
【0111】
電池セル5は、通常、電極ユニット53を含む。以下、電池セル5内の電極ユニット53の構造を説明する。
【0112】
本出願の実施形態の電池2における電池セル5は、正方形またはほぼ正方形を呈し、電池セル5内の電極ユニット53は、以下の構造を含み得る。
【0113】
図12は、本出願の実施形態による電池内の電池セルの電極ユニットの断面を示す模式図である。
【0114】
いくつかの実施形態では、
図12(a)に示すように、電極ユニット53は、第1極板531および第2極板532を含む。第1極板531および第2極板532は、水平面に平行な巻軸線の周りに巻き付けられて巻構造が形成される。
【0115】
いくつかの実施形態では、
図12(b)に示すように、電極ユニット53は、複数の第1極板531および複数の第2極板532を含み、複数の第1極板531および複数の第2極板532は垂直方向に沿って互いに積み重ねられている。
【0116】
いくつかの実施形態では、
図12(c)に示すように、電極ユニット53は、複数の第2極板532を含み、第1極板531は、積み重ねられた複数の重ねセグメント531aおよび複数の折り曲げセグメント531bを含む。各折り曲げセグメント531bが隣接する2つの重ねセグメント531aを接続し、複数の重ねセグメント531aと複数の第2極板532は、垂直方向に沿って互いに積み重ねられている。
【0117】
さらに、
図12では、第1極板531と第2極板532との間に設置されたセパレータ533を示している。
【0118】
上記構造の電極ユニット53を含む電池セル5は、基本的に正方形を呈し、上記実施形態のほぼ正方形のハウジング52を有する。ハウジング52の側壁は、大きい面積を有する第1側壁521と、小さい面積を有する第2側壁522を備える。したがって、上記のように得られる電池セル5の主な膨張方向は垂直方向である。
【0119】
上記構造の電極ユニット53が「平置き配置」で配置される場合、第1極板531および第2極板532がいずれも水平に配置され、すなわち、水平面と平行に設置される。
【0120】
各補強部71の幅は、電池セル5の間の接着剤の厚さと電池セル5のR面取りの寸法とに応じて調整することができ、通常、幅の範囲は2~20mmである。ここで「幅」は、
図7(a)に示す補強部71のX軸方向の寸法を指す。各補強部71の深さの範囲は2~6mmである。最大深さは、拘束部材7と電池2の他の構造部品との間の隙間、例えば上蓋72と上筐体21との間の隙間の影響を受ける。ここで「深さ」は、
図7(a)に示す補強部71のZ軸方向の寸法を指す。
【0121】
図13は、本出願のいくつかの実施形態による電池の分解構成図である。
図13に示すように、電池2は、さらに上筐体21を備え、上筐体21と下筐体73はその内部を密封するように合体する。
【0122】
上筐体21と下筐体73は、密封状態で合体し、電池セル5を収容するものになる。上筐体21は、様々な構造で形成され得る。
図13に示すように、上筐体21は、一端が開口する中空構造である。上筐体21が板状構造であり得ることが理解され得る。上筐体21および下筐体73は、例えば、円柱体状、直方体状等の様々な形状を呈することができる。
【0123】
上筐体21と下筐体73とを接続した後の密封性を向上させるために、上筐体21と下筐体73との間に、例えば、シーラント、シールリング等のシール部材を設けることもできる。
【0124】
上筐体21を設置することにより、上筐体21と下筐体73とが密封状態で合体することができ、電池セル5を保護しながら収容することができる。
【0125】
上蓋72と上筐体21は接続されておらず、上蓋72と上筐体21との間に一定の隙間があることが理解され得る。これによって、電池セル5および上蓋72の膨張空間を確保でき、上筐体21の電池セル5の膨張力による変形を防止することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、
図3および
図4に示すように、下筐体73にさらに固定梁22が設けられ、上蓋72は、複数の電池セル5を上蓋72と下筐体73の間に拘束するように、固定梁22に固定される。
【0127】
固定梁22は、角柱状構造、円柱状構造、板状構造等であり得る。図には、角柱状構造のうちの長方体構造が示されている。
【0128】
上蓋72と固定梁22との間の固定方法は、ねじ接続、スナップ固定または溶接固定を含む。
【0129】
固定梁22を設置し、上蓋72を固定梁22に固定することにより、上蓋72を固定することができるとともに、拘束部材7の強度を増強させ、電池セル5に対する拘束部材7の拘束力を高めることができる。
【0130】
<電池セル5と電池モジュールについて>
【0131】
複数の電池セル5は、直列、並列または直並列に接続することができる。直並列接続は、複数の電池セル5が直列に接続される部分および並列に接続される部分を含むことを意味する。複数の電池セル5を、直接、直列、並列または直並列に接続して、複数の電池セル5からなるものを下筐体73に入れる。また、複数の電池セル5を直列、並列または直並列に接続して電池モジュールを形成し、さらに、複数の電池モジュールを直列、並列または直並列に接続してから、下筐体73に入れることも可能である。
【0132】
組立工程は、電池セル5を所定の位置に取り付けた後、上蓋72を下筐体73(または固定梁22)に固定し、さらに、上筐体21と下筐体73を合体させるようにして行われる。
【0133】
図14は、本出願のいくつかの実施形態による電池の製造方法を模式的に示すフローチャートである。電池の製造方法は、
図14に示すように、以下のステップを含む。
【0134】
ステップ141は、電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供する。
【0135】
ステップ142は、複数の電池セルに対する拘束部材の拘束力を高めるように拘束部材の強度を増強するための補強部が設置された拘束部材を提供する。
【0136】
ステップ143は、拘束部材の内部に複数の電池セルを収容し、拘束部材で複数の電池セルを拘束する。
【0137】
この実施形態の製造方法によって製造された電池の構造については、
図1~
図12に対応する上記の実施形態に記載された電池の内容を参照することができるので、ここでの説明を省略する。
【0138】
図15は、本出願のいくつかの実施形態による電池の製造装置の構成を示す模式図である。電池の製造装置10は、
図15に示すように、第1提供装置11、第2提供装置12および組立装置13を含む。
【0139】
第1提供装置11は、電池セルの外壁のうちの最大面積を有する壁が水平面と平行に設置されている複数の電池セルを提供するように構成される。
【0140】
第2提供装置12は、複数の電池セルに対する拘束部材の拘束力を高めるように拘束部材の強度を増強するための補強部が設置された拘束部材を提供するように構成される。
【0141】
組立装置13は、拘束部材の内部に複数の電池セルを収容し、拘束部材で複数の電池セルを拘束するように構成される。
【0142】
この実施形態の製造装置によって製造された電池セルの構造については、
図1~
図12に対応する上記の実施形態に記載された電池の内容を参照することができるので、ここでの説明を省略する。
【0143】
最後に注意すべきことは、上記の各実施形態が、本出願の技術案を説明するためのものにすぎず、それを限定するものではないことである。上記の各実施形態を参照しながら本出願を詳細に説明しているが、当業者は、上記の各実施形態に記載された技術案を変更してもよく、その内の一部または全ての技術的特徴を均等に置き換えてもよい。これらの変更または置き換えは、該当する技術案の本質が本出願の各実施形態の技術案の範囲から逸脱するものではなく、いずれも、本出願の特許請求の範囲および明細書の範囲内に含まれる。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施形態で言及される各技術的特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。本出願は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての技術案を含む。
【符号の説明】
【0144】
1…車両
2…電池
3…制御器
4…モータ
5…電池セル
7…拘束部材
8…接着剤
21…上筐体
22…固定梁
51…エンドカバー
52…ハウジング
521…第1側壁
521a…第1壁
522…第2側壁
523…底壁
53…電極ユニット
531…第1極板
531a…重ねセグメント
531b…折り曲げセグメント
532…第2極板
533…セパレータ
71…補強部
72…上蓋
721…上蓋本体
722…固定部
73…下筐体
731…側板
732…底板
74…凹溝
L…第1補強部の縁部と第1壁との水平距離
R1…隣接する2つの電池セルの間の領域
R2…電池セルと拘束部材との間の領域