(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両用センサ装置及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/60 20180101AFI20250117BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20250117BHJP
【FI】
F21S45/60
F21V23/00 113
(21)【出願番号】P 2022553704
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032169
(87)【国際公開番号】W WO2022070748
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2020165965
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020165966
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021094787
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】久保山 治
(72)【発明者】
【氏名】桂田 善弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 大悟
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洸成
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3117480(JP,U)
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】特開2017-183063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0175971(US,A1)
【文献】国際公開第2020/075539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/60
F21V 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
アウターカバーと、
前記アウターカバーよりも車両の内側に配置され、前記アウターカバーを透過する所定の電磁波を送受信して前記アウターカバーの内側に入射する前記電磁波に係る信号を出力するセンサ部と、
前記電磁波を所定の方向に沿って走査するように前記センサ部を動作させ、所定の物体で反射して前記センサ部に受信された前記電磁波に基づいて前記物体の位置を算出する制御部と、
前記アウターカバーに取り付けられ、前記アウターカバーのうち前記センサ部から送信される前記電磁波が透過する透過領域を通電により加熱する発熱部材と、
を備え、
前記発熱部材は、前記透過領域の内側の一部の領域を前記所定の方向に沿って延在して、前記透過領域を横切る
ことを特徴とする車両用センサ装置。
【請求項9】
前記透過領域における前記所定の方向に垂直な方向において、前記透過領域の内側の前記発熱部材は、前記透過領域の外縁側よりも中心側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられる
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用センサ装置。
【請求項10】
前記発熱部材は、前記透過領域の外側よりも前記透過領域の内側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられる
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用センサ装置。
【請求項11】
前記発熱部材は、前記透過領域の全周囲を囲うように前記アウターカバーに取り付けられる
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の車両用センサ装置。
【請求項12】
前記発熱部材は、前記アウターカバーのうち前記透過領域の中心よりも鉛直方向下側の領域にのみ取り付けられる
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の車両用センサ装置。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1項に記載の車両用センサ装置と、
前記アウターカバーよりも前記車両の内側に配置され、前記アウターカバーを介して前記車両の外側に光を出射する灯具ユニットと、
を備え、
前記透過領域の内側の前記発熱部材の少なくとも一部は、前記透過領域の外側を前記所定の方向に沿って、前記アウターカバーのうち前記光が出射する光出射領域まで延在する
ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用センサ装置及び当該車両用センサ装置を備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のランプカバー内に搭載され、電磁波を用いて車外の物体を検知する車両用センサ装置が知られている。このような車両用センサ装置において、ランプカバーに氷雪などが付着すると、センサから送信される電磁波が氷雪によって反射されることによって、検知精度に影響が出るおそれがある。
【0003】
そこで、このような氷雪の影響を低減可能な車両用センサ装置として、例えば、下記特許文献1に記載された車両用センサ装置が知られている。この特許文献1に記載された車両用センサ装置は、ランプカバー内に配置されており、車外に対して電磁波を送受信するセンサと、当該センサが配置される空間を仕切るセパレータとを備えている。この特許文献1に記載された車両用センサ装置では、センサから送信された電磁波の反射波電力の挙動の変化に基づいてランプカバーに氷雪が付着しているか否かを判定し、氷雪が付着していると判定される場合にランプカバー内の光源を点灯させる。このような車両用センサ装置によれば、光源からの輻射熱がセパレータを介してランプカバーに伝導して、ランプカバーに付着した氷雪が溶けるため、センサの検知精度に影響が出ることを抑制できるとされる。
【0004】
また、例えば下記特許文献2には、通電により発熱する発熱体がランプカバーに取り付けられた車両用灯具が記載されている。この特許文献2の車両用灯具によれば、通電によって発熱する発熱体によりランプカバーを直接的に温めることができるため、氷雪の除去効率が向上することが期待される。
【0005】
【文献】特開2020-050271号公報
【文献】特開2008-177054号公報
【発明の概要】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された車両用センサ装置では、ランプカバーの昇温を光源からの輻射熱の熱伝導に頼っているため、ランプカバーが昇温し難く、氷雪の除去が十分でないおそれがある。
【0007】
また、ランプカバー内に電磁波を送受信するセンサ装置を配置する場合において、上記特許文献2に記載された発熱体をランプカバーに取り付けると、センサから送信される電磁波が発熱体で反射してノイズになり得る。そのため、却って検知精度が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、検知精度の低下を抑制し得る車両用センサ装置及び当該車両用センサ装置を備える車両用灯具を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的の達成のため、本発明の第1の態様による車両用センサ装置は、アウターカバーと、前記アウターカバーよりも車両の内側に配置され、前記アウターカバーを透過する所定の電磁波を送受信して前記アウターカバーの内側に入射する前記電磁波に係る信号を出力するセンサ部と、前記アウターカバーに取り付けられ、前記アウターカバーのうち前記センサ部から送信される前記電磁波が透過する透過領域を通電により加熱する発熱部材と、を備え、前記発熱部材は、前記透過領域の外側よりも前記透過領域の内側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられることを特徴とするものである。
【0010】
この車両用センサ装置によれば、上記透過領域を加熱する発熱部材がアウターカバーに取り付けられているため、例えば上記特許文献1のように光源からの輻射熱の熱伝導によってアウターカバーを温める場合に比べて、アウターカバーを直接的に温めることができ、アウターカバーに付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。また、この車両用センサ装置によれば、上記発熱部材が、透過領域の外側よりも透過領域の内側の方が疎になるように取り付けられるため、センサ部から送信される電磁波が発熱部材で反射してノイズとなることが抑制され得る。このように、この車両用センサ装置によれば、発熱部材による電磁波の反射を抑制しつつ氷雪等を効果的に除去し得るため、検知精度の低下を抑制し得る。
【0011】
なお、第1の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材が前記透過領域の内側に非配置であってもよい。
【0012】
このようにすることで、発熱部材による電磁波の反射をより効果的に抑制し得る。一方、透過領域の外側には発熱部材が配置されているため、透過領域に付着した氷雪等を発熱部材からの熱によって効果的に溶かし得る。
【0013】
また、第1の態様による前記車両用センサ装置は、前記電磁波を所定の方向に沿って走査するように前記センサ部を動作させ、所定の物体で反射して前記センサ部に受信された前記電磁波に基づいて前記物体の位置を算出する制御部をさらに備え、前記透過領域における前記所定の方向に垂直な方向において、前記透過領域の内側の前記発熱部材は、前記透過領域の外縁側よりも中心側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられてもよい。
【0014】
上記のような車両用センサ装置において、検知対象となる物体は、一般的に、電磁波を走査する方向に垂直な方向における透過領域の中心側の領域を透過して送受信される電磁波に照射される物体である。したがって、透過領域の内側において、上記垂直な方向における透過領域の中心側が疎になるように発熱部材を取り付けることによって、透過領域の中心側で電磁波が反射してノイズとなることが抑制され、検知対象となる物体の検知精度の低下が抑制され得る。また、透過領域の内側において、上記垂直な方向における透過領域の外縁側が密になるように発熱部材を配置することによって、透過領域をより効果的に加熱することができ、透過領域に付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。
【0015】
また、第1の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材は、前記透過領域の全周囲を囲うように前記アウターカバーに取り付けられてもよい。
【0016】
このようにすることで、前記透過領域の全周囲のうち一部に発熱部材を取り付ける場合に比べて、透過領域を効果的に温めることができ、氷雪等の除去効率が向上し得る。
【0017】
あるいは、第1の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材は、前記アウターカバーのうち前記透過領域の中心よりも鉛直方向下側の領域にのみ取り付けられてもよい。
【0018】
この場合、まず透過領域の下側に付着した氷雪が溶け得る。その後、透過領域の上側に残存する氷雪が、氷雪の除去された下側の領域に落下して溶け得る。したがって、このように下側の領域にのみ発熱部材を取り付ける場合でも、氷雪等を効果的に除去し得る。また、発熱部材を透過領域の全周囲に取り付ける場合に比べて発熱部材を減らすことができるため、コストを低減し得る。
【0019】
また、第1の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材はメッシュ状であってもよい。
【0020】
ここでメッシュ状とは、網状、格子状、あるいは多孔状のように所定の領域を複数の区画に分割する形状をいう。発熱部材がこのようにメッシュ状であれば、アウターカバーにおいて発熱部材に囲われる複数の区画が形成される。そして、これらの区画を取り囲む発熱部材によって、区画のそれぞれを全周囲から加熱することができる。したがって、アウターカバーをより効果的に加熱することができ、氷雪等の除去効率が向上し得る。
【0021】
また、上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、上記いずれかに記載の第1の態様による車両用センサ装置と、前記アウターカバーよりも前記車両の内側に配置され、前記アウターカバーを介して前記車両の外側に光を出射する灯具ユニットと、を備え、前記発熱部材は、前記アウターカバーのうち前記光が出射する光出射領域を加熱するとともに、前記光出射領域の外側よりも前記光出射領域の内側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられることを特徴とするものである。
【0022】
この車両用灯具は、上記いずれかに記載の第1の態様による車両用センサ装置を備えるため、検知精度の低下を抑制し得る。また、この車両用灯具では、発熱部材が上記光出射領域を加熱するように取り付けられるため、光出射領域に付着した氷雪等を除去し得る。また、この発熱部材は、光出射領域の外側よりも光出射領域の内側の方が疎であるため、灯具ユニットから出射する光が光出射領域の内側の発熱部材で反射することが抑制され、灯具ユニットからの光の出射効率が低下することが抑制され得る。
【0023】
上記目的の達成のため、本発明の第2の態様による車両用センサ装置は、アウターカバーと、前記アウターカバーよりも車両の内側に配置され、前記アウターカバーを透過する所定の電磁波を送受信して前記アウターカバーの内側に入射する前記電磁波に係る信号を出力するセンサ部と、前記電磁波を所定の方向に沿って走査するように前記センサ部を動作させ、所定の物体で反射して前記センサ部に受信された前記電磁波に基づいて前記物体の位置を算出する制御部と、前記アウターカバーに取り付けられ、前記アウターカバーのうち前記電磁波が透過する透過領域を通電により加熱する発熱部材と、を備え、前記発熱部材は、前記透過領域の内側の一部の領域を前記所定の方向に沿って延在して、前記透過領域を横切ることを特徴とするものである。
【0024】
この車両用センサ装置によれば、上記透過領域を加熱する発熱部材がアウターカバーに取り付けられているため、例えば上記特許文献1のように光源からの輻射熱の熱伝導によってアウターカバーを温める場合に比べて、アウターカバーを直接的に温めることができ、アウターカバーに付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。また、発熱部材は透過領域の内側を横切るため、上記所定の方向における透過領域の全長に渡って透過領域が加熱され、透過領域を効果的に温めることができる。よって、透過領域に付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。
【0025】
ところで、透過領域の内側の発熱部材が、上記所定の方向と交差する方向に延在する場合、走査する電磁波が発熱部材で反射して、センサ部に受信される電磁波の上記所定の方向における強度分布が変化し、検知精度の低下を招き得る。これに対し、この車両用センサ装置では、上記発熱部材が透過領域の内側の一部を上記所定の方向に沿って横切る。このため、センサ部に受信される電磁波の上記所定の方向における強度分布の変化が抑制され、検知精度の低下を抑制することができる。
【0026】
このように、この車両用センサ装置によれば、発熱部材による電磁波の反射の影響を抑制しつつ氷雪等を効果的に除去し得るため、検知精度の低下を抑制し得る。
【0027】
また、第2の態様による車両用センサ装置において、前記透過領域における前記所定の方向に垂直な方向において、前記透過領域の内側の前記発熱部材は、前記透過領域の外縁側よりも中心側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられてもよい。
【0028】
第2の態様による車両用センサ装置においても、第1の態様による車両用センサ装置と同様にして、透過領域の内側において、上記垂直な方向における透過領域の中心側が疎になるように発熱部材を取り付けることによって、透過領域の中心側で電磁波が反射してノイズとなることが抑制され、検知対象となる物体の検知精度の低下が抑制され得る。また、透過領域の内側において、上記垂直な方向における透過領域の外縁側が密になるように発熱部材を配置することによって、透過領域をより効果的に加熱することができ、透過領域に付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。
【0029】
また、第2の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材は、前記透過領域の外側よりも前記透過領域の内側の方が疎になるように前記アウターカバーに取り付けられてもよい。
【0030】
このような構成によれば、発熱部材が透過領域の内側と外側とで同じ密度で取り付けられる場合や、透過領域の外側よりも透過領域の内側の方が密になるように取り付けられる場合に比べて、電磁波が発熱部材で反射してノイズとなることが抑制され得、検知精度の低下を抑制し得る。
【0031】
また、第2の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材は、前記透過領域の全周囲を囲うように前記アウターカバーに取り付けられてもよい。
【0032】
第2の態様による車両用センサ装置においても、第1の態様による車両用センサ装置と同様にして、前記透過領域の全周囲のうち一部に発熱部材を取り付ける場合に比べて、透過領域を効果的に温めることができ、氷雪等の除去効率が向上し得る。
【0033】
あるいは、第2の態様による車両用センサ装置において、前記発熱部材は、前記アウターカバーのうち前記透過領域の中心よりも鉛直方向下側の領域にのみ取り付けられてもよい。
【0034】
第2の態様による車両用センサ装置においても、第1の態様による車両用センサ装置と同様にして、氷雪等を効果的に除去し得、発熱部材を透過領域の全周囲に取り付ける場合に比べて発熱部材を減らすことができるため、コストを低減し得る。
【0035】
また、上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、上記いずれかに記載の第2の態様による車両用センサ装置と、前記アウターカバーよりも前記車両の内側に配置され、前記アウターカバーを介して前記車両の外側に光を出射する灯具ユニットと、を備え、前記透過領域の内側の前記発熱部材の少なくとも一部は、前記透過領域の外側を前記所定の方向に沿って、前記アウターカバーのうち前記光が出射する光出射領域まで延在することを特徴とするものである。
【0036】
この車両用灯具は、上記いずれかに記載の第2の態様による車両用センサ装置を備えるため、検知精度の低下を抑制し得る。また、この車両用灯具では、発熱部材が上記光出射領域を加熱するように取り付けられるため、光出射領域に付着した氷雪等を除去し得る。また、この車両用灯具では、透過領域の内側の発熱部材が所定の方向に沿って光出射領域まで延在するため、透過領域を加熱する発熱部材によって光出射領域を加熱することができる。したがって、光出射領域を加熱するための発熱部材を別個に設ける必要がなく、配線コストを低減し得る。
【0037】
以上のように、本発明によれば、検知精度の低下を抑制し得る車両用センサ装置及び当該車両用センサ装置を備える車両用灯具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用センサ装置を備える車両及び車両用灯具の概略を示す正面図である。
【
図2】
図1に示されるII-II線における車両用センサ装置の断面の概略を示す図である。
【
図3】
図1に示される車両用センサ装置のセンサ部を前方視した概略を示す図である。
【
図4】電磁波の検知可能領域を説明するための図である。
【
図5】
図1に示される車両用センサ装置の受信アンテナの他の例を上方視した概略を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るヒータの主に透過領域近傍の様子を示す図である。
【
図7】
図6の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
【
図9】
図8の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
【
図11】
図10の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図12】
図10の電熱線の配線パターンの第2の変形例を示す図である。
【
図13】
図12の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係るヒータの主に透過領域近傍及び光出射領域近傍を
図6と同様の視点で示す図である。
【
図15】
図14の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
【
図17】
図16の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図18】
図16の電熱線の配線パターンの第2の変形例を示す図である。
【
図19】
図18の電熱線の配線パターンの変形例を示す図である。
【
図20】本発明の第1実施形態の変形例に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
【
図21】本発明の第2実施形態の変形例に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る車両用センサ装置及び車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用センサ装置を備える車両及び車両用灯具の概略を示す正面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具VLは、車両VEの車両用前照灯であり、車両用センサ装置1と、灯具ユニットLUとを主な構成として備える。本実施形態において、車両用センサ装置1と灯具ユニットLUとは概ね左右方向に沿って並んでいる。なお、本明細書において前方とは、車両VEの進行方向を意味し、左右とは上記進行方向に対して左側及び右側を意味する。
【0041】
灯具ユニットLUは、後述するアウターカバー12よりも車両VEの内側に配置され、アウターカバー12を介して車両VEの外側に光を出射する。
図1において破線で示すように、灯具ユニットLUから出射する光は、アウターカバー12における光出射領域LRを透過して車両VEの前方に出射する。
【0042】
図2は、
図1に示されるII-II線における車両用センサ装置1の断面の概略を示す図である。
図1及び
図2に示すように、車両用センサ装置1は、筐体10と、センサ部20と、ヒータ30と、制御部COとを主な構成として備える。なお、
図1では、ヒータ30と制御部COとの図示が省略されている。
【0043】
制御部COは、センサ部20やヒータ30に接続されている。この制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置によって構成される。また、これらは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。なお、制御部COは、車両用センサ装置1に固有のものであってもよいし、制御部COの少なくとも一部が車両VEのECU(Electronic Control Unit)に含まれてもよい。
【0044】
本実施形態の筐体10は、ハウジング11及びアウターカバー12を主な構成として備える。アウターカバー12は、灯具ユニットLUから出射する光や後述するセンサ部20から送受信される電磁波を透過する材料から構成される。このようなアウターカバー12を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネートなどの樹脂を挙げることができる。ハウジング11は前方に開口を有する箱状に構成され、当該開口を塞ぐようにアウターカバー12がハウジング11に固定される。
図2に示すように、アウターカバー12は、概ね鉛直方向に沿って延在している。ハウジング11は、アウターカバー12とは異なる材料から構成されてもよいし、同じ材料から構成されてもよい。筐体10には、ハウジング11とアウターカバー12とによって囲われる収容空間13が形成されており、当該収容空間13にセンサ部20及び灯具ユニットLUが配置される。
【0045】
本実施形態のセンサ部20は、上記電磁波としてミリ波を送受信するミリ波レーダである。
図3は、センサ部20を前方視した概略を示す図である。
図3に示すように、センサ部20は、送信アンテナ25と、複数の受信アンテナ26とを含んでいる。制御部COは、送信アンテナ25及び各受信アンテナ26に接続されている。なお、
図3には、3つの受信アンテナ26が示されているが、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0046】
送信アンテナ25は、ミリ波EWを前方に向かって送信する。このため、ミリ波EWは、アウターカバー12の所定の領域を透過して車外の前方に向かって伝搬する。本実施形態において、このミリ波EWは、鉛直方向の広がりよりも左右方向の広がりの方が大きくなるように送信アンテナ25から出射する。このため、
図1において破線で示すように、アウターカバー12におけるセンサ部20から送信されるミリ波EWが透過する透過領域ARは、左右方向に偏平な略矩形となる。また、送信アンテナ25は、制御部COからの制御信号により、ミリ波EWを、強度が概ね一定で、周波数が所定の周期で増加と減少とを繰り返すミリ波とする。
【0047】
図4に示すように、ミリ波EWは、透過領域ARを透過して車外に出射すると、鉛直方向に比べて左右方向に大きく広がり、ミリ波EWによる検知可能領域FAが形成される。本実施形態では、検知可能領域FAは、前方視において左右方向に偏平な略矩形であり、上方視において前方側ほど幅広な略扇型である。なお、検知可能領域FAは、FOV領域とも呼ばれる。検知可能領域FA内に物体が存在する場合、ミリ波EWは当該物体で反射し、この反射したミリ波EWの一部が透過領域ARを透過して上記収容空間13に入射する。なお、物体で反射したミリ波EWは、受信アンテナ26の位置と送信アンテナ25の位置とが離れている場合等に、アウターカバー12における透過領域AR以外から収容空間13に入射してもよい。
【0048】
本実施形態において、複数の受信アンテナ26のそれぞれは概ね同じ構成を有している。
図3に示すように、これら受信アンテナ26のそれぞれと、送信アンテナ25とは、左右方向に沿って所定の間隔を空けて並んでいる。また、受信アンテナ26のそれぞれの鉛直方向における中心と、送信アンテナ25の鉛直方向における中心とは、左右方向に延在する直線上に概ね位置している。受信アンテナ26のそれぞれは、例えば複数のパッチアンテナが鉛直方向に沿って重なる構成を有している。受信アンテナ26のそれぞれは、物体で反射して収容空間13に入射したミリ波EWを受信する。本実施形態では、受信アンテナ26のそれぞれは、受信したミリ波EWに係る信号として当該ミリ波EWの波形を示す信号を制御部COに出力する。なお、電磁波の波形を形成する要素として、受信アンテナ26が受信する電磁波の強度が含まれる。
【0049】
制御部COは、各受信アンテナ26から上記ミリ波EWに係る信号が入力すると、これら受信したミリ波EWに係る信号と、送信アンテナ25から出射する電磁波の波形を示す信号とに基づいて、例えばFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式により、車両VEから当該物体までの距離の算出を行う。また、本実施形態では、複数の受信アンテナ26が左右方向に間隔を空けて設けられているため、物体で反射して各受信アンテナ26に受信されるミリ波EWには位相差が生じる。制御部COは、この位相差に基づいて、
図4に示す検知可能領域FA内の物体OBが、例えば、上方視における検知可能領域FAの中央を前方に延びる基準線SLに対して、左右のどちらにどの程度の角度θで偏在するかを算出することができる。このように複数の受信アンテナを並列して、これらの受信アンテナが受信する電磁波の位相差に基づいて検知可能領域内の物体の位置を算出する方式は電子スキャン方式と呼ばれる。このような電子スキャン方式において、電磁波を走査する所定の方向は複数の受信アンテナが並列される方向に相当し、本実施形態では左右方向である。このため、本実施形態において、電磁波を走査する所定の方向に垂直な方向は概ね鉛直方向である。
【0050】
なお、センサ部20のスキャン方式は電子スキャン方式に限定されない。例えば、
図5に示すように、1つの受信アンテナ26を鉛直方向に延びる軸Ax中心に回転させて、受信アンテナ26の左右方向に対する角度を変えてもよい。なお、
図5は、当該1つの受信アンテナ26を上方視した図である。これにより、1つの受信アンテナ26が受信する電磁波には、当該受信アンテナ26の角度ψに応じて位相差が生じる。そのため、制御部COは、この位相差に基づいて、検知可能領域FA内の物体OBが、例えば、上記基準線SLに対して左右のどちらにどの程度の角度θで偏在するかを算出することができる。このように機械的に受信アンテナの向きを変えることによって生じた電磁波の位相差に基づいて検知可能領域内の物体の位置を算出する方式はメカニカルスキャン方式と呼ばれる。このメカニカルスキャン方式において、電磁波を走査する所定の方向は受信アンテナの角度ψが規定される方向に相当し、本実施形態では左右方向である。このため、本実施形態において、電磁波を走査する所定の方向に垂直な方向は概ね鉛直方向である。
【0051】
あるいは、センサ部20は、送信アンテナ25が例えば鉛直方向に延びる軸中心に回転しつつパルス状の電磁波を出射する構成とされてもよい。電磁波が前方に出射される場合において、このように送信アンテナ25を鉛直方向に延びる軸中心に回転させることによって、電磁波を走査する方向を左右方向にすることができる。なお、この場合、受信アンテナ26は1つでよく、制御部COは、例えば、ToF(Time of Flight)方式によって物体OBの位置の算出を行う。
【0052】
このように、本実施形態の制御部COは、電磁波であるミリ波を所定の方向に沿って走査するようにセンサ部20を動作させ、物体OBで反射してセンサ部20に受信された電磁波に基づいて物体OBの位置を算出する。
【0053】
図2に示すように、ヒータ30は、発熱部材としての複数の電熱線31を含んでいる。電熱線31のそれぞれは、アウターカバー12の内面12iのうち透過領域AR内とその近傍に取り付けられている。なお、発熱部材は、内面12iのうち透過領域ARの外側の領域の全体に亘って取り付けられてもよい。電熱線31のそれぞれは、コネクタ33を介して電源回路32に接続される。電源回路32は、制御部COからの制御信号により、不図示の電源からの電流を電熱線31のそれぞれに供給する。これにより、電熱線31のそれぞれは、通電に対する電気抵抗によって所定の温度まで昇温し、その結果、少なくとも透過領域ARが加熱される。
【0054】
このような電熱線31は、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、アルミペースト、ITOペーストなどの導電ペーストを内面12iに塗布或いは印刷することによって、又は所定の接着剤によって、上記内面12iに取り付けられてもよい。あるいは、電熱線31は、金属線をアウターカバー12に熱布線等によってアウターカバー12に取り付けられてもよい。なお、熱布線とは、電熱線を設ける基材に熱を加えて当該基材を軟化させ、軟化した基材の箇所に金属線を加圧して当該基材に埋設することを言う。したがって、熱布線による場合、発熱部材の少なくとも一部をアウターカバー12の内部に取り付けられることができる。
【0055】
なお、発熱部材を取り付ける位置はアウターカバー12の外面12oであってもよい。ただし、アウターカバー12の内面12iやアウターカバーの内部に発熱部材を取り付けることによって、発熱部材に氷雪や汚れ等が付着することを防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、発熱部材は、少なくとも透過領域ARを加熱する領域に取り付けられればよく、例えば、光出射領域LRを加熱可能な領域に取り付けられても取り付けられなくてもよい。
【0057】
図6は、本実施形態におけるヒータ30の主に透過領域AR近傍の様子を示す図である。
図6に示すように、本実施形態では、複数の電熱線31は、電磁波を走査する方向である左右方向に沿って延在しており、破線で示される透過領域ARの全周囲を取り囲んでいる。このように、本実施形態の発熱部材は、透過領域ARの全周囲を囲うように取り付けられている。なお、図が煩雑になることを避けるため、本図及び以後の図において、電熱線31の一部への符号の付与を省略している。
【0058】
また、本実施形態では、複数の電熱線31は同じ太さであり、透過領域ARの外側において、互いに隣り合う電熱線31同士の間隔は同一のD1である。なお、図が煩雑になることを避けるため、本図及び以後の図において、電熱線31の間隔D1の一部への符号の付与を省略している。複数の電熱線31のうち、一部の電熱線31A,31B,31C,31Dのそれぞれは、透過領域ARの内側の一部の領域を横切る。透過領域ARの内側において、電熱線31A,31Bの間隔と、電熱線31B,31Cの間隔と、電熱線31C,31Dの間隔とはそれぞれ同一のD2である。間隔D2は間隔D1よりも広く、本実施形態では、間隔D1の概ね3倍である。このように電熱線31A~31Dが互いに間隔を空けて取り付けられることにより、透過領域ARの内側のうち発熱部材が取り付けられていない領域が収容空間13に対して露出している。なお、本実施形態では、電熱線31A~31Cの直下の電熱線31のそれぞれは、透過領域ARを横切らず、電熱線31A~31Cのいずれかに接続されている。このようにして、本実施形態では、一部の電熱線同士が並列に接続されることで、全ての電熱線31が導通されている。
【0059】
図7は、
図6で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図6で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、電熱線31が直列に形成されており、少なくとも透過領域AR及びその周囲において、電熱線31が分岐しておらず、透過領域ARにおける電熱線31の配置は
図6における透過領域ARにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31の発熱量の偏在を抑制することができる。
【0060】
ここで、
図6,7に示すように、透過領域ARの内側及び透過領域ARの外側のそれぞれにおいて、互いに同じ面積の複数の単位領域SRを定める。なお、
図6,7では、図が不明瞭になることを避けるために、透過領域ARの内側及び外側のそれぞれにおける単位領域SRが1つずつ、一点鎖線により例示的に示されている。本実施形態では、上記のような電熱線31の配置によって、透過領域ARの内側の各単位領域SRを概ね1つの電熱線31が横切り、透過領域ARの外側の各単位領域SRを概ね3つの電熱線31が横切る。したがって、本実施形態では、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、透過領域ARの内側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、透過領域ARの外側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。このように、本実施形態では、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるように発熱部材がアウターカバー12に取り付けられている。なお、本明細書では上記比率は密度と呼ばれる場合がある。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の車両用センサ装置1は、第1の態様として次のように把握することができる。すなわち、本実施形態の車両用センサ装置1は、アウターカバー12と、アウターカバー12よりも車両VEの内側に配置され、アウターカバー12を透過するミリ波EWを送受信してアウターカバー12の内側に入射するミリ波EWに係る信号を出力するセンサ部20と、アウターカバー12に取り付けられ、アウターカバー12のうちセンサ部20から送信されるミリ波EWが透過する透過領域ARを通電により加熱する発熱部材である複数の電熱線31と、を備えており、上記発熱部材は、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるようにアウターカバー12に取り付けられる。
【0062】
このような第1の態様の車両用センサ装置1によれば、透過領域ARを通電により加熱する複数の電熱線31が発熱部材としてアウターカバー12に取り付けられているため、例えば灯具ユニットLUからの輻射熱の熱伝導を利用してアウターカバー12を温める場合に比べて、アウターカバー12を直接的に温めることができ、アウターカバー12に付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。また、この車両用センサ装置1によれば、発熱部材が、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるように取り付けられており、透過領域ARの内側の領域に占める発熱部材の比率が小さいため、ミリ波が発熱部材で反射してノイズとなることが抑制され得る。さらに、本実施形態では、透過領域ARの内側にも発熱部材が取り付けられるため、透過領域ARの内側に発熱部材が非配置の場合に比べて、透過領域ARの内側に付着した氷雪等を効果的に除去することができる。このように、第1の態様として把握する車両用センサ装置1によれば、発熱部材によるミリ波の反射を抑制しつつ氷雪等を効果的に除去し得るため、検知精度の低下を抑制し得る。
【0063】
また、本実施形態の車両用センサ装置1は、第2の態様として次のように把握することができる。すなわち、本実施形態の車両用センサ装置1は、アウターカバー12と、アウターカバー12よりも車両VEの内側に配置され、アウターカバー12を透過する所定の電磁波であるミリ波EWを送受信してアウターカバー12の内側に入射するミリ波EWに係る信号を出力するセンサ部20と、ミリ波EWを所定の方向である左右方向に沿って走査するようにセンサ部20を動作させ、所定の物体で反射してセンサ部20に受信されたミリ波EWに基づいて物体の位置を算出する制御部COと、アウターカバー12に取り付けられ、アウターカバー12のうちミリ波EWが透過する透過領域ARを通電により加熱する発熱部材である複数の電熱線31と、を備え、発熱部材は、透過領域ARの内側の一部の領域を所定の方向に沿って延在して、透過領域ARを横切る。
【0064】
この車両用センサ装置1によれば、発熱部材である複数の電熱線31が透過領域ARの内側を横切るため、左右方向における透過領域ARの全長に渡って透過領域ARが加熱され、透過領域ARを効果的に温めることができる。よって、透過領域ARに付着した氷雪等を効果的に溶かし得る。ところで、透過領域ARの内側の発熱部材が、電磁波を走査する左右方向と交差する方向に延在する場合、走査する電磁波が発熱部材で反射して、受信される電磁波の左右方向における強度分布が変化し、検知精度の低下を招き得る。これに対し、この車両用センサ装置1では、上記発熱部材が透過領域ARの内側を左右方向に沿って横切る。このため、センサ部20に受信される電磁波の左右方向における強度分布の変化が抑制され、検知精度の低下を抑制することができる。このように、第2の態様として把握する車両用センサ装置1によれば、発熱部材によるミリ波の反射の影響を抑制しつつ氷雪等を効果的に除去し得るため、検知精度の低下を抑制し得る。
【0065】
また、本実施形態の車両用センサ装置1では、電磁波を走査する所定の方向が左右方向である。車両用センサ装置において、検知対象となる物体は、一般的に、他車両や歩行者などの移動体であることが多い。一般的に、このような移動体は、電磁波を左右方向又は前後方向に走査することによって検知され易い。よって、上記のように、所定の方向が左右方向であることによって、他車両や歩行者などを効果的に検知し得る。また、一般的に、車両に取り付けられた車両用センサ装置のアウターカバー12は、上記のように概ね鉛直方向に沿って延在するため、所定の方向が左右方向である場合、所定の方向に垂直な方向は概ね鉛直方向となる。このような鉛直方向において、透過領域ARの外側に発熱部材が密に取り付けられることによって、透過領域ARの上側又は下側に付着した氷雪が効果的に除去される。その結果、氷雪の自重によって氷雪が落下することが促進され、氷雪の除去効率が高まり得る。
【0066】
また、本実施形態の車両用センサ装置1では、発熱部材が透過領域ARの全周囲を囲うようにアウターカバー12に取り付けられる。このようにすることで、透過領域ARの全周囲のうち一部に発熱部材を取り付ける場合に比べて、透過領域ARを効果的に温めることができ、氷雪等の除去効率が向上し得る。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0068】
本実施形態に係る車両用センサ装置1は、ヒータの構成が異なる点を除いて第1実施形態に係る車両用センサ装置1と同様の構成を有する。よって、本実施形態に係るヒータについてのみ説明する。
【0069】
図8は、本実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
図8に示すように、本実施形態のヒータの発熱部材は、第1実施形態と同様に、左右方向に延在する複数の電熱線31であるが、透過領域ARの内側には発熱部材である電熱線31が非配置である。なお、本実施形態では、透過領域ARの内側を横切らない電熱線31の透過領域AR側の端部のそれぞれに、これらの電熱線31が延在する方向に対して概ね垂直に延びる電熱線31Pが接続される。このようにして、本実施形態では、一部の電熱線同士が並列に接続されることで、全ての電熱線31が導通されている。なお、全ての電熱線を導通させるための配線パターンはこれに限定されるものではない。
【0070】
図9は、
図8で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図8で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図8の電熱線31と同様に透過領域ARに電熱線31が非配置とされる。従って、本実施形態の車両用センサ装置1は、上記第2の態様には該当せず、上記第1の態様のみに該当する。また、
図8の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域ARの周囲において、電熱線31が分岐していない。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0071】
図8,9に示す電熱線31の配置によれば、透過領域ARの内側におけるアウターカバー12の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均はゼロである。このように、本実施形態では、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、透過領域ARの内側の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、透過領域ARの外側の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。このため、本実施形態では、発熱部材が透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるようにアウターカバー12に取り付けられている。したがって、本実施形態の車両用センサ装置1は、第1実施形態の車両用センサ装置1を第1の態様で把握する場合と同様に、発熱部材によるミリ波の反射を抑制しつつ氷雪等を効果的に除去し得るため、検知精度の低下を抑制し得る。なお、
図8,9では、
図6と同様に、透過領域ARの内側と外側における単位領域SRが、それぞれ1つずつ一点鎖線で例示的に示されている。なお、本実施形態では、発熱部材である電熱線31は透過領域ARを横切らない。このため、本実施形態の車両用センサ装置1は、上記第1の態様のみに該当し、上記第2の態様には該当しない。
【0072】
また、第1実施形態と同様に、電磁波を走査する所定の方向が左右方向であるため、上記移動体の検知がし易く、また、当該所定の方向に垂直な方向が概ね鉛直方向であるため、氷雪の除去効率が高まり得る。
【0073】
また、本実施形態では、発熱部材が透過領域ARの内側に非配置であるため、発熱部材による電磁波の反射をより効果的に抑制し得る。一方、透過領域ARの外側には発熱部材が配置されているため、透過領域ARに付着した氷雪等を発熱部材からの熱によって効果的に溶かし得る。
【0074】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係る車両用センサ装置1は、ヒータの構成が異なる点を除いて第1実施形態に係る車両用センサ装置1と同様の構成を有する。よって、本実施形態に係るヒータについてのみ説明する。
【0076】
図10は、本実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
図10に示すように、本実施形態のヒータの発熱部材は、第1実施形態と同様に、それぞれが同じ太さである複数の電熱線31である。しかし、本実施形態では、複数の電熱線31が以下のような配置でアウターカバー12に取り付けられている。
【0077】
図10に示すように、発熱部材である複数の電熱線31のそれぞれは、電磁波を走査する方向である左右方向に沿って延在している。また、透過領域ARの外側において、互いに隣り合う電熱線31同士の間隔は同一のD1である。これら複数の電熱線31のうち、電熱線31A~31Iのそれぞれは、透過領域ARの内側の一部の領域を横切る。また、これら電熱線31A~31Iのうち電熱線31A~31Cは透過領域ARの内側における上側領域ARouをそれぞれ横切り、電熱線31G~31Iは透過領域ARの内側における下側領域ARodをそれぞれ横切り、電熱線31D~31Fは上側領域ARouと下側領域ARodとに挟まれる中心側領域ARiをそれぞれ横切る。電熱線31A~31Iの間に位置する電熱線31のそれぞれは、透過領域ARの外縁に沿って概ね鉛直方向に延びる電熱線に接続される。このようにして、本実施形態では、一部の電熱線同士が並列に接続されることで、全ての電熱線31が導通されている。なお、全ての電熱線を導通させるための配線パターンはこれに限定されるものではない。
【0078】
図11は、
図10で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図10で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図10の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域AR及びその周囲において電熱線31が分岐しておらず、透過領域ARにおける電熱線31の配置は
図10における透過領域ARにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0079】
図10,11において破線で示すように、本実施形態では、上側領域ARouは透過領域ARを左右方向に沿って4区画に等分割した場合の上側の1区画分に、下側領域ARodは下側の1区画分に、中心側領域ARiは中央の2区画分に、それぞれ相当する。上側領域ARouには電熱線31A~31Cが同じ間隔D2で配置され、下側領域ARodには電熱線31G~31Iが同じ間隔D2で配置され、中心側領域ARiには電熱線31D~31Fが同じ間隔D3で配置されている。本実施形態では、間隔D2は間隔D1の3倍とされるが、間隔D2は間隔D1よりも大きければ、3倍より大きくても小さくてもよい。また、間隔D3は間隔D2よりも大きく、本実施形態では、間隔D1の5倍とされるが、間隔D3は間隔D2よりも大きければ、間隔D1の5倍より大きくても小さくてもよい。例えば間隔D3は間隔D2の概ね2倍以上であってもよい。
【0080】
ここで、
図10,11に示すように、上側領域ARou、下側領域ARod、中心側領域ARi、及び透過領域ARの外側のそれぞれにおいて、互いに同じ面積の複数の単位領域SRを定める。なお、
図10,11では、図が不明瞭になることを避けるために、上側領域ARou、下側領域ARod、中心側領域ARi、及び透過領域ARの外側の単位領域SRが1つずつ、一点鎖線により例示的に示されている。
【0081】
上記のような電熱線31の配置によって、本実施形態では、上側領域ARouの各単位領域SR及び下側領域ARodの各単位領域SRを概ね2つの電熱線31が横切り、中心側領域ARiの各単位領域SRを概ね1つの電熱線31が横切る。また、透過領域ARの外側の各単位領域SRを概ね4つの電熱線31が横切る。
【0082】
したがって、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、透過領域ARの内側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、透過領域ARの外側の単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。このように、本実施形態では、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるように発熱部材がアウターカバー12に取り付けられている。このため、第1実施形態と同様に、ミリ波が発熱部材で反射してノイズとなることが抑制され得る。また、透過領域ARの内側にも発熱部材が取り付けられるため、透過領域ARの内側に発熱部材が非配置の場合に比べて、透過領域ARの内側に付着した氷雪等を効果的に除去することができる。
【0083】
また、本実施形態では、透過領域ARの内側に着目した場合に、中心側領域ARiの各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、上側領域ARouの各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。同様に、中心側領域ARiの各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、下側領域ARodの各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。したがって、本実施形態では、透過領域ARにおける電磁波を走査する左右方向に垂直な方向において、透過領域ARの内側の発熱部材が透過領域ARの外縁側よりも中心側の方が疎になるようにアウターカバー12に取り付けられている。
【0084】
車両用センサ装置において、検知対象となる物体は、一般的に、電磁波を走査する方向に垂直な方向における透過領域の中心側の領域を透過して送受信される電磁波に照射される物体である。なお、このような検知対象となる物体は、一般的に、他車両や歩行者などの移動体である。したがって、本実施形態のように、透過領域ARの内側において、中心側領域ARiが相対的に疎になるように発熱部材を取り付けることによって、透過領域ARの中心側で電磁波が反射してノイズとなることが抑制され、検知対象である例えば移動体の検知精度の低下が抑制され得る。
【0085】
一方、上記のような車両用センサ装置において、透過領域ARの内側のうち上縁部側の領域を透過して送受信される電磁波は、主に、車両VEの運転者の視点よりも概ね上側に存在する標識などの非移動体で反射した電磁波であると考えられる。また、透過領域ARの内側のうち下縁部側の領域を透過して送受信される電磁波は、主に、車両VEの運転者の視点よりも概ね下側に存在する道路などの非移動体で反射した電磁波であると考えられる。このため、検知対象が上記のような移動体である場合、上側領域ARouや下側領域ARodに発熱部材を相対的に密に配置しても、検知対象の検知精度の低下を招きにくい。よって、発熱部材を上側領域ARouや下側領域ARodに密に配置することによって、検知精度に影響を及ぼさずに氷雪などをさらに効果的に除去し得る。したがって、検知精度の低下をより抑制し得る。
【0086】
また、第1実施形態と同様に、電磁波を走査する所定の方向が左右方向であるため、上記移動体をより検知し易くなり得る。また、当該所定の方向に垂直な方向が概ね鉛直方向であるため、氷雪の除去効率がさらに高まり得る。
【0087】
なお、上側領域ARou、下側領域ARod、及び中心側領域ARiは上記のように定められる必要はなく、例えば検知対象となる物体に応じて、上側領域ARou、下側領域ARod、及び中心側領域ARiを適宜規定することができる。例えば、上側領域ARouを透過領域ARの左右方向に垂直な方向に沿った10~30%の範囲に、中心側領域ARiを透過領域ARの左右方向に垂直な方向に沿った40~80%の範囲に、下側領域ARodを透過領域ARの左右方向に垂直な方向に沿った10~30%の範囲に、それぞれ定めてもよい。
【0088】
また、本実施形態上記説明では、透過領域ARにおける左右方向に垂直な方向において、透過領域ARの内側の発熱部材が、透過領域ARの外縁側よりも中心側において疎になるように取り付けられる例を説明した。しかし、発熱部材が透過領域ARを横切る場合、この例に限定されない。
図12は、
図10の電熱線の配線パターンの第2の変形例を示す図であり、
図10で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
図12に示す変形例では、上側領域ARou及び下側領域ARodにおける電熱線31同士の間隔D2が、中心側領域ARiにおける電熱線31同士の間隔D3よりも大きい。このような電熱線31に配置により、本例では、上側領域ARouの単位領域SR及び下側領域ARodの単位領域SRを概ね1つの電熱線31が横切り、中心側領域ARiの単位領域SRを概ね2つの電熱線31が横切る。この例においても、一部の電熱線同士が並列に接続されることで、全ての電熱線31が導通されている。なお、全ての電熱線を導通させるための配線パターンはこれに限定されるものではない。
【0089】
図13は、
図12で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図12で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図12の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域AR及びその周囲において電熱線31が分岐しておらず、透過領域ARにおける電熱線31の配置は
図12における透過領域ARにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0090】
これら
図12、
図13に示す変形例では、上側領域ARouには電熱線31A,31Bが間隔D2で配置され、下側領域ARodには電熱線31G,31Hが間隔D2で配置され、中心側領域ARiには電熱線31C~31Fが同じ間隔D3で配置されている。これらの変形例では、間隔D2は間隔D1の5倍とされるが、間隔D2は間隔D1よりも大きければ、5倍より大きくても小さくてもよい。また、間隔D3は間隔D2よりも小さく、これらの変形例では、間隔D1の5倍とされるが、間隔D3は間隔D2よりも小さければ、間隔D1の3倍より大きくても小さくてもよい。例えば間隔D3は間隔D2の概ね半分以下であってもよい。これらの変形例では、透過領域ARにおける左右方向に垂直な方向において、透過領域ARの内側の発熱部材が、透過領域ARの外縁側よりも中心側の方が密になるように取り付けられている。これらの構成によれば、中心側領域ARiを上側領域ARouや下側領域ARodよりも効果的に加熱することができるため、中心側領域ARiに付着した氷雪等を効果的に除去することができ、検知精度の低下を抑制し得る。なお、透過領域ARの内側の発熱部材は、透過領域ARの外縁側と中心側とで同じ密度で取り付けられてもよい。
【0091】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
本実施形態に係る車両用センサ装置1は、ヒータの構成が異なる点を除いて第1実施形態に係る車両用センサ装置1と同様の構成を有する。よって、本実施形態に係るヒータについてのみ説明する。
【0093】
図14は、本実施形態に係るヒータの主に透過領域近傍及び光出射領域近傍を
図6と同様の視点で示す図である。
図14に示すように、本実施形態のヒータの発熱部材は、第1実施形態と同様に、それぞれが同じ太さである複数の電熱線31である。しかし、本実施形態では、複数の電熱線31が以下のような配置でアウターカバー12に取り付けられている。
【0094】
図14に示すように、本実施形態において、複数の電熱線31は、透過領域AR及び透過領域AR近傍から、光出射領域LR及び光出射領域LR近傍まで、左右方向に沿って延在している。このような構成により、透過領域ARだけでなく光出射領域LRが複数の電熱線31によって加熱される。これら電熱線31のうち電熱線31A~31Dのそれぞれは、第1実施形態と同様に透過領域ARの内側の一部の領域を横切り、さらに光出射領域LRの内側の一部の領域を横切る。また、本実施形態では、電熱線31Dから3つ下に位置する電熱線31Eが、光出射領域LRの内側の一部の領域を横切る。このように、本実施形態では、透過領域ARから延在する4つの電熱線31A,31B,31C,31D、及び透過領域ARの外側から延在する電熱線31Eのそれぞれが、光出射領域LRの内側の領域の一部を横切る。
【0095】
電熱線31A~31Dの間の電熱線31のそれぞれは、透過領域AR及び光出射領域LRを挟んで左右方向に3分割されており、透過領域ARと光出射領域LRとの間の第1区間と、透過領域ARを基準として第1区間側とは反対側の第2区間と、光出射領域LRを基準として第1区間側とは反対側の第3区間とを有している。これら第1~第3区間は、鉛直方向に延びる電熱線を介して電熱線31A~31Cに並列に接続される。また、電熱線31Dの直下の2本の電熱線31は、光出射領域LRを挟んで2分割されており、光出射領域LRを基準として透過領域AR側の第1区間と、光出射領域LRを基準として第1区間側とは反対側の第2区間とを有している。これら電熱線31の第1区間及び第2区間のそれぞれは、鉛直方向に延びる電熱線を介して電熱線31Dに並列に接続される。このようにして、本実施形態では、一部の電熱線同士が並列に接続されることで、全ての電熱線31が導通されている。なお、全ての電熱線31を導通させるための配線パターンはこれに限定されるものではない。
【0096】
図15は、
図14で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図14で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図14の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域AR、光出射領域LR、及びその周囲において電熱線31が分岐しておらず、透過領域AR及び光出射領域LRにおける電熱線31の配置は
図14における透過領域AR及び光出射領域LRにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0097】
本実施形態において、透過領域ARの内側及び光出射領域LRの内側のそれぞれにおいて、電熱線31A,31Bの間隔、電熱線31B,31Cの間隔、及び電熱線31C,31Dの間隔は、それぞれ同じD2である。また、光出射領域LRの内側において、電熱線31D,31Eの間隔もD2である。一方、透過領域ARの内側及び光出射領域LRの内側を除いて、互いに隣り合う電熱線31同士の間隔は同じD1である。本実施形態では、間隔D2は、間隔D1の3倍とされるが、間隔D2は間隔D1よりも大きければ、3倍より大きくても小さくてもよい。
【0098】
ここで、
図14,15に示すように、透過領域ARの内側及び透過領域ARの外側のそれぞれにおいて、互いに同じ面積の複数の単位領域SRを定める。また、光出射領域LRの内側及び光出射領域LRの外側のそれぞれにおいて、互いに同じ面積の複数の単位領域SRを定める。なお、
図14,15では、図が不明確になることを避けるために、複数の単位領域SRのうち一部の単位領域SRのみが示されている。
【0099】
上記のような電熱線31の配置によって、透過領域ARの内側の各単位領域SRを概ね1つの電熱線31が横切り、透過領域ARの外側の各単位領域SRを概ね3つの電熱線31が横切る。したがって、本実施形態では、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、透過領域ARの内側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、透過領域ARの外側の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。このように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるように発熱部材がアウターカバー12に取り付けられている。
【0100】
また、上記のような電熱線31の配置によって、光出射領域LRの外側の各単位領域SRを概ね3つの電熱線31が横切る。一方、光出射領域LRの内側では、各単位領域SRを概ね1つの電熱線31が横切る。したがって、本実施形態では、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、光出射領域LRの内側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、光出射領域LRの外側の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均よりも小さい。したがって、本実施形態では、光出射領域LRの外側よりも光出射領域LRの内側の方が疎になるように発熱部材がアウターカバー12に取り付けられている。
【0101】
このような構成によれば、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が疎になるように発熱部材がアウターカバー12に取り付けられるため、第1実施形態と同様に、車両用センサ装置1の検知精度の低下を抑制し得る。本実施形態では、発熱部材が光出射領域LRを加熱するように取り付けられるため、光出射領域に付着した氷雪等を除去し得る。また、この発熱部材は、光出射領域LRの外側よりも光出射領域LRの内側の方が疎であるため、灯具ユニットLUから出射する光が光出射領域LRの内側の発熱部材で反射することが抑制され、灯具ユニットLUからの光の出射効率が低下することが抑制され得る。
【0102】
また、本実施形態では、透過領域ARの内側の発熱部材が左右方向に沿って光出射領域LRまで延在するため、透過領域ARを加熱する発熱部材によって光出射領域LRを加熱することができる。したがって、光出射領域LRを加熱するための発熱部材を別個に設ける必要がなく、配線コストを低減し得る。ただし、光出射領域LRを加熱する電熱線を、透過領域ARを加熱する電熱線とは別に設けてもよい。
【0103】
また、第1実施形態と同様に、電磁波を走査する所定の方向が左右方向であるため、上記移動体の検知がし易く、また、当該所定の方向に垂直な方向が概ね鉛直方向であるため、氷雪の除去効率が高まり得る。
【0104】
なお、本実施形態では、透過領域ARの内側の電熱線31A~31Dの全てが透過領域ARの外側を左右方向に沿って、光出射領域LRまで延在する例を説明した。しかし、電熱線31A~31Dの一部、例えば電熱線31A,31Bのみが、透過領域ARの外側を左右方向に沿って、光出射領域LRまで延在してもよい。本実施形態の車両用センサ装置1を上記第2の態様として把握する場合には、光出射領域LRの内側と外側とで発熱部材の密度を同じにしてもよいし、光出射領域LRの外側よりも内側の方が密になるように発熱部材を取り付けてもよい。
【0105】
なお、光出射領域LRの内側において発熱部材を非配置としてもよい。
【0106】
(第5実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0107】
本実施形態に係る車両用センサ装置1は、ヒータの構成が異なる点を除いて第1実施形態に係る車両用センサ装置1と同様の構成を有する。よって、本実施形態に係るヒータについてのみ説明する。
【0108】
図16は、本実施形態に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
図16に示すように、本実施形態では、発熱部材である複数の電熱線31のそれぞれは、同じ間隔D1で配置され、電磁波の走査方向である左右方向に延在している。
図16の例では、左右方向に延在するそれぞれの電熱線31が並列に接続され、全ての電熱線31が導通されている。
【0109】
図17は、
図16で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図16で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図16の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域AR及びその周囲において電熱線31が分岐しておらず、透過領域ARにおける電熱線31の配置は
図16における透過領域ARにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0110】
図16、
図17に示す本実施形態の車両用センサ装置1では、アウターカバー12のうち発熱部材が配置される領域に着目した場合に、透過領域ARの内側における各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均が、透過領域ARの外側の各単位領域SRに占める発熱部材の比率の平均と同じである。このように、本実施形態では、発熱部材が透過領域ARの内側と外側とで同じ密度で取り付けられる。従って、本実施形態の車両用センサ装置1は、上記第1の態様には該当せず、上記第2の態様のみに該当する。なお、
図16、
図17では、
図6と同様に、図が不明瞭になることを避けるために、透過領域ARの内側及び外側のそれぞれにおける単位領域SRが1つずつ、一点鎖線により例示されている。
【0111】
本実施形態では、上記のように、透過領域ARの内側における電熱線同士の間隔と外側における電熱線同士の間隔とが同じである。このため、透過領域ARの内側における電熱線同士の間隔と外側における電熱線同士の間隔とを異ならせ、かつ、全ての電熱線の導通を図るために、例えば、第1実施形態のように、透過領域ARの内側を横切る電熱線の直下の電熱線を透過領域ARを挟んで2つに分断して、分断された電熱線の透過領域AR側のそれぞれの端部を直上の電熱線に接続させる必要がない。したがって、配線を簡易にし得る。
【0112】
なお、本実施形態では、発熱部材が透過領域ARの内側と外側とで同じ密度で取り付けられる例を説明した。しかし、車両用センサ装置1を上記第2の態様で把握する場合、発熱部材は、電磁波を走査する方向に沿って延在するとともに、透過領域ARの内側の一部の領域を横切ればよい。従って、
図18の例であってもよい。
図18は、
図16の電熱線の配線パターンの第2の変形例を示す図であり、
図16で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
図16に示すように、本変形例では、透過領域ARの内側における電熱線31同士の間隔D2を外側における電熱線31同士の間隔D1よりも小さくして、透過領域ARの外側よりも透過領域ARの内側の方が密になるように発熱部材が取り付けられている。一部の電熱線31は他の一部の電熱線31と並列に接続されている。このように透過領域ARの内側に発熱部材を密に配置することで、透過領域ARの外側よりも内側を効果的に加熱することができ、透過領域ARの内側に付着した氷雪等を効果的に除去し得る。このため、検知精度の低下を抑制し得る。
【0113】
図19は、
図18で説明した電熱線31の配線パターンの変形例を示す図であり、
図18で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。本変形例では、
図18の電熱線31と同様の電熱線31が直列に形成されて、少なくとも透過領域AR及びその周囲において電熱線31が分岐しておらず、透過領域ARにおける電熱線31の配置は
図18における透過領域ARにおける電熱線31の配置と同様である。このように電熱線31を取り付けることで、電熱線31に流れる電流が電熱線31の部位によらず一定となり、電熱線31の抵抗値が一定である場合、電熱線31における発熱量の偏在を抑制することができる。
【0114】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0115】
例えば、上記実施形態では、発熱部材が透過領域ARや光出射領域LRの全周囲を囲うようにアウターカバー12に取り付けられる例を説明した。しかし、透過領域ARや光出射領域LRを加熱できるのであれば、発熱部材を透過領域や光出射領域の全周囲のうち一部に取り付けてもよい。例えば、
図20に示すように発熱部材を配置してもよい。
図20は、第1実施形態の変形例に係るヒータを
図6と同様の視点で示す図である。
図20に示すように、この変形例では、発熱部材である複数の電熱線31が、アウターカバー12のうち透過領域ARの中心Cよりも鉛直方向下側の領域にのみ取り付けられる。このような変形例では、まず透過領域ARの下側に付着した氷雪が溶け得る。その後、透過領域ARの上側に残存する氷雪が、氷雪の除去された下側の領域に落下して溶け得る。したがって、このように下側の領域にのみ発熱部材を取り付ける場合でも、氷雪等を効果的に除去し得る。また、発熱部材を透過領域ARの全周囲に取り付ける場合に比べて発熱部材を減らすことができるため、コストを低減し得る。なお、第2実施形態や第3実施形態において、透過領域ARの中心よりも鉛直方向下側の領域にのみ電熱線を取り付けてもよい。また、第4実施形態において、透過領域ARの中心や光出射領域LRの中心よりも鉛直方向下側の領域のみに電熱線を取り付けてもよい。また、これらの例において、
図7等で説明したように電熱線31が直列に形成されてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、複数の電熱線31が一方向に互いに平行に取り付けられる例を説明したが、これに限定されない。例えば、発熱部材としてメッシュ状の電熱線131を用いてもよい。
図21は、このような変形例を第2実施形態に適用した様子を
図6と同様の視点で示す図である。従って、本変形例は、車両用センサ装置1を第1の態様で把握する場合に該当する。
図21に示すように、この変形例では、複数の電熱線131のそれぞれの透過領域AR側の端部が、透過領域の外側を囲む発熱部材131Pに接続され、全ての電熱線131が導通される。発熱部材がこのようにメッシュ状であれば、アウターカバー12において発熱部材に囲われる複数の区画SDが形成される。そして、これらの区画SDを取り囲む発熱部材によって、区画SDのそれぞれを全周囲から加熱することができる。したがって、アウターカバー12をより効果的に加熱することができ、氷雪等の除去効率が向上し得る。なお、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態において、透過領域ARの内側や光出射領域LRの内側にも電熱線をメッシュ状に取り付けるとともに、透過領域ARの外側や光出射領域LRの外側よりも透過領域ARの内側や光出射領域LRの内側の方が疎になるように電熱線を取り付けてもよい。
【0117】
また、第1実施形態や第4実施形態において、透過領域ARの内側や光出射領域LRの内側に取り付けられる電熱線31を透過領域ARの外側や光出射領域LRの外側に取り付けられる電熱線よりも細くしてもよい。このようにすることで、透過領域ARの内側や光出射領域LRの内側におけるアウターカバー12の各単位領域に占める発熱部材の比率の平均を、透過領域ARの外側や光出射領域LRの外側におけるアウターカバー12の各単位領域に占める発熱部材の比率の平均よりもさらに小さくし得る。したがって、透過領域ARの内側や光出射領域LRの内側における発熱部材をより疎にし得る。
【0118】
また、第3実施形態において、透過領域ARの内側に取り付けられる電熱線を透過領域ARの外側に取り付けられる電熱線よりも細くするとともに、中心側領域ARiにおける電熱線を上側領域ARouや下側領域ARodにおける電熱線よりも細くしてもよい。これにより、第3実施形態において発熱部材の疎密をより顕著にし得る。
【0119】
また、上記実施形態では、センサ部20がミリ波レーダである例を説明した。しかし、センサ部20は、アウターカバー12を透過する所定の電磁波を送受信して車両VEの外側に存在する物体を検知可能であれば、特に限定されない。例えば、センサ部20は、電磁波としてのレーザ光を送受信するLiDAR(Light Detection and Ranging)であってもよい。また、センサ部20が送受信する所定の電磁波は、赤外線や紫外線であってもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、発熱部材が電熱線である例を説明したが、発熱部材は、通電により加熱されるものであれば特に限定されない。例えば、発熱部材は、フィルム状の部材であってもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、車両用センサ装置1が車両用前照灯の一部として構成され、主に車両VEの前方側の物体を検知する例を説明したが、これに限られない。例えば、車両用センサ装置1を車両VEの左側や右側に取り付けて、電磁波を車両VEの左側や右側に対して送受信するようにして、左側又は右側の物体を検知するようにしてもよい。この場合、車両VEの側方に存在する2輪車や歩行者などの移動体を検知し易くなり得る。なお、車両VEの左側や右側の物体を検知する場合において、電子スキャン方式を採用する場合、送信アンテナ25と複数の受信アンテナ26とを前後方向に並べることによって、電磁波を走査する方向を前後方向にし得る。電磁波を走査する方向が前後方向の場合、電磁波を走査する所定の方向に垂直な方向を概ね鉛直方向にし得る。あるいは、車両用センサ装置1を車両VEの後方に取り付けて、電磁波を車両VEの後方側に対して送受信するようにして、後方の物体を検知するようにしてもよい。なお、車両VEの後方の物体を検知する場合において、電子スキャン方式を採用する場合、送信アンテナ25と複数の受信アンテナ26とを左右方向に並べることによって、電磁波を走査する方向を左右方向にし得る。
【0122】
また、上記第4実施形態では、車両用灯具が車両用前照灯である例を説明したが、これに限られない。例えば、車両用灯具は車両用のテールランプであってもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、電磁波を走査する方向が左右方向である例を説明したが、これに限定されない。例えば、電磁波のFOV領域が前方視において鉛直方向に偏平な略矩形となるように送信アンテナ25を構成し、この送信アンテナ25と、受信アンテナ26のそれぞれとを鉛直方向に平行な直線上に所定の間隔を空けて並べてもよい。これにより、電磁波を走査する方向を鉛直方向にし得る。また、電磁波を走査する方向は、左右方向、前後方向、及び鉛直方向に限定されるものではなく、例えば、左右方向に対して所定の角度で傾いた方向であってもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、透過領域ARが矩形となるように電磁波が送信される例を説明したが、透過領域ARが矩形とは異なる形状となるように電磁波が送信されてもよい。
【0125】
本発明によれば、検知精度の低下を抑制し得る車両用センサ装置及び当該車両用センサ装置を備える車両用灯具が提供され、例えば自動車などの分野において利用可能である。