(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電気化学装置のセパレータ及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20250117BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250117BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/403 E
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2022571259
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2021080286
(87)【国際公開番号】W WO2021232904
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】202010434825.X
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518289715
【氏名又は名称】上海恩捷新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.155,Nanlu Road,Pudong New District,Shanghai 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】程 躍
(72)【発明者】
【氏名】陳 永楽
(72)【発明者】
【氏名】史 新宇
(72)【発明者】
【氏名】胡 君
(72)【発明者】
【氏名】虞 少波
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138780(JP,A)
【文献】特表2016-532992(JP,A)
【文献】特開2013-223957(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109494390(CN,A)
【文献】特表2002-529891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置のセパレータ
を作製する方法であって、
未改質の多孔質ベースフィルムをコロナ前処理した後、導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過させ、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、導電性リチウムイオン含有化合物の粒子が含まれる改質の多孔質ベースフィルムを得るステップと、
有機物と無機物との複合体が含まれるスラリーを作製し、前記スラリーを前記改質の多孔質ベースフィルムの少なくとも一側の表面に塗布することにより、機能層を形成するステップと、を含み、
前記有機物は、ポリフッ化ビニリデンであり、
前記無機物は、三酸化アルミニウム、ベーマイト、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムのうちの少なくとも一種を含む
ことを特徴とする電気化学装置のセパレータ
を作製する方法。
【請求項2】
前記導電性リチウムイオン含有化合物は、LiAlSi
2O
6、Li
2FeSiO
4、及びLiFePO
4のうちの少なくとも一種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記導電性リチウムイオン含有化合物の粒子の粒径は5~20nmである。
ことを特徴とする請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
有機物と無機物との複合体を含む前記スラリーの原料の質量部数は、
ポリフッ化ビニリデンが5部~80部であり、無機物が3部~40部であり、有機溶剤が50~100部である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
方法。
【請求項5】
ポリフッ化ビニリデン
の分子量が10~100万であり、
有機物と無機物との複合体を含む前記スラリー中の、前記ポリフッ化ビニリデンの固体含有量は5~20wt%である、
ことを特徴とする請求項4に記載の
方法。
【請求項6】
前記有機溶剤は、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドのうちの一種類又は複数種類の組み合わせから選択されたものである、
ことを特徴とする請求項4に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的に、電気化学装置のセパレータ及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、新たな二次洗浄可能、かつ再生可能なエネルギーとして、作動電圧が高く、質量が軽く、エネルギー密度が大きいなどの利点を有し、電動工具、デジタルカメラ、携帯電話、ノートパソコンなどの分野で広く応用され、かつ強力な発展傾向を現している。
【0003】
セパレータは、リチウムイオン電池の肝心なアセンブリの一つとして、電池の正負極を隔離することにより正負極の直接接触による短絡を防止するためのものであり、良好なリチウムイオン透過性を有するとともに電池の作動時に温度の高すぎるとイオンチャネルを閉じて電池の安全を保証することが要求される。したがって、セパレータは、リチウムイオン電池の安全に対して重要な役割を果たす。
【0004】
リチウムイオン導体は、導電率が高く、活性化エネルギーが低く、電極電位が最も負であるなどの特徴を有する。層状構造のLi3N、骨格構造のLisicon(Li14ZnGeO4)、及びLiTi2P3O12を基体とする固溶体等が多く検討されている。しかし、無機リチウムイオン導体は、導電率が異なり、分解電圧が低く、金属リチウムの腐食等に耐えられない原因で、実用的価値がない。その後に見付かられたポリマー(例えばポリオキシエチレン)と塩基金属塩(例えばLiCF3SO3)との錯体などの有機リチウムイオン導体は、導電率が無機リチウムイオン導体よりも低いが、薄膜に加工されやすいので、導電率の不足を補い、かつ優れた粘弾性を有し、その結果、高エネルギーリチウム電池のセパレータ材料として広く用いられ、高比エネルギー、大容量電池及び高温燃料電池の作製に用いられる。
【0005】
現在、リチウム電池に広く応用されているセパレータは、主にポリオレフィン系の溶融延伸セパレータであり、これらの材料の有するシャットダウン効果が、電池の発熱時に安全性の向上に役立つ。しかし、従来の商用PE/PPセパレータは、電解液に対する濡れ性が低く、保液性が低く、イオン導電率が低く、熱収縮が厳しい。これらの問題は、電池の加工、サイクル、倍率性能及び高温での安全性に影響してしまう。ポリマーセパレータにセラミックペースト塗布を行うことによりセパレータの耐熱性能及び機械的性能を向上させてセパレータの安全性を向上させることは、広く応用されて検討されている。しかし、改質のベースフィルムによりリチウムイオンの透過性を向上させることが言及ぼさない。したがって、本分野では、電池の安全性を向上させるとともによりよいイオン導電率の有する電気化学装置のセパレータが必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みて、従来のセパレータのイオン導電率が低く、濡れ性が低いという欠点を解決するとともにセパレータが良好な接着性及び耐熱性を有する、電気化学装置のセパレータ及びその作製方法を提供することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の技術案は、以下のように実現される。
【0008】
本発明は、電気化学装置のセパレータであって、改質の多孔質ベースフィルムと、改質の多孔質ベースフィルムの少なくとも一側の表面に設けられる機能層とを備え、前記機能層は、有機物と無機物との複合体のスラリーを含み、前記改質の多孔質ベースフィルムには、導電性リチウムイオン含有化合物の粒子が含まれる、電気化学装置のセパレータを提供する。
さらに、前記導電性リチウムイオン含有化合物はLiAlSi2O6、Li2FeSiO4、及びLiFePO4を含む。
さらに、前記導電性リチウムイオン含有化合物の粒子の粒径は5~20nmである。
さらに、前記導電性リチウムイオン含有化合物の粒子の粒径は10~20nmである。
【0009】
さらに、有機物と無機物との複合体を含む前記スラリーの原料の構成質量の部数は、有機ポリマーが5部~80部であり、無機物が3部~40部であり、有機溶剤が50~100部である。
【0010】
ひいては、前記有機ポリマーはポリフッ化ビニリデンであり、分子量が10~100万であり、有機物と無機物との複合体を含む前記スラリーには、前記ポリフッ化ビニリデンの固体含有量が5~20wt%である。
ひいては、前記無機物は、三酸化アルミニウム、ベーマイト、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムを備える。
【0011】
ひいては、前記有機溶剤は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの一種類又は複数種類の組み合わせから選択されたものである。
【0012】
本発明は、sol-gel-水熱法により上記改質の多孔質ベースフィルムを作製する方法をさらに提供する。具体的に、未改質の多孔質ベースフィルムをコロナ前処理した後、導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過させ、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、導電性リチウムイオン含有化合物の粒子が含まれる前記改質の多孔質ベースフィルムを得る。
【0013】
さらに、前記導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過する速度は、5m/minである。
本発明は、上記電気化学装置のセパレータを作製する方法であって、
前記改質の多孔質ベースフィルムを作製するステップS1であって、
【0014】
未改質の多孔質ベースフィルムをコロナ前処理した後、導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過させ、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、前記改質の多孔質ベースフィルムを得るステップS1と、
【0015】
有機物と無機物との複合体が含まれる前記スラリーを作製するステップS2であって、
【0016】
有機ポリマーと有機溶剤とを比率に応じて機械的に撹拌混合して溶解し、無機物と有機溶剤とを比率に応じて機械的に均一に撹拌混合し、完全に溶解された有機溶液と均一に混合された無機物とを機械的に撹拌混合した後、前記スラリーを得るステップS2と、
【0017】
上記スラリーを前記改質の多孔質ベースフィルムの少なくとも一側の表面に塗布することにより、機能層を形成するステップS3と、を備える、上記電気化学装置のセパレータを作製する方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による有益な効果は以下のとおりである。
【0019】
1)本発明は、電気化学装置のセパレータ及びその作製方法を提供し、sol-gel-水熱法により導電性リチウムイオン含有化合物を作製し、導電性リチウムイオン含有化合物の小粒径の粒子をセパレータのベースフィルムに嵌入させることにより、セパレータのイオン導電率を大幅に向上させ、該セパレータが用いられる電気化学装置の内部抵抗を大幅に減少させ、そのサイクル性能を大幅に向上させ、セパレータが優れた電気化学的性能を実現し、
【0020】
2)本発明は、電気化学装置のセパレータ及びその作製方法を提供し、ベースフィルムを改質することにより、濡れ性も明らかに改善され、セパレータが優れた物理化学的性能を実現し、
【0021】
3)本発明は、電気化学装置のセパレータ及びその作製方法を提供し、有機物と無機物との複合体が含まれるスラリーを改質のベースフィルムの一側又は両側に塗布することにより、セパレータの熱収縮率を減少させ、接着性を向上させ、セパレータの濡れ性が低いという欠点を改善し、セパレータが優れた熱学的性能及び物理化学的性能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明に提供される電池のセパレータ構造の作製方法である。
【
図2】
図2は本発明のいくつかの実施の形態における電気化学装置のセパレータ構造の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の他いくつかの実施の形態における電気化学装置のセパレータ構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ここで説明された本発明を実施するための形態は、本発明を説明や解釈するためもの過ぎず、本発明を限定するものではない理解すべきである。
【0024】
本文に開示された範囲の端点及び任意の値は、いずれも該正確な範囲や値に限定されず、これらの範囲や値は、これらの範囲や値に近い値を含むと理解すべきである。数値範囲に対しては、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と単一の点値との間、及び単一の点値の間を互いに組み合わせることにより、一つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲が本文に具体的に開示されると見なされるべきである。
【0025】
本発明は、電気化学装置のセパレータであって、改質の多孔質ベースフィルム100と、改質の多孔質ベースフィルム100の少なくとも一側の表面に設けられる機能層101とを備え、前記機能層101は、有機物と無機物との複合体のスラリーを含み、前記改質の多孔質ベースフィルム100には、導電性リチウムイオン含有化合物 の粒子が含まれる、電気化学装置のセパレータを提供する。
【0026】
具体的に、前記導電性リチウムイオン含有化合物はLiAlSi2O6、Li2FeSiO4、及びLiFePO4を含む。
具体的に、前記導電性リチウムイオン含有化合物の粒子の粒径は5~20nmである。
【0027】
好ましくは、前記導電性リチウムイオン含有化合物の粒子の粒径は10~20nmである。
【0028】
本発明は、リチウムイオン電池のセパレータの機能層を作製するためのスラリーをさらに提供し、重量部数で、
5部~80部の有機ポリマーと、
3部~40部の無機物と、
50~100部の有機溶剤と、という構成部分を備える。
【0029】
具体的に、前記有機ポリマーはポリフッ化ビニリデンであり、分子量が10~100万であり、固体含有量が5~20wt%である。
【0030】
好ましくは、前記無機物は、三酸化アルミニウム、ベーマイト、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムを備える。
【0031】
好ましくは、前記有機溶剤は、NMP、DMAC、アセトン、DMF、及びDMSOのうちの一種類又は複数種類の組み合わせから選択されたものである。
【0032】
本発明のいくつかの実施の形態において、前記ベースフィルムはPEベースフィルムである。前記PEベースフィルムは、本分野においてリチウムイオン電池のセパレータの作製に適用される様々なベースフィルムであってもよく、例えば、一般的に、直鎖状の低密度ポリエチレンのベースフィルムである。
本発明のいくつかの実施の形態において、前記ベースフィルムの厚さは5~25μmであり、前記機能層の厚さは1~4μmである。
【0033】
本発明は、sol-gel-水熱法によりリチウムブロックイオンナノ導体を作製するとともに上記多孔質ベースフィルムを改質する方法を、さらに提供する。具体的な実施方法は、未改質の多孔質ベースフィルムをコロナ前処理した後、ナノの導電性リチウムイオン含有溶液に浸漬させ、溶液がベースフィルムに完全に浸漬された後、オーブンで乾燥処理を行い、小粒径のリチウムが嵌入される導電性イオン化合物の改質のベースフィルム100を得るものである。
【0034】
具体的に、前記導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過する速度(即ち、完全に浸漬して分離する速度)は、5m/minである。
本発明は、上記電気化学装置のセパレータを作製する方法であって、
前記改質の多孔質ベースフィルム100を作製するステップS1であって、
【0035】
未改質の多孔質ベースフィルムをコロナ前処理した後、導電性リチウムイオン含有化合物の飽和水溶液のタンクを通過させ、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、前記改質の多孔質ベースフィルム100を得るステップS1と、
有機物と無機物との複合体が含まれる前記スラリーを作製するステップS2であって、
【0036】
有機ポリマーと有機溶剤とを比率に応じて機械的に撹拌混合して溶解し、無機物と有機溶剤とを比率に応じて機械的に均一に撹拌混合し、完全に溶解された有機溶液と均一に混合された無機物とを機械的に撹拌混合した後、前記スラリーを得るステップS2と、
【0037】
上記スラリーを前記改質の多孔質ベースフィルムの少なくとも一側の表面に塗布することにより、機能層101を形成するステップS3と、を備える、上記電気化学装置のセパレータを作製する方法をさらに提供する。
本発明のいくつかの実施の形態において、スラリーは、ベースフィルムの一側に塗布される。
本発明のいくつかの実施の形態において、スラリーは、ベースフィルムの両側に塗布される。
【0038】
本発明のいくつかの実施の形態において、スラリーを塗布し、水処理し、乾燥することにより、前記塗層が得られる。前記水処理のステップは、塗布フィルムを塗布した後にタンクに進入させることにより、タンク内の水がスラリーにおける溶剤を抽出させた後、スラリーをベースフィルムに硬化させて塗布層を形成させるものである。
【0039】
好ましくは、前記乾燥温度は50~60℃である。
本発明は、上記方法で作製されたリチウムイオン電池のセパレータをさらに提供する。
【0040】
また、本発明は、正極と、負極と、電解質と、本発明に係る電気化学装置のセパレータとしてのセパレータと、を備えるリチウムイオン電池を、さらに提供する。
【0041】
前記電解液は、当業者にとって周知で、一般的に、電解液リチウム塩及び有機溶剤で構成されるものである。ここで、電解液リチウム塩は、解離可能なリチウム塩を採用し、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、及び四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)等のうちの少なくとも一種類から選択されてもよい。有機溶剤は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のうちの少なくとも一種類から選択されてもよい。
【0042】
前記正極は、リチウムイオン電池用の正極材料、導電剤及び接着剤をスラリーに調製してアルミニウム箔上に塗布することにより作製されたものである。使用される正極材料は、リチウムイオン電池に用いられる任意の正極材料を備え、例えば、酸化コバルトリチウム(LiCoO2)、酸化ニッケルリチウム(LiNiO2)、酸化マンガンリチウム(LiMn2O4)、及びリン酸第一鉄リチウム(LiFePO4)等のうちの少なくとも一種類を備える。
【0043】
前記負極は、リチウムイオン電池用の負極材料、導電剤及び接着剤をスラリーに調製して銅箔上に塗布することにより作製されたものである。使用される負極材料は、リチウムイオン電池に用いられる任意の負極材料を備え、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、及びハードカーボン等のうちの少なくとも一種類を備える。
【0044】
本発明に提供されるリチウムイオン電池の主な改良点は、新たなリチウムイオン電池のセパレータが採用されることであり、正極、負極、電池のセパレータ及び電解液の配置方式(接続方式)が従来技術と同じであってもよく、これについて当業者にとって周知であるため、ここで説明を繰り返さない。
【0045】
本発明に提供されるリチウムイオン電池の作製方法は、正極と、本発明の電気化学的装置のセパレータとしてのセパレータと、負極と、を順に積層するかコアに巻回した後、前記コアに電解液を注入して封止するステップを、備える。
【0046】
ここで、前記正極、負極及び電解液の材質や構成について既に説明したが、ここで説明を繰り返さない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
以下の実施例及び比較例において、原料の物理化学的パラメータは以下のとおりである。
【0047】
LiAlSi2O6は、Al(ClO4)3、Si(OC2H5)4、C2H5OH、及びLiOH等を強力に分散してゲル化させた後、120℃の水熱反応でゲルに形成させ、乾燥した後に研磨しシートに押して、高温で固相反応させることにより得られたナノ無機粉体である。
【0048】
Li2FeSiO4は、CH3COOLi・2H2O、C6H5FeO7・5H2O、(C2H5O)4Si、C6H8O7・H2Oを、80℃で溶解し撹拌して流れ返させてゲルを得て、乾燥した後に研磨しシートに押して、高温で固相反応させることにより得られた粉体である。
【0049】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、外観が半透明や白色になる粉体や粒子である。
酸化アルミニウムは、外観が白色になる粉体である。
【0050】
ジメチルアセトアミド(DMAC)は、無色透明液体であり、低毒性、可燃性を有し、水、アルコール、エーテル、エステル、ベンゼン、クロロホルム(Chloroform)及び芳香族化合物などの有機溶剤と任意に混合することができる。
以上の原料は、いずれも市場から購入されるか又は従来技術の方法により作製されることができる。
以下の実施例及び比較例において、性能パラメータは以下の方法で測定される。
【0051】
(1)セパレータの熱収縮測定
膜面が完全であり外観に異常がないセパレータを取り、100*100mmの正方形に切断し、四周にマークした後、オーブンに入れて120℃の条件で2h焼き付け、セパレータを取り出し、焼き付けた後のセパレータのMD/TD方向のマークの長さの変化を測定する。
【0052】
(2)セパレータの界面接着測定
膜面が完全であり外観に異常がないセパレータを取り、幅が25mmであり長さが100mmである試料に打ち抜き、二本の打ち抜きされたセパレータの試料を互いに積層し、ホットプレスにより1MPaの圧力で、温度が100度であり速度が100mm/minである条件で熱間プレスを行い、引張機で接着された二本のセパレータの引張力(単位は、Nである。)を測定し、ただし、接着力=引張力/0.025(単位は、N/mである。)。
【0053】
(3)セパレータの濡れ性能測定
膜面が完全であり外観に異常がないセパレータを取り、100*100mmの正方形に切断し、セパレータの周りを平らに固定し、セパレータの中央を浮かばせ、2μlの電解液を取ってセパレータの中央に滴下し、この時でのセパレータ上でMD/TD方向に沿う液滴の延伸距離Aを記録し、5min後、再びこの時でのセパレータ上でMD/TD方向に沿う液滴の延伸距離Bを記録し、ただし、濡れ距離=(B-A)/2。
【0054】
(4)セパレータのイオン導電率測定
直径がφ50mmである4枚の円形セパレータの試料を切り取り、電解液に置き、密封して1h浸漬する。4枚のセパレータの試料を順に試験金型に入れ、電気化学ワークステーションにより測定し、抵抗値R1、R2、R3、R4を読み取る。
【0055】
面抵抗計算
層数を横座標とし、異なる層数の抵抗値を縦座標に対応してチャートを作成することにより、曲線の傾きAを算出し、セパレータの厚さDを測定し、ここで、試料の面抵抗値R=A・S、セパレータのイオン導電率=D/R、ただし、Sは、試験の有効電極面積である。
【0056】
(5)リチウムイオン電池の内部抵抗測定―交流電圧降による内部抵抗測定法
電池が実際に能動抵抗に相当するため、電池に固定周波数及び固定電流を印加し(現在、一般的に、1KHZ周波数、50mAの小電流が用いられる。)、その電圧をサンプリングし、整流、フィルタリングなどの一連の処理により、トランスポート回路により該電池の内部抵抗値を算出する。
【0057】
(6)リチウムイオン電池のサイクル性能測定
リチウムイオン電池を室温で0.5Cレートで充電し、0.5Cレートで放電し、順次に500サイクルを行い、公式によりその容量維持率を計算し、ただし、容量維持率=(500サイクル後の電池の容量/循環前の電池の室温容量)。
【0058】
実施例1
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状の溶液aを得て、0.3kgの酸化アルミニウム粉末を2.7kgDMAC溶液に入れ、完全に分散させるまで機械的に撹拌することにより溶液bを得て、aとbを十分に撹拌し、均一に撹拌した後に、複合スラリーを得る。
【0059】
2、12umのPEベースフィルムを取り、コロナ前処理した後、LiAlSi2O6含有飽和水溶液のタンクを通過させ(速度が5m/minである。)、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、改質処理後のベースフィルム100を得る。
【0060】
3、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプにより複合スラリーをグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、改質のベースフィルム100に接触させることにより、複合スラリーを改質のベースフィルム100に塗布できるものである。)により、複合スラリーを改質のベースフィルム100の一側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、水処理の後に三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、(
図3に示すような)二重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをAと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが14μmであり、塗布層の厚さが2μmである。
【0061】
実施例2
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状の溶液aを得て、0.3kgの酸化アルミニウム粉末を2.7kgDMAC溶液に入れ、完全に分散させるまで機械的に撹拌することにより溶液bを得て、aとbを十分に撹拌し、均一に撹拌した後に、複合スラリーを得る。
【0062】
2、12umのPEベースフィルムを取り、コロナ前処理した後、LiAlSi2O6含有飽和水溶液のタンクを通過させ(速度が5m/minである。)、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、改質処理後のベースフィルム100を得る。
【0063】
3、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプにより複合スラリーをグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、改質のベースフィルム100に接触させることにより、複合スラリーを改質のベースフィルム100に塗布できるものである。)により、複合スラリーを改質のベースフィルム100の両側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、(
図2に示すような)三重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをBと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが16μmであり、両側塗布層の厚さが2μmである。
【0064】
実施例3
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状のPVDF溶液を得る。
【0065】
2、12umのPEベースフィルムを取り、コロナ前処理した後、LiAlSi2O6含有飽和水溶液のタンクを通過させ(速度が5m/minである。)、水処理の後にオーブンで乾燥処理を行い、乾燥後、改質処理後のベースフィルム100を得る。
【0066】
3、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプによりゴム状のPVDF溶液をグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、改質のベースフィルム100に接触させることにより、ゴム状のPVDF溶液を改質のベースフィルム100に塗布できるものである。)により、ゴム状のPVDF溶液を改質のベースフィルム100の両側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、(
図2に示すような)三重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをCと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが16μmであり、両側塗布層の厚さが2μmである。
【0067】
比較例1
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状の溶液aを得て、0.3kgの酸化アルミニウム粉末を2.7kgDMAC溶液に入れ、完全に分散させるまで機械的に撹拌することにより溶液bを得て、aとbを十分に撹拌し、均一に撹拌した後に、複合スラリーを得る。
【0068】
2、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプにより複合スラリーをグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、ベースフィルムに接触させることにより、複合スラリーをベースフィルムに塗布できるものである。)により、複合スラリーをベースフィルムの一側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、水処理の後に三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、二重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをDと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが14μmであり、塗布層の厚さが2μmである。
【0069】
比較例2
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状の溶液aを得て、0.3kgの酸化アルミニウム粉末を2.7kgDMAC溶液に入れ、完全に分散させるまで機械的に撹拌することにより溶液bを得て、aとbを十分に撹拌し、均一に撹拌した後に、複合スラリーを得る。
【0070】
2、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプにより複合スラリーをグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、ベースフィルムに接触させることにより、複合スラリーをベースフィルムに塗布できるものである。)により、複合スラリーをベースフィルムの両側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、二重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをEと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが16μmであり、両側塗布層の厚さが2μmである。
【0071】
比較例3
1、0.7kgのポリフッ化ビニリデンを6.3kgのDMAC溶液に入れ、完全に溶解させるまで機械的に撹拌することにより透明ゴム状のPVDF溶液を得る。
【0072】
2、グラビアロールによる塗布方式(グラビアロールにより塗布する具体的な方法は、ポンプによりゴム状のPVDF溶液をグラビアロールに圧送した後、グラビアロールを回転させて材料をグラビアロールに連れて、ベースフィルムに接触させることにより、ゴム状のPVDF溶液をベースフィルムに塗布できるものである。)により、ゴム状のPVDF溶液をベースフィルムの両側に塗布し(塗布速度は、30m/minである。)、三段階のオーブンで乾燥し(各段階のオーブン温度は、それぞれ50℃、60℃、55℃である。)、乾燥後、二重塗布のリチウムイオン電池のセパレータを得て、該バッチのセパレータをFと表記し、ただし、前記塗布されたリチウムイオン電池のセパレータの厚さが16μmであり、両側塗布層の厚さが2μmである。
【0073】
当業者にとって周知の電池の通常の作製方法(正極、セパレータ及び負極を順に積層するか又はコアに巻回する工程と、前記コアに電解液を注入して封止する工程と、放置工程と、化成(Formation)工程と、キャパシティ・チェック(Capacity Check)工程と、などの工程が備える。)により電池を製造し、A、B、C、D、E、Fバッチのセパレータが導入された電池を追跡してマークする。
【0074】
前述の性能パラメータの測定方法に基づいて実施例1~3、及び比較例1~3におけるセパレータを測定し、その結果を表1に記録する。
【0075】
A、B、C、D、E、Fバッチのセパレータの電池から各バッチ毎に5個の電池(それぞれA1~A5、B1~B5、C1~C5、D1~5、E1~E5、F1~F5にマークする)を選択して内部抵抗及びサイクル性能測定を行い、その結果を表2に記録する。
【0076】
【0077】
【0078】
表1及び表2を参照すると、実施例1、実施例2及び実施例3と比較例1、比較例2及び比較例3との比較から分かるように、本発明に係る機能層を塗布した後、熱収縮率が大幅に減少し、優れた熱安定性及び接着性能が現れ、セパレータと極片との複合後の位置をより安定させ、電池の安全性能を対応して大幅に増加させることができる。また、濡れ性が改善され、イオン導電率も向上され、電池の内部抵抗が対応してわずかに低く、サイクル性能が向上される。
【0079】
表1及び表2を参照すると、実施例1、実施例2、実施例3と比較例1、比較例2、比較例3を順に比較して分かるように、本発明に係る改質のベースフィルムにより、濡れ性が明らかに改善され、イオン導電率が大幅に向上され、電池の内部抵抗が対応して大幅に減少され、サイクル性能が明らかに向上される。
したがって、本発明に係るセパレータは、優れた物理化学的性能、熱学的性能及び電気化学的性能を有し、極めて高い産業利用価値を有する。
上記で公知常識に関する内容について詳細に説明せず、当業者であれば理解すべきである。
【0080】
上記は、本発明のいくつかの具体的な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則内でなされた何らかの修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。本発明の技術的範囲は、明細書に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に基づいてその技術的範囲を確定すべきである。
【符号の説明】
【0081】
100 改質の多孔質ベースフィルム
101 機能層
S1~S3 ステップ1~ステップ3