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特許7621404ウェルプレート及びそれを備える3次元細胞培養プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ウェルプレート及びそれを備える3次元細胞培養プレート
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20250117BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20250117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12N5/10
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023053903
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2022580485の分割
【原出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2023126710
(43)【公開日】2023-09-08
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】522500376
【氏名又は名称】ネクストアンドバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXT&BIO INC.
【住所又は居所原語表記】105-2-433B, New Bldg., 1, Gwanak-ro, Gwanak-gu, Seoul, 08826, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオック チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ フーン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キュウ ファン ナ
(72)【発明者】
【氏名】イェ シ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ハン ジュン
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108456642(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0187136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0275328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 3/10
C12N 5/071
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のメインウェルと、細胞培養液が注入される前記メインウェルのそれぞれの下部に形成され、底面に凹部を含む複数個のサブウェルと、を備え、
前記メインウェルは、ウェル構造物として繰り返しパターンを有し、
前記メインウェルは、段差を有するとともに前記段差と前記サブウェルとの間に空間部を含み、
前記サブウェルは、前記凹部に向かってテーパ状になるように形成された傾斜面を有し、
前記サブウェルは、3.0-4.5mmの範囲の上端径を有し、
前記凹部は、0.45-1.5mmの範囲の上端径を有し、
前記凹部の前記上端径に対する前記サブウェルの前記上端径の長さの比は、1:0.1-0.5の範囲であり、
前記段差は、前記メインウェルの壁に対して10-60°の範囲の傾斜角(θ1)を有し、
前記サブウェルと前記凹部の間の前記傾斜面(θ2)は、40-50°の範囲である、
ウェルプレート。
【請求項2】
前記ウェル構造物の各々では、前記細胞培養液が注入される前記メインウェルと、細胞が培養される前記凹部を含む前記サブウェルと、の間の前記空間部が連続的に設けられている、請求項1に記載のウェルプレート。
【請求項3】
前記メインウェルは、前記段差を形成して前記空間部に接続されており、
前記サブウェルは、前記傾斜面を形成して前記空間部に接続されている、請求項1に記載のウェルプレート。
【請求項4】
前記メインウェルは、100-300μlの範囲の個々の体積を有し、
前記凹部は、20-50μlの範囲の個々の体積を有し、
前記凹部の前記個々の体積に対する前記メインウェルの前記個々の体積の比は、1:0
.1-0.5の範囲である、請求項1に記載のウェルプレート。
【請求項5】
前記空間部は、2.0-3.0mmの範囲の高さ(ah)を有し、
前記サブウェルは、1.0-2.0mmの範囲の高さ(bh)を有し、
前記サブウェルの高さに対する前記空間部の高さの比(ah:bh)は、1:0.3-
1の範囲である、請求項1に記載のウェルプレート。
【請求項6】
請求項1に記載の前記ウェルプレートと、
前記ウェルプレートを支持する、大容量且つ高速のハイコンテントスクリーニング(H
igh contents screening:HCS)用コネクタと、
を備え、
前記ハイコンテントスクリーニング(HCS)用コネクタは、
前記ウェルプレートの下端に着脱可能に固定手段が備えられたベースと、
前記ウェルプレートの上端部に配置され、前記ベースと結合されるカバーと、を
備える、3次元細胞培養プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェルプレート及びそれを備える3次元細胞培養プレートに関する。より詳細には、均一な大きさのオルガノイドを製造するためのウェルプレート及びそれを備える3次元細胞培養プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
分化した体細胞を未分化な状態の細胞(例えば、幹細胞)に戻す過程をリプログラミング(reprogramming)という。人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)は、逆分化幹細胞、逆分化多能性幹細胞とも呼ばれ、リプログラミング因子(Oct4、Klf4、Sox2、c-Mycなど)を用いて体細胞を幹細胞に変換するものである(非特許文献1及び2)。
【0003】
人工多能性幹細胞は、細胞治療薬、生体組織工学、新薬開発、毒性学、及び精密医療に至るまでのその応用分野が幅広い。これらのアプリケーションのためには、高効率、高品質の人工多能性幹細胞及び胚幹細胞を培養する必要があり、均一な大きさで同じ効率の幹細胞が必要であるが、実際には、このような大量生産技術に対する研究は不十分であるのが実情である。また、未だ人工多能性幹細胞をリプログラミングする効率もまた非常に低いほうである。近年、臨床応用するための方法、即ち、外来遺伝子が内部に組み込まれないDNA integrationされない方法について多くの研究が進められており、その中でもエピソーマルベクター(episomal vector)のような方法で人工多能性幹細胞の生産を試みているが、これら一連の製造方法は3次元培養方法の効率及び体細胞のリプログラミング効率も同様に低いという問題点がある。
【0004】
また、人工多能性幹細胞リプログラミングのためには、2次元細胞培養プレートの底をハイドロゲルでコーティングして利用しているが、コロニーがうまく形成されず、細胞のリプログラミング後にコロニーが形成されたとしても、コロニーを分離することが容易でないので、事実上、研究目的だけでなく、商業化の支障となっている。また、既存の方法の場合、大量のクローンを作製することがほとんど不可能であり、既存の方法では人工多能性幹細胞にリプログラミングされた状態のクローンを安定的に確保することが困難である。また、人工多能性幹細胞を容易にスクリーニングできるプラットフォームも必要であるのが実情である。
【0005】
一方、大韓民国登録特許第10-1756901号(特許文献1)には、3次元の組織細胞を培養することが可能な細胞培養チップについて開示されている。前記特許文献1における細胞培養チップは、第1培養部、第2培養部及び第3培養部が各層別に形成されており、各層別に細胞増殖の進行度合いを確認することができる。しかしながら、特許文献1における細胞培養チップでは、スフェロイド及び/又はオルガノイドを高収率で得ることができないという問題点がある。
【0006】
また、細胞培養時に培養液を交換するピペッティング作業を行う場合があるが、3次元細胞培養が可能なCorningスフェロイドマイクロプレート(corning spheroid microplate)の場合、細胞培養中のスフェロイド又はオルガノイドに影響を与えて、ピペッティング作業時にスフェロイド又はオルガノイドが吸い上がったり、位置が変わったりするといったことがあるので、細胞培養環境には好ましくない問題がある。
【0007】
マトリゲル(Matrigel、BD Bioscience社製)は、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウスの肉腫細胞から抽出されたタンパク質複合体であって、ラミニン(laminin)、コラーゲン(collagen)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycan)などの細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)と線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)、上皮細胞増殖因子(epidermal growth factor、EFG)、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、トランスフォーミング増殖因子-ベータ((transforming growth factor-beta、TGF-β)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor、PDGF)などの成長因子を含む。マトリゲルをなす複合体は、多くの組織に見られる複雑な細胞外環境を提供することによって細胞培養のための基質として用いられている。
【0008】
マトリゲルは、マウス肉腫(sarcoma)に由来するものであるため、免疫原や病原菌を移入するリスクが大きい。また、マトリゲルは、細胞増殖と組織形成に用いられているが、それだけ複雑な物質であるため、細胞の再現性に大きな問題があるという批判もある。マトリゲルが単純に成長するスフェロイドに物理的な支持を呈する受動的な3D足場として機能するのか、或いは生物学的に必須の要素を提供することによって、スフェロイド形成に積極的に影響を及ぼすのかどうかも不明である。また、マトリゲルは、その価格も非常に高価である。そのため、マトリゲルは細胞培養技術分野の発展に貢献してきた物質ではあるが、このマトリゲルが技術分野の発展の阻害原因となっているのも事実である。
【0009】
そこで、本発明者らは、ハイドロゲルを用いずに人工多能性幹細胞のリプログラミング効率を高める技術について研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】大韓民国登録特許第10-1756901号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Takahashi K,Yamanaka S.Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell. 2006;126:663-676.
【0012】
【文献】Takahashi K, Tanabe K,Ohnuki M, Narita M,Ichisaka T,Tomoda K,Yamanaka S.Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors.Cell.2007;131:861-872.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ウェルプレート及びそれを備える三次元細胞培養プレートを提供することである。
【0014】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、上述した課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から当該技術分野における通常の技術者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、以下を含む幹細胞の増殖方法を提供する。
【0016】
i)細胞を培養する工程と、
ii)幹細胞を製造するためのハイドロゲルを含まない3次元細胞培養プレートを準備する工程と、
iii)前記培養された細胞を、前記ハイドロゲルを含まない3次元細胞培養プレートで幹細胞にリプログラミングさせる工程と、
iv)前記リプログラミングされた幹細胞のスフェロイド(spheroid)を形成する工程と、
v)継代培養のためにハイドロゲルを含まない3次元細胞培養プレートを準備する工程と、
vi)前記スフェロイドを分離し、ハイドロゲルを含まない3次元細胞培養プレートで1回以上継代培養する工程と、を含む幹細胞増殖方法であって、
前記3次元細胞培養プレートは、
複数個のメインウェル(main well)と、メインウェルのそれぞれの下部に形成され、細胞培養液が注入され、底面に凹部を含む複数個のサブウェル(sub well)とを含むウェルプレート(well plate)と、ウェルプレートを支持するハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタと、を含み、
前記ハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタは、ウェルプレートの下端に互いに着脱可能に固定手段が備えられたベースと、ウェルプレートの上部に配置され、ベースと結合されるカバーと、を含み、前記メインウェルは、所定の部位がテーパ状になるように段差が形成され、前記段差は、メインウェルの壁に対して10~60°範囲の傾斜角(θ)を有する。
【0017】
前記細胞は、体細胞又は幹細胞であってもよい。
【0018】
前記体細胞は、線維芽細胞であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、この技術分野で公知の体細胞であればいずれも使用可能である。
【0019】
前記幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞及び人工多能性幹細胞からなる群から選択される1種以上であってもよく、必ずしもこれに限定されるものではなく、この技術分野の公知の幹細胞であればいずれも使用することが可能である。
【0020】
前記細胞は、一般的な2次元ウェルプレート、3次元細胞培養プレート、又は本発明による3次元プレートで培養することができる。
【0021】
前記ハイドロゲルは、細胞外マトリックス(extracellular matrix)に基づくハイドロゲルであってもよい。
【0022】
前記細胞外マトリックスに基づくハイドロゲルは、マトリゲル(Matrigel、製品名)であってもよい。
【0023】
前記継代培養は、1~20世代までの継代培養であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0024】
前記vi)工程において、前記スフェロイドを単一細胞に分離し、1回以上継代培養することができる。
【0025】
前記3次元細胞培養プレートのサブウェルは、凹部に向かってテーパ状になうように傾斜面が形成され、前記サブウェル120の上端径は、3.0~4.5mmの範囲であり、前記凹部121の上端径は、0.45~1.5mmの範囲であり、前記サブウェルと凹部の傾斜面(θ2)は、40~50°の範囲であり、前記サブウェルの直径と凹部の直径に対する長さの比は、1:0.1~0.5の範囲であってもよい。
【0026】
前記3次元細胞培養プレートの前記メインウェルの個々の体積は、100~300μlの範囲であり、前記凹部の個々の体積は、20~50μlの範囲であり、前記メインウェルと凹部の個々の体積比は、平均1:0.1~0.5であってもよい。
【0027】
前記メインウェルは、段差とサブウェルとの間に空間部を含み、前記空間部の高さ(ah)は平均2.0~3.0mmの範囲であり、前記サブウェルの高さ(bh)は平均1.0~2.0mmの範囲であり、前記空間部とサブウェルの高さの比(ah:bh)は、1:0.3~1の範囲であってもよい。
【0028】
前記体細胞は、前記細胞培養プレートのサブウェルに100~1000cells/wellで播種することができる。
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。
【0031】
しかし、これは本発明を特定の実施例に限定することを意図するものではなく、本発明の思想及び技術的範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むことを理解すべきである。本発明の説明において、関連する公知技術の具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0032】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図するものではない。単数表現は、文脈上明らかに他に意味がない限り、複数表現を含む。
【0033】
本発明において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、工程、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定するためのものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、工程、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0034】
一般に、細胞、スフェロイド、オルガノイドなどを培養する際、細胞外マトリックスの役割を担うためにハイドロゲルが使用された。一般に、2次元プレート又は3次元細胞培養プレートを用いて人工多能性幹細胞をリプログラミングするとき、細胞外マトリックスに基づくハイドロゲル(例えば、マトリゲル)を細胞培養プレートにコーティングして用いる。
【0035】
しかしながら、本発明は、ハイドロゲルを含まない3次元細胞培養プレートを用いて人工多能性幹細胞を製造する方法を提供する。本発明の3次元細胞培養プレートについての具体的な説明は、以下の通りである。
【0036】
本発明は、一実施例において、以下を含む3次元細胞培養プレートを用いる。
【0037】
3次元細胞培養プレートは、複数個のメインウェル(main well)と、メインウェルのそれぞれの下部に形成され、細胞培養液が注入され、底面に凹部を含む複数個のサブウェル(sub well)を含むウェルプレート(well plate)と、
ウェルプレートを支持するハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタと、を含み、
前記ハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタは、ウェルプレートの下端に互いに着脱可能に固定手段が備えられたベースと、ウェルプレートの上部に配置され、ベースと結合されるカバーと、を含み、
前記メインウェルは、所定の部位にテーパ状になるように段差が形成され、前記段差はメインウェルの壁に対して10~60°の範囲の傾斜角(θ)を有する。
【0038】
従来の96ウェルプレートの場合、高収率の薬剤の効能を評価するために、実験及び解析を数回以上行う必要があったため、時間及びコストがかかるという問題があった。さらに、細胞培養時に培養液を交換するピペッティング作業を行うことがしばしばあるが、従来のCorningスフェロイドマイクロプレート(corning spheroid microplate)の場合、細胞培養中のスフェロイド又はオルガノイドに影響を与えて、ピペッティング作業時にスフェロイド又はオルガノイドが吸い上がったり、位置が変わったりするといったことがあるので、細胞培養環境に好ましくない問題があった。
【0039】
そこで、本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであって、ウェルプレート内に形成された複数個のメインウェル内に複数個のサブウェルを含ませ、高収率のスフェロイド/オルガノイドを作製することが可能であり、プレートを支持するハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタを含ませ、大容量の高速画像撮影時の公差を小さくし、ウェルプレート内の画像を均一に撮影できる細胞培養プレートを提供する。さらに、メインウェルの段差によって、培養される細胞は、培地交換時のピペッティング作業による影響を最小限に抑えられる細胞培養プレートを提供する。
【0040】
以下に添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。説明に先立って、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語又は単語は、通常又は辞書の意味に限定されて解釈されるべきではなく、発明者は、自身の発明を最も最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解釈されなければならない。
【0041】
従って、本明細書に記載された実施例と図面に示される構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0042】
図1(a)は、本発明の一実施例による細胞培養プレートの正面図であり、図1(b)は、本発明の一実施例による細胞培養プレートの断面図であり、図2は、本発明の一実施例による細胞培養プレートに形成されたメインウェルを詳細に示す図であり、図3は、本発明の一実施例による細胞培養プレートのウェルプレート、ベース及びカバーを示す図である((a)カバー、(b)ベース、(c)マイクロプレート及びベースの固定手段)。
【0043】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施例による細胞培養プレートを詳細に説明する。
【0044】
図1図3に示すように、本発明の一実施例による細胞培養プレート10は、複数個のメインウェル110と、メインウェル110のそれぞれの下部に形成され、細胞培養液が注入され、底面に凹部121を含む複数個のサブウェル120を含むウェルプレート100と、ウェルプレート100を支持するハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタ200とを含んで構成される。
【0045】
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施例によるウェルプレート100を詳細に説明する。
【0046】
前記ウェルプレート100は、モールドを介してプラスチック射出成形されたプレート状に製造される。このようなプラスチック射出用モールドは、メインウェル110をウェル構造物として繰り返しパターンを持たせることで、生産単価を下げ、微細加工による大きさの拡大化を容易にすることによって 製造することができる。これによって、細胞の大量生産が容易であり、使用者のニーズに合わせて様々な大きさに変形して使用することが可能である。
【0047】
前記メインウェル110は、ウェルプレート100に複数個形成されており、それぞれのメインウェル110は、段差101を含む。前記段差101は、メインウェル110の所定の部位に形成されるものであって、より詳細には、前記段差101は、メインウェル110の全長の1/3~1/2の位置に形成されてもよく、前記段差101は、メインウェル110の下端から1/3~1/2の位置に形成されてもよい。
【0048】
従来、マイクロプレートにて細胞を培養する際には培養液を交換するピペッティング作業を行う場合があるが、このような場合、細胞培養中のスフェロイド又はオルガノイドに影響を与えて、ピペッティング作業時にスフェロイド又はオルガノイドが吸い上がったり、位置が変わったりするといったことがあるので、細胞培養環境に好ましくない問題があったが、前記段差101をこのような問題を防止するために設けた。
【0049】
前記段差101は、ピペットが適用される空間であってもよく、具体的には、メインウェル110の壁に対して10~60°の範囲の傾斜角(θ)を有してもよい。又は、20~50°の範囲の傾斜角を有してもよく、好ましくは30~45°の範囲の傾斜角を有してもよい。もし、前記段差101の傾斜角が10°未満である場合には、メインウェル110内に傾斜角が小さすぎてピペットを適用できる空間が十分でないため、メインウェル110内の培養液を吸入する際、ピペットがサブウェル120の内側に滑ってしまい、スフェロイド又はオルガノイドが吸い上がったり、位置が変わったりすることがある。併せて、前記傾斜角(θ)が60°を超える場合にはピペットを適用できる空間は確保できるが、段差101の傾斜角が大きいすぎて培養液を十分に吸入し難いことがあり、サブウェル120に細胞を播種する際、細胞が全部のサブウェル120に入りきらず、段差101に播種される問題が発生するおそれがある。従って、上述した範囲の傾斜角を有することが好ましい。
【0050】
なお、本発明の一実施例によるメインウェル110は、段差101と後述するサブウェル120との間に空間部130を含むことができる。具体的には、前記空間部130は、培養液が注入される空間であって、サブウェル120内部の細胞が同じ培養液を共有できる空間である。
【0051】
より具体的には、空間部130の高さ(ah)は、平均2.0~3.0mmの範囲であってもよく、2.2~2.8mmの範囲であってもよく、又は平均2.3~2.7mmの範囲であってもよい。さらに、サブウェル120の高さ(bh)は、平均1.0~2.0mmの範囲であってもよく、又は平均1.2~1.8mmの範囲であってもよい。
【0052】
例えば、前記空間部130の高さ(ah)は平均2.5mmであり、サブウェルの高さ(bh)は平均1.5mmであってもよい。
【0053】
このとき、前記空間部とサブウェル120との高さの比(ah:bh)は、1:0.3~1の範囲であってもよく、より詳細には、空間部とサブウェル120の高さの比(ah:bh)は、1:0.4~0.9又は1:0.5~0.8であってもよい。もし、サブウェル120の高さが空間部の高さに対して1:0.3未満である場合には、サブウェル120の培地を交換する際、小さな力でも内部で培養中の細胞が抜け出すことがあり、サブウェル120の高さが空間部の高さに対して1:1を超える場合、細胞に必要な培養液が十分に変換されずにアポトーシスが誘発される可能性がある。従って、空間部130とサブウェル120は、上述した高さの範囲と高さの比を有することが好ましい。
【0054】
次に、サブウェル120は、メインウェル110のそれぞれの下部に形成されるものであって、底面に凹部121を含む。特定の態様として、前記サブウェル120は、メインウェル110の下部に複数個を含むことができる。
【0055】
メインウェル110の下部に含まれるサブウェル120は、それぞれの大きさと形状が同じであり、これにより均一な条件のスフェロイド及びオルガノイドを生成することができる。
【0056】
前記サブウェル120は、凹部121に向かってテーパ状になるように傾斜面を形成することができる。具体的には、前記サブウェル120の上端部は、垂直方向を基準に下降するほど水平幅が小さくなることがある。例えば、前記サブウェル120の上端部は、逆ピラミッド状からなることができる。図示の実施例では、サブウェル120の上端部がピラミッド状又は漏斗状のように、垂直方向に下降するほど水平幅が小さくなる形状からなることができる。
【0057】
特に、前記サブウェル120は、大きさと形状が同じであるように複数個含むことによって、前記細胞培養プレートは均一な条件で大量のスフェロイド又はオルガノイドを生成することができる。
【0058】
特定の態様として、1つのメインウェル110には同じ大きさのサブウェル120を4~25個含むことができ、全マイクロプレート100には96~1,728個のサブウェル120を含むことができる。これにより同一で、精密に大きさを制御することが可能である。
【0059】
併せて、サブウェル120は、凹部121を含み、前記凹部の下端において前記凹部121は3Dスフェロイド又はオルガノイドを培養できるように空間が形成される。具体的には、前記凹部121は、「U字状」、「V字状」、又は「Ц字状」であってもよく、例えば、前記凹部121は「U字状」であってもよい。
【0060】
前記サブウェル120の上端径は、3.0~4.5mmの範囲であってもよく、又は3.5~4.3mmであってもよく、又は平均4mmであってもよい。さらに、凹部121の上端径は0.45~1.5mmであってもよく、又は0.5~1.0mm又は平均0.5mmであってもよい。
【0061】
加えて、前記サブウェル120の直径と凹部121の直径に対する長さの比は、1:0.1~0.5の範囲であってもよく、好ましくは前記サブウェル120の直径と凹部121の直径に対する長さの比は1:0.12であってもよい。
【0062】
前記凹部121の上端径がサブウェル120の上端径1に対して0.1未満の場合に凹部121の細胞培養空間を十分に確保することができず、培養液交換時に、小さな力でも細胞が抜け出る問題が発生することがあり、凹部121の上端径がサブウェル120の上端径1に対して0.5を超えると、細胞に必要な十分な培養液を交換できず、安定的に培養することが難しい問題が発生するおそれがある。
【0063】
一方、メインウェルの壁を基準にサブウェル120と凹部121の傾斜面は40~50°の傾斜角(θ2)を有してもよく、42~48°の範囲の傾斜角(θ2)、43~47°の範囲の傾斜角(θ2)又は平均45°の傾斜角(θ2)を有してもよい。
【0064】
上述したサブウェル120は、100~1000cells/well以下の細胞培養が可能であり、安定的にスフェロイドの大きさを制御できる利点がある。
【0065】
さらに、本発明の一実施形態によるメインウェル110の個々の体積は100~300μlの範囲であり、凹部121の個々の体積は20~50μlの範囲であり、前記メインウェル110と凹部121の個々の体積比は平均1:0.07~0.5であることを特徴とする。好ましくは、前記一実施例によるメインウェル110の個々の体積は250~300μlの範囲であり、前記凹部の個々の体積は25~35μlの範囲であってもよく、前記メインウェル110と凹部121の個々の体積比は平均1:0.11であってもよい。
【0066】
具体的には、メインウェル110の個々の体積が100μl未満の場合、細胞培養時に十分な培養液を収容できない問題が発生することがあり、300μlを超える場合には、培養効率が低下する可能性がある。
【0067】
併せて、凹部121は実質的な細胞が培養される空間であって、その体積が20μl未満の場合には細胞培養空間が十分でないため、細胞が抜け出る問題が発生することがあり、50μlを超える場合、細胞等を安定して培養することが困難な問題が発生するおそれがある。従って、前記メインウェル110と凹部121は、上述した範囲の体積を有することが好ましい。
【0068】
前記の本発明の細胞培養プレートの構成により、ハイドロゲルを含まなくても、即ち、ハイドロゲルを細胞培養プレートにコーティングしなくても人工多能性幹細胞へのリプログラミングが高効率で起こり、リプログラミング後にスフェロイドが良好に形成される。
【0069】
また、このスフェロイドを分離し、本発明の細胞培養プレートで継代培養する場合、スフェロイドが非常に良好に形成される。具体的には、スフェロイドを単一細胞に分離し、継代培養を行い、モノクローナル人工多能性幹細胞を数百個ないし数千個を産生することができる。
【0070】
本発明の一実施例による細胞培養プレート10は、ウェルプレート100を支持するハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタ200を含む。ここで、ハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタ200とは、HCS(High contents screening)システムに装着するコネクタ200を意味するものであり、具体的には、前記コネクタ200は本発明ではベース210とカバー220を意味することができる。
【0071】
より具体的には、前記ハイコンテントスクリーニング(High contents screening:HCS)用コネクタは、ウェルプレート100の下端に互いに着脱可能なように固定手段140、240が備えられたベース210とウェルプレート100の上部に配置され、ベース210と結合するカバー220を含む。そして、前記ベース210の上端及びウェルプレート100の下端は、互いに着脱可能に固定可能な固定手段140、240を含むことを特徴とする。
【0072】
このとき、前記ベースは、ウェルプレート100を支持するための凸部240を含み、前記ウェルプレート100は、ベース210の凸部240に対向する落とし込み部140を含むことができる。前記固定手段によってウェルプレート100を固定し、スクリーニング時に画像を均一に撮影することができる。
【0073】
前記ベースは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルイミド材料からなることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0074】
前記ウェルプレートは、ポリジメチルシリコーン、高脂肪変性シリコーン、メチルクロロフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、シリコーンポリエステル、又はアミノ変性シリコーン材料からなることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0075】
一方、本発明の細胞培養プレート100において人工多能性幹細胞を形成する際にマトリゲルを使用する必要がない。
【0076】
図4は、マトリゲルを用いた2次元細胞培養プレート及び本発明によりマトリゲルを必要としない3次元細胞培養プレートを用いた人工多能性幹細胞の製造方法を比較して示したものである。体細胞(繊維芽細胞)を培養した後、エピソーマルベクターを電気穿孔法により線維芽細胞にトランスフェクトしてリプログラミングを誘導し、人工多能性幹細胞を作製する。2次元マトリゲル培養の場合、人工多能性幹細胞コロニーを切り離す過程が煩わしく、収率が低い。しかし、本発明の3次元培養プレートを用いる場合、マトリゲルがないので人工多能性幹細胞にリプログラミングされた多数の単一細胞等が集まり、3次元球状の細胞集合体であるスフェロイド(spheroid)を形成する。このスフェロイドは、3次元細胞培養プレートに容易に分離することができ、継代培養が可能である(図7d)。即ち、リプログラミング効率が非常に高い。
【0077】
また、前述したように、本発明で用いる3次元細胞培養プレートは、1つのメインウェル110に同じ大きさのサブウェル120を4~25個含むことができ、全マイクロプレート100には96~1,728個のサブウェル120を含むことができる。これにより、同一で、精密に大きさを制御可能な人工多能性幹細胞及びそのスフェロイドを大量製造することができる。
【0078】
図10は、人工多能性幹細胞リプログラム工程で得られた人工多能性幹細胞スフェロイドの大量増殖方法を模式的に示したものである。2次元細胞培養プレート(マトリゲルコーティング)と比較して、本発明の人工多能性幹細胞増殖速度が非常に速いことが分かる。また、スフェロイドを単一細胞に分離して再びプレーティングした後、継代培養を続けると、均一な大きさのモノクローナルのスフェロイドが数百個ないし数千個産生されるので、人工多能性幹細胞スフェロイドバンクを作ることもできる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の製造方法によれば、ハイドロゲルを必要とせずにリプログラミング効率が向上した幹細胞を製造し、大量増殖させることができる。また、モノクローナルの幹細胞スフェロイドバンクを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1(a)は、本発明の一実施例による細胞培養プレートの正面図であって、図1(b)は、本発明の一実施例による細胞培養プレートの断面図である。
【0081】
図2】本発明の一実施例による細胞培養プレートに形成されたメインウェルを詳細に示す図である。
【0082】
図3】本発明の一実施例による細胞培養プレートのウェルプレート、ベース及びカバーを示す図である((a)カバー、(b)ベース、(c)マイクロプレート及びベースの固定手段)。
【0083】
図4図4(a)は、本発明の一実施例と比較例による人工多能性幹細胞の製造過程を模式的に示したものであり、図4(b)は、本発明の一実施例と比較例による人工多能性幹細胞の発生を示す画像である(図4以下の全ての図において、説明の便宜上、本発明の3次元細胞培養プレートを正確に表示せず、便宜上U字状に表示した。)
【0084】
図5】本発明の一実施例(3D iPSC)と比較例(2D PSC)の画像である。
【0085】
図6】本発明の一実施例(3Dsph-iPSC)と比較例(2D Matrigel)のAP(Alkaline Phosphatase)染色画像である。
【0086】
図7図7(a)は、経時的なAP画像(D4、D9、D15、D21)であり、図7(b)は、コロニー数を比較したものであり、図7(c)は、E-cadherin発現結果であり、図7(d)は、iPSCsのスフェロイド形成過程を示したものである。
【0087】
図8図8(a)は、従来の3次元培養と本発明の一実施例による培養の結果、スフェロイド(コロニー)の大きさ分布を示す結果であり、図8(b)は、リプログラム因子(多能性マーカー)発現の結果である。
【0088】
図9】本発明の一実施例によるiPSCsの多能性マーカー発現の結果である。
【0089】
図10】本発明の一実施例及び比較例による人工多能性幹細胞の増殖方法を示す模式図である。
【0090】
図11】本発明の一実施例による人工多能性幹細胞の増殖過程を経時的に示す画像である。
【0091】
図12】本発明の一実施例により人工多能性幹細胞を継代培養したとき、大きさが均一に分布することを示すグラフである。
【0092】
図13】本発明の一実施例(3次元細胞培養)と比較例(2次元細胞培養)による増殖効率を比較したグラフである。
【0093】
図14】人工多能性幹細胞の増殖時間による多能性マーカー発現の結果を示す。
【0094】
図15】人工多能性幹細胞の増殖時間による多能性マーカー発現の結果を示す。
【0095】
図16】本発明による人工多能性幹細胞の製造、増殖及び分化過程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、様々な形態に変更することができ、様々な実施例を有することができるところ、以下に特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明にて詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、本発明の精神及び技術的範囲に含まれるすべての変形、等価物ないし代替物を含むことを理解されなければならない。本発明の説明において、関連する公知技術の具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするものと判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【実施例
【0097】
実施例1.実験方法
【0098】
1-1:線維芽細胞の培養及び人工多能性幹細胞の作製
【0099】
ヒト線維芽細胞株であるF134(the german federal authorities/RKI:AZ 1710-79-1-4-41 E01)を10%FBS(ウシ胎児血清、Invitrogen、米国)及び1mM L-グルタミン(Invitrogen、米国)を含むDMEM中で35mm又は100mmのペトリ皿に培養した。培養した線維芽細胞にエピソームiPSCリプログラミングベクター(EP5TM kit:カタログ番号A16960.Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を電気穿孔法(electroporation)によりトランスフェクトさせ(NeonTM transfection system)、リプログラミングした。電気穿孔法は、1,650V、10ms、3パルス条件で行った。
【0100】
図4aに示すように、トランスフェクトされた線維芽細胞を本発明の3次元細胞培養プレート(マトリゲルなし、実施例)と2次元の12ウェルプレート(マトリゲルコーティング、比較例1)及び市販製品であるAddgene(比較例2、マトリゲルコーティング、図4aには図示せず)に接種し、N2B27培地(bFGFを含む)で培養した。15日間培養した後、Essential 8TM培地と交換した。15日後に実施例(3次元細胞培養プレート)の3D iPSCを2次元プレートである12-ウェルプレートにプレーティングし、実施例と比較例のコロニー数を確認した。
【0101】
1-2:線維芽細胞のリプログラミング効率の解析
【0102】
Alkaline Phosphatase Staining kitマニュアルに従って(System Biosciences、USA)、リプログラムされた細胞をPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、Blue-color AP溶液で染色し、PBSで2回洗浄した後、コロニー染色有無を光学顕微鏡下で観察した。染色されたコロニーの数を数えて定量化した。
【0103】
実施例と比較例で培養した細胞を撮影し、細胞球の大きさを比較した。スフェロイドを自動プレート機器によりイメージングを行い、この時、自動に機器が焦点を合わせて進めるようにした。画像の大きさの解析は、imageJプログラムのマクロプログラムを用いて行った(図5、6及び7関連)。
【0104】
1-3:人工多能性幹細胞の3次元培養方法の最適化
【0105】
実施例と比較例で培養した3次元人工多能性幹細胞を撮影し、これにより細胞球の大きさをそれぞれ比較して測定した(図8(a))。画像に対する結果をテストするために、外部の検査会社(細胞バイオCEFO、韓国)に依頼し、このテストはブラインドテストで進められた。
【0106】
1-4:免疫染色
【0107】
リプログラムされた細胞を4%パラホルムアルデヒドで常温で20分間固定した。固定細胞を1%BSA及び0.5%Triton X-100を含むPBSで常温で1時間反応させた後、各一次抗体Oct4(1:100、SantaCruz、CA、USA)、Sox2(1:100、Cell Signalling、Danvers、MA、USA)、Nanog(1:200、Cosmo Bio、Koto-Ku、Japan)、E-cadherin(1:200、abcam)処理し、FITC-conjugatedヤギ抗-ウサギIgG又は抗-マウスIgG(1:100、Invitrogen、Carlsbad、CA)を二次抗体で反応させた。蛍光画像は蛍光顕微鏡(Olympus、Shinjuku、Tokyo、Japan)で解析した。DAPIを核染色溶液として使用した。
【0108】
1-5:幹細胞又は人工多能性幹細胞の3次元大量培養の効率の検証
【0109】
人工多能性幹細胞をそれぞれ異なる細胞数で播種し、日数毎に大きさ別に比較を行った。細胞数をそれぞれ0.1、0.3、0.5、1、2、4×105として実施例に該当するマルチウェルに入れて、事実上任意の細胞数に関係なく細胞の大きさが維持され、細胞数が一定に増えることを実証した(図12及び図13関連)。
【0110】
このような細胞数の増大を比較した結果、同時期の2D培養細胞数を比較した結果、22.9±4.33%増加したことが確認された。
【0111】
1-6:qPCR
【0112】
線維芽細胞とリプログラミングされた細胞からRNAミニキット(Qiagen、Inc)を用いてtotal RNAを抽出した後、Accupower RT mix reagent(Bioneer Corp.、Seoul、Korea)を用いてcDNAにした。リアルタイムPCR(Real-time PCR)FastStart Essential DNA Green Master(Roche、Indianapolis、IN、USA)を用いて行った。本発明で使用されるプライマー配列は、表1の通りである。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例2.リプログラミング効率の確認
【0115】
図4bをみると、2次元培養の場合、D15になって初めて少量のコロニーが形成され始めることが分かる。D15までiPSCリプログラミングを誘導した後、3DiPSCを2次元プレートにプレーティングし、比較例1と実施例1のコロニー数を比較してみたところ、形成されるコロニー数において差が大きかった。iPSCから分化に成功した細胞がコロニーを形成するため、実施例のiPSCリプログラミング収率が高いことがわかる。図5及び図7bをみると、2次元培養(比較例1)と3次元培養時(実施例)、コロニーの個数の差が非常に大きいことが分かる。図6をみると、AP(Alkaline phosphatase)染色の結果、3D iPSCスフェロイド(実施例、3D sph-iPCs)においてリプログラミング効率が非常に高いことがわかる。また、図6及び図7aをみると、2Dマトリゲル(比較例1)と3D iPSCスフェロイド(実施例、3D sph-iPCs)とを比較したとき、画像が均一で鮮明に示されるが、これは本発明の3次元細胞培養プレートが大量の画像解析が可能であることを示すものである。
【0116】
図7cをみると、3次元細胞培養プレートにおいて、リプログラミング効率が非常に良好であることが分かる。また、図7dをみると、本発明はマトリゲルを用いないので、iPCsによりリプログラミングされた多数の単一細胞が集まって3次元球状の細胞集合体であるスフェロイドを形成し、このスフェロイドを3次元細胞培養プレートから容易に分離し、再プレーティングすることができることが分かる。即ち、リプログラム効率が非常に高い。
【0117】
図8は、比較例2の従来の3次元培養と本発明の実施例の3次元培養(図8bのSpheroidFilm)とを比較したものである。従来の3次元培養は大きさが均一ではなく、oct4発現量が比較的低い。しかしながら、本発明は、大きさが非常に均一であり(99.45%)、リプログラミング因子発現率が非常に高い。即ち、従来の3次元培養と比較したときでも、本発明は幹細胞培養において効果的であり、体細胞を人工多能性幹細胞にリプログラミングできる効率を高めることができる。また、大きさが均一であるということは、標準化された人工多能性幹細胞及び幹細胞をスフェロイド形態で3次元的に大量に製造できることを意味する。
【0118】
実施例3.人工多能性幹細胞の特性の解析
【0119】
図9をみると、本発明に従って製造されたiPSCsは、多能性マーカーの発現が非常に高いことが分かる。
【0120】
実施例4.幹細胞の大量増殖の確認
【0121】
図10及び図11をみると、本発明に従って製造されたiPSCsを継代培養する場合、大量増殖が可能であることが分かる。図13は、2次元の12-ウェルプレート(マトリゲルコーティング、比較例1)でリプログラミングした人工多能性幹細胞を2次元マトリゲルコーティングプレートで継代培養したものと、本発明の実施例によりリプログラミングされた人工多能性幹細胞を本発明の3次元細胞培養プレートで継代培養したとき、増殖効率を比較したグラフである。図13をみると、本発明の場合、増殖効率が約23倍増加したことがわかる。前の図12の結果と総合して判断してみると、均一な大きさで大量増殖が可能である。図14及び図15をみると、大量増殖したiPSCsも同様に多能化マーカー発現が非常に高いことがわかる。
【0122】
図16は、本発明を模式的に示す。本発明の3次元細胞培養プレートを用いてハイドロゲルを用いずに高効率で体細胞を人工多能性幹細胞にリプログラムさせ、リプログラミングされた人工多能性幹細胞のスフェロイドを分離して継代培養する場合、人工多能性幹細胞を大量増殖することができる。
【0123】
本発明の細胞培養プレートのウェル内でiPSCsが発生し、増殖する。この状態そのまま保存することも可能であり、培地を一度に凍結させることもできる。マトリゲルなどのハイドロゲルを用いずにウェルの大きさ調整することが可能であるので、培地も少なく済み経済的である。そして、大量に増殖した人工多能性幹細胞を様々な細胞に分化させることができる。
【0124】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に説明したが、この技術分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義される。
【符号の説明】
【0125】
100:ウェルプレート
101:段差
110:メインウェル
120:サブウェル
121:凹部
130:空間部
140:落とし込み部
200:ハイコンテントスクリーニング用コネクタ
210:ベース
220:カバー
240:凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16