(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】履物製品用の調整可能なミッドソールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29D 35/12 20100101AFI20250117BHJP
A43B 1/04 20220101ALI20250117BHJP
A43B 1/028 20220101ALI20250117BHJP
A43B 1/14 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B29D35/12
A43B1/04
A43B1/028
A43B1/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112296
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2024-01-16
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】サスマン, ラインホルト
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109228099(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0148013(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0125158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 35/12
A43B 1/04
A43B 1/028
A43B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの糸が互いに異なる特性を有する複数の糸を選択する工程と、
束ねられた糸構造体を形成するために前記複数の糸を束ねる工程と、
撚糸構造体を形成するために、前記束ねられた糸構造体の端部を固定し、前記束ねられた糸構造体に軸方向の張力を加え、前記束ねられた糸構造体を回転させることで、前記束ねられた糸構造体を撚り合わせる工程と、
オートクレーブ内の第1モールドに前記撚糸構造体を堆積する工程と、
超臨界流体を前記撚糸構造体に塗布して、前記超臨界流体を前記撚糸構造体に浸潤させて飽和させる工程と、
前記撚糸構造体を異方性発泡体ブランクに変換させるための発泡工程を起こすために前記オートクレーブを減圧する工程と、
前記異方性発泡体ブランクを、履物製品のためのミッドソールとして構成された第2モールド内に堆積させる工程と、を含
み、
前記異方性発泡体ブランクが、前記撚糸構造体の長手方向に平行な第1セル成長方向を含むミッドソールの製造方法。
【請求項2】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはエラストマーポリマーのうちの少なくとも1つから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異方性発泡体ブランクが、前記撚糸構造体の前記長手方向に垂直な第2セル成長方向を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記超臨界流体が、過熱水もしくは超臨界二酸化炭素、またはその両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の直径が、少なくとも120%増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の密度が、少なくとも50%減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの糸が互いに異なる特性を有する複数の糸を選択する工程と、
束ねられた糸構造体を形成するために前記複数の糸を束ねる工程と、
編込み糸構造体を形成するために、前記束ねられた糸構造体に軸方向の張力を加えて、編込み技術を用いて前記束ねられた糸構造体を撚り合わせる工程と、
オートクレーブ内の第1モールドに前記編込み糸構造体を堆積する工程と、
超臨界流体を前記編込み糸構造体に塗布して、前記超臨界流体を前記編込み糸構造体に浸潤させて飽和させる工程と、
前記編込み糸構造体を異方性発泡体ブランクに変換させるための発泡工程を起こすために前記オートクレーブを減圧する工程と、
前記異方性発泡体ブランクを、履物製品のためのミッドソールとして構成された第2モールド内に堆積させる工程と、を含
み、
前記複数の糸の円周方向剪断歪みが0.05より大きいミッドソールの製造方法。
【請求項8】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはエラストマーポリマーのうちの少なくとも1つから構成される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記超臨界流体が、過熱水もしくは超臨界二酸化炭素、またはその両方を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の直径が、少なくとも120%増加する、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の密度が、少なくとも50%減少する、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記編込み技術は、組紐編込み技術である、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2022年7月12日に出願された米国仮出願第63/388,523号の利益および優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示の分野本発明は一般に、様々な予備配向糸構造体(pre-oriented yarn structure)から製造された異方性発泡体(anisotropic foam)を含む履物製品(article of footwear)に関する。
【0003】
多くの従来のシューズまたは他の履物製品は一般に、アッパーと、アッパーの下端に取り付けられたソールとを備える。従来の靴は、靴を足に固定する前にユーザの足を受け入れる内部空間、すなわち、上部およびソールの内部表面によって形成される空隙または空洞をさらに含む。ソールは、アッパーの下の面または境界に取り付けられ、アッパーと地面との間に配置される。結果として、靴底は典型的には靴が着用されているときに、安定性およびクッション性をユーザに提供する。いくつかの例では、ソールがアウトソール、ミッドソール、およびインソールなどの複数の構成要素を含むことができる。アウトソールはソールの底面に静止摩擦を提供してもよく、ミッドソールはアウトソールの内部表面に取り付けられてもよい。ソールはまた、ソールの全体的な剛性を増加させ、使用中のエネルギー損失を低減するために、ソールに埋め込まれたプレートなどの追加の構成要素を含んでもよい。
【0004】
アッパーは一般に、ソールから上方に延び、足を完全にまたは部分的に包む内部空洞を画定する。ほとんどの場合、アッパーは、足の甲およびつま先領域にわたって、ならびにその内側および外側を横切って延在する。多くの履物製品はまた、甲領域を横切って延在し、空洞内への開口部を画定する、アッパーの内側側部および外側側部の端部間の間隙を架橋する舌部を含んでもよい。舌部はまた、靴の締め付けの調整を可能にするために、靴紐結びシステムの下かつアッパーの内側と外側との間に配置されてもよい。舌部は内部空間または空洞からの足部の進入または退出を可能にするために、ユーザによってさらに操作可能であってもよい。加えて、紐締めシステムはユーザがアッパーまたはソールの特定の寸法を調整することを可能にし、それによって、アッパーが、様々なサイズおよび形状を有する多種多様な足型を収容することを可能にし得る。
【0005】
アッパーは、シューズの1つ以上の意図される用途に基づいて選択され得る多種多様な材料を含み得る。アッパーはまた、アッパーの特定の領域に特有の様々な物質を含む部位を含んでもよい。例えば、より高い抵抗度または剛性を提供することで、アッパーの前部またはヒール部付近で安定性を追加することができる。対照的に、シューズの他の一部は、伸縮耐性、可撓性、通気性、または吸湿性を有する領域を提供するために、柔らかい織布を含んでもよい。
【0006】
ソールアセンブリは一般に、地面とアッパーとの間に延在する。いくつかの実施形態では、ソールアセンブリは、地面との摩耗耐性および静止摩擦を提供するアウトソールと、レバー状の補助およびつま先の安定化を提供するマルチコンポーネントミッドソールとを含む。マルチコンポーネントミッドソールは、下側ミッドソールクッション部材と、上側ミッドソールクッション部材と、上側クッション部材と下側クッション部材との間に配置されたプレートとを含む。通常カーボンファイバーまたは他の複合材料から形成されるプレートは、ユーザの足の打撃による運動エネルギーおよび結果として生じる運動量を抑制し、より疲労の少ない運動活動を行うことができるようにユーザを支援する。
【0007】
現在利用可能な多くのシューズは上述の特性に関連する様々な特徴を有するが、多くのシューズ、より具体的にはそのミッドソールをさらに最適化することができる。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの態様では、ミッドソールの製造方法が複数の糸(yarns)を選択する工程を含み、複数の糸のうちの少なくとも2つの糸が互いに異なる特性(different properties)を有する。当該方法は、束ねられた糸構造体(bundled yarn structure)を形成するために前記複数の糸を束ねる工程と、撚糸構造体(twisted yarn structure)を形成するために前記束ねられた糸構造体を撚り合わせる(intertwining)工程とをさらに含む。前記撚り合わせる工程は、前記束ねられた糸構造体の端部を固定し、前記束ねられた糸構造体に軸方向の張力(axial tension)を加え、前記束ねられた糸構造体を回転させることで、撚糸構造体を形成するステップを含む。さらに、当該方法は、オートクレーブ(autoclave)内の第1モールド(mold)に前記撚糸構造体を堆積(depositing)する工程と、超臨界流体(supercritical fluid)を前記撚糸構造体に塗布(applying)することを含む。さらに、当該方法は、超臨界流体を前記撚糸構造体に塗布して、前記超臨界流体を前記撚糸構造体に浸潤(infiltrate)させて飽和(saturate)させる工程と、前記撚糸構造体を異方性発泡体ブランク(anisotropic foam blank)に変換(convert)させるための発泡工程(foaming process)を起こすために前記オートクレーブを減圧(depressurizing)する工程と、前記異方性発泡体ブランクを、履物製品(article of footwear)のためのミッドソールとして構成された第2モールド内に堆積させる工程と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはエラストマーポリマー(elastomeric polymer)のうちの少なくとも1つから構成される。いくつかの実施形態では、前記異方性発泡体ブランクが、前記撚糸構造体の長手方向に平行な第1セル成長方向(cell growth direction)を含む。いくつかの実施形態では、前記異方性発泡体ブランクが、前記撚糸構造体の前記長手方向に垂直な第2セル成長方向を含む。いくつかの実施形態では、前記超臨界流体が、過熱水(superheated water)もしくは超臨界二酸化炭素(supercritical carbon dioxide)、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の直径(diameter)が、少なくとも120%増加する。いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の密度(density)が、少なくとも50%減少する。
【0010】
いくつかの態様では、ミッドソールの製造方法が複数の糸を選択する工程を含み、前記複数の糸のうちの少なくとも2つの糸が互いに異なる特性を有する。当該方法は、束ねられた糸構造体を形成するために前記複数の糸を束ねる工程と、編込み糸構造体(braided yarn structure)を形成するために、編込み技術(braiding technique)を用いて前記束ねられた糸構造体を撚り合わせる工程とを含む。前記束ねられた糸構造体に軸方向の張力を加えられる。さらに、当該方法は、オートクレーブ内の第1モールドに前記編込み糸構造体を堆積する工程と、超臨界流体を前記編込み糸構造体に塗布する工程とを含む。また、当該方法は、前記超臨界流体を前記編込み糸構造体に浸潤させて飽和させる工程と、前記編込み糸構造体を異方性発泡体ブランクに変換させるための発泡工程を起こすために前記オートクレーブを減圧する工程と、前記異方性発泡体ブランクを、履物製品のためのミッドソールとして構成された第2モールド内に堆積させる工程と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはエラストマーポリマーのうちの少なくとも1つから構成される。いくつかの実施形態では、前記超臨界流体が、過熱水もしくは超臨界二酸化炭素、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の直径が、少なくとも120%増加する。いくつかの実施形態では、前記複数の糸のうちの少なくとも1つの糸の密度が、少なくとも50%減少する。いくつかの実施形態では、前記複数の糸の円周方向剪断歪み(circumferential shear strain)が0.05より大きい。いくつかの実施形態では、前記編込み技術は、組紐編込み技術である。
【0012】
いくつかの態様では、本明細書に記載の調整可能(tunable)ミッドソールを製造する方法が異方性発泡体(anisotropic foam)を利用することを含む。異方性発泡体ブランクは、前記ミッドソールのセグメント(segment)間またはセグメント内に配置されるプレートを置き換えるためなど、多成分(multi-component)ミッドソール構造の代わりに使用されてもよい。前記異方性発泡体ブランクは、予備配向(pre-oriented)された様式で複数の糸を撚り合わせることで形成することができる。前記異方性発泡体ブランクは調整可能であり、予備配向されて、クッション性(cushioning)、安定性(stability)、エネルギー散逸(energy dissipation)または吸収(absorption)、穿刺耐性(puncture resistance)、推進力(propulsion)などのカスタマイズされた局所的な特徴を提供する機能性発泡体である。さらに、本開示の異方性発泡材料は複数の構成要素を組み立てるまたは設置する必要性を低減し、それによって、過剰な材料に関連する廃棄物を低減し、そのような構造を組み立てる労力および輸送に関連するエネルギー消費を最小限に抑える。
【0013】
いくつかの実施形態では、異方性発泡材料を含むミッドソールは、前記ミッドソールの前足領域(forefoot region)、中足領域(midfoot region)、および踵領域(heel region)を画定してもよい。前記異方性発泡材は、複数の糸が含む絡み合った糸構造体(intertwined yarn structure)を含む。絡み合った糸構造体は、不織構造体(non-woven structure)、織物構造体(woven structure)、ニット構造体(knitted structure)、編込み構造体(braided structure)、または撚り構造体(twisted structure)として形成することができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記複数の糸は、前記ポリマーコア(polymeric core)を含む。ポリマーコアは、第1の材料を含む。前記第1の材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはエラストマーポリマーであってもよい。いくつかの実施態様において、ポリマーコアの厚さ、デニール(denier)、及び引裂強度(tear strength)は、前記ポリマーコアの材料に基づいて異なる。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記コア材料は第2のポリマー材料を含み、前記第2のポリマー材料は、前記第1のポリマー材料とは異なる。前記コア材料は複数の材料を含んでもよく、または異なるコアは異なる材料を含んでもよい。コアの本数は、前記絡み合った糸構造体に基づいて異なる。
【0016】
いくつかの実施形態では、溶剤または発泡剤(blowing agent)が前記絡み合った糸構造体に含浸されて多セル発泡体(multicellular foam)を形成し、ここで、前記セル成長方向の配向は前記発泡体に異方性特性を提供する。前記発泡体は、一方向のセル成長(cell growth)、双方向のセル成長、および放射状のセル成長を含んでもよい。前記糸構造体の様々な撚り合わせ(intertwinement)に組み込まれた前記セル成長方向は、独特の異方性を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記絡み合った構造体(intertwined structure)および超臨界溶媒(supercritical solvent)が加圧オートクレーブ(pressurized autoclave)に供され、前記超臨界溶媒の分子は気体を急速に変換して、前記糸構造体の物質内に複数の多面体セル(polyhedral cell)を形成し、前記セル成長方向の配向は前記糸構造体に異方性を提供する。前記溶媒は、二酸化炭素または窒素などの超臨界流体、または水などの過熱流体(superheated fluid)であってもよい。前記絡み合った糸構造体は、超臨界流体および過熱流体の両方にさらされて、異方性発泡体を形成することができる。前記発泡工程の結果として、前記糸の直径は、少なくとも10%より大きく増加し得る。前記材料および前記溶媒に応じて、前記発泡体の直径は、大きな増加を示し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記異方性発泡体を圧縮し、前記ミッドソールに特定の形状を与えるために、前記異方性発泡体が第2モールドプロセスを経る。前記異方性発泡体は、前記第2モールドプロセスの前に予備配向されて、上側ミッドソール(upper midsole)、下側ミッドソール(lower midsole)、およびプレートのような前記ミッドソール内の複数の構成要素を含まずに異なる機能性を提供することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、糸構造体の前記発泡工程は、前記糸の材料の選択、並びに、限定されないが、径、デニール、引裂強度、及び色を含む前記糸の特徴を含む。前記糸構造体は、前記選択された糸を特殊な方法で撚り合わせた後に形成され、モールド型内で予備配向される。前記モールド型は、前記糸構造体を軟化させ、発泡剤を浸透させるオートクレーブに置かれる。前記発泡剤はセル核生成(cell nucleation)中に特定の方向にセル成長を誘導し、急速に減圧されて前記異方性発泡体を生成する。前記発泡体は、第2の圧縮成形工程(compression molding step)を経て、前記発泡体に前記ミッドソールの特有の形状を与える。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記糸構造体は、制御された張力およびねじれ角で前記糸を撚ることによって形成される。前記張力の制御は小さい錘によって提供され、前記ねじれ角は前記回転のピッチによって制御され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記糸構造体は、組紐盤(Kumihimo disk)を使用した前記糸の編込みによって形成される。前記組紐盤は張力を制御する。前記張力は、ボビンの端部における小さな錘によって与えられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記糸構造体がモールド型内で予備配向される。前記モールド型は、前記ミッドソールの前足領域、中足領域、および踵領域を画定する。前記モールド型は、異なる糸構造体が特定の領域に所望の異なる機能性、クッション性、および利点を提供するように、領域に応じて異なる糸構造体を含む。所望の特性および機能性を達成するために、様々なタイプの糸構造体を積み重ね、束ね、および/または挟むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記糸構造体を含む前記異方性発泡体の第2の圧縮成形(second compression molding)は、前記発泡体の周囲パラメータ(ambient parameter)または動作パラメータ(operating parameter)を少なくとも40度上回る前記糸の発泡中または発泡後に、で行われる。
【0024】
いくつかの態様では、履物製品は、前足領域、踵領域、および中足領域を有するアッパーおよびミッドソールを含む。前記ミッドソールは、前記前足領域、前記踵領域、または前記中足領域のうちの少なくとも1つにおいて、予備配向異方性発泡体(pre-oriented anisotropic foam)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記予備配向異方性発泡体は、前足セグメント(forefoot segment)、踵セグメント(heel segment)、および中足セグメント(midfoot segment)を含む別個のセグメントの形態で供給される。いくつかの実施形態では、前記ミッドソールは、前記前足領域、前記踵領域、および前記中足領域のそれぞれに前記予備配向異方性発泡体を有する単一構造体(unitary structure)である。いくつかの実施形態では、前記ミッドソールは、前記前足領域、前記踵領域、および前記中足領域の間で、可撓性または剛性のうちの少なくとも1つが異なる。いくつかの実施形態では、前記ミッドソールは、前記予備配向異方性発泡体と接触するプレートを備える。いくつかの実施形態では、前記予備配向異方性発泡体が、編込み糸構造体または撚糸構造体のうちの少なくとも1つによって形成される。
【0026】
プロセス、特徴、およびその利点を含む、本明細書の調整可能なミッドソール発泡体を製造する方法に関する他の態様は、図および本明細書の詳細な説明を検討することで、当業者に明らかになるのであろう。したがって、調整可能なミッドソール発泡体を製造するプロセスのすべてのそのような態様は、詳細な説明およびこの概要に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、単一のコア(single core)を含むポリマー糸(polymer yarn )の断面図である。
【
図2】
図2は、様々な特徴を有する単一コアを含む多重ポリマー糸(multiple polymer yarns)の別の断面図である。
【
図4】
図4は、押出工程による単糸(mono-yarn)の撚り糸(strand)の製造システムである。
【
図6】FIG.6Aは糸の束の一部分の斜視図であり、糸は、撚られていない構成であり、FIG.6Bは、撚られた構成における糸の束の斜視図であり、FIG.6Cは、らせん形に撚られた構成(helical twist configuration)における糸の束の一部の拡大図である。
【
図7A】
図7Aは、ピッチおよび張力が制御された、撚糸(twisted yarn)を製造するシーケンスにおける第1のステップである。
【
図7B】
図7Bは、ピッチおよび張力が制御された、撚糸を製造するシーケンスにおける第2のステップである。
【
図7C】
図7Cは、ピッチおよび張力が制御された、撚糸を製造するシーケンスにおける第3のステップである。
【
図7D】
図7Dは、ピッチおよび張力が制御された、撚糸を製造するシーケンスにおける第4のステップである。
【
図7E】
図7Eは、ピッチおよび張力が制御された、撚糸を製造するシーケンスにおける第5のステップである。
【
図8A】
図8Aは、ニット糸構造体(knitted yarn structure)の上部平面図である。
【
図8C】
図8Cは、さらに別のニット糸構造体の上部平面図である。
【
図8D】
図8Dは、さらに別のニット糸構造体の上部平面図である。
【
図8F】
図8Fは、さらに別のニット構造体の上部平面図である。
【
図8G】
図8Gは、さらに別のニット構造体の上部平面図である。
【
図10】FIG.10Aは、発泡前の編込み糸の上面図であり、FIG.10Bは、発泡前の編込み糸の上面拡大図であり、FIG.10Cは、発泡後の編込み糸の上面図である。
【
図11A】
図11Aは、組紐編込み(Kumihimo braiding)のシーケンスにおける第1ステップである。
【
図13】
図13は、ポリマー糸から異方性発泡体を製造する原理プロセスである。
【
図15A】
図15Aは、発泡工程の前にポリアミド6フィラメント(polyamide 6 filaments)から形成されたコブラノット(cobra knot)構造体の斜視図である。
【
図15B】
図15Bは、発泡工程の後にポリアミド6フィラメントから形成されたコブラノット構造体の斜視図である。
【
図16】
図16は、糸構造体の例示的な発泡工程を説明するフローチャートである。
【
図17】
図17は、高圧反応器(high pressure reactor)の斜視図である。
【
図18B】
図18Bは、発泡編込み糸構造体(foamed braided yarn structure)の斜視図である。
【
図20B】
図20Bは発泡撚糸構造体(foamed twisted yarn structure)の斜視図である。
【
図21A】
図21Aは、103℃で浸漬され、34.5MPa、110℃で発泡された撚糸構造体の斜視図である。
【
図21B】
図21Bは、102℃で浸漬され、34.5MPa、108℃で発泡された撚糸構造体の斜視図である。
【
図21C】
図21Cは、103℃で浸漬され、20.7MPa、108℃で発泡された撚糸構造体の斜視図である。
【
図21D】
図21Dは、102℃で浸漬され、20.7MPa、108℃で発泡された撚糸構造体の斜視図である。
【
図22】
図22は、円周方向剪断歪みを測定するための装置の概略図である。
【
図23】
図23はアッパーおよびソール構造体を含む右側シューズとして構成された履物製品の底面および内側の斜視図であり、ソール構造体は異方性発泡体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明および添付の図面は、様々な糸構造体を備えるミッドソールの様々な実施形態または構成を開示する。実施形態はランニングシューズ、テニスシューズ、バスケットボールシューズなどのスポーツシューズに関して開示されているが、シューズの実施形態に関連する概念は例えば、クロストレーニングシューズ、フットボールシューズ、ゴルフシューズ、ハイキングシューズ、ハイキングブーツ、スキーおよびスノーボードブーツ、サッカーシューズおよびクリート、ウォーキングシューズ、ならびにトラッククリートを含む、広範囲の履物および履物スタイルに適用され得る。靴の概念はまた、ドレスシューズ、サンダル、ローファー、スリッパ、およびハイヒールを含む、運動ではないものを考慮した履物製品に適用されてもよい。
【0029】
「約」という用語が本明細書で使用される場合、例えば、本明細書の開示の実施形態を含み得る、履物または他の製品のために使用される典型的な測定および製造手順であって、これらの手順における不注意な誤り、組成物もしくは混合物を作製するため、または方法を実施するために使用される製造、供給源、または材料の純度における差異などを介して生じ得る数値量の変動を指す。本開示を通して、「約」および「およそ」という用語は、その用語の前にある数値の±5%の値の範囲を指す。
【0030】
本開示は、超臨界発泡(supercritical foaming)技術を用いて製造される、履物用の調整可能なミッドソールに関する。特に、本発明のミッドソールは、超臨界テクノロジー(supercritical technology)を用いて製造され、糸構造体を形成するために1つ以上のポリマー糸(polymer yarns)を撚り合わせることによって製造され得る異方性発泡体を含む。例えば、糸構造体は本明細書に記載される編込み技術(braiding technique)または撚り合わせ技術(twisting technique)を使用することによって予備配向され、超臨界流体および/または過熱流体によって含浸されて、異方性発泡体を形成する。予備配向された異方性発泡体ブランクは、多成分ミッドソールの性能上の利点を失うことなく、ミッドソールの形状に圧縮されて、調整可能なミッドソールを形成する。
【0031】
ミッドソールは、単一のポリマー材料であってもよく、またはEVAコポリマー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステルブロックアミド(PEBA)コポリマー、および/またはオレフィンブロックコポリマー(olefin block copolymer)などの材料のブレンドであってもよい。さらに、ミッドソールは、例えば、CO2、N2、またはそれらの混合物などの超臨界気体(supercritical gas)を使用して、例えば、EVA、TPU、TPE、またはそれらの混合物などの物質を発泡させる、例えば、物理的発泡、化学的発泡などの超臨界発泡法によって形成されてもよい。このような実施形態では、ミッドソールは、オートクレーブ、射出成形装置(injection molding apparatus)、または超臨界流体(例えば、CO2、N2、またはそれらの混合物)とポリマー材料(例えば、TPU、EVA、ポリオレフィンエラストマー(polyolefin elastomer)、またはそれらの混合物)との混合処理をすることができる、任意の十分に加熱/加圧された容器中で実施されるプロセスを使用して製造され得る。
【0032】
本明細書における「糸」、「繊維(fiber)」、または「フィラメント(filament)」という用語は、互換的に使用され、細長い材料片を指す。
図1は、単一のコア(single core)104を含む糸100の断面図を示す。単一のコア104を含む糸100は、単糸(monoyarn)108と呼ばれる。単糸108は一般に、単一の材料を含む。いくつかの実施形態では、単糸108がポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)などのポリマー材料から形成されてもよい。しかしながら、1つ以上の異なる材料を含む単糸108が形成されてもよい。
【0033】
図2は、様々な特徴を有するポリマー糸202を含む多重ポリマー糸(multiple polymer yarns)200の別の断面図を示す。多重ポリマー糸200は、第1の特性を有する第1のポリマー糸204と、第1の特性とは異なる第2の特性を有する第2のポリマー糸208と、第1及び第2の特性とは異なる第3の特性を有する第3のポリマー糸212とを含む。いくつかの実施形態では、多重ポリマー糸200が同じ材料から形成されてもよく、または2つ以上の異なる材料から形成されてもよい。多重ポリマー糸200は、様々な特性(properties)又は様々な視覚特性(visual characteristics)を有するポリマー糸を含むことができる。例えば、多重ポリマー糸200のポリマー糸202は熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、およびポリアミド(ナイロン)などであるが、これらに限定されない、ポリマーおよび/または任意の他の適切な材料の任意の1つまたは組合せから形成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では多重ポリマー糸200が同じ直径を有するポリマー糸202から形成されてもよく、または多重ポリマー糸200は異なる直径を有する1つ以上のポリマー糸202から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、多重ポリマー糸200が同じまたは異なる引裂強度のポリマー糸202から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、多重ポリマー糸200が同じまたは異なるデニール、すなわち、糸の単一の撚り糸(single strand)の密度のポリマー糸202から形成されてもよい。いくつかの実施形態では多重ポリマー糸200が異なる物質または材料でコーティングされてもよく、コーティングの厚さはポリマー糸202間で異なってもよい。多重ポリマー糸200は、同じまたは異なる色のポリマー糸から形成されてもよい。いくつかの実施形態では多重ポリマー糸200は、これらに限定されないが、材料、直径、引裂強度、デニール、コーティング、および色などの様々な特性のポリマー糸202を含んでもよい。
【0035】
ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーなどのモノマーの繰り返し鎖(repeating chain)からなる物質または材料である。天然ポリマーは、絹、羊毛、ゴム、セルロース、およびタンパク質などの天然に存在する材料である。合成ポリマーは、石油から得られ、人工的に製造される。合成ポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、および合成繊維などの4つの異なる群に分類される。
【0036】
適用された熱の下で、熱可塑性ポリマーは、非晶質または結晶のいずれかであり得る。熱可塑性ポリマーは高温で柔軟になり、冷却すると固まる。例えば、
図1は、熱可塑性ポリマーコア112を含む糸100の断面を示す。
【0037】
熱可塑性ポリマーコア112は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリカーボネート(PC)などの合成熱可塑性ポリマーを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの総重量に基づいて、約5重量パーセントの組成物~約100重量パーセントの組成物の熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0038】
一般的に言えば、熱硬化性ポリマーは、不可逆硬化によって得られるポリマーである。最初は、熱硬化性ポリマーは硬化が行われる前に、熱可塑性ポリマーのような挙動をする。硬化が、熱または適切な放射線によって行われた後、不可逆的硬化が熱硬化性ポリマーに起こる。熱硬化性ポリマーの初期形態は、通常、硬化前に展性があるまたは液体状態である。したがって、熱硬化性ポリマーは、硬化前は熱可塑性ポリマーとみなされる。熱硬化性ポリマーは、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、およびフェノールホルムアルデヒド樹脂を含むことができる。
【0039】
また、エラストマーは、粘弾性を有するポリマーの一種である。一般に、エラストマーは、延伸または変形された後に、元の形状に戻ることができる。エラストマーコアを含む糸は、とりわけ、可撓性、歪み耐性、ならびに、付勢および/またはバネのような特性を提供し得る。エラストマー糸は例えば、Lycra(登録商標)などのエラステイン(elastene)、またはナイロンもしくはポリアミド材料を含むことができる。
【0040】
図3を参照すると、発泡体ブランク(foam blank)300は、液体または固体中における気体または気体混合物のポケット(pocket)をトラップすることによって形成される物体である。発泡体ブランク300は、複数の空隙構造体(void structures)304と、複数のセル壁(cell walls)312によって接続された複数のセル構造体(cell structures)とを含む。複数のセル構造体は、独立気泡発泡体(closed-cell foam)316又は連続気泡発泡体(open-cell foam)320であり得る。独立気泡発泡体316は、個別のガスポケットが固体材料によって完全に取り囲まれるときに形成される。連続気泡発泡体320は、ガスポケットが互いに相互接続されるときに形成される。例えば、発泡体ブランク300は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーなどの異なるポリマーから形成することができる。例えば、発泡体ブランク300は、軽量、断熱性、単位重量当たりの高い強度、及び高い衝撃強度などの好ましい特性を有する。
【0041】
本明細書に記載されるように、「ペレット(pellet)」、「ビーズ(bead)」、「フレーク(flake)」、「粉末(powder)」、および「顆粒(granule)」は、ポリマー材料を含む小粒子を指すために互換的に使用される。
図4は、同一の材料特性を有するポリマーペレット(polymer pellets)408を押し出すことによって、熱可塑性ポリマーコアを含むポリマー糸404の単一の撚り糸を形成するシステム400を示す。ポリマー糸404の撚り糸は、熱可塑性ポリマーコアなどの少なくとも1つのポリマーコアを含むことができる。ポリマーペレット408は、ホッパー(hopper)412から押出機(extruder)420のバレル(barrel)416内に供給される。ペレット408は、その中の回転スクリュー424によって、押出機420の内壁422に沿って徐々に変形および変位され、押出機420に沿って配置されたヒーター428によって溶融されて、溶融ポリマーを生成する。溶融ポリマーはスクリュー424を出て、溶融ポリマー中の任意の汚染物質を除去するために、スクリーンパックフィルタ(screen pack filter)などの濾過媒体(filtration media)(図示せず)を含むブレーカープレートアセンブリ(breaker plate assembly)432を通って移動する。ブレーカープレートアセンブリ432を通過した後、溶融ポリマーはダイ436に入る。ダイ436はポリマー糸404にその形状を与え、ポリマー糸は押出物440としてダイから出る。続いて、押出物440の中のポリマー糸404は、冷却トラフ(cooling trough)(図示せず)内で冷却される。いくつかの例では、複合ポリマー糸は、異なる材料特性のポリマーペレット408を組み合わせて押し出すことによって製造されてもよい。
【0042】
以下に記載される糸構造体は上記の糸のいずれかを含むことができ、糸100は、これらに限定されないが、材料、径、デニール、引裂強度、および色彩などの様々な特性を有する少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料コアを含む、単糸108または多重ポリマー糸200の撚り糸である。同じまたは異なった特徴を含む糸の多重撚り糸(multiple strands)は、糸構造体を作り出すために操作され得る。
【0043】
糸構造体は、2次元糸構造体であってもよく、または糸構造体の構造的構成および撚り合わせに基づく3次元糸構造体であってもよい。2次元糸構造体は、2つ以上の向きに延在しない。2次元糸構造体は、限定されるものではないが、平面に沿って延在する、不織糸(non-woven yarns)、織糸(woven yarns)、編込み糸(braided yarns)、レース糸(laced yarns)、およびニット糸(knitted yarns)を含む。3次元糸構造体は、糸構造体が単一ステップ工程または複数ステップ工程で作られるかどうかにかかわらず、3方向に延在する。3次元糸構造体としては、3次元編込み構造体(three-dimensional braided structures)、オーバー編込み構造体(over-braided structures)、多層横編(multi-layer weft-knit)、スペーサ経編地(spacer warp knits)、及び3次元織構造体(three-dimensional woven structures)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
図5は、不織糸504を製造するためのメルトブロー工程(melt blowing process)500を示す。メルトブロー工程500は、原材料をウェブ構造体(web structure)508に変換する。第1ステップ510は、低粘度の原料(図示せず)をホッパー512に供給して溶融させ、
図4の押出機420と同様の押出機516を介して押出す工程を含む。第2ステップ518は、紡糸口金(spinneret)524内の供給ダイホール(feeding die hole)522を通過する溶融原料から押出フィラメント(extruded filament)520を形成するステップを含む。第3ステップ526において、押出フィラメント520は、一次空気流(primary air streams)528によってダイ534に向けられる。一次空気流528は、高速かつ高温で吹き付けられて、紡糸口金524から出てくる押出フィラメント520を急速かつ冷却することなく押し出す。一次空気流528の温度は熱電対(図示せず)によって測定することができ、一次空気流528の温度は、押出フィラメント520の溶融原料の温度にほぼ等しいか、またはそれよりも高い。押出フィラメント520および一次空気流528はダイ534内に収束して、繊維流(fiber stream)532を形成し、ダイ534の出口535を通って出る。第4のステップ530において、一次空気流528に対してより低い温度を有する二次空気流536が、繊維流532に適用されて、複数の繊維538を形成する。二次空気流536は、周囲空気から生成することができ、乱流方式(turbulent manner)で適用することができる。第5のステップ540において、複数の繊維538は、コレクタ(collector)またはネットマシン(netting machine)544の受信側(receiving side)542によって受信される。ダイ-コレクタ間距離546は、ダイ534の出口とコレクタ544の受信側542との間に画定される。コレクタ544は、ダイ534の出口535の下流に配置される。例えば、コレクタ544は、カレンダーローラー(calender roller)または回転ドラム(rotating drum)などのローラーとして提供されてもよい。コレクタ544は、コレクタ544に沿って複数の繊維538を分配および/または拡散することによって、ウェブ構造体508を形成する。第6のステップ548において、ウェブ構造体508は、不織糸504を形成するためにウェブ構造体508を巻き取る巻取機(winding machine)550上に転送される。ウェブ構造体は、ウェブ構造体508の外側であるダイ側552と、ウェブ構造体508の内側である収集器側554とを含む。例えば、ウェブ構造体508の特性は、ポリマー溶融温度(polymer melt temperature)、ポリマー処理速度(polymer throughput rate)、一次空気温度(primary air temperature)、一次空気流量(primary air flow rate)、及ウェブ-コレクタ間距離のような、メルトブローイング工程500のいくつかのプロセス変数の選択及び組合せによって制御される。前述のプロセス変数は、不織糸504を形成する複数の繊維538の形態(morphology)及び形状、例えば直径を決定する。例えば、ダイ-コレクタ間距離546を増大させることで、複数の繊維538が二次空気流536に曝露されることによって絡み合うようになるより長さが大きくなることを可能にし、これはより分厚く、より柔らかいウェブ構造体を提供するための繊維の絡み合いの増大をもたらす。さらに、ダイ-コレクタ間距離546は、複数の繊維538が絡み合って収集されるときに、例えば、集束(bunching)またはチャンキング(chunking)などのファイバーレイダウン不規則性(fiber laydown irregularities)を回避するために増加され得る。また、ダイ-コレクタ間距離546を増加させることで、複数の繊維538が周囲空気および/または二次空気流536に曝される持続時間を延ばすため、ファイバー冷却が改善される。対照的に、ダイ-コレクタ間距離546は、一般的に、繊維の絡み合いの減少、ウェブ構造体の剛性向上、およびウェブ構造体のバリア特性の向上をもたらす。
【0045】
図6A~
図6Cを参照すると、特に
図6Aに関連して、束ねられた糸(bundled yarn)600は、中心軸CAに沿って配置された複数の糸604から形成されてもよい。複数の糸604は、上記および本明細書に記載されるように、異なる材料特性を含んでもよい。
図6Bは、撚糸構造体608を形成するために反時計回り606に撚られた複数の糸604を示す。反時計回りに撚られた撚糸構造体608は、S撚糸(S-twist yarn)として知られている。いくつかの実施形態では、複数の糸604がZ撚糸(Z-twist yarn)を形成する時計回り方向に撚られてもよい。撚糸構造体608は、様々な構成で提供されてもよく、本明細書に示されるもの以外の代替の形態をとってもよい。例えば、単一の熱可塑性ポリマーコアを含む
図1に示される単糸108の2本以上の撚り糸を束ねて、複数の糸604の束ねられた糸600を形成することができる。具体的には
図6Cを参照すると、複数の糸604は、複数の糸604のうちの中央に位置し、撚糸構造体608の長手方向に沿ってその対向する端部を通って延びる中心軸CAに沿って加えられる軸方向張力を受けて撚られている。複数の糸604は、時計回りまたは反時計回りのいずれかで撚られ、その結果、複数の糸604のそれぞれの糸614は
図6Cに示されるように、中心軸CAに対して螺旋角(helical angle)612で配置される螺旋軸(helical axis)HAを画定する。それぞれの糸614は、螺旋角612によって画定される螺旋構造体(helix structure)616を形成する。撚糸600によって生成される螺旋構造体616の螺旋角612は、少なくとも10度から少なくとも80度、少なくとも20度から少なくとも70度、少なくとも30度から少なくとも60度、またはいくつかの実例では約45度であってもよい。各糸614は、均一である螺旋角度612を有してもよく、互いに異なる1つ以上の螺旋角度612を有してもよい。溶剤または発泡剤は、多セル発泡構造体を形成するために撚糸構造体608に含浸され、セル成長方向の配向は、中心軸CAおよび長手方向に対して、発泡構造体に異方性特性を提供する。発泡構造体は、一方向のセル成長、双方向のセル成長、および放射状のセル成長を含んでもよい。いくつかの実施形態では、セル成長の方向は、中心軸CAの長手方向に対して垂直、平行、または傾斜のうちの少なくとも1つの方向であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、中心軸CAに垂直な第1セル成長方向および中心軸CAに垂直でない第2セル成長方向など、互いに異なる複数のセル成長方向が存在する。糸構造体の様々な絡み合いに組み込まれたセル成長方向は、独特の異方性を提供する。
【0046】
図7A~
図7Eを参照すると、制御された回転および制御された張力のもとで糸構造体を撚る方法700が開示されている。特に、
図7Aを参照すると、第1剛性ワイヤ(stiff wire)704および第2剛性ワイヤ706は、各端部に糸708の束を保持するために使用される。糸708の束は、説明の目的のために簡略化された方法で描かれているが、様々な形態および形状で構成され得ることが理解されよう。
図7Bを参照すると、糸束708は、管状リザーバ(tubular reservoir)712内に配置される。管状リザーバ712は、それぞれが開口部714を備える対向する端部を含む。
図7Cを参照すると、管状リザーバ712の両端は、隔壁またはプラグ716を受容するように構成される。第1隔壁(septum)718は管状リザーバ712の外側にループを形成するために、第1剛性ワイヤ704が通過することを可能にする開口720を含む。第2隔壁722は小カット試験管(small cut test tube)726を収容するためのより大きな開口724を含み、第2剛性ワイヤ706は、小カット試験管726を通過する。第2剛性ワイヤ706は固定端部728を画定し、第1剛性ワイヤ704は、糸束708に軸方向の張力を加えるために錘734が取り付けられるループを有する撚り端部730を画定する。
図7Dを参照すると、錘734が取り付けられた状態で、糸束708は、制御された回転および張力の下で撚られる。
図7Eを参照すると、糸の束708が所望の程度に撚られた後(これは、ラジアンまたは角度の単位で測定され得る)、錘734が除去され、撚糸738の束が、例示目的のために半透明で表示されているアルミニウム箔742によって覆われる。スチレンのような溶媒744が、小カット試験管726を通って管状リザーバ712に注入され、撚糸738の束を飽和状態にし、被覆する。続いて、溶媒744および撚糸738を含む管状リザーバ712は、発泡工程を開始するために、オートクレーブまたは反応器746内に配置され、これは、例えば、1つまたは複数のサイクルにおける、所定の期間において高温および高圧への曝露などの、温度および圧力の制御された適用を含む。発泡体ブランク752は、制御弁756を介して圧力を解放することによる減圧によって形成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、糸が糸構造体を操作するために編まれてもよい。ニット糸構造体は、ループを形成するために糸をかみ合わせることによって形成することができ、したがって、ニット糸構造体は、様々な構成で提供することができる。ニット工程(knitting process)は、糸が互いに平行に延びるように糸を絡ませる。ニット工程は、例えば、他の態様のうち、ループ形成の方向、ループ形成の密度、およびループ形状の変化に応じて変更することができる。
図8A~Gは、ニット糸構造体800のステッチ構造を示す。
図8Aは、リブステッチ804を示す。
図8Bは、パールステッチ808を示す。
図8Cは、ウェルトステッチ812を示す。
図8Dは、インターロックステッチ816を示す。
図8Eはタックステッチ820を示す。
図8Fは、プレーンスティッチ824を示す。したがって、異なる縫合構成(stitching configuration)、組み合わせ、および材料を異なる層に適用して、各層に様々な特性を付与することができる。
【0048】
概して、横編828および縦編832は、ニット糸構造体形成のために糸を針に供することができる2つの主要な方法である。
図8Fに示されるように、横編み方法828は、水平方向HDに沿って針(図示せず)を使用して複数のループ836を形成することによって達成される。横編み方法828では、複数のループ836が水平方向HDに沿って単一の共通の糸から形成され、特定の穿刺パターン(needling patterns)を使用することによって連続的に行に配列される。横編み方法828は、丸編み機(circular knitting machine)または平編み機(flatbed machine)を使用して達成することができる。
図8Eを参照すると、縦編み方法832は、鉛直方向VDにループを形成することによって達成される。糸は鉛直方向VDに沿って垂直にかみ合い、複数のループ836は、鉛直方向VDに沿って長手方向に配置され、互いに並行に配向されたいくつかの別個の糸の組合せから形成される。縦編み方法832は、ラスシェル機(raschel machine)を使用して達成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、
図8Gを参照すると、スペーサニット(spacer knit)844を使用して、超軽量糸構造体を作成することができる。スペーサニット844は、第1基板レイヤ848および第2基板レイヤ852を備える。第1基板レイヤ848および第2基板レイヤ852は、面854を形成するために、複数の横糸(weft yarn)および/または縦糸(warp yarn)の構造体を含む。複数のスペーサ糸(spacer yarns)856が、第1基板レイヤ848と第2基板レイヤ852との間の縦軸VAに沿って垂直に配置され、複数のエアトラップ858を形成する。第1基板レイヤ848および/または第2基板レイヤ852の面854は横糸方向(
図9に示される)または縦糸方向(
図9に示される)に沿って複数のスペーサ糸856の配向を操作するために、例えば、六角形メッシュまたはチェーンメッシュなどの様々な構造体に編まれ得る。縦軸VAに対する配向は、複数のスペーサ糸856の収縮歪み(shrinkage strain)を変化させるように操作することができる。
【0050】
図9を参照すると、単糸108(
図1参照)または多重ポリマー糸200(
図2参照)は、織られて、織糸構造体(woven yarn structure)900を形成することができる。織糸構造体900は、様々な構成で提供されてもよく、本明細書に示され、説明されるものとは別の形態をとってもよい。水平方向HDまたは横糸方向WEDに配置された糸は、横糸(weft yarn)902と呼ばれる。鉛直方向VDまたは縦糸方向WADに配置された糸は、縦糸(warp yarn)904と呼ばれる。織物の端部908を作り出す縦糸904の周りに巻き付けられた横糸902は、耳部(selvedge)912と呼ばれる。いくつかの実施形態では、製織法(weaving method)が織糸構造体900を形成するために垂直に織り合わされる糸の2つの別個の組を含む。したがって、2つの別個の糸の組は、平織り構造体(plain weave structure)、サテン織り構造体(satin weave structure)、またはツイル織り構造体(twill weave structure)を作り出すために織り合わされる。このようにして、織成工程は垂直な十字パターン916に糸を配向させ、織糸構造体900が薄いプロファイルを維持することを可能にするが、織糸構造体900の伸縮性も制限する。
【0051】
いくつかの実施形態では、糸は例えば、シャトルタイプ(shuttle type)、円形タイプ(circular type)、または狭いタイプ(narrow type)などの織機(weaving machine)(図示せず)によって織られてもよい。シャトル織機は一般に、電子的に制御され、緊密な縦糸および横糸パターンを織るように構成される。シャトルタイプの織機は、糸を保持するために端部にノッチを有する木材またはプラスチックの狭い部分を備え、垂直な縦糸の間を自動的に前後に移動して、水平な横糸を通って製織する。従来の円形タイプの織機は、縦糸の一部に横糸を製織するために、円内で同時に移動する2つ以上のシャトルを備え、一般に電子的に制御される。電子織機は様々な機構をとり得るが、織物構造体を作成するための基本原理は同じである。織機のような製織のために、非電気式の手動式機械を使用することができる。織機は、横糸の織り込みを容易にするために、縦糸に張力をかけることで織る装置である。様々な織機の配向または形状は異なり得るが、基本的な機能は同じである。
【0052】
いくつかの実施形態では、
図8A~
図8Gのニット糸構造体800または
図9の織糸構造体900が様々な材質、様々な糸厚、または様々な色彩を使用することによって、様々な特性を備えることができる。異なる特性としては、例えば、糸数(yarn count)、糸の撚り(twist in yarn)、糸強度、ねじり特性、伸び、弾性、引裂強度、及び曲げ特性が挙げられる。
【0053】
図10A~Cを参照すると、糸の多重撚り糸を編込んで、編込み糸構造体1000を形成することができる。
図10Aを参照すると、編込み糸構造体1000は、様々な構成で提供されてもよく、本明細書に示されるものとは別の形態をとってもよい。編込み糸構造体1000は、第1糸1004と、第2糸1008と、第3糸1012とからなる。
図10Bを参照すると、第1糸1004は第2の糸1008の上を通り、第3糸1012の下を進む。第3糸1012は、隣接する糸の上を通る。図示の実施形態では、第1糸1004が第2糸1008の下を通過する。糸1004、1008、1012は中心軸CAに沿って連続的に編込まれ、これにより、編込み糸構造体1000は、引張荷重をより均一に分配することができる。編込みは編込み角度1016によって規定され、これは中心軸と螺旋軸HAとの間の角度として表現することができる。螺旋軸HAは、連続糸構造体の螺旋状の撚り合わせによって規定される。
図10Cを参照すると、編込み糸構造体は、発泡編込み糸構造体1020を形成するために、超臨界CO
2発泡工程(supercritical CO
2 foaming process)によって発泡されてもよい。超臨界CO
2発泡工程は、超臨界条件下(supercritical conditions)での編込み糸構造体材料内のCO
2分子の拡散(diffusion)および可溶化(solubilization)、並びに材料内でのCO
2気泡の生成を可能にする急激な減圧によって起こる。
【0054】
いくつかの実施形態では、2次元編込み構造体は、軸上荷重方向に沿った軸方向糸(axial yarns)と、軸方向糸に対して斜めの編込み糸(braider yarns)とを備え、様々な編込み構造体を形成する。2次元編込み構造体は、直線状、曲線状の製品(product curved)、または平面シェル(plane shell)であってもよい。限定はしないが、規則的な編込み(regular braid)、菱形の編込み(diamond braid)、およびヘラクレス編込み(Hercules braid)などの異なる編込み構造体を、異なる編込み角(braided angle)1016で作成することができる。対角線状に交差する編込み角1016は、少なくとも1度、少なくとも10度、少なくとも20度、少なくとも30度、少なくとも40度、少なくとも50度、少なくとも60度、少なくとも70度、少なくとも80度、または少なくとも89度であってもよい。ほとんどの編込み角1016は、中心軸CAから30度~80度の間に分布する。中心軸CAは、編込み糸構造体1000が形成される向きである。
【0055】
本明細書に記載されるように、「円形編込み(circular braid)」、「円形編込み(round braid)」、または「管状編込み(tubular braid)」は、円形プロファイルの周りに形成される編込み構造体を指すために互換的に使用される。したがって、
図10の編込み構造体1000は、既知の方法に従って、糸を一緒に織り合わせて、円形編込みを形成するために使用され得る。同時に、編込み構造体は、全ての編込み糸を軸方向の張力を受けた状態に維持しながら、円形編込みを使用して製造することができる。いくつかの実施形態では軸方向の張力が変更または変動されてもよく、あるいは軸方向の張力が一定のレベルで、一定の期間にわたって、またはプロセス全体にわたって維持されてもよい。比較的短い長さの手編み糸の場合、要望に応じて、錘を追加または除去することによって糸に張力を加えるおよび/または調整するために、個々に錘を使用することができる。いくつかの実施形態では、糸がコアまたはマンドレルの周りに配置され、直線状に、例えば、上端から下端まで編込まれる。このハンド編込み法はメイポール編込みとして知られており、この原理は、異なる構造プロファイルのオーバーブレイディング(over-braiding)に使用される。
【0056】
図11A~Fを参照すると、組紐編込み1100は、管状編込みを形成するために使用され得る。組紐編込み1100は、編込み糸に必要な張力を作り出すことを可能にする、周縁部1108の周りに複数のノッチ1106を有する堅固で緻密な発泡体から製造された組紐盤1104を利用する。組紐盤1104は、典型的には管状編込みプロファイルの編込みを可能にする円盤形状に製造されるが、組紐盤1104は矩形または正方形であってもよく、これは編込みが平紐(flat braids)を作成する能力を提供する。
【0057】
図11Aを参照すると、8本の撚り糸が、一端で結び目によって一緒に結ばれるか、またはボビン(図示せず)が糸を一緒に保持し、もつれを防止するために使用され得る。いくつかの実施形態では、組紐(図示せず)は、組紐盤1104によって規定される水平軸HAに垂直な方向に糸に張力を加えるために結び目に結ばれてもよい。
図11Bを参照すると、組紐編込み1100では、第1糸1110、第2糸1112、第3糸1114、第4糸1116、第5糸1118、第6糸1120、第7糸1122、および第8糸1124は、縦糸1128と呼ばれる周縁1108の周りの複数のノッチ1106内に配置される。本開示の組紐盤1104は、32本の切欠きと8本の撚り糸とを含む。組紐盤1104上の中央空孔1136内に結び目1132が配置され、8本の撚り糸は、それぞれが2本の撚り糸を有する4つのサブグループに分けられる。例えば、第1サブグループ1140は、第1糸1110および第2糸1112を含み、第2サブグループ1144は第3糸1114および第4糸1116を含み、第3サブグループ1148は第5糸1118および第6糸1120を含み、第4サブグループ1152は、第7糸1122および第8糸1124を含む。第1サブグループ1140は第1ドット1162に隣接する第1位置1160に位置するノッチ1106によって保持され、第2サブグループ1144は第2ドット1166に隣接する第2位置1164に位置するノッチ1106によって保持され、第3サブグループ1148は第3ドット1170に隣接する第3位置1168に位置するノッチ1106によって保持され、第4サブグループ1152は第4ドット1174に隣接する第4位置1172に位置するノッチ1106によって保持される。例えば、第1位置1160にある第1糸1110および第2糸1112を含む第1サブグループ1140は、第1ドット1162に隣接するノッチ内に保持される。第1糸1110は第1ドット1162の左側に位置するノッチ内に保持され、第2糸1112は第1のドット1162右側に位置するノッチ内に保持される。
図11Cを参照すると、第1ドット1162が上向きであり、第3ドット1170が下向きである状態で、第3ドット1170の左側に位置するノッチ1106内に保持された第6糸1120は、円盤の水平軸HAを横切って直接移動し、第1ドット1162の左側に位置する第1糸1110の左側に位置するノッチ内に保持される。
図11Dを参照すると、第1ドット1162の右側に位置する第2糸1112は、第5糸1118の右側に位置するノッチ1106まで、ディスクの水平軸HAを横切って直接移動する。
図11Eを参照して、組紐盤1104を時計回りに4分の1回転し、第4ドット1174を上向きにし、第2ドット1166を下向きにする。
図11Cおよび11Dの編込み工程は、水平軸を横切って左下の最も左の糸を移動し、それを左上の最も左の糸に隣接するように配置し、水平軸を横切って右上の最も右の糸を移動し、それを右下の最も右の糸に隣接するように配置して、
図10の編込み構造体1000を製品軸(product axis)に沿って形成することによって繰り返される。製品軸PAは、組紐盤1104に対して垂直に延在する。
図11Fを参照すると、組紐盤1104は、時計回り方向に再び4分の1回転され、
図11Cおよび
図11Dの編込み工程が繰り返される。
【0058】
いくつかの実施形態では、編込みプロファイル(braided profile)は、ホーンギアブレーダ(horn gear braider)、メイポールブレーダ(maypole braider)、スクエアブレーダ(square braider)、ワードウェルラピッドブレーダ(Wardwell rapid braider)、および高速プログラマブルロジックコントローラブレーダなどの編込み機(braiding machine)によって作成することができるが、これらに限定されない。編込み機の一般的な作業工程は、撚り糸がボビンに巻き付けられ、ボビンがキャリアに取り付けられ、キャリアが編込み機に取り付けられて編込みプロファイルを生成することから始まる。
【0059】
いくつかの実施形態では、限定はされないが、編込みプロファイルは、異なる材料、厚さ、および色などの異なる特性を含むことができる。材料は摩擦特性(frictional properties)、曲げ特性(flexural properties)、引張特性(tensile properties)、ねじり特性(torsional properties)、弾性率(moduli of elasticity)、破断伸び(breaking extensions)、可塑性(plasticity)、弾性限界(elastic limits)、破断点(breaking points)、および伸長(elongation)などの異なる機械的特性を有する異なるポリマーコアを含むことができる。例えば、様々な特性を含む3本の撚り糸を使用して、編込み糸構造体1000を形成することができる。第1糸は、第2糸および/または第3糸よりも厚い直径を備えてもよい。第2糸は、第1糸および/または第3糸と比較して異なる材料を含む。第3糸は第1糸と同じタイプの材料を含むが、異なる直径を有する。したがって、様々な糸を編み込んで、編込み糸構造体1000の適用に基づいて糸プロファイル(yarn profile)を作成することができる。
【0060】
図12A~Dを参照すると、撚糸構造体608、ニット糸構造体800、および編込み糸構造体1000などの糸の区画は、隣接する糸の区画を結び目1200で固定することによって延ばすことができる。結び目1200は、ダブルフィッシャーマンズノット、エスキモボウラインノット、ダブルフィギュアエイトノット、フィッシャーマンズノット、ハーフヒッチノット、カルミークループノット、オーバーハンドノット、オーバーハンドループノット、リーフノット、シーフノット、スクエアノット、プラフォンドノット、およびフレンドシップノットを含む、様々な周知の結び目(ノット)構成のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、結び目1200の外層が形状を永続的または半永続的に維持するために、特定の温度および/または圧力で熱圧着されてもよい。
【0061】
本明細書で使用するとき、「発泡剤(foaming agent)」、「溶剤(solvent)」、「ニューマトゲン(pneumatogen)」、又は「発泡剤(blowing agent)」は、互換的に使用され、発泡工程中にセル構造体(cellular structure)を生成することができる物質を指す。発泡剤は物理的発泡剤(physical blowing agent)、化学的発泡剤(chemical blowing agent)、または物理化学混合発泡剤(mixed physical-chemical blowing agent)を含み得るが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、単一のタイプの発泡剤を使用することができる。物理的発泡剤としてはペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び液状二酸化炭素(CO2)が挙げられるが、これらに限定されない。物理的発泡剤の発泡工程は、不可逆的かつ吸熱的である。化学的発泡剤としてはイソシアネート、ポリウレタン、アゾジカルボンアミド、ヒドラジン、重炭酸ナトリウム、および他の窒素系材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
発泡剤の化合物は、少なくとも2つの化学的物質、少なくとも2つの物理的物質、または物理的発泡剤と化学的発泡剤との混合物を含み得る。発泡剤の化合物は、例えば、活性化温度などの異なる特性の発泡剤を含んでもよい。すなわち、発泡剤化合物温度は、そこに含まれる発泡剤の異なる活性化温度の平均として定義され得る。平均は、単位質量あたりまたは単位体積あたりの基準で計算することができる。当該発泡剤のうち活性化温度の範囲は、例えば、約5℃、または約10℃、または約30℃で互いに異なり得る。このようにして、特有の特性を有する発泡構造体を、特定の活性化温度を有する発泡剤の選択によって達成することができる。化合物は発泡工程を通して放出および吸収される熱エネルギーに関して互いにバランスをとるために、物理的および化学的発泡剤を一緒に組み合わせることができ、それによって、温度変動を最小限に抑え、化合物および/または得られる発泡体の熱安定性を改善する。
【0064】
発泡剤は、全体積の膨張が発泡前の試料の初期体積と比較して少なくとも10パーセントの増加をもたらす場合に有効であると考えられる。例えば、発泡剤は、試料の体積を初期体積から最終体積に膨張させるのに十分であり得る。最終体積は、発泡前の初期体積の約10パーセント以上、約20パーセント以上、約30パーセント以上、約50パーセント以上、約100パーセント以上、または約300パーセント以上であってもよい。
【0065】
熱可塑性発泡では、各セルを覆う薄いポリマー壁を有する発泡体を得ることが重要である。そのような構造体を提供するために、セルの形態は、温度を変えることによって制御されなければならない。例えば、温度が高すぎる場合、ポリマーの溶融強度は、セル破裂を誘発し得る。一方、温度が低すぎると、セル成長が抑制され、発泡体ブランク内に形成されるセルの成長が不十分になる可能性がある。
【0066】
発泡体ブランクの特徴およびその後の用途は、材料、材料の分子構造体、材料の濃度または量、および糸の材料の反応温度によって決定される。糸構造体の様々な構成は、様々な有利な特性を有する多重セル発泡体を形成するために、構造体、物質、および発泡剤を選択して設計することができる。例えば、発泡剤の濃度または種類は、多重セル発泡体の気泡サイズ、膨張速度、および気孔率に影響を及ぼし得る。同様に、ポリマーコアの重量パーセントまたは濃度は、多重セル発泡体の多孔度に影響を及ぼし得る。
【0067】
発泡体ブランクは、硬度(hardness)、耐水性(water resistance)、堅さ(rigidity)、クッション性(cushioning)、消音性(sound dampening)、衝撃減衰性(impact dampening)などを高めることによって、ミッドソール内に好ましい特性を提供する。全ての一般に知られている発泡体材料は凸状のセル形状を有し、軸方向に荷重が加えられたときの横方向の歪みを軸方向の歪みで割った値を負の値として定義される正のポアソン比を示す。発泡体を含む材料は、軸方向の伸張に応じて横方向に収縮し、軸方向の圧縮に応じて横方向に膨張し、正のポアソン比をもたらす。ポアソン比の範囲は、典型的なポリマー発泡体の場合、0.1~0.4である。例えば、発泡体は、発泡体が高温で張力を加えられると、永久的な特性および材料特性の変化を受ける。張力の方向に応じて、一方向または双方向の異方性発泡体を形成することができる。
【0068】
典型的には、発泡構造体は等方性である。等方性とは、結晶構造により全方向に均一な挙動を示す材料の特性を指す。等方性材料は同じ方向における等しい挙動および材料特性を有する発泡体の発泡を可能にし、3次元におけるポアソン比は、約-1.0~0.5である。セル構造体の向きを予め決めておくことによって、発泡体多重セル糸構造体の利点をさらに活用することができる。その特性が測定される向きに依存する発泡構造体または発泡体物質は、異方性であると記載される。異方性は、異なる方向に加えられる応力に対して異なるように反応する材料の傾向として定義される。セル形状における異方性は最大セル寸法と最小セル寸法との比(形状異方性比Rとして注目される)によって簡単に測定することができる。典型的な発泡体の異方性比は約1.3であり、当該比は典型的には約1~約10の間で変化し、異方性比Rはセルサイズと共に増加し、密度と共に減少する。異方性比Rは、ヤング率で表すことができる。最大セル寸法および最小セル寸法に沿ったヤング率の比は、異方性比Rを提供する。
【0069】
発泡構造体の異方性挙動は、閉じ込めの放出(release of confinement)によって1つ以上の向きに導入されてもよい。ポリマー発泡体の異方性比率を増加させる方法は、モールド型を介して、様々な成分を有する多相構造体(multiphase structure)を介して、またはセルの上昇方向(cell rise direction)に沿ってファイバーもしくはフィラメントを予備配向させることによって、セルの成長を一方向に制限することからなる。ポリマー発泡体の異方性比を増加させるプロセスは、異方性発泡体の線形弾性(linear elasticity)、非線形弾性(non-linear elasticity)、塑性崩壊(plastic collapse)、脆性破砕モデル(brittle crushing model)、および破壊靭性(fracture toughness)の理解から推定することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、凝固工程中(solidification process)に調整することができる複雑な3次元発泡構造体を有する発泡体を製造するために、フリーズキャスティング技術(freeze-casting technique)を使用することができる。フリーズキャスティング技術は、懸濁特性(suspension characteristics)(例えば、液体の種類、添加剤、微粒子分率など)および凝固特性(solidification characteristics)(例えば、速度、温、向き、外力場など)を変化させることによって調整され得るセル構造体の体積寸法、形、および配向などの様々な利点を提供する。一方向、双方向、放射状、放射状中心およびダイナミックフリージング法(dynamic freezing methods)のような種々の凝固法が、フリージング工程について多孔度および微細構造を制御するための手段として研究されてきた。
【0071】
図13は、熱可塑性ポリマー糸試料(thermoplastic polymer yarn specimen)1304を発泡させるプロセス1300を示す。プロセス1300は、発泡剤1308による糸試料1304のポリマー飽和(saturation)または含浸(impregnation)を含む。発泡剤1308は、物理的発泡剤、化学的発泡剤、又は物理的発泡剤と化学的発泡剤との混合物であってもよい。プロセス1300は、臨界値を超えて温度および圧力を上昇させることによって誘発され得る過飽和ポリマー-発泡剤混合物(supersaturated polymer-blowing agent mixture)の生成をさらに含む。加えて、プロセス1300は、
図13の例示的な糸試料1304の膨張によって表されるように、弁1328の動作によって、雲のような図で表された急激な減圧1324を通じた熱可塑性糸試料1304のセル核生成またはセル成長1320を含む。さらに、プロセス1300は、発泡構造体1332を形成するために、圧力および温度が周囲の圧力および周囲の温度にするセル安定化(cell stabilization)を含む。周知のバッチ発泡(batch foaming)は、圧力誘導法(pressure-induced method)および温度誘導法(temperature induced method)を含む2つの異なる方法で適用される。圧力誘起法では、
図13に示されるように、第1ステップ1350は、発泡剤1308によって飽和されている糸試料1304を含む。第2ステップ1354は、弁1328の動作によって引き起こされる急激な減圧1324を介して発泡剤1308によって誘発される糸試料1304のセル核生成1320を含む。周囲大気圧への系の急激な減圧1324は、発泡工程を開始して、発泡構造体1332を生成する。
【0072】
温度誘起法では、プロセスは圧力誘起法と同様であるが、より低い温度である。飽和が完了した後、ポリマー試料1304は一定期間、周囲温度より高い温度で油浴(oil bath)に入れられ、これはセルの核形成および成長を引き起こす。例えば、油浴の温度は80℃~150℃の温度に維持され得るが、これに限定されない。気泡(セル)が生成された後、発泡構造体1332は、水中または溶剤中の冷浴(cooling bath)中に入れられる。
【0073】
本明細書で使用される超臨界流体は、物質の温度および圧力がその臨界点を上回り、明確な液相および気相が存在せず、物質を固形に圧縮するのに必要な圧力を下回る物質であることが理解されるのであろう。超臨界流体は、液体および固体のような材料を溶解することができ、臨界点に近い場合、圧力または温度の小さな変化で、密度に大きな変化をもたらすことができる。二酸化炭素および水は、最も使用される超臨界流体である。超臨界二酸化炭素は、31℃で7.4MPaの臨界点を有する。過熱水は374℃で22MPaの臨界点を有し、有機溶媒に似ている。
【0074】
さらに、過熱流体は本明細書で使用されるとき、流体が飽和蒸気圧で蒸気と平衡状態にある物質であることが理解されるのであろう。例えば、過熱水は、周知の過熱流体である。過熱水は、過圧が沸点を上昇させ、液体の水が蒸気と平衡状態にある環境において安定化または準安定化されるように構成され、これは、ヘッドスペースを有する密閉容器内で水を加熱することによって得ることができる。過熱流体または水分が発泡構造体と相互作用する間、過熱流体の相対的に高い温度によって、発泡構造体内に捕捉された気体が膨張して空隙が拡大し、それによって発泡構造体の全密度が低下する。超臨界状態に関して、例えばCO2またはN2などの媒体は、その臨界点を超えて上昇し、発泡構造体中への拡散によって、臨界点未満では接近できない小さな空隙に接近することを可能にし、これによって、部分的に超臨界媒体の密度を相対的に高くする。発泡構造体を超臨界媒体に曝露すると、発泡構造体の一部が可塑化し、発泡構造体が飽和する。その後の工程において、発泡構造体は、例えば、圧力を減少させるかまたは昇温することによって過飽和状態に制限されて、発泡構造体のポリマーマトリクス(polymer matrix)内の多孔質セルの核形成および相対的な成長を引き起こす。超臨界媒体への曝露および過飽和により、発泡構造体の全体の濃度が低下する。これらの特性は、温度および圧力の実験条件を変えることによって密度を連続的に調節することができるので、超臨界条件および過熱条件の各々を、抽出または含浸プロセスを実施するための好ましい条件にする。
【0075】
図14は、発泡熱可塑性糸1400の断面を示す。第1内径1404は、本明細書に記載の発泡工程を経る前の
図1の糸100に対応し、第2外径1408は、発泡熱可塑性糸1400を形成するために発泡した後の
図1の糸100を示す。糸100がCO
2などの超臨界発泡剤と相互作用すると、糸100は超臨界状態を超える気体で飽和される。圧力を低下させるか、または温度を上昇させることによって、糸100は、ポリマーマトリックス内の多孔質セルが増殖する過飽和状態になる。糸100が超臨界条件下にあると、融点、熱-ガラス転移点(heat-glass transition)、結晶化温度、結晶化速度、および膨潤などの物理的特性を変化させる。一般に、溶媒の浸透は、熱力学的に好ましい結晶状態を形成するようにポリマー鎖を再配向することによって膨潤を誘発する。発泡工程によって径が増加し、直径の変化、すなわち、ポリマー糸の図示された第1直径1404から第2直径1408への変化を誘発し、同時に構造体の多孔性を増加させ、糸の密度を減少させる。
【0076】
図15A-Bを参照すると、発泡1508が発生する前と発泡1510が発生した後での径1506の変化を観察するために、ポリアミド6モノフィラメント(polyamide 6 monofilament)1504から形成されたコブラノットとして理解される結び目構造体(knot structure)1500で処理が行われた。ポリアミド6モノフィラメント1504によって形成されたコブラノット構造体1500は、発泡工程中のコブラノット構造体1500の径1506の変化を決定するために、超臨界二酸化炭素に供された。モノフィラメント糸1512の直径1506の増加は、25%未満だった。モノフィラメント糸1512を過熱水および超臨界二酸化炭素に曝した場合、ポリアミド6モノフィラメント1504の直径1506は125%を超えて増加した。超臨界流体と過熱流体との組合せは、高多孔質の構造体を必要とする発泡体にとって望ましい場合がある。
【0077】
糸構造体を発泡させる方法を以下に記載する。糸構造体は、上述の糸物質、糸特徴、および発泡剤のいずれかを含んでもよい。超臨界条件下で、発泡剤の含浸は、物質を発泡させ、糸構造体に沿って少なくとも1つの発泡領域を形成する。例えば、熱可塑性糸のいずれかを組み込んだ糸構造体は、超臨界条件下で処理されて、複数の空洞を含む多重セル発泡体を作り出すことができる。空洞は、連続気泡発泡構造体(open-cell foam structure)または独立気泡発泡構造体(closed-cell foam structure)を含んでもよい。発泡剤からの気泡の導入は、製造工程中にセル構造体の形成を誘発する。発泡されると、発泡多重セル糸構造体は、非発泡糸構造体と比べて様々な機械的特性を有する。例えば、発泡構造体は、増大したテクスチャー、強度、クッション性、摩耗抵抗、及び/又は他の物質特性の組合せを付与することができる。
【0078】
図16は、糸構造体を発泡させる例示的なプロセス1600を示す。第1ステップ1604は、ある特性および特徴に基づいて糸材料(yarn material)を選択することを含む。糸材料は例えば、リサイクルプラスチック、TPU、ナイロンなどの、本明細書に記載の糸材料のいずれかから構成されてもよい。特定の糸の選択は、例えば、デニール、引裂強度、色、および/または厚さなど、特定の特性および特徴のうちの1つまたは複数に基づいて行うことができる。第2ステップ1606は、選択された糸を撚り合わせて糸構造体を形成することを含む。選択された糸は所望の糸構造体を形成するために、上述の方法のいずれかを使用して撚り合わせることができる。第3ステップ1608は、糸構造体を第1シューズミッドソールモールド内に挿入する工程と、糸構造体を含む第1シューズミッドソールモールドをオートクレーブ内に設置する工程とを含む。第4ステップ1610は、発泡工程を開始するために、糸構造体を、例えば超臨界条件下で気体などの物質に浸透させ、飽和させることを含む。第5ステップ1612は、オートクレーブの急速な減圧によって引き起こされる糸構造体の発泡を含む。第6ステップ1614は、オートクレーブおよび第1シューミッドソールモールドから発泡糸構造体を除去することを含む。第7ステップ1616は、ミッドソールの形を提供するために、発泡糸構造体を第2モールド内に配置することを含む。第2圧縮成形プロセスは、異方性発泡体ブランクの成分温度を、溶融温度を少なくとも30℃上回るまで上昇させるが、その塑性変形を生じさせない動作温度で行われる。異方性発泡体ブランクの溶融温度は、使用される特定の材料および/または発泡後のその特性によって決定され得ることが理解されるのであろう。
【0079】
いくつかの実施形態では、糸構造体が一方向性および/または双方向性を含む。一方向性および/または双方向性を含む糸構造体は、調整可能かつ機能的な異方性発泡体ブランクを形成するために発泡体ブランク内で予備配向されてもよい。いくつかの実施形態では、異方性発泡体ブランクが第1セル成長配向を有する複数の第1セルと、第2セル配向を有する複数の第2セルとを含むことができ、第1セル成長配向は第2セル成長配向とは異なる。上述の様々な糸構造体によって提供される異方性セル配向は、発泡体ブランクが理想的な位置で望ましい特徴を有することを可能にする。上述の様々な糸構造体およびその構成は、1つまたは複数の特定の方向に可撓性を有する崩壊構造(collapsing structure)、1つまたは複数の特定の方向における弾力性を有する反発構造(rebound structure)、および1つまたは複数の特定の方向における剛性を有する支持構造など、発泡体ブランク内に収容されるべき具体的な機能を提供することができる。様々な糸構造体および糸の構成の予備配向は、発泡体の特定の領域が異なる技術的特徴、方向依存性特徴、および性能特徴を示すことを可能にする。
【0080】
図17を参照すると、発泡体ブランクを製造するために使用される高圧反応器システム(high-pressure reactor system)1700が示されている。高圧反応器システム1700は、入口弁1702、出口弁1704、圧力ゲージ1706、破裂ディスク(rupture disk)1708、高圧反応器1710、熱電対1712、およびPIDコントローラ(図示せず)を含む。入口弁1702は、CO
2を伝達するニードル弁(図示せず)であってもよい。圧力ゲージ1706は、高圧反応器システム1700内の圧力を測定し、圧力安全ディスクとしても知られる破裂ディスク1708は、加圧高圧反応器1710を保護する圧力逃がし安全装置(pressure-relief safety device)である。高圧反応器1710は、発泡体ブランクを作り出すために超臨界気体を浸透させることができる糸構造体試料またはその一部を受け入れるように構成された内部チャンバ(図示せず)を含む。高圧反応器1710は、熱電対1712およびPIDコントローラ(図示せず)に接続され、温度変化を感知し、特定の温度を維持および調整する。出口弁1704は、反応器を急速に減圧するためのボール弁(図示せず)であってもよいし、遅い減圧のためのニードル弁を含んでいてもよい
【0081】
マイクロセル構造体の機構は、撚糸構造体または編込み糸構造体の形成法に基づいて異なっていてもよい。本発明では、異方性ポリアミドフィラメントの微細気泡構造体(microcellular structure)のメカニズムを、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry)により求めた結晶化度、発泡後の径における変化、発泡後の濃度における変化、及び/又は発泡後の断面領域における変化を分析することにより調査する。
図18Aは、発泡前の
図11に示される組紐盤によって形成された編込み糸構造体1800を示し、
図18Bは、発泡編込み糸構造体1802を示す。編込み糸構造体1800を含む繊維1804が張力で引っ張られると、張力によって引き起こされる歪みに基づいて、繊維の結晶化度の割合および径が変化する。結晶化度の割合は、示差走査熱量測定を使用することによって、サンプルの密度をサンプルの非晶質密度と比較することによって決定することができる。表1は、歪みに対する結晶化度の割合の関係および直径の変化を示す。
【0082】
表1:引っ張り力で引っ張られた繊維によって誘起された歪みに対する結晶化度の割合および直径の変化
【表1】
【0083】
編込み糸構造体1800は、フィラメント径0.56mmで約1.22g/cm3の密度を有する。第1に、浸漬工程は、約101℃~約105℃の範囲の過熱水に、約20.7MPa(メガパスカル)~約34.5MPaの範囲の圧力で、約4時間、編込み糸構造体1800を浸漬することを含む。第2に、発泡工程は、約106℃~約112℃の範囲の温度で、約20.7MPa~約34.5MPaの範囲の圧力で行われる。発泡は、発泡編込み糸構造体1802を形成する急速減圧によって起こる。発泡編込み糸構造体1802は、0.56mmから1.57mmへのフィラメント直径の増加を示し、これは、フィラメント直径寸法の約180%の増加であり、1.22g/cm3から0.332g/cm3への密度の減少である。したがって、発泡編込み糸構造体1802は、約60%の濃度変化を示す。いくつかの実施形態では、発泡編込み糸構造体1802が少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又はそれ以上の濃度変化を示す。撚糸構造体608はまた、撚糸構造体608が少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、またはそれ以上の濃度変化を示すことができるように、本明細書に記載の技術によって同様の変化を示すことができることが理解されよう。また、発泡編込み糸構造体1802は、発泡前にそれが有する撚りを維持することによって、編込みに付勢が加えられたことを示す。繊維領域の増大、密度の変化、発泡編込み糸構造体1802の気孔率を発泡温度に基づいて示す。
【0084】
【0085】
図19A~Dは、上述の編込み構造体発泡サンプル1~4の対応する断面図を示す。
【0086】
図20Aは、
図7A~
図7Eに示される方法を用いて形成される撚糸構造体2000を示す。第1に、浸漬工程は、約101℃~約105℃の範囲の過熱水に、約20.7MPa(メガパスカル)~約34.5MPaの範囲の気圧で、約4時間、撚糸構造体2000を浸漬することを含む。第2に、発泡工程は、約106℃~約112℃の範囲の温度で、約20.7MPa~約34.5MPaの範囲の圧力で行われる。
図20Bを参照すると、発泡は、発泡撚糸構造体2002を形成する急速減圧によって起こる。表3は、発泡温度に基づく、繊維領域の増大、密度の変化、および発泡撚糸構造体2002の多孔度を示す。
【0087】
【0088】
図21A~Dは、上述のツイスト複合発泡サンプル1~4の対応する断面図を示す。
【0089】
本発明では、PA-PS(ポリアミド-ポリスチレン)複合サンプルを
図7A~7Eに示す手法を用いて作成し、円周方向剪断歪み集合体に対するフィラメントの配向を調査した。例えば、糸が配置されるピッチは、圧縮作用の間、編込み構造体のフィラメント間の不十分な接着をもたらし得る。履物製品のミッドソールは、繰り返し圧縮作用を受けるので、フィラメントの配向と圧縮作用との関連性を理解することが大切である。フィラメントサンプルは約6.2cm~6.6cmの長さを有する60本のフィラメントを含み、これは、1kgの吊り下げ質量で2.5~4回の完全回転で撚られている。スチレンモノマー、0.3mol%のtert-ブチルペルオキシベンゾアート開始剤、およびメタノール溶媒が、PA-PS複合体サンプルを製造するために使用される。まず、PA-PS複合材料サンプルを、75℃、24時間、27.6MPaで浸漬する。第2に、PS重合は、115℃、約4時間~16時間、27.6MPaで起こる。重合が起こった後、ボールバルブの形態の出口弁1704(
図17参照)を使用して、複合サンプルを周囲温度まで急速に減圧する。PA-PS複合材料サンプルの直径の変化は初期半径方向ピッチ(Pi)および最終半径方向ピッチ(Pf)、初期高さおよび最終高さを観察し、回転の変化を測定することによって決定することができる。表4は、重合時間、膨潤前の繊維のピッチ、膨潤後のピッチ、および直径の変化の間の関係を示す。
【0090】
【0091】
増大したフィラメントの径は、フィラメントを含む糸構造体の多孔度の増大に比例して対応する。すなわち、直径のより大きな増加は、適切な発泡用途の重要な特性である多孔度のより大きな増加に対応する。膨潤前後のフィラメントのピッチ、すなわち角度の変化は、直径の変化の結果であり得る。上述のように、撚糸構造体またはニット糸構造体のピッチは圧縮されたときに、不十分な接着を引き起こし得る。そのため、円周方向剪断歪みを測定することにより、膨潤前後のピッチとフィラメント径の変化との関係を理解する必要がある。上述のように、サンプル1は37.9回転数/メートルの初期半径方向ピッチPiおよび59.4回転数/メートルの最終半径方向ピッチPfを有することが観察され、これは半径方向ピッチの56.7%の増加であり、122%の直径増加も観察された。対照的に、サンプル3は37.9回転数/メートルの初期ピッチPiおよび60.5回転数/メートルの最終半径方向ピッチPfを有することが観察され、これは半径方向ピッチの59.6%の増加であり、135%の直径増加も観察された。サンプル1と3との間の主な違いは重合時間であり、サンプル3の重合時間は16時間であり、サンプル1の重合時間は4時間のみである。したがって、サンプルの重合時間が長いことは、半径方向ピッチをより大きく増加することを可能にし、半径方向ピッチのそのような増加はより大きな直径の増加を可能にし得ると推測される。サンプル4の重合時間は16時間であり、発泡工程が行われ、サンプル1、2、および3のいずれかの直径増加よりも著しく大きい178%の直径増加をもたらしたことが理解される。
【0092】
図22は、圧縮に対する円周方向剪断歪みの測定を可能にする装置2200を示す。装置2200は、上部圧縮クランプ2202と、下部圧縮クランプ2204と、サンプルプレート2208と、スラストボールベアリング(thrust ball bearing)2210とを含む。接着剤2212は、スラストボールベアリング2210の底面2214を下部圧縮クランプ2204の上面2216と接着するために使用される。スラストボールベアリング2210の上面2218はサンプルプレート2208の下面2220に接着され、サンプルプレート2208の上面2222は接着剤2212によってサンプル2206の下面2224に接着される。サンプル2206の上面2226は、接着剤2212によって上部圧縮クランプ2202の下面2228に接着される。接着剤2212は、スラストボールベアリング2210を除く垂直軸VAを中心とする表面の回転を制限する。スラストボールベアリング2210は、円周方向剪断歪みを測定するために圧縮力を受けたときに回転可能な唯一の表面である。円周方向剪断歪みは、以下の(式1)に示されるように、スラストボールベアリングによる垂直軸周りの角度の変化とサンプルの半径とを乗じ、サンプルの高さで除算することによって測定することができ、式中のRはサンプルの半径であり、Hはサンプルの高さであり、Δθはスラストボールベアリングによる角度の変化である。
【0093】
【0094】
例えば、4時間PA-PS複合材料サンプルは、半径0.0053mおよび高さ0.011mで、0.19mm/mmの圧縮歪みによって15度回転させた。円周方向剪断歪みは、上記の(式1)によって決定される0.13に等しい。このようにして、圧縮試験は圧縮中の円周方向剪断歪みを測定し、(式1)を用いることによって導出される理想的なピッチおよび/または直径を計算する方法を提供することができる。
【0095】
本開示は、靴底などの履物製品または履物製品の特定の構成要素に関する。
図23は、アッパー2302およびソール構造体2304を含む履物製品2300の例示的な実施形態を示す。ソール構造体は、ミッドソール2306およびアウトソール2308を画定する。ソール構造体2304は、ソール構造体2304の高いクッション性および調整可能な変形を提供する異方性発泡体2310を含む。アッパー2302はソール構造体2304に取り付けられ、ソール2304と共に、ユーザの足が挿入され得る内部空洞2312を画定する。参考までに、靴の各々は、前足領域2314、中足領域2316、および踵領域2318を画定する。
【0096】
いくつかの実施形態では、調整可能な発泡体2310を含むミッドソール2306が多成分ソールの利点を提供することができる。一般的に、従来技術の多成分ソールは、一緒に組み立てられる、プレートなどの別個の構成要素を含む。いくつかの例では、プレートがミッドソールの上側セグメントと下側セグメントとの間に挟まれる。しかしながら、本発明は、多成分ミッドソールによって与えられる所望の機能性を達成するが、多成分の製造および組み立てを必要としない異方性発泡体2310を含むように、ソール構造体2304を提供する。言い換えると、多成分ミッドソールの追加の構成または要素を追加することなく、本開示の予備配向異方性発泡体2310を含むミッドソール2306は多成分ミッドソールの性能および機能性を提供し、さらにはそれを超えるために、本明細書に記載の方法、材料、および技術を使用して形成、すなわち調整され得る。
【0097】
別の実施形態では、異方性発泡体2310がソール構造体2304にわたって1つまたは複数の調整可能な特性が変化してもよい。例えば、踵領域2318は、反発特性(rebounding property)及び衝撃吸収特性(shock absorbing property)を有する予備配向異方性発泡体2310を含むことができ、一方、中足領域2316は、より大きな可撓性、より低い剛性、及び/又はエネルギー戻り特性(energy return feature)を有する予備配向異方性発泡体2310を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソール構造体2304が踵領域2318、中足領域2316、および前足領域2314、またはそれらの組合せに沿った特定の位置に配置された区分の形態の多数の異方性発泡体2310から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ミッドソール2306が前足領域2314、踵領域2318、中足領域2316、またはそれらの組み合わせにおける予備配向異方性発泡体2310を含む、単一の一体型構成要素である。したがって、予備配向異方性発泡体2310は、剛性または可撓性の変化など、選択的または調整可能な特性および機能の変化をミッドソール2306に提供する。予備配向された異方性発泡体2310は、本明細書に記載される撚り合わせ技術または編込み技術を使用して予備配向され得る。
【0098】
本明細書に記載されるように、ポリマー糸構造体を含む多重セル発泡体ブランクは、他の利点の中でもとりわけ、製造の容易さ、最小限の無駄、および多用途の設計などの有益な特性を示し得る。さらに、予備的に配向された異方性ミッドソールは、靴が廃棄された後の材料に対する良好な廃棄物管理およびリサイクルを可能にし得る。単層ミッドソールのようなミッドソール2306を含むソール構造体2304は、熱可塑性プラスチックを溶融させて薄片及び小片にすることを可能にする物質の分離を容易にする。従来のシューズ製造技術は、シューズを製造するために様々な機械及び化学薬品を使用する。平均的に、シューズは、大気中の二酸化炭素を含む温室効果ガスの生成および/または保持の一因となる、様々な異なる材料から製造された多数の部品を含む。さらに、従来の製造技術によって形成され、複数の構成要素から製造されたシューズは、使用される材料の違いのために、特にそれらの材料が一緒に接着される場合、リサイクルすることが困難である。その結果、スニーカーの約80%がゴミ廃棄場に行き、靴は長期間にわたって分解し、毒素、化学物質、および化石燃料を周囲環境に放出する。本発明では、ソール構造体は、ソール構造体内の多数の構成要素の使用を排除または低減するために、ポリマー糸からの異方性発泡体から製造される。したがって、靴を再利用するために、埋め込まれたまたは取り付けられた構成要素を除去するために、ソール構造体を分解する必要はない。さらに、構成要素の数の減少は、構成要素を単一の組み立て場所に送達することに関連する輸送および輸送によって引き起こされる汚染の減少につながり、また、靴およびその構成要素を製造するために1つまたは複数の工場で使用される機械の数を減少させ得る。加えて、発泡工程および異方性発泡体はシューズの耐用年数を延ばすために、高い安定性、耐久性、および穿刺耐性を提供することができる。さらに、複数の構成要素を組み立てることは、典型的には接着剤またはセメントの使用を伴い、これは組み立て中またはリサイクル中などの様々な使用段階で環境に毒素を放出し得る。本発明は、多数の構成要素ではない、またはより少ない構成要素を有する単独の構造体を提供し、これは、接着剤および/またはセメントを使用する必要性を低減または排除し、それによって、その環境影響を低減することができる。
【0099】
本明細書に記載される実施形態のいずれも、様々な実施形態に関連して開示される構造体または方法のいずれかを含むように修正することができる。同様に、いくつかの実施形態では、既知のアプローチに従って、上記で開示されたもの以外の材料または構築技術を置換または追加することができる。さらに、本開示は、具体的に示されるタイプの履物製品に限定されない。さらに、本明細書に開示される実施形態のいずれかの履物製品の態様は、任意のタイプの履物、アパレル、または他の運動用機器で機能するように修正されてもよい。
【0100】
前述のように、本開示は特定の実施形態および実施例に関連して上述されているが、本開示は必ずしもそのように限定されず、多数の他の実施形態、実施例、使用、修正、および実施形態からの逸脱が本明細書に添付される特許請求の範囲によって包含されることが意図されることが、当業者によって理解されるのであろう。