(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20250117BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20250117BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/78
C08J11/24 CFD
(21)【出願番号】P 2023197229
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-11-21
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202311265804.X
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】506253012
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】薛博帆
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05266601(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート(poly butylene terephthalate,PBT)組成物であって、回収ポリエステルをアルコール分解して得るものであり、前記回収ポリエステルは、次の式(i)によって示される構造:
【化1】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基であり、Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、Yは-OCO-又は-O-であり、nは30~500の間の整数であり、
そのうち、前記組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、前記結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものであ
り、
前記方法は、
アルミニウム製パンに10±0.2mgのPBT組成物を取って示差走査熱量計(DSC)中に入れ、時間(単位は分)に対する熱流(heat flow、単位はW/g)によって上に凸のピークと下に凸のピークを含む結晶熱流の変化曲線グラフを作製し、具体的な温度及び時間のコントロールは以下の工程2~5の説明の通りにする、工程1と、
前記PBT組成物を昇温速度10℃/minで280℃まで加熱し、3分間温度を維持する、工程2と、
前記PBT組成物を降温速度5℃/minで189℃まで冷却する、工程3と、
前記PBT組成物を189℃の温度条件下で30分間温度を維持して、結晶熱流変化率を計算する、工程4と、
前記PBT組成物を降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、分析を完了する、工程5と、を含み、
前記結晶熱流の変化曲線グラフのピークは前記PBT組成物の結晶化過程を表しており、発熱時の傾きは下記式により算出される結晶熱流変化率を表しており、
【数1】
式中、ΔQは[上記上に凸のピークにおける結晶熱流の値]-[上記下に凸のピークにおける結晶熱流の値]を表し、Δtは[上記上に凸のピークにおける時間の値]-[上記下に凸のピークにおける時間の値]を表す、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項2】
前記組成物の結晶熱流変化率は200~2300mW/g-minである、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項3】
前記回収ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項4】
結晶化温度(crystallization temperature,Tc)は183℃よりも高い、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項5】
前記組成物中には0.1mol%未満のエチレングリコール(EG)の残基が含まれる、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項6】
前記組成物中には0.1mol%未満のジエチレングリコール(DEG)の残基が含まれる、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項7】
前記組成物の固有粘度(intrinsic viscosity,IV)は0.5~1.5dL/gである、請求項1に記載のPBT組成物。
【請求項8】
回収ポリエステルからPBT組成物を形成する方法であって、以下の工程:
(1)前記回収ポリエステルを準備し、前記回収ポリエステルは、次の式(i)によって示される構造:
【化2】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基であり、Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、Yは-OCO-又は-O-であり、nは30~500の間の整数である工程と、
(2)アルコール類を添加し、前記回収ポリエステルをアルコール分解してオリゴマー又はモノマーにする工程と、
(3)負圧下において、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)を
2~4回に分けて添加し、前記オリゴマーとのエステル交換反応を行い、ビス(2-ヒドロキシブチル)テレフタレートプレポリマー(bis(2-hydroxylbutyl)terephalate、BHBT)を得る工程と、
(4)1.5mbar未満の圧力下において、前記BHBTを重合させて、前記PBT組成物を得るが、前記PBT組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、前記結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものである工程と、を含
み、
前記方法は、
アルミニウム製パンに10±0.2mgのPBT組成物を取って示差走査熱量計(DSC)中に入れ、時間(単位は分)に対する熱流(heat flow、単位はW/g)によって上に凸のピークと下に凸のピークを含む結晶熱流の変化曲線グラフを作製し、具体的な温度及び時間のコントロールは以下の工程2~5の説明の通りにする、工程1と、
前記PBT組成物を昇温速度10℃/minで280℃まで加熱し、3分間温度を維持する、工程2と、
前記PBT組成物を降温速度5℃/minで189℃まで冷却する、工程3と、
前記PBT組成物を189℃の温度条件下で30分間温度を維持して、結晶熱流変化率を計算する、工程4と、
前記PBT組成物を降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、分析を完了する、工程5と、を含み、
前記結晶熱流の変化曲線グラフのピークは前記PBT組成物の結晶化過程を表しており、発熱時の傾きは下記式により算出される結晶熱流変化率を表しており、
【数2】
式中、ΔQは[上記上に凸のピークにおける結晶熱流の値]-[上記下に凸のピークにおける結晶熱流の値]を表し、Δtは[上記上に凸のピークにおける時間の値]-[上記下に凸のピークにおける時間の値]を表す、回収ポリエステルからPBT組成物を形成する方法。
【請求項9】
前記回収ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリブチレンテレフタレート組成物に関し、特に環境配慮型のポリブチレンテレフタレート組成物及びその調製方法に関するが、本願はこれに限定されない。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(polyester)は主鎖にエステル官能基を有する重合体の総称であり、質量が軽く、耐衝撃性があり断裂しにくく、透明度が高いといった特性を持ち、様々な日用品の包装に使用することができる。しかし、ポリエステルは単回使用や使い捨て式の包装材料として使用される割合が高く、難分解性であるため、深刻な環境汚染を招くという問題がある。そのため、回収されたポリエステル製品の再利用が重要な課題となっている。
【0003】
現在使用されているポリエステルの回収法は、物理的回収法と化学的回収法に分けられる。化学的回収法は、ポリエステルを一定の反応条件下で解重合し、ポリエステルの基本モノマー又はオリゴマーを得た後、分離・精製してから新たに重合して、新しい重合体を生産するというものであり、特に広く使用されているポリブチレンテレフタレート(poly butylene terephthalate,PBT)を生産することができる。また、化学的回収法はさらに加水分解法、アルコール分解法及び超臨界流体抽出法に細分化できる。
【0004】
従来技術において、例えば特許文献1は、廃(回収を経た)PET及び/又はPBTを利用してPBTを調製する方法を開示しており、それは、PETポリエステル及び/又はPET-PBTブレンドのポリエステルを溶融して溶融体とし、解重合溶液を加えて、解重合釜内で解重合を行い、BHET及びBHBTモノマーを得るが、ここで、解重合溶液は1,4-ブタンジオール(1,4-butanediol,BDO)又は/及びエチレングリコール(ethylene glycol,EG)を含み、BHET及びBHBTモノマーをメタノールとエステル交換反応させて、テレフタル酸ジメチル(dimethyl terephthalate,DMT)溶液を得た後、DMT溶液を純化精製し、精製DMTを得て、精製DMTをBDOとエステル交換反応させてBHBTを得てから、BHBTを縮合重合してPBT重合体を生成するという工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第114805766号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、回収を経たポリエステルを使用してポリブチレンテレフタレート(以下はPBTと呼ぶ)組成物を再生した場合、調製された製品に不純物含有量が多くなり、耐熱性も好ましくなかった。これについて、本発明者は、PBT組成物の結晶熱流変化率を特定の範囲にコントロールすることで、環境配慮の流れに調和できると同時に、PBT組成物に良好な耐熱性質を持たせ、且つ有する不純物含有量を低くし得ることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明の1つの態様として提供するPBT組成物は、回収ポリエステルをアルコール分解して得るものであり、当該回収ポリエステルは、次の式(i)によって示される構造:
【化1】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基であり、Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、Yは-OCO-又は-O-であり、nは30~500の間の整数であり、そのうち、当該組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものである。
【0008】
1つ以上の実施例において、当該組成物の結晶熱流変化率は200~2300mW/g-minである。
【0009】
1つ以上の実施例において、当該回収ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである。
【0010】
1つ以上の実施例において、当該PBT組成物の結晶化温度(crystallization temperature,Tc)は183℃よりも高い。
【0011】
1つ以上の実施例において、当該組成物中には0.1mol%未満のエチレングリコール(EG)の残基が含まれる。
【0012】
1つ以上の実施例において、当該組成物中には0.1mol%未満のジエチレングリコール(DEG)の残基が含まれる。
【0013】
1つ以上の実施例において、当該組成物の固有粘度(intrinsic viscosity,IV)は0.5~1.5dL/gである。
【0014】
本発明のもう1つの態様として提供する回収ポリエステルからPBT組成物を形成する方法は、以下の工程:(1)当該回収ポリエステルを準備し、当該回収ポリエステルは、次の式(i)によって示される構造:
【化2】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基であり、Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、Yは-OCO-又は-O-であり、nは30~500の間の整数である工程と、(2)アルコール類を添加し、当該回収ポリエステルをアルコール分解してオリゴマー又はモノマーにする工程と、(3)負圧下において、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)を数回に分けて添加し、当該オリゴマーとのエステル交換反応を行い、ビス(2-ヒドロキシブチル)テレフタレートプレポリマー(bis(2-hydroxylbutyl)terephalate,BHBT)を得る工程と、(4)1.5mbar未満の圧力下において、BHBTを重合させて、当該PBT組成物を得るが、当該PBT組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、当該結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものである工程と、を含む。
【0015】
1つ以上の実施例において、工程(3)では、当該負圧下において1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)を2~4回に分けて添加し、当該オリゴマーとのエステル交換反応を行う。
【0016】
1つ以上の実施例において、当該回収ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のPBT組成物は、環境配慮の流れに調和する、消費後に回収されたPCR樹脂(post-consumer recycled resin,PCR)に属し、理想的な耐熱性を有しており、不純物含有量が少ないため、後の加工工程における適用可能性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1つの実施例における不純物分析中の構造信号の分析概念図であって、PET構造を示しており、i信号は残留し且つ重合に関与するEG成分を表している。
【
図2】本発明の1つの実施例における不純物分析中の構造信号の分析概念図であって、ポリ(ジエチレングリコールテレフタレート)(poly (diethylene glycol terephthalate), PDET)構造を示しており、k信号はDEG構造を表している。
【
図3】本発明の1つの実施例における不純物分析中の構造信号の分析概念図であって、PBT構造を示しており、a信号はPBTの構造を表しており、a’信号はPBT構造中の末端アルコール基の構造を表している。
【
図4】本発明の1つの実施例におけるDSC分析結果の概念図であって、結晶熱流変化率を分析した概念図である。
【
図5】本発明の1つの実施例におけるDSC分析結果の概念図であって、結晶温度を分析した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をより詳細且つ不備なく叙述するため、以下に本発明の実施形態及び具体的な実施例について説明した記述を提出するが、それらは本発明を実施又は応用する具体的な実施例の唯一の形態ではない。本明細書及び添付する特許請求の範囲において、別途文脈に記載がない限り、「1つ」及び「当該」という用語は複数であると解釈し得る。
【0020】
本発明を画定する数値の範囲やパラメータはいずれもおおよその数値ではあるが、具体的な実施例における関連数値は可能な限り精確に示している。しかしながら、如何なる数値であれ、個別の試験方法に起因する標準偏差を含むことは本質的に不可避である。ここで、「約」という用語は、本発明が属する分野の当業者によって考慮・判断される場合、実際の数値が平均値の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。
【0021】
本明細書が2つの単語又は符号の間以外で使用するダッシュ記号「-」は、置換基の結合点を表すのに用いられる。例えば、-(C=O)CH3のダッシュ記号は、カルボニル基(C=O)による炭素結合を表している。
【0022】
[PBT組成物]
本発明の1つの態様として提供するPBT組成物は、回収ポリエステルをアルコール分解して得るものであり、当該組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上である。
【0023】
上述の「回収ポリエステル」とは、回収を経て取得するポリエステル組成物をいい、それは次の式(i)によって示される構造:
【化3】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基である。上述のアルキル基は限定しないが例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基又はn-ヘキシル基である。上述のハロゲンは限定しないが例えば、フッ素、塩素又は臭素である。上述のアルコキシ基は限定しないが例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソペンチロキシ基、n-ペンチロキシ基、ネオペンチロキシ基又はn-ヘキシロキシ基である。上述のアルコキシカルボニル基は限定しないが例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチロキシカルボニル基、イソペンチロキシカルボニル基又はネオペンチロキシカルボニル基である。Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、限定しないが例えば、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、エチレン、プロピレン、メチルトリメチレン又はブチレンである。Yは-OCO-又は-O-である。nは30~500の間の整数であり、例えば、50~70の間の整数であるか、又は100~200の間の整数であり、限定しないが具体的には、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500である。
【0024】
本発明の幾つかの好ましい実施例によれば、上述の回収ポリエステルは、回収を経たポリエチレンテレフタレート(poly ethylene terephthalate、以下はPETと呼ぶ)、ポリエチレンテレフタレート(poly trimethylene terephthalate、以下はPTTと呼ぶ)又はポリエチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate,PBT)である。より好適には、回収を経たPET又はPBTである。本発明の幾つかの好ましい実施例によれば、本発明のPBT組成物中、当該回収ポリエステル成分(即ちPCR content)は5~80wt%に達し、例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80wt%であり得るがこれらに限定されず、好適には60wt%である。残りの成分は、限定しないが例えば、調製方法中で添加して当該回収ポリエステルをアルコール分解及びエステル交換するのに必要な他の化合物成分であり、さらに添加剤、改質剤又は補強剤など、幅広い性能を提供するために別途添加され、後の製品の加工・形成において必要となる他の成分でもよい。添加剤には例えば安定剤(紫外線吸収剤など)、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、離型剤、触媒不活性化剤、造核剤、結晶化促進剤などが含まれる。
【0025】
上述の「結晶熱流変化率」は、ISO 11357-3:2018の標準方法に基づき測定したパラメータであり、当該標準方法では、結晶性又は部分的に結晶性のプラスチックの溶融及び結晶化の温度とエンタルピーを決定する方法が規定されている。当該方法は、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry、以下はDSCと呼ぶ)を利用して分析を行うことができる。より具体的には、熱流(heat flow。単位はW/gなどでよい)を縦軸、時間(単位はminなどでよい)を横軸として、昇温方式によりPBT組成物の結晶化エンタルピー(ΔHc)の変化を測定し、結晶熱流の変化曲線グラフをプロットし、結晶化発熱ピーク時の傾斜度を計算することで、上述の結晶熱流変化率を得ることができる。更に詳述すると、上述の熱流は、伝熱速度/物質質量によって得る値であり、伝熱速度とは、単位時間あたりの1つの物体から別の物体への伝熱量をいう。特定の理論に限定されるものではないが、本発明者は、結晶熱流変化率がPBT組成物の調製条件によってコントロール可能なパラメータであることを発見した。
【0026】
本発明者は、上述の結晶熱流変化率を特定の範囲にコントロールした場合に、PBT組成物の耐熱性を改善できることを発見した。具体的には、本発明のPBT組成物は、ISO 11357-3:2018の方法に基づき測定した結晶熱流変化率が200mW/g-min以上であり、限定しないが例えば、200mW/g-min以上、400mW/g-min以上、600mW/g-min以上、800mW/g-min以上、1000mW/g-min以上、1200mW/g-min以上、1400mW/g-min以上、1600mW/g-min以上、1800mW/g-min以上、2000mW/g-min以上、2200mW/g-min以上又は2400mW/g-min以上であり、好適には、当該PBT組成物の結晶熱流変化率は200~2300mW/g-minである。
【0027】
本発明の幾つかの実施例において、本発明のPBT組成物の結晶化温度は183℃より大きく、具体的には例えば、183℃超、184℃超、185℃超、186℃超、187℃超、188℃超、189℃超、190℃超又は191℃超である。特定の理論に限定されるものではないが、PBT組成物の結晶化温度が183℃より大きい場合に、後の加工工程においてさらに良好な耐熱性を発現させることができると確信している。
【0028】
本明細書で使用する「エチレングリコール(ethylene glycol、以下EGと呼ぶ)の残基」及び「ジエチレングリコール(diethylene glycol,DEG)の残基」は、回収ポリエステルをアルコール分解して形成するPBT組成物中でよく見られる不純物である。当該不純物の含有量が多すぎる場合、PBT組成物の加工特性が低下して適用可能性に影響を及ぼす。より優れた加工特性を有するPBT組成物を提供するために、本発明の幾つかの実施例によれば、PBT組成物は0.1mol%未満のEG残基を含有するか又は0.1mol%未満のDEG残基を含有する。具体的には、本発明のPBT組成物が含有するEG残基又はDEG残基は、例えば0.1mol%未満、0.09mol%未満、0.08mol%未満、0.07mol%未満、0.06mol%未満、0.05mol%未満、0.04mol%未満、0.03mol%未満又は0.02mol%未満であり、好適には、PBT組成物が含有するEG残基及びDEG残基はいずれも0.1mol%未満である。
【0029】
本発明の幾つかの実施例によれば、PBT組成物の固有粘度(intrinsic viscosity,IV)は0.5~1.5である。具体的には、例えば下記数値:0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5のうちの任意の2つの数値の間である。低い固有粘度を持ち得る常套の樹脂と比べると、本発明のPBT組成物が有する固有粘度は十分に高いため、後の加工工程における適用可能性を確保することができる。
【0030】
本発明の幾つかの実施例によれば、PBT組成物のカルボキシル末端基(carboxylic end group、以下はCEGと呼ぶ)含有量は、そのPBT組成物の重量に対して50meq/Kg未満である。具体的には例えば、50meq/Kg未満、40meq/Kg未満、30meq/Kg未満、20meq/Kg未満又は10meq/Kg未満である。具体的には、上述のCEG含有量はPBT組成物の重量に対して15~21meq/Kgである。CEG含有量が比較的高い常套のポリエステルと比べると、本発明のPBT組成物はCEG含有量が低く、より高い加水分解耐性を示すうえに、高温高湿環境下で分解しにくく、優れた機械的強度を有するため、当該PBT組成物は後の加工工程における適用可能性を確保することができる。詳述すると、当該PBT組成物はさらに成形品に形成され、当該成形品を使用できるものには、限定しないが、電子製品(例えばノートパソコンの筐体、キーボードやマウスの筐体など)、ボトル容器、包装材料、自動車及びその部品材料、靴底基材などが含まれ、又は当該成形品を製織して形成したポリエステル繊維を衣類やカーテンなどの製造に用いることができる。
【0031】
[PBT組成物の調製方法]
本発明のもう1つの態様として提供する回収ポリエステルからPBT組成物を形成する方法は、(1)当該回収ポリエステルを準備する工程と、(2)アルコール類を添加し、当該回収ポリエステルをアルコール分解してオリゴマー又はモノマーにする工程と、(3)負圧下において、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)を数回に分けて添加し、当該オリゴマーとのエステル交換反応を行い、ビス(2-ヒドロキシブチル)テレフタレートプレポリマー(bis(2-hydroxylbutyl)terephalate、以下はBHBTと呼ぶ)を得る工程と、(4)1.5mbar未満の圧力下において、当該BHBTを重合させて、当該PBT組成物を得るが、当該PBT組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、当該結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものである工程と、を含む。
【0032】
詳述すると、当該回収ポリエステルは、次の式(i)によって示される構造:
【化4】
を含み、ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は同じか又は異なり、且つ各々は水素、1~6の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、1~6の炭素原子を有するアルコキシ基、2~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、スルホニル基、ニトロ基又はフェノキシ基である。上述のアルキル基は限定しないが例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基又はn-ヘキシル基である。上述のハロゲンは限定しないが例えば、フッ素、塩素又は臭素である。上述のアルコキシ基は限定しないが例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソペンチロキシ基、n-ペンチロキシ基、ネオペンチロキシ基又はn-ヘキシロキシ基である。上述のアルコキシカルボニル基は限定しないが例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチロキシカルボニル基、イソペンチロキシカルボニル基又はネオペンチロキシカルボニル基である。Xは1~10の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素基であり、限定しないが例えば、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、エチレン、プロピレン、メチルトリメチレン又はブチレンである。Yは-OCO-又は-O-である。nは30~500の間の整数であり、例えば、50~70の間の整数であるか、又は100~200の間の整数である。
【0033】
本発明の幾つかの好ましい実施例によれば、上述の回収ポリエステルは、回収を経たポリエチレンテレフタレート(poly ethylene terephthalate、以下はPETと呼ぶ)、ポリエチレンテレフタレート(poly trimethylene terephthalate、以下はPTTと呼ぶ)又はポリエチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate,PBT)である。より好適には、回収を経たPET又はPBTである。
【0034】
本明細書に記載の「アルコール類」とは、回収ポリエステルをオリゴマー又はモノマーにアルコール分解し得るアルコールをいい、ポリエステル鎖の分解に用いる解重合剤とされ、普通は、限定しないが例えば、メタノール、エチレングリコール、1,4-BDOなどの低分子量のアルコール類であるが、好適な実施形態は1,4-BDO又はメタノールである。
【0035】
本明細書に記載の「オリゴマー」とは、比較的少数の繰り返し単位で構成された重合体をいう。本発明の方法の工程(2)では、当該回収ポリエステルをアルコール類と反応させて、当該回収ポリエステルをオリゴマー又はモノマーにアルコール分解することで、後のエステル交換反応を行いやすくしている。本明細書は前述のアルコール分解反応の条件について限定しない。
【0036】
工程(3)では、負圧の圧力条件下において、1,4-BDOを当該オリゴマー中に数回に分けて添加してエステル交換反応を行い、BHBTを得る。詳述すると、上述の1,4-BDOを分けて添加する回数(即ちエステル交換反応を行う回数)は少なくとも2回である。特定の理論に限定されるものではないが、1,4-BDOを数回に分けて添加することは、結晶熱流変化率を所望の範囲内にコントロールする変数の1つであり、上述の1,4-BDOを分けて添加する回数は、好適には2~4回、より好適には2回である。上述の「負圧」の圧力条件とは、大気圧(即ち1013mbar)より低い圧力条件といい、例えば1013mbar未満、800mbar未満、600mbar未満、400mbar未満又は200mbar未満である。特定の理論に限定されるものではないが、負圧の圧力条件は、結晶熱流変化率を所望の範囲内にコントロールする変数の1つであり、当該負圧は好適には145mbar又は100mbarである。上述の「プレポリマー」とは、モノマー又はオリゴマーを予備重合して成る物質をいい、モノマー又はオリゴマーを1回で完全に重合させて重合体にすることが難しい場合、先にプレポリマーを形成すると、後の重合反応を行いやすくすることができる。上述のエステル交換及び重合反応では、触媒を添加することができ、例えば、エステル交換反応触媒として酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛のうち少なくとも1つの触媒や、三酸化アンチモン、オルトチタン酸テトラブチル、水酸化n-ブチルスズ又はトリ(2-エチルヘキサン酸)モノブチルスズなどの重合反応に使用できる触媒などである。
【0037】
特定の理論に限定されるものではないが、工程(4)中のBHBTを重合させる圧力条件は、結晶熱流変化率を所望の範囲内にコントロールする変数の1つであり、好適には、上述の圧力条件は高真空の圧力条件であり、例えば、0.5、1、1.5又は2mbarであり、より好適には1.5mbar未満である。
【実施例】
【0038】
以下では、具体的な実施例と合わせて本発明についてより詳しく説明する。但し、それらの具体的な実施例は本発明をより容易に理解できるよう助けるためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0039】
1.PBT組成物の製造方法
本発明の実施例1~8及び比較例1~4のPBT組成物の製造方法を提供する。
【0040】
以下は、本実施例及び比較例のPBT組成物を製造する主な工程であり、下記表1は、本実施例及び比較例の1つ以上の工程パラメータ上の差異を詳しく示している。
【0041】
まず、回収したPETと特定の当量数(具体的には表1の実施例1~7及び比較例1~4に示す通り)の1,4-BDOとのアルコール分解反応を1回行うか、又は特定の当量数(具体的には表1の実施例8に示す通り)のメタノール(Methanol,MeOH)とのアルコール分解反応を1回行って、オリゴマー又はモノマーを得る。次に、特定の圧力条件(具体的な圧力条件は表1に示す通り)において、特定の当量数(具体的には表1に示す通り)の1,4-BDOを数回に分けて(具体的な回数は表1に示す通り)当該オリゴマー中に添加し、エステル交換反応(具体的な反応時間は表1に示す通り)を行ってBHBTを得る。最後に、1.5mbar未満の圧力条件(即ち高真空状態)において当該BHBTを重合させて、当該PBT組成物を形成する。なお、比較例4は、US5,266,601の実施例4(invention 4)と同じ条件で行ったものである。
【0042】
【0043】
2.分析方法
ここでは、本発明の上述の実施例1~8及び比較例1~4のPBT組成物の分析及び測定方法を提供する。
【0044】
[固有粘度の分析]
本発明の固有粘度の分析は、ASTM D4603の標準方法に従って測定したものである。
【0045】
[CEG含有量の分析]
本発明のCEG含有量は、滴定により測定したものである。エタノール性水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム濃度は0.05M)を用いて、o-クレゾールに溶解したPBT組成物溶液の滴定を行った。そのうち、当該溶液中には0.01Mの濃度の塩化カリウム(KCl)が含まれている。
【0046】
[不純物の分析]
1.試料の調製:PBT組成物を10mg/mLの濃度で重水素化クロロホルム/トリフルオロ酢酸-d(v/v=3/1)の混合溶液に溶解した。
2.分析機器:
1H-NMR(400MHz)により分析を行った。
3.分析方法:
図1を参照されたい。図中のiは、PET構造信号中の残留し且つ重合に関与するEG残基の構造信号を表しており、その化学シフト(chemical shift)は4.82~4.78ppmの間を取り、水素数は4である。
図2を参照されたい。図中のkは、PET構造信号中の残留し且つ重合に関与するDEG残基の構造信号を表しており、その化学シフトは4.16~4.06ppmの間を取り、水素数は4である。
図3を参照されたい。図中のaは、PBTの構造信号を表しており、その化学シフトは2.16~1.96ppmの間を取り、水素数は4である。a’は、PBT構造中の末端アルコール基の構造信号を表しており、その化学シフトは3.93~3.83ppmの間を取り、水素数は2である。以上は生成物中の全ジオール構造の構造信号であり、次に下記公式によりEG及びDEG残基の全ジオール構造中における割合を計算した。
【数1】
【数2】
ここで、I
i、I
k、I
a’、I
aはそれぞれ対応する符号の信号値を表している。
【0047】
[DSCの分析]
1.標準方法:ISO 11357-3:2018の標準方法に従って結晶熱流変化率と結晶化温度を測定した。
2.分析機器:示差走査熱量計(differential scanning calorimetry、以下はDSCと呼ぶ)
3.分析工程:
a.結晶熱流変化率
工程1、アルミニウム製パンに10±0.2mgの試料(PBT組成物)を取ってDSC中に入れ、時間に対する熱流(heat flow、単位はW/g)によって結晶熱流の変化曲線グラフをプロットした。具体的な温度及び時間のコントロールは工程2~5の説明の通りである。工程2、昇温速度10℃/minで280℃まで加熱し、3分間温度を維持した。工程3、降温速度5℃/minで189℃まで温度を下げた。工程4、189℃の温度条件下で30分間温度を維持して、結晶熱流変化率を計算した。工程5、降温速度10℃/minで0℃まで温度を下げて分析を完了した。そのうち、工程4中の結晶熱流変化率を計算する具体的な方法については、
図4を参照されたい。そのピークは、試料の結晶化過程を表しており、そのうちの発熱時の傾き(結晶熱流/時間)が即ち結晶熱流変化率であり、下記式によって算出できる。
【数3】
b.結晶温度
工程1、アルミニウム製パンに10±0.2mgの試料(PBT組成物)を取ってDSC中に入れ、温度(℃)に対する熱流(heat flow、単位はW/g)によってプロットした。具体的な温度及び時間のコントロールは工程2~4の説明の通りである。工程2、昇温速度10℃/minで280℃まで加熱した。工程3、280℃で2分間温度を維持した。工程4、降温速度10℃/minで0℃まで温度を下げて分析を完了した。前述の工程でプロットしたグラフ(
図5の例)によれば、降温過程で出現した発熱ピークのピーク温度が即ち結晶化温度である(例えば
図5中の186.11℃)。
【0048】
3.評価方法及び結果
[プラスチック加熱変形試験(heat deflection testing,HDT)の評価]
1.標準方法:ISO 75-1及びISO 75-2の標準方法に従って分析を行った。
2.分析機器:TOYOSEIKI No.533 HDT Tester
3.分析条件:曲げ応力0.45MPa及び1.8MPaのそれぞれの条件下で試料のHDT温度を測定して記録した。一般的に加熱変形温度(以下はHDT温度と呼び)は材料(試料)の置かれる環境圧力又は負荷と関係があるため、ASTM D648又はISO 75-1及びISO 75-2の標準方法に従って材料のHDTを分析する場合には、より良く材料の耐熱性をより良く表すために、曲げ応力が0.45MPa(圧力負荷なしを模する)と1.8MPa(一定の圧力負荷を模する)の条件下における材料のHDT温度を測定する。また一般的に、曲げ応力が0.45MPaの条件下で測定したHDT温度は、曲げ応力が1.8MPaの条件下で測定したHDT温度よりも高くなる。また、同一条件下で測定したHDT温度が高ければ高いほど、材料が当該条件下においてより良好な耐熱性を有することを表す。
4.分析工程:
工程1、試料粒子を140℃の条件下で3時間乾燥した。当該試料粒子は30wt.%のガラス繊維を含有するPBT組成物であり、これによりPBT組成物の後の使用条件を模した。工程2、試料粒子を乾燥した後、ISO標準試験片(80mm*10mm*4mm)を成形した。工程3、試料試験片を23±2℃且つ50±5%RH(相対湿度)の環境中に少なくとも40時間放置した。工程4、試料試験片を190℃の条件で2時間アニーリングし、静置して室温になるまで冷却した。工程5、パラメータ(最高温度、圧力負荷)を設定済みの分析機器内にアニーリング後の試料試験片を入れた。工程6、試料試験片が変形量に達した時点で分析機器が自動停止して降温した。また、1つの試料で少なくとも2つのデータを取得して平均するものとした。
【0049】
さらに、本願の実施例1~8及び比較例1~4のPBT組成物の固有粘度、CEG含有量、EG残基、DEG残基、結晶化温度、PCRレベル、結晶熱流変化率及びプラスチック加熱変形試験(HDT)評価の結果を表2にまとめた。
【0050】
【0051】
表2によれば、実施例1~8のPBT組成物の結晶熱流変化率はいずれも200mW/g-min以上であることが分かり、それらのPBT組成物の1.8MPaと0.45MPaの2種類の条件下におけるHDT温度は、いずれも結晶熱流変化率が所望の範囲内にない比較例1~4より高いことが観察された。このことから、PBT組成物の結晶熱流変化率を200mW/g-min以上にコントロールした場合にのみ、当該PBT組成物の耐熱性を改善し得ることが分かる。また、表2のデータから、本発明の実施例のPBT組成物は、環境配慮の流れに調和すると同時に、不純物含有量が低く、且つ良好な加工適用性(限定しないが例えば、理想的な固有粘度及びCEG含有量の数値を有する)を有することも分かる。
【0052】
上述をまとめると、本発明のPBT組成物は、環境配慮の流れに調和する、消費後に回収されたPCR樹脂(post-consumer recycled resin,PCR)に属し、理想的な耐熱性を有しており、不純物含有量が少ないため、後の加工工程における適用可能性に優れている。
【0053】
本明細書において提供する全ての範囲は、割り当て範囲内における各特定の範囲及び割り当て範囲の間の二次範囲の組み合わせを含むという意味である。また、別段の説明がない限り、本明細書が提供する全ての範囲は、いずれも範囲のエンドポイントを含む。従って、範囲1~5は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの二次範囲を含む。
【0054】
本明細書において参照される全ての刊行物及び特許出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、且つありとあらゆる目的から、各刊行物又は特許出願はいずれも各々参照により本明細書に組み込まれることを明確且つ個々に示している。本明細書と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる刊行物又は特許出願との間に不一致が存在する場合には、本明細書に準ずる。
【要約】
【課題】本発明はポリブチレンテレフタレート組成物及びその調製方法を得ることにある。
【解決手段】本発明はポリブチレンテレフタレート組成物及びその調製方法に関し、当該ポリブチレンテレフタレート組成物の結晶熱流変化率は200mW/g-min以上であり、結晶熱流変化率が200mW/g-min以上であり、当該結晶熱流変化率はISO 11357-3:2018に基づく方法で測定したものである。本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は良好な耐熱性を有し、不純物含有量が少ないため、後の加工工程における適用可能性に優れている。
【選択図】
図4