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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20250117BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20250117BHJP
   C08L 23/02 20250101ALI20250117BHJP
   C08L 23/08 20250101ALI20250117BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08L53/02
C08F4/6592
C08L23/02
C08L23/08
C09K3/10 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023503768
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007687
(87)【国際公開番号】W WO2022186053
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2021035465
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 照文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌太
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160886(JP,A)
【文献】特開2016-017162(JP,A)
【文献】特開2019-156873(JP,A)
【文献】特開昭62-000512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147215(WO,A1)
【文献】特開2006-176760(JP,A)
【文献】特開2000-273249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)および共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物(A)100質量部と、
以下要件(b-1)~(b-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)1~400質量部と、
以下要件(c-1)を満たすポリオレフィン系樹脂(C)10~200質量部と
を含む、熱可塑性エラストマー組成物(但し、100℃動粘度が300~5000mm 2 /sであり、40℃動粘度が4000~100000mm 2 /sであり、エチレン構造単位含有率が30~80モル%であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物、および、ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが5g/10分の熱可塑性エラストマー組成物を除く。)
(b-1)100℃動粘度が5~5,000mm2/sであり、40℃動粘度が50~100,000mm2/sである。
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000である。
(b-3)エチレン構造単位含有率が15~85mol%である。
(c-1)MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minである。
【請求項2】
前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体の水素添加物であり、
該ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対する前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有比率が30~300質量部であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有比率が10~150質量部である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記要件(b-1)において、100℃動粘度が30~300mm2/sであり、40℃動粘度が300~4,000mm2/sであり、かつ
前記要件(b-2)において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が2,000~7,000であり、かつ
前記要件(b-3)において、エチレン構造単位含有率が40~60mol%である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記重合体ブロック(X)がスチレンを主体とする重合体ブロックであり、前記重合体ブロック(Y)がブタジエンおよびイソプレンを主体とする共重合体ブロックであり、前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、前記ブロック共重合体の水素添加物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むシール材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む自動車内装材。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む制振材。
【請求項8】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)および共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物(A)100質量部と、
下記方法(α)により製造され、かつ下記要件(b-1)~(b-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)1~400質量部と、
下記要件(c-1)を満たすポリオレフィン系樹脂(C)10~200質量部と
を混合する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物(但し、100℃動粘度が300~5000mm 2 /sであり、40℃動粘度が4000~100000mm 2 /sであり、エチレン構造単位含有率が30~80モル%であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物、および、ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが5g/10分の熱可塑性エラストマー組成物を除く。)の製造方法。
(b-1)100℃動粘度が5~5,000mm2/sであり、40℃動粘度が50~100,000mm2/sである。
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000である。
(b-3)エチレン構造単位含有率が15~85mol%である。
(c-1)MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minである。
方法(α):下記式[1]で表される架橋メタロセン化合物(P-1)、ならびに、
有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P-1)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)
を含む触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合する工程を含む方法。
【化1】
[式[1]において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、隣接する複数の基は、互いに連結して環構造を形成していてもよく、
6およびR11は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
7およびR10は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
6およびR7は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
10およびR11は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
6、R7、R10およびR11は、同時に水素原子ではなく;
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり;
13およびR14はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、互いに連結して環構造を形成していてもよく;
Mは、Ti、ZrまたはHfであり;
Qは独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン性配位子または孤立電子対配位可能な中性配位子であり;
jは、1~4の整数である。]
【請求項9】
前記式[1]において、R13およびR14の、いずれか一方または両方がアリール基である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記式[1]において、R13およびR14がともにアリール基であり、かつR2およびR3のいずれか一方が、炭素数4の飽和炭化水素基である、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記重合体ブロック(X)がスチレンを主体とする重合体ブロックであり、前記重合体ブロック(Y)がブタジエンおよびイソプレンを主体とする共重合体ブロックであり、前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、前記ブロック共重合体の水素添加物である、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、圧縮永久ひずみ、永久伸びなどに優れた、特定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物またはこれから得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)など熱可塑性樹脂同様の溶融成形加工性と、架橋ゴムに近い柔軟性・ゴム弾性とを兼ね備えた材料として、自動車、家電、食品、医療、さらには日用品等の様々な用途に使用されている。TPEには、オレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(TPS)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリアミド系エラストマー(TPA、TPAE)、ポリエステル系エラストマー(TPC、TPY)、塩ビ系エラストマー(TPVC)など様々な種類がある。
【0003】
この中でTPSは、スチレン系ブロックコポリマー(SBC)をベース樹脂としたコンパウンドである。SBCは拘束相としてのハードセグメントがポリスチレンからなるブロック共重合体の総称である。ソフトセグメントはブタジエン、イソプレン等の共役ジエンポリマーまたはその水素添加(水添)物である。SBCでは、このソフトセグメントとハードセグメントとが常温でミクロ相分離構造をとっているため、ハードセグメントが物理的架橋点となり、化学的な架橋なしにエラストマーとしての性能(柔軟性、ゴム弾性)が発現する。それと同時に、ポリスチレンブロックからなる物理的架橋点はそのガラス転移点以上の温度にすることで溶融し架橋を解くことができるため、通常の架橋ゴムと異なり熱可塑性を有し、溶融成形が可能である。SBCの内、ポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロックなどソフトセグメントが水添されたSBC(HSBC)は、分子内に二重結合を持たず、非水添SBCよりも優れた耐熱性、耐候性を示すため、TPS原料として広く使用されている。
【0004】
TPSにはSBCの他に、目的に応じて鉱物油といった軟化剤、ポリプロピレンといった熱可塑性樹脂、石油樹脂といった粘着付与剤などが配合されている。中でも軟化剤は、TPSの柔軟性・ゴム弾性および溶融時の流動性(成形性)を向上させるために重要な配合剤であり、パラフィン系鉱物油などが一般的に用いられている。
【0005】
特許文献1には、水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、水添スチレン-(ブタジエン-イソプレン)-スチレンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体に、鉱物油とポリプロピレンを配合した組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-106565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、パラフィン系鉱物油をTPSの軟化剤に用いた場合、圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性が十分でないという課題があった。特に、TPSの流動性(成形性)を重視し、重量平均分子量が10万程度のSBCを用いた場合、この課題が顕著であった。
本発明の課題は、上記事情に鑑みてされたものであり、流動性および柔軟性、圧縮永久ひずみ・永久伸びなどの耐へたり性に優れた熱可塑性エラストマー組成物および該組成物からなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の解決に向け、鋭意検討した結果、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いることにより、流動性、柔軟性、および圧縮永久ひずみ・永久伸びなどの耐へたり性のバランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の一態様例は以下の[1]~[11]にかかる。
[1] ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)および共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物(A)100質量部と、
以下要件(b-1)~(b-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)1~400質量部と、
以下要件(c-1)を満たすポリオレフィン系樹脂(C)0~200質量部と
を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
(b-1)100℃動粘度が5~5,000mm2/sであり、40℃動粘度が50~100,000mm2/sである。
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000である。
(b-3)エチレン構造単位含有率が15~85mol%である。
(c-1)MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minである。
[2] 前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体の水素添加物であり、
該ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対する前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有比率が30~300質量部であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有比率が10~150質量部である、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記要件(b-1)において、100℃動粘度が30~300mm2/sであり、40℃動粘度が300~4,000mm2/sであり、かつ
前記要件(b-2)において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が2,000~7,000であり、かつ
前記要件(b-3)において、エチレン構造単位含有率が40~60mol%である、[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記重合体ブロック(X)がスチレンを主体とする重合体ブロックであり、前記重合体ブロック(Y)がブタジエンおよびイソプレンを主体とする共重合体ブロックであり、前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、前記ブロック共重合体の水素添加物である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むシール材。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む自動車内装材。
[7] [1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む制振材。
[8] ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)および共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物(A)100質量部と、
下記方法(α)により製造され、かつ下記要件(b-1)~(b-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)1~400質量部と、
下記要件(c-1)を満たすポリオレフィン系樹脂(C)0~200質量部と
を混合する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
(b-1)100℃動粘度が5~5,000mm2/sであり、40℃動粘度が50~100,000mm2/sである。
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000である。
(b-3)エチレン構造単位含有率が15~85mol%である。
(c-1)MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minである。
方法(α):下記式[1]で表される架橋メタロセン化合物(P-1)、ならびに、
有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P-1)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)
を含む触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合する工程を含む方法。
【化1】
[式[1]において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、隣接する複数の基は、互いに連結して環構造を形成していてもよく、
6およびR11は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
7およびR10は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
6およびR7は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
10およびR11は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
6、R7、R10およびR11は、同時に水素原子ではなく;
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり;
13およびR14はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、互いに連結して環構造を形成していてもよく;
Mは、Ti、ZrまたはHfであり;
Qは独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン性配位子または孤立電子対に配位可能な中性配位子であり;
jは、1~4の整数である。]
[9] 前記式[1]において、R13およびR14の、いずれか一方または両方がアリール基である、[8]に記載の製造方法。
[10] 前記式[1]において、R13およびR14がともにアリール基であり、かつR2およびR3のいずれか一方が、炭素数4の飽和炭化水素基である、[8]または[9]に記載の製造方法。
[11] 前記重合体ブロック(X)がスチレンを主体とする重合体ブロックであり、前記重合体ブロック(Y)がブタジエンおよびイソプレンを主体とする共重合体ブロックであり、前記ブロック共重合体またはその水素添加物(A)が、前記ブロック共重合体の水素添加物である、[8]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、流動性、柔軟性、および圧縮永久ひずみ・永久伸びなどの耐へたり性のバランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、例えば「M~N」と表記した場合、特に断りがなければ「M以上、N以下」を意味する。
【0012】
本明細書において、ある重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「Mから導かれる構成単位」なる表現が用いられることがあるが、これは「Mに対応する構成単位」、すなわち、Mの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位をいう。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」なる語は、アクリル、メタクリル、およびアクリルとメタクリルの両方を包括する概念として用いられる。
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、以下に示すブロック共重合体またはその水素添加物(A)と、以下に示すエチレン・α-オレフィン共重合体(B)と、以下に示すポリオレフィン系樹脂(C)を含有する。
【0014】
[ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物(A)]
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物の(A)成分は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物である。このブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)を有するものであって、以下「X/Yブロック共重合体」ともいう。
【0015】
重合体ブロック(X)を構成するビニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-プロピルスチレン、4-iso-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができ、これらのビニル芳香族化合物の1種類または2種以上を使用することができる。そのうちでもスチレンが最も好ましい。
【0016】
重合体ブロック(Y)を構成する共役ジエン化合物としては、炭素数4~20の共役ジエンが好ましく、具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらの共役ジエン化合物の1種類または2種以上を使用することができる。そのうちでもブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0017】
また、重合体ブロック(X)と重合体ブロック(Y)を含むX/Yブロック共重合体は、GPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が30,000~500,000であることが好ましく、50,000~400,000であることがより好ましく、80,000~300,000であることがさらに好ましく、80,000~200,000であることが特に好ましい。X/Yブロック共重合体の重量平均分子量が30,000以上であると熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形品の圧縮永久ひずみ、永久伸びなどの耐へたり性が向上し、一方、500,000以下であると成形性や加工性が良好である。
【0018】
X/Yブロック共重合体における重合体ブロック(X)と重合体ブロック(Y)の割合は、X/Yブロック共重合体の数平均分子量、重合体ブロック(X)および重合体ブロック(Y)の数平均分子量などに依存するが、一般にX/Yブロック共重合体の質量に基づいて、重合体ブロック(X)の割合が5~80質量%で重合体ブロック(Y)の割合が20~95質量%であるのが好ましく、重合体ブロック(X)が10~75質量%で重合体ブロック(Y)が25~90質量%であるのがより好ましく、重合体ブロック(X)が20~40質量%で重合体ブロック(Y)が60~80質量%であるのがさらに好ましい。X/Yブロック共重合体中において、重合体ブロック(X)の割合が5質量%以上であると(すなわち重合体ブロック(Y)の割合が95質量%以下であると)、X/Yブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物およびそれより得られる成形品の圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性が良好であり、一方、重合体ブロック(X)の割合が80質量%以下であると(すなわち重合体ブロック(Y)の割合が20質量%以上であると)、溶融粘度が高くなりすぎず成形性や加工性が良好である。
【0019】
X/Yブロック共重合体は、直鎖状または2つ以上に枝分かれした分枝状のいずれであってもよく、また分子中に少なくとも1個の重合体ブロック(X)と少なくとも1個の重合体ブロック(Y)を有していればよく、その構造は特に制限されない。機械特性、耐熱性、加工性のバランスからX-Y-X型のトリブロック構造が特に好ましい。
【0020】
具体的には、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレンブロック共重合体などを挙げることができる。なお、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体とは、ポリスチレンブロック-ポリブタジエンブロック-ポリスチレンブロックの形態のブロック共重合体を意味する。
【0021】
X/Yブロック共重合体の製法は特に限定されないが、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合、ラジカル重合、配位重合など公知の方法を用いて、不活性溶媒中でスチレンなどのビニル芳香族化合物と、イソプレン、ブタジエンなどの共役ジエン化合物とを順次重合することにより製造することができる。
【0022】
アニオン重合にて製造する場合、例えば、脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を重合開始剤として用いて、n-ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物とを順次重合させる方法等が挙げられる。
【0023】
脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物のうち、脂肪族炭化水素リチウム化合物または芳香族炭化水素リチウム化合物が重合開始剤として好ましい。具体的には、メチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンとの反応生成物等が挙げられ、特にn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0024】
また、共役ジエン化合物のビニル結合率(1,2または1,3結合の割合)や共重合体の分子量分布などを調整することを目的として、エーテル化合物、第3級アミン化合物等を添加してもよい。エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられ、第3級アミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルフォリンなどが挙げられる。
【0025】
カチオン重合にて製造する場合、例えば、ルイス酸とルイス酸によってカチオン重合活性種を生成する有機化合物とを重合開始剤に用いて、n-ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物とを順次重合させる方法等が挙げられる。
【0026】
ルイス酸としては、四塩化チタン、四塩化スズ、三塩化ホウ素、塩化アルミニウムなどが、また該有機化合物としては、アルコキシ基、アシロキシ基またはハロゲンなどの官能基を有する有機化合物、例えば、ビス(2-メトキシ-2-プロピル)ベンゼン、ビス(2-アセトキシ-2-プロピル)ベンゼン、ビス(2-クロロ-2-プロピル)ベンゼンなどが挙げられる。さらに上記のルイス酸および有機化合物と共に、必要に応じて、例えば、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸エチルなどのエステル類を第3成分として使用してもよい。
【0027】
重合時に使用する不活性有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど飽和炭化水素系溶媒、塩化メチル、塩化メチレンなど塩素系溶媒等が挙げられ、これらから1種または2種以上を使用することができる。
【0028】
本発明の一態様に用いる(A)成分として、特に好ましい様態であるX-Y-X型のトリブロック共重合体は、例えば、(1)前記アニオン重合またはカチオン重合、ラジカル重合の重合開始剤として機能する化合物を用い、ビニル芳香族化合物を重合させて重合体ブロック(X)を形成した後、共役ジエン化合物を反応系に添加して重合させて重合体ブロック(Y)を形成させ、必要に応じてさらにビニル芳香族化合物を添加して重合を行って重合体ブロック(X)を形成させる方法、(2)前記アニオン重合またはカチオン重合、ラジカル重合の重合開始剤として機能する化合物を用い、重合活性な官能基を2個有する共役ジエン化合物を重合させて重合体ブロック(Y)を形成させた後、反応系にビニル芳香族化合物を添加して重合を行って重合体ブロック(X)を形成させる方法などにより製造することができる。
【0029】
本発明の一態様にかかる(A)成分としては、前記X/Yブロック共重合体の水素添加物を用いることもできる。水素添加物を用いた場合には、水素添加によりX/Yブロック共重合体中の脂肪族二重結合が減少することにより、耐熱性や耐候性が向上し、軟化剤であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との相容性が向上するため、好ましい。
【0030】
本発明の一態様にかかる(A)成分として用いられるX/Yブロック共重合体の水素添加物としては、X/Yブロック共重合体の90~100%の脂肪族二重結合が水素添加され、10%以下の芳香族二重結合が水素化されたものが好適であり、特に99~100%の脂肪族二重結合が水素添加され、5%以下の芳香族二重結合が水素化されたものが好ましい。このようなX/Yブロック共重合体の水素添加物において、脂肪族二重結合が水素添加された重合体ブロック(Y)は、実質的にポリオレフィン構造のブロックとなる。
【0031】
前記X/Yブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン-(エチレン/ブテン)-スチレン共重合体、スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレン共重合体、スチレン-(エチレン/エチレン/プロピレン)-スチレン共重合体などを挙げることができる。特に、前記X/Yブロック共重合体の水素添加物としては、スチレンを主体とする重合体ブロックと、ブタジエンおよびイソプレンを主体とする共重合体ブロックを含有するブロック共重合体の水素添加物であることが好ましい。
【0032】
X/Yブロック共重合体の水素添加には公知の方法を採用することができ、例えば、X/Yブロック共重合体を水素添加触媒および水素存在下、適当な温度・圧力条件にして反応させることで得られる。
【0033】
水素添加触媒としては、例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水素添加触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水素添加触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水素添加触媒が挙げられる。水素添加反応は0~200℃、より好ましくは30~150℃の温度範囲で実施される。水素添加反応に使用される水素の圧力は0.1~15MPa、好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~7MPaが推奨される。また、水素添加反応時間は3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。水素添加反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0034】
本発明の一態様にかかる(A)成分として用いられるX/Yブロック共重合体としては、分子量、スチレン含量等の性状が異なる2種以上のX/Yブロック共重合体を併用してもよい。
【0035】
本発明の一態様にかかる(A)成分として用いられるX/Yブロック共重合体は市販されており、これら市販品を用いることができる。非水素添加品では、例えば、クレイトン社製「Dシリーズ」、JSR社製「TRシリーズ」、旭化成社製「タフプレン」、「アサプレン」などが挙げられる。水素添加品では、例えば、クラレ社製「セプトン」、「ハイブラー」、旭化成社製「タフテック」、JSR社製「ダイナロン」、クレイトン社製「Gシリーズ」などが挙げられる。
【0036】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(B)]
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、下記の要件(b-1)~(b-3)を満たすことを特徴とする。
【0037】
要件(b-1)100℃動粘度が5~5,000mm2/sであり、40℃動粘度が50~100,000mm2/sである。
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の100℃における動粘度は、5~5,000mm2/sであり、好ましくは10~3,000mm2/s、より好ましくは15~1,000mm2/s、さらに好ましくは15~500mm2/sであり、特に好ましくは30~300mm2/sである。
【0038】
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の40℃における動粘度は、50~100,000mm2/sであり、好ましくは100~50,000mm2/s、より好ましくは130~15,000mm2/s、さらに好ましくは130~8,000mm2/sであり、特に好ましくは300~4,000mm2/sである。
【0039】
100℃における動粘度と40℃における動粘度が前記範囲にあると、X/Yブロック共重合体(A)やポリオレフィン系樹脂(C)と混練する時のハンドリング性と、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久ひずみや永久伸びのバランスが極めて良好になる。
【0040】
要件(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲にある。
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMwは1,000~30,000であり、好ましくは1,000~16,000、より好ましくは1,300~10,000、さらに好ましくは1,500~8,000であり、特に好ましくは2,000~7,000である。
【0041】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が前記範囲にあると、X/Yブロック共重合体(A)やポリオレフィン系樹脂(C)と混練する時のハンドリング性と、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久ひずみや永久伸びのバランスが極めて良好になる。
【0042】
要件(b-3)エチレン構造単位含有率が15~85mol%である。
該エチレン構造単位含有率は15~85mol%であり、好ましくは20~80mol%、より好ましくは30~70mol%、さらに好ましくは40~60mol%である。
【0043】
エチレン含量が多すぎる、または少なすぎると結晶性が高くなり、X/Yブロック共重合体(A)およびポリオレフィン系樹脂(C)と混練する時のハンドリング性が悪化する場合や、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性や低温特性が低下する場合がある。またエチレン含量が多すぎる、または少なすぎるとX/Yブロック共重合体(A)との相容性、特にX/Yブロック共重合体(A)のYブロックとの相容性が低下し、熱可塑性エラストマー組成物からエチレン・α-オレフィン共重合体(B)がブリードアウトする場合や、圧縮永久ひずみや永久伸びが悪化する場合がある。
【0044】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、13C-NMR法で測定することができ、例えば、後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0045】
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を構成するα-オレフィンとしては、炭素数3以上のα-オレフィンが挙げられ、典型例として、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
これらのα-オレフィンのうち、効果的に結晶性を低下させ、液状の共重合体を得ることができ、X/Yブロック共重合体(A)との相容性に優れ、前記所望の効果を奏する組成物、成形体を容易に得ることができる等の点から、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。
【0047】
また、極性基含有モノマー、ビニル芳香族化合物、および環状オレフィンから選択される少なくとも1種の他のモノマーを反応系に共存させて重合を進めることもできる。エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの合計100質量部に対して、他のモノマーは、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下の量で用いることができる。
【0048】
極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸などのα,β-不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩等の金属塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類などを例示することができる。
【0049】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、アリルベンゼンなどを例示することができる。
【0050】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの炭素数3~30、好ましくは3~20の環状オレフィン類を例示することができる。
【0051】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物の特徴は、X/Yブロック共重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の化学構造の観点から説明できると考えられる。
【0052】
プロセスオイルなど一般的に使用される鉱物油系軟化剤が、X/Yブロック共重合体(A)のXブロックおよびYブロックの両方を軟化するのに対し、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)はX/Yブロック共重合体(A)のYブロックのみを選択的に軟化することができる。このため、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の方が鉱物油系軟化剤よりも、X/Yブロック共重合体(A)の物理架橋点となっているXブロックをより強固に保持することができ、その結果、圧縮永久歪や永久伸びなど機械物性に優れる効果を発揮しているものと考えられる。
【0053】
本発明の一態様におけるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造方法は特に限定されないが、特公平2-1163号公報、特公平2-7998号公報に記載されているようなバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒による方法が挙げられる。また、高い重合活性で共重合体を製造する方法として特開昭61-221207号公報、特公平7-121969号公報、特許第2796376号公報に記載されているようなジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなる触媒系を用いる方法等を用いてもよく、得られる共重合体の塩素含量、およびα-オレフィンの2,1-挿入が低減できるため、より好ましい。バナジウム系触媒による方法では、メタロセン系触媒を用いる方法に対し、助触媒に塩素化合物をより多く使用するため、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)中に微量の塩素が残存する可能性がある。
【0054】
また、α-オレフィンの2,1-挿入低減は、共重合体分子内のエチレン連鎖をより低減することが可能になり、エチレンの分子内結晶性を抑制できることから、X/Yブロック共重合体(A)と良相容性のエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を得ることができる。α-オレフィンの2,1-挿入量は特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、13C-NMR測定の解析によって求められ、好ましくは1%未満、さらに好ましくは0~0.5%、より好ましくは0~0.1%である。15.0~17.5ppmの範囲にピークが観察されないものが特に好ましい。
【0055】
特に以下のような方法を用いることにより、分子量制御、分子量分布、非晶性などの点において良好な性能バランスを有するエチレン・α-オレフィン共重合体(B)が得られる。
【0056】
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)、ならびに、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3~20のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0057】
【化2】
【0058】
〔架橋メタロセン化合物(P)〕
架橋メタロセン化合物(P)は、上記式[I]で表される。式[I]中のY、M、R1~R14、Q、nおよびjを以下に説明する。
(Y、M、R1~R14、Q、nおよびj)
Yは、第14族原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子が挙げられ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくは炭素原子である。
【0059】
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
1~R12は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0060】
ここで、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の環状飽和炭化水素基、炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基等が例示される。
【0061】
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。
アルキル基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0062】
炭素数3~20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5~11である。
【0063】
炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2~4である。
【0064】
炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3~19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6~10である。
【0065】
炭素数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、メチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0066】
炭素数6~20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4'-ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6~12である。
【0067】
ケイ素含有基としては、炭素数1~20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1~10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6~18が好ましい。
【0068】
窒素含有基としては、アミノ基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N-モルフォリニル基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基など、N-モルフォリニル基およびニトロ基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0069】
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0070】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0071】
Qは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から、同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
ハロゲン原子および炭素数1~20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1~20の炭化水素基である場合は、該炭化水素基の炭素数は1~7であることが好ましい。
【0072】
アニオン配位子としては、メトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
【0073】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
【0074】
jは1~4の整数であり、好ましくは2である。
nは1~4の整数であり、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
13およびR14は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R13およびR14は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0075】
炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の詳細については、上述の通りである。
アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
【0076】
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
【0077】
置換アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には、3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。
【0078】
中でも、R13およびR14のいずれか一方、または両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)が好ましく、R13およびR14の両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)がより好ましく、R13およびR14の両方が独立してアリール基であり、かつR2およびR3のいずれか一方が、炭素数4の飽和炭化水素基である架橋メタロセン化合物(P)がさらに好ましい。
【0079】
このような架橋メタロセン化合物(P)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合に対する重合活性が高く、この架橋メタロセン化合物(P)を用いることで分子末端への水素導入により重合が選択的に停止するため、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の不飽和結合が少なくなる。このため、より簡便な水素添加操作を行うだけで、または水素添加操作を行わなくても、飽和度が高く耐熱性に優れたエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を得ることができ、コストの面でも優れる。また、該化合物(P)から得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、ランダム共重合性が高いため、制御された分子量分布を有する。このため、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、成形性と耐へたり性が高い水準でバランス良く優れると考えられる。
【0080】
上記式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)において、nは1であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(P-1)」ともいう。)は、下記一般式[1]で表わされる。
【0081】
【化3】
式[1]において、Y、M、R1~R14、Qおよびjの定義などは、上述の通りである。
【0082】
架橋メタロセン化合物(P-1)は、上記式[I]におけるnが2~4の整数である化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(P-1)を用いることでエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0083】
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)、上記一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物(P-1)において、Mはジルコニウム原子であることがさらに好ましい。Mがジルコニウム原子である上記架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、Mがチタン原子またはハフニウム原子である場合に比べ重合活性が高く、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0084】
このような架橋メタロセン化合物(P)としては、
[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン{η5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)}(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
等が挙げられる。
【0085】
架橋メタロセン化合物(P)としては、さらに、前記化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子やチタン原子に置き換えた化合物、クロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物などが例示される。なお、例示した架橋メタロセン化合物(P)の構成部分であるη5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは、4,4,7,7-テトラメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基、η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基をそれぞれ表わす。
前記架橋メタロセン化合物(P)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0086】
〔化合物(Q)〕
化合物(Q)は、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である
有機金属化合物(Q-1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)が用いられる。
【0087】
(Q-1a)一般式 Ra mAl(ORbnpq で表される有機アルミニウム化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、一般式(i-C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリドに代表されるアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを例示することができる。また、上記一般式Ra mAl(ORbnpqで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0088】
(Q-1b)一般式 M2AlRa 4 で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
このような化合物として、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することができる。
【0089】
(Q-1c)一般式 Rab3 で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[III]で表わされる化合物および下記一般式[IV]で表わされる化合物を挙げることができる。
【0090】
【化4】
式[III]および[IV]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0091】
特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンであって、nが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0092】
本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている2種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明の一態様で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
【0093】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、下記一般式[V]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
【0094】
【化5】
式[V]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0095】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)の一例であるメチルアルミノキサンは、容易に入手可能であり、かつ高い重合活性を有するので、ポリオレフィン重合における活性剤として一般的に使用されている。しかしながら、メチルアルミノキサンは、飽和炭化水素に溶解させ難いため、環境的に望ましくないトルエンまたはベンゼンのような芳香族炭化水素の溶液として使用されてきた。このため、近年、飽和炭化水素に溶解させたアルミノキサンとして、式[IV]で表されるメチルアルミノキサンの可撓性体(flexible body)が開発され、使用されている。式[V]で表されるこの修飾メチルアルミノキサンは、例えば、米国特許第4960878号明細書、米国特許第5041584号明細書に示されるように、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され、例えば、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムを用いて調製される。Rxがイソブチル基であるアルミノキサンは、飽和炭化水素溶液の形でMMAO、TMAOの商品名で市販されている(Tosoh Finechem Corporation、Tosoh Research&Technology Review、Vol 47、55(2003)を参照)。
【0096】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)として、下記一般式[VI]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0097】
【化6】
式[VI]中、Rcは炭素数1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。
【0098】
架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許第5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0099】
本発明の一態様において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物は、下記一般式[VII]で表されるホウ素化合物である。
【0100】
【化7】
式[VII]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf~Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0101】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0102】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0103】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0104】
e+としては、上記具体例のうち、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0105】
本発明の一態様において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、カルベニウムカチオンを含む化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス{3,5-ジ-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0106】
本発明の一態様において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、トリアルキル置換アンモニウムカチオンを含む化合物として、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどを例示することができる。
【0107】
本発明の一態様において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンを含む化合物として、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0108】
本発明の一態様において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、ジアルキルアンモニウムカチオンを含む化合物として、ジ-n-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0109】
その他、特開2004-51676号公報によって例示されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(Q-3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0110】
前記触媒系の構成例としては、例えば、以下の[1]~[4]が挙げられる。
[1]架橋メタロセン化合物(P)および化合物(Q-2)を含む
[2]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-2)を含む
[3]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-3)を含む
[4]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-2)および化合物(Q-3)を含む
架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)~(Q-3)は、任意の順序で反応系に導入すればよい。
【0111】
〔担体(R)〕
本発明の一態様では、オレフィン重合触媒の構成成分として、必要に応じて担体(R)を用いてもよい。
【0112】
本発明の一態様で用いてもよい担体(R)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0113】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明の一態様に好ましく用いられる担体は、粒径が0.5~300μm、好ましくは1.0~200μmであって、比表面積が50~1,000m2/g、好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にある。このような担体は、必要に応じて100~1,000℃、好ましくは150~700℃で焼成してから使用される。
【0114】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いてもよい。
【0115】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(HPO42、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。本発明の一態様で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
【0116】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。ゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解重縮合して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0117】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
担体(R)としての有機化合物としては、粒径が0.5~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素数2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体、またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0118】
重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
架橋メタロセン化合物(P)(以下「成分(P)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常10-9~10-1mol、好ましくは10-8~10-2molになるような量で用いられる。
【0119】
有機金属化合物(Q-1)(以下「成分(Q-1)」ともいう。)は、成分(Q-1)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-1)/M]が、通常0.01~50,000、好ましくは0.05~10,000となるような量で用いられる。
【0120】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)(以下「成分(Q-2)」ともいう。)は、成分(Q-2)中のアルミニウム原子と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-2)/M]が、通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いられる。
【0121】
イオン性化合物(Q-3)(以下「成分(Q-3)」ともいう。)は、成分(Q-3)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-3)/M]が、通常1~10,000、好ましくは1~5,000となるような量で用いられる。
【0122】
重合温度は、通常-50℃~300℃であり、好ましくは30~250℃、より好ましくは100℃~250℃、さらに好ましくは130℃~200℃である。前記範囲の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となる。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧(MPa-G)、好ましくは常圧~8MPa-Gである。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
【0123】
得られる共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(Q)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成する共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。
【0124】
液相重合法において用いられる重合溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃~200℃の飽和炭化水素である。重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられ、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。重合対象であるα-オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。なお、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も重合溶媒として使用することができるが、環境への負荷軽減の視点および人体健康への影響の最少化の視点からは、これらの使用は好ましくない。
【0125】
一般に、オレフィン系重合体の100℃における動粘度は重合体の分子量に依存する。すなわち高分子量であれば高粘度となり、低分子量であれば低粘度となるため、上述の分子量調整により100℃における動粘度を調整する。また、減圧蒸留のような従来公知の方法により得られた重合体の低分子量成分を除去することで、得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。さらに得られた重合体について、従来公知の方法により水素添加(以下水添ともいう。)を行ってもよい。水添により得られた重合体の2重結合が低減されれば、酸化安定性および耐熱性が向上する。
【0126】
上記のように分子量を調節して得られたエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、1種単独で用いてもよく、また、異なる分子量のものや異なるモノマー組成のものを2種類以上組み合わせてもよい。
本発明の一態様にかかるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレン・α-オレフィン共重合体に飽和炭化水素基以外の置換基を付与した変性共重合体でもよい。この中では、好ましくは、共重合体を、飽和炭化水素基以外の置換基を有しかつ炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる1種以上の化合物により変性した変性共重合体であり、より好ましくは、共重合体を、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上により変性した変性共重合体である。なお、置換基のグラフト位置は特に制限されない。
【0127】
飽和炭化水素基以外の置換基を有しかつ炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる1種以上の化合物による変性を行う場合、飽和炭化水素基以外の置換基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チオフェン環等の芳香環および/または複素芳香環を有する置換基、カルボキシ基、酸無水物基、エーテル結合、エステル結合、ヒドロキシ基、エポキシ基等の酸素含有基、アミド基、イミド結合、アミノ基、ニトリル基、イソシアネート基等の窒素含有基、スルフィニル基、スルファニル基、スルホニル基等の硫黄含有基、トリアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基などケイ素含有基が挙げられる。
【0128】
本発明の一態様にかかる飽和炭化水素基以外の置換基を有し炭素-炭素不飽和結合を有する化合物としては、スチレン、アリルベンゼン等の芳香環を有する化合物、酸、酸無水物、エステル、アミド、イミドなど酸または酸誘導基を有する化合物、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有する化合物、アミン、ニトリル、イソシアネート等の窒素含有基を有する化合物、スルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホンアミドなど硫黄含有基を有する化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、芳香環を有する化合物、酸または酸誘導基を有する化合物、酸素含有基を有する化合物が好ましく、酸または酸誘導基を有する化合物、酸素含有基を有する化合物がより好ましく、不飽和カルボン酸およびその誘導体がさらに好ましい。
【0129】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0130】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル、アミドおよびイミド等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル等のエステルおよびハーフエステルが挙げられる。
【0131】
不飽和カルボン酸のアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミドが挙げられる。
【0132】
不飽和カルボン酸のイミドとしては、例えば、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられる。
不飽和カルボン酸およびその誘導体の中では、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体がより好ましく、特に、変性共重合体を製造する反応においてホモポリマー等の副生物が生じにくい等の点から、マレイン酸および無水マレイン酸が特に好ましい。
【0133】
また、変性の方法としては、上記の他に、反応性の気体や液体と反応させる方法が挙げられる。
前記反応性の気体や液体としては、空気、酸素、オゾン、塩素、臭素、二酸化硫黄、塩化スルフリルなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらの中では、空気および/または酸素を用いる酸化反応や、塩素を用いる塩素化、塩化スルフリル、塩素と二酸化硫黄、塩素と塩化スルフリル、塩素と二酸化硫黄と塩化スルフリルを用いるクロロスルホン化反応が好ましい。また本法で用いる気体は、窒素、アルゴン、二酸化炭素など不活性ガスを用いて任意の濃度に希釈し使用してもよい。
【0134】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)が変性共重合体である場合、その変性量は0.1~20質量%、好ましくは0.5~15質量%である。特に、X/Yブロック共重合体(A)が変性共重合体である場合、エチレン・α-オレフィン共重合体の変性量が上記範囲にあると、X/Yブロック共重合体(A)との相容性に優れ、耐へたり性向上などの効果を発現しやすくできる。またブリードアウトの抑制にも効果がある。
【0135】
本発明の一態様にかかる共重合体(B)の変性体は、特開昭61-126120号公報や特許第2593264号公報などに記載される従来公知の種々の方法や、例えば、下記(1)や(2)の方法により、エチレン・α-オレフィン共重合体を変性することで製造できる。
(1)共重合体を押出機、バッチ式反応機などに装入し、そこに、反応させるビニル化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
(2)共重合体を溶媒に溶解させて、ビニル化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
【0136】
前記いずれの方法でも、ビニル化合物および/または反応性の気体・液体を効率よくグラフトするために、1種または2種以上のラジカル開始剤等の存在下でグラフト共重合を行うことが好ましい。
【0137】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物が挙げられる。
有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられ、該アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0138】
これらの中でも、特に、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0139】
ラジカル開始剤の使用量は、変性前の共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.001~5質量部、好ましくは0.01~4質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0140】
その中でも、空気および/または酸素を用いた酸化反応によって変性する場合、反応を促進するために、前記ラジカル開始剤の他に、金属または金属塩、無機酸、有機酸などから選ばれる1種または2種以上の存在下で反応させてもよい。
【0141】
金属または金属塩としては、酢酸マンガンや酢酸コバルト、塩化マンガン、酸化ニッケル、銅などが挙げられ、該無機酸としては、塩酸や硝酸などが挙げられ、該有機酸としては、ギ酸や酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸などが挙げられる。
【0142】
前記変性反応における反応温度は、通常20~350℃、好ましくは60~300℃である。また、反応性の気体を用いて変性する場合、反応圧力は、常圧~5MPaが好ましい。
【0143】
前記方法により製造した変性共重合体をさらに2次変性してもよい。例えば、特表2008-508402号公報などに記載される方法などが挙げられる。
【0144】
[ポリオレフィン系樹脂(C)]
本発明の一態様にかかるポリオレフィン系樹脂(C)は、下記の要件(C-1)を満たすことを特徴とする。
【0145】
要件(c-1)MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minである。
本発明の一態様にかかるポリオレフィン系樹脂(C)のMFR(230℃、2.16kg)は、0.1~500g/10minであり、好ましくは0.5~100g/10minであり、より好ましくは1~50g/10minである。MFR(230℃、2.16kg)が0.1~500g/10minのポリオレフィン系樹脂は、100℃における動粘度が50,000mm2/s以上となり、実質的に100℃における動粘度の測定は困難である。すなわち本発明の一態様に係るポリオレフィン系樹脂(C)は、通常、100℃における動粘度が50,000mm2/sを超えるものである。
【0146】
本発明の一態様におけるポリオレフィン系樹脂(C)のMFR(230℃、2.16kg)は、JIS K 7210-1に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定した値である。
ポリオレフィン樹脂(C)のMFR(230℃、2.16kg)が上記範囲内にあると、熱可塑性エラストマー組成物の成形性(流動性)、耐熱性を改善する効果のバランスに優れる。
【0147】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン系樹脂(C)は、オレフィンを主体とするモノマーの重合体である。要件(C-1)を満たすものであれば、特に限定はされず、種々公知のオレフィン系重合体を用いることができる。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセンなどの、炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体および共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ホモポリプロピレン(hPP)、ポリプロピレンランダム共重合体(rPP)、ブロックポリプロピレン(bPP)、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、低結晶性または非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体などのオレフィン系重合体、およびこれらを2種以上含む熱可塑性エラストマー組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体およびその金属塩、ならびにエチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0148】
また、ポリオレフィン系樹脂(C)は、オレフィンの共重合成分として、非共役ジエンを含んでいてもよい。非共役ジエンとしては、具体的には、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン等のトリエンが挙げられる。中でも、1,4-ヘキサジエンおよび環状非共役ジエン、特にジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニルノルボルネンが好ましく用いられる。またさらに、これらのポリオレフィン系樹脂がマレイン酸やシラン化合物などの極性化合物でグラフト変性された重合体であっても構わない。これらの中でも、炭素数2~20、好ましくは炭素数2~10のα-オレフィンの重合体または共重合体が望ましい。
【0149】
このようなポリオレフィン系樹脂(C)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5dl/g以上5dl/g以下である。135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が小さくなると、熱可塑性エラストマー組成物の機械強度が低下する。極限粘度[η]が大きくなると成形性が悪化する。ポリオレフィン系樹脂(C)の極限粘度[η]が前記範囲であると、機械強度を維持しながら成形性を確保することができる。
【0150】
このようなポリオレフィン系樹脂(C)の好適な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、中でも特に、プロピレンを主体とする重合体または共重合体であるポリプロピレン系樹脂が、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性や機械的強度の向上の点で好ましい。
【0151】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体、多段重合により合成されたエチレン由来の構造単位を多く含むゴム成分を含有するインパクトコポリマー(ブロックポリプロピレン:bPP)が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂が共重合体である場合、プロピレン由来の構造単位の含有率は90モル%以上であることが好ましく、93~99モル%であることがより好ましい。
【0152】
ポリオレフィン系樹脂(C)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、100~200℃であることが、熱可塑性エラストマー組成物に耐熱性を付与し、かつ成形加工性を確保する点で好ましい。前記融点はより好ましくは120~180℃、さらに好ましくは140~170℃である。
【0153】
なお、本発明において、ポリオレフィン系樹脂(C)の融点測定法は、サンプルを23℃で72時間保管した後、示差走査熱量計(DSC)測定を行い、-40℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで200℃まで昇温したときにDSC曲線を作成し、吸熱ピークのピーク温度をJIS K 7121を参考に解析し、融点Tmとした。
【0154】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン系樹脂(C)としては、種類や、MFR等の性状が異なる2種以上のポリオレフィン系樹脂を併用してもよい。
【0155】
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、前述のX/Yブロック共重合体(A)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含有する組成物であり、さらにポリオレフィン系樹脂(C)を含有することができる。
【0156】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物において、X/Yブロック共重合体(A)100質量部に対して、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有比率は、1~400質量部であり、好ましくは10~350質量部、より好ましくは30~300質量部、さらに好ましくは30~250質量部である。X/Yブロック共重合体(A)100質量部に対してのエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が上記範囲にあると、熱可塑性エラストマー組成物の軟化効果により発現するゴム弾性と、耐ブリードアウト性にバランスよく優れる。
【0157】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物において、X/Yブロック共重合体(A)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有比率は、0~200質量部であり、好ましくは10~150質量部、より好ましくは15~100質量部である。X/Yブロック共重合体(A)100質量部に対してのポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が上記範囲にあると、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性や機械的強度、成形加工性、ゴム弾性にバランスよく優れ、好ましい。
【0158】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)、(B)、(C)以外の成分を含有していてもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれてもよい成分としては、上記(A)、(B)、(C)以外の樹脂成分、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機または有機の充填剤、有機系または無機系発泡剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤等が挙げられる。
【0159】
充填剤としては、無機充填材が好ましく、マイカ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウムなどの粉末充填剤、ガラス繊維や金属繊維などの繊維状充填剤などを挙げることができる。無機充填剤を含有すると熱可塑性エラストマー組成物のタック性が低減されるので好ましい。本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物中における充填剤の含有量は、上記(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して好ましくは150質量部以下、より好ましくは30~100質量部程度である。
【0160】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、各成分を従来公知の方法により混練することにより製造することができる。混練は、混合工程を行った後、あるいは混合工程無しで実施される。混合工程は、組成物の各成分を同時に混合することにより行っても、逐次に行ってもよく、例えば、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダー、ニーダールーダー等で混合することができる。混練は、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、ニーダールーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒、成形あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。混練は、組成物の各成分を同時に混練部に投入しても、逐次に投入してもよく、前述の混合工程を経た混合物を一括で投入することもできる。
【0161】
また、所望により有機パーオキサイドなどの架橋剤、架橋助剤などを添加する、または、これら必要な成分を同時に混合し、溶融混練することにより、熱可塑性を損なわない程度に部分架橋させることも可能である。有機パーオキサイドなどの架橋剤、架橋助剤などを添加して架橋体とすることも可能である。部分架橋、または架橋体を生成させることにより、高温でのゴム弾性が向上するため好ましい。架橋剤としては、有機パーオキサイドが好適に挙げられ、具体的には、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-ヘキサン;t-ブチルパーオキシベンゾエート;ジクミルパーオキサイド;t-ブチルクミルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド;1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン;ベンゾイルパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられ、また、有用な架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、キノンジオキシム、フェニレンビスマレイミド、ポリエチレングリコールジメタクリレート、不飽和シラン化合物などが挙げられる。これら有機パーオキサイド及び架橋助剤は、熱可塑性エラストマー組成物を100質量部としたとき、0.1~5質量部の範囲で、任意に使用して架橋度を調整することができる。これらの有機パーオキサイド及び架橋助剤は、必要に応じてそれぞれ2種以上を併用することもできる。なお、架橋助剤として不飽和シラン化合物を使用した場合には、さらにシラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させて架橋を進行させることができる。
【0162】
本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、各種用途に制限なく用いることができるが、ゴム弾性に優れるため、シール材、パッキン材、栓体、自動車内装材、制振材、防音材、ダンパー、日用品などの用途に好適に用いることができる。
【0163】
[シール材、自動車内装材、制振材]
上述した本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、従来公知の方法により適宜成形して、シール材、自動車内装材、制振材などとして用いることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、各種押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、真空成形などが挙げられる。また、成形時に公知の化学発泡剤、または、炭酸ガス、窒素ガス、水などの公知の物理発泡剤を使用して、公知の方法で発泡させ、発泡体とすることもできる。
【0164】
熱可塑性エラストマー組成物は、硬質樹脂、あるいは金属からなる支持体と組み合わせて使用するこができる。硬質樹脂としては、特に制限はなく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリイミド、等のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。金属としては特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板などの中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。上記の支持体の中で、ポリプロピレンは中が熱可塑性エラストマー組成物との接着性に優れ、特に好ましい。
【0165】
熱可塑性エラストマー組成物を支持体と組み合わせる方法としては、射出成形や押出成形など、従来公知の成形方法を採用することができる。特に制限されるものではないが、例えば、支持体となる硬質樹脂を金型内に溶融射出成形し、次いでその上に本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物を溶融射出成形して硬質樹脂成形物の表面に、該熱可塑性エラストマー組成物を積層して一体化させる射出二色成形法を採用することができる。あるいは、まず、硬質樹脂を金型内に溶融射出成形したのち、その成形物を他の金型にインサートし、その表面に、本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物を溶融射出成形して、プラスチック成形物の表面に、該熱可塑性エラストマー組成物を積層して一体化させるインサート成形法を採用することができる。あるいは、金属製の支持体を金型にインサートし、その表面に、本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物を溶融射出成形して、プラスチック成形物の表面に、該熱可塑性エラストマー組成物を積層することができる。あるいは、複数の押出機を有する成形機で支持体と本発明の一態様にかかる熱可塑性エラストマー組成物を多層状に同時に押出す押出二色成形を採用することができる。あるいは、熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体を、各種接着剤を用いて支持体の表面に固定することもできる。支持体の表面に固定する前に成形体を打ち抜き等の方法で加工してもよい。
【実施例
【0166】
以下、実施例に基づいて本発明の一態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた原料成分は以下の通りである。
【0167】
[X/Yブロック共重合体(A)]
下記実施例および比較例では、X/Yブロック共重合体(A)として以下の市販のX/Yブロック共重合体を使用した。なお各X/Yブロック共重合体のMwは、下記エチレン・α-オレフィン共重合体のMwと同様の方法で測定した。
【0168】
A-1:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブテン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、(株)クラレ製セプトン8004(スチレン含有量:31質量%、MFR(230℃、2.16kg):<0.1g/10分、Mw:110,000)
A-2:ポリスチレン-ポリ(エチレン/エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)、(株)クラレ製セプトン4044(スチレン含有量:32質量%、MFR(230℃、2.16kg):流動せず測定不能、Mw:160,000)
【0169】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(B)]
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の各種物性の測定方法は以下の通りである。
【0170】
<100℃における動粘度、40℃における動粘度>
100℃における動粘度(100℃動粘度)および40℃における動粘度(40℃動粘度)は、JIS K 2283に記載の方法により、測定し、算出した。
【0171】
<重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の高速GPC測定装置により決定した。
高速GPC測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(和光純薬工業社製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ-M 2本を直列連結
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/min
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP-M
【0172】
<エチレン含有量(mol%)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として120℃、観測核として13C(125MHz)、シーケンスとしてシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅として4.7μ/s(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては1万回以上、ケミカルシフトの基準値として27.50ppmを用いて測定した。
【0173】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、前記のようにして測定された13C-NMRスペクトルから、「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macro-molecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めた。
【0174】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造]
実施例および比較例で用いたエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造方法を以下に示す。
【0175】
[製造例1]エチレン・プロピレン共重合体(B-1)の製造
充分に窒素置換した容量2Lの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを入れ、そこに、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C251.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として、16mmol/Lに調整したVO(OC25)Cl2のヘキサン溶液を500mL/hの量、ヘキサンを500mL/hの量で連続的に供給した。一方、反応器上部から、反応器内の重合液が常に1Lになるように重合液を連続的に抜き出した。
【0176】
次にバブリング管を用いて、エチレンガスを27L/hの量、プロピレンガスを26L/hの量、水素ガスを100L/hの量で供給した。共重合反応は、反応器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより、35℃で行った。これにより、エチレン・プロピレン共重合体を含む重合溶液が得られた。
【0177】
得られた重合溶液を、該重合溶液1Lに対して、0.2mol/Lの塩酸500mLで3回、次いで、該重合溶液1Lに対して蒸留水500mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粘稠性液体を、減圧下130℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体(B-1)を得た。このエチレン・プロピレン共重合体(B-1)のエチレン含量は53.0mol%、Mwは2,700、Mw/Mnは1.5、100℃動粘度は40mm2/s、40℃動粘度は400mm2/sであった。
【0178】
[製造例2]エチレン・プロピレン共重合体(B-2)の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン760mLおよびプロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPa-Gとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、および、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることで重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPa-Gに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することで重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた重合溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、粗エチレン・プロピレン共重合体を得た。
【0179】
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、0.5質量%のPd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mL、および、得られた粗エチレン・プロピレン共重合体の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌しながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水素添加反応を行った。反応液をろ過により水添触媒をろ別した後、溶媒を減圧留去し、減圧下80℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体(B-2)を得た。このエチレン・プロピレン共重合体(B-2)のエチレン含有量は48.5mol%、Mwは5,200、Mw/Mnは1.7、100℃動粘度は152mm2/s、40℃動粘度は2,210mm2/sであった。
【0180】
[製造例3]エチレン・プロピレン共重合体(B-3)の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン760mLおよびプロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPa-Gとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[ジフェニルメチレン(η5-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、および、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることで重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPa-Gに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することで重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた重合溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを、減圧下80℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体(B-3)を得た。このエチレン・プロピレン共重合体(B-3)のエチレン含有量は49.5mol%、Mwは5,100、Mw/Mnは1.7、100℃動粘度は150mm2/s、40℃動粘度は2,200mm2/sであった。
【0181】
[ポリオレフィン系樹脂(C)]
下記実施例および比較例では、ポリオレフィン系樹脂(C)として以下の市販のポリオレフィン樹脂を使用した。
C-1:ホモポリプロピレン、プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G(MFR(230℃、2.16kg):9g/10min)
【0182】
[その他のオイル(D)]
下記比較例では、以下市販のオイルを使用した。
D-1:パラフィン系鉱物油、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW-90
D-2:パラフィン系鉱物油、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW-380
D-3:流動パラフィン、(株)MORESCO製モレスコホワイトP-350P
【0183】
[実施例1~12、比較例1~7]
X/Yブロック共重合体(A-1)、(A-2)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)~(B-3)、ポリオレフィン樹脂(C-1)、その他のオイル(D-1)~(D-3)を、表1に記載の配合比で2軸押出機によって混錬し、押し出されたストランドをカットし、ペレットを調製した。得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、熱圧縮機にて厚み2mm×200mm四方のプレスシートを作製し、このシートから物性試験用試験片を作製した。
【0184】
続いて、下記の方法により、組成物の物性評価を行なった。
(1)硬さ
JIS K 6253-3:2012に従い、プレスシートを3枚重ねて、タイプAデュロメーター硬さを測定した。
(2)MFR
JIS K 7210-1:2014に従い、前記のペレットを用いて、230℃、2.16kg条件下で測定を行った。
(3)圧縮永久ひずみ(CS)
JIS K 6262:2013に従い、前記のプレスシートから打ち抜きで作成した直径29mm×厚さ2mmの円板を6枚重ね試験片とし、25%の圧縮をかけて50℃または70℃の恒温槽に投入した。24時間後恒温槽から取り出し、JIS記載のA法にて圧縮永久ひずみを測定した。
(4)永久伸び(PS)
JIS K 6273:2018に従い、前記のプレスシートから打ち抜きで作成したJISダンベル状3号形の試験片に対し、20%または100%の伸長をかけて50℃または70℃の恒温槽に投入した。24時間後恒温槽から取り出し、JIS記載のA法にて定伸長引張永久ひずみを測定した。
測定結果を表1~5に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
表1および表2に示すとおり、試験片の硬度59~65程度の配合にて評価したところ、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いた実施例1~7は、該共重合体(B)の代わりに(D-1)~(D-3)を使用した比較例1~3に対して、圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性を示す物性値が低く、耐へたり性に優れる結果となった。
【0187】
【表3】
表3に示すとおり、試験片の硬度39~50程度の配合にて評価したところ、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いた実施例8および9では、該共重合体(B)の代わりに(D-2)を使用した比較例4および5に対して、圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性を示す物性値が低く、耐へたり性に優れる結果となった。
【0188】
【表4】
表4に示すとおり、試験片の硬度75~77程度の配合にて評価したところ、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いた実施例10では、該共重合体(B)の代わりに(D-2)を使用した比較例6に対して、圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性を示す物性値が低く、耐へたり性に優れる結果となった。
【0189】
【表5】
表5に示すとおり、X/Yブロック共重合体(A)として、(A-1)の代わりに(A-2)を用い、試験片の硬度62~65程度の配合にて評価したところ、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いた実施例11および12では、該共重合体(B)の代わりに(D-1)を使用した比較例7に対して、圧縮永久ひずみや永久伸びといった耐へたり性を示す物性値が低く、耐へたり性に優れる結果となった。