(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 61/18 20060101AFI20250117BHJP
C08F 20/28 20060101ALI20250117BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20250117BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08L61/18
C08F20/28
C08L33/00
C08L101/06
(21)【出願番号】P 2023527562
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019242
(87)【国際公開番号】W WO2022259783
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2021096154
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修一
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030989(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104787(WO,A1)
【文献】特開2013-181121(JP,A)
【文献】特開2016-074840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 61/18
C08F 20/28
C08L 33/00
C08L 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される基を有する(メタ)アクリル重合体(A)と、
放射線反応性基を有し、かつ、数平均分子量が10,000~1,000,000である重合体(B)と、
キシレン樹脂(C)と
を含有する硬化性組成物であり、
前記重合体(B)は、下記式(1)で表される基を有さ
ず、放射線反応性基としてベンゾフェノン基を有する重合体である、硬化性組成物。
式(1):-X-(CH
2)
n-SiR
1
3
[式(1)中、nは1~3の整数であり;3つあるR
1は、独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R
1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;Xは、-O-、-COO-、-S-、-N(R
2)-、-CH(OH)-CH
2-O-、-O-CO-NH-または-N(R
2)-CO-N(R
3)-で表される2価の基であり;R
2およびR
3は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R
2およびR
3は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(メタ)アクリル重合体(A)を1~90質量部、前記重合体(B)を10~99質量部含み、前記キシレン樹脂(C)を10~1,000質量部含む(ただし、重合体(A)と重合体(B)の合計量は100質量部とする。)、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル重合体(A)は、ガラス転移温度が-80~100℃であり、数平均分子量が1,000より大きく100,000以下であり、ケイ素元素を500ppm以上含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル重合体(A)の数平均分子量が、前記重合体(B)の数平均分子量よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合体(B)が、アクリル系重合体である請求項
1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記キシレン樹脂(C)の酸価が、0.1mgKOH/g以下である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記キシレン樹脂(C)が、アルキルフェノール変性キシレン樹脂である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、硬化触媒(D)を含有し、前記硬化触媒(D)は非錫系硬化触媒である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、硬化性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中または被着体などに存在する水分により硬化する組成物として、アルコキシシリル基等の反応性ケイ素含有基を有する重合体を含有する硬化性組成物が、従来から知られており、建築・建材関連用途、自動車関連用途等における接着剤、接着剤、シーリング材、塗料等の製品として広く用いられている。
【0003】
近年、上記のような製品に求められる要求性能は多岐にわたり、例えば、接着剤においては、同一接着面内で接着強度の差を発現させたいという要求や、同一接着面内の一部分は強固に接着させ、かつ、一部では再剥離性を発現させたいという要求などがある。これら要求を達成するためには、単一系の反応のみでは困難であり、異なる機構の反応を組み合わせる必要がある。
【0004】
異なる機構の反応を組み合わせた組成物として、例えば、湿気硬化と光硬化とを利用したデュアルキュア型光硬化性組成物(例えば、特許文献1および特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/104787号
【文献】特開2013-181121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討したところ、上述した従来のデュアルキュア型光硬化性組成物では、用途によっては、被着体に対する接着性と、光硬化効率とのバランスが必ずしも十分とはいえない場合があった。
【0007】
本発明の課題は、上記事情に鑑みてされたものであり、湿気および光の双方で硬化し、被着体に対する接着性と、光硬化効率とのバランスに優れた硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、架橋性ケイ素含有基を有する(メタ)アクリル重合体と、放射線反応性基を有する重合体と、キシレン樹脂とを含む硬化性組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の一実施形態の例は、例えば以下の[1]~[10]に関する。
【0009】
[1] 下記式(1)で表される基を有する(メタ)アクリル重合体(A)と、
放射線反応性基を有し、かつ、数平均分子量が10,000~1,000,000である重合体(B)と、
キシレン樹脂(C)と
を含有する硬化性組成物であり、
前記重合体(B)は、式(1)で表される基を有さない硬化性組成物。
式(1):-X-(CH2)n-SiR1
3
[式(1)中、nは1~3の整数であり;3つあるR1は、独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;Xは、-O-、-COO-、-S-、-N(R2)-、-CH(OH)-CH2-O-、-O-CO-NH-または-N(R2)-CO-N(R3)-で表される2価の基であり;R2およびR3は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3は、同一であっても異なっていてもよい。]
[2] 前記(メタ)アクリル重合体(A)を1~90質量部、前記重合体(B)を10~99質量部含み、前記キシレン樹脂(C)を10~1,000質量部含む(ただし、重合体(A)と重合体(B)との合計量を100質量部とする。)、[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 前記(メタ)アクリル重合体(A)は、ガラス転移温度が-80~100℃であり、数平均分子量が1,000より大きく、100,000以下であり、ケイ素元素を500ppm以上含有する[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 前記(メタ)アクリル重合体(A)の数平均分子量が、前記重合体(B)の数平均分子量よりも小さいことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5] 前記重合体(B)が、放射線反応性基としてベンゾフェノン基を有する重合体である[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[6] 前記重合体(B)が、アクリル系重合体である[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[7] 前記キシレン樹脂(C)の酸価が、0.1mgKOH/g以下である[1]~[6]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[8] 前記キシレン樹脂(C)が、アルキルフェノール変性キシレン樹脂である[1]~[7]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[9] さらに、硬化触媒(D)を含有し、前記硬化触媒(D)は非錫系硬化触媒である[1]~[8]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の硬化性組成物から得られる硬化物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、湿気および光の双方で硬化し、光照射面と未照射面で組成物の接着強度に差を生み出すことで、被着体に対する接着性と、光硬化効率とのバランスに優れた硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。
本発明一実施形態の硬化性組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)は、以下に説明する、(メタ)アクリル重合体(A)を含有する。
【0012】
本明細書において(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの総称で用い、アクリルでもメタクリルでもよく、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの総称で用い、アクリレートでもメタクリレートでもよい。
【0013】
[(メタ)アクリル重合体(A)]
(メタ)アクリル重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう。)は、下記式(1)で表される基を有する重合体である。
【0014】
式(1):-X-(CH2)n-SiR1
3
式(1)中、nは1~3の整数であり;3つあるR1は、独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;Xは、-O-、-COO-、-S-、-N(R2)-、-CH(OH)-CH2-O-、-O-CO-NH-または-N(R2)-CO-N(R3)-で表される2価の基であり;R2およびR3は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3は、同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基等の直鎖または分岐アルキル基が挙げられ、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0016】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、1-メチルヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、2-プロピルペンチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基等の直鎖または分岐アルコキシ基が挙げられ、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基である。前記アルコキシ基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0017】
R2およびR3における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基等の、炭素数1~18、好ましくは炭素数1~3のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素数3~18、好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基等の、炭素数2~18、好ましくは炭素数2~5のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の、炭素数6~18、好ましくは炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0018】
R2およびR3におけるハロゲン化炭化水素基は、前述した炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子によって置換された基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R2およびR3としては水素原子または炭化水素基が好ましく、炭化水素基がより好ましい。
【0019】
-SiR1
3で表される基としては、具体的には、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメチルイソプロポキシシリル基、メチルジイソプロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基が挙げられる。
【0020】
前記重合体(A)は、硬化性と機械特性の観点から、前記式(1)で表される基を有し、かつ、ケイ素元素を500ppm以上、好ましくは1,000~20,000ppm、より好ましくは1,500~10,000ppm含有する。なお、「ppm」とは、wtppmを意味する。重合体(A)は、一実施態様において、重合体の分子鎖末端に前記式(1)で表される基を有することが好ましい。なお、重合体(A)における前記式(1)で表される基由来のケイ素元素含有量は、仕込み比から算出できるが、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によっても測定することができる。詳細については実施例欄に記載する。
【0021】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)>
前記重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)(以下「モノマー(a1)」ともいう。)を含む重合性単量体成分の重合体である。すなわち、重合体(A)は、モノマー(a1)由来の構造単位を有する。
【0022】
モノマー(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、n-エイコシル(メタ)アクリレート、イソエイコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、モノマー(a1)のアルキル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数が4以上22以下であり、前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0023】
モノマー(a1)は1種または2種以上用いることができる。
重合体(A)を構成する重合性単量体成分中のモノマー(a1)の割合は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30~99.9質量%であり、さらに好ましくは40~99.7質量%、特に好ましくは50~99.5質量%である。モノマー(a1)を2種以上用いる場合、各モノマー(a1)の合計が前記範囲にあればよい。重合体(A)は、全構造単位中、モノマー(a1)由来の構造単位を前記同様の範囲で有することができる。モノマー(a1)を前記範囲で用いると、機械的物性に優れる(メタ)アクリル重合体を得ることができる。
【0024】
<加水分解性シリル基含有(メタ)アクリロイル単量体(a2)>
重合体(A)は、モノマー(a1)と共重合可能であって、前記式(1)で表される基を有する加水分解性シリル基含有(メタ)アクリロイル単量体(a2)(以下「モノマー(a2)」ともいう。)由来の構造単位をさらに有することが好ましい。
モノマー(a2)としては、例えば、下記式(a2-1)で表される化合物が好ましい。
【0025】
【0026】
式(a2-1)中、Raは水素原子またはメチル基であり、nは1~3の整数であり、R1は前記式(1)中のR1と同義である。
【0027】
前記式(a2-1)で表される化合物としては、具体的には、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、((メタ)アクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、((メタ)アクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランが挙げられる。
【0028】
モノマー(a2)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシ基に、または2-アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレートのアミノ基に、OCN-(CH2)n-SiR1
3で表される化合物(nは1~3の整数であり、R1は前記式(1)中で説明したR1と同義である。)のイソシアネート基が付加してなる化合物も挙げることができる。OCN-(CH2)n-SiR1
3で表される化合物の具体例は後述する。
【0029】
モノマー(a2)は1種または2種以上用いることができる。
重合体(A)を構成する重合性単量体成分中のモノマー(a2)の割合は、好ましくは0.001~20質量%であり、より好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。モノマー(a2)を2種以上用いる場合、各モノマー(a2)の合計が前記範囲にあればよい。重合体(A)は、全構造単位中、モノマー(a2)由来の構造単位を前記と同様の範囲で有することができる。モノマー(a2)を前記範囲で用いると、重合体(A)中に前記式(1)で表される基を導入することができる。したがって、得られる重合体(A)は適度な架橋性を有し、架橋体を形成する用途に好適である。
【0030】
<その他のモノマー(a3)>
重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記モノマー(a1)およびモノマー(a2)以外のその他のモノマー(a3)由来の構造単位をさらに有してもよい。
【0031】
その他のモノマー(a3)としては、例えば、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;
メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸;(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有モノマー;
無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;
2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等の窒素系複素環含有モノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン、インデン等のスチレン誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;が挙げられる。これらの中では、好ましくはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0032】
その他のモノマー(a3)は1種または2種以上用いることができる。
その他のモノマー(a3)を用いる場合、重合体(A)を構成する重合性単量体成分中のその他のモノマー(a3)の割合は、好ましくは1~65質量%であり、より好ましくは5~60質量%である。モノマー(a3)を2種以上用いる場合、各モノマー(a3)の合計が前記範囲にあればよい。重合体(A)は、全構造単位中、その他のモノマー(a3)由来の構造単位を前記と同様の範囲で有することができる。
【0033】
<メルカプト基含有化合物(d)>
前記重合体(A)の製造時に、連鎖移動剤としてメルカプト基含有化合物(d)(以下「化合物(d)」ともいう。)を用いてもよい。
化合物(d)は、ラジカル重合において連鎖移動性の高い官能基(-SH)を有することから連鎖移動剤として作用し、化合物(d)の存在下で重合性単量体成分の重合を行う際に、特に前記式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物を用いた場合は、前記式(1)で表される基を重合体の分子鎖末端に導入することができる。また、重合性不飽和基を有する重合体に、前記式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物をエン-チオール反応により導入することで、前記式(1)で表される基を重合体に導入することもできる。分子鎖末端に前記式(1)で表される基を有する重合体(A)が使用された硬化性組成物は、硬化速度と機械的物性に優れる傾向にある。
【0034】
なお、モノマー(a2)を用いる場合に、モノマー(a2)における前記式(1)で表される基と、メルカプト基含有化合物(d)における前記式(1)で表される基とは、同一であっても異なっていてもよい。
メルカプト基含有化合物(d)としては、式(d-1)で表される化合物が好ましい。
式(d-1):HS-(CH2)n-SiR1
3
式(d-1)中、nは1~3の整数であり、R1は式(1)中のR1と同義である。
【0035】
前記式(d-1)で表される化合物としては、具体的には、メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、メルカプトメチルジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルジメチルイソプロポキシシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジイソプロポキシシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリイソプロポキシシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。式(d-1)で表される化合物を用いれば、重合体(A)の分子鎖末端に前記式(1)で表される基を導入することができる。
【0036】
前記式(d-1)で表される化合物以外のメルカプト基含有化合物(d)としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のメルカプト基含有化合物が挙げられる。
【0037】
化合物(d)は1種または2種以上用いることができる。
化合物(d)は、重合性単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~6質量部用いられる。化合物(d)を2種以上用いる場合、化合物(d)の合計が前記範囲にあればよい。化合物(d)を前記範囲で用いることで、重合体(A)の数平均分子量を適切な範囲に調整することができる。
【0038】
<重合体(A)の製造>
重合体(A)は、種々公知の重合法により製造することができ、その方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法により得ることが好ましい。なお、(i)~(iv)の方法は任意に組み合わせてもよい。
【0039】
(i)重合性不飽和基と前記式(1)で表される基とを有するモノマー(a2)を、上述の(メタ)アクリル構造を有するモノマー(a1)と共重合する方法。
(ii)連鎖移動剤として、前記式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(d)の存在下、(メタ)アクリル構造を有するモノマー(a1)を重合する方法。
(iii)重合性不飽和基と反応性官能基(例えば、ヒドロキシ基、イソシアネート基、またはアミノ基)とを有する化合物、およびモノマー(a1)を含むモノマー成分を共重合して得られる反応性官能基を有する重合体と、前記反応性官能基と付加反応する基を有し、かつ、付加反応により前記式(1)で表される基を重合体に導入できる化合物(e)とを反応させる方法。
【0040】
前記化合物(e)としては、例えば、下記式(e-1)、および(e-2)で表される化合物が挙げられる(以下、それぞれ「化合物(e-1)」、「化合物(e-2)」ともいう。)。
式(e-1):OCN-(CH2)n-SiR1
3
式(e-1)中、nは1~3の整数であり、R1は前記式(1)中のR1と同義である。
【0041】
前記化合物(e-1)としては、具体的には、1-イソシアネートメチルジメチルメトキシシラン、1-イソシアネートメチルジメチルエトキシシラン、1-イソシアネートメチルジメチルイソプロポキシシラン、(1-イソシアネートメチル)メチルジメトキシシラン、(1-イソシアネートメチル)メチルジエトキシシラン、(1-イソシアネートメチル)メチルジイソプロポキシシラン、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリイソプロポキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、1-イソシアネートメチルジメチルメトキシシラン、(1-イソシアネートメチル)メチルジメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0042】
式(e-2):R4-(CH2)n-SiR1
3
式(e-2)中、nは1~3の整数であり、R1は前記式(1)中のR1と同義であり、R4は、グリシジルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、(アミノアルキル)アミノ基、(N,N-ジアルキルアミノアルキル)アミノ基またはハロゲン化炭化水素基である。
【0043】
前記化合物(e-2)としては、具体的には、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノ)メチルトリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノ)エチルアミノメチルトリメトキシシラン、グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
化合物(e)は1種または2種以上用いることができる。
化合物(e)は、重合性単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部用いられる。化合物(e)を2種以上用いる場合、化合物(e)の合計が前記範囲にあればよい。
【0044】
(iv)モノマー(a1)をリビング重合法により重合し、分子鎖末端にアルケニル基やヒドロキシ基などの官能基を導入した後、得られた重合体と前記化合物(d)または前記化合物(e)などを反応させる方法。
【0045】
重合体(A)は、上述した方法(i)~(iv)のように、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合などの公知の重合法を利用することで製造でき、その方法は特に限定されないが、モノマーの汎用性、工業生産性の点からラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、末端等の制御された位置に特定の官能基(例えば、前記式(1)で表される基)を導入することが可能なリビングラジカル重合法や、重合開始剤を用いて所定の単量体単位を共重合させるフリーラジカル重合法が挙げられる。
【0046】
リビング重合としては、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法、リビングラジカル重合法が適応できるが、工業生産性の観点からリビングラジカル重合法が好ましい。リビングラジカル重合法としては、原子移動ラジカル重合法(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合法、ニトロキシドを介した重合法(NMP)、有機テルル化合物を介した重合法(TERP)、ヨウ素化合物を介した重合法(IRP)などを用いることができ、反応条件を適宜選択することで末端に官能基を有する重合体が得られる。
【0047】
フリーラジカル重合法としては、例えば、反応容器内に重合性単量体成分および必要に応じてメルカプト基含有化合物(d)を仕込み、重合開始剤を添加し、反応温度40~90℃程度で2~20時間反応させる。前記反応においては、必要に応じて重合溶媒が仕込まれていてもよい。例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合を行う。また、重合反応中に、重合性単量体成分、重合開始剤、連鎖移動剤、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0048】
重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。なお、金属触媒を用いないことがより好ましい。このような重合開始剤を用いて製造された重合体(A)は、重合体(A)中に触媒に由来する金属成分が含まれないため、架橋反応の阻害や着色などを防ぐことができる。また、金属成分に起因する解重合反応を抑制できることから、各種用途での使用における耐久性に優れた硬化物を提供できる。
【0049】
アゾ化合物系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0050】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤として従来用いられている化合物が好ましく、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン系開始剤;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系開始剤;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルメチルケタール等のケタール系開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4'-トリメチルペンチルホソフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム)等のオキシム・エステル系開始剤;カンファーキノン、α-ヒドロキシケトンが挙げられる。
【0052】
光ラジカル重合開始剤は、増感剤と組み合わせて用いてもよい。増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ビス(アシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系化合物が好ましい。
【0053】
重合開始剤は1種または2種以上用いることができる。
重合開始剤は、複数回にわたって逐次添加して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体成分100質量部に対して、好ましくは0.001~2質量部、より好ましくは0.002~1質量部である。重合開始剤を2種以上用いる場合、重合開始剤の合計が前記範囲にあればよい。重合開始剤を前記範囲内で使用することにより、重合体(A)の数平均分子量を適切な範囲内に調整することができる。
【0054】
重合溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
重合溶媒は1種または2種以上用いることができる。
また、後述の可塑剤、または重合体(B)の存在下で重合することもできる。
【0055】
<重合体(A)の物性>
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、重合体の粘度と得られる硬化物の機械的物性の観点から、好ましくは1,000より大きく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、重合体の粘度の観点から好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは40,000以下である。
【0056】
前記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-80~100℃であり、より好ましくは-75~80℃である。前記Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により決定する。
GPCおよびDSCの測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
【0057】
<重合体(A)の含有量>
本発明の一実施形態の組成物は、1種または2種以上の重合体(A)を含有することができる。
本発明の一実施形態の組成物は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部のうち、重合体(A)を、1質量部以上含有することが好ましく、1~90質量部含有することがより好ましく、10~80質量部含有することがさらに好ましい。重合体(A)を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。重合体(A)が前記範囲で含有されていると、粘着・接着物性に優れた組成物が得られる。
【0058】
[重合体(B)]
本発明の一実施形態の組成物は、放射線反応性基を有する重合体(B)(以下「重合体(B)」ともいう。)を含む。
放射線反応性基を有する重合体は、ラジカル反応や光二量化反応等により架橋構造が形成される。ラジカル反応は、主鎖となる重合体に側鎖(ペンダント基)として結合している放射線反応性基に、放射線の照射によってラジカルが発生し、別重合体にグラフト反応することによって、重合体間に架橋構造を形成する。光二量化反応は、放射線反応性基(感光基)が光によって二量化反応を起こし、炭素原子からなる複素環を形成して架橋する。
【0059】
放射線反応性基とは、放射線の照射によって重合体を架橋させる官能基をいう。放射線としては、マイクロ波、赤外線、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、中性子線などが挙げられる。
【0060】
主反応としてラジカル重合反応を促す放射線反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン骨格を有する官能基、ベンジル骨格を有する官能基、o-ベンゾイル安息香酸エステル骨格を有する官能基、チオキサントン骨格を有する官能基、3-ケトクマリン骨格を有する官能基、2-エチルアントラキノン骨格を有する官能基、カンファーキノン骨格を有する官能基などが挙げられる。
主反応として光二量化反応を促す放射線反応性基としては、光二量化可能な不飽和結合を有する官能基を用いることができ、例えば、シンナミル基、シンナモイル基、シンナミリデン基、シンナミリデンアセチル基、カルコン基、クマリン基、イソクマリン基、2,5-ジメトキシスチルベン基、マレイミド基、α-フェニルマレイミド基、2-ピロン基、アジド基、チミン基、キノン基、ウラシル基、ピリミジン基、スチルバゾリウム基、スチリルピリジニウム基、又はスチリルキノリウム基などが挙げられる。
本発明の一実施形態における放射線反応性基としては、ベンゾフェノン骨格を有する官能基、例えばベンゾフェノン基が好ましい。
【0061】
主鎖となる重合体は、例えば、アクリル系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、エーテル系ポリマーが挙げられ、好ましくはアクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーの重合体又は共重合体である。アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートは、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートが好ましい。アクリル系モノマーは、1種または2種以上が併用されてもよい。
【0062】
前記重合体(B)は、アクリル系ポリマーの側鎖にベンゾフェノン基を汎用の方法で導入して製造してもよいし、又は、アクリル系モノマーと、これと共重合可能かつベンゾフェノン基を有するビニル系モノマーとを含むモノマー混合物を重合させて製造してもよい。
【0063】
アクリル系ポリマーに導入されたベンゾフェノン基の含有量は、ポットライフが長くて優れた粘着性を有する放射線硬化型ホットメルト粘着剤を得ることができる観点から、放射線反応性基を有するアクリル系ポリマー全体の質量に対して、好ましくは0.1~5質量%である。
【0064】
アクリル系モノマーと共重合可能かつ放射線反応性基を有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、ベンゾフェノン基を有するアクリル系モノマーが好ましい。ベンゾフェノン基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4'-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4'-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4'-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4'-ブロモベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン基を有するアクリル系モノマーは、1種または2種以上が併用されてもよい。
【0065】
前記重合体(B)は、前述のように主鎖となる重合体がアクリル系ポリマーであることが好ましく、市販品としては、例えば、BASF社から商品名「acResin(登録商標)UV」が挙げられる。2-エチルへキシルアクリレート成分を含むアクリル系ポリマーを主鎖とし且つ側鎖としてベンゾフェノン基が結合しているアクリル系ポリマーの市販品としては、BASF社から商品名「acResin(登録商標)A203 UV」及び「acResin(登録商標)A204 UV」が挙げられる。ブチルアクリレート成分を含むアクリル系ポリマーを主鎖とし且つ側鎖として放射線反応性基が結合しているアクリル系ポリマーの市販品としては、BASF社から商品名「acResin(登録商標)A258 UV」及び「acResin(登録商標)A260 UV」が挙げられる。2-エチルへキシルアクリレート成分及びメチルメタクリレート成分を含むアクリル系ポリマーを主鎖とし且つ側鎖としてベンゾフェノン基が結合しているアクリル系ポリマーの市販品としては、BASF社から商品名「acResin(登録商標)3532 UV」が挙げられる。その他の放射線反応性基を有するアクリル系ポリマーの市販品としては、BASF社から商品名「acResin(登録商標)DS3552X UV」が挙げられる。
【0066】
重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、10,000~1,000,000であり、好ましくは20,000~500,000、より好ましくは25,000~300,000である。数平均分子量が前記範囲であると、重合体(A)との相溶性や硬化性組成物のハンドリング性、粘着・接着物性に優れる点から好ましい。数平均分子量(Mn)は、GPC法により測定される。
また、前記(メタ)アクリル重合体(A)の数平均分子量は、前記重合体(B)の数平均分子量よりも小さいことが、相溶性や硬化性の観点から好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態の組成物は、1種または2種以上の重合体(B)を含有することができる。
本発明の一実施形態の組成物は、重合体(A)と重合体(B)の合計量100質量部のうち、重合体(B)を、好ましくは99質量部以下含有し、より好ましくは10~99質量部、より好ましくは20~90質量部含有する。重合体(B)を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。重合体(B)が前記範囲で含有されていると、粘度および粘着・接着物性に優れた組成物が得られる。
【0068】
[キシレン樹脂(C)]
本発明の一実施形態の組成物は、キシレン樹脂(C)を含む。
前記キシレン樹脂(C)としては、具体的には、フドー製のニカノール Y-50(キシレン樹脂、液状),ニカノール L(キシレン樹脂、液状),ニカノール H(キシレン樹脂、液状),ニカノール G(キシレン樹脂、液状),ニカノール GHP-150(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、軟化点:150~160℃),ニカノール HP-120(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、軟化点:125~135℃),ニカノール HP-100(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、軟化点:105~125℃),ニカノール HP-210(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、軟化点:90~110℃),ニカノール HP-70(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、軟化点:70~90℃)、リグナイト製のリグノール R-70(ロジン変性キシレン樹脂、軟化点:75~85℃),リグノール R-140(ロジン変性キシレン樹脂、軟化点:128~135℃)が挙げられる。これらの中でも、アルキルフェノール変性キシレン樹脂が好ましく、特に、ニカノール HP-100,またはニカノール HP-210が好ましい。
【0069】
また、硬化性組成物の貯蔵安定性の観点から、酸価が1mgKOH/g以下のキシレン樹脂が好ましく、酸価が0.1mgKOH/g以下のキシレン樹脂であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、キシレン樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数をいい、JIS K0070に基づき測定することができる。キシレン樹脂の酸価測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
【0070】
本発明の一実施形態の組成物は、1種または2種以上のキシレン樹脂(C)を含有することができる。
本発明の一実施形態の組成物中におけるキシレン樹脂(C)の含有量は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは10~1,000質量部、より好ましくは50~800質量部である。キシレン樹脂(C)を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。キシレン樹脂(C)の含有量が前記範囲にあれば、粘着剤層が適度なタック性を有し、各種被着体に対する接着力に優れる。
【0071】
[硬化触媒(D)]
本発明の一実施形態の組成物は、好ましくはさらに硬化触媒(D)を含有する。前記硬化触媒(D)としては、架橋性シリル基を有する重合体に用いる従来公知の各種縮合触媒を用いることができる。但し、本発明に用いる硬化触媒(D)は、非錫系硬化触媒であることが好ましい。
【0072】
前記硬化触媒(D)としては、例えば、
ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、亜鉛-2-エチルヘキソエート、亜鉛アセチルアセトネート等のカルボン酸亜鉛塩類;
テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタン酸エステル類;
アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジ-イソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;
カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄、カルボン酸チタニウム、カルボン酸鉛、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸セリウム、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸亜鉛、カルボン酸アルミニウム等のカルボン酸(2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、オレイン酸、ナフテン酸等)金属塩、あるいはこれらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物;
ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトナート、ジブトキシジルコニウムジアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;
メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;
トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三アミン類;
トリアリルアミン、オレイルアミン、などの脂肪族不飽和アミン類;
ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU等のアミン系化合物、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;
過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;
過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;
フェルザチック酸等の脂肪酸や有機酸性リン酸エステル化合物等他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒が例示される。
【0073】
硬化触媒(D)は、1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、硬化触媒(D)を含有する場合、その含有量は、硬化性組成物の湿分硬化速度の観点から、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。硬化触媒(D)を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0074】
[他の成分]
本発明の一実施形態の組成物は、重合体(A)の他に、必要に応じて、光増感剤、可塑剤、充填剤、シリカ、顔料、老化防止剤、脱水剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、キシレン樹脂以外の粘着付与樹脂、分散剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、密着性付与剤等の他の成分を1種または2種以上含有することができる。
【0075】
<光増感剤>
本発明の一実施形態の組成物は、光増感剤をさらに含有することができる。光増感剤を用いることにより、重合体(B)の放射線反応性基が増感される。
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン類(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン)、芳香族2-ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2-ヒドロキシケトン類(2-ヒドロキシベンゾフェノン、モノ-もしくはジ-p-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン類(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m-もしくはp-ニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5-ニトロアセナフテン)、(2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N-アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2-ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、2-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンカルボン酸、アントラセン、9-アントラセンメタノール、9-アントラセンカルボン酸、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、2-メトキシアントラセン、1,5-ジメトキシアントラセン、1,8-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、6-クロロアントラセン、1,5-ジクロロアントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、クリセン、ピレン、ベンゾピラン、アゾインドリジン、フロクマリン、フェノチアジン、ベンゾ[c]フェノチアジン、7-H-ベンゾ[c]フェノチアジン、トリフェニレン、1,3-ジシアノベンゼン、フェニル-3-シアノベンゾエート等が挙げられる。
【0076】
光増感剤は1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、光増感剤の含有量は、硬化性組成物の硬化性の観点から、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。光増感剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0077】
<可塑剤>
本発明の一実施形態の組成物は、可塑剤をさらに含有することができる。可塑剤を用いることにより、硬化性組成物から形成された硬化物の柔軟性および伸び性を向上させることができる。
【0078】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸エステル類;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、トリメリット酸トリオクチル等の非フタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、4,5-エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン;ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の炭化水素;ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリプロピレングリコールやその誘導体、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールの水酸基をアルキルエーテルで封止したようなポリエーテル類、ポリ-α-メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等のオリゴマー類、重合体(A)以外の(メタ)アクリル重合体等の高分子可塑剤が挙げられる。
【0079】
可塑剤は1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、可塑剤の含有量は、硬化性組成物の塗工性、硬化物の耐候性の観点から、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1~300質量部、より好ましくは5~100質量部である。可塑剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0080】
<充填剤>
本発明の一実施形態の組成物は、充填剤をさらに含有することができる。
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、半膠質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、およびこれらの炭酸カルシウムの表面を脂肪酸や樹脂酸系有機物で表面処理したもの等の炭酸カルシウム;カーボンブラック;炭酸マグネシウム;ケイソウ土;焼成クレー;クレー;タルク;酸化チタン;ベントナイト;酸化第二鉄;酸化亜鉛;活性亜鉛華;水酸化アルミニウム;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等の無機中空体;フェノール樹脂バルーン、エポキシ樹脂バルーン、尿素樹脂バルーン、ポリ塩化ビニリデン樹脂バルーン、ポリ塩化ビニリデン-(メタ)アクリル樹脂バルーン、ポリスチレンバルーン、ポリメタクリレートバルーン、ポリビニルアルコールバルーン、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂バルーン、ポリアクリロニトリルバルーン等の有機樹脂中空体(プラスチックバルーン);樹脂ビーズ、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤;ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤が挙げられる。これらの中でも、分散性の観点から脂肪酸などで表面処理された炭酸カルシウムが好ましく、比重低減や断熱性付与の観点からポリスチレンバルーン等のプラスチックバルーンが好ましい。
【0081】
充填剤は1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、充填剤の含有量は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~1,000質量部、より好ましくは1~500質量部である。充填剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。充填剤が前記範囲であると、各種成分の分散性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0082】
<シリカ>
本発明の一実施形態の組成物は、シリカをさらに含有することができる。シリカを用いることによって、硬化性組成物の塗工性が向上し、優れた耐候性および伸び性を有する硬化物を得ることができる。
【0083】
シリカとしては、例えば、フュームドシリカが挙げられる。また、シリカとしては、疎水性シリカおよび親水性シリカが挙げられ、疎水性シリカが好ましい。
シリカは1種または2種以上用いることができる。
【0084】
シリカは1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、シリカの含有量は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、より好ましくは3~50質量部である。シリカを2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0085】
<顔料>
本発明の一実施形態の組成物は、顔料をさらに含有することができる。顔料の使用は、調色および耐候性の向上という観点から好ましい。
顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、アルミン酸コバルト等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
顔料は1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、顔料の含有量は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1~200質量部、より好ましくは3~100質量部である。顔料を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0086】
<老化防止剤>
本発明の一実施形態の組成物は、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等の老化防止剤をさらに含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾールが挙げられる。
【0087】
光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0088】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0089】
老化防止剤は1種または2種以上用いることができる。
本発明の一実施形態において、老化防止剤の含有量は、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。老化防止剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0090】
<脱水剤>
本発明の一実施形態の組成物は、貯蔵安定性をさらに改良するために、硬化性や柔軟性に悪影響を及ぼさない範囲で少量の脱水剤を含有することができる。
脱水剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;イソシアン酸p-トルエンスルホニル等のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0091】
本発明の一実施形態において、脱水剤の含有量は、硬化性組成物の貯蔵安定性および硬化性の観点から、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは1~20質量部である。脱水剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0092】
<アミノ基を有するシランカップリング剤>
本発明の一実施形態の組成物は、硬化性の観点からアミノ基を有するシランカップリング剤(以下、単に「アミノシランカップリング剤」ともいう。)をさらに含有することができる。
【0093】
本発明において前記アミノシランカップリング剤は、一分子中に、アルコキシ基が結合したケイ素原子と、窒素原子を含有する官能基とを有する化合物を意味する。アミノシランカップリング剤は、湿気硬化を促進させる助触媒として機能し、さらに得られる硬化物の接着力を向上させることができる。
【0094】
アミノシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-アミノメチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-アミノメチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンが挙げられる。
【0095】
前記アミノシランカップリング剤の中でも、硬化速度を速くすることが可能であるという観点から、1級アミノ基を有するアミノシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。
アミノシランカップリング剤は1種または2種以上用いることができる。
【0096】
本発明の一実施形態において、アミノシランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の接着性、貯蔵安定性およびハンドリング性の観点から、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。アミノシランカップリング剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。
【0097】
<レオロジーコントロール剤>
本発明の一実施形態の組成物は、レオロジーコントロール剤をさらに含有することができる。レオロジーコントロール剤は、膜面の平滑性を向上させることができる。
レオロジーコントロール剤としては、アクリル系、ウレア系、ウレタン系、アマイド系、ポリエステル系、層状無機化合物系のレオロジーコントロール剤等を用いることができる。これらの中でも、好ましくはビックケミー・ジャパン製「BYK R606(ポリヒドロキシカルボン酸エステル)」に代表されるポリエステル系のレオロジーコントロール剤である。
【0098】
本発明の一実施形態において、レオロジーコントロール剤を、重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部の範囲で含有する。レオロジーコントロール剤を2種以上用いる場合、その合計の含有量が前記範囲にあればよい。レオロジーコントロール剤を前記範囲で含有すれば、チキソトロピー性や疑塑性に優れる硬化性組成物が得られる傾向にある。
【0099】
[硬化性組成物の用途、硬化物]
本発明の一実施形態の組成物は、重合体(A)、重合体(B)およびキシレン樹脂(C)の相溶性が良いことから貯蔵安定性に優れ、かつチキソトロピー性が高いため塗工性にも優れる。また、前記組成物から得られる硬化物は、破断伸びや破断強度等の機械的物性に優れる。
【0100】
本発明の一実施形態の組成物は、良好な架橋性を有することから、架橋により硬化させて用いる用途、または、硬化体の弾性を利用した用途等に好適に使用することができる。前記組成物において、大気中または硬化性組成物が適用される被着体中に存在する水分により、例えば重合体(A)が有する前記式(1)で表される基が加水分解してシラノール基を形成した後、シラノール基同士が脱水縮合してシロキサン結合を形成することによって硬化すると考えられる。重合体(B)は、紫外線などの放射線を利用することで、ベンゾフェノン基などではラジカルが発生して重合体が有する水素を引き抜くことで、マレイミド基などでは光二量化反応によって硬化すると考えられる。
【0101】
本発明の一実施形態の組成物は、湿気硬化と光硬化の異なる硬化機構を利用して、光照射面と未照射面で組成物の接着強度に差を生み出すことが可能となる。詳細な反応機構は明らかではないが、キシレン樹脂(C)は他粘着付与樹脂にはない、紫外線領域から可視光領域の長波長領域に光吸収があることにより、特定の波長による反応が促進され、組成物の光硬化が進行すると考えられる。
【0102】
本発明の一実施形態の組成物は、例えば、溶液系にて作製したシートでの使用、ホットメルト(無溶剤系)での使用も可能であり、その形状は特に制限されない。
【実施例】
【0103】
以下、実施例に基づいて本発明の一実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0104】
[重合体の評価方法]
重合体の各物性の評価方法を以下に記載する。
<数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)>
各重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分析を行い、下記条件でポリスチレン換算により算出した。
・装置:GPC-8220(東ソー製)
・カラム:G7000HXL/7.8mmID×1本 +
GMHXL/7.8mmID×2本 +
G2500HXL/7.8mmID×1本
・媒体:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・濃度:1.5mg/ml
・注入量:300μL
・カラム温度:40℃
【0105】
<ガラス転移温度(Tg)>
各重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記条件で測定した。
・装置:DSC7000X(日立ハイテクサイエンス製)
・温度条件:-100℃から30℃まで10℃/minで昇温
・試料容器:アルミ製オープンセル
・試料量:5mg
【0106】
<ケイ素元素含有量>
各重合体のケイ素元素含有量は、重合体0.2gにフッ化水素を含む混酸7mLを加え、マイクロウェーブ分解装置(アントンパールジャパン製)で湿式灰化し、灰化したサンプルに超純水を加え50mLに定容した後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて下記条件で測定した。
・装置:ICPE-9000(島津製作所製)
・高周波パワー:1.20kW
・プラズマガス:10.00L/min
・補助ガス:0.60L/min
・キャリアガス:0.70L/min
・観測方向:軸方向
【0107】
[キシレン樹脂の評価方法]
<酸価>
キシレン樹脂を不揮発分が20%となるようトルエンに溶解させてキシレン樹脂溶解液を得た後、溶解液20g測りJIS K0070の電位差滴定法に準拠し、自動滴定装置AUT-501(東亜ディーケーケー製)を用いて酸価を算出した。算出された酸価の値を、キシレン樹脂の不揮発分で除した値をキシレン樹脂の酸価とした。なお、前記酸価が0.08mgKOH/g以下となる場合は、定量下限値以下であるとした。また、キシレン樹脂を溶解する溶剤においては、酸を有さないトルエン以外の溶剤を用いてもよい。
【0108】
[製造例1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたステンレス製フラスコに、n-ブチルアクリレート74部、2-エチルヘキシルアクリレート25部、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1部を計量し、窒素置換を行った後に70℃まで昇温した。次いで、フラスコ内の内容物を75℃に維持しながら、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン0.9部を追加し、次いで2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を添加して反応を開始した。反応開始3時間後にAIBN0.05部を追加した。反応開始6時間後に110℃で3時間減圧留去し、(メタ)アクリル重合体(A-1)を得た。(メタ)アクリル重合体(A-1)のケイ素元素含有量は1,800ppm、Mnは18,000、Mwは48,000、Tgは-62℃であった。
【0109】
[製造例2、3]
使用した原料成分を、表1に示した通りに変更したこと以外は製造例1と同様に行い、(メタ)アクリル重合体(A-2)、(A-3)を得た。
【0110】
【0111】
[実施例1]
(メタ)アクリル重合体(A-1)50部と、重合体(B)「acResin A260 UV」(BASF製)50部と、キシレン樹脂(C)「ニカノール HP-100」(フドー製)60部と、酸化防止剤「アデカスタブ AO-80」(ADEKA製)1部とをステンレス製容器に計量し、140℃で30分間混合した。次いで、容器内の温度を110℃にし、光増感剤「アントラキュアー UVS-1101」(川崎化成工業製)1.3部と、脱水剤「KBM-1003」(信越化学工業製)8部を追加し、30分間混合した。得られた混合物を、不揮発分が50%となるようにトルエンで希釈混合した後、アミノ基を有するシランカップリング剤「KBM-603」(信越化学工業製)4部、硬化触媒(D)「K-KAT 670」(楠本化成製)2部を追加し、1分間攪拌混合することにより、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の厚さが100μmになるように塗工し、110℃で10分間乾燥することで揮発成分を除去した。23℃/50%RHの条件下で30分養生した後、硬化物層の剥離処理されたPETフィルムとは反対の面に、剥離処理されたPETフィルムを貼り合わせることで硬化物層を有する硬化物シートを得た。得られた硬化物シートについて、各種評価を行った。各種評価結果は表2に示す。評価方法については後述する。
【0112】
[実施例2~9、比較例1~4]
配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化物シートを得て、各種評価を行った。各種評価結果は表2に示す。
【0113】
[硬化性組成物および硬化物の評価方法]
硬化性組成物および硬化物の各物性の評価方法を以下に記載する。
<外観>
実施例または比較例で得られた硬化物シートについて、外観を目視で評価した。
【0114】
<離型性>
実施例または比較で得られた硬化物シートについて、PETフィルムを剥離した際の、硬化物のPETフィルムへの転着の有無を目視で確認した。
【0115】
<せん断接着力、凝集破壊率>
JIS-K6850:1999(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に準拠し、被着面積が12.5mm×25mmとなるよう、実施例または比較例で得られた硬化物シートの片面のPETフィルムを剥離して、露出させた硬化物層にステンレス(厚さ1mm)製の試験片を貼り付けた。紫外線照射する場合は、主波長365nmの光源を用い、積算照度量2000mJ/cm2となるよう、未剥離のPETフィルム面側に紫外線を照射した。次に、もう一方のPETフィルムを剥離し、露出させた硬化物層にステンレス(厚さ1mm)製の試験片を貼り付け、2kgのローラーを1往復させて圧着した。圧着から20分静置した後、得られたサンプルについて、JIS K6850:1999に準拠し、引張り速度50mm/分、23℃の条件下で島津製作所製の万能型引張り試験機AG-Xで引張り試験を行い、せん断接着力(最大点応力)を測定した。また、2枚のステンレス毎の凝集破壊率(接着面積全体に占める凝集破壊面積の割合)を目視で評価した。便宜上、先に硬化物シートを貼り付けたステンレス製試験片をSUS(A)、次に貼り付けたステンレス製試験片をSUS(B)と呼称する。
【0116】
<粘着力(180°Peel)>
実施例または比較例で得られた硬化物シートの片面のPETフィルムを剥離し、露出させた硬化物層に厚さ125μmのPETフィルムを貼り付けた後、20mm幅に裁断した。紫外線照射する場合は、主波長365nmの光源を用い、積算照度量2000mJ/cm2となるよう、未剥離のPET面側に紫外線を照射した。23℃/50%RH条件下で、もう一方のPETフィルムを剥離し、露出させた硬化物層面にステンレス板を貼り付け、2kgのローラーを1往復させて圧着した。圧着から20分静置した後、ステンレス板から硬化物シートを、23℃/50%RH条件下、剥離角度180°の条件で、剥離速度300mm/minで剥離し、硬化物シートの剥離力(粘着力)を、島津製作所製の万能型引張り試験機AG-Xで測定した。表中の記号afは「界面剥離が生じた」ことを、cfは「凝集破壊が生じた」こと、cf,zipは「凝集破壊かつジッピング現象が生じた」ことを意味している。
【0117】
【0118】
表2中、実施例および比較例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
・重合体(B):
acResin A260 UV(BASF製)(ベンゾフェノン基が結合したブチルアクリレート系共重合体、Mn:42,000、Mw:182,000、Tg:-39℃)
acResin A204 UV(BASF製)(ベンゾフェノン基が結合した2-エチルヘキシルアクリレート系共重合体、Mn:39,000、Mw:191,000、Tg:-34℃)
・キシレン樹脂(C):
ニカノール HP-100(フドー製)(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、酸価:0.1mgKOH/g以下(定量下限値以下))
ニカノール HP-210(フドー製)(アルキルフェノール変性キシレン樹脂、酸価:0.1mgKOH/g以下(定量下限値以下))
・粘着付与樹脂:
ネオポリマー E-100(ENEOS製)(芳香族系石油樹脂)
YSポリスター TH130(ヤスハラケミカル製)(テルペンフェノール樹脂)
マイティエース K125(ヤスハラケミカル製)(テルペンフェノール樹脂)
FTR-6100(三井化学製)(芳香族系炭化水素樹脂)
・光増感剤:
アントラキュアー UVS-1101(川崎化成工業製)(有機化合物系光増感剤)
・酸化防止剤:
アデカスタブ AO-80(ADEKA製)(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
・脱水剤:
KBM-1003(信越化学工業製)(ビニルトリメトキシシラン)
・アミノシラン(シランカップリング剤):
KBM-603(信越化学工業製)(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
・硬化触媒(D):
K-KAT 670(楠本化成製)(カルボン酸亜鉛塩系触媒)