(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】エチレン共重合体及びその製造方法、並びに組成物、架橋重合体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20250117BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20250117BHJP
C08L 23/08 20250101ALI20250117BHJP
C08F 4/6592 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C08F210/02
C08K3/011
C08L23/08
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2023530770
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2020132147
(87)【国際公開番号】W WO2022104877
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202011311765.9
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011314968.3
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523187158
【氏名又は名称】中石化(北京)化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高念
(72)【発明者】
【氏名】陳建軍
(72)【発明者】
【氏名】李洪泊
(72)【発明者】
【氏名】徐林
(72)【発明者】
【氏名】呉寧
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼建国
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-080269(JP,A)
【文献】特表2003-518531(JP,A)
【文献】特開昭48-034982(JP,A)
【文献】特表2006-503141(JP,A)
【文献】特表平01-501633(JP,A)
【文献】特開2004-018696(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン共重合体であって、
エチレンから誘導されたエチレン構造単位と、共役ジオレフィンから誘導された共役ジオレフィン構造単位と、を含有し、該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~45モル%であり、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位の含有量は21~40モル%であり、該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は95モル%以上であり、該エチレン共重合体の重量平均分子量が20,000~300,000である、エチレン共重合体。
【請求項2】
該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は21~35モル%である、請求項1に記載のエチレン共重合体。
【請求項3】
該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は21~30モル%である、請求項2に記載のエチレン共重合体。
【請求項4】
前記共役ジオレフィン構造単位の含有量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は55~90%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項5】
前記共役ジオレフィン構造単位の含有量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は63~85%である、請求項4に記載のエチレン共重合体。
【請求項6】
該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は98モル%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項7】
該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は100モル%である、請求項6に記載のエチレン共重合体。
【請求項8】
該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~40モル%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項9】
該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は30~35モル%である、請求項8に記載のエチレン共重合体。
【請求項10】
共役ジオレフィン構造単位において、1,2-シクロペンタン環構造単位と1,2-シクロプロパン環構造単位とのモル比が0.1~3:1である、請求項1~9のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項11】
共役ジオレフィン構造単位において、1,2-シクロペンタン環構造単位と1,2-シクロプロパン環構造単位とのモル比が0.5~1.8:1である、請求項10に記載のエチレン共重合体。
【請求項12】
重量平均分子量は25,000~250,000であり、分子量分布指数は3.5以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項13】
ガラス転移温度は-50℃~-15℃の範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項14】
ガラス転移温度は-40℃~-20℃の範囲である、請求項13に記載のエチレン共重合体。
【請求項15】
前記共役ジオレフィンはブタジエンである、請求項1~14のいずれか1項に記載のエチレン共重合体。
【請求項16】
式1で表される金属化合物から選択される成分Aとアルミノキサンを含有する成分Bとを含有する重合触媒の存在下で、エチレンと共役ジオレフィンとを接触させるステップを含む、エチレン共重合体の製造方法。
【化1】
(式1中、Mは第4族の金属原子から選択され、
X
1及びX
2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン原子であり、
Rbは第14族元素含有二価基であり、
L
1及びL
2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、式3~式6で表される基から選択され、
【化2】
式3中、R
A
1、R
A
2、R
A
3、R
A
4及びR
A
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-C
20のアルキルであり、
式4中、R
B
1、R
B
2、R
B
3、R
B
4及びR
B
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-C
20のアルキルであり、
式5中、R
C
1、R
C
2、R
C
3及びR
C
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-C
20のアルキルであり、
式6中、R
D
1、R
D
2、R
D
3及びR
D
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-C
20のアルキルである。)
【請求項17】
式1中、Mはジルコニウム原子であり、及び/又は
式1中、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、塩素原子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式1中、Rbはケイ素含有二価基である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
式1中、Rbは式2で表される二価基である、請求項18に記載の方法。
【化3】
(式2中、R
1及びR
2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、C
1-C
10のアルキルである。)
【請求項20】
前記成分Aは、式7~式10で表される金属化合物から選択される1種又は2種以上である、請求項16に記載の方法。
【化4】
【請求項21】
前記成分Aと前記成分Bとのモル比が1:0.1~5000である、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
共役ジオレフィン1molに対して、前記成分Aの使用量が0.1~100μmolである、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記共役ジオレフィンはブタジエンである、請求項16~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記接触は-50℃~150℃の温度で行われ、前記エチレンの圧力がゲージ圧で0~100MPaである、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記接触は分子量調整剤の存在下で行われ、前記分子量調整剤の使用量により、製造されたエチレン共重合体の重量平均分子量は20,000~300,000である、請求項16~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
エチレン共重合体と架橋剤を含有し、前記エチレン共重合体は請求項1~1
5のいずれか1項に記載のエチレン共重合体である組成物。
【請求項27】
請求項1~1
5のいずれか1項に記載のエチレン共重合体を架橋してなる架橋重合体。
【請求項28】
少なくとも1つの構成要素が請求項1~1
5のいずれか1項に記載のエチレン共重合体、請求項
26に記載の組成物、又は請求項
27に記載の架橋重合体を含有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年11月20日に提出された中国特許出願202011311765.9及び202011314968.3の利益を主張しており、この2つの出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、エチレン共重合体及びその製造方法に関し、より具体的には、本発明は、エチレンから誘導された構造単位と共役ジオレフィンから誘導された構造単位とを含有するエチレン共重合体及びその製造方法に関し、本発明はまた、前記エチレン共重合体を含有する組成物及び前記エチレン共重合体から誘導された単位を含有する架橋重合体に関し、本発明は、さらに、少なくとも1つの構成要素が前記エチレン共重合体、前記組成物又は前記架橋重合体を含有するタイヤに関する。
【0003】
[背景技術]
エチレンは、大量に使用され、入手が容易な単量体として、プラスチック産業で広く使用されている。共役ジオレフィン、特にブタジエンとイソプレンは、ゴムを合成するための最も重要な単量体である。ブタジエンは石油経路でエチレンを製造する過程の副生成物として、かつてはエチレンと価格が近い。最近、エチレン製造経路の変更により、ブタジエンの生産量が減少し、その価格が大幅に上昇している。それに比べてエチレンの価格は低く抑えられている。したがって、タイヤ用ゴムの原料としてエチレンを利用することは注目を集めており、原料コストを大幅に削減することができる。
【0004】
しかしながら、共役ジエンとα-オレフィンは重合機構が異なるため、共重合が困難であった。そのため、エチレンと共役ジエンの共重合を従来の触媒系で触媒することは極めて困難な課題であり、両者の共重合を実現することは、これまで学界と産業界が取り込んでいる。
【0005】
エチレンと共役ジオレフィンとの従来の共重合方法の主な問題は、製造される重合体中の共役ジオレフィン構造単位の含有量が低く、製造される重合体の主鎖の不飽和結合の含有量が高いことであり、これにより、耐候性、耐熱性、耐オゾン性等の物性を向上させることが困難である。
【0006】
そのため、触媒活性、重合体の分子量、及び重合体中の共役ジオレフィン構造単位の含有量を向上させるために、エチレンと共役ジオレフィンとの共重合に適した重合プロセスの開発が急務となっている。
【0007】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、共役ジオレフィン構造単位の含有量が高く、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位の含有量が高く、しかも、共重合体の主鎖の不飽和結合の含有量が低い、共役ジオレフィンから誘導された共役ジオレフィン構造単位を含有するエチレン共重合体を提供することである。
【0008】
[課題を解決するための手段]
本発明の第1態様によれば、本発明は、
エチレン共重合体であって、
エチレンから誘導されたエチレン構造単位と、共役ジオレフィンから誘導された共役ジオレフィン構造単位と、を含有し、該エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~45モル%であり、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位の含有量は20~40モル%であり、該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は95モル%以上であり、該エチレン共重合体の重量平均分子量は20,000~300,000である、エチレン共重合体を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、本発明は、式1で表される金属化合物から選択され成分Aとアルミノキサンである成分Bと、を含有する重合触媒の存在下で、エチレンと共役ジオレフィンとを接触させるステップを含むエチレン共重合体の製造方法を提供する。
【0010】
【0011】
(式1中、Mは、第4族の金属原子から選択され、
X1及びX2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン原子であり、
Rbは、第14族元素含有二価基であり、
L1及びL2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、式3~式6で表される基から選択され、
【0012】
【0013】
式3中、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルであり、
式4中、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルであり、
式5中、RC
1、RC
2、RC
3及びRC
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルであり、
式6中、RD
1、RD
2、RD
3及びRD
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルである。)
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法で製造されたエチレン共重合体を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、本発明は、エチレン共重合体と架橋剤を含有し、前記エチレン共重合体は本発明の第1態様又は第3態様に記載のエチレン共重合体である組成物を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第3態様に記載のエチレン共重合体から誘導された単位を含有する架橋重合体を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、本発明は、少なくとも1つの構成要素が本発明の第1又は第3態様に記載のエチレン共重合体、本発明の第4態様に記載の組成物、又は本発明の第5態様に記載の架橋重合体を含有するタイヤを提供する。
【0017】
[発明の効果]
本発明に係るエチレン共重合体は、共役ジオレフィン構造単位の含有量が高く、1,2-重合ビニル構造単位の含有量が高く、しかも、共重合体の主鎖の不飽和二重結合の含有量が低い。本発明に係るエチレン共重合体は、良好な架橋性能を持ち、架橋生成物は耐候性、耐熱性及び耐オゾン性に優れている。本発明に係るエチレン共重合体は、ゴム分野、特に車両用タイヤゴムの分野における使用の将来性が期待できる。
【0018】
本発明に係るエチレン共重合体の製造方法は、本発明に係るエチレン共重合体を製造することができるだけではなく、向上した触媒活性が得られ、生産効率を向上させ、工業的な量産に適している。
【0019】
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0020】
本発明の第1態様によれば、本発明は、エチレンから誘導されたエチレン構造単位と、共役ジオレフィンから誘導された共役ジオレフィン構造単位と、を含有するエチレン共重合体を提供する。
【0021】
本発明では、「エチレンから誘導された構造単位」とは、エチレンで形成され、かつ、エチレンと比べて、電子構造が変化する以外、原子の種類及び各原子の数が同じであるものを意味し、「共役ジオレフィンから誘導された構造単位」とは、共役ジオレフィンで形成され、かつ、共役ジオレフィンと比べて、電子構造が変化する以外、原子の種類及び各原子の数が同じであるものを意味する。
【0022】
本発明に係るエチレン共重合体では、前記共役ジオレフィンとは、分子構造に共役二重結合が含まれている化合物である。前記共役ジオレフィンは、式11で表される化合物から選択される1種又は2種以上であってもよい。
【0023】
【0024】
(式11中、R3、R4及びR5は、同一であるか又は異なり、それぞれ、水素及びC1-C5の直鎖又は分岐アルキルから選択される。)
本発明に係るエチレン共重合体では、前記共役ジオレフィンの具体例として、ブタジエン及び/又はイソプレンが含まれ得るが、これらに限定されない。好ましくは、前記共役ジオレフィンはブタジエンである。
【0025】
本発明に係るエチレン共重合体では、エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~45モル%、例えば25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45モル%であってもよい。好ましくは、エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~40モル%である。より好ましくは、エチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は30~35モル%である。
【0026】
本発明に係るエチレン共重合体では、前記共役ジオレフィン構造単位は、実質的に共役ジオレフィンの1,2-重合により形成された1,2重合構造単位であり、このため、本発明に係るエチレン共重合体では、1,2-重合構造単位の含有量が高く、共重合体の主鎖の不飽和二重結合の含有量が低い。本発明に係るエチレン共重合体では、該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は95モル%以上、好ましくは98モル以上%、より好ましくは100モル%である。本発明に係るエチレン共重合体では、該エチレン共重合体の主鎖の二重結合の含有量は一般に5モル%以下、好ましくは2モル%以下、より好ましくは0モル%である。エチレン共重合体の主鎖の二重結合は、例えば、共役ジオレフィンの1,4-重合、1,3-重合により形成された構造単位に由来してもよい。
【0027】
本発明では、1,2-重合構造単位とは、共役ジオレフィンの1,2-重合(即ち、1,2-付加)により形成された構造単位であり、1,4-重合構造単位とは、共役ジオレフィンの1,4-重合(即ち、1,4-付加)により形成された構造単位であり、1,3-重合構造単位とは、共役ジオレフィンの1,3-重合(即ち、1,3-付加)により形成された構造単位である。
【0028】
本発明に係るエチレン共重合体では、前記1,2-重合構造単位は、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロプロパン環を有する1,2-シクロプロパン環構造単位、及び共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロペンタン環を有する1,5-シクロペンタン環構造単位を含む。
【0029】
ブタジエンを例にして、前記1,2-重合ビニル構造単位は式14に示され、前記1,2-シクロプロパン環構造単位は式15に示され、前記1,5-シクロペンタン環構造単位は式16に示される。
【0030】
【0031】
本発明に係るエチレン共重合体では、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位の含有量が高い。本発明に係るエチレン共重合体の全量を基準にして、1,2-重合ビニル構造単位の含有量(即ち、ビニル含有量)は20~40モル%、例えば20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5又は40モル%であってもよい。好ましくは、本発明に係るエチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は20~35モル%である。より好ましくは、本発明に係るエチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は21~30モル%である。
【0032】
本発明に係るエチレン共重合体では、エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は55%以上に達し、好ましくは55~90%、例えば、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89又は90%である。好ましくは、エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は60~88%である。より好ましくは、エチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は63~85%である。
【0033】
本発明に係るエチレン共重合体では、該共重合体の共役ジオレフィン構造単位において、1,2-シクロペンタン環構造単位と1,2-シクロプロパン環構造単位とのモル比が、0.1~3:1、好ましくは0.3~2.5:1、より好ましくは0.4~2:1、さらに好ましくは0.5~1.8:1である。
【0034】
本発明では、エチレン共重合体の微細構造組成が核磁気共鳴分光法により測定される。
【0035】
本発明に係るエチレン共重合体では、1,2-重合ビニル構造単位の含有量が高いだけではなく、分子量が高い。本発明に係るエチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は20,000~300,000、好ましくは25,000~250,000、より好ましくは30,000~200,000、さらに好ましくは40,000~150,000である。本発明に係るエチレン共重合体では、該エチレン共重合体の分子量分布指数(Mw/Mn)は3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは1.5~3である。
【0036】
本発明では、分子量(g/mol)及び分子量分布指数は、単分散ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0037】
本発明に係るエチレン共重合体では、該エチレン共重合体のガラス転移温度(Tg)は-50℃~-15℃の範囲であってもよいが、好ましくは-40℃~-20℃の範囲である。
【0038】
本発明では、ガラス転移温度は示差走査熱量測定法(DSC)により測定される。
【0039】
本発明の第2態様によれば、本発明は、重合触媒の存在下で、エチレンと共役ジオレフィンとを接触させるステップを含むエチレン共重合体の製造方法を提供する。
【0040】
本発明に係る製造方法では、前記共役ジオレフィンとは、分子構造に共役二重結合が含まれている化合物を意味する。前記共役ジオレフィンは、式11で表される化合物から選択される1種又は2種以上であってもよい。
【0041】
【0042】
(式11中、R3、R4及びR5は、同一であるか又は異なり、それぞれ、水素及びC1-C5の直鎖又は分岐アルキルから選択される。)
本発明に係る製造方法では、前記共役ジオレフィンの具体例としては、ブタジエン及び/又はイソプレンが含まれ得るが、これらに限定されない。好ましくは、前記共役ジオレフィンはブタジエンである。
【0043】
本発明に係る製造方法では、前記重合触媒は成分Aと成分Bを含有する。
【0044】
前記成分Aは、式1で表される金属化合物から選択される。
【0045】
【0046】
(式1中、Mは、第4族の金属原子から選択され、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子であってもよい。好ましくは、式1中、Mはジルコニウム原子である。
式1中、X1及びX2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。好ましくは、式1中、X1及びX2はいずれも塩素原子である。
式1中、Rbは第14族元素の二価基である。式1中、Rbは、好ましくはケイ素含有二価基、より好ましくは式2で表される二価基であり、
【0047】
【0048】
式2中、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、C1-C10のアルキルである。前記C1-C10のアルキルは、C1-C10の直鎖アルキル、C3-C10の分岐アルキル及びC3-C10のシクロアルキルを含み、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル及びその各種の異性体、ヘキシル及びその各種の異性体、ヘプチル及びその各種の異性体、オクチル及びその各種の異性体、ノニル及びその各種の異性体、デシル及びその各種の異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されない。)
好ましくは、式2中、R1及びR2はいずれもメチルである。
【0049】
式1中、L1及びL2は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、式3~式6で表される基から選択される。
【0050】
【0051】
(式3中、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルである。)
本発明では、C1-C20のアルキルは、C1-C20の直鎖アルキル、C3-C20の分岐アルキル、及びC3-C20のシクロアルキルを含み、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル及びその各種の異性体、ヘキシル及びその各種の異性体、ヘプチル及びその各種の異性体、オクチル及びその各種の異性体、ノニル及びその各種の異性体、デシル及びその各種の異性体、ウンデシル及びその各種の異性体、ドデシル及びその各種の異性体、トリデシル及びその各種の異性体、テトラデシル及びその各種の異性体、ペンタデシル及びその各種の異性体、ヘキサデシル及びその各種の異性体、ヘプタデシル及びその各種の異性体、オクタデシル及びその各種の異性体、ノナデシル及びその各種の異性体、エイコシル及びその各種の異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0052】
一実施形態では、式3中、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5は同時に水素原子である。
【0053】
他の実施形態では、式3中、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルであり、かつ、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5は同時に水素原子ではならない。本実施形態では、RA
1、RA
2、RA
3、RA
4及びRA
5のうちの少なくとも1つ(好ましくは2つ)は、好ましくはC1-C10のアルキル、より好ましくはC1-C6のアルキル、さらに好ましくはC1-C3のアルキル、より好ましくはメチルであり、残りの基は水素原子である。
【0054】
式4中、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルである。
【0055】
一実施形態では、式4中、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5は、同時に水素原子である。
【0056】
他の実施形態では、式4中、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルであり、かつ、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5は、同時に水素原子ではならず、本実施形態では、RB
1、RB
2、RB
3、RB
4及びRB
5のうちの少なくとも1つ(好ましくは2つ、より好ましくはRB
2及びRB
4)は、好ましくはC1-C10のアルキル、より好ましくはC1-C6のアルキル、さらに好ましくはC1-C3のアルキル、より好ましくはメチルであり、残りの基は水素原子である。
【0057】
式5中、RC
1、RC
2、RC
3及びRC
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルである。
【0058】
好ましい一実施形態では、式5中、RC
1、RC
2、RC
3及びRC
4のうちの少なくとも1つ(好ましくは2つ、より好ましくはRC
1及びRC
3)は、C1-C20のアルキル、好ましくはC1-C6のアルキル、より好ましくはC1-C3のアルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルであり、残りの基は水素原子である。この好ましい実施形態によれば、1つのより好ましい例では、RC
1はメチルであり、RC
3はエチル又はn-プロピルであり、RC
2及びRC
4は水素原子である。
【0059】
式6中、RD
1、RD
2、RD
3及びRD
4は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立して、水素原子又はC1-C20のアルキルである。
【0060】
好ましい一実施形態では、式6中、RD
1、RD
2、RD
3及びRD
4のうちの少なくとも1つ(好ましくは2つ、より好ましくはRD
1及びRD
3)は、C1-C20のアルキル、好ましくはC1-C6のアルキル、より好ましくはC1-C3のアルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルであり、残りの基は水素原子である。この好ましい実施形態によれば、1つのより好ましい例では、RD
1はメチルであり、RD
3はエチル又はn-プロピルであり、RD
2及びRD
4は水素原子である。
【0061】
本発明に係る製造方法では、前記成分Aは、好ましくは、式7~式10で表される金属化合物から選択される1種又は2種以上である。
【0062】
【0063】
1つのより好ましい例では、前記成分Aは、式7及び式8で表される金属化合物から選択される。このより好ましい例によれば、本発明に係る方法は、エチレン共重合体中の共役ジオレフィンから誘導された共役ジオレフィン構造単位、及び共役ジオレフィンの1,2-重合により形成された構造単位の含有量を向上させるだけではなく、より高い触媒活性が得られ、製造されたエチレン共重合体は分子量がより高い。
【0064】
他のより好ましい例では、前記成分Aは、式9及び式10で表される金属化合物から選択される。このような好ましい例では、本発明に係る方法は、高い触媒活性を得る条件下で、より多くの共役ジオレフィンを1,2-重合により重合することができ、これによって、1,2-重合構造単位の含有量がより高いエチレン共重合体が得られる。
【0065】
本発明に係る製造方法では、前記成分Aとしての金属化合物は市販品として購入してもよいし、一般的な方法で製造されてもよい。
【0066】
本発明に係る製造方法では、前記成分Bは、アルミノキサン、好ましくは有機アルミノキサン、より好ましくはメチルアルミノキサンを含有する。好ましい一実施形態では、前記成分Bは、アルミノキサン、好ましくは有機アルミノキサン、より好ましくはメチルアルミノキサンである。
【0067】
本発明に係る製造方法では、前記成分Aと前記成分Bとのモル比は、1:0.1~5000であってもよいが、好ましくは1:1~3000、より好ましくは1:1~1000、さらに好ましくは1:10~1000、一層好ましくは1:100~800である。
【0068】
本発明に係る製造方法では、共役ジオレフィン1molに対して、前記成分Aの使用量は、0.1~100μmolであってもよいが、好ましくは1~80μmol、より好ましくは3~60μmol、さらに好ましくは5~30μmolである。
【0069】
本発明に係る製造方法では、エチレンと共役ジオレフィンとの接触は、-50℃~150℃の温度で行われてもよいが、好ましくは10~120℃、より好ましくは30~90℃、さらに好ましくは40~70℃の温度で行われる。本発明に係る製造方法では、エチレンと共役ジオレフィンとを接触して重合する際には、エチレンの圧力は0~100MPaであってもよいが、好ましくは2~50MPa、より好ましくは3~30MPa、さらに好ましくは5~10MPaであり、前記圧力はケージ(G)圧である。
【0070】
本発明に係る製造方法では、前記接触は、分子量調整剤の存在下で行われ、前記分子量調整剤の使用量により、製造されたオレフィン重合体の重量平均分子量は、20,000~300,000、好ましくは25,000~250,000、より好ましくは30,000~200,000、さらに好ましくは40,000~150,000である。前記分子量調整剤は、一般的なものであってもよいが、好ましくは水素ガスである。
【0071】
本発明に係る製造方法は、溶液重合により行われてもよい。溶液重合においては、使用可能な溶媒には、C6-C12の芳香族炭化水素、C6-C12のハロゲン化芳香族炭化水素、C5-C10の直鎖アルカン、及びC5-C10のシクロアルカン、例えば、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、n-ヘキサン、及びシクロヘキサンのうちの1種又は2種以上が含まれる。
【0072】
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法で製造されたエチレン共重合体を提供する。
【0073】
本発明の第2態様に記載の方法で製造されたエチレン共重合体は、共役ジオレフィン構造単位の含有量が高いだけではなく、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成された構造単位の含有量が高く、これによって、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体は、分子主鎖の不飽和二重結合の含有量が低く、良好な耐候性、耐熱性及び耐オゾン性を持つ。より重要なことに、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体は、1,2-重合ビニル構造単位の含有量が高いので、加硫性能により優れており、より速い加硫速度及びより高い加硫程度を発現する。
【0074】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は20~45モル%、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45モル%であってもよい。好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は25~40モル%である。より好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、前記共役ジオレフィン構造単位の含有量は30~35モル%である。
【0075】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、前記共役ジオレフィン構造単位は、実質的に共役ジオレフィンの1,2-重合により形成された1,2重合構造単位である。該エチレン共重合体中の共役ジオレフィン単位の全量を基準にして、前記1,2-重合構造単位の全量は、95モル%以上、好ましくは98モル以上%、より好ましくは100モル%である。本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、該エチレン共重合体の主鎖の二重結合の含有量は、一般には、5モル%以下、好ましくは2モル%以下、より好ましくは0モル%である。
【0076】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、前記1,2-重合構造単位は、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する1,2-重合ビニル構造単位、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロプロパン環を有する1,2-シクロプロパン環構造単位、及び共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロペンタン環を有する1,5-シクロペンタン環構造単位を含む。本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、1,2-重合ビニル構造単位の含有量は18~40モル%、例えば18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5又は40モル%であってもよい。好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は20~35モル%である。より好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は21~30モル%である。
【0077】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は、55%以上に達し、好ましくは55~90%、例えば、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89又は90%である。好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は60~88%である。より好ましくは、本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体中の共役ジオレフィン構造単位の全量を基準にして、前記1,2-重合ビニル構造単位の含有量は63~85%である。
【0078】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、該共重合体の共役ジオレフィン構造単位において、1,2-シクロペンタン環構造単位と1,2-シクロプロパン環構造単位とのモル比は、0.1~3:1、好ましくは0.3~2.5:1、より好ましくは0.4~2:1、さらに好ましくは0.5~1.8:1である。
【0079】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20,000~300,000であってもよいが、好ましくは25,000~250,000、より好ましくは30,000~200,000、さらに好ましくは40,000~150,000である。本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、該エチレン共重合体の分子量分布指数(Mw/Mn)は、3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは1.5~3である。
【0080】
本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体によれば、該エチレン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、-50℃~-15℃の範囲であってもよいが、好ましくは-40℃~-20℃の範囲である。
【0081】
本発明の第4態様によれば、本発明は、エチレン共重合体と架橋剤とを含有し、前記エチレン共重合体は本発明の第1態様又は第3態様に記載のエチレン共重合体である組成物を提供する。
【0082】
前記架橋剤は、エチレン共重合体中のビニルを架橋させ得る物質であってもよい。具体的には、前記架橋剤は、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、及び過酸化物のうちの1種又は2種以上であってもよい。好ましい一実施形態では、前記架橋剤は過酸化物、例えば、過酸化ジクミルである。
【0083】
本発明に係る組成物は、加硫を促進して、加硫時間を短縮させ、加硫温度を低下させ、加硫剤の使用量を減少させるために、加硫促進剤を含有してもよい。前記加硫促進剤は、一般的に使用されている上記の機能を達成させ得る物質、例えば、トリアリルイソシアヌレートであってもよい。本発明に係る組成物は、具体的な要件に応じて、他の成分、例えば酸化防止剤及びフィラーのうちの1種又は2種以上を含んでもよく、前記フィラーの好ましい例には、カーボンブラックが含まれ得るが、これに限定されない。
【0084】
本発明の第5態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は本発明の第3態様に記載のエチレン共重合体を架橋してなる架橋重合体を提供する。本発明の第5態様に記載の架橋重合体は、本発明の第1態様又は第3態様に記載のエチレン共重合体と架橋剤とを接触して架橋反応することにより得られ得る。
【0085】
本発明の第6態様によれば、本発明は、少なくとも1つの構成要素が本発明の第1態様に記載のエチレン共重合体、本発明の第4態様に記載の組成物、又は本発明の第5態様に記載の架橋重合体を含有するタイヤを提供する。
【0086】
以下、実施例を参照して本発明について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらにより制限されない。
【0087】
以下の実施例及び比較例では、重合体の分子量及び分子量分布指数(Mw/Mn)は、アジレント社製の1260 Infinity II高温ゲル透過クロマトグラフを用いて測定され、クロマトグラフィーカラムにはMIXD-Bカラム2本(300×7.5mm)、及びGuardカラム1本(50×7.5mm)が使用される。移動相はトリクロロベンゼンであり、流速は1mL/minであり、試料溶液の濃度は1mg/mLであり、注入量は200μLであり、試験温度は150℃であり、単分散ポリスチレンは標準試料とされる。
【0088】
以下の実施例及び比較例では、核磁気共鳴分光法試験には、市販品であるBruker製の400MHz核磁気共鳴装置が使用されており、重合体の微細構造を試験する際には、重水素o-ジクロロベンゼンは溶媒、テトラメチルシラン(TMS)は内部標準として使用される。ここで、「共役ジオレフィン構造単位」とは、共役ジオレフィンで形成された構造単位であり、「1,2-重合」とは、共役ジオレフィンが1,2-付加により重合することを意味し、「1,4-重合」とは、共役ジオレフィンが1,4-付加により重合することを意味し、「1,3-重合」とは、共役ジオレフィンが1,3-付加により重合することを意味し、「ビニル」とは、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成され側鎖二重結合を有する構造単位(ブタジエンを例にして、ビニルは
【0089】
【0090】
)であり、「シクロプロパン環」とは、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロプロパン環を有する構造単位(ブタジエンを例にして、シクロプロパン環は
【0091】
【0092】
)であり、「シクロペンタン環」とは、共役ジオレフィンの1,2-重合により形成されシクロペンタン環を有する構造単位(ブタジエンを例にして、シクロペンタン環は
【0093】
【0094】
)である。
【0095】
以下の実施例及び比較例は以下の金属化合物及び比較金属化合物に関する。
【0096】
【0097】
製造例1~4は金属化合物1~4を製造する。
【0098】
製造例1
金属化合物1の合成
反応フラスコにビス(2,5-ジメチルシクロペンタビチオフェン)-ジメチルシラン0.94g(2mmol)とエチルエーテル50mLを加え、-78℃で1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液2.5mL(4mmol)を滴下した。室温(25℃)で6時間撹拌した後、-40℃に降温し、四塩化ジルコニウム0.466g(2mmol)をゆっくりと加えた。一晩撹拌した。濾過して、固体をエチルエーテルで洗浄した。生成物をジクロロメタンで再結晶した。収率:45重量%。
H1-NMR(CDCl3, 400 MHz):δppm 6.75 (q, 4H),2.51 (d, 12H),1.82 (s, 6H)。
【0099】
製造例2
金属化合物4の合成
ビス(2,5-ジメチルシクロペンタビチオフェン)-ジメチルシランをビス(シクロペンタビチオフェン)-ジメチルシラン2mmolに変更した以外、金属化合物1と同様な合成方法を採用した。収率:57重量%。
H1-NMR(CDCl3, 400 MHz):δppm 7.15 (d, 4H),7.10 (d, 4H),1.80 (s, 6H)。
【0100】
製造例3
金属化合物2の合成。
【0101】
反応フラスコにビス(2-メチル-5-n-プロピル-3-(9-フェナントレニル)-6-ヒドロ-シクロペンタ[2,3-b]チオフェン-6)-ジメチルシラン1.02g(2mmol)とエチルエーテル50mLを加え、-78℃で1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液2.5mL(4mmol)を滴下した。室温(25℃)で6時間撹拌した後、四塩化ジルコニウム0.466g(2mmol)をゆっくりと加えた。一晩撹拌した。濾過して、固体をエチルエーテルで洗浄した。濾液を乾固まで吸引濾過して、目的の生成物を得た。収率:56重量%。
H1-NMR(CDCl3, 400 MHz):δppm 7.15-8.90 (m, 18H),6.62(s, 2H),1.15-2.95(m, 14H),1.08(s, 6H),0.92 (t, 6H)。
【0102】
製造例4
金属化合物3の合成
ビス(2,5-ジメチル-3-フェニル-6-ヒドロ-シクロペンタ[2,3-b]チオフェン-6)-ジメチルシランを、ビス(2-メチル-5-エチル-3-(9-フェナントレニル)-6-ヒドロ-シクロペンタ[2,3-b]チオフェン-6)-ジメチルシラン2mmolに変更した以外、金属化合物5と同様な合成方法を採用した。収率:61重量%。
H1-NMR (CDCl3, 400 MHz):δppm 7.10-8.85 (m, 18H),6.60(s, 2H),1.85-2.80(m, 10H),1.10(s, 6H),0.85(s, 6H)。
【0103】
実施例1~6は、本発明に係るエチレン重合体及びその製造方法を説明する。
【0104】
実施例1
ステンレス鋼反応釜500mLを窒素ガスで十分に置換し、その後、水素ガスで置換し、トルエン120g、メチルアルミノキサン(10重量%のトルエン溶液)8mL、ブタジエン25.0gを加え、次に、水素ガス0.44kg/cm2Gを加えた。60℃で7.8kg/cm2Gエチレンを用いて液相と気相を飽和にした。次に、トルエンに予め溶解した金属化合物1を5μmol加えて、重合を開始させた。エチレンガスを連続的に供給して、総圧力を7.8kg/cm2Gに保持した。15分間重合後、少量のメタノールを加えて反応を停止した。塩酸(HCl濃度は2重量‰)を大量加えたエタノールに生成物を注入して沈殿させ、濾過して固体を分離し、分離した固体をエタノールで洗浄した。洗浄した固体を真空オーブンで重量が減少しないまで乾燥し、本発明に係るエチレン共重合体を得た。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0105】
比較例1
メチルアルミノキサンではなく、トリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(トリイソブチルアルミニウムの濃度は1M)2.5mLを用いたこと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.03mmolを金属化合物1とともにトルエンに溶解したものを重合反応釜に添加したこと以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0106】
比較例2
金属化合物1を比較例金属化合物1に変更した以外、比較例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0107】
比較例3
金属化合物1を比較例金属化合物1に変更した以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0108】
実施例2
金属化合物1を金属化合物2に変更した以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。製造されたエチレン共重合体の性質パラメータを表2に示す。
【0109】
比較例4
メチルアルミノキサンではなく、トリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(トリイソブチルアルミニウムの濃度は1M)2.5mLを用いたこと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.03mmolを金属化合物2とともにトルエンに溶解したものを重合反応釜に添加したこと以外、実施例2と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0110】
比較例5
金属化合物2を比較例金属化合物2に変更した以外、実施例2と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0111】
実施例3
500mLステンレス鋼反応釜を窒素ガスで十分に置換し、その後、水素ガスで置換し、トルエン120g、MAO(10重量%トルエン溶液)7.5mL、ブタジエン35gを加え、次に、水素ガス0.44kg/cm2Gを加え、60℃で7.8kg/cm2Gエチレンを用いて液相と気相を飽和にした。次に、トルエンに予め溶解した金属化合物2 5μmolを用いて、重合を開始させた。エチレンガスを連続的に供給して、総圧力を7.8kg/cm2Gに保持した。15分間重合後、少量のメタノールを加えて反応を停止した。塩酸を大量加えたエタノール(2重量‰、塩酸はHCl換算)に生成物を注入して沈殿させ、濾過して共重合体を分離し、エタノールで洗浄した。重量が減少しないまで真空オーブンで乾燥し、本発明に係るエチレン共重合体を得た。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0112】
比較例6
金属化合物2を比較例金属化合物2に変更した以外、実施例3と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0113】
実施例4
金属化合物1を金属化合物3に変更した以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0114】
比較例7
メチルアルミノキサンではなく、トリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(トリイソブチルアルミニウムの濃度は1M)2.5mLを用いたこと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.03mmolを金属化合物3とともにトルエンに溶解したものを重合反応釜に添加したこと以外、実施例3と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0115】
比較例8
金属化合物3を比較例金属化合物3に変更した以外、実施例3と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0116】
比較例9
金属化合物3を比較例金属化合物3に変更した以外、実施例3と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0117】
実施例5
金属化合物1を金属化合物4に変更した以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0118】
比較例10
メチルアルミノキサンではなく、トリイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(トリイソブチルアルミニウムの濃度は1M)2.5mLを用いたこと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.03mmolを金属化合物4とともにトルエンに溶解したものを重合反応釜に添加したこと以外、実施例5と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0119】
比較例11
金属化合物4を比較例金属化合物4に変更した以外、実施例5と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0120】
実施例6
金属化合物1を金属化合物4に変更した以外、実施例1と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0121】
比較例12
金属化合物4を比較例金属化合物5に変更した以外、実施例6と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0122】
比較例13
金属化合物4を比較例金属化合物6に変更した以外、実施例6と同様な方法でエチレン共重合体を製造した。具体的な実験条件を表1、製造されたエチレン共重合体の性質パラメータの試験結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
表2の結果、本発明に係るエチレン共重合体は、分子量が向上しており、分子量分布指数が狭いだけではなく、共役ジオレフィン構造単位の含有量が向上し、また、該エチレン共重合体の主鎖にはほぼ不飽和基が存在しないことが明らかになった。表2の結果、また、本発明に係るオレフィン重合方法は、本発明に係るエチレン共重合体を製造できるだけでなく、触媒活性が向上し、生産効率が向上することが明らかになった。
【0126】
試験例1~2
実施例2及び4で製造されたエチレン共重合体をそれぞれ、表3に記載の処方に応じて、カーボンブラック、過酸化物及び加硫助剤とともにオープンロールにてブレンドした。アルファテクノロジーズ社から購入したMDR加硫装置を用いて、160℃の温度でブレンドの加硫特性を試験し、加硫速度を評価し、試験時間を20分間とした。試験結果を表4に示す。
【0127】
試験比較例1~2
試験例1~2と同様な方法で、比較例5及び9で製造されたエチレン共重合体の加硫特性をそれぞれ試験し、試験結果を表4に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
表4の加硫特性の試験結果から明らかに、本発明に係るエチレン共重合体は、加硫時にトルクの上昇がより速く、加硫速度がより速く、加硫程度がより高かった。
【0131】
以上の詳細な説明は本発明の好適な実施形態であるが、本発明はこれらに限定されない。本発明の技術的構想の範囲で、各技術的特徴を任意の他の適切な方式で組み合わせることを含め、本発明の技術案について多くの簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせも本発明で開示された内容とみなすべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。