(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】眼科用顕微鏡装置のための画像露光技術
(51)【国際特許分類】
A61B 3/13 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61B3/13
(21)【出願番号】P 2023544398
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2021051481
(87)【国際公開番号】W WO2022156904
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521511575
【氏名又は名称】ハーグ-シュトライト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】アライン ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ グロール
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131332(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105411(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181554(WO,A1)
【文献】特開2015-029865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用顕微鏡装置において画像露光を制御する方法であって、前記眼科用顕微鏡装置はカメラ(22)および照明光源(4)を有し、前記方法は、
第1露光パラメータを用いて前記カメラ(22)でカメラ画像(M)を記録するステップと、
エッジ検出を用いて、前記カメラ画像(M)の少なくとも1つの第1サブ領域と少なくとも1つの第2サブ領域とを識別するステップであって、前記第1サブ領域は前記第2サブ領域よりも高いエッジ密度を有する、ステップと、
前記第1サブ領域の画素輝度を前記第2サブ領域の画素輝度よりも強く重み付けすることにより、前記カメラ画像(M)の輝度パラメータ(B)を計算するステップと、
前記輝度パラメータ(B)に応じて、前記第1露光パラメータを調整して第2露光パラメータを取得するステップと、
前記第2露光パラメータを用いて
、調整された画像を
前記カメラ(22)で記録するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1および第2サブ領域を決定するステップが
、エッジ強度画像(E、E´)
の画素(i,j)の画素値E
ij
を計算するステップを含
み、
前記画素値E
ij
は、前記カメラ画像、または、前記カメラ画像から計算されたグレースケール画像(G)のそれぞれの画素(i,j)における不連続性の存在を示す画素値であり、
前記エッジ強度画像(E、E´)は、それぞれの画素における不連続性の存在を示す画素値を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッジ強度画像(E、E´)は、前記カメラ画像(M)、または、前記カメラ画像(M)から導出された画像に離散畳み込み演算子を適用して計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2サブ領域を識別するステップにおいて、前記画像の異なる所定の部分に異なる重みが割り当てられ、前記第1サブ領域および前記第2サブ領域を識別する前に、前記エッジ密度が前記異なる重みで重み付けされる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2サブ領域を識別するステップにおいて、前記画像の異なる所定の部分に異なる重みが割り当てられ、前記第1サブ領域および前記第2サブ領域を識別する前に、前記エッジ密度が前記異なる重みで重み付けされ、
前記エッジ強度画像(E、E´)
の画素値E´
ij
とフィルタ画像(F)
の画素値F
ij
とを乗算することにより重み画像(W、W´)
の画素値W
ij
を計算するステップを含み、
W
ij
=E´
ij
・F
ij
であり、前記フィルタ画像(F)
の前記画素値F
ij
は、前記画像の前記所定の部分を示
す、請求項2または請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エッジ密度が、前記画像の中心に近い部分が前記中心から遠い部分よりも強く重み付けされる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記重み画像(W、W´)を前記カメラ画像(M)または前記カメラ画像(W)から導出された画像と乗算するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記導出された画像が、前記カメラ画像(M)のグレースケール画像(G)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記重み画像(W、W´)と前記カメラ画像(M)とを乗算する前に、前記重み画像を、前記画素値の合計が所定の予め定義された値に等しくなるようにスケーリングすることによって正規化し、
B=f
1(Σ
i,jf
2(W
ij・G
ij))
から輝度パラメータBを計算し、
ここで、f
1およびf
2は単調関数である、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記カメラ画像(M)のグレースケール画像(G)を計算するステップを含み、前記第1および第2サブ領域が前記グレースケール画像(G)を用いて識別される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記輝度パラメータ(B)に応じて、
前記照明光源(4)の輝度、
前記照明光源(4)のパルス長、
前記眼科用顕微鏡装置の開口径、
前記カメラ(22)のゲイン
前記カメラ(22)のサンプリング時間、
の
露光パラメータの少なくとも1つを調整するステップを含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
照明光源(4)と、
カメラ(22)と、
前記照明光源(4)および前記カメラ(22)に接続された制御部(20)であって、前記制御部(20)が請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合されている、制御部(20)と、
を備える、眼科用顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用顕微鏡装置における画像露光を制御する方法、およびこの方法を実行するように適合された制御部を備えた眼科用顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スリットランプ顕微鏡や眼底カメラなどの眼科用顕微鏡装置は、被検眼を照明するためのスリットランプなどの照明光源と、被検眼を観察するための顕微鏡を備えている。多くの場合、顕微鏡にはカメラも含まれている。
【0003】
カメラで画像を記録する際、露光時間、開口幅、ゲイン、照明時間などを自動的に調整し、露光補正を行うことがある。例えば、記録された画像の平均輝度値を算出し、この平均輝度値が所望の値になるように露光パラメータを変更する。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、改善された画質を提供する上記のタイプの方法および顕微鏡を提供することである。
【0005】
この問題は、独立請求項の方法および顕微鏡によって解決される。
【0006】
したがって、カメラおよび照明光源を有する眼科用顕微鏡装置における画像露光を制御する方法は、少なくとも以下のステップを含む。
【0007】
- 第1露光パラメータを使用してカメラでカメラ画像を記録する:「カメラ画像」は、例えば、解像度および/または圧縮の変更、および/または第1の画像処理ステップの適用により、カメラ自体により記録された原画像、または、そこから派生した画像とすることができる。
【0008】
- エッジ検出を使用して、カメラ画像(M)の少なくとも1つの第1サブ領域と少なくとも1つの第2サブ領域を識別し、第1サブ領域は第2サブ領域よりも高いエッジ密度を有する。サブ領域は、例えば、カメラ画像の(場合によってはダウンスケールされた)画素の特定のサブセットに対応する。
【0009】
- 第1サブ領域における画素の輝度を第2サブ領域における画素の輝度よりも強く重み付けすることによって、カメラ画像の輝度パラメータを計算する。換言すれば、カメラ画像の画素Aが第1サブ領域の画素であり、カメラ画像の画素Bが第2サブ領域の画素である場合、画素Aの輝度は画素Bの輝度よりも輝度パラメータに強く影響する。例えば、画素Bの輝度は完全に無視されるか、または、輝度パラメータへの影響が弱くなるようにスケールダウンされる場合がある。
【0010】
- 輝度パラメータに応じて、第1露光パラメータが調整され、第2露光パラメータが得られる。例えば、輝度パラメータが低すぎる場合、露光時間、照明強度、開口径、および/またはカメラゲインを増加させることができる。パラメータの少なくとも1つ、または、それらのいくつかを調整できる。
【0011】
- 第2露光パラメータを使用して、調整された画像がカメラで記録される。
【0012】
この方法は、眼科顕微鏡検査では被写界深度が浅く、通常、対象領域またはその一部しかカバーしないという理解に基づいている。シーンのかなりの部分は、通常、焦点が合っていないため、対応する画像領域において鋭い画素強度の変化が見られない。
【0013】
したがって、輝度パラメータを計算するために、カメラ画像のエッジの多いサブ領域を均一なサブ領域よりも強く重み付けすることにより、対象のサブ領域に対して、より良い露光を達成することができる。この結果、画像のより「均一な」部分が露光不足または露光過剰になる可能性があるが、このような部分は一般的に重要ではない。
【0014】
本方法のステップは、例えば、顕微鏡の制御部によって自動的に実行されることが好ましい。
【0015】
第1および第2サブ領域を決定するステップは、それぞれの画素におけるエッジの存在を示す画素値を有するエッジ強度画像を計算するステップを含んでよい。
【0016】
このようなエッジ強度画像は、例えば、ソーベルフィルタやラプラスフィルタなどの離散畳み込み演算子を用いて計算することができる。この演算は、例えば、カメラ画像、または、カメラ画像のグレースケールバージョンおよび/またはカメラ画像の縮小バージョンなど、そこから導出された画像に対して実行することができる。次に、エッジ強度画像は、例えば、空間平滑化またはダウンスケーリングによって空間的に平均化され、エッジの強度と密度の両方を反映する画像を得ることができる。
【0017】
第1および第2サブ領域を決定するステップでは、画像の異なる所定の部分に異なる重みを割り当ててもよい。例えば、画像の中心に近い部分は、中心から遠い部分よりも強く重み付けされてもよい。そして、第1サブ領域と第2サブ領域とを識別する前に、エッジ密度を異なる重みで重み付けする。換言すれば、異なる部分は異なる重要性を得ることになる。例えば、画像の中心をより強く重み付けすることで、計算された輝度パラメータは、画像の中心にあるエッジ構造に対してより敏感になる。
【0018】
本方法では、焦点が合っている部分、すなわち、エッジの密度が高い部分に露光制御を集中させることができる。他の領域は、もっと大きくてもよいが、多かれ少なかれ均一であるため、輝度パラメータを計算する際に、あまり強く加重されないか、全く加重されない。これは、大きく均一な領域が露光パラメータを支配する可能性がある従来の露光制御方法とは対照的である。
【0019】
本発明は、また、照明光源、カメラ、および制御部を有する眼科用顕微鏡装置、特に、スリットランプに関する。制御部は、照明光源およびカメラに接続され、本発明の方法を実行するように(例えば、プログラミングおよび/またはハードウェアによって)適合されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下の詳細な説明を考慮することにより、より良く理解され、上記以外の目的も明らかとなるであろう。このような説明は、添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、スリットランプ顕微鏡の斜視図である。
【
図2】
図2は、顕微鏡の機能ブロック回路図である。
【
図3】
図3は、顕微鏡の光学系の一部の概略図である。
【
図4】
図4は、カメラによって記録された画像のグレースケールバージョンである。
【
図5】
図5は、本方法により算出された重み画像である。 注:
図4および
図5は印刷用にディザリングされている。実際の画像は、例えば、真のスカラー画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
2つの画素ベースの画像を「乗算する」とは、第1画像の各画素値と第2画像の対応する画素値とを乗算して、結果として得られる画像の各画素値を計算することと理解される。オプションとして、第1画像の各画素が第2画像の定義された画素に割り当てられるように、または、その逆になるように、このような操作の前に画像は再スケーリングされてもよい。
【0022】
画像の一方が多成分画素値(例えば、RGB値)を有し、第2画像がスカラー画素値を有する場合、乗算は、例えば、第1画像の各多成分画素値と第2画像の画素値とを乗算することからなり、その結果、再び多成分画素値を有する画像が得られる。別の変形例では、乗算は、最初に、例えば平均化演算を使用して、第1画像の画素の多成分画素値を単一の値に結合し、その後、単一の値と第2画像の画素値との乗算であってもよく、この場合、結果として生じる画像はスカラー画素値を有する。
【0023】
「エッジ密度」という用語は、画像の所与のサブ領域における画素強度の不連続の数と大きさに相関する任意の尺度である。例えば、以下に説明するような離散ラプラス変換の値、所定の周波数以上の2Dフーリエスペクトルのパワーなどである。
【0024】
ハードウェア
図1は、眼科用顕微鏡装置の一例としてスリットランプ顕微鏡を示す。この装置は顕微鏡2とスリットランプのような照明光源4を備える。これらの要素は、例えば、ピボット軸6を中心に回動させることができ、被験者の眼を観察するために使用される。
【0025】
被験者が頭を乗せるためのヘッドレスト8を設けてもよい。
【0026】
本装置は、さらに、好適にはタッチスクリーンである外部ディスプレイ10を有してよい。
【0027】
顕微鏡装置のユーザは、ディスプレイ10上で、または顕微鏡2の接眼レンズ12を使用して直接、被検者の眼の画像を見ることができる。
【0028】
図2は顕微鏡装置の機能ブロック回路図である。本装置は、例えば、適切なメモリを備え、装置の機能を提供するようにプログラムされたマイクロプロセッサである制御部20を備える。制御部20は、装置自体に内蔵されていてもよいし、装置の外部に設けられていてもよい。
【0029】
制御部20は、照明光源4、顕微鏡2の電子カメラ22、および顕微鏡2の結像光学系の調整可能な開口部など、装置のさらなる部分24に接続されている。
【0030】
制御部20は、外部ディスプレイ10および/または内部ディスプレイ26(後述)にも接続することができる。
【0031】
図3は、顕微鏡2の光学系の概略図である。顕微鏡2は、被検者の眼球32の像を撮影するための対物光学系30を備える。対物光学系30は、制御部20によって制御される可変倍率および/または可変開口を有することができる。
【0032】
対物光学系30からの光はビームスプリッタ34を通り、その一部が接眼レンズ12に送られ、ユーザ36が直接見ることができる。
【0033】
ビームスプリッタ34は、対物光学系30からの光の一部を、例えばCCDカメラであってもよいカメラ22に反射する。
【0034】
さらに、顕微鏡装置2は、上述した内部ディスプレイ26を備えてよい。内部ディスプレイ26からの光はビームスプリッタ34に送られ、その一部が接眼レンズ12に反射され、内部ディスプレイ26に表示された情報を見ることができる。
【0035】
露光制御
制御部20は、カメラ22で画像を記録する際に適切な露光パラメータを自動的に選択するように適合され、プログラムされている。これらのパラメータは、以下のうちの1つ以上とすることができる。
【0036】
- 照明光源2の輝度:この輝度は、例えば、照明光源2を流れる電流を調整することによって調整することができる。
【0037】
- 照明光源2のパルス長:照明光源2は、画像を記録する間、パルスモードで動作させることができる。すなわち、カメラ22によって1つのフレームを記録する間に、1つまたは複数の光パルスを発することができる。その場合、フレームを記録している間の光パルスの総時間を調整して、適切な露光を得ることができる。
【0038】
- 顕微鏡の開口径:顕微鏡2が前述のように調整可能な開口を備えている場合、制御部20により開口の直径を変更し、露光量を減少または増加させることができる。
【0039】
- カメラのゲイン。
【0040】
- カメラのサンプリング時間、すなわち、1枚の画像を撮影する間の積分時間。
【0041】
適切な露光パラメータを求めるために、制御部20は、まず、カメラ22で「カメラ画像」を撮影する。このカメラ画像から、後述するように輝度パラメータBを算出する。輝度パラメータBが、画像の輝度が十分でないことを示す場合、制御部20は、上述の露光パラメータの1つ以上を増加させ、カメラ22によって「調整画像」を撮影する。
【0042】
特に、制御部20は、1つまたは複数の露光パラメータを変更することによって、カメラ22によって撮影された複数の連続する画像の輝度パラメータBを所望の値に調整しようとする制御ループを実施することができる。
【0043】
輝度パラメータの計算
本方法は、カメラによって記録された画像から、少なくとも1つの輝度パラメータBを測定することに基づいている。以下では、このパラメータを計算する手順について詳しく説明する。
【0044】
ステップ1:カメラ画像の記録
第1のステップでは、カメラ22によってカメラ画像Mが記録される。カメラ画像は、カメラによって記録された画像の画素ベースの表現である。例えば、カラー画像、グレースケール画像、擬似カラー画像などである。上述したように、カメラ22によって撮影された生の画像であってもよいし、第1の画像処理ステップによって、この生の画像から導出されてもよい。
【0045】
ステップ2:グレースケール画像の計算
次のステップでは、カメラ画像M、すなわち各画素Gij(i=1...N、j=1...M)が所定の画素領域における「輝度」を示すスカラー値である画像から、グレースケール画像Gを計算することができる。カメラ画像Mがカラー画像である場合、グレースケール画像Gは、例えば、カメラ画像MのRGB値の加重平均から計算することができる。
【0046】
ステップ3:エッジ強度画像の計算
次のステップでは、例えば、グレースケール画像G(グレースケール画像が計算されている場合)から、または、カメラ画像Mから直接、エッジ強度画像Eが計算される。エッジ強度画像Eの画素値Eijは、Gijとその隣接画素との間の不連続性の存在を示す。
【0047】
例えば、エッジ強度画像Eは、2次元離散ラプラス演算子Dを用いた畳み込み演算で、結果の絶対値をとることにより、グレースケール画像Gから計算される。
Eij=|(D*G)ij| (1)
【0048】
離散ラプラス演算子Dは、例えば、適切なカーネルとの畳み込みを使用して計算され、カーネルは、画素の値とその隣接画素との間の重み付けされた差分を計算する。例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Discrete_Laplace_operatorを参照のこと。ラプラシアンは、画像の2次空間微分を2次元等方的に測定したものである。ラプラシアンは、画像の2次空間導関数の2次元等方的尺度(2D isotropic measure)であり、強度が急激に変化する領域を強調する。
【0049】
絶対離散ラプラス演算子Dを使用する代わりに、Prewitt、Roberts、Sobel、Scharrなどの他のエッジセンシティブフィルタを使用することもできる。現在のところ、Scharrが好ましい。また、エッジ強度画像は、例えばダウンスケーリングによって空間的に平均化され、エッジの強度と密度の両方を反映するフィルタ処理された画像を得ることができる。
【0050】
エッジ強度画像は、カメラ画像Mから直接計算することもでき、これにより、例えば、グレースケール空間では明らかでない色相や彩度のエッジを検出することができることに注意されたい。
【0051】
完全なエッジ強度画像を計算する代わりに、例えば、カメラ画像を複数のサブ領域に分割し、各サブ領域のフーリエ変換を計算し、最も強い高周波数スペクトル成分を持つものを特定することにより、エッジ検出は、一般的に、高いエッジ密度を有するカメラ画像の少なくとも1つの領域と低いエッジ密度を有する別の領域を識別するために使用することができる。
【0052】
ステップ4:エッジ強度画像のオフセット
オプションのステップ4では、エッジ強度画像をある固定値だけオフセットする。
E´=E+off (2)
【0053】
これにより、エッジの密度や強度が低い領域でも、最終的な露光への影響は最小限に抑えられる。
【0054】
オプションのステップ5では、エッジ強度画像E(またはE´)に、画像のエッジよりも中央の方が高い値を持つフィルタ画像Fを画素単位で乗算する。このステップの結果が重み画像Wである。
Wij=E´ij・Fij (4)
【0055】
フィルタ画像Fは、例えば、画像を中心とする値のガウス分布であってもよい。
【数1】
ここで、形状変数k>0である。
【0056】
あるいは、フィルタ画像Fは、画像の特定の予め定義された部分を優先し、他の部分の重要性を低下させる他の任意の画素分布とすることができる。好適には、画像の中心で最も高い画素値Fijを有し、画素値は画像の中心からの距離が増加するにつれて単調に減少する。
【0057】
ステップ6:正規化
前のステップの結果、重み画像Wは正規化されてもよく(正規化が方法の別のステップで実行されない限り)、すなわち、その画素値は、それらの合計が所定の予め定義された値(すなわち、カメラ画像に依存しない値)、特に1に等しくなるようにスケーリングされる。例えば、正規化重み画像W´は次のように計算できる。
【数2】
【0058】
ステップ7:輝度パラメータの計算
正規化された重み画像W´を用いて、輝度パラメータBは、重み画像によって与えられる重みで、グレースケール画像Gの全画素の重み付けされた和として計算することができる。
B=Σi,jWij・Gij (7)
【0059】
輝度パラメータBは、グレースケール画像Gの画素の輝度の重み付けされた和であり、エッジ構造にある画素ほど重みが高く、(ヴィネットが使用されている場合は)画像の中心などに近い画素ほど重みが高くなる。
【0060】
グレースケール画像Gから輝度パラメータBを計算する代わりに、例えば、カメラ画像Mとの直接の乗算から、再度その画素値を重み付けされた画像Wの画素値で重み付けすることによって、計算されてもよい。
【0061】
画像の解像度
上記の輝度値の計算例では、すべての画像の解像度が同じであると仮定した。
【0062】
しかしながら、様々な画像の解像度が異なる可能性があることに注意しなければならない。個々のステップ間および/または個々の画像を数学的に結合する際に、マッピング演算を使用することができる。
【0063】
例えば、カメラ画像Mの解像度は必ずしもカメラの解像度と同じではない。例えば、カメラによって記録された画像の一部がカットされた場合(例えば、正方形でないカメラの正方形領域のみが使用された場合)、および/または、カメラの画像の解像度が、高速処理のためにカメラ画像Mを導出するためにダウンスケールされる場合がある。
【0064】
同様に、エッジ強度画像Eは、オフセット、ヴィネット、正規化、および/または輝度パラメータの計算の前に、ダウンスケールされてもよい。これは、エッジ強度を結合されたエッジ強度/密度情報に変える空間平均化の方法と見なすことができる。このようなダウンスケーリングの利点は2つある。一方では、処理が速くなる。一方では、カメラ画像Mのエッジ構造に近い画素は、たとえエッジ構造のすぐ近くでなくても、より大きな重みが与えられる。
【0065】
例
図4は、スリットランプ顕微鏡で撮影した(ディザリングされた)グレースケール画像Gである。この画像は、スリット照明によって強調された角膜の断面に対応するエッジの多い領域を示している。
【0066】
図5は、
図4のグレースケール画像から上記の手順で計算された重み画像Wを示している。見てわかるように、
図4のエッジの多い構造内の中央部で高い(明るい)値を持つ。
【0067】
注意事項
上記ステップ3~5において、エッジ検出は、高いエッジ密度を有するカメラ画像の少なくとも1つの「第1サブ領域」を識別するために使用される。この第1サブ領域は、例えば、高い値を有するエッジ強度画像EまたはE´の画素に対応するか、または、2Dフーリエ変換に基づくエッジ検出が使用される場合、最も強い高周波スペクトル成分を有するサブ領域に対応する。同様に、低いエッジ密度を有する少なくとも1つの「第2サブ領域」が識別される。この第2サブ領域は、例えば、低い値を有するエッジ強度画像EまたはE´の画素に対応するか、または、2Dフーリエ変換に基づくエッジ検出が使用される場合、最も低い高周波スペクトル成分を有するサブ領域に対応する。
【0068】
第1および第2サブ領域の識別処理は、ステップ5のように、画像の所定の部分に割り当てられ、ステップ4からの重みと乗算される第2の重みのセットを使用してもよい。ここで、「所定の部分」とは、その位置がカメラ画像Mの内容に依存しない部分である。
【0069】
上記の例では、フィルタ画像Fの画素は、より強く重み付けされるべき部分において高い値を有するという点で、これらの所定の部分を示している。式(4)を計算する際、エッジ密度画像EまたはE´によって具現化されるエッジ密度は、フィルタ画像Fによって具現化される重みを用いて、画像の所定の部分の異なる重みを用いて重み付けされる。具体例では、画像の中心に近い部分が、中心から遠い部分よりも強く重み付けされる。
【0070】
特に、第1および第2サブ領域の識別処理は、第1サブ領域として、画像の中心に近いサブ領域を優先することができる。換言すれば、画像の中心に近い部分は、中心から遠い部分よりも強く重み付けされる。
【0071】
次に、ステップ6および7は、第1サブ領域の画素輝度を第2サブ領域の画素輝度よりも強く重み付けすることにより、カメラ画像の輝度パラメータBを計算する。この例では、グレースケール画像の画素の重み付け和の平均を計算する。
【0072】
より一般的な実施形態では、式(7)は次のように置き換えることができる。
B=f1(Σi,jf2(Wij・Gij)) (7)
ここで、f1およびf2は単調関数である。換言すれば、輝度パラメータは積Wij・Gijに非線形に依存する可能性がある。
【0073】
本発明の現時点で好ましい実施形態を図示し説明したが、本発明はこれらに限定される
ものではなく、特許請求の範囲内で様々に具体化および実施できることを明確に理解され
たい。
[構成1]
眼科用顕微鏡装置において画像露光を制御する方法であって、前記眼科用顕微鏡装置はカメラ(22)および照明光源(4)を有し、前記方法は、
第1露光パラメータを用いて前記カメラ(22)でカメラ画像(M)を記録するステップと、
エッジ検出を用いて、前記カメラ画像(M)の少なくとも1つの第1サブ領域と少なくとも1つの第2サブ領域とを識別するステップであって、前記第1サブ領域は前記第2サブ領域よりも高いエッジ密度を有する、ステップと、
前記第1サブ領域の画素輝度を前記第2サブ領域の画素輝度よりも強く重み付けすることにより、前記カメラ画像(M)の輝度パラメータ(B)を計算するステップと、
前記輝度パラメータ(B)に応じて、前記第1露光パラメータを調整して第2露光パラメータを取得するステップと、
前記第2露光パラメータを用いて、前記カメラ(22)で調整された画像を記録するステップと、
を含む方法。
[構成2]
前記第1および第2サブ領域を決定するステップが、それぞれの画素における不連続性の存在を示す画素値を有するエッジ強度画像(E、E´)を計算するステップを含む、構成1に記載の方法。
[構成3]
前記エッジ強度画像(E、E´)は、前記カメラ画像(M)、または、前記カメラ画像(M)から導出された画像に離散畳み込み演算子を適用して計算される、構成2に記載の方法。
[構成4]
前記第1および第2サブ領域を識別するステップにおいて、前記画像の異なる所定の部分に異なる重みが割り当てられ、前記第1サブ領域および前記第2サブ領域を識別する前に、前記エッジ密度が前記異なる重みで重み付けされ、特に、前記画像の中心に近い部分が前記中心から遠い部分よりも強く重み付けされる、構成1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
[構成5]
前記エッジ強度画像(E、E´)とフィルタ画像(F)とを乗算することにより重み画像(W、W´)を計算するステップを含み、前記フィルタ画像(F)が前記画像の前記所定の部分を示す画素値を有する、構成4および構成2または構成3のいずれかに記載の方法。
[構成6]
前記重み画像(W、W´)を前記カメラ画像(M)または前記カメラ画像(W)から導出された画像、特に、前記カメラ画像(M)のグレースケール画像(G)と乗算するステップを含む、構成5に記載の方法。
[構成7]
前記重み画像(W、W´)と前記カメラ画像(M)とを乗算する前に、前記重み画像を、前記画素値の合計が所定の予め定義された値に等しくなるようにスケーリングすることによって正規化し、
B=f
1
(Σ
i,j
f
2
(W
ij
・G
ij
))
から輝度パラメータBを計算し、
ここで、f
1
およびf
2
は単調関数である、
構成6に記載の方法。
[構成8]
前記カメラ画像(M)のグレースケール画像(G)を計算するステップを含み、前記第1および第2サブ領域が前記グレースケール画像(G)を用いて識別される、構成1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
[構成9]
前記輝度パラメータ(B)に応じて、
前記照明光源(4)の輝度、
前記照明光源(4)のパルス長、
前記顕微鏡の開口径、
前記カメラ(22)のゲイン
前記カメラ(22)のサンプリング時間、
のパラメータの少なくとも1つを調整するステップを含む、構成1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
[構成10]
照明光源(4)と、
カメラ(22)と、
前記照明光源(4)および前記カメラ(22)に接続された制御部(20)であって、前記制御部(20)が構成1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合されている、制御部(20)と、
を備える、眼科用顕微鏡装置。