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特許7621512画像処理装置、光免疫治療システム、画像処理方法及び画像処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】画像処理装置、光免疫治療システム、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20250117BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20250117BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20250117BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61B1/00 511
A61B1/045 610
A61B1/00 621
A61N5/06 Z
A61N5/067
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023570540
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048668
(87)【国際公開番号】W WO2023127053
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若菜 和明
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215796(WO,A1)
【文献】特開2002-102147(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 10/00
A61N 5/06 - 5/08
A61B 18/20 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を反応させる治療光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、
前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定部と、
前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、
を備え、
前記蛍光画像取得部は、前記治療光の照射開始時における初期蛍光画像を取得し、
前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成部、をさらに備え、
前記階調範囲設定部は、前記差分に対して階調範囲を設定する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記階調範囲設定部は、前記差分画像の差分の最大値又は最小値に対して予め設定される条件にしたがって階調範囲を設定するクリップ処理を行う、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
薬剤を反応させる治療光を出射する治療光出射部と、
前記治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、
前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定部と、
前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、
を備え、
前記階調範囲設定部は、前記差分に対して階調範囲を設定する、
光免疫治療システム。
【請求項4】
蛍光画像取得部が、薬剤を反応させる治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
差分画像生成部が、前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
階調範囲設定部が、前記差分に対して画像の階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、
階調拡大画像生成部が、前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項5】
薬剤を反応させる治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
差分画像生成部が、前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記差分に対して画像の階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、
前記階調範囲設定ステップで設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【請求項6】
薬剤を反応させる治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、
前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記初期蛍光画像における蛍光量と、治療が完了したと判断される蛍光画像に相当する減衰目標画像における蛍光量との差分の最大値を最大値とする階調範囲を設定する階調範囲設定部と、
前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、
を備え画像処理装置。
【請求項7】
薬剤を反応させる治療光を出射する治療光出射部と、
前記治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、
前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記初期蛍光画像における蛍光量と、治療が完了したと判断される蛍光画像に相当する減衰目標画像における蛍光量との差分の最大値を最大値とする階調範囲を設定する階調範囲設定部と、
前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、
を備え光免疫治療システム。
【請求項8】
蛍光画像取得部が、薬剤を反応させる治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
差分画像生成部が、前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
階調範囲設定部が、前記初期蛍光画像における蛍光量と、治療が完了したと判断される蛍光画像に相当する減衰目標画像における蛍光量との差分の最大値を最大値とする階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、
階調拡大画像生成部が、前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項9】
薬剤を反応させる治療光の照射開始時における初期蛍光画像、および、前記治療光照射時の蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記初期蛍光画像における蛍光量と、治療が完了したと判断される蛍光画像に相当する減衰目標画像における蛍光量との差分の最大値を最大値とする階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、
前記階調範囲設定ステップで設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、光免疫治療システム、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗体薬剤を癌細胞のタンパク質に特異的に結合させ、治療光である近赤外光の照射によって抗体薬剤を活性化させて癌細胞を破壊することによって癌の治療を行う光免疫療法(Photoimmunotherapy:PIT)の研究が進められている。近赤外光が照射された抗体薬剤は、癌細胞を膨張させ、該癌細胞の細胞死を誘導する。この際、抗体薬剤は、励起されることによって蛍光を発する。この蛍光の強度は、治療効果の指標として用いられる。
【0003】
また、蛍光の強度によって治療の評価を行う技術としては、血中に導入したインドシアニングリーン(Indocyanine Green:ICG)を用いて、このICGの蛍光を撮像することによって皮下の血液循環を観察する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、観察画像において、全体の階調を表現するためにコントラストやダイナミックレンジの圧縮を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-135253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PITでは、観察される蛍光強度の減少によって治療が完了したか否かを判断している。この際、治療が完了に近付くと蛍光強度が小さくなるが、蛍光強度が小さいと、画像において視覚的に蛍光の変化を認識することが難しくなる。治療の進捗や完了を正確に判断するには、蛍光の変化を的確に把握することが求められる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、蛍光強度の変化を正確に把握することができる画像処理装置、光免疫治療システム、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像処理装置は、薬剤を反応させる治療光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定部と、前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、を備える。
【0008】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記蛍光画像取得部は、前記治療光の照射開始時における初期蛍光画像を取得し、前記初期蛍光画像と、前記治療光照射時の蛍光画像との蛍光強度の差分を表現する差分画像を生成する差分画像生成部、をさらに備え、前記階調範囲設定部は、前記差分に対して階調範囲を設定する。
【0009】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記階調範囲設定部は、前記蛍光画像の蛍光強度の最大値又は最小値に対して予め設定される条件にしたがって階調範囲を設定するクリップ処理を行う。
【0010】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記階調範囲設定部は、前記差分画像の差分の最大値又は最小値に対して予め設定される条件にしたがって階調範囲を設定するクリップ処理を行う。
【0011】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記階調範囲設定部は、前記最大値又は前記最小値に対して予め設定される比率にしたがって階調範囲を設定する。
【0012】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記階調範囲設定部は、前記蛍光画像に対して設定される減衰目標値に基づいて階調範囲を設定する。
【0013】
また、本発明にかかる画像処理装置は、上記発明において、前記蛍光画像に対して前記階調範囲設定部が階調範囲を設定する関心領域を設定する制御部、をさらに備える。
【0014】
また、本発明にかかる光免疫治療システムは、薬剤を反応させる治療光を出射する治療光出射部と、前記治療光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定部と、前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成部と、を備える。
【0015】
また、本発明にかかる画像処理方法は、蛍光画像取得部が、薬剤を反応させる治療光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、階調範囲設定部が、前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、階調拡大画像生成部が、前記階調範囲設定部が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、を含む。
【0016】
また、本発明にかかる画像処理プログラムは、薬剤を反応させる治療光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、前記蛍光画像の蛍光強度の分布に基づいて画像の階調範囲を設定する階調範囲設定ステップと、前記階調範囲設定ステップで設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する階調拡大画像生成ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蛍光強度の変化を正確に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡の先端構成を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡を用いた治療の流れの一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、蛍光像を含む観察画像の一例を示す図である。
図7図7は、図6に示す観察画像における蛍光量を示す蛍光画像を示す図である。
図8図8は、関心領域における蛍光強度と出現頻度との関係を示す図である。
図9図9は、蛍光画像の画素に対する蛍光強度分布の一例を示す図(その1)である。
図10図10は、蛍光画像の画素に対する蛍光強度分布の一例を示す図(その2)である。
図11図11は、図7に示す蛍光画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。
図12図12は、図7に示す蛍光画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の他の表示例を示す図(その1)である。
図13図13は、図7に示す蛍光画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の他の表示例を示す図(その2)である。
図14図14は、本発明の実施の形態1にかかる階調拡大処理について説明するための図(その1)である。
図15図15は、本発明の実施の形態1の変形例にかかるクリップ処理について説明するための図である。
図16図16は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図17図17は、本発明の実施の形態2にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。
図19図19は、差分画像の一例を示す図である。
図20図20は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図(その1)である。
図21図21は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図(その2)である。
図22図22は、図19に示す差分画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。
図23図23は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。
図24図24は、差分画像の一例を示す図である。
図25図25は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図(その1)である。
図26図26は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図(その2)である。
図27図27は、図24に示す差分画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。
図28図28は、本発明の実施の形態3にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図29図29は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。
図30図30は、蛍光画像の画素に対する蛍光量差分の分布の一例を示す図(その1)である。
図31図31は、蛍光画像の画素に対する蛍光量差分の分布の一例を示す図(その2)である。
図32図32は、階調範囲の最小値の設定の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。実施の形態では、本発明に係る画像処理装置、光免疫治療システムおよび蛍光内視鏡を含むシステムの一例として、患者等の被検体内の画像を撮像して表示する医療用の内視鏡システムについて説明する。また、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。図2は、本実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。図3は、本実施の形態1にかかる内視鏡の先端構成を説明する図である。
【0021】
図1および図2に示す内視鏡システム1は、被検体内に先端部を挿入することによって被検体の体内画像を撮像する内視鏡2と、内視鏡2の先端から出射する照明光を発生する光源装置3と、内視鏡2が撮像した撮像信号に所定の信号処理を施すとともに、内視鏡システム1全体の動作を統括的に制御する処理装置4と、処理装置4の信号処理によって生成された体内画像を表示する表示装置5と、処置装置6とを備える。
【0022】
内視鏡2は、可撓性を有する細長形状をなす挿入部21と、挿入部21の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部22と、操作部22から挿入部21が延びる方向と異なる方向に延び、光源装置3および処理装置4に接続する各種ケーブルを内蔵するユニバーサルコード23と、を備える。
【0023】
挿入部21は、光を受光して光電変換することによって信号を生成する画素が2次元状に配列された撮像素子244を内蔵した先端部24と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部25と、湾曲部25の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部26と、を有する。挿入部21は、被検体の体腔内に挿入され、外光の届かない位置にある生体組織などの被写体を撮像素子244によって撮像する。
【0024】
操作部22は、湾曲部25を上下方向および左右方向に湾曲させる湾曲ノブ221と、被検体の体腔内に治療光照射装置、生検鉗子、電気メスおよび検査プローブ等の処置具を挿入する処置具挿入部222と、処理装置4に加えて、送気手段、送水手段、画面表示制御等の周辺機器の操作指示信号を入力する操作入力部である複数のスイッチ223と、を有する。処置具挿入部222から挿入される処置具は、先端部24の処置具チャンネル(図示せず)を経由して開口部から表出する(図3参照)。
【0025】
ユニバーサルコード23は、ライトガイド241と、一または複数の信号線をまとめた集合ケーブル245と、を少なくとも内蔵している。ユニバーサルコード23は、操作部22に接続する側と反対側の端部において分岐している。ユニバーサルコード23の分岐端部には、光源装置3に着脱自在なコネクタ231と、処理装置4に着脱自在なコネクタ232とが設けられる。コネクタ231は、端部からライトガイド241の一部が延出している。ユニバーサルコード23は、光源装置3から出射された照明光を、コネクタ231(ライトガイド241)、操作部22および可撓管部26を経て先端部24に伝播する。また、ユニバーサルコード23は、先端部24に設けられた撮像素子244が撮像した画像信号を、コネクタ232を経由して、処理装置4に伝送する。集合ケーブル245は、撮像信号を伝送するための信号線や、撮像素子244を駆動するための駆動信号を伝送するための信号線、内視鏡2(撮像素子244)に関する固有情報などを含む情報を送受信するための信号線を含む。なお、本実施の形態では、信号線を用いて電気信号を伝送するものとして説明するが、光信号を伝送するものであってもよいし、無線通信によって内視鏡2と処理装置4との間で信号を伝送するものであってもよい。
【0026】
先端部24は、グラスファイバ等を用いて構成されて光源装置3が発光した光の導光路をなすライトガイド241と、ライトガイド241の先端に設けられた照明レンズ242と、集光用の光学系243と、光学系243の結像位置に設けられ、光学系243が集光した光を受光して電気信号に光電変換して所定の信号処理を施す撮像素子244とを有する。
【0027】
光学系243は、一または複数のレンズを用いて構成される。光学系243は、撮像素子244の受光面上に観察像を結像させる。なお、光学系243は、画角を変化させる光学ズーム機能および焦点を変化させるフォーカス機能を有してもよい。
【0028】
撮像素子244は、光学系243からの光を光電変換して電気信号(画像信号)を生成する。撮像素子244は、光量に応じた電荷を蓄積するフォトダイオードや、フォトダイオードから転送される電荷を電圧レベルに変換するコンデンサなどをそれぞれ有する複数の画素がマトリックス状に配列されてなる。撮像素子244は、各画素が光学系243を経て入射する光を光電変換して電気信号を生成し、複数の画素のうち読み出し対象として任意に設定された画素が生成した電気信号を順次読み出して、画像信号として出力する。撮像素子244は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いて実現される。
【0029】
なお、内視鏡2は、撮像素子244が各種動作を実行するための実行プログラムおよび制御プログラムや、内視鏡2の識別情報を含むデータを記憶するメモリを有する(図示せず)。識別情報には、内視鏡2の固有情報(ID)、年式、スペック情報、および伝送方式等が含まれる。また、メモリは、撮像素子244が生成した画像データ等を一時的に記憶してもよい。
【0030】
なお、内視鏡2は、撮像素子244が各種動作を実行するための実行プログラムおよび制御プログラムや、内視鏡2の識別情報を含むデータを記憶するメモリを有する(図示せず)。識別情報には、内視鏡2の固有情報(ID)、年式、スペック情報、および伝送方式等が含まれる。また、メモリは、撮像素子244が生成した画像データ等を一時的に記憶してもよい。
【0031】
光源装置3の構成について説明する。光源装置3は、光源部31と、照明制御部32と、光源ドライバ33とを備える。光源部31は、照明制御部32の制御のもと、被写体(被検体)に対して、異なる露光量の照明光を順次切り替えて出射する。
【0032】
光源部31は、光源や、一または複数のレンズ等を用いて構成され、光源の駆動により光(照明光)を出射する。光源部31発生した光は、ライトガイド241を経由して先端部24の先端から被写体に向けて出射される。光源部31は、白色光源311を有する。
【0033】
白色光源311は、可視広域の波長帯域を有する光(白色光)を出射する。白色光源311は、LED光源のほか、レーザー光源、キセノンランプ、ハロゲンランプなどのいずれかの光源を用いて実現される。
【0034】
照明制御部32は、処理装置4からの制御信号(調光信号)に基づいて、光源部31に供給する電力量を制御するとともに、発光させる光源や、光源の駆動タイミングを制御する。
【0035】
光源ドライバ33は、照明制御部32の制御のもと、発光対象の光源に対して電流を供給することにより、光源部31に光を出射させる。
【0036】
処理装置4の構成について説明する。処理装置4は、画像処理部41と、同期信号生成部42と、入力部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。
【0037】
画像処理部41は、内視鏡2から、撮像素子244が撮像した各色の照明光の画像データを受信する。画像処理部41は、内視鏡2からアナログの画像データを受信した場合はA/D変換を行ってデジタルの撮像信号を生成する。また、画像処理部41は、内視鏡2から光信号として画像データを受信した場合は光電変換を行ってデジタルの画像データを生成する。
【0038】
画像処理部41は、内視鏡2から受信した画像データに対して所定の画像処理を施して画像を生成して表示装置5へ出力したり、画像に基づいて判定した強化領域を設定したり、蛍光強度の時間変化を算出したりする。画像処理部41は、白色光画像生成部411と、蛍光画像生成部412と、階調範囲設定部413と、階調拡大画像生成部414とを有する。
【0039】
白色光画像生成部411は、白色光によって形成される像に基づく白色光画像を生成する。
【0040】
蛍光画像生成部412は、蛍光によって形成される像に基づく蛍光画像を生成する。
【0041】
階調範囲設定部413は、蛍光強度に基づいて、階調設定を行う画像の範囲(例えば輝度の範囲等)を設定する。
【0042】
階調拡大画像生成部414は、階調範囲設定部413が設定した階調範囲に応じて階調を割り当てることによって、階調拡大画像を生成する。階調拡大画像生成部414は、例えば蛍光画像の一部の階調を拡大した階調拡大画像を生成する。
【0043】
白色光画像生成部411、蛍光画像生成部412および階調拡大画像生成部414は、所定の画像処理を施すことによって画像を生成する。ここで、所定の画像処理とは、同時化処理、階調補正処理および色補正処理等である。同時化処理は、RGBの各色成分の画像データを同時化する処理である。階調補正処理は、画像データに対して階調の補正を行う処理である。色補正処理は、画像データに対して色調補正を行う処理である。なお、白色光画像生成部411、蛍光画像生成部412および階調拡大画像生成部414は、画像の明るさに応じてゲイン調整してもよい。
【0044】
画像処理部41は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。なお、画像処理部41は、R画像データ、G画像データおよびB画像データを保持するフレームメモリを有する構成としてもよい。
【0045】
同期信号生成部42は、処理装置4の動作の基準となるクロック信号(同期信号)を生成するとともに、生成した同期信号を光源装置3や、画像処理部41、制御部44、内視鏡2へ出力する。ここで、同期信号生成部42が生成する同期信号は、水平同期信号と垂直同期信号とを含む。
このため、光源装置3、画像処理部41、制御部44、内視鏡2は、生成された同期信号によって、互いに同期をとって動作する。
【0046】
入力部43は、キーボード、マウス、スイッチ、タッチパネルを用いて実現され、内視鏡システム1の動作を指示する動作指示信号等の各種信号の入力を受け付ける。なお、入力部43は、操作部22に設けられたスイッチや、外部のタブレット型のコンピュータなどの可搬型端末を含んでもよい。
【0047】
制御部44は、撮像素子244および光源装置3を含む各構成部の駆動制御、および各構成部に対する情報の入出力制御などを行う。制御部44は、記憶部45に記憶されている撮像制御のための制御情報データ(例えば、読み出しタイミングなど)を参照し、集合ケーブル245に含まれる所定の信号線を経由して駆動信号として撮像素子244へ送信する。また、制御部44は、観察する光に応じてモードを切り替えてもよい。制御部44は、例えば、白色光の照明によって得られる画像を観察する通常観察モードと、治療光の照明によって得られる蛍光画像を観察する蛍光観察モードとを切り替える。制御部44は、CPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
【0048】
記憶部45は、内視鏡システム1を動作させるための各種プログラム、および内視鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。また、記憶部45は、処理装置4の識別情報を記憶する。ここで、識別情報には、処理装置4の固有情報(ID)、年式およびスペック情報等が含まれる。
【0049】
また、記憶部45は、処理装置4の画像取得処理方法を実行するための画像取得処理プログラムを含む各種プログラムを記憶する。各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを経由してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0050】
以上の構成を有する記憶部45は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAMやハードディスク等を用いて実現される。
【0051】
表示装置5は、映像ケーブルを経由して処理装置4(画像処理部41)から受信した画像信号に対応する表示用の画像を表示する。表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等のモニタを用いて構成される。
【0052】
処置装置6は、処置具操作部61と、処置具操作部61から延びる可撓性の処置具62とを有する。PITに使用される処置具62は、治療のための光(以下、治療光という)を出射する治療光出射部である。処置具操作部61は、処置具62の治療光の出射を制御する。処置具操作部61は、操作入力部611を有する。操作入力部611は、例えば、スイッチ等によって構成される。処置具操作部61は、操作入力部611への入力(例えばスイッチの押下)によって、処置具62に治療光を出射させる。なお、処置装置6において、治療光を発する光源は、処置具62に設けられてもよいし、処置具操作部61に設けられてもよい。光源は、半導体レーザーや、LED等を用いて実現される。治療光は、例えばPITの場合、680nm以上の波長帯域の光であり、例えば690nmを中心波長とする光である。
ここで、処置具62が備える照明光学系は、治療光の照射範囲を変更できる構成としてもよい。例えば、処置具操作部61の制御のもと、焦点距離を変更可能な光学系や、DMD(Digital Micromirror Device)等によって構成され、被写体に照射する光のスポット径や、照射範囲の形状を変更することができる。
【0053】
続いて、内視鏡2を用いた治療の流れについて、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡を用いた治療の流れの一例を示す図である。図4は、PITの実施の一例を示す図であり、胃STに挿入部21を挿入して治療を行う。
【0054】
まず、術者は、胃ST内に挿入部21を挿入する(図4の(a)参照)。この際、術者は、光源装置3に白色光を照射させ、表示装置5が表示する胃ST内の白色光画像を観察しながら治療位置を探索する。ここでは、治療対象として腫瘍B1、B2の治療を行うものとする。この際、治療対象部位である腫瘍B1、B2に対して、抗体薬剤の投与が行われる。抗体薬剤の投与は、内視鏡2を用いて実施してもよいし、他の機器を用いて実施してもよいし、患者に薬剤を飲み込ませてもよい。
術者は、白色光画像を観察して腫瘍B1、B2を含む領域を照射領域として決定する。また、必要に応じて、照射領域に励起光等を照射してもよい。
【0055】
術者は、先端部24を腫瘍B1に向け、内視鏡2の先端から処置具62を突出させて腫瘍B1に治療光を照射する(図4の(b)参照)。治療光の照射によって、腫瘍B1に結合した抗体薬剤が反応し、腫瘍B1に対する治療が施される。
【0056】
そして、術者は、先端部24を腫瘍B2に向け、内視鏡2の先端から処置具62を突出させて腫瘍B2に治療光を照射する(図4の(c)参照)。治療光の照射によって、腫瘍B2に結合した抗体薬剤が反応し、腫瘍B2に対する治療が施される。
【0057】
その後、術者は、先端部24を腫瘍B1に向け、内視鏡2の先端から腫瘍B1に治療光や励起光を照射する(図4の(d)参照)。術者は、治療後の蛍光画像を取得することによって腫瘍B1における治療効果を確認する。治療効果の確認は、例えば後述する画像の観察によって、術者が判断する。なお、本実施の形態では、治療光によって得られる蛍光を観察する例について説明する。
【0058】
また、術者は、先端部24を腫瘍B2に向け、内視鏡2の先端から腫瘍B2に治療光を照射する(図4の(e)参照)。術者は、治療後の蛍光画像を取得することによって腫瘍B2における治療効果を確認する。
【0059】
術者は、必要に応じて、治療光の追加照射と、治療効果の確認とを繰り返す。
【0060】
続いて、処理装置4における処理について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施の形態にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。図5は、PITにおいて、白色光を照射して、被写体(ここでは抗体薬剤を結合させた癌細胞を含む領域)を探索し、該被写体に治療光を照射して、蛍光強度から治療効果を確認する際の処理を示す。術者は、表示装置5に表示される白色光画像を観察しながら、治療箇所を探索する。なお、処理装置4では、観察する光に応じて観察モードを変更してもよい。
【0061】
まず、術者の操作によって、処置具62から、癌細胞に結合させた抗体薬剤に治療光が照射されて薬剤が反応する(ステップS101:薬剤反応工程)。この薬剤反応工程において、治療光である近赤外光の照射によって抗体薬剤を活性化させて癌細胞を破壊する治療が施される。
【0062】
なお、制御部44は、治療光の照射によって、観察モードを蛍光観察モードに設定してもよい。この際の制御部44の治療光出射の判断は、例えば操作入力部611の操作信号の受信、または術者の入力部43への治療光照射開始入力のいずれかによって実行される。
【0063】
治療光が照射されている状態において、内視鏡2は、治療光によって発生する蛍光を検出する(ステップS102:蛍光検出工程)。治療光の出射によって、被写体の抗体薬剤が励起されて蛍光を発する。蛍光画像生成部412は、撮像信号に基づいて、蛍光画像、又は、蛍光を含む白色光画像を生成する。
【0064】
図6は、蛍光像を含む観察画像の一例を示す図である。図7は、図6に示す観察画像における蛍光量を示す蛍光画像を示す図である。図6は、白色光及び治療光を照射した場合に得られる観察画像の一例を示す。図6に示す観察画像W1では、白色光によって照明された反射光が表現されるとともに、治療光が照射され抗体薬剤が発する蛍光が表現される。図7に示す蛍光画像F1では、蛍光によって形成される像が表現される。なお、蛍光画像は、撮像素子244において、プリズム等によって蛍光のみを分離して、撮像素子244において白色光と蛍光とを互いに異なる位置で受光させたり、フィルタ等によって蛍光のみを通過させたりすることによって生成できる。
【0065】
ここで、観察画像W1と蛍光画像F1とは、被検体における同じ領域を撮像した画像である。また、観察画像W1及び蛍光画像F1には、関心領域R1が設定される。関心領域は、予め画像に対して位置が設定されるものであってもよいし、入力部43への入力によって術者が任意に設定するものであってもよいし、画像の特徴部分を検出して、制御部44が設定するものであってもよい。また、制御部44は、取得時刻が異なる画像や、白色光画像と蛍光画像との間における対応位置に応じて、関心領域の位置を調整して追従させる。この際、制御部44は、パターンマッチング等の公知の方法によって画像間の対応位置を検出する。
【0066】
その後、階調範囲設定部413が、蛍光強度の出現頻度を示すヒストグラムを生成する(ステップS103:ヒストグラム生成工程)。図8は、関心領域における蛍光強度と出現頻度との関係を示す図である。図8は、蛍光強度の出現頻度を示すヒストグラムである。階調範囲設定部413は、例えば図8に示すヒストグラムを生成する。このヒストグラムにおいて、蛍光強度には、関心領域に蛍光画像の輝度が用いられる。なお、輝度は、予め設定した間隔で分割してもよく、例えば、0~255を10個の範囲に分けてもよい。具体的には、例えば、0~25、26~51、52~76、77~102、103~127、128~153、154~178、179~204、205~229、230~255に分け、輝度に応じて各画素を振り分ける。
【0067】
階調範囲設定部413は、ヒストグラム生成後、階調範囲の設定を行う(ステップS104:階調範囲設定工程)。階調範囲設定部413は、予め設定されている出現頻度の閾値FTH以上の蛍光強度を、階調変更範囲に設定する。例えば、図8において、蛍光強度PLから蛍光強度PHまでの範囲を階調変更範囲に設定する。その後、階調範囲設定部413は、蛍光画像の各画素の蛍光強度分布において、階調変更範囲に対応する蛍光強度の範囲を、階調範囲に設定する。
【0068】
図9及び図10は、蛍光画像の画素に対する蛍光強度分布の一例を示す図である。図9に示す階調変更前の蛍光強度分布では、例えば最小の蛍光強度(例えば0)から最大の蛍光強度(例えば輝度の上限値(255))に対して、階調が設定される。これに対し、図10に示す階調変更後の蛍光強度分布では、ヒストグラムに基づいて設定された最小の蛍光強度PLから最大の蛍光強度PHに対して、階調が設定される。この際、最小の蛍光強度PLの輝度が0、最大の蛍光強度PHの輝度が255に設定され、階調変更範囲RP内において、輝度が割り振られる。この際の階調拡大率は、最大階調値(ここでは255)を階調変更前の蛍光画像の最大輝度値で除した値に相当する。
【0069】
階調範囲設定後、階調拡大画像生成部414は、ステップS104において設定された階調範囲に基づいて、蛍光強度に輝度を割り振った階調拡大画像を生成する(ステップS105)。
【0070】
その後、制御部44は、生成された階調拡大画像を表示装置5に表示させる(ステップS106:表示工程)。図11は、図7に示す蛍光画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。図11に示す階調拡大画像T1では、図7に示す蛍光画像と比して、蛍光が一層明確に表現された画像となっている。
【0071】
図12及び図13は、図7に示す蛍光画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の他の表示例を示す図である。階調拡大画像生成部414は、図11に示す階調拡大画像のほか、階調を反転させた階調拡大画像T2(図12参照)や、蛍光強度に応じた色を付与した蛍光量のカラーマップを示す階調拡大画像T3(図13参照)を生成してもよい。
【0072】
以上説明した実施の形態1では、蛍光強度の分布に基づいて階調を変更する範囲を設定し、設定した階調変更範囲の最小蛍光強度から最大蛍光強度までの範囲において階調を割り振ることによって、蛍光を明確に表現する階調拡大画像を生成し、表示装置5に表示させる。本実施の形態1によれば、蛍光画像の蛍光強度の分布に応じて、多数を占める蛍光強度の範囲に限定して階調を設定し、階調拡大画像を生成するため、蛍光強度の変化を正確に把握することができる。
【0073】
PITでは、治療光の照射の経過にともない試薬からの蛍光量が減少することを利用して、蛍光量を用いて治療の進捗状態を把握する。この際、初期の蛍光強度が大きい状態から、治療終了直前の蛍光強度が小さい状態までを、同じダイナミックレンジで表示すると、蛍光強度の小さい状態では、部分的な強度の違いが認識しにくくなる。そこで、蛍光量の減少に応じて表示する表示対象とする蛍光量(蛍光強度)の範囲を選択して、表示するダイナミックレンジを割り当て、蛍光強度の低い領域での階調を拡大することで、治療が進んで蛍光強度が低くなった領域での蛍光強度の部分的な違いが認識しやすくなる。
【0074】
図14は、本発明の実施の形態1にかかる階調拡大処理について説明するための図である。蛍光強度に応じて階調拡大処理を繰り返すによって、蛍光検出量の最大減衰値PTHに至るまでの間、蛍光画像の蛍光強度の分布に応じて、多数を占める蛍光強度の範囲に限定して階調を設定することによって、蛍光強度の大きさによらず、蛍光強度の変化を正確に把握することができる。
【0075】
(実施の形態1の変形例)
次に、実施の形態1の変形例について説明する。本変形例にかかる内視鏡システムは、実施の形態1にかかる内視鏡システム1と同じであるため、説明を省略する。変形例では、蛍光量の差分の値に応じて階調設定を行う蛍光量の範囲を調整するクリップ処理を実施する。図15は、本発明の実施の形態1の変形例にかかるクリップ処理について説明するための図である。
【0076】
階調範囲設定部413は、予め設定される条件にしたがって、階調設定を行う蛍光量の範囲を設定する。本変形例では、階調設定範囲の最小値は、予め設定される最小値PMINに設定される。また、階調設定範囲の最大値は、蛍光量の最大値PHに対して予め設定した比率を乗じた最大値PMAXに設定される。本変形例では、例えば比率として0.8(80%)が設定される。なお、この比率は任意に設定することができる。また、階調設定範囲の最小値も、蛍光量の最小値に対して予め設定された比率を乗じてもよい。
【0077】
本変形例によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができるとともに、蛍光量が検出された領域の一部の蛍光変化を詳細に表現することができる。
【0078】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。図16は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態2にかかる内視鏡システム1Aは、実施の形態1にかかる内視鏡システム1の処理装置4に代えて処理装置4Aを備える。処理装置4A以外の構成は内視鏡システム1と同じであるため、説明を省略する。
【0079】
処理装置4Aの構成について説明する。処理装置4Aは、画像処理部41Aと、同期信号生成部42と、入力部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。
【0080】
画像処理部41Aは、白色光画像生成部411と、蛍光画像生成部412と、階調範囲設定部413と、階調拡大画像生成部414と、差分画像生成部415と、を有する。
【0081】
差分画像生成部415は、互いに撮像時刻が異なる二つの蛍光画像における、蛍光量の差分を示す差分画像を生成する。ここで、差分画像は、二つの蛍光画像において、被写体における位置が互いに対応する画素同士の蛍光量の差分をとった画像である。
【0082】
続いて、処理装置4Aにおける処理について、図17を参照して説明する。図17は、本実施の形態2にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0083】
まず、治療を開始する前に、治療光を照射して、治療前の蛍光を検出する(ステップS201:初期蛍光検出工程)。この工程によって、治療開始前の蛍光画像が得られる。この治療開始前の蛍光画像は、基準蛍光画像として、記憶部45に記憶される。
【0084】
その後、術者の操作によって、処置具62から、癌細胞に結合させた抗体薬剤に治療光が照射されて薬剤が反応する(ステップS202:薬剤反応工程)。薬剤反応処理によって、処置具62から被写体に治療光が照射され、癌細胞を破壊する治療が施される。
【0085】
内視鏡2は、治療光によって発生する蛍光を検出する(ステップS203:蛍光検出工程)。治療光の出射によって、被写体の抗体薬剤が励起されて蛍光を発する。蛍光画像生成部412は、撮像信号に基づいて、蛍光画像、又は、蛍光を含む白色光画像を生成する。
【0086】
その後、差分画像生成部415が、ステップS201で取得した治療開始前の蛍光画像(基準蛍光画像)と、ステップS203で取得した蛍光画像との差分画像を生成する(ステップS204:差分画像生成工程)。
【0087】
図18は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。図18に示す蛍光量曲線L1は、基準蛍光画像における各画素(例えば関心領域に位置する画素)の蛍光量を示す。また、蛍光量曲線L2は、基準蛍光画像とは異なる時刻に取得した蛍光画像の画素であって、基準蛍光量の画素位置と対応する画素の蛍光量を示す。ここでの蛍光量は、蛍光画像の輝度値に相当する。図18に示す蛍光量曲線L2では、治療光によって反応が進んだ部分の蛍光量が低下している。
【0088】
差分画像生成部415は、基準蛍光画像の蛍光量と、蛍光画像の蛍光量との差を算出し、その差によって表現される差分画像を生成する。図19は、差分画像の一例を示す図である。図19に示す差分画像D1は、基準蛍光画像の蛍光量と、蛍光画像の蛍光量との差分(蛍光変化量)を表現する画像である。基準蛍光画像の蛍光量と、蛍光画像の蛍光量との差分が小さい場合は差分を視覚的に識別することは難しい。差分を明確に表現するため、最大の差分に相当する範囲(最大差分範囲)において階調を設定する。例えば、図18では、蛍光量差分の最小値(ここでは差分ゼロ)から最大値PDHまでの範囲RD1が最大差分範囲(最大差分範囲RD1ともいう)に相当する。
【0089】
階調範囲設定部413は、差分画像生成後、階調範囲の設定を行う(ステップS205:階調範囲設定工程)。図20及び図21は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図である。階調範囲設定部413は、最大差分範囲RD1に基づいて、予め設定されている蛍光量差分の上限設定値を変更して、階調範囲を変更する。例えば、階調範囲設定部413は、図20において、最大差分範囲RD1を階調変更範囲に設定する。階調範囲の変更によって、蛍光量差分の最小値から最大値PDHまでに対して輝度が割り振られる(図21参照)。
【0090】
階調範囲設定後、階調拡大画像生成部414は、ステップS205において設定された階調範囲に基づいて、蛍光強度に輝度を割り振った階調拡大画像を生成する(ステップS206)。
【0091】
その後、制御部44は、生成された階調拡大画像を表示装置5に表示させる(ステップS207:表示工程)。図22は、図19に示す差分画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。図22に示す階調拡大画像T4では、図19に示す差分画像と比して、蛍光量の差分が一層明確に表現された画像となっている。なお、図22に示す階調拡大画像のほか、階調を反転させた階調拡大画像(図12参照)や、蛍光強度に応じた色を付与した蛍光量のカラーマップを示す階調拡大画像(図13参照)を生成してもよい。
【0092】
また、治療が進み、治療前の蛍光量と比して蛍光量が十分に低下した場合においても、上述した階調変更処理が実行される。図23は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。図23に示す蛍光量曲線L3は、基準蛍光画像とは異なる時刻であって、治療が進んだ時刻に取得した蛍光画像の画素であって、基準蛍光量の画素位置と対応する画素の蛍光量を示す。
【0093】
差分画像生成部415は、基準蛍光画像の蛍光量と、蛍光画像の蛍光量との差を算出し、その差によって表現される差分画像を生成する。図24は、差分画像の一例を示す図である。図24に示す差分画像D2は、基準蛍光画像の蛍光量と、蛍光画像の蛍光量との差分(蛍光変化量)を表現する画像である。
【0094】
図25及び図26は、差分画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図である。階調範囲設定部413は、最大差分範囲RD2に基づいて、予め設定されている蛍光量差分の上限設定値を変更して、階調範囲を変更する。例えば、階調範囲設定部413は、図23において、最大差分範囲RD2を階調変更範囲に設定する。階調範囲の変更によって、蛍光量差分の最小値(ここではゼロ)から最大値PDHまでに対して輝度が割り振られる(図26参照)。
【0095】
階調範囲設定後、階調拡大画像生成部414は、設定された階調範囲に基づいて、蛍光強度に輝度を割り振った階調拡大画像を生成する。その後、制御部44は、生成された階調拡大画像を表示装置5に表示させる。図27は、図24に示す差分画像に階調拡大処理を施した階調拡大画像の一例を示す図である。図27に示す階調拡大画像T5では、図24に示す差分画像と比して、蛍光量の差分が一層明確に表現された画像となっている。
【0096】
以上説明した実施の形態2では、蛍光強度の差分に基づいて階調を変更する範囲を設定し、設定した階調変更範囲において階調を割り振ることによって、蛍光を明確に表現する階調拡大画像を生成し、表示装置5に表示させる。本実施の形態2によれば、蛍光画像の蛍光強度の分布に応じて、多数を占める蛍光強度の範囲に限定して階調を設定し、階調拡大画像を生成するため、蛍光強度の変化を正確に把握することができる。
【0097】
また、実施の形態2では、蛍光強度の差分に対して階調範囲を設定し、その差分を表現する差分画像の階調を変更して表示するため、術者は蛍光量の変化を直接視認することができる。本実施の形態2によれば、蛍光量の変化を一層正確に術者に把握させることができる。
【0098】
なお、実施の形態2では、上述した変形例のクリップ処理を採用することができる。この場合、予め設定される最小値及び最大値、又は、差分に対する比率によって階調設定範囲が決定される。
【0099】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態3にかかる内視鏡システムは、実施の形態2にかかる内視鏡システム1Aと同じであるため、説明を省略する。なお、本実施の形態3では、記憶部45が、蛍光量の減衰目標画像を記憶する。この減衰目標画像は、治療が完了したと判断される蛍光画像に相当する。図28は、本実施の形態3にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0100】
まず、治療を開始する前に、図17のステップS201と同様にして、治療光を照射して、治療前の蛍光を検出する(ステップS301:初期蛍光検出工程)。
【0101】
その後、術者の操作によって、処置具62から、癌細胞に結合させた抗体薬剤に治療光が照射されて薬剤が反応する(ステップS302:薬剤反応工程)。薬剤反応処理によって、癌細胞を破壊する治療が施される。
【0102】
内視鏡2は、治療光によって発生する蛍光を検出する(ステップS303:蛍光検出工程)。治療光の出射によって、被写体の抗体薬剤が励起されて蛍光を発する。蛍光画像生成部412は、撮像信号に基づいて、蛍光画像、又は、蛍光を含む白色光画像を生成する。
【0103】
その後、制御部44は、記憶部45を参照して減衰目標画像を読み出し、該減衰目標画像と、基準蛍光画像との減衰目標差分値の最大値を算出する(ステップS304:減衰目標値算出工程)。
【0104】
図29は、異なる時刻に取得した対応画素の蛍光量の一例を示す図である。図29に示す蛍光量曲線L1は、基準蛍光画像における各画素(例えば関心領域に位置する画素)の蛍光量を示す。また、蛍光量曲線L2は、基準蛍光画像とは異なる時刻に取得した蛍光画像の画素であって、治療中の、基準蛍光量の画素位置と対応する画素の蛍光量を示す。蛍光量曲線L4は、減衰目標画像における蛍光量を示す。蛍光量曲線L1と、蛍光量曲線L4との差分が、減衰目標差分値となり、その最大値は、減衰差分の最大値PDHとなる。
【0105】
その後、差分画像生成部415が、ステップS201で取得した治療開始前の蛍光画像(基準蛍光画像)と、ステップS203で取得した蛍光画像との差分画像を生成する(ステップS305:差分画像生成工程)。
【0106】
階調範囲設定部413は、差分画像生成後、階調範囲の設定を行う(ステップS306:階調範囲設定工程)。図30及び図31は、蛍光画像の画素に対する蛍光量差分の分布と、階調範囲の一例を示す図である。階調範囲設定部413は、最大差分範囲RD1に基づいて、予め設定されている蛍光量差分の上限設定値(図30参照)を変更して、階調範囲を変更する。例えば、階調範囲設定部413は、蛍光量曲線L2を示す蛍光画像の場合、蛍光量曲線L1と蛍光量曲線L4との差分を算出し、その最大値PDHを最大値とする範囲を階調変更範囲に設定する(図31参照)。階調範囲の変更によって、蛍光量差分の最小値(ここではゼロ)から最大値PDHまでに対して輝度が割り振られる。
【0107】
階調範囲設定後、階調拡大画像生成部414は、ステップS306において設定された階調範囲に基づいて、蛍光強度に輝度を割り振った階調拡大画像を生成する(ステップS307)。
【0108】
その後、制御部44は、生成された階調拡大画像を表示装置5に表示させる(ステップS308:表示工程)。
【0109】
以上説明した実施の形態3では、蛍光強度の差分に基づいて階調を変更する範囲を設定し、設定した階調変更範囲において階調を割り振ることによって、蛍光を明確に表現する階調拡大画像を生成し、表示装置5に表示させる。本実施の形態3によれば、蛍光画像の蛍光強度の分布に応じて、多数を占める蛍光強度の範囲に限定して階調を設定し、階調拡大画像を生成するため、蛍光強度の変化を正確に把握することができる。
【0110】
また、実施の形態3では、減衰目標の蛍光強度を用いて階調範囲を設定し、その差分を表現する差分画像の階調を変更して表示するため、治療の完了を判断する蛍光量の変化を一層確実に確認することができる。本実施の形態3によれば、蛍光量の変化を一層正確に術者に把握させることができる。
【0111】
なお、上述した実施の形態3では、階調設定処理において、蛍光量の最小値をゼロとして階調範囲の設定を行う例について説明したが、術者が差分画像や蛍光画像に対して最小値の設定を行ってもよい。図32は、階調範囲の最小値の設定の一例について説明する図である。図32に示す設定画面Q1では、カーソルC1の位置における蛍光量(又は輝度値)のレベルが表示される。術者は、最小値として設定する位置にカーソルC1を合わせて、その位置における蛍光量(又は輝度値)のレベルを確認しつつ、そのレベルを最小値として設定することができる。なお、この最小値の設定は、実施の形態1、2においても適用することができる。
【0112】
また、上述した実施の形態において、治療光によって治療と抗体薬剤の励起とを行う例について説明したが、抗体薬剤を励起させるための励起光を別で照射する構成としてもよい。この場合、例えば、光源装置が、励起光を出射する励起光源を設けた構成とする。
【0113】
なお、上述した実施の形態では、光源装置3が、処理装置4とは別体である例を説明したが、光源装置3および処理装置4を一体化した構成としてもよい。また、実施の形態では、処置具によって治療光を照射する例について説明したが、光源装置3が治療光を出射する構成としてもよい。
【0114】
また、上述した実施の形態では、本発明にかかる内視鏡システムが、観察対象が被検体内の生体組織などである軟性の内視鏡2を用いた内視鏡システム1であるものとして説明したが、硬性の内視鏡や、材料の特性を観測する工業用の内視鏡、ファイバースコープ、光学視管などの光学内視鏡の接眼部にカメラヘッドを接続したものを用いた内視鏡システムであっても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、本発明にかかる画像処理装置、光免疫治療システム、画像処理方法及び画像処理プログラムは、蛍光強度の変化を正確に把握するのに有用である。
【符号の説明】
【0116】
1、1A 内視鏡システム
2 内視鏡
3 光源装置
4、4A 処理装置
5 表示装置
6 処置装置
21 挿入部
22 操作部
23 ユニバーサルコード
24 先端部
25 湾曲部
26 可撓管部
31 光源部
32 照明制御部
33 光源ドライバ
41 画像処理部
42 同期信号生成部
43 入力部
44 制御部
45 記憶部
61 処置具操作部
62 処置具
311 白色光源
411 白色光画像生成部
412 蛍光画像生成部
413 階調範囲設定部
414 階調拡大画像生成部
415 差分画像生成部
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