IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図1
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図2
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図3
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図4
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図5
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図6
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図7
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図8
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図9
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図10
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図11
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図12
  • 特許-鞍乗り型車両及び触覚刺激システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両及び触覚刺激システム
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/00 20200101AFI20250117BHJP
   B62K 21/00 20060101ALI20250117BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20250117BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20250117BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20250117BHJP
【FI】
B62J27/00
B62K21/00
B62K23/04
B60W30/02
B60W50/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023576624
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039620
(87)【国際公開番号】W WO2023145167
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2022010440
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中河原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】能勢 翼
(72)【発明者】
【氏名】稲田 恭介
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 爾
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202283(WO,A1)
【文献】特開2021-88321(JP,A)
【文献】特開2017-182725(JP,A)
【文献】特表2014-502938(JP,A)
【文献】特表2015-514039(JP,A)
【文献】特開平8-192731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/00
B62J 50/21
B62J 45/00
B62K 21/00
B62K 23/04
B60W 30/02
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(10)を駆動する駆動装置(12)と、
前記駆動装置(12)に対する運転者の操作を受け付ける操作部(40)と、
運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)と通信する通信部(147)と、
前記駆動装置(12)と前記触覚刺激装置(50)とを制御する制御部(150)と、を備え、
前記制御部(150)は、前記触覚刺激装置(50)を制御する制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信し、前記操作に対する前記駆動装置(12)の反応を制限し、
前記操作部が受け付けた前記操作の操作量がしきい値以上である場合、前記駆動装置(12)の前記操作に対する反応の制限を解除することを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記制御部(150)は、前記制御信号の送信から設定された時間を経過すると、前記操作に対する前記駆動装置(12)の反応の制限を解除することを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記鞍乗り型車両(10)は、前記鞍乗り型車両(10)のロール角を検出する検出部(120)を備え、
前記制御部(150)は、前記検出部(120)が検出した前記ロール角が第1ロール角であるときに、前記駆動装置(12)の前記操作に対する反応を制限する制限量が、前記ロール角が前記第1ロール角よりも小さい第2ロール角であるときに、前記駆動装置(12)の前記操作に対する反応を制限する制限量を小さくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記駆動装置(12)は、エンジンであり、
前記制御部(150)は、前記操作によりスロットルバルブを開く速度を、前記制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信していないときに前記操作によりスロットルバルブを開く速度よりも遅くすることを特徴とする請求項記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記鞍乗り型車両は、ステアリングの振れを抑制するステアリングダンパ(145)を備え、
前記制御部(150)は、前記触覚刺激装置(50)を制御する制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信した後に、前記ステアリングダンパ(145)に減衰トルクを発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記鞍乗り型車両(10)は、前記鞍乗り型車両(10)のロール角を検出する検出部(120)を備え、
前記制御部(150)は、前記検出部(120)が検出した前記ロール角が第1ロール角であるときに、前記ステアリングダンパ(145)に発生させる減衰トルクが、前記ロール角が前記第1ロール角よりも小さい第2ロール角であるときに、前記ステアリングダンパ(145)に発生させる減衰トルクよりも小さくなるように前記ステアリングダンパ(145)を制御することを特徴とする請求項5記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
触覚刺激による前記運転者への通知には、前記鞍乗り型車両(10)の挙動に関する通知である第1通知と、前記運転者の注意力の低下を通知する第2通知と、運転の技術指導に関する通知である第3通知と、ナビゲーションに関する通知である第4通知と、を含み、
前記制御部(150)は、前記運転者に前記第1通知、前記第2通知、前記第3通知及び前記第4通知を通知する場合の触覚刺激の大きさをそれぞれ変更することを特徴とする請求項記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)、鞍乗り型車両(10)と、を備える触覚刺激システム(1)であって、
前記鞍乗り型車両(10)は、
鞍乗り型車両を駆動する駆動装置(12)と、
前記駆動装置(12)に対する運転者の操作を受け付ける操作部(40)と、
運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)と通信する通信部(147)と、
前記駆動装置(12)と前記触覚刺激装置(50)とを制御する制御部(150)と、を備え、
前記制御部(150)は、前記触覚刺激装置(50)を制御する制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信し、前記操作に対する前記駆動装置(12)の反応を制限し、
前記操作部が受け付けた前記操作の操作量がしきい値以上である場合、前記駆動装置(12)の前記操作に対する反応の制限を解除し、
前記触覚刺激装置(50)は、前記運転者が着用するヘルメット、グローブ、ブーツの少なくとも1つに搭載されることを特徴とする触覚刺激システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両及び触覚刺激システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車の運転者に触覚刺激により情報を通知する方法が知られている。
例えば、特許文献1は、運転者の左手又は右手に対して前方又は後方の圧力を触覚刺激として付与することにより、前記運転者に情報を伝達する触覚刺激アクチュエータを備える鞍乗型車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/087579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、触覚刺激を受けた運転者が意図しない操作をしてしまう可能性があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、触覚刺激による情報の通知において、車両の挙動が不安定になるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2022年1月26日に出願された日本国特許出願・特願2022-010440号の全ての内容が含まれる。
本発明の一態様は、鞍乗り型車両(10)を駆動する駆動装置(12)と、前記駆動装置(12)に対する運転者の操作を受け付ける操作部(40)と、運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)と通信する通信部(147)と、前記駆動装置(12)と前記触覚刺激装置(50)とを制御する制御部(150)と、を備え、前記制御部(150)は、前記触覚刺激装置(50)を制御する制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信した後に、前記駆動装置(12)に対する操作を前記操作部(40)により受け付けると、前記操作に対する前記駆動装置(12)の反応を制限することを特徴とする鞍乗り型車両(10)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、触覚刺激による情報の通知において、車両の挙動が不安定になるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、鞍乗り型車両の側面図である。
図2図2は、触覚刺激システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1マップを示す図である。
図4図4は、第2マップを示す図である。
図5図5は、第3マップを示す図である。
図6図6は、第4マップを示す図である。
図7図7は、第1実施形態の鞍乗り型車両の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、制御信号を出力したときの鞍乗り型車両の挙動を示す従来の信号波形図である。
図9図9は、制御信号の出力時の鞍乗り型車両の挙動を示す信号波形図である。
図10図10は、運転者が操作を行った場合の鞍乗り型車両の挙動を示す信号波形図である。
図11図11は、第5マップを示す図である。
図12図12は、第6マップを示す図である。
図13図13は、第2実施形態の鞍乗り型車両の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。ハンドル21は、操作部として、スロットルグリップ40が設けられている。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、駆動装置としてエンジンを含む。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
鞍乗り型車両10は、操舵輪である前輪13と、懸架装置31と、操舵輪13を操舵するハンドル21と、操舵輪13を支持する懸架装置31に操舵方向のトルクを付与するステアリングダンパ145と、第2制御部150と、を備える。
【0016】
(触覚刺激システムの構成)
図2は、触覚刺激システム1の構成を示すブロック図である。
図2を参照しながら触覚刺激装置50の構成と、鞍乗り型車両10の制御系の構成とについて説明する。
【0017】
まず、触覚刺激装置50の構成について説明する。
触覚刺激装置50は、鞍乗り型車両10の運転者が着用するヘルメットやグローブ、ブーツの少なくとも1つに搭載される。
図2には、触覚刺激装置50が、触覚刺激装置50A、50B、50C、50D及び50Eの5つを備える場合を例示するが、運転者に搭載される触覚刺激装置50の数は5つに限定されない。例えば、触覚刺激装置50Aは、運転者の装着するヘルメットに搭載され、触覚刺激装置50B及び50Cは、運転者の装着する左右のグローブにそれぞれ搭載され、触覚刺激装置50D及び50Eは、運転者の装着するブーツに搭載される。触覚刺激装置50B及び50Cは、運転者がグローブを装着し、鞍乗り型車両10に搭乗した状態において、運転者の手の甲側等のハンドル21とは接触しない位置に設置される。触覚刺激装置50D及び50Eは、運転者がブーツを装着し、鞍乗り型車両10に搭乗した状態において、鞍乗り型車両10とは接触しないブーツの外側に設置される。これにより、触覚刺激装置50による触覚刺激と、鞍乗り型車両10の振動との区別が容易になる。
【0018】
以下では、触覚刺激装置50A、50B、50C、50D及び50Eを総称する場合、触覚刺激装置50と表記する。また、触覚刺激装置50の構成部品についても同様である。例えば、第1制御部53A、第1制御部53B、第1制御部53C、第1制御部53D及び第1制御部53Eを総称する場合、第1制御部53と表記する。
また、図2の説明では、触覚刺激装置50A、50B、50C、50D及び50Eは同一の構成を備えるため、以下のでは、触覚刺激装置50Aの構成について説明する。
【0019】
触覚刺激装置50Aは、第1無線通信部51A、第1制御部53A、電動エアポンプ55A及びバルーン57Aを備える。
【0020】
第1無線通信部51Aは、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信の通信規格に対応したハードウェアであるインターフェイス回路を備える。第1無線通信部51Aは、鞍乗り型車両10と無線通信を行い、鞍乗り型車両10から送信される制御信号を受信する。第1無線通信部51Aは、受信した制御信号を第1制御部53Aに出力する。
【0021】
第1制御部53Aは、CPU(Central Processing Unit)やMPUmicro processor unit)等のプロセッサと、メモリとを備える電子制御装置である。
【0022】
第1制御部53Aは、鞍乗り型車両10から受信した制御信号に従って電動エアポンプ55Aを駆動する。より詳細には、第1制御部53Aは、バルーン57A内部の圧力が、制御信号に含まれる実駆動圧力Pの値となるように電動エアポンプ55Aを駆動する。実駆動圧力Pについては後述する。
【0023】
電動エアポンプ55Aは、第1制御部53Aの制御に従ってバルーン57Aに空気を送る。本実施形態では、電動エアポンプ55Aによりバルーン57Aを膨張させることで運転者に触覚刺激を与える構成について説明するが、バルーン57Aに代えてバイブレータを用いてもよい。
【0024】
次に、鞍乗り型車両10の制御系の構成について説明する。
鞍乗り型車両10は、ナビゲーション装置110、第1検出部120、第2検出部130、加圧モジュレータ141、スロットルアクチュエータ143、ステアリングダンパ145、第2無線通信部147及び第2制御部150を備える。
【0025】
第1検出部120は、鞍乗り型車両10の状態を検出する検出部である。第1検出部120は、IMU(Inertial Measurement Unit)121、エンジン回転数センサ123、車輪速センサ125、スロットルグリップ開度センサ127及びスロットルバルブ開度センサ129を備える。
第2検出部130は、鞍乗り型車両10の周囲の外気温等の環境を検出する検出部である。第2検出部130は、鞍乗り型車両10の周囲の環境を測定する環境センサを備える。本実施形態の第2検出部130は、外気温センサ131を備えるが、他の環境センサを備える構成であってもよい。
【0026】
ナビゲーション装置110は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信器を備え、受信したGNSS信号に基づいて鞍乗り型車両10の位置を示す緯度や経度を算出する。また、ナビゲーション装置110は、地図データを備え、運転者により設定された目的地までの誘導経路を探索し、探索した誘導経路に従った鞍乗り型車両10の走行を案内する。
ナビゲーション装置110は、鞍乗り型車両10が右折や左折等のタイミングになると、右折や左折のタイミングであることを通知する通知信号を第2制御部150に出力する。
【0027】
IMU121は、鞍乗り型車両10の姿勢を検出する。IMU121は、鞍乗り型車両10の姿勢として、互いに直行する前後、左右、及び上下の3軸方向の加速度と、ピッチ、ロール、及びヨーの3軸方向の角速度とを検出する。IMU121は、検出した3軸方向の加速度及び角速度を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。第2制御部150は入力されたセンサデータをメモリ170に記憶させる。
【0028】
エンジン回転数センサ123は、エンジンの回転数を検出し、検出した回転数を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。車輪速センサ125は、駆動輪の車輪速を検出し、検出した車輪速を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。第2制御部150は入力されたセンサデータをメモリ170に記憶させる。
【0029】
スロットルグリップ開度センサ127は、スロットルグリップの開度を検出する。スロットルグリップ開度センサ127は、検出したスロットルグリップの開度を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。スロットルバルブ開度センサ129は、スロットルバルブの開度を検出する。スロットルバルブ開度センサ129は、検出したスロットルバルブの開度を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。第2制御部150は入力されたセンサデータをメモリ170に記憶させる。
【0030】
第2検出部130の外気温センサ131は、外気温を測定し、測定した外気温を示すセンサデータを第2制御部150に出力する。第2制御部150は入力されたセンサデータをメモリ170に記憶させる。
【0031】
加圧モジュレータ141は、アクチュエータの駆動力により油圧式ブレーキを作動させる油圧を発生させる装置である。
【0032】
スロットルアクチュエータ143は、スロットル操作に応じてスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。
【0033】
ステアリングダンパ145は、制振装置であり、操舵輪13を支持する懸架装置31に減衰トルクを付与し、ステアリングであるハンドル21の振れを抑制する。
【0034】
第2無線通信部147は、通信部に相当する。例えば、Wi-FiやBluetooth等の近距離無線通信の通信規格に対応したハードウェア回路であるインターフェイス回路を備え、触覚刺激装置50とデータ通信を行う。
【0035】
第2制御部150は、入出力インターフェイス160や、メモリ170、プロセッサ180等を備える電子制御装置である。
【0036】
入出力インターフェイス160は、図2に示すナビゲーション装置110や、第1検出部120、第2検出部130等の外部の装置に接続される。入出力インターフェイス160は、第2制御部150がこれら外部の装置と通信を行うインターフェイス回路である。
【0037】
メモリ170は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)を備える。
メモリ170は、制御プログラム171、運転コーチングデータ172、第1マップ173、第2マップ174、第3マップ175、第4マップ176、第5マップ177及び第6マップ178を記憶する。
【0038】
制御プログラム171は、プロセッサ180が実行するプログラムである。
運転コーチングデータ172は、鞍乗り型車両10を安全に、かつ低燃費で走行させるために、運転者にアクセルやブレーキのタイミング等を通知して運転者を指導するために用いるデータである。
第1マップ173、第2マップ174、第3マップ175、第4マップ176、第5マップ177及び第6マップ178についての詳細な説明は後述する。
【0039】
プロセッサ180は、例えば、CPUやMPU等により構成される。プロセッサ180は、メモリ170が記憶する制御プログラム171を実行して鞍乗り型車両10の各部を制御する。
【0040】
第2制御部150は、触覚刺激装置300に送信する制御信号を生成する。第2制御部150は、生成した制御信号を触覚刺激装置300に送信する。制御信号は、電動エアポンプ55を動作させ、バルーン57を膨張させる信号である。
【0041】
まず、第2制御部150は、運転者への通知があるか否かを判定する。また、第2制御部150は、運転者への通知がある場合、通知種類が、以下のいずれに該当するかを判定する。通知種類には、第1通知~第5通知の5つの通知が含まれる。
【0042】
第1通知は、車両の挙動に関する通知である。より詳細には、鞍乗り型車両10が旋回動作中に、鞍乗り型車両10の後輪にブレーキをかけて、後輪の荷重を増加させるタイミングに関する通知である。第2制御部150は、鞍乗り型車両10の旋回動作中に、加圧モジュレータ141により後輪にブレーキを付与して後輪の荷重を増加させる。これにより鞍乗り型車両10の旋回動作中の旋回効率を向上させることができる。
【0043】
第2通知は、運転者に注意力が低下していることを通知する通知である。第2制御部150は、例えばIMU121のセンサデータに基づき鞍乗り型車両10の車体がフラついていると判定した場合、運転者の集中力が低下していると判定し、触覚刺激装置300が発生する触覚刺激を運転者に付与する。
【0044】
第3通知は、運転の技術指導に関する通知である。第2制御部150は、運転コーチングデータ172に基づき、アクセルやブレーキのタイミングであると判定した場合に触覚刺激装置300を動作させ、触覚刺激装置300が発生する触覚刺激を運転者に付与する。
【0045】
第4通知は、ナビゲーションやオーディオに関する通知である。第2制御部150は、ナビゲーション装置110から右折や左折のタイミングを通知する通知信号が入力されると、触覚刺激装置300を動作させ、触覚刺激装置300が発生する触覚刺激を運転者に付与する。
【0046】
第5通知は、電子メールを受信した場合の通知である。例えば、第2制御部150が運転者の所持する携帯端末に接続され、携帯端末から電子メールの受信を通知する通知信号を受信した場合に、第2制御部150は、触覚刺激装置300を動作させ、触覚刺激装置300が発生する触覚刺激を運転者に付与する。
【0047】
第2制御部150は、運転者への通知があると判定し、判定した通知の通知種類を判定すると、第1検出部120や第2検出部130が検出したセンサデータをメモリ170から読み出す。
第2制御部150は、読み出したセンサデータに基づき、基本駆動圧力Pb、第1補正係数Ks、第2補正係数Kt、及び第3補正係数Kaを算出する。
【0048】
図3は、第1マップ173を示す図である。
図3に示すように第1マップ173は、エンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定したマップである。第2制御部150は、エンジン回転数センサ123が検出したエンジン回転数に基づき、図3に示すマップを参照して基本駆動圧力Pbを取得する。エンジン回転数が上がるほど、鞍乗り型車両10の振動は大きくなる。このため、エンジン回転数が上がるほど、触覚刺激装置300が運転者に付与する触覚刺激が大きくなるように、基本駆動圧力Pbが設定されている。
【0049】
また、基本駆動圧力Pbは、通知種類によって圧力の値が変更される。第1マップ173には、第1曲線201、第2曲線202、第3曲線203、第4曲線204及び第5曲線205の5つの曲線が登録される。
第1曲線201は、通知種類が第1通知である場合のエンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定する曲線である。
第2曲線202は、通知種類が第2通知である場合のエンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定する曲線である。
第3曲線203は、通知種類が第3通知である場合のエンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定する曲線である。
第4曲線204は、通知種類が第4通知である場合のエンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定する曲線である。
第5曲線205は、通知種類が第5通知である場合のエンジン回転数と、基本駆動圧力Pbとの関係を規定する曲線である。
【0050】
エンジン回転数が同一である場合、第1通知の基本駆動圧力Pbが最も大きくなるように設定されている。以下、第2通知、第3通知、第4通知の順に、基本駆動圧力Pbが大きくなるように設定され、第5通知の基本駆動圧力Pbが最も小さくなるように設定されている。第1通知である車両の挙動に関する通知や、第2通知である運転者の注意力の低下の通知等、鞍乗り型車両10の運転操作に関わる通知ほど、基本駆動圧力Pbが大きく設定されている。
【0051】
また、第1曲線201~第5曲線205のいずれも、エンジンの回転数が第1回転数R1である場合の基本駆動圧力Pbの大きさよりも、第1回転数R1よりも回転数が大きい第2回転数R2である場合の基本駆動圧力Pbが大きくなるように設定されている。
エンジンの回転数が大きくなるほど、エンジンの振動や音により運転者が触覚刺激装置300の付与する触覚刺激に気がつき難くなる。このため、エンジン回転数が大きくなるほど、基本駆動圧力Pbが大きくなるように設定している。
【0052】
図4は、第2マップ174を示す図である。
図4に示すように、第2マップ174は、車速と、第1補正係数Ksとの関係を規定したマップである。第1補正係数Ksは、基本駆動圧力Pbを補正する係数である。第2制御部150は、車輪速センサ125が検出した車輪速に基づいて鞍乗り型車両10の車速を算出する。第2制御部150は、算出した車速に基づいて第2マップ174を参照し、車速に対応する第1補正係数Ksを取得する。
【0053】
車速が第1車速V1である場合の第1補正係数Ksの値は、車速が第1車速V1よりも大きい第2車速V2である場合の第1補正係数Ksの値よりも小さい。後述するように、第1補正係数Ksの値が大きいほど、触覚刺激装置300に通知する実駆動圧力Pとして大きい値が設定されるため、車速が第2車速V2である場合の実駆動圧力Pは、車速が第1車速V1である場合の実駆動圧力Pよりも大きくなる。
【0054】
また、第2マップ174は、車速が第2車速V2よりも大きい第3車速V3以上では、車速の変化によらず第1補正係数Ksは一定値となるように車速と第1補正係数Ksとの関係が規定されている。
【0055】
図5は、第3マップ175を示す図である。
第3マップ175は、図5に示すように外気温と、第2補正係数Ktとの関係を規定したマップである。第2補正係数Ktは、基本駆動圧力Pbを補正する係数である。第2制御部150は、外気温センサ131が検出した外気温に基づいて第3マップ175を参照し、外気温に対応する第2補正係数Ktを取得する。
【0056】
外気温が第1外気温T1である場合の第2補正係数Ktの値は、外気温が第1外気温T1よりも低い第2外気温T2である場合の第2補正係数Ktの値よりも小さい。後述するように、第2補正係数Ktの値が大きいほど、触覚刺激装置300に通知する実駆動圧力Pの値が大きくなるため、外気温が第2外気温T2である場合の実駆動圧力Pは、外気温が第1外気温T1である場合の実駆動圧力Pよりも大きくなる。
【0057】
また、第3マップ175は、外気温が第1外気温T1よりも高い第3外気温T3以上では、外気温の変化によらず第2補正係数Ktは一定値となるように外気温と第2補正係数Ktとの関係が規定されている。
【0058】
図6は、第4マップ176を示す図である。
第4マップ176は、図6に示すように加速度と、第3補正係数Kaとの関係を規定したマップである。第3補正係数Kaは、基本駆動圧力Pbを補正する係数である。
第2制御部150は、IMU121が検出した鞍乗り型車両10の進行方向の加速度に基づいて第4マップ176を参照し、加速度に対応する第3補正係数Kaを取得する。
【0059】
鞍乗り型車両10の加速度が第1加速度A1である場合の第3補正係数Kaの値は、加速度が第1加速度A1よりも大きい第2加速度A2である場合の第3補正係数Kaの値よりも小さい。後述するように、第3補正係数Kaの値が大きいほど、触覚刺激装置300に通知する実駆動圧力Pの値が大きくなる。このため、加速度が第2加速度A2である場合の実駆動圧力Pは、加速度が第1加速度A1である場合の実駆動圧力Pよりも大きくなる。
【0060】
また、第4マップ176は、加速度が第2加速度A2よりも高い第3加速度A3以上では、加速度の変化によらず第3補正係数Kaは一定値となるように加速度と第3補正係数Kaとの関係が規定されている。
【0061】
第2制御部150は、基本駆動圧力Pb、第1補正係数Ks、第2補正係数Kt及び第3補正係数Kaの値を取得すると、取得したこれらの値に基づき、電動エアポンプ55を駆動してバルーン57に注入する実際の圧力である実駆動圧力Pを算出する。実駆動圧力Pは、基本駆動圧力Pbと、第1補正係数Ksと、第2補正係数Ktと、第3補正係数Kaとの積により算出される。このため、第1補正係数Ks、第2補正係数Kt及び第3補正係数Kaの値が大きくなるほど、実駆動圧力Pの値は大きくなる。実駆動圧力Pの算出式を以下の式(1)に示す。
P=Pb・Ks・K・Ka・・・(1)
【0062】
第2制御部150は、算出した実駆動圧力Pの値を含む制御信号を生成する。第2制御部150は、生成した制御信号を触覚刺激装置300に送信する。
【0063】
第1制御部53は、鞍乗り型車両10から制御信号を受信すると、受信した制御信号が示す実駆動圧力Pを取得する。第1制御部53は、取得した実駆動圧力Pに基づいて電動エアポンプ55を駆動させる。これによりバルーン57は、バルーン57内の圧力が実駆動圧力Pとなるように膨張する。
【0064】
(第1実施形態の鞍乗り型車両10の動作)
図7は、第2制御部150の動作を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートを参照しながら第2制御部150の動作について説明する。
まず、第2制御部150は、運転者への通知が発生したか否かを判定する(ステップS1)。第2制御部150は、運転者への通知が発生していないと判定した場合(ステップS1/NO)、通知が発生するまで待機する。
【0065】
第2制御部150は、運転者への通知が発生したと判定すると(ステップS1/YES)、発生した通知の種類を判定する(ステップS2)。
次に、第2制御部150は、センサデータをメモリ170から取得する(ステップS3)。センサデータには、IMU121、エンジン回転数センサ123、車輪速センサ125、外気温センサ131が検出したセンサデータが含まれる。
【0066】
次に、第2制御部150は、基本駆動圧力Pbを取得する(ステップS4)。第2制御部150は、センサデータとして取得した車速に基づいて第2マップ174を参照し、車速に対応する第1補正係数Ksを取得する。
【0067】
次に、第2制御部150は、第1補正係数Ksを取得する(ステップS5)。第2制御部150は、センサデータとして取得した車速に基づいて第2マップ174を参照し、車速に対応する第1補正係数Ksを取得する。
【0068】
次に、第2制御部150は、第2補正係数Ktを取得する(ステップS6)。第2制御部150は、センサデータとして取得した外気温に基づいて第3マップ175を参照し、外気温に対応する第2補正係数Ktを取得する。
【0069】
次に、第2制御部150は、第3補正係数Kaを取得する(ステップS7)。第2制御部150は、センサデータとして取得した加速度に基づいて第4マップ176を参照し、加速度に対応する第3補正係数Kaを取得する。
【0070】
次に、第2制御部150は、実駆動圧力Pを算出する(ステップS8)。
第2制御部150は、基本駆動圧力Pbと、第1補正係数Ksと、第2補正係数Ktと、第3補正係数Kaとを乗算して実駆動圧力Pを算出する。
【0071】
次に、第2制御部150は、実駆動圧力Pの値を通知する制御信号を生成する(ステップS9)。第2制御部150は、生成した制御信号を触覚刺激装置300に送信する(ステップS10)。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の鞍乗り型車両10の構成は、上述した第1実施形態の鞍乗り型車両10と同一であるため、鞍乗り型車両10の構成についての説明は省略する。
【0073】
触覚刺激装置300による運転者への触覚刺激の付与は、運転者が意図しないタイミングで付与されると、運転者が意図しない操作を行ってしまい、鞍乗り型車両10の挙動が不安定になる場合があった。このため、第2実施形態の鞍乗り型車両10は、運転者の意図しない操作により鞍乗り型車両10の挙動が不安定にあることを抑制することを目的とする。
【0074】
図8は、制御信号を出力したときの鞍乗り型車両10の挙動を示す従来の信号波形図である。
図8には、制御信号の出力(A)と、スロットルグリップ開度(B)と、スロットルバルブ開度(C)と、ピッチング角の変化(D)と、ハンドル21の振れ(F)とを示す。
第2制御部150から制御信号が送信されることで、運転者は、バルーン57の膨張による触覚刺激を受ける。運転者は、受けた触覚刺激が意図しない刺激であった場合、スロットルグリップを意図せず操作してしまう場合がある。この場合、図8(B)に示すようにスロットルグリップ開度が一時的に大きくなる。また、スロットルグリップ開度が大きくなることで、図8(C)に示すように、スロットルバルブ開度も大きくなり、鞍乗り型車両10に駆動力が発生する。これにより、図8(D)に示すように、ピッチング角に変化が生じる。また、ピッチング角に変化が生じることで、図8(F)に示すようにハンドル21振れが生じる。
【0075】
このような運転者の意図しない操作により鞍乗り型車両10の車体の挙動が不安定になることを抑制するため、第2制御部150は、以下の制御を行う。
まず、第2制御部150は、制御信号の出力から一定時間の間、スロットルグリップの操作を受けても、受け付けた操作に対するスロットルバルブ開度の変化を低減する。以下、一定時間を判定期間という。
また、第2制御部150は、制御信号の出力から判定期間が経過するまでの間、ステアリングダンパ145により減衰トルクを発生させ、ハンドル21の振れを抑制する。
【0076】
図9は、第2実施形態において、制御信号が出力されたときの鞍乗り型車両10の車体の挙動を示す信号波形図である。図9には、制御信号の出力(A)と、スロットルグリップ開度(B)と、スロットルバルブ開度(C)と、ピッチング角の変化(D)と、ステアリングダンパ145の減衰トルク(E)と、ハンドル21の振れ(F)とを示す。
【0077】
第2制御部150から制御信号が出力されることで、運転者は、バルーン57の膨張による触覚刺激を受ける。運転者は、意図しない触覚刺激を受けたことで、スロットルグリップを意図せず操作してしまい、図9(B)に示すようにスロットルグリップ開度が一時的に大きくなる。しかし、第2実施形態では、スロットルグリップの操作量に対するスロットルバルブ開度の変化量を低減させる制御を行う。具体的には、スロットルバルブ開度の変更速度に上限値を設定し、スロットルバルブ開度の変更速度が、この上限値を超えないようにスロットルバルブ開度の変化量を低減させる。これにより、図9(C)に示すようにスロットルバルブ開度の変化が低減される。また、図9(E)に示すようにステアリングダンパ145により減衰トルクを発生させることで、図9(F)に示すように、ハンドル21の振れが小さく抑制される。
【0078】
図10は、運転者が、制御信号に応じて意図してスロットルグリップを操作した場合の鞍乗り型車両10の挙動を示す図である。図10も、制御信号の出力(A)と、スロットルグリップの開度(B)と、スロットルバルブ開度(C)と、ピッチング角の変化(D)と、ステアリングダンパ145の減衰トルク(E)と、ハンドル21の振れ(F)とを示す。
第2制御部150は、触覚刺激装置300に制御信号を送信してから判定期間が経過するまでの間、スロットルグリップ開度が予め設定されたしきい値以上となったか否かを判定する。第2制御部150は、判定期間が経過する前に、スロットルグリップ開度がしきい値以上になった場合、スロットルグリップの操作に対するスロットルバルブ開度の変化を低減させる制御を、判定期間が経過する前に停止させる。第2制御部150は、運転者がスロットルグリップを意図して操作したと判定し、スロットルグリップの操作に対するスロットルバルブ開度の変化を低減させる制御を停止させる。
【0079】
スロットルグリップの操作量に対するスロットルバルブ開度の変化量を低減させる制御を、判定期間が経過する前に停止させたため、図10に示す時刻sよりも前と、時刻sよりも後とで、図10(C)に示すようにスロットルバルブ開度の変化量が変化する。図10に示す時刻sは、スロットルグリップ開度が予め設定されたしきい値以上となり、スロットルグリップの操作に対するスロットルバルブ開度の変化を低減させる制御を停止させたタイミングである。
【0080】
また、図10(D)に示すように時刻sよりも前と、時刻sよりも後とで、ピッチング角の増加量にも変化が生じる。スロットルグリップの操作に対するスロットルバルブ開度の変化を低減させる制御を停止させたため、時刻sよりも後では、ピッチング角の増加量が大きくなる。
また、図10(E)に示す時刻sまでは、ステアリングダンパ145に減衰トルクを発生させ、時刻sよりも後では、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを低減するため、図10(F)に示すように時刻sよりも後では、ハンドル21の振れが大きくなる。
【0081】
図11は、第5マップ177を示す図である。
第5マップ177は、図11に示すように鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値と、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値との関係を規定したマップである。第5マップ177には、車体のロール角の絶対値と、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値との関係が、第1通知~第5通知の通知ごとに登録されている。
第2制御部150は、IMU121が検出した車体のロール角の絶対値と、通知種類とに基づいて第5マップ177を参照し、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を取得する。第2制御部150は、スロットルバルブ開度センサ129が検出するスロットルバルブ開度の変更速度が、取得した変更速度の上限値を超えないようにスロットルバルブ開度を制御する。
【0082】
スロットルバルブ開度の変更速度の上限値は、通知種類によって変更される。
第5マップ177には、第1曲線211、第2曲線212、第3曲線213、第4曲線214及び第5曲線215の5つの曲線が登録される。
第1曲線211は、通知種類が第1通知である場合のスロットルバルブ開度の変更速度の上限値を規定する曲線である。
第2曲線212は、通知種類が第2通知である場合のスロットルバルブ開度の変更速度の上限値を規定する曲線である。
第3曲線213は、通知種類が第3通知である場合のスロットルバルブ開度の変更速度の上限値を規定する曲線である。
第4曲線214は、通知種類が第4通知である場合のスロットルバルブ開度の変更速度の上限値を規定する曲線である。
第5曲線215は、通知種類が第5通知である場合のスロットルバルブ開度の変更速度の上限値を規定する曲線である。
【0083】
図3を参照して説明したように運転者への通知には、第1通知~第5通知までの5種類の通知があり、基本駆動圧力Pbの設定は、第1通知~第5通知でそれぞれ変更される。第1通知や、第2通知等の基本駆動圧力Pbが高く設定される通知ほど、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値が低くなるように設定される。これにより、触覚刺激が強い通知ほど、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を低くすることができ、運転者の意図しない操作を抑制して、鞍乗り型車両10の挙動を安定化させることができる。
【0084】
また、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値は、鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値が小さいほど、値が大きく設定され、ロール角の絶対値が大きくなるほど、値が小さくなるように設定される。鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値が大きく、鞍乗り型車両10が不安定な状態では、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を小さく設定することで、鞍乗り型車両10の挙動を安定化させることができる。また、鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値が小さく、鞍乗り型車両10が安定した状態では、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を大きく設定することで、運転者に触覚刺激による情報の通知精度を高めることができる。
【0085】
また、第2制御部150は、第1検出部120が検出したロール角が第1ロール角U1であるときのスロットルバルブ開度の変化が、ロール角が第1ロール角U1よりも小さい第2ロール角U2であるときのスロットルバルブ開度の変化よりも小さくなるようにスロットルバルブを制御する。ロール角が大きくなるほど、スロットルバルブ開度を制限することができ、鞍乗り型車両10の挙動を安定させることができる。
【0086】
図12は、第6マップ178を示す図である。
第6マップ178は、図12に示すように鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値と、ステアリングダンパ145により発生させる減衰トルクとの関係を規定したマップである。図12に示す第6マップ178は、鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値と、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクとの関係が、第1通知~第5通知の通知ごとに登録されている。
第2制御部150は、IMU121が検出した車体のロール角の絶対値と、通知種類とに基づいて第6マップ178を参照し、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクの値を取得する。
【0087】
ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクの値は、通知種類によって変更される。
第6マップ178には、第1曲線221、第2曲線222、第3曲線223、第4曲線224及び第5曲線225の5つの曲線が登録される。
第1曲線221は、通知種類が第1通知である場合にステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを示す曲線である。
第2曲線222は、通知種類が第2通知である場合にステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを示す曲線である。
第3曲線223は、通知種類が第3通知である場合にステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを示す曲線である。
第4曲線224は、通知種類が第4通知である場合にステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを示す曲線である。
第5曲線225は、通知種類が第5通知である場合にステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクを示す曲線である。
【0088】
図3を参照して説明したように運転者への通知には、第1通知~第5通知までの5種類の通知があり、基本駆動圧力Pbの設定が第1通知~第5通知によって変更される。第1通知や、第2通知等の基本駆動圧力Pbが高く設定される通知ほど、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクの値を大きくすることで、ハンドル21の振れをより効果的に抑制することできる。
【0089】
また、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクは、鞍乗り型車両10の車体のロール角の絶対値が小さいほど、減衰トルクの値が大きく設定され、ロール角の絶対値が大きくなるほど、減衰トルクの値が小さくなるように設定されている。
【0090】
また、第2制御部150は、ロール角が第1ロール角U3であるときに、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクは、ロール角が第1ロール角U3よりも小さい第2ロール角U4であるときに、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクよりも小さくなるようにステアリングダンパ145を制御する。
ロール角が小さい場合には、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクによりハンドル21の振れを抑制することができる。
【0091】
(第2実施形態の鞍乗り型車両の動作)
図13は、第2実施形態の第2制御部150の動作を示すフローチャートである。
図13に示すフローチャートを参照しながら第2制御部150の動作を説明する。図13に示すステップT1~T7の動作は、図7に示す第1実施形態の第2制御部150の動作と同一であるため、詳細な説明は省略する。
第2制御部150は、第3補正係数Kaを取得すると(ステップT7)、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を、第5マップ177を参照して取得する(ステップT8)。第2制御部150は、車体のロール角の絶対値と、ステップT2で判定した通知種類とに基づいて第5マップ177を参照し、スロットルバルブ開度の変更速度の上限値を取得する(ステップT8)。
【0092】
次に、第2制御部150は、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクの値を、第6マップ178を参照して取得する(ステップT9)第2制御部150は、車体のロール角の絶対値とステップT2で判定した通知種類とに基づいて第6マップ178を参照し、ステアリングダンパ145に発生させる減衰トルクの値を取得する(ステップT9)。
【0093】
次に、第2制御部150は、ステップT4~ステップT7で取得した基本駆動圧力Pbと、第1補正係数Ksと、第2補正係数Ktと、第3補正係数Kaとを乗算して実駆動圧力Pを算出する(ステップT10)。そして、第2制御部150は、算出した実駆動圧力Pを通知する制御信号を生成し(ステップT11)、生成した制御信号を触覚刺激装置300に送信する(ステップT12)。
【0094】
次に、第2制御部150は、スロットルグリップの操作量に対するスロットルバルブ開度の変更速度が、ステップT8で取得した上限値以上にならないようにスロットルバルブ開度を制限する(ステップT13)。第2制御部150は、スロットルグリップ開度センサ127が検出するスロットルグリップ開度と、スロットルバルブ開度センサ129が検出するスロットルバルブ開度とを取得する。第2制御部150は、検出したスロットルグリップ開度によりスロットルグリップの操作量を算出する。第2制御部150は、算出した操作量に基づいてスロットルバルブ開度を変更するが、スロットルバルブ開度の変更速度が、ステップT8で取得した上限値以上にならないようにスロットルバルブ開度を制限する(ステップT13)。また、第2制御部150は、ステアリングダンパ145に、ステップT9で取得した減衰トルクを発生させる(ステップT14)。
【0095】
次に、第2制御部150は、スロットルグリップ開度センサ127が検出したスロットルグリップの操作量がしきい値以上になったか否かを判定する(ステップT15)。第2制御部150は、スロットルグリップの操作量がしきい値以上になった場合(ステップT15/YES)、スロットルバルブの変更速度の制限を解除し(ステップT17)、ステアリングダンパ145に減衰トルクの発生を終了させる(ステップT18)。
【0096】
また、第2制御部150は、スロットルグリップの操作量がしきい値以上ではないと判定した場合(ステップT15/NO)、触覚刺激装置300に制御信号を送信してからの経過時間が判定期間を経過したか否かを判定する(ステップT16)。第2制御部150は、経過時間が判定期間を経過していない場合(ステップT16/NO)、ステップT15の判定に戻る。
【0097】
また、第2制御部150は、触覚刺激装置300に制御信号を送信してからの経過時間が判定期間を経過した場合(ステップT16/YES)、スロットルバルブの変更速度の制限を解除する(ステップT17)。また、第2制御部150は、ステアリングダンパ145に減衰トルクの発生を終了させる(ステップT18)。
【0098】
なお、上述の実施の形態では、鞍乗り型車両10は、スクータタイプではない自動二輪車の場合を説明したが、スクータタイプの自動二輪車、トライクやATVなどと称される三輪タイプや四輪タイプなどの任意の鞍乗り型車両でもよいし、四輪自動車であってもよい。
【0099】
(上記実施の形態によりサポートされる構成)
上記実施の形態は、以下の構成の具体例である。
【0100】
(構成1)鞍乗り型車両を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対する運転者の操作を受け付ける操作部と、運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置と通信する通信部と、前記駆動装置と前記触覚刺激装置とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記触覚刺激装置を制御する制御信号を前記触覚刺激装置に送信した後に、前記駆動装置に対する操作を前記操作部により受け付けると、前記駆動装置の前記操作に対する反応を制限することを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、制御信号を前記触覚刺激装置に送信した後に、駆動装置に対する操作を前記操作部により受け付けると、駆動装置の操作に対する反応が制限される。このため、運転者の不意の操作に対する車両の挙動が抑制される。
【0101】
(構成2)前記制御部は、前記制御信号の送信から設定された時間を経過すると、前記駆動装置の前記操作に対する反応の制限を解除することを特徴とする構成1記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、付与した触覚刺激に対する運転者の不意の操作だけを制限することができる。
【0102】
(構成3)前記制御部は、前記操作部が受け付けた前記操作の操作量がしきい値以上である場合、前記駆動装置の前記操作に対する反応の制限を解除することを特徴とする構成1又は2記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、運転者の意思による操作によって駆動装置の反応が制限されるのを防止することができる。
【0103】
(構成4)前記鞍乗り型車両は、前記鞍乗り型車両のロール角を検出する検出部を備え、前記制御部は、前記検出部が検出した前記ロール角が第1ロール角であるときに、前記駆動装置の前記操作に対する反応を制限する制限量が、前記ロール角が前記第1ロール角よりも小さい第2ロール角であるときに、前記駆動装置の前記操作に対する反応を制限する制限量を小さくすることを特徴とする構成1から3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ロール角が大きくなるほど、駆動装置の反応を制限することができ、鞍乗り型車両の挙動を安定させることができる。
【0104】
(構成5)前記駆動装置(12)は、エンジンであり、前記制御部は、前記操作によりスロットルバルブを開く速度を、前記制御信号を前記触覚刺激装置に送信していないときに前記操作によりスロットルバルブを開く速度よりも遅くすることを特徴とする構成1から4のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、簡易な制御により駆動装置の反応を制限することができる。
【0105】
(構成6)前記鞍乗り型車両は、ステアリングの振れを抑制するステアリングダンパを備え、前記制御部は、前記触覚刺激装置を制御する制御信号を前記触覚刺激装置に送信した後に、前記ステアリングダンパに減衰トルクを発生させることを特徴とする構成1から3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、運転者の不意の操作により車両の挙動が不安定になるのを抑制することができる。
【0106】
(構成7)前記鞍乗り型車両は、前記鞍乗り型車両のロール角を検出する検出部を備え、前記制御部は、前記検出部が検出した前記ロール角が第1ロール角であるときに、前記ステアリングダンパに発生させる減衰トルクが、前記ロール角が前記第1ロール角よりも小さい第2ロール角であるときに、前記ステアリングダンパに発生させる減衰トルクよりも小さくなるように前記ステアリングダンパを制御することを特徴とする構成6記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ロール角が小さい場合には、ステアリングダンパに発生させる減衰トルクにより鞍乗り型車両のふらつきを抑制し、ロール角が大きい場合には、ステアリングダンパに発生させる減衰トルクを小さくし、乗り型車両の挙動が不安定になるのを抑制することができる。
【0107】
(構成8)触覚刺激による前記運転者への通知には、前記鞍乗り型車両の挙動に関する通知である第1通知と、前記運転者の注意力の低下を通知する第2通知と、運転の技術指導に関する通知である第3通知と、ナビゲーションに関する通知である第4通知と、を含み、前記制御部は、前記運転者に前記第1通知、前記第2通知、前記第3通知及び前記第4通知を通知する場合の触覚刺激の大きさをそれぞれ変更することを特徴とする構成1から7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、第1通知、第2通知、第3通知及び第4通知を通知する場合の触覚刺激の大きさが変更されるので、運転者に第1通知、第2通知、第3通知及び第4通知を触覚刺激により認識させることができる。
【0108】
(構成9)運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)、鞍乗り型車両(10)と、を備える触覚刺激システム(1)であって、前記鞍乗り型車両(10)は、鞍乗り型車両を駆動する駆動装置(12)と、前記駆動装置(12)に対する運転者の操作を受け付ける操作部(40)と、運転者に触覚刺激を与える触覚刺激装置(50)と通信する通信部(147)と、前記駆動装置(12)と前記触覚刺激装置(50)とを制御する制御部(150)と、を備え、前記制御部(150)は、前記触覚刺激装置(50)を制御する制御信号を前記触覚刺激装置(50)に送信した後に、前記駆動装置(12)に対する操作を前記操作部(40)により受け付けると、前記駆動装置(12)の前記操作に対する反応を制限し、前記触覚刺激装置(50)は、前記運転者が着用するヘルメット、グローブ、ブーツの少なくとも1つに搭載されることを特徴とする触覚刺激システム。
この構成によれば、制御信号を前記触覚刺激装置に送信した後に、駆動装置に対する操作を前記操作部により受け付けると、駆動装置の操作に対する反応が制限される。このため、運転者の不意の操作に対する車両の挙動が抑制される。
また、触覚刺激装置がヘルメット、グローブ、ブーツの少なくとも1つに搭載されることにより、触覚刺激を受けていることを認識しやすい部位に触覚刺激装置を配置することができる。
【0109】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
また図7又は図13に示すフローチャートの処理単位は、第2制御部150の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって本開示が制限されることはない。
【0110】
第2制御部150の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【符号の説明】
【0111】
1 触覚刺激システム
10 鞍乗り型車両
50 触覚刺激装置
51 第1無線通信部
53 第1制御部
55 電動エアポンプ
57 バルーン
110 ナビゲーション装
20 第1検出部
121 IMU
125 車輪速センサ
127 スロットルグリップ開度センサ
129 スロットルバルブ開度センサ
130 第2検出部
131 外気温センサ
141 加圧モジュレータ
143 スロットルアクチュエータ
145 ステアリングダンパ
147 第2無線通信部
150 第2制御部
160 入出力インターフェイス
170 メモリ
171 制御プログラム
172 運転コーチングデータ
173 第1マップ
174 第2マップ
175 第3マップ
176 第4マップ
177 第5マップ
178 第6マッ
80 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13