(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】需要予測装置、需要予測方法及び需要予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0202 20230101AFI20250117BHJP
G06Q 10/087 20230101ALI20250117BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20250117BHJP
【FI】
G06Q30/0202
G06Q10/087
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2024555437
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000767
(87)【国際公開番号】W WO2024150404
(87)【国際公開日】2024-07-18
【審査請求日】2024-09-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 光司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀哉
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199282(JP,A)
【文献】特開2009-98788(JP,A)
【文献】特開2004-78487(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0123648(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測装置であり、
予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定する将来在庫推定部
であって、処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定する将来在庫推定部と、
前記将来在庫推定部によって推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測する需要予測部と
を備え
、
前記将来在庫推定部は、前記過去在庫情報が示す在庫量の推移から、前記単位期間当たりの在庫減少量の統計値を計算し、前記統計値を前記対象の単位期間に減少する在庫量であるとする需要予測装置。
【請求項2】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測装置であり、
予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定する将来在庫推定部
であって、処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定する将来在庫推定部と、
前記将来在庫推定部によって推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測する需要予測部と
、
前記供給先における前記予測対象品について物流の過程で生じる遷移を示す物流情報を参照して、前記処理実行時点が属する単位期間までの過去の基準期間の単位期間毎の前記供給先の在庫量を推定する過去在庫推定部と
を備え
、
前記将来在庫推定部は、前記過去在庫推定部によって推定された在庫量を前記過去在庫情報が示す過去の在庫量として、将来の在庫量を推定する需要予測装置。
【請求項3】
前記将来在庫推定部は、前記対象の単位期間の調達リードタイムだけ前の単位期間において前記発注条件を満たす場合には、前記発注量を前記対象の単位期間に増加する在庫量であるとする
請求項
1又は2に記載の需要予測装置。
【請求項4】
前記需要予測装置は、前記予測対象品の事業者間での流れにおける下流側の事業者から順に対象の事業者として、前記対象の事業者の上流側の事業者である前記供給元に対して発生する需要を予測し、
前記将来在庫推定部は、前記対象の事業者に下流側の事業者がない場合には、前記統計値を前記対象の単位期間に減少する在庫量であるとし、前記対象の事業者に下流側の事業者がある場合には、下流側の事業者の需要を前記対象の単位期間に減少する在庫量であるとする
請求項
1に記載の需要予測装置。
【請求項5】
前記過去在庫推定部は、前記処理実行時点が属する単位期間の前記基準期間前の単位期間の在庫量に初期値を設定し、前記基準期間前の単位期間の次の単位期間から前記処理実行時点が属する単位期間まで順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記物流情報が示す前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記物流情報が示す前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記処理実行時点が属する単位期間における在庫量を推定する
請求項
2に記載の需要予測装置。
【請求項6】
前記物流情報は、前記予測対象品を部品として用いて生産される製品である使用製品について物流の過程で生じる遷移を示し、
前記過去在庫推定部は、前記使用製品に使用される前記予測対象品の数を示す部品構成情報を参照して、前記使用製品の生産数から計算される前記予測対象品の使用量を考慮して、前記対象の単位期間に減少する在庫量を特定する
請求項
5に記載の需要予測装置。
【請求項7】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測方法であり、
コンピュータが、予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定し、
処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定し、
コンピュータが、推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測し、
コンピュータが、前記過去在庫情報が示す在庫量の推移から、前記単位期間当たりの在庫減少量の統計値を計算し、前記統計値を前記対象の単位期間に減少する在庫量であるとする需要予測方法。
【請求項8】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測方法であり、
コンピュータが、予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定し、
処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定し、
コンピュータが、推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測
し、
コンピュータが、前記供給先における前記予測対象品について物流の過程で生じる遷移を示す物流情報を参照して、前記処理実行時点が属する単位期間までの過去の基準期間の単位期間毎の前記供給先の在庫量を推定し、
コンピュータが、
推定された在庫量を前記過去在庫情報が示す過去の在庫量として、将来の在庫量を推定する需要予測方法。
【請求項9】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測プログラムであり、
予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定する将来在庫推定処理
であって、処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定する将来在庫推定処理と、
前記将来在庫推定処理によって推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測する需要予測処理と
を行う需要予測装置としてコンピュータを機能させ
、
前記将来在庫推定処理では、前記過去在庫情報が示す在庫量の推移から、前記単位期間当たりの在庫減少量の統計値を計算し、前記統計値を前記対象の単位期間に減少する在庫量であるとする需要予測プログラム。
【請求項10】
単位期間毎に発生する需要を予測する需要予測プログラムであり、
予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定する将来在庫推定処理
であって、処理実行時点が属する単位期間の次の単位期間を起点とする予測期間中の各単位期間を古い方から順に対象として、対象の単位期間の前の単位期間における在庫量に対して、前記対象の単位期間に増加する在庫量を加えるとともに、前記対象の単位期間に減少する在庫量を減らして、前記対象の単位期間における在庫量を計算することにより、前記予測期間中の前記各単位期間における在庫量を推定する将来在庫推定処理と、
前記将来在庫推定処理によって推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測する需要予測処理と
、
前記供給先における前記予測対象品について物流の過程で生じる遷移を示す物流情報を参照して、前記処理実行時点が属する単位期間までの過去の基準期間の単位期間毎の前記供給先の在庫量を推定する過去在庫推定処理と
を行う需要予測装置としてコンピュータを機能させ
、
前記将来在庫推定処理では、前記過去在庫推定処理によって推定された在庫量を前記過去在庫情報が示す過去の在庫量として、将来の在庫量を推定する需要予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、需要の予測をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業又は農業等のサプライチェーンでは、原料の仕入れから最終製品の販売に至るまでの一連の商取引が複数の事業者によってなされる。このサプライチェーンにおいて、在庫管理費用の削減を目的として、製品に対する需要を予測する手法が検討されている。
ここで、需要を予測するとは、製品の供給先からの将来の発注量を予測することである。以下、需要を予測することを指して需要予測と記載する。
【0003】
一般的な需要予測技術では、過去の受注実績のような時系列データを学習することによって予測が行われる。特許文献1には、受注実績から過去の需要発生傾向を学習し、需要予測手法を調整することで需要予測精度を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような、受注実績のデータから季節性又は周期性といった長期的な需要の発生傾向を推定して予測を行う手法では、日々の細かい需要変動に追随した需要予測を行うことができない。
本開示は、日々の細かい需要変動に追随した需要予測を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る需要予測装置は、
予測対象品の供給先において、発注モデル情報が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、前記供給先における将来の在庫量を推定する将来在庫推定部と、
前記将来在庫推定部によって推定された将来の在庫量において、前記発注モデル情報が示す発注条件を満たす時点で、前記発注モデル情報が示す発注量の需要が供給元に対して発生すると予測する需要予測部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、過去の在庫量の推移を用いて将来の在庫量を推定し、将来の在庫量から需要を予測する。これにより、直近の在庫量の変動を考慮することで、日々の細かい需要変動に追随した需要予測を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る需要予測の対象の説明図。
【
図2】実施の形態1に係る需要予測システム100の構成図。
【
図3】実施の形態1に係る需要予測装置10の構成図。
【
図4】実施の形態1に係る入力受付時処理のフローチャート。
【
図5】実施の形態1に係る発注モデル情報61の説明図。
【
図6】実施の形態1に係る過去在庫情報62の説明図。
【
図7】実施の形態1に係る需要予測時処理のフローチャート。
【
図8】実施の形態1に係る将来在庫推定処理の説明図。
【
図9】実施の形態1に係る需要予測結果64の説明図。
【
図10】変形例1に係る需要予測装置10の構成図。
【
図11】実施の形態2に係る需要予測装置10の構成図。
【
図12】実施の形態2に係る商流構造情報65の説明図。
【
図13】実施の形態2に係る需要予測時処理のフローチャート。
【
図14】実施の形態2に係る将来在庫推定処理の説明図。
【
図15】実施の形態2に係る需要予測の対象の説明図。
【
図16】実施の形態3に係る需要予測装置10の構成図。
【
図17】実施の形態3に係る物流情報66の説明図。
【
図18】実施の形態3に係る需要予測時処理のフローチャート。
【
図19】実施の形態3に係る過去在庫推定処理の説明図。
【
図20】実施の形態4に係る需要予測装置10の構成図。
【
図21】実施の形態4に係る部品構成情報68の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1における需要予測は、事業者毎及び製品毎に独立して行われる。そのため、実施の形態1では、
図1に示すように、需要予測の対象となる物品である予測対象品を「部品A」とする。そして、「部品A」の供給先である「事業者A」から、供給元である「事業者X」に対して生じる「部品A」の需要についての需要予測を行う場合を例として説明する。
ここで、「事業者B」又は「部品B」を対象に需要予測を行う場合も、「事業者A」から「事業者X」に対して生じる「部品A」の需要についての需要予測を行う場合と同様の処理により需要予測を行うことが可能である。
【0010】
実施の形態1における需要予測は、日単位又は週単位等、任意の時間単位である単位期間毎に予測を行うことが可能である。以下では、単位期間を1日とし、日単位で需要予測を行う場合を例として説明する。
【0011】
***構成の説明***
図2を参照して、実施の形態1に係る需要予測システム100の構成を説明する。
需要予測システム100は、需要予測装置10と、入力端末51と、出力端末52とを備える。
【0012】
需要予測装置10は、サーバ等のコンピュータである。需要予測装置10は、発注モデル情報61及び過去在庫情報62を入力端末51から受け付け、需要予測を行い、需要予測結果64を出力端末52に出力する。
【0013】
入力端末51は、需要予測装置10を操作するための端末である。入力端末51は、具体例としては、PC、タブレット、又はスマートフォン等である。PCは、Personal Computerの略である。需要予測装置10が入力端末51を兼ねてもよい。また、入力端末51は複数台あってもよい。
【0014】
出力端末52は、需要予測装置10による処理内容を在庫計画立案者に出力するための端末である。出力端末52は、具体例としては、PC、タブレット、又はスマートフォン等である。入力端末51が出力端末52を兼ねてもよい。また、出力端末52は複数台あってもよい。
【0015】
図3を参照して、実施の形態1に係る需要予測装置10の構成を説明する。
需要予測装置10は、コンピュータである。
需要予測装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とのハードウェアを備える。プロセッサ11は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0016】
プロセッサ11は、プロセッシングを行うICである。ICはIntegrated Circuitの略である。プロセッサ11は、具体例としては、CPU、DSP、GPUである。CPUは、Central Processing Unitの略である。DSPは、Digital Signal Processorの略である。GPUは、Graphics Processing Unitの略である。
【0017】
メモリ12は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ12は、具体例としては、SRAM、DRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0018】
ストレージ13は、データを保管する記憶装置である。ストレージ13は、具体例としては、HDDである。HDDは、Hard Disk Driveの略である。また、ストレージ13は、SD(登録商標)メモリカード、CompactFlash(登録商標)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記録媒体であってもよい。SDは、Secure Digitalの略である。DVDは、Digital Versatile Diskの略である。
【0019】
通信インタフェース14は、外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)のポートである。USBは、Universal Serial Busの略である。HDMIは、High-Definition Multimedia Interfaceの略である。
【0020】
需要予測装置10は、機能構成要素として、受付部21と、将来在庫推定部22と、需要予測部23と、出力部24とを備える。需要予測装置10の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ13には、需要予測装置10の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。これにより、需要予測装置10の各機能構成要素の機能が実現される。
【0021】
ストレージ13には、需要予測装置10の動作の過程で、発注モデル情報61と、過去在庫情報62と、将来在庫情報63と、需要予測結果64とが記憶される。
【0022】
図3では、プロセッサ11は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ11は、複数であってもよく、複数のプロセッサ11が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0023】
***動作の説明***
図4から
図9を参照して、実施の形態1に係る需要予測装置10の動作を説明する。
実施の形態1に係る需要予測装置10の動作手順は、実施の形態1に係る需要予測方法に相当する。また、実施の形態1に係る需要予測装置10の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る需要予測プログラムに相当する。
【0024】
需要予測装置10の動作には、入力受付時処理と、需要予測時処理とが含まれる。
【0025】
図4を参照して、実施の形態1に係る入力受付時処理を説明する。
(ステップS101:受付処理)
受付部21は、入力端末51から発注モデル情報61及び過去在庫情報62の入力を受け付ける。但し、発注モデル情報61は初回受付時のみ必要であり、受付部21は、必ずしも入力受付時処理が実行される度に発注モデル情報61を受け付ける必要はない。
【0026】
図5を参照して、実施の形態1に係る発注モデル情報61を説明する。
発注モデル情報61には、事業者名と、発注モデルと、発注条件と、発注量と、調達リードタイムとの組が1つ以上含まれる。発注条件は、発注を行うための条件であり、発注条件が満たされた場合に発注が行われる。発注量は、発注条件が満たされた場合に発注される量である。調達リードタイムは、製品の発注を行ってから、その製品が入着して在庫として管理されるようになるまでの期間である。
例えば、事業者Aの発注モデルが発注点法であるとする。この場合には、発注点法に対応する情報として、発注条件を示す発注点と、発注量とが含まれる。したがって、事業者Aと、発注点法と、発注点及び発注量と、調達リードタイムとの情報の組が発注モデル情報61に設定される。なお、発注点法とは、在庫量が発注点と呼ばれる一定の閾値を下回った場合に発注を行うという発注方式のことである。
【0027】
図6を参照して、実施の形態1に係る過去在庫情報62を説明する。
過去在庫情報62には、日付と、事業者名と、製品名と、在庫量との組が1つ以上含まれる。
【0028】
(ステップS102:記憶処理)
受付部21は、発注モデル情報61及び過去在庫情報62をストレージ13に書き込む。但し、発注モデル情報61は、ステップS101で受け付けされた場合にのみ記録される。
なお、ここでは、発注モデル情報61及び過去在庫情報62はストレージ13に書き込まれた。しかし、発注モデル情報61及び過去在庫情報62は、ストレージ13ではなく、需要予測装置10の外部に設けられた記憶装置に書き込まれてもよい。
【0029】
図7を参照して、実施の形態1に係る需要予測時処理を説明する。
(ステップS201:読出処理)
将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された発注モデル情報61のうち、予測対象品である部品Aの供給先である事業者Aの情報を読み出す。具体的には、将来在庫推定部22は、事業者Aの発注モデルと発注点と発注量と調達リードタイムとを読み出す。
また、将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された過去在庫情報62のうち、供給先である事業者Aの部品Aに関する在庫量の情報を読み出す。具体的には、将来在庫推定部22は、事業者Aの部品Aについての直近基準期間分の日付と在庫量とを読み出す。
【0030】
(ステップS202:将来在庫推定処理)
将来在庫推定部22は、ステップS201で読み出された発注モデル情報61及び過去在庫情報62に基づき、供給先である事業者Aにおける将来の在庫量を推定する。この際、将来在庫推定部22は、事業者Aにおいて、発注モデル情報61が示す発注条件及び発注量に従い発注がされることにより在庫が増加し、過去在庫情報62が示す過去の在庫量の推移に従って在庫が減少すると仮定して、将来の在庫量を推定する。事業者Aの場合には、発注条件は発注点である。
【0031】
図8を参照して具体的に説明する。
将来在庫推定部22は、ステップS201で読み出された発注モデル情報61及び過去在庫情報62に基づき、処理実行時点が属する日の翌日を起点とする予測期間中の日毎に、将来の在庫量の推移を計算する。そして、将来在庫推定部22は、日毎の将来の在庫量の推移を将来在庫情報63としてストレージ13に書き込む。
将来在庫推定部22は、処理実行時点が属する日の翌日を起点とする予測期間中の各日を古い方から順に対象の日に設定する。将来在庫推定部22は、対象の日の前日における在庫量に対して、対象の日に増加する在庫量を加えるとともに、対象の日に減少する在庫量を減らして、対象の日における在庫量を計算する。これにより、将来在庫推定部22は、予測期間中の各日における在庫量を推定する。
将来在庫推定部22は、対象の日の調達リードタイムだけ前の日において発注条件を満たす場合には、発注量を対象の日に増加する在庫量であるとする。ここでは、発注モデルが発注点法であるので、調達リードタイムだけ前の日における在庫量が、発注モデル情報61が示す発注点以下であった場合に、発注モデル情報61が示す発注量に等しい量が増加する在庫量となる。将来在庫推定部22は、対象の日の調達リードタイムだけ前の日において発注条件を満たしていない場合、対象の日に増加する在庫量を0とする。
将来在庫推定部22は、ステップS201で読み出された直近基準期間分の在庫量の推移から、1日当たりの在庫減少量の統計値を計算する。将来在庫推定部22は、統計値を対象の日に減少する在庫量であるとする。統計値としては、平均値、中央値といった値が用いられる。
【0032】
(ステップS203:需要予測処理)
需要予測部23は、予測期間中の各日における需要予測値を計算する。そして、需要予測部23は、各日における需要予測値を需要予測結果64としてストレージ13に書き込む。
図9に示すように、需要予測結果64には、日付と、事業者名と、製品名と、需要量との組が含まれる。
具体的には、需要予測部23は、ステップS202で推定された将来の在庫量において、発注モデル情報61が示す発注条件を満たす時点で、発注モデル情報61が示す発注量の需要が供給元である事業者Xに対して発生すると予測する。
【0033】
(ステップS204:出力処理)
出力部24は、需要予測結果64を出力端末52に出力する。
【0034】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る需要予測装置10は、過去の在庫量の推移を用いて将来の在庫量を推定し、将来の在庫量から需要を予測する。これにより、直近の在庫量の変動を考慮することで、日々の細かい需要変動に追随した需要予測を行うことが可能になる。
つまり、需要予測装置10は、事業者Xの受注実績を用いて需要予測を行うのではなく、供給先である事業者Aの日々の在庫情報を基に需要予測を行う。これにより、受注実績に反映される前の需要変動を検知し、日々の細かい需要変動に追随可能になる。すなわち、直近の在庫量の変動を考慮することで、市場環境が大きく変動した場合にも、受注実績の蓄積を待つことなく、高精度な需要予測が可能になる。
【0035】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、各機能構成要素がソフトウェアで実現された。しかし、変形例1として、各機能構成要素はハードウェアで実現されてもよい。この変形例1について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0036】
図10を参照して、変形例1に係る需要予測装置10の構成を説明する。
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、需要予測装置10は、プロセッサ11とメモリ12とストレージ13とに代えて、電子回路15を備える。電子回路15は、各機能構成要素と、メモリ12と、ストレージ13との機能とを実現する専用の回路である。
【0037】
電子回路15としては、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、FPGAが想定される。GAは、Gate Arrayの略である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略である。
各機能構成要素を1つの電子回路15で実現してもよいし、各機能構成要素を複数の電子回路15に分散させて実現してもよい。
【0038】
<変形例2>
変形例2として、一部の各機能構成要素がハードウェアで実現され、他の各機能構成要素がソフトウェアで実現されてもよい。
【0039】
プロセッサ11とメモリ12とストレージ13と電子回路15とを処理回路という。つまり、各機能構成要素の機能は、処理回路により実現される。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態2は、予測対象品の事業者間での流れにおける下流側の事業者に対する需要予測の結果に基づき、在庫減少量を決定する点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明して、同一の点については説明を省略する。
【0041】
***構成の説明***
図11を参照して、実施の形態2に係る需要予測装置10の構成を説明する。
需要予測装置10は、ストレージ13に商流構造情報65が記憶される点が
図3と異なる。
【0042】
***動作の説明***
図4を参照して、実施の形態2に係る入力受付時処理を説明する。
(ステップS101:受付処理)
受付部21は、入力端末51から発注モデル情報61及び過去在庫情報62に加えて、商流構造情報65の入力を受け付ける。但し、発注モデル情報61は初回受付時のみ必要であり、受付部21は、必ずしも入力受付時処理が実行される度に発注モデル情報61を受け付ける必要はない。
【0043】
図12を参照して、実施の形態2に係る商流構造情報65を説明する。
商流構造情報65は、予測対象品である部品Aの事業者間での流れを示す。商流構造情報65には、事業者名と、上流事業者名と、下流事業者名とが含まれる。
上流事業者名は、事業者名が示す事業者の上流側の事業者を示す。下流側事業者名は、事業者名が示す事業者の下流側の事業者を示す。上流側の事業者は、事業者名が示す事業者に部品Aを供給する供給元である。下流側の事業者は、事業者名が示す事業者が部品Aを供給する供給先である。
【0044】
(ステップS102:記憶処理)
受付部21は、発注モデル情報61及び過去在庫情報62に加えて、商流構造情報65をストレージ13に書き込む。但し、発注モデル情報61は、ステップS101で受け付けされた場合にのみ記録される。
【0045】
図13を参照して、実施の形態2に係る需要予測時処理を説明する。
(ステップS211:下流検索処理)
将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された商流構造情報65を参照して、予測対象品である部品Aの供給先である事業者Aよりも下流側の事業者を検索する。
具体的には、将来在庫推定部22は、商流構造情報65の事業者Aの下流事業者名が示す事業者を特定する。将来在庫推定部22は、特定された各事業者の下流事業者名が示す事業者を特定する。これを、下流事業者名が示す事業者がいなくなるまで繰り返す。これにより、事業者Aよりも下流側の事業者が全て検索される。
図12に示す商流構造情報65の場合には、事業者Aの下流側の事業者として、事業者Cと事業者Dとが特定される。事業者Cの下流側の事業者として事業者Fが特定される。事業者Dには下流側の事業者が存在しないので検索が打ち切られる。事業者Fには下流側の事業者が存在しないので検索が打ち切られる。
【0046】
(ステップS212:読出処理)
将来在庫推定部22は、事業者Aに加えて、ステップS211で検索された各事業者(ここでは、事業者C,D,F)についての発注モデル情報61及び過去在庫情報62を読み出す。
具体的には、将来在庫推定部22は、事業者Aと、ステップS211で検索された各事業者とを対象の事業者に設定する。将来在庫推定部22は、発注モデル情報61のうち、対象の事業者の情報を読み出す。また、将来在庫推定部22は、過去在庫情報62のうち、対象の事業者の部品Aに関する在庫量の情報を読み出す。
【0047】
ステップS213及びステップS214の処理が、下流側の事業者から順に対象の事業者として選択され、実行される。
【0048】
(ステップS213:将来在庫推定処理)
将来在庫推定部22は、ステップS212で読み出された発注モデル情報61及び過去在庫情報62に基づき、対象の事業者における将来の在庫量を推定する。
具体的には、将来在庫推定部22は、実施の形態1と同様に、処理実行時点が属する日の翌日を起点とする予測期間中の各日を時刻の早い方から順に対象の日に設定する。将来在庫推定部22は、対象の日の前日における在庫量に対して、対象の日に増加する在庫量を加えるとともに、対象の日に減少する在庫量を減らして、対象の日における在庫量を計算する。
但し、実施の形態2においては、将来在庫推定部22は、対象の事業者に下流側の事業者がない場合には、実施の形態1と同様に統計値を対象の日に減少する在庫量であるとする。一方、将来在庫推定部22は、対象の事業者に下流側の事業者がある場合には、
図14に示すように、すぐ下流側の事業者の需要を対象の日に減少する在庫量であるとする。
図14では、発注モデルが発注点法であるとしている。なお、すぐ下流側に複数の事業者がある場合には、将来在庫推定部22は、複数の事業者の需要の合計を対象の日に減少する在庫量であるとする。
【0049】
図15を参照して具体例を説明する。
ここでは、下流側の事業者から対象の事業者として選択される。したがって、初めに事業者F又は事業者Dが対象の事業者として選択される。事業者Fについての処理が終わった後に、事業者Cが対象の事業者として選択される。事業者C及び事業者Dについての処理が終わった後に、事業者Aが対象の事業者として選択される。
【0050】
事業者F及び事業者Dについては、下流側の事業者がない。そのため、実施の形態1と同様に日毎の在庫量が計算される。事業者C及び事業者Aについては、下流側の事業者がある。そのため、すぐ下流側の事業者の需要を対象の日に減少する在庫量であるとして、日毎の在庫量が計算される。
事業者Cの将来在庫を計算する場合には、事業者Fから事業者Cに対して行われる発注についての需要予測の結果をもって、事業者Cの日々の在庫減少量が決定される。事業者Aの将来在庫を計算する場合には、事業者C及び事業者Dから事業者Aに対して行われる発注についての需要予測の結果をもって、事業者Aの日々の在庫減少量が決定される。
【0051】
(ステップS214:需要予測処理)
需要予測部23は、ステップS213で推定された将来の在庫量において、発注モデル情報61が示す発注条件を満たす時点で、発注モデル情報61が示す発注量の需要がすぐ上流側の事業者に対して発生すると予測する。
【0052】
ステップS215の処理は、
図7のステップS204の処理と同じである。
【0053】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る需要予測装置10は、予測対象品の事業者間での流れにおける下流側の事業者に対する需要予測の結果に基づき、在庫減少量を決定する。これにより、これにより、供給先の事業者の将来の在庫量を精度よく推定できる。その結果、高精度な需要予測が可能になる。
【0054】
***他の構成***
<変形例3>
事業者Aの下流側の事業者については、公知の方法といった、実施の形態1,2で説明した方法以外の方法により需要予測をしてもよい。そして、事業者Aから事業者Xに対して生じる需要予測を行う場合に、何らかの方法で予測された下流側の事業者の事業者Aに対する需要を、事業者Aの在庫減少量として用いてもよい。
【0055】
実施の形態3.
実施の形態3は、予測対象品について物流の過程で生じる遷移を示す物流情報66を参照して、処理実行時点が属する日における在庫量を推定する点が実施の形態2と異なる。実施の形態3では、この異なる点を説明して、同一の点については説明を省略する。
ここでは、実施の形態1に機能を加えた場合について説明する。しかし、実施の形態2に機能を加えることも可能である。
【0056】
***構成の説明***
図16を参照して、実施の形態3に係る需要予測装置10の構成を説明する。
需要予測装置10は、機能構成要素として、過去在庫推定部25を備える点が
図3と異なる。過去在庫推定部25の機能は、他の機能構成要素と同様に、ソフトウェア又はハードウェアによって実現される。
また、需要予測装置10は、ストレージ13に物流情報66と過去在庫情報67とが記憶される点が
図3と異なる。
【0057】
***動作の説明***
図4を参照して、実施の形態3に係る入力受付時処理を説明する。
(ステップS101:受付処理)
受付部21は、入力端末51から発注モデル情報61と物流情報66との入力を受け付ける。但し、発注モデル情報61は初回受付時のみ必要であり、受付部21は、必ずしも入力受付時処理が実行される度に発注モデル情報61を受け付ける必要はない。
【0058】
図17を参照して、実施の形態3に係る物流情報66を説明する。
物流情報66は、予測対象品について物流の過程で生じる遷移を示す。物流情報66には、日付と、事業者名と、製品名と、イベント名と、数量とが含まれる。ここで、イベント名は、イベントの名称である。イベントは、製品の生産と出荷と入着といった物流の過程で生じる製品の遷移のことである。数量は、イベントで遷移する製品の数である。
【0059】
(ステップS102:記憶処理)
受付部21は、発注モデル情報61と物流情報66とをストレージ13に書き込む。但し、発注モデル情報61は、ステップS101で受け付けされた場合にのみ記録される。
【0060】
図18を参照して、実施の形態3に係る需要予測時処理を説明する。
(ステップS221:読出処理)
将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された発注モデル情報61のうち、事業者Aの情報を読み出す。また、将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された物流情報66を読み出す。
【0061】
(ステップS222:過去在庫推定処理)
過去在庫推定部25は、物流情報66を参照して、処理実行時点が属する日までの直近基準期間の日毎における供給先である事業者Aの予測対象品である部品Aの在庫量を推定する。過去在庫推定部25は、推定された日毎の在庫量を過去在庫情報67としてストレージ13に書き込む。
図19を参照して具体的に説明する。過去在庫推定部25は、処理実行時点が属する日までの直近基準期間の各日を古い方から順に対象の日に設定する。過去在庫推定部25は、直近基準期間のうち最も古い日の前日の在庫量に初期値を設定する。過去在庫推定部25は、対象の日の前日における在庫量に対して、物流情報66が示す対象の日に増加する在庫量を加えるとともに、物流情報66が示す対象の日に減少する在庫量を減らして、対象の日における在庫量を計算する。これにより、処理実行時点が属する日における在庫量を推定する。
対象の日に増加する在庫量は、物流情報66において対象の日に事業者Aに部品Aが入着する数量である。対象の日に減少する在庫量は、物流情報66において対象の日に事業者Aから部品Aが出荷される数量である。
【0062】
(ステップS223:将来在庫推定処理)
将来在庫推定部22は、ステップS222で推定された過去在庫情報67が示す在庫量を、過去在庫情報62が示す過去の在庫量として用いて、実施の形態1と同様に事業者Aにおける将来の在庫量を推定する。
【0063】
ステップS224及びステップS225の処理は、
図7のステップS203及びステップS204の処理と同じである。
【0064】
***実施の形態3の効果***
以上のように、実施の形態3に係る需要予測装置10は、物流情報66を参照して、処理実行時点が属する日における在庫量を推定して、将来の在庫量を推定する。これにより、事業者Aの処理実行時点が属する日における在庫量の情報を取得できない場合にも、事業者Aの将来の在庫量を推定可能である。その結果、事業者Aの処理実行時点が属する日における在庫量の情報を取得できない場合にも、需要予測を行うことが可能である。
【0065】
実施の形態4.
実施の形態4は、予測対象品を部品として用いて生産される製品である使用製品について物流の過程で生じる遷移を用いて、処理実行時点が属する日における在庫量を推定する点が実施の形態3と異なる。実施の形態4では、この異なる点を説明して、同一の点については説明を省略する。
【0066】
***構成の説明***
図20を参照して、実施の形態4に係る需要予測装置10の構成を説明する。
需要予測装置10は、ストレージ13に部品構成情報68が記憶される点が
図16と異なる。
【0067】
***動作の説明***
図4を参照して、実施の形態4に係る入力受付時処理を説明する。
(ステップS101:受付処理)
受付部21は、入力端末51から発注モデル情報61と物流情報66と部品構成情報68との入力を受け付ける。但し、発注モデル情報61は初回受付時のみ必要であり、受付部21は、必ずしも入力受付時処理が実行される度に発注モデル情報61を受け付ける必要はない。
【0068】
図21を参照して、実施の形態4に係る部品構成情報68を説明する。
部品構成情報68は、使用製品に使用される予測対象品である部品Aの数を示す。部品構成情報68には、製品名と、部品名と、数量とが含まれる。製品名は、使用製品の名称である。部品名は、部品A等の使用製品で使用される部品の名称である。数量は、使用製品で使用される部品の数である。
【0069】
(ステップS102:記憶処理)
受付部21は、発注モデル情報61と物流情報66と部品構成情報68とをストレージ13に書き込む。但し、発注モデル情報61は、ステップS101で受け付けされた場合にのみ記録される。
【0070】
図18を参照して、実施の形態4に係る需要予測時処理を説明する。
(ステップS221:読出処理)
将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された発注モデル情報61のうち、事業者Aの情報を読み出す。また、将来在庫推定部22は、ストレージ13に記憶された物流情報66及び部品構成情報68を読み出す。
【0071】
(ステップS222:過去在庫推定処理)
過去在庫推定部25は、実施の形態3と同様に、処理実行時点が属する日までの直近基準期間の各日を古い方から順に対象の日に設定し、対象の日の在庫量を推定する。
この際、過去在庫推定部25は、物流情報66を参照して、事業者Aが部品Aを構成要素とする使用製品を生産しているか否か判定する。過去在庫推定部25は、事業者Aが部品Aを構成要素とする使用製品を生産していない場合には、実施の形態3と同様に対象の日の在庫量を推定する。過去在庫推定部25は、事業者Aが部品Aを構成要素とする使用製品を生産している場合には、以下のように対象の日に減少する在庫量を特定して、対象の日の在庫量を推定する。対象の日に減少する在庫量の特定方法以外は、実施の形態3と同じである。
過去在庫推定部25は、部品Aが出荷される数量を物流情報66から求める代わりに、部品Aを基に生産される使用製品の生産量及び出荷量を計算する。過去在庫推定部25は、部品構成情報68から、使用製品の生産に利用された部品Aの量、あるいは使用製品に組み込まれた形で出荷された部品Aの量を特定し、その量をもって在庫減少量とする。
【0072】
図21を参照して具体例を説明する。
部品Aの出荷量を求める場合、過去在庫推定部25は、初めに物流情報66を参照し、製品A又は製品Bのように、部品Aを構成要素として持つ使用製品の生産を事業者Aが行っているか否かを判定する。例えば、事業者Aが製品Bの生産を行っている場合、過去在庫推定部25は、対象の日における製品Bの生産量又は出荷量を物流情報66から特定する。そして、過去在庫推定部25は、製品Bに使用される部品Aの数量を部品構成情報68から特定し、製品Bの生産又は出荷に用いられた部品Aの総量を計算する。過去在庫推定部25は、計算された総量を、対象の日に減少する在庫量とする。
【0073】
***実施の形態4の効果***
以上のように、実施の形態4に係る需要予測装置10は、予測対象品を部品として用いて生産される製品である使用製品について物流の過程で生じる遷移を用いて、処理実行時点が属する日における在庫量を推定する。これにより、物流情報66では追跡が途絶えてしまう予測対象品の在庫量を適切に推定可能になる。つまり、流通過程で形状が変化する等して、物流情報66では予測対象品の追跡が途絶えてしまう場合にも、在庫量を適切に推定可能になる。
【0074】
なお、以上の説明における「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「処理回路」に読み替えてもよい。
【0075】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 需要予測装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信インタフェース、15 電子回路、21 受付部、22 将来在庫推定部、23 需要予測部、24 出力部、25 過去在庫推定部、51 入力端末、52 出力端末、61 発注モデル情報、62 過去在庫情報、63 将来在庫情報、64 需要予測結果、65 商流構造情報、66 物流情報、67 過去在庫情報、68 部品構成情報。