(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】液体試料採取装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
(21)【出願番号】P 2020543470
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 US2018056629
(87)【国際公開番号】W WO2019083825
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524433472
【氏名又は名称】ナイチンゲール ヘルス オーイーユィ
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン・ブランドン・ティー
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0147349(US,A1)
【文献】米国特許第06106732(US,A)
【文献】米国特許第05652148(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0050620(US,A1)
【文献】特表2003-526789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放位置と閉止位置との間で設定可能なハウジングと、
前記ハウジングが開放位置にあるときに生体試料を採取するように構成された、試料採取ウェルと、
毛細管現象により前記生体試料を前記試料採取ウェルから吸い込むように構成された、1つ以上のキャピラリーチューブと、
ヘパリン、EDTA、糖類または他種の安定化剤の少なくとも1つを含む、前記ハウジング内に配置された、メンブレンと、
前記ハウジング内に配置され、前記ハウジング内で前記メンブレンを保持するように構成された、構造部材と、
前記ハウジングが開放位置から閉止位置に動かされると、前記1つ以上のキャピラリーチューブ内に挿入されて、前記生体試料を前記1つ以上のキャピラリーチューブから前記メンブレンに供給するように構成された、1つ以上のプランジャと、
乾燥剤と、
を備える、生体試料を採取するための装置であって、
前記メンブレンの一部は、前記生体試料が前記メンブレン上に導入されると、前記生体試料から細胞材料を分離するように構成され、
前記ハウジングはさらに、前記ハウジングが開放位置にあるときに前記1つ以上のキャピラリーチューブが見えるように構成され、
前記試料採取ウェルは、前記ハウジングが閉止位置にあるときにアクセス不可能である、生体試料を採取するための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記1つ以上のプランジャがさらに、キャピラリーで前記生体試料を液体試薬と混ぜ合わせて混合試料を形成し、該混合試料を前記メンブレンに供給するように構成される装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記ハウジングが2つ以上の部を備え、前記構造部材が、前記試料採取ウェルを含有し、前記ハウジングの部を支持し、および、前記ハウジングが前記開放位置から前記閉止位置へと動くときに再開放を防ぐラチェット動作により、前記ハウジングの2つ以上の部を、互いに対して前記構造部材の長さに沿って前記開放位置から前記閉止位置へと動かすのを可能にする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、さらに、前記試料採取ウェル近傍に配置された、疎水性である突部を備える装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、2つ以上のプランジャを備えており、該2つ以上のプランジャの2つ以上は、前記装置の閉止に際し並行して作動する装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記メンブレンが
糖を含侵させたものである装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記メンブレンが、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、またはそれらの組み合わせを含む装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記ハウジングが前記閉止位置にあるときに隔絶された内部空気空間をさらに備えており、前記隔絶された内部空気空間とメンブレンは、前記ハウジングが前記閉止位置にあるときに前記乾燥剤により乾燥される装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、前記1つ以上のキャピラリーチューブの内部空間が、エチレンジアミン四酢酸、ヘパリン、またはそれらの組み合わせを塗布される装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において、前記1つ以上のキャピラリーチューブが、所定量の液体を保持するように構成された計量キャピラリーである装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記計量キャピラリーが前記試料採取ウェルおよび前記メンブレンと流体連通下にあり、前記生体試料が、毛細管現象により、前記試料採取ウェルから取り出され、前記計量キャピラリーを通って前記メンブレンへと動かされる装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置において、前記1つ以上のプランジャが複数のプランジャを備え、前記構造部材が複数の貫通孔を備え、前記構造部材が、前記複数のプランジャと位置合わせした位置において前記貫通孔に前記1つ以上のキャピラリーチューブを保持する装置。
【請求項13】
請求項5に記載の装置において、前記2つ以上のプランジャが、前記1つ以上のキャピラリーチューブの内径とほぼ同じ直径であり、前記1つ以上のキャピラリーチューブの内径と強固に係合し、前記装置が前記閉止位置にあるときに過剰分の生体試料が前記1つ以上のキャピラリーチューブに入るのを防ぐ装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置において、前記生体試料が血液であり、前記メンブレンが、血漿から赤血球を分離させるという前記メンブレンを介した前記生体試料の差別移動を引き起こす繊維構造を備える装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、前記生体試料が血液であり、前記メンブレンが、赤血球に結合する薬剤を含む装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置において、前記構造部材が弾性であり、前記1つ以上のキャピラリーチューブのまわりで前記生体試料が流れるのを防ぐために前記1つ以上のキャピラリーチューブを密封する装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置において、前記ハウジングがさらに孔を備え、ロック機構が櫛歯を備え、前記櫛歯は、前記ハウジングが前記閉止位置にあるときに前記孔に係合するようにラチェット爪として機能する装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年10月27日付出願の同時係属中の米国仮特許出願第62/577,761号「血液計量保存装置」、および2017年10月30日付出願の同時係属中の米国仮特許出願第62/578,557号「血液計量保存装置」の優先権を主張する。本願は、さらに、2013年7月19日付出願の同時係属中の米国特許出願第13/945,900号「生体試料を採取する方法及びシステム」の優先権を主張する、同米国特許出願の一部継続出願である。
【0002】
上記各出願の全内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【技術分野】
【0003】
本特許出願は、体液試料採取の装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
診断検査に使われる血液は、多くの場合、注射針で患者から取り出されて試験管に採取される。そして、採取した血液は梱包されて、各種診断検査が実施される遠隔の研究所へと発送される。しかし、診断検査の多くは、実際に採取した試料よりも遥かに少量の試料で済む。また、一部の検査では、試料から血球成分を分離させる必要がある。
【0005】
多くの検査法では少しの血液試料しか必要でなく、注射針ではなくフィンガースティックで十分な血液を入手することが可能である。しかし、このような少量の血液は遠隔の研究所へと簡単に輸送することができない。血液の取出しと同時に検査法を即座に適用することができない場合には、少量の血液を採取、処理及び保存する簡便で高い信頼性の方法が必要になる。
【0006】
Boston Microfluidics,Inc.社に譲渡された特許文献1には、生体液試料を採取及び安定化させて遠隔の研究所に輸送するためのユーザにとって使い勝手のよい携帯可能な装置を実現する、幾つかの手法が記載されている。当該装置は、液体試料を採取するためのチャンバを形成する、手持ち式の小型ハウジングを備えている。当該ハウジング自体および/または当該ハウジング内に設けられた機構を動かすことにより、所定量の計量された液体試料の採取が実行される。上記装置は、さらに、採取した試料を安定化させ得て、かつ/あるいは、上記チャンバ内に当該試料を密封し得る。上記装置における別の機構により、採取した試料が試薬と混ぜ合わされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2014/0050620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
試料採取装置は、体液試料を採取、計量及びヘパリン処理するのに使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
患者から採取された液体は、まず、試料窓を介して例えば指先からの血液滴をウェルに導く等して前記装置内に導入される。一部の構成では、次に、計量キャピラリーが毛細管現象により、前記試料窓から血液を取り出して当該血液を保存媒体に付着させる。また、閉止可能なハウジングに連結した少なくとも1つのプランジャにより、前記計量キャピラリーから前記保存媒体への液体の供給がなおいっそう促され得る。前記プランジャは、前記ハウジングが開放位置から閉止位置へと動かされると前記キャピラリー内に押し込まれるように少なくとも1つの可動ハウジング部に取り付けられたものとされ得る。
【0010】
前記装置の一部の実施形態は、前記少なくとも1つのプランジャが液体を前記メンブレンへと供給する際に当該液体と接触するように配置された安定化剤を備えている。当該安定化剤は、ヘパリンおよび/またはEDTAであり得る。前記安定化剤は、前記キャピラリー、前記プランジャ及び前記保存メンブレンのうちの少なくとも1つの内側に塗布され又は付着しているものであり得る。この構成は、さらに、前記メンブレン近傍に配置された乾燥剤を備え得る。
【0011】
また、一部の配置構成では、前記ハウジングが前記開放位置から前記閉止位置へと動かされると貯留された試薬が前記液体と混ざるようになっているアッセイ領域が、前記キャピラリーと前記メンブレンとの間に配置され得る。
【0012】
前記ウェルの近傍には、立上り突部が設けられ得る。当該突部は、患者の指を拭うことで血液滴がより良好に流れるのを促す好都合な場所を構成する。
【0013】
また、前記ハウジングは、少なくとも1つの窓を有し得る。当該少なくとも1つの窓は、前記ハウジングのうちの、当該窓を介して前記キャピラリー及び/又は試料媒体の少なくとも一部が目視可能となる箇所に配置されている。
【0014】
第1のハウジング部位および第2のハウジング部位は、前記ハウジングを前記開放位置から前記閉止位置へと動かすことができるように且つそれによって前記プランジャを前記キャピラリー内に押し込むことができるように、係合するもの且つ中央の支持部位に沿って摺動するものとされ得る。この構成において、前記中央の支持部位は、前記試料ウェルを形成するインサートエレメント用の開口部を有し得る。
【0015】
前記試料ウェルは、前記ハウジング内に配置されたインレーエレメントにより形成され得る。この場合の前記インレーは、さらに、前記立上り突部も構成し得る。典型的には、前記インレーが、さらに、キャピラリーを定められた位置にそれぞれ保持するための少なくとも1つの貫通孔を有している。また、前記インレー部片は、前記ハウジングが前記開放位置から前記閉止位置へと動かされるときに少なくとも1つのキャピラリーを少なくとも1つの前記プランジャと位置合わせされた状態に維持するのにも用いられ得る。
【0016】
また、前記インレーエレメントは、前記少なくとも1つのキャピラリーの出口に設けられた溝を有し得る。当該溝は、前記キャピラリーを出た血液を前記保存媒体へと導く通路を構成する。
【0017】
また、前記キャピラリー、および/または前記試料ウェルを構成し前記キャピラリーを支持するインレー部品は、全体又は一部が透明とされてもよい。このような設計構成により、血液試料が適切に採取及び/又は保存されていることをなおいっそう目視確認することが可能になる。
【0018】
前記プランジャは、前記キャピラリーから遠位側の端部にてタブアタッチメントと連結しているものとされ得る。当該タブは、前記ハウジングが閉じられると前記プランジャが前記キャピラリー内に押し込まれるように、一方の前記ハウジング部に近接配置されたものであり得る。
【0019】
骨格部の一端には、輸送時に前記ハウジングを前記閉止位置のまま保持するのをなおいっそう支援するラチェット機構が設けられ得る。当該機構は、前記ハウジングが前記開放位置から前記閉止位置へと動かされると係合を生じ得る。一部の実施形態では、前記ハウジングの一端にアクセス孔が設けられていて、工具で前記ラチェット機構の係合を簡単に解除できるようになっており、前記ハウジングをこじ開けることにより、保存された血液試料へのアクセスが可能となる。
【0020】
前記保存媒体は、様々な形態を取り得る。例えば、前記保存媒体は、互いに離間した一対の係合タブを有する基材であり得る。そして、当該基材の上に、前記係合タブ間に嵌まり込むように寸法決めされた血液試料採取保存媒体が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】血液試料採取装置の、開放位置(未使用状態)での等角図である。
【
図3A】前記採取装置の一例の各構成要素を示す分解図である。
【
図3B】2種類のメンブレンを備える別例の装置の分解図である。
【
図4A】試料媒体及び媒体支持体を実現する一手法の平面図である。
【
図6】上側ハウジングカバーを取り外した前記装置の図である。
【
図7】プランジャ支持領域とインレーを詳細に示す図である。
【
図8】ハウジングカバー及び媒体支持体を取り外した状態での、底部の図である。
【
図9】底部についての同様の図であるが、媒体支持体が設置されている。
【
図10】インレーの一具体例の各構成部品を詳細に示す分解図である。
【
図13】前記インレーの他の実施形態を示す図である。
【
図14】ハウジングカバーを取り外した前記装置の斜視図であり、錠剤型乾燥剤の場所が描かれている。
【
図15】骨格部の一部とプランジャの他の図である。
【
図16】採取エレメントを保持するクリップの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、例示的な液体採取装置100の等角図である。装置100は、液体試料窓102を支持し、かつ覆う2部構造のハウジング101を備える。ハウジング101は、第1のハウジング部101-Aおよび第2のハウジング部101-Bを含む。同図における前記ハウジングは、2つのハウジング部101-A,101-Bが互いに離間して試料窓102へのアクセスが可能となる開放位置にある。同図では、試料窓102近傍に位置する試料採取ウェル104、および少なくとも1つのキャピラリー105も部分的に見えている。ユーザは、前記ハウジングにある窓150により、採取されている途中の且つ/又は装置100内に保存される最中の液体試料の1つ以上の部分の状態を確認することができる。
【0023】
図2は、装置100についての同様の等角図である。同図では、血液試料が試料窓102を介して採られた後であり、2つのハウジング部101-A,101-B同士が押し込まれたことで装置100が閉止位置になっている。この閉止位置においても、窓150によって血液採取状態を知ることができる。
【0024】
装置100は、典型的には、血液試料を採取するのに次のようにして使用される。最初、装置100は
図1のように開放位置にあり、ウェル104へのアクセスが可能な状態になっている。次に、患者自身や医療従事者などであるユーザが、ランセットを用いて指先などから血液試料を生じさせる。そして、指をウェル104又は試料窓102の他の部分の近傍、上方又は隣りに配置するか、または、指をウェル104又は試料窓102の他の部分に接触させることで、血液がこぼれ落ちるのを最小限に抑えるようにしながら全血滴を採取する。
【0025】
次に、血液は、装置100の他の部分へと1つ以上の様々な方法によって最終的に導かれる。一実施形態に関して詳細に後述するように、血液は、前記試料窓近傍の少なくとも1つの採取キャピラリー105によってウェル104から毛細管現象により流れ出し且つ/又は先ず吸い出される。当該キャピラリーは、血液が装置100内へと適切に導かれていることをユーザが確認できるように可視的に透明とされ得る。任意で、キャピラリー105には、前記試料をその後安定化させて保存するためのヘパリン及び/又はEDTAなどの試薬が予め塗布されていてもよい。また、キャピラリー105は、予め決められた既知の容積を有するものとされ得る。この場合、流入する試料が正確に計量されることになる。そして、計量後の前記試料は、採取キャピラリー105によって装置ハウジング101内部の媒体へと導かれる。
【0026】
次に、患者自身や医療従事者であり得るユーザが2つのハウジング部101-A,101-B同士を押し込んで装置100を手動で閉じることにより、前記ハウジングが
図2に示す位置になる。後で詳述するように、前記ハウジングの閉止動作に伴う運動によって少なくとも1つの機構を動作させて、当該少なくとも1つの機構によって前記試料がさらに処理され且つ装置100内に確実に保存され得る。
【0027】
窓150は、ユーザが試料窓102及び/又はウェル104及び/又は採取キャピラリー105の状態を確認するのを可能にする透明な材料片を備え得る。これにより、(ハウジング101が
図1の開放位置にあるときには)十分な血液試料が装置100内に導かれている途中の様子や、(ハウジング101が
図2のような閉止位置にあるときには)十分な血液試料が前記装置内に導かれたことを確認することができる。
【0028】
図3Aは、装置100の各構成要素の詳細な分解図である。第1のハウジング部101-Aは、上側ケース201-A-1および下側ケース201-A-2で構成される。第2のハウジング部101-Bは、上側ケース201-B-1および下側ケース201-B-2で構成される。
【0029】
骨格部構造203が、2つのハウジング部101-A,101-Bの支持を行う。ハウジング部201-A,201-Bの上下方向の内壁が、骨格部203に形成された長溝又は他の構造に係合し得る。これにより、少なくとも第2のハウジング部101-Bが前記骨格部に沿って前後に摺動し、それによって前記ハウジングを前記開放位置又は閉止位置へと動かすことが可能になる。一配置構成では、第1のハウジング部101-Aが骨格部203上の定位置に固定されたまま維持される。ただし、第1のハウジング部101-Aが骨格部203上を摺動し第2のハウジング部101-Bは固定されたまま維持される実施形態や、両方のハウジング部101-A,101-Bが互いに摺動可能とされる実施形態などの他の実施形態も可能である。
【0030】
骨格部203は、さらに、装置100の別の構成要素も支持する。例えば、骨格部203は、インレー部品(キャピラリー支持エレメントとも称される)252により形成される試料採取窓102の場所を提供する。プランジャラック202も、骨格部203により支持される。また、骨格部203は、採取した前記試料をなおいっそう乾燥させるための錠剤型乾燥剤(
図3に図示せず)を支持するリブ部位230を有し得る。また、骨格部203は、2つのハウジング部101-A,101-B同士が押し込まれたときに作動するラチェット式閉止部240を構成する櫛歯を、一端に有し得る。
【0031】
キャピラリー204(他の図では符号105を付して参照している)は、インレー252に形成された長孔(
図3には図示せず)内に挿入されて当該長孔により定位置に保持される。前記キャピラリーは、容積が精密に定められた剛体の管体として形成され得る。この場合の前記キャピラリーは、計量機能も果たすことになる。キャピラリー204は、試料採取窓102の血液と毛細管現象で接触することにより、定められた量の血液を取り出す。インレー252は、骨格部203内の穴部221に嵌まり込むものであり得る。後で詳述するように、インレー252は、患者の血液が導入されるウェル104の位置を定める。
【0032】
任意で、キャピラリー204には、試薬、ヘパリン、EDTAまたは他の物質が予め塗布されていてもよい。
【0033】
また、少なくとも1つのキャピラリー204は、所定量の液体試薬を貯留し得る。そして、このような試薬は、前記ハウジングが前記開放位置から前記閉止位置へと動かされると血液試料と一緒に又は血液試料と並行して供給され得る。しかしながら、他の形式の試薬が前記ハウジング内の保存領域に設けられていてもよい。保存領域(図中では特定せず)が固体表面又は基板などの第1の形式の試薬を保持し、第2の形式を液体貯留室とし、それぞれ、装置100により採取した血液試料の経路上に配置するようにしてもよい。
【0034】
一配置構成では、少なくとも1つのプランジャ202がキャピラリー204の内径と強固に係合し、計量済み試料体積分を後続下流の処理工程へと押し出すと同時に遮蔽部を形成して、あらゆる過剰分の血液試料を遮断するものとされ得る。
【0035】
また、骨格部203には、血液採取エレメント250の機械的な追加支持を行うベース206が嵌まり込み得る。採取エレメント250は、試料媒体209(本明細書ではメンブレンとも称される)から構成され得る。試料媒体209は、当該試料媒体209以外の構成部品によって支持及び/又は定位置に保持されている。これらの構成部品により、採取エレメント250を研究所での処理のために装置101から取り外す際に、試料媒体209の取り扱いを補助する。採取エレメント250のうちの試料媒体209以外のこれらの部品には、ベース206、上側フレーム208、媒体支持体210および下側フレーム211が含まれ得る。上側フレーム208および下側フレーム211は、アウトボード側端に延設部222A-,222-Bを有し得る。延設部222が、ハウジング101からの取外し中及び取外し後の採取エレメント250の取扱いをさらに補助する。
【0036】
試料媒体209は、キャピラリー105の出口に又は当該出口近傍に配置された、様々な種類の血漿分離メンブレン又はフィルタとされ得る。例えば、Pall(登録商標)Corporation社から入手可能なPall Vivid Plasma Separationなどのセルロース混合エステルメンブレンが挙げられる。また、メンブレン209は、(General Electric(登録商標) Company社から販売されている)LF1ガラス繊維メンブレン,または血清もしくは全血を受け取って血液部分と血漿部分とに分離するように構成された他の媒体とされてもよい。LF1紙などの媒体は、赤血球の速度を遅らせることで試料が当該紙上を移動するにつれて血漿検体を徐々に分離させる前記試料の差別移動を引き起こす繊維構造を有している。メンブレン209には、任意で、ヘパリン、EDTA、糖類または他種の安定化剤が予め含浸していてもよい。一部の実施形態では、赤血球の移動速度を遅くさせるので、繊維マトリクスで赤血球と血漿とを分離させるLF1紙が好ましいとされる。しかしながら、液状又は乾燥状の血液に用いる他の種類の分離メンブレンが使用されてもよい。
【0037】
血漿の分離は、メンブレン以外の、赤血球をサイズで取り除く微小構造により達成されてもよい。血漿の分離は、例えば、赤血球の選択的な結合によって達成される又は向上させることも可能である。結合剤は、典型的にはメンブレン上又は微小構造上に塗布されるが、流路に付着したものとされてもよい。
【0038】
また、試料媒体209には、採取した前記試料に対してアッセイなどの検査を実施するための様々な化学物質が塗布されていてもよい。つまり、試料媒体209の全体もしくは一部に代えて、または試料媒体209と一緒に、イムノアッセイストリップが使用されてもよい。装置100が閉じられることで、前記試料が前記イムノアッセイストリップ上の試料パッド領域に送り込まれる。また、窓150により、イムノアッセイ又は他の検査の色変化結果を目視確認することも可能とされ得る。
【0039】
図3Bは、このような装置100の一例についての、
図3Aと同様の分解図である。ただし、この装置100は、採取メンブレン209とイムノアッセイストリップ309の両方を備えている。メンブレン209とストリップ309は、平行に配置され得る。採取メンブレン209が一部のキャピラリーから血液試料を受け取って保存し、イムノアッセイ(又は他の検査)ストリップ309が他のキャピラリーから血液試料を受け取って当該血液試料を処理し得る。
【0040】
変形例において、前記試料は、ハウジング101内の、捕捉分子を当該試料に曝して分析対象物との結合を生じさせるアッセイ領域へと送り込まれてもよい。そして、これらの分析対象物は、当該分析対象物を検出可能にする複合体と結合し得る。また、結合する分析対象物は、結合相手の表面の光学的特性又は電気的特性を変化させることで自身を直接検出可能にするものであってもよい。
【0041】
前記ハウジング部同士を閉じる動作により、血液試料がウェル104からキャピラリー105へと毛細管現象と機械的力の両方によって吸い込まれると共に、当該キャピラリーから出て試料媒体209に付着するという点が理解できるかと思われる。具体的に述べると、ハウジング部201-Aがプランジャ202に係合する一方で、キャピラリーチューブ105はインレー252内の定位置に保持されている。これにより、前記ハウジング部位同士が閉じられるとプランジャ202がキャピラリー105内に押し込まれて、それによって血液がメンブレン209へと押し出される。
【0042】
一部の具体例において、インレー部片252の少なくとも一部位又は一部分を作製するのに用いられる材料の弾性は、プランジャ202がキャピラリーチューブ105内に押し込まれるあいだ当該キャピラリーチューブ105を定位置に保持するのに十分な弾性とされ得る。また、インレー252の弾性は、少なくとも一部の血液がキャピラリーチューブ105内を流れずに当該キャピラリーチューブ105の外周側を流れるのを封止及び/又は阻止するように選択され得る。
【0043】
また、閉止後のハウジング101は、試料媒体209の上方に、隔絶された小さな内部空気空間を形成する。この空気空間内に配置された少なくとも1つの錠剤型乾燥剤(図示せず)により、前記試料の乾燥がなおいっそう促され得る。例えば、乾燥剤は、前記ハウジングが前記閉止位置にあるときに試料媒体209が着座する箇所の近傍に骨格部203によって支持され得る。
【0044】
前記ハウジングが閉じられる際又は閉じられた後、骨格部203の遠端に設けられたラチェット機構により、当該ハウジングは閉じたまま維持されるよう促される。例えば、櫛歯240が、ラチェット爪として機能し、かつ、前記ハウジングが押し閉じられる際にハウジング部101-Aの端部にある小孔245(
図1を参照)又は他の構造に係合し得る。櫛歯240は、ハウジング部101-Bの側部にある小孔245にペンチのような工具をアクセスさせて例えば当該櫛歯240をつまむ等して前記ラチェット爪を解除することでしか前記ハウジングを開くことができないように形成され得る。これにより、ハウジング部101-A,101-B同士を押し込んで装置100を閉じてしまえば、血液試料が内部に封入されたまま、遠隔の研究所へと輸送可能な状態となる。
【0045】
図4Aは試料媒体209及び媒体支持体210を実現する一手法の平面図であり、
図4Bはその側面図である。
図4Cは媒体209の平面図であり、
図4Dは支持体210の平面図である。
【0046】
媒体209は、タブ401,402に滑り込む又は嵌まり込む、略直方形状の薄い紙製又は繊維製メンブレンであり得る。タブ401,402は、媒体209を定位置に保持するように支持体410に切られた又は支持体410の一部として形成されたものであり得る。また、支持体210は、持ち手部410を有し得る。持ち手410は、フレーム部片208,211の延設部222に合致するものとされ得る。持ち手410により、ハウジング101から採取媒体209を取り出す際の当該採取媒体209の取扱いが容易になる。また、持ち手410は、支持体410(および/またはフレーム部片208,211)が前記ハウジング内により確実に嵌まり込むようにするための、所与形状の周縁部412などの他の構造を有し得る。
【0047】
図5は、血液試料が採られてから時間を置いて、採取エレメント250がハウジング101から取り出された後の、当該採取エレメント250の平面図である。なお、血液投入箇所500は、前記試料が採られる際に試料窓102に隣接して位置していた部分である。試料媒体209の第1の領域510は、濾過された赤血球(RBC)を含んでいる。一方で、前記血液試料のその他の部分は媒体209中を拡散し、試料分離領域502と精製血漿領域503を形成している。
【0048】
図6は、上側ハウジングカバー201-A-1,201-B-1の両方を取り外した装置100の図である。ここでは、骨格部203が、ウェル104を形成するインレー252を支持する領域だけでなく、当該ウェル104左側のプランジャ支持領域611、さらには、試料媒体領域612を有している様子が見て取れる。右側にあるリブ部位614は、試料媒体領域612の上方にある
図6の乾燥剤630の少なくとも1つの錠剤を支持している。左側には、3本のプランジャ202が左下側のハウジング部201-A-2における一対の支持体616,617によって定位置に保持されている様子が描かれている。後で詳述するように、プランジャ202はそれぞれ、対応するキャピラリーチューブ204と位置合わせされている。
【0049】
図7に、プランジャ支持領域611とインレー部片252を詳細に示す。プランジャ202の左側端部は、下側ハウジング部201-A-2の内側縁部620に当接するタブ619に連結している。これにより、前記ハウジングが閉じられると、プランジャ202がキャピラリー105内に押し込まれる。なお、プランジャ202の右側はインレー252に形成された対応する孔(
図7には図示せず)内に挿設されており、当該孔はキャピラリーチューブ204の入口と位置合わせされている。
【0050】
図8は、下側ハウジングカバー201-A-2,201-B-2も取り外した状態での、支持部材203の一部を示す部分底面図である。同図を分かり易くするために、採取媒体209と支持体210は省略した。支持部203の左側端部にあるリブ801により、インレー252内へのプランジャ202の案内がなおいっそう支援され得る。なお、インレー252の右側のうち、キャピラリーチューブ105の出口近傍には、側方溝803が形成されている。溝803は、採取した血液のための前記キャピラリーからの出口通路を構成している。チューブ204を出た血液は、溝803近傍の少なくとも1つの凸部820により、側方溝803へと進行するようなおいっそう促され得る。
【0051】
図9はインレー252の裏側の一部についての
図8と同様の図であるが、骨格部203内に挿設される採取エレメント250が追加されている。なお、フレーム208(およびフレーム211(
図9には図示せず))を含む採取エレメント250の位置から、採取媒体209がキャピラリー105からの前記脱出通路および側方溝803の近傍に保持されるという点に留意されたい。
【0052】
図10は、インレー252の一具体例の各構成部品を詳細に示す分解図である。
【0053】
【0054】
図12は、インレー252のうちの弾性を有するインサート部品1030である。
【0055】
この具体例では、インレー252が、ウェル部片1010、キャピラリー支持体1020および弾性インサート1030の3つの部品で構成されている。ウェル部片1010およびキャピラリー支持体1020は、可視的に透明な剛体のプラスチックで形成されたものとされ得る。インレー252は、ウェル部片1010におけるピン1040をキャピラリー支持体1020における対応する孔1050内に係合させることによって組み立てられ得る。
【0056】
一般的に、ウェル部片1010はウェル104を、血液試料が最初に患者によって導入される凹所又は椀状部として形成するように機能する。ウェル部片1010における長孔1015が、プランジャ(
図10には図示せず)の案内を行う。
【0057】
キャピラリー支持体1020は、長孔1060を有している。長孔1060の直径は、キャピラリーチューブ105を前記プランジャ(
図10には図示せず)と位置合わせされた状態に強固に保持するのに適した直径である。ここでは、3本のキャピラリー105がインレー252により支持されるが、キャピラリー105の本数をより少なくしたり多くしたりすることも可能である。同図には描かれていないが、キャピラリー支持体1020は、さらに、前記キャピラリーの出口端部の側方溝803の全体又は一部も形成している。
【0058】
インサート1030は、弾性を有するプラスチック又はゴムで形成されている。インサート1030は、ウェル部片1010とキャピラリー支持体1020との間に配置される。インサート1030には、さらに、対応する本数のキャピラリー105を挿入することが可能な個数の孔1035が形成されている。好ましくは、略直方形状のインサート1030が曲線状の上突部1210を有している。なお、部片1101の当該上突部は、患者(又はその看護者)が指先をスワイプさせることでウェル1010に血液が溜まるよう促すエッジ部を、当該ウェルの近隣に構成するものである。部片1101の前記突部は、血液が付着しないように促して当該血液を前記試料ウェルに導くための疎水性材料で処理され得るか又は当該疎水性材料で被覆され得るか又は当該疎水性材料で形成され得る。
【0059】
図13は、インレー252の代替的な一具体例の斜視図である。ここでのインレー252は、射出成形シリコーンなどといった、弾性材料の単一物から形成されている。その点を除けば、このバージョンのインレー1300は、少なくとも試料ウェル1301、指スワイプ用の突体130および側方溝1320を含め、
図10に示すバージョンのインレー252と同じ構造を有している。
【0060】
図14は、ハウジングカバーを取り外した状態での骨格部203の図であり、錠剤形態の乾燥剤1402の考えられ得る位置の一つが描かれている。なお、錠剤1402は、試料媒体209の上方にて例えば前記キャピラリー(
図14には図示せず)の出口端部近傍などの定位置に保持される。錠剤型乾燥剤1402は一つしか描かれていないが、当然ながら複数設けられてもよい。なお、ここでは、1つ以上の前記ハウジング部(例えば、ハウジング部201-B-2)における一つの角部1450の形状が、残りの他のハウジング部における残りの角部の形状と異なり得る点に留意されたい。例えば、角部1450が面取りされ得る一方で、残りの角部は丸形状とされる。異なる形状を有する角部1450は、自動取扱装置や自動処理装置を用いての装置100の登録作業を支援し得る。
【0061】
図15は、プランジャ202の拡大図であり、キャピラリー105内への及びキャピラリー105中での血液の流動をなおいっそう促すように当該プランジャ202の端部1501がリブ加工又はキャスタレーション加工され得る様子が描かれている。
【0062】
図16は、少なくとも1つのばねクリップ1601により骨格部203内に採取エレメント250をさらに保持するという一手法の詳細図である。クリップ1601は、媒体支持体210の一端に係合又は圧接し得る。クリップ1601は、骨格部203又はハウジング部201-B-2(図示せず)における対応する他の構造にも係合し得る。なお、採取エレメント250の裏面又は当該裏面に張り付けられたラベルにはバーコード1600、QRコード(登録商標)などの他の識別表示、または参照番号が印刷され得るという点に留意されたい。
【0063】
装置100は、使用時、患者が自身の指の一本にランセットを使って出した血液を採取するための極めて簡便な手段となる。市場で入手可能なランセットが使用され得るが、ランセットの種類の選択は一般的にユーザの自由である。指から血液滴が出ると、患者は弾性凸状エッジ1030を横切るように指を滑らせることで当該滴を試料採取窓102のウェル104へと取り出す。この血液滴は重力や表面力によってウェル104の底部に進行し、そこで採取(計量)キャピラリー105の開口部と遭遇する。そこから血液は試料保存媒体209を含む採取エレメント250へとさらに導かれるが、このことは、2つの前記ハウジング部同士を閉じた際にプランジャが血液を前記キャピラリーから押し出すことによってなおいっそう促される。
【0064】
そして、閉止後の装置100は、隔絶された小さな内部空気空間を形成する。当該空間は、内部のポケットに収められた錠剤型乾燥剤によって素早く乾燥され得る。現行型のLF1紙を採取媒体として使用することで、赤血球を含まない血漿のスポットと血漿が取り除かれた全血のスポットとが生成される。LF1紙の構造は、赤血球の速度を遅らせることで試料が当該紙上を移動するにつれて血漿検体を徐々に分離させるという差別移動を引き起こす。血漿は、多くの検体アッセイ法を阻害しがちな赤血球が取り除かれているので、あらゆる定量的血液検査にとって遥かに良好である。
【0065】
つまり、装置100は、標準的な乾燥血液スポット検査に比べて、高品質な定量アッセイを行うための遥かに優れた機会を提供する。さらに、乾燥状態の試料の赤血球部分に対して感染症検査を行うことも可能であり、その赤血球部分は血漿が取り除かれているものの、病原体の高精度な検出を行うのに十分である。
【0066】
前記装置は、さらに、血液試料の保存および輸送を行うのに理想的な機構である。前記装置が閉じられてしまえば、血液試料は外部環境からほぼ遮断された状態で内部に閉じ込められる。ユーザにより閉じられた前記装置は、前記ラチェット機構により、ロックされて閉じた状態のまま確実に維持される。当該ラチェット機構は、ハウジング101の側部にある小孔245にピンチ工具をアクセスさせて前記ラチェット爪を解除することでしか開くことができない。
【0067】
(見解)
A.所定量の体液を採取し、安定化させ、保存する装置
i)液体試料採取装置は、
開放位置から閉止位置へと構成可能なハウジングと、
液体を採取する試料採取ウェルと、
毛細管現象により上記試料採取ウェルから液体を吸い込むように配置された、所定の容積を有する少なくとも1つのキャピラリーと、
メンブレンと、
上記キャピラリーと同一直線上に並んでおり、上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると上記キャピラリーから液体を上記メンブレンへと供給するように配置された、少なくとも1つのプランジャと、
上記少なくとも1つのプランジャが液体を上記メンブレンへと供給する際に当該液体に接触するように配置された、液体安定化剤と、
を備えるものであり得ることが理解できる。
ii)上記安定化剤は、ヘパリンおよび/またはEDTAであり得るか、少なくとも1つの上記キャピラリーの内側に塗布されているものであり得るか、あるいは、上記メンブレンに塗布されているものであり得る。
iii)上記キャピラリーの出口近傍の定位置に上記メンブレンを支持する取外し可能な支持エレメントが、上記ハウジング内に配置され得る。
iv)上記ハウジングは、さらに、乾燥剤領域を上記メンブレン近傍に有し得る。乾燥剤は、錠剤であり得る。所与の構造が、当該錠剤型乾燥剤を上記メンブレン近傍に保持し得る。
v)少なくとも1つの上記キャピラリーは、試薬が塗布されているものとされ得るか、または所定量の液体試薬を保持しているものとされ得る。上記保存メンブレンは、上記試薬を含有しているものとされ得る。
vi)上記メンブレンは、一部又は全体が、イムノアッセイストリップなどの検査ストリップであり得る。このような検査ストリップは、1つの上記キャピラリーの出口と同一直線上に並べられたものであり得る。上記検査ストリップは、全血採取メンブレンとする上記メンブレン上に又は当該メンブレン近傍に配置された、それとは別の種類のアッセイ体であってもよい。
vii)上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると、内蔵する試薬が上記液体と混ざり得る。
viii)上記試料ウェル近傍には、突部が配置され得る。当該突部は、疎水性とされ得る。
ix)また、上記ハウジング内に配置された採取エレメントが、上記試料ウェルを構成するように当該採取エレメントに形成された凹所、および上記凹所に隣接形成されて当該凹所の外縁の一部のみに沿って延在している立上り突部を含み得る。上記凹所は、円形状であり得る。
【0068】
B.試料ウェル及び/又はキャピラリー及び/又はアッセイ体の進展を確認するための窓
i)液体試料採取装置は、
開放位置から閉止位置へと構成可能なハウジングと、
上記ハウジング内に位置した、液体を採取する試料採取ウェルと、
毛細管現象により上記試料採取ウェルから液体を吸い込むように配置された、所定の容積を有する少なくとも1つのキャピラリーと、
メンブレンと、
上記キャピラリーと同一直線上に並んでおり、上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると上記キャピラリーから液体を上記メンブレンへと供給するように配置された、少なくとも1つのプランジャと、
を備え、上記試料ウェルは、上記ハウジングが上記開放位置にあるとき目視可能で且つ上記液体を受け入れるように露出しており、上記ハウジングが上記閉止位置にあるときには、当該ハウジングが上記試料ウェルを少なくとも部分的に取り囲み、上記ハウジング内に配置された光学的に透明な窓により、上記ハウジングが上記開放位置及び上記閉止位置のいずれにあっても上記試料ウェルの少なくとも一部、かつ/あるいは、上記キャピラリー及び上記メンブレンのうちの少なくとも一方を目視できるものであり得ることが理解できる。
ii)上記窓は、上記キャピラリー近傍に位置し得る。
iii)上記キャピラリーは、上記ハウジングが上記開放位置にあるとき、液体試料が上記装置により採取されている様子が当該キャピラリーによって目視確認できるように可視的に透明なものとされ得る。
iv)また、上記ハウジングが上記閉止位置にあるときには、十分な液体試料が上記装置内に導かれたか否かが、上記光学的に透明な窓によって確認可能とされ得る。
v)上記装置は、上記ハウジングを上記開放位置から上記閉止位置へと動かすことができるように係合し且つ中央の支持部位に沿って摺動可能とされる、第1のハウジング部位と第2のハウジング部位とを備え得る。
vi)上記中央の支持部位が、上記試料ウェルを含み得る。
vii)一部の配置構成において、上記第1のハウジング部は、上記ハウジングが上記閉止位置にあるときに少なくとも1つのキャピラリーを目視できるように配置された光学的に透明な窓を含む。
viii)上記中央の支持部位は、上記キャピラリーを、上記光学的に透明な窓に対して一定に位置合わせするように保持し得る。
ix)一部の構成では、上記メンブレンが、試料保存領域及びアッセイ領域のうちの少なくとも一方を構成する。
【0069】
C.インレーエレメントがキャピラリーの位置合わせ及び支持を行う
i)液体試料採取装置は、
開放位置から閉止位置へと構成可能なハウジングと、
上記ハウジング内に位置した、液体を採取する試料採取ウェルと、
毛細管現象により上記試料採取ウェルから液体を吸い込むように配置された、所定の容積を有する少なくとも1つのキャピラリーと、
試料保存メンブレンと、
上記キャピラリーと同一直線上に並んでおり、上記ハウジングが上記開放位置か上記閉止位置へと動かされると上記キャピラリーから液体を上記メンブレンへと供給するように配置された、少なくとも1つのプランジャと、
上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされるときに少なくとも1つのキャピラリーを少なくとも1つの上記プランジャと位置合わせされた状態に維持するように上記ハウジング内に配置された、支持エレメント又はいわゆる「インレー」と、
を備えるものであり得ることが理解できる。
ii)また、上記支持エレメントは、上記キャピラリーとそれぞれ係合する少なくとも1つの貫通孔を有し得る。
iii)上記支持エレメントの全体又は一部は、弾性材料で形成されたものであり得る。
iv)上記装置は、少なくとも2つの上記プランジャが上記キャピラリーとは反対側の端部にてタブアタッチメントと連結しているように構成され得る。
v)上記ハウジングは第1のハウジング部位および第2のハウジング部位を含み得て、これら2つの部位が互いに離間させられると上記ハウジングは上記開放位置になり、これら2つのハウジング部位が互いに近接するように動かされると上記ハウジングは上記閉止位置になる。
vi)特定の構成では、2つの上記ハウジング部位が互いに近付くように動かされると上記プランジャも動かされて液体が上記キャピラリーチューブ内に押し込まれるように、タブアタッチメントが上記第1のハウジング部位と機械的に相互作用可能に配置されている。
vii)また、上記支持エレメントは、上記少なくとも1つのキャピラリーの出口に設けられた溝を有し得る。このような溝は、上記キャピラリーから液体を上記試料保存メンブレン側になおいっそう導くように設けられたものであり得る。
viii)上記キャピラリー及び上記溝の近傍には、液体が上記側方溝に伝わるようなおいっそう促す側方フランジが設けられ得る。
ix)また、上記プランジャはそれぞれ、周方向のシールを具備し得る。
x)上記支持エレメントは、可視的に透明であり得る。
【0070】
D.メンブレンへのアクセスを開放させるピンチ
i)別の構成において、液体試料採取装置は、
開放位置から閉止位置へと構成可能なハウジングと、
液体を採取する試料採取ウェルと、
毛細管現象により上記試料採取ウェルから液体を吸い込むように配置された、所定の容積を有する少なくとも1つのキャピラリーと、
メンブレンと、
上記キャピラリーと同一直線上に並んでおり、上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると上記キャピラリーから液体を上記メンブレンへと供給するように配置された、少なくとも1つのプランジャと、
上記ハウジング内に配置された、上記メンブレンの支持を行う取外し可能な支持エレメントと、
上記メンブレンへのアクセスを可能にする、上記ハウジングの開口部と、
を備える。
ii)上記キャピラリー及び上記メンブレンのうちの少なくとも一方に、液体安定化剤が付着しているものとされ得る。
iii)上記取外し可能な支持エレメントは、上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると係合を生じるラチェット機構を含み得る。
iv)このような場合、上記ハウジングは、少なくとも1つのアクセス開口部を上記ラチェット機構近傍に有している。
v)また、上記ラチェット機構は、上記少なくとも1つのアクセス開口部を介して解除可能な爪を有し得る。
【0071】
E.メンブレン用のタブを有するマイラー(Mylar)系基材
i)液体試料採取アセンブリは、互いに離間した一対の係合タブを有する基材、および当該基材に隣接配置されて上記係合タブ間に嵌まり込むように寸法決めされた血液試料採取領域を含むことが理解できるであろう。
ii)上記基材は、マイラー(mylar)で形成されたものであり得る。
iii)一部の構成では、上記基材に溝を切り込むことによって上記係合タブが形成されている。
iv)上記メンブレンは、LF1紙の、Pall製メンブレンの、結合ガラス繊維フィルタの、または血清もしくは全血を血液部分と血漿部分とに分離する他種のメンブレンの、ストリップであり得る。
v)また、上記メンブレンは、ヘパリン、EDTA、糖類または他種の安定化剤で処理されたものであり得る。
vi)ここで、上記の構成に加えて、上記ハウジングが開放位置から閉止位置へと再構成可能であったり、液体を採取する試料採取ウェルが備えられていたり、毛細管現象により上記試料採取ウェルから液体を吸い込むように配置された、所定の容積を有する少なくとも1つのキャピラリーが備えられていたり、上記キャピラリーと同一直線上に並んでいて、上記ハウジングが上記開放位置から上記閉止位置へと動かされると上記キャピラリーから液体を上記メンブレンへと供給するように配置された、少なくとも1つのプランジャが備えられていたりしてもよい。
【0072】
つまり、上記の内容を参酌すれば、完成した本発明の真正な範囲を逸脱しない範疇で、前記装置に様々な変更や追加が施されてもよいことが理解できるであろう。