IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岡田 政寿の特許一覧

<>
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図1
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図2
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図3
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図4
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図5
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図6
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図7
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図8
  • 特許-つる性作物の栽培補助装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】つる性作物の栽培補助装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/05 20180101AFI20250120BHJP
【FI】
A01G22/05 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024172718
(22)【出願日】2024-10-01
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520470925
【氏名又は名称】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 久美
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328824(JP,A)
【文献】特開2007-202523(JP,A)
【文献】特開2000-116245(JP,A)
【文献】特開2013-230107(JP,A)
【文献】特開2021-136985(JP,A)
【文献】特開2005-278579(JP,A)
【文献】中国実用新案第218999041(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/00-22/67
A01G 17/00ー17/18
A01G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる性作物の苗が並行する複数の列に定植された圃場において、メインロープとT字型杭とネット素材製の誘引用ハンモックによって構成され、メインロープは各列の苗の鉛直上方に作業者の快適な作業高さで水平に展張され、T字型杭はその頭部が同じ高さで地上に露出する姿勢で、各苗の根本直近にメインロープの展張方向と直角に打設され、誘引用ハンモックの上端はメインロープに結束され、誘引用ハンモックの下端はT字型杭の頭部両端に緩みのない状態で結束され、誘引用ハンモックの両側面にはつる性作物を反対側側面へと折り返して誘引するための複数の誘引ポイントがあり、各苗用の誘引用ハンモックは始端苗を最上流として、隣接する下流側苗の方向へメインロープに向けて斜め上方へ同一角度で多層的に展張されていることを特徴とするつる性作物の栽培補助装置。
【請求項2】
メインロープが始端列の始端苗の直近に設置された巻取りドラムを具備する始端ポストと、当該列の終端苗の鉛直上方でメインロープを隣列へ直角に屈曲させて展張する目的で当該終端苗の直近に設置されたコーナーポストと、前記コーナーポストから受け取ったメインロープを次列へ直角に屈曲させて展張する目的で次列始端苗の直近に設置されたコーナーポストと、終端列の終端部に設置された終端ポストによって折り返しレイアウトに展張され、前記コーナーポストの側面には、誘引用ハンモックの必要長さがメインロープの屈曲によって直線状に確保できない場合に、メインロープの屈曲部の鉛直下方で前後に分割された誘引用ハンモックをメインロープに向けて斜め上方へ同一角度を保持したまま多層的に導くための、任意の高さに設定できる複数の誘引用ハンモック上端固定金具と任意の高さに設定できる複数の誘引用ハンモック下端固定棒を具備することにより、誘引用ハンモックが所謂Uターンレイアウトで展張されることを特徴とする請求項1のつる性作物の栽培補助装置。
【請求項3】
請求項1の誘引用ハンモックの中間部分に誘引用ハンモックと同じ幅で任意の長さの長方形の誘引用ハンモック中間枠を取り付け、誘引用ハンモックの上端とメインロープの結束点を苗側へ変更して、前記枠をメインロープから水平に吊り下げ、つる性作物の果実等を誘引用ハンモック中間枠の水平なネット上で空中栽培できることを特徴とする請求項1のつる性作物の栽培補助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つる性作物の栽培補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
つる性作物は自立して上方へ生育することが困難な作物であり、日の当たる場所を求めて地上を任意の方向へ生育するので、地表で栽培するには生育に必要な葉面積と同じ広さ以上の地表面積が必要となり、果実等が土壌と接することにより虫が付きやすく、栽培に必要な作業通路の確保が困難であるために自動化機器の導入が難しい。そして、地表で栽培する場合には、つる性作物の栽培に求められる摘芯、剪定、わき芽かき、誘引、摘適味蕾、授粉、摘花、摘果、収穫等の作業は腰を屈めて行うことになるので、腰痛等の労働災害が懸念される。
現有のつる性作物の栽培補助器具としては、つる性作物の生育方向を上方へと導く支柱あるいはネットフェンス等の栽培補助器具の設置が一般的である。
【0003】
支柱はつる性作物の根元に設置するだけでつる性作物の生育方向を上方へと誘引することができる栽培補助器具であり、つる性作物の栽培に必要な1個体あたりの葉面積を空間に配置する所謂空中栽培を行うことによって、1個体あたりの地表面積を削減して定植数を増加できる最も簡便な解決手段であるが、主枝あるいは側枝を空間に配置させるので、主枝や側枝、葉の相互遮蔽による個体の受光量の低下により個体の光合成産物が減少し、果実重の減少を生じさせる場合がある。また、つる性作物自体や果実重が重い場合及び背の高いつる性作物の場合、そして栽培に伴う各種作業の際に水平方向の荷重が掛かる場合には支柱が転倒し易いので、主としてつる性作物自体や果実重が軽く背の低いつる性作物の栽培に用いられている。
【0004】
次に、ネットフェンスは、地上にしっかりと固定されたネット素材製のフェンスによってつる性作物の生育方向を上方へと誘引する栽培補助器具であり、つる性作物の栽培に必要な1個体あたりの葉面積を空間に配置する所謂空中栽培を行うことによって、1個体あたりの地表面積を削減して定植数を増加できる解決手段であるが、支柱と同様に、主枝あるいは側枝を空間に配置するので、主枝や側枝、葉の相互遮蔽による個体の受光量の低下により個体の光合成産物が減少し、果実重の減少が生じる場合がある。また、背の高いつる性作物の栽培に求められる摘芯、剪定、わき芽かき、誘引、摘適味蕾、授粉、摘花、摘果、収穫等の作業の度に上向き作業あるいは高所への登り降りが必要となり、継続的な上向き作業は上肢筋部への負荷が大きく、頸部の痛みを惹起する場合があり、高所での作業は転落等の事故に繋がる危険性もある。
【0005】
そして、ネットフェンスによる栽培においては、つる性作物の生育に必要な葉面積を定植間隔で除した高さ以上のネットフェンスが必要になるので、定植間隔を密にして定植数を増加させるとネットフェンスの高さが高くなり作業性が悪化する。また、温室栽培を行う場合には前記ネットフェンス以上の高さの温室が必要となるので、温室建設費の高額化、天窓等の開閉作業の自動化、空調容積の増加等が必要となり、栽培コストの増加を招く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】野菜茶業研究所研究報告 12:7-60(2013)立体栽培スイカの果実生産特性に関する研究
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、つる性作物の単位面積あたりの定植数の増加と果実重の増加の両立と、つる性作物の栽培に伴う作業姿勢の改善及び高所作業の撲滅と、温室等の付帯設備コストの低減である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
つる性作物の苗が並行する複数の列に定植された圃場において、メインロープとT字型杭とネット素材製の誘引用ハンモックによって構成され、メインロープは始端列の始端苗の直近に設置された巻取りドラムを具備する始端ポストと、当該列の終端苗の鉛直上方でメインロープを隣列へ直角に屈曲させて展張する目的で当該終端苗の直近に設置されたコーナーポストと、前記コーナーポストから受け取ったメインロープを次列へ直角に屈曲させて展張する目的で次列始端苗の直近に設置されたコーナーポストと、終端列の終端部に設置された終端ポストによって、各列の苗の鉛直上方に所謂折り返しレイアウトで作業者の快適な作業高さに水平に展張され、前記コーナーポストの側面にはメインロープの屈曲によって誘引用ハンモックの必要長さが直線状に確保できない場合に、メインロープの屈曲部の鉛直下方で前後に分割された誘引用ハンモックをメインロープに向けて斜め上方へ同一角度を保持したまま導いて、前記誘引用ハンモックを所謂Uターンレイアウトで展張するための、任意の高さに設定できる複数の誘引用ハンモック上端固定金具と任意の高さに設定できる複数の誘引用ハンモック下端固定棒を具備しており、T字型杭はその頭部が同じ高さで地上に露出する姿勢で、各苗の根本直近にメインロープの展張方向と直角に打設され、誘引用ハンモックの上端はメインロープあるいはコーナーポストの誘引用ハンモック上端固定金具に結束され、誘引用ハンモックの下端はT字型杭の頭部両端あるいはコーナーポストの誘引用ハンモック下端固定棒の両端に緩みのない状態で結束され、誘引用ハンモックの両側面にはつる性作物を反対側側面へと折り返して誘引するための複数の誘引ポイントがあり、各苗用の誘引用ハンモックは始端列の始端苗を最上流として、隣接する下流側苗の方向へメインロープに向けて斜め上方へ同一角度で多層的に所謂Uターンレイアウトで展張されていることを特徴とするつる性作物の栽培補助装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
野菜茶業研究所研究報告 12:7―60(2013)立体栽培スイカの果実生産特性に関する研究によると、「個体当たり葉面積と果実重の間には、相関係数0.8以上の高い正の相関関係が認められ、着果節位が高いほど果実肥大期を通じて個体当たり葉面積が大きい」ことと、「日陰の葉の光合成速度は直射光を受けていた葉の24―45%であったこと」「主枝あるいは1次側枝を空間に配置する立体栽培では、主枝や1次側枝、葉の相互遮蔽による個体の受光量の低下が個体の光合成産物の減少を生じさせ、果実重の減少を生じさせる」ことが確認されている。上記の確認結果より、スイカの定植数の増加と果実重の増加を両立させるためには、定植間隔を密にし、着果節位を高くし、個体当たりの葉面積を増加させ、主枝や1次側枝、葉の相互遮蔽による個体の受光量の低下を防ぎ、直達日射を受ける葉面積を増やすことが肝要であることが判る。
【0010】
本発明の装置は、つる性作物の苗が並行する複数の列に密に定植された圃場において、斜め上方へ同一角度で多層的に展張したネット素材製の誘引用ハンモックの上面に、つる性作物1個体の栽培に必要な葉面積を確保して空中栽培を個別に行うので、定植間隔が密であっても隣接する個体の生育を阻害することがなく、平面状の誘引用ハンモック上面でつる性作物の整枝作業を行うことによって、主枝や1次側枝、葉の相互遮蔽による個体の受光量の低下を防ぎ、直達日射を受ける葉面積を増やすことで果実重の増加を図ることができる。
【0011】
また、本発明のつる性作物の栽培補助装置は、ネット素材製の誘引用ハンモックによる遮光を無視できるものとすれば、太陽光に向かって上方へ生育する習性があるつる性作物の成長点が、生育度合いに関わらず、絶えず直達日射を受光しながら斜め上方へ成長することができるので、全ての個体の均一な生育が見込まれる。
【0012】
そして、本発明のつる性作物の栽培補助装置は、誘引用ハンモックの幅を作業者が栽培に必要な摘芯、剪定、わき芽かき、誘引、摘適味蕾、授粉、摘花、摘果、収穫等の作業を片側から行える幅とすることにより、作業通路本数を減少することができ、更に、メインロープを折り返し展張することによって誘引ハンモックを所謂Uターンレイアウトで展張でき、終端列の終端部近くを除いた各列の全ての個体を誘引ハンモックの上面で個別に栽培できるので、つる性作物の定植数の増加を図ることができる。
【0013】
また、本発明のつる性作物の栽培補助装置は、つる性作物の苗の列を南北方向として、誘引用ハンモックの傾斜方向を隣接する列の誘引用ハンモックと逆にした場合には、図7―アと図7―イで比較して図示した如く、東斜め上方あるいは西斜め上方からの直達日射が奥側の列の誘引用ハンモックの下部(苗の根元近く)にまで届くので、1日当たりの個体当たりの直達日射量の増加によって果実重の増加を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明のつる性作物の栽培補助装置は、背の高いつる性作物の全長を作業者の快適な作業高さ以内に収められるので、腰を屈める作業や上向き作業を低減し、高所作業を無くして転落事故等の労働災害の低減を図ることができ、ネット素材製の誘引用ハンモックの裏側から葉裏に向けての効果的な農薬散布が行えるので農薬散布量の低減が可能となり、空中栽培が行えるので玉直し作業がほとんど不要になると同時に、温室栽培の場合における温室等付帯設備の高さを低く抑えて付帯設備コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、本発明のつる性作物の栽培補助装置は始端ポストにメインロープ巻取りドラムを具備しているので、つる性作物の栽培準備として、前記巻取りドラムを逆回転させてメインロープを快適な作業高さへと下ろすことにより、誘引用ハンモックの上端を簡便にメインロープへ結束することができ、前記結束作業の後で巻取りドラムを順回転させてメインロープを規定高さに展張してから誘引用ハンモックの下端を地上に打設されたT字型杭の頭部両端と結束することにより、誘引用ハンモックの展張作業が簡便に行える。
【0016】
そして、本発明のつる性作物の栽培補助装置は、つる性作物の栽培が終了した際には、始端ポストに具備した巻取りドラムを逆回転させてメインロープを快適な作業高さへと下ろすことにより、誘引用ハンモックに絡みついたつるを簡便に除去することができ、前記除去作業の後で巻取りドラムを順回転させてメインロープを規定高さに展張することにより、次年度のつる性作物の栽培に向けての誘引用ハンモックの展張作業が簡便に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明装置の実施例の平面図である。
図2】本発明装置の実施例の正面図である。
図3】本発明装置の実施例の側面図である。
図4】本発明に係る始端ポストの三面図である。
図5】本発明に係るコーナーポストの三面図である。
図6】本発明に係る終端ポストの三面図である。
図7図7―アは本発明に係る誘引用ハンモックの三面図であり、図7―イは中間部に長方形の誘引用ハンモック中間枠を取り付けた場合の誘引用ハンモックの正面図である。
図8図8―アは本発明に係る誘引用ハンモックを隣列と同一方向へ展張した状態の模式図であり、図8―イは本発明に係る誘引用ハンモックを隣列と逆方向へ展張した状態の模式図である。
図9】一般的なトンネル栽培方式による機器配置三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明装置の実施例の平面図であり、圃場1に始端ポスト8と複数のコーナーポスト11と終端ポスト15と作業通路23が適宜に配置され、メインロープ5が終端ポスト15から複数のコーナーポスト11を経由して始端ポスト8に向けて折り返しレイアウトで展張され、誘引用ハンモック16の上端はメインロープ5と結束点7で結束されている。
【0019】
図2は本発明装置の実施例の正面図であり、誘引用ハンモック16の下端はT字型杭6の頭部に結束されている。
【0020】
図3は本発明装置の実施例の側面図であり、メインロープ5の屈曲によって必要長さが確保できない誘引用ハンモック16が分割されて、上流側のコーナーポスト11から隣接する下流側のコーナーポスト11へ向けて斜め上方に展張されている。
【0021】
図4は本発明装置の始端ポスト8の三面図であり、水平に展張されたメインロープ5の余剰寸法はガイドプーリー10を介して巻取りドラム9に巻き取られている。
【0022】
図5は本発明装置のコーナーポスト11の実施例の三面図であり、水平に展張されたメインロープ5はガイドプーリー10を介して隣接する下流側のコーナーポスト11へと展張されている。また、前記コーナーポスト11の側面にはメインロープ5の屈曲によって誘引用ハンモック16の必要長さが直線状に確保できない場合に、メインロープ5の屈曲部の鉛直下方で前後に分割された誘引用ハンモック16をメインロープ5に向けて斜め上方へ同一角度を保持したまま導いて、前記誘引用ハンモック16を所謂Uターンレイアウトで展張するための、複数の誘引用ハンモック上端固定金具12と誘引用ハンモック下端固定棒13と、前記誘引用ハンモック上端固定金具12と前記誘引用ハンモック下端固定棒13を任意の高さに設定するための誘引用ハンモック昇降ガイド14を具備している。
【0023】
図6は本発明装置の終端ポスト15の三面図であり、水平に展張されたメインロープ5の終端が作業者の快適な作業高さで固定されている。
【0024】
図7―アは本発明装置の誘引用ハンモック16の三面図であり、ネット素材17がネット上端固定棒18とネット下端固定棒19によって緩みなく展張され、ネット上端固定棒18は誘引用ハンモック吊り下げ紐20によってメインロープ5との結束点7で結束され、ネット下端固定棒19は誘引用ハンモック吊り下げ紐20によってT字型杭6の頭部両端に結束されている。図7―イは中間部に長方形の誘引用ハンモック中間枠21を取り付けた場合の誘引用ハンモック16の正面図であり、誘引用ハンモック中間枠21は誘引用ハンモック中間枠吊り下げ紐22によってメインロープ5との結束点7から吊り下げられている。
【0025】
図8は本発明に係る誘引用ハンモック16を展張した状態の模式図である。図1図2の一部分を合成して、つる性作物4の列に対して直角に、斜め上方から俯瞰した状態を示している。図8―アは隣接する列と同じ方向に誘引用ハンモック16が展張された場合を、図8―イは隣接する列と逆方向に誘引用ハンモック16が展張された場合を示しており、図中の星印部分は誘引用ハンモック16の下部(つる性作物4の根元に近い部分)で直達日射を受光している部分を表している。
【0026】
図9は一般的なトンネル栽培方法の機器配置三面図であり、圃場1に複数の直線状のトンネル2と作業通路23が適切に配置され、つる性作物4の苗はトンネル構造部材3によって展張されたトンネル2の内部に定植されている。
【0027】
本発明の実施にあたって、圃場1の寸法と作業通路23の配置及び栽培するつる性作物4の苗の定植間隔やつる性作物4の最長生育長さ等の諸元に基づいて誘引用ハンモック16の寸法を決定し、作業者の快適な作業高さに設定された始端ポスト8とコーナーポスト11及び終端ポスト15を圃場1に適切に設置する。
【0028】
次に、メインロープ5を終端ポスト15から複数のコーナーポスト11を経由して始端ポスト8まで折り返しレイアウトで展張し、メインロープ5の余剰長さを始端ポスト8に具備した巻取りドラム9に巻き取る。
【0029】
そして、T字型杭6の頭部がメインロープ5の展張方向と直角に同じ高さで地上に露出する姿勢で、T字型杭6の胴部を各つる性作物4の苗の根本直近に打設する。
【0030】
さらに、栽培するつる性作物4の最長生育長さに合わせた誘引用ハンモック16を、例えば3点支持の誘引用ハンモック16の場合であれば、メインロープ5との1箇所の結束点7とT字型杭6の頭部にある2箇所の結束点7の合計3箇所で誘引用ハンモック吊り下げ紐20によって結束する。
【0031】
その後、つる性作物4の生育度合いに合わせて、必要とされる摘芯、剪定、わき芽かき、誘引、摘適味蕾、授粉、摘花、摘果、収穫等の作業を作業者の快適な作業高さにて実施する。
【0032】
ここで、本件発明の誘引用ハンモック16はつる性作物4の根元側を下端としメインロープ5側を上端として多層的に傾斜配置されているので、上段にある誘引用ハンモック16のネット素材17による遮光を無視できるものとすれば、太陽光に向かって上方へ生育する習性があるつる性作物4の成長点は、生育度合いに関わらず、絶えず直達日射を受光しながらメインロープ5へ向かって斜め上方へ成長することができるので、各つる性作物4の均一な生育が見込まれる。
【0033】
尚、ネット素材17で製作された誘引用ハンモック16の中間部分に、前記誘引用ハンモック16と同じ幅で任意の長さの長方形の誘引用ハンモック中間枠21を取り付け、誘引用ハンモック16の上端とメインロープ5の結束点7をつる性作物4の根元側へ変更して、前記誘引用ハンモック中間枠21を誘引用ハンモック中間枠吊り下げ紐22によってメインロープ5から水平に吊り下げ、つる性作物4の果実等をネット素材17で製作された誘引用ハンモック16の中間部の水平なネット素材17の上で空中栽培することにより、果実用のネット袋がなくても果実の姿勢の安定が行え、生育状況の監視・測定や果実の収穫等の高さを限定することができるので各種自動化機器の導入が容易となる。
【0034】
つる性作物4の栽培が終了した際には、始端ポスト8に具備した巻取りドラム9を逆回転させてメインロープ5を快適な作業高さへと下ろし、誘引用ハンモック16に絡みついたつるを簡便に除去し、前記除去作業の後で巻取りドラム9を順回転させてメインロープ5を規定高さに展張して、次年度の栽培に向けての誘引用ハンモック16の展張作業が簡便に完了する。
【0035】
尚、温室栽培の場合にはメインロープ5を展張するための始端ポスト8とコーナーポスト11及び終端ポスト15に代えて、温室天井部に補助梁を施工して、補助梁からメインロープ支持具を必要とされる場所の必要とされる高さまで吊り下げることも可能ではあるが、農地に立つ温室やビニールハウスは建築基準法上の建築物ではなく、補助梁の施工に耐えられる強度はないので推奨できない。
【0036】
また、温室内は高温で高湿度な環境であり、鉄製部材は腐食しやすいので、始端ポスト8とコーナーポスト11及び終端ポスト15に耐食性塗装を行うことと、メインロープ5にワイヤーロープを使用する際にはビニール被覆仕様とすることが強く推奨される。
【0037】
そして、T字型杭6の頭部形状は、誘引用ハンモック16を簡便に結束できる環あるいはフックが付随しているものが望ましい。
【0038】
また、誘引用ハンモック16とメインロープ5の結束点が、つる性作物4やその果実等の荷重によって根元側へ引き戻されることを防止するために、誘引用ハンモック16をメインロープ5に簡便かつ確実に固定できる所謂ワイヤークリップ等の使用が推奨される。
【0039】
ここで、圃場1を縦21m、横13m、面積が273m2と仮定し、代表的なつる性作物4である一般的な大玉西瓜の栽培方式として、南北方向に並行する「鞍つき畝」にトンネル2を設置して西瓜の「子づる4本整枝2果どり」栽培を行う際の標準的な畝間を2.5mとし、トンネル2の幅を2.0mとし、作業通路幅23を0.5mとし、西瓜の苗間を1.0mとした場合、1個体あたりの栽培面積でもあり直達日射を受ける面積でもある水平投影面積は2m2となり、図1に図示した如く、圃場内で100個体を栽培して大玉西瓜200玉の収穫が期待できる。
【0040】
ここで、前項と同じ圃場1で同じ大玉西瓜を、南北方向に並行する「鞍つき畝」に苗間を1.0mで定植し、作業者が高所作業を伴わずに快適に作業を行える高さで西瓜の苗の鉛直上方に展張されたメインロープ5の高さを地上から1.9mとし、地面に打設されているT字型杭6の頭部の高さを地上から0.3mとし、誘引用ハンモック16とT字型杭6との結束点7から誘引用ハンモック16とメインロープ5との結束点7までの水平距離を2.0mとし、誘引用ハンモック16の幅を1.0mとし、つるがT字型杭6の頭部中央部から30度の角度で誘引用ハンモック16の片側側面の誘引点へと誘引され、誘引点に到達したつるが反対側面の誘引点へ向けて折り返して30度の角度で誘引されるとした場合、つる性作物が誘引用ハンモック16の上端に到達するまでの生育長さは約5.1mであり、地上からT字型杭6の頭部までの高さ0.3mを加えたつる性作物4の全長は約5.4mとなるので、全長5.4mの背の高いつる性作物4を1.9m以下の作業高さで栽培することが可能となり、着果節位を高くして個体当たり葉面積を大きくしても作業高さを低く抑えられる。尚、上記寸法の誘引用ハンモック16の面積は約2.56m2となり一般的なトンネル栽培方式で大玉西瓜を栽培する場合よりも個体当たり葉面積を約28%広くすることができる。そして、誘引用ハンモック16の水平投影面積は前項のトンネル2による栽培方式の場合と同じ2.00m2であり、前記水平投影面積2.00m2の50%である1.00m2(苗間寸法に誘引用ハンモック16の幅を乗じた面積)は絶えず直達日射を受光する。
【0041】
また、図8―イに図示した如く、所謂Uターンレイアウトで配置された誘引用ハンモック16は、誘引用ハンモック16の傾斜方向が隣接する列の誘引用ハンモック16と逆になり、つる性作物4の列を南北方向とした場合には、圃場1に対して東斜め上方あるいは西斜め上方からの直達日射が奥側の列の誘引用ハンモック16の下部(つる性作物4の根元近く)にまで届くので、1日当たりの個体当たりの直達日射量の増加によって、定植間隔を密にしても果実重の増加を図ることができる。
【0042】
そして、前項の条件下で、本発明の方式で一般的な大玉西瓜の栽培を行う場合には、図1に図示した如く、198個体を栽培して396玉の収穫が期待できるので、一般的なトンネル2による栽培方式に比して98%の増収が期待できる。
【0043】
因みに、前項に記載した誘引用ハンモック16の水平長さは苗間寸法の2倍であるので、誘引用ハンモック16は2層で展張されることになるが、誘引用ハンモック16の多層化の上限層数については、栽培予定品種が必要とする個体当たりの日射量と栽培地の全天日射量及び個体当たりの根の生育に必要な地表面積等を基にして別途検討する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0044】
つる性作物4を、斜めに多層的に展張したネット素材17で製作された誘引用ハンモック16の上面で個別に栽培し、つる性作物4の定植数増加と果実重の増加を両立すると同時に、栽培に伴う腰を屈める作業や上向き作業を低減して作業者の身体的負荷を軽減し、高所作業を無くして転落等の事故を撲滅し、温室等の付帯設備コストの低減を行う。
【符号の説明】
【0045】
1圃場
2トンネル
3トンネル構造部材
4つる性作物
5メインロープ
6T字型杭
7結束点
8始端ポスト
9巻取りドラム
10ガイドプーリー
11コーナーポスト
12誘引用ハンモック上端固定金具
13誘引用ハンモック下端固定棒
14誘引用ハンモック昇降ガイド
15終端ポスト
16誘引用ハンモック
17ネット素材
18ネット上端固定棒
19ネット下端固定棒
20誘引用ハンモック吊り下げ紐
21誘引用ハンモック中間枠
22誘引用ハンモック中間枠吊り下げ紐
23作業通路
【要約】
【課題】 つる性作物の単位面積あたりの定植数の増加と果実重の増加の両立と、つる性作物の栽培に伴う作業姿勢の改善及び高所作業の撲滅と、温室等の付帯設備コストの低減。
【解決手段】 快適な作業高さで斜めに多層的に展張されたネット素材17で製作された誘引用ハンモック16の上面でつる性作物4を個別に栽培し、定植数の増加と果実重の増加を両立すると同時に、栽培に伴う腰を屈める作業や上向き作業を低減して作業者の身体的負荷を軽減し、高所作業を無くして転落等の事故を撲滅し、温室等の付帯設備コストの低減を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9