(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】車両顧客マッチングシステム及び端末表示装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20250120BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20250120BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20250120BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G01C21/26 B
G06Q50/40
(21)【出願番号】P 2020559965
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047424
(87)【国際公開番号】W WO2020121914
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018248869
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512065591
【氏名又は名称】株式会社フューチャー・ブレイン
(72)【発明者】
【氏名】萬屋 菊洋
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134569(JP,A)
【文献】特開2003-151083(JP,A)
【文献】特開2005-346634(JP,A)
【文献】特開2006-339810(JP,A)
【文献】特開2009-042133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0033511(US,A1)
【文献】特表2007-520685(JP,A)
【文献】特開2017-116470(JP,A)
【文献】特開2016-057777(JP,A)
【文献】特開平04-107700(JP,A)
【文献】特開2002-056078(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101894107(CN,A)
【文献】特開2003-345874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
G06Q 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動サービス車両が顧客を確保する車両顧客マッチングシステムであって、
前記顧客が保有し、位置情報探索装置より取得した前記顧客の現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する顧客端末表示装置と、前記移動サービス車両に設けられ、前記位置情報探索装置より取得した前記移動サービス車両の現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する車両端末表示装置と
を含んで構成され、
前記顧客端末表示装置と前記車両端末表示装置と
は、それぞれにネットワークを介してベクトルマップ形式の地図情報を格納する
クラウドサーバー
に接続され、
前記
車両端末表示装置及び前記顧客端末表示装置の各々の端末表示装置は、描画ソフトを格納し、前記
クラウドサーバーに格納された前記地図情報と前記描画ソフトにより加工、編集された地図パーツを含む前記電子マップを作成し、
前記各々の端末表示装置は、前記
クラウドサーバーからの前記地図情報を用いて所定範囲内に存在する前記移動サービス車両のマーカー及び前記顧客のマーカーを表示すると共に、前記移動サービス車両
の移動方向及び前記顧客
の移動希望方向を示す移動方向マーカーを表示する
ことを特徴とする車両顧客マッチングシステム。
【請求項2】
前記移動サービス車両は、空車タクシーであり、前記顧客は、タクシー乗車希望者であって、
前記タクシー乗車希望者が保有する前記顧客端末表示装置は、配車希望信号を発信する配車希望信号発信部及び前記顧客の移動希望方向を伝える移動方向伝達手段を備え、
前記クラウドサーバー又は前記各々の端末表示装置は、前記タクシー乗車希望者の現在位置と各々の前記空車タクシーの位置、進行方向及び前記顧客の移動希望方向に基づき最短走行経路を最短ルート算出法により算出し、
前記空車タクシーに設けられた車両端末表示装置は、前記顧客端末表示装置より発信された前記配車希望信号を受信すると、乗車希望者マーカーを識別表示し配車希望である旨表示すると共に、前記クラウドサーバー又は前記各々の端末表示装置で算出された前記最短走行経路に基づき前記タクシー乗車希望者への到達可能性時間が短い順に前記空車タクシーに優先順位が与えられ、かかる優先順位に応じて前記顧客端末
表示装置に対し、配車応答信号が発出されることを特徴とする請求項1記載の車両顧客マッチングシステム。
【請求項3】
前記移動サービス車両は、空車タクシーであり、前記顧客は、タクシー乗車希望者であって、前記顧客端末表示装置は、前記空車タクシーの台数表示範囲変更手段を備え、
前記車両端末表示装置は、前記タクシー乗車希望者の人数表示範囲変更手段及び前記空車タクシーが所定道路通過を基準として、前記所定道路通過後の時間経過に従い前記所定道路を変色又は前記所定道路を識別表示させて前記空車タクシーの通過頻度及び時間経過を表示する手段を備え、
前記
クラウドサーバーは、前記各々の端末表示装置からの情報と前記位置情報探索装置からの情報に基づき、前記空車タクシーが前記タクシー乗車希望者を確保した際、乗車場所又は道路名、乗車時間、降車場所又は道路、降車時間、天候、季節、曜日を含む乗車情報を蓄積する手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の車両顧客マッチングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客と移動サービス車両とのマッチング(遭遇、確保)及び移動サービス車両間でのマッチングを効率的かつ確実に行うための車両顧客マッチングシステム及び端末表示装置に関する。特にタクシーの効率的配車、走行経路案内装置及び顧客とタクシーとの効率的マッチングのためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
街中を走行しているタクシー、ライドシェア(相乗り)車両などの移動サービス車両を顧客が確保しようとする場合、空き車両が来るまで待機するか、タクシー会社などへ配車依頼し空き車両を手配してもらう必要がある。タクシー会社やライドシェア会社は、空車走行を短縮し、稼働率を上げることが望まれており、できるだけ顧客と空き車両とが短時間で遭遇し、確実に遭遇できる探索案内装置やシステムが望まれている。また、タクシー確保を希望する顧客としてもできるだけ短時間で空車タクシーを効率的に確保したいという要望がある。
【0003】
また、食堂、図書館、コンビニエンス・ストア、スポーツジムなどの各種店舗サービスが移動車両により行われるビジネスが出現しつつあり、顧客がそれらのサービスや店舗の移動車両を需要に応じてほしい時にほしい場所へ呼び出す探索・案内装置やシステムが望まれている。
【0004】
ここで、車両とは、本発明において電車や列車のような軌道上を走行する車両でなく、タクシー、バス、トラック、自家用車などの道路を走行する車両を意図している。このような道路走行車両では、道路上をいずれの方向にでも走行可能である。特にタクシーなどが顧客を効率的に確保するには長年タクシードライバーの経験と勘により走行経路を探索し、選定しているため必ずしも確実に顧客を確保できるとは限らないし、短時間で効率的に確保できるとは限らない。
【0005】
このような課題や要望を解決するために、空車状態にあるタクシーなどに対して、適切なルート誘導を行うことのできるナビゲーションシステムとして、特許文献1が知られている。特許文献1に記載された装置は、中継点の候補地点についての位置情報、及び候補地点を中継点として選択するか否かの判断材料となる選択判断情報が登録されたデータベースと、データベースに登録されている選択判断情報、及び所定の選択条件に基づいて、中継点とする地点を選択する中継点選択手段と、所定の探索条件に基づいて、データベースに記憶されている位置情報を用いて、選択された中継点を通過するルートを探索するルート探索手段とを備える。その装置は、タクシーの顧客が確保できそうな探索条件をタクシードライバーに提供し、効率的顧客確保を行うことを開示している。しかし、この方法では、探索条件として季節、曜日、時刻、天気などを設定し、過去データや経験則により顧客確保確率が向上させる可能性はあっても確実性に欠ける。このような、装置は、タクシー側だけの顧客獲得可能性の向上であり、顧客側からの要求に応えるサービスではなく、顧客及びタクシー側の両方にとって満足すべきものでない。
【0006】
また、特許文献2においては、タクシー運転手は、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)受信機等により位置情報を所得し、この位置情報をフィルタとして意味情報ネットワークに対して設定する。タクシー要求者は、携帯端末に設けられているGPS受信機等により位置情報を取得し、この位置情報を含むタクシー要求をイベントとして意味情報ネットワークに送信する。タクシー要求イベントを受信したタクシー運転手は、このタクシー要求を受け付け、タクシー要求者に対して自己の位置情報を含む応答を通知する。タクシー要求者は、この応答を受信し、サービスを受けることを決定した旨の通知をそのタクシー運転手に対して行う。この通知を受けたタクシーのタクシー運転手は、設定しているフィルタを解除し、タクシー要求者の所在地に向かいタクシーサービスを提供する。これにより、配車センターなどの仲介者を介することなくタクシー要求者(顧客)とタクシー運転手との間でネットワークを確立し、移動するサービス提供者の探索を可能とする方法が提供されている。
【0007】
しかし、これら多くの探索ナビシステムは、高齢者が増加しつつあるタクシードライバーには簡便に利用できず、どの道路をどの方向に走行した方が効率的に顧客を確保できるのかが不明である。また、より安全運転で視覚的に認識し易い効率的かつ確実な顧客確保の装置やシステムが求められている。また、タクシー待ちをしている顧客にとっては、できるだけ待ち時間を短縮し、効率的に空車タクシーに遭遇することが望ましい。更にタクシー会社にとっては、空車走行時間をできるだけ短縮すると共に、エリア内での空車タクシー走行台数を効率的に配車させ、配車要求への対応、運行管理、走行状態把握などに対する管理システムの効率化も望まれている。
【0008】
上述の通り、タクシーやライドシェアなどの移動サービス車両ではできるだけ短時間で確実に顧客を確保する必要があり、また空車走行時間を短縮することが求められ、そのため先行技術文献のような種々の工夫がなされている。タクシードライバー、タクシー待ち顧客、タクシー会社の関係者すべてにとってより利便性の高いタクシーと顧客とのマッチング装置及びシステムの実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-107165号公報
【文献】特開2002-183874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来多くの探索ナビシステムでは、ビットマップを利用したタイルマップ方式(区画処理方式)による演算処理が行われている。所定範囲内の区切られた区画毎にGPSによる緯度、経度などの位置情報をGIS(Geographic Information System)地図情報を利用して、ビットマップ、静止画形式で表示された地図上に現在位置や固定建物、ランドマーク、交差点などを目印座標として表示している。そのため、画像範囲を拡大したり、詳細表示したりする場合や顧客と移動車両(タクシーなど)が区画外にある場合などはそれぞれの位置情報を把握した後、静止画地図のレイヤを変更(地域拡大、縮小)して表示処理を行い、作成された静止画表示上に必要な現在位置やGIS情報を表示するなど複雑な処理が求められていた。
【0011】
本発明は、確実に顧客を確保して顧客の待ち時間を短縮し、効率的に配車して移動サービス車両の空車走行時間を短縮することができる車両顧客マッチングシステム及び端末表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決し上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載の通り、移動サービス車両が配車希望の顧客を確保する車両顧客マッチングシステムであって、前記顧客が保有し、位置情報探索装置より取得した前記顧客の現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する顧客端末表示装置と、前記移動サービス車両に設けられ、前記位置情報探索装置より取得した前記移動サービス車両の現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する車両端末表示装置とを含んで構成され、前記顧客端末表示装置と前記車両端末表示装置とは、それぞれにネットワークを介してベクトルマップ形式の地図情報を格納するクラウドサーバーに接続され、前記車両端末表示装置及び前記顧客端末表示装置の各々の端末表示装置は、描画ソフトを格納し、前記クラウドサーバーに格納された前記地図情報と前記描画ソフトにより加工、編集された地図パーツを含む前記電子マップを作成し、前記各々の端末表示装置は、前記クラウドサーバーからの前記地図情報を用いて所定範囲内に存在する前記移動サービス車両のマーカー及び前記顧客のマーカーを表示すると共に、前記移動サービス車両の移動方向及び前記顧客の移動希望方向を示す移動方向マーカーを表示することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車両顧客マッチングシステムは、前記移動サービス車両が、空車タクシーであり、前記顧客が、タクシー乗車希望者であって、前記タクシー乗車希望者が保有する前記顧客端末表示装置は、配車希望信号を発信する配車希望信号発信部及び前記顧客の移動希望方向を伝える移動方向伝達手段を備え、前記クラウドサーバー又は前記各々の端末表示装置は、前記タクシー乗車希望者の現在位置と各々の前記空車タクシーの位置、進行方向及び前記顧客の移動希望方向に基づき最短走行経路を最短ルート算出法により算出し、前記空車タクシーに設けられた車両端末表示装置は、前記顧客端末表示装置より発信された前記配車希望信号を受信すると、乗車希望者マーカーを識別表示し配車希望である旨表示すると共に、前記クラウドサーバー又は前記各々の端末表示装置で算出された前記最短走行経路に基づき前記タクシー乗車希望者への到達可能性時間が短い順に前記空車タクシーに優先順位が与えられ、かかる優先順位に応じて前記顧客端末表示装置に対し、配車応答信号が発出されるように構成することも可能である。
【0015】
また、本発明の車両顧客マッチングシステムは、前記移動サービス車両が、空車タクシーであり、前記顧客が、タクシー乗車希望者であって、前記顧客端末表示装置は、前記空車タクシーの台数表示範囲変更手段を備え、
前記車両端末表示装置は、前記タクシー乗車希望者の人数表示範囲変更手段及び前記空車タクシーが所定道路通過を基準として、前記所定道路通過後の時間経過に従い前記所定道路を変色又は前記所定道路を識別表示させて前記空車タクシーの通過頻度及び時間経過を表示する手段を備え、前記クラウドサーバーは、前記各々の端末表示装置からの情報と前記位置情報探索装置からの情報に基づき、前記空車タクシーが前記タクシー乗車希望者を確保した際、乗車場所又は道路名、乗車時間、降車場所又は道路、降車時間、天候、季節、曜日を含む乗車情報を蓄積する手段を備えるように構成することも可能である。
【0021】
なお、上記した課題を解決する手段は、特許請求の範囲内において可能な限り組合せたり、修正、変更したりして使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成によれば、タイルマッピング(区画処理方式)を採用せず、ベクトルマップ形式による電子マップを構成するため、地図上のパーツ(マーカー、道路、等)の表示、加工が区画で区切られることがない。そのため、タクシーなどの移動サービス車両やその顧客が区画外にある場合でも移動サービス車両(空車タクシなど)と顧客との間に関連する必要な地図パーツ(道路表示)を選択して表示することが可能となり、タイルマッピングなどの区画処理方式の様に何度も区画を拡大又は詳細表示して探索表示する必要がない。また、顧客及び移動サービス車両(空車タクシー等)の位置及び移動方向、進行方向がそれぞれの端末表示装置に表示されるため、顧客はより早くマッチングできる可能性のある道路で移動サービス車両(空車タクシー等)を待機することが出来、車両のドライバーにとっては、顧客の存在する道路を選択することができる。これにより、顧客及びドライバーは、より確実にかつ短時間でマッチングの判断ができる。また、より早くマッチングが可能となることで、移動サービス車両側にとっては、無駄な空車走行が減少し、より効率的な走行が可能となる。これにより、確実に顧客を確保して顧客の待ち時間を短縮し、効率的に配車して移動サービス車両の空車走行時間を短縮することができる。
【0023】
また、請求項2の構成によれば、端末表示装置の電子マップは、クラウド又は中央処理サーバー側に格納された地図情報とそれぞれの端末表示装置に格納された描画ソフトにより作成される。描画ソフトがデバイス側(端末表示装置)にあることで、地図上のベクトルマップ形式の各パーツ(マーカー、道路、等)の表示、加工が自由となり、かつ道路やマーカーの色替え、変更、編集が可能となる。さらに、そのような構成により、地図上でのマーカーなどのパーツを比較的容易にカスタマイズすることができると共に、ビットマップで静止画地図上にマーカーなどのパーツを配置することにより処理時間を短縮できる。
【0024】
また、請求項4の構成によれば、タクシー待ちの顧客が配車を希望する場合、従来の方式では、配車タクシーが送迎状態になった時点から課金される場合が多いが、本発明によれば配車希望信号が配車希望者の近傍を走行している空車タクシーに表示されるため、走行中の空きタクシーを確保することができ、顧客にとっては配車料金が生じないメリットがある。また、配車希望信号をドライバーが検知すると、進行方向などを判断し配車希望者の位置へ最も早く到着する可能性を有する空車タクシーから優先的にタクシーの応答権が設定されるため、短時間でのマッチングが可能となる。
【0025】
また、請求項6の構成によれば、空車タクシーが通り過ぎたあとの時間経過が地図上に色変わり又は点滅により表示されるため、空車タクシーが通過する頻度又は通過しない頻度が目視により容易に判断可能となり、空車タクシードライバーがより顧客が獲得し易い走行道路を選択判断しうる。このように空車タクシーの時間経過を道路上で色変わりしたり、点滅表示などの識別させることで、ドライバーはディスプレイを注視しなくても、感覚的に走行方向を認識でき、顧客に早くマッチングできる道路を選択することができ、安全性の確保も可能となる。
【0026】
また、請求項7の構成によれば、乗車場所又は道路名、乗車時間、降車場所又は道路、降車時間、天候、季節、曜日を含む乗車情報データがサーバーに蓄積されることで、これらのマッチング情報を利用して、場所、時間、天候などに応じた、マッチング確率の向上を図ることができる。さらに、そのような顧客獲得情報を利用して、走行配車数、配車場所の適正化を図ることが可能となる。
【0027】
このように走行中の空車タクシーを始め、各種移動サービス車両の効率的かつ確実なマッチング及び配置、走行経路、台数配置などの適正化を行うことが可能となり、顧客、運転手(タクシードライバー)、移動体サービス車両運営会社(タクシー会社)それぞれにとってメリットのある装置及びシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る車両顧客マッチングシステムを説明する構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1に係る顧客の端末表示装置及びタクシーの端末表示装置上に表示される地図説明図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の実施例1に係る顧客の端末表示装置上の操作パネルの説明図である。
図3(B)は、本発明の実施例1に係るタクシーの端末表示装置上の操作パネルの説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2に係る車両端末表示装置における顧客マッチング頻度を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例3に係る顧客端末表示装置及び車両端末表示装置上の顧客移動方向の操作を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例4に係る移動店舗と顧客とのマッチングシステムの説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例4に係る移動店舗上の操作パネル例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態につき実施例の図面に基づいて説明する。以下の実施例に記載されているいずれの図面も本発明の説明用に概略的な模式図として描かれており、実際の寸法や形状、構成は特に限定するものではない。また、構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0030】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係るタクシーと顧客との車両顧客マッチングシステム及び端末表示装置を説明する構成図である。実施例1では、移動サービス車両は、空車タクシーである。顧客は、タクシー乗車希望者である。
図1において、タクシー待ちをしている顧客群1の顧客P1、P2、・・・はそれぞれスマートフォンなどの端末表示装置11、12、・・・を保有している。また、タクシー群2のタクシーT1、T2、・・・はそれぞれカーナビゲーションなどの端末表示装置21、22、・・・を備えている。顧客の端末表示装置11、12、・・・は、電話回線、無線LAN(Local Area Network)などのネットワークを介してインターネット回線に接続され、GPS3により顧客の緯度、経度を取得する。端末表示装置11、12、・・・は、現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する機能を有している。また、顧客の端末表示装置11、12,・・・にはタクシー探索専用アプリケーション・ソフトがダウンロードにより利用可能となっている。
【0031】
また、タクシーの端末表示装置(車両端末表示装置)21、22、・・・も同様に無線LANなどのネットワークを介してインターネット回線に接続され、GPS3により各タクシーの緯度、経度を取得する。端末表示装置21、22、・・・は、現在位置をベクトルマップ形式の電子マップ上に表示する機能を有している。ここで、各タクシーは、固有の識別記号を有しており、この識別記号は各タクシーのIPアドレスと結びつけられている。クラウド6内のサーバー又は管理センター4内のサーバーは、ネットワークを介して顧客の端末表示装置11、12、・・・とタクシーの端末表示装置21、22、・・・に接続されている。クラウド6内のサーバー又は管理センター4内のサーバーは、顧客の端末表示装置11、12、・・・からの位置情報や配車希望信号等の情報をタクシーの端末表示装置21、22、・・・に提供し、タクシーの端末表示装置21、22、・・・からの位置情報や配車応答等の情報を顧客の端末表示装置11、12、・・・に提供する。この例では、顧客の端末表示装置11、12、・・・及びタクシーの端末表示装置21、22、・・・は、所定範囲内に存在するタクシーのマーカー及び顧客のマーカーを表示すると共に、タクシーと顧客との少なくとも一方の移動方向マーカーを表示する。
【0032】
タクシー管理センター4では、管理下にあるすべてのタクシー群2のタクシーT1、T2、・・・とネットワークにより常時接続されており、各タクシーの位置情報、乗車情報、空車状況などを含む必要な運行情報を管理すると共に、各顧客とのタクシー探索専用アプリを管理・運営する機能を有している。管理センター4では、どの地域に、いつ頃、何台程度のタクシーを走行させるべきかなどの配車管理、ドライバーの運行状態把握、健康管理、事故対応、顧客よりの配車希望対応などを行っている。これらの運行管理状況は、タクシーとのネットワークを介して管理センター4のサーバー5又はクラウド上のサーバー6に記録、保持される。
【0033】
各タクシーは、GPS3により位置情報が常時把握され、走行ルートは追跡されている。タクシーメータのオン・オフ信号はネットワーク介して管理センター4に連絡され、顧客との遭遇(乗車)場所、乗車時間、乗車運行時間、降車場所、空車走行時間、走行ルートの運行情報データが取得され、管理センター4のサーバー5に記録、保持される。更に、これら運行情報と併せ天候情報、イベント情報、曜日、季節などの情報を入力し、効率的配車・走行管理などを分析することも可能となる。
【0034】
本発明において、クラウド6は、地図情報を格納している。地図情報は、クラウド6からネットワークを介して顧客群1及びタクシー群2へ提供するように構成されている。地図情報上で現在位置や進行方向を示すマーカーなどを示すための描画ソフトは、顧客群1の端末表示装置11、12,・・・及びタクシー群2の端末表示装置21、22、・・・内に備えられている。顧客群1の端末表示装置11、12,・・・及びタクシー群2の端末表示装置21、22、・・・は、クラウド6からの地図情報と端末表示装置11、12,・・・及びタクシー群2の端末表示装置21、22、・・・に格納された描画ソフトとにより電子マップを作成する。ビットマップ形式におけるナビゲーションにおいては、地図の加工を静止画形式で作成し、都度更新する形態であるか、もしくは区画処理により区画毎にデータを更新したりする必要がある。これに対し、本発明においては、ベクトルマップデータ形式を用いている。そのため、各端末表示装置側に描画ソフトを備えることで、地図パーツのそれぞれをかなり自由に加工し、種々のマーカーの作成、編集、色替え、ハイライト、識別機能などを付加することができる。
【0035】
本発明においては、地図情報作成に際し、クラウド又はサーバー側からベクトルマップデータを顧客及びタクシーの端末表示装置側へ渡すことで、描画そのものは端末表示側で行うこととなる。各地図パーツは座標情報を有しており、この座標情報により地図を構成する。これによりサーバー側の負荷は軽減し、端末表示装置側では描画処理の自由度が向上し、即時的な描画が可能となる。更に、各端末装置側でのソフト処理により各端末毎にニーズに応じた独自の地図表示及びカスタマイズが容易にできることとなる。
【0036】
図2は、このような本発明を利用したタクシーと顧客との車両顧客マッチングシステムの適用例を説明する説明図で、タクシー待ちの状態にある顧客及びタクシーの端末表示装置上のマッチングシステム地図表示である。タクシー待ち状態にある顧客(タクシー希望者)は、各自の所有するスマートフォンなどの端末表示装置11、12,・・・にタクシーマッチングソフトを立ち上げると、ネットワークを介してサーバー5又はクラウド6より地図情報を取り込み
図2に示すような地図が表示される。
【0037】
図2においては、道路V1、V2が南北方向(図の縦方向)、道路H1、H2が東西方向(図の横方向)、道路C1が斜め方向へそれぞれ交差している例が示されている。建物、ランドマーク、表示物、道路名、地域場所名などは必要に応じ表示しうるが、ここでは、顧客を中心として所定範囲にあるタクシー待ち状態の顧客マーカーP1~P5と空車状態のタクシーマーカーT1~T6が表示されている。また、操作パネル上の拡大・詳細ボタン31により表示地図を拡大又は詳細表示することにより所定範囲を選択、調整しうる。ここで、各タクシーの識別番号に付随する各種情報、例えば、会社名、車体色、種類(ライドシェア、特殊車両、介護タクシー、小型・大型、車種)、初乗り料金などをポップアップなどの詳細表示手段により個別表示することもできる。
【0038】
図3(A)は、顧客側の端末装置上における操作パネル30の一例を示している。操作パネル30上には、拡大・詳細表示ボタン31、タクシー台数表示スライドバー32,配車希望信号を発信する配車希望ボタン33(配車希望信号発信部)、タクシー呼び出しのためのタクシーボタン34aの他に、移動屋台(DINING)、移動店舗(shop)、スポーツジム(GIM)などの各種移動体のマッチングボタン群34が備えられている。顧客のマッチングシステム地図表示においては、通常、地図の表示範囲を拡大すれば空車タクシーの台数が増加する可能性はあるが、むやみに地図の表示範囲を拡大しても空車タクシーが表示されない状況も考えられる。また、所定範囲内に多くの空車タクシーが密集しているため移動方向などが判別出来ないような場合も生じる。このような場合、空車タクシーを台数別に表示、調整する台数スライドバー32が具備されており、台数スライドバー32をタッチ・スライドすることで顧客に最も近い空車タクシーの存在位置及びその進行方向を地図上に表示する。
【0039】
また、タクシー台数スライドバー32を増加方向又は減少方向にスライドさせて、顧客を中心として空車タクシーの台数に応じて地図の表示範囲を変化させることができる。これは、管理センター4において、顧客の位置及び空車タクシーの位置がGPS3及び関連するGISシステムにより緯度、経度が把握され、顧客位置とそれぞれのタクシーとの位置及び進行方向が判別できる。管理センター4内のサーバー又は各々の端末表示装置は、タクシー乗車希望者の現在位置と各々の空車タクシーの位置及び進行方向に基づき最短走行経路をダイクストラ法などの最短ルート算定法により算出する。このため、顧客に近い空車タクシー順に地図上で表示することができる。
【0040】
移動中の空車タクシーは移動に応じて現在位置や進行方向が常時把握されているため、
図2で示す地図上にはリアルタイムで移動方向の矢印と共に空車タクシーの位置がマーカーにより示される。顧客も移動している場合は、その移動に応じた現在位置が示される。このような地図表示により、顧客は、所定範囲内にある空車タクシーの台数及び移動方向が把握することができる。
【0041】
一方、タクシー側の端末においては、顧客の端末表示とほぼ同様のタクシーマッチングソフトが適用される。タクシー側の表示地図は、顧客側の表示とほぼ同様であり、自分のタクシーを中心として所定範囲内のタクシー待ち顧客と空車タクシーの状況が示されている。タクシー側に表示においても拡大・詳細表示ボタン31の操作により、所定範囲を変更したり、調整したりすることができる。
【0042】
図3(B)は、空車タクシー側の端末表示装置上の操作パネル36を示す。顧客側の表示と相違するのは、顧客の操作パネルの「配車希望」ボタン33の代わりに「配車応答」ボタン38,タクシーの台数スライドバー32は、タクシー待ちの顧客数を示す顧客数スライドバーボタン37となっている。操作パネル36には、その他、音声対応ボタン39a、ストリート選択ボタン39c、本部選択ボタン39d、設定ボタン39eなどタクシー運行の補助及び表示設定を示すボタン群39が備えられている。タクシー側の顧客数スライドバー37をスライドすると所定範囲内のタクシー待ちの顧客数に応じて表示範囲が変更される。通常は、最も近い距離にある顧客を表示するように設定されているが、スライドバー37をスライドさせて顧客数を増加させれば、顧客数に応じて表示範囲が拡大し、どの地域に顧客が集中しているかなどを把握することができる。
【0043】
図2の表示地図において、タクシー待ち状態の顧客P1が道路V1上で、南方向へ向かうタクシーを希望し、
図3(A)におけるタクシーボタン34aをクリックしてタクシーマッチングソフトを立ち上げると、「タクシー待機」状態となり、顧客マーカーP1が点滅状態で示される。所定範囲内のタクシードライバーは、それぞれの端末表示装置上で顧客マーカーP1が待機していることが把握できる。タクシーマーカーT1は、交差点Aで道路H1を東方向へ左折すれば顧客マーカーP2、P3に遭遇し、直進すれば顧客マーカーP1と遭遇する可能性があるが、道路H1上には既に空車タクシーマーカーT2が先行しているため、交差点Aを直進した方が顧客を獲得できる可能性が高いことがわかる。
【0044】
更に、近くの空車タクシーマーカーT3は顧客マーカーP1の待機側と反対側にいるため、タクシーマーカーT1は、交差点Aを直進した方が、顧客マーカーP1と確実にマッチングできる旨の判断ができる。同様に空車タクシーマーカーT2は道路H1をそのまま東方向へ向かえば同方向にいる顧客マーカーP2を確実に確保できる。さらに、空車タクシーマーカーT3の場合は、交差点Aで直進しないで、右折し、道路H1を東方向へ向かった方がタクシー待ち顧客マーカーP3、P4と遭遇する可能性が高いことが分かる。同様に他の空車タクシーマーカーT4、T5、T6も、どの方向を走行すれば顧客獲得可能性が高くなるかを視覚的に判断することが可能となる。
【0045】
また、タクシー待ちの顧客にとっては、顧客の端末上に空車タクシーの移動方向が把握できるため、あとどれくらいで空車タクシーが近づきつつあるのか、又は遭遇できる可能性が低いのか、別の道路で待機したり反対側へ移動した方が獲得可能性が高いのかが判断でき、より早く空車タクシーと顧客とのマッチングを行うことができる。
【0046】
さらに、「タクシー待機」状態にある顧客が、
図3(A)顧客端末操作パネル30上の「配車希望」ボタン33をクリックすると、「タクシー待機」状態が「配車希望」状態となり所定範囲内又は顧客が設定した空車タクシー台数に対し「配車希望」信号が発信される。「配車希望」ボタンは、タクシーボタン34aを長押ししたり、ダブルクリックしたりして同じボタンで兼用することも可能である。「配車希望」信号が顧客により発信されると、空車タクシーの端末表示装置上では、「タクシー待機」状態での点滅が「配車希望」点滅状態へ変化する。この変化は、視覚的に分かり易いようにハイライトされ、点滅が早くなったり、配車希望を知らせるビープ音や「配車希望」などの音声を付加したり、色彩的に黄色から赤色に変化するように色変わりさせたりして、顧客より配車呼び出しが発信されている旨をドライバーに知らせる。
【0047】
「配車希望」信号を受信した空車タクシーのドライバーが配車要求に応じる場合、ドライバーは、
図3(B)タクシー側操作パネル36上の「配車応答」ボタン38をクリックするか、音声認識などにより「配車了解」の返信を行う。操作パネル36上で音声入力として音声ボタン39aをクリックして予め設定しておけば、「配車応答」などのドライバー側からの応答は、音声認識により返答することができる。
【0048】
図3(A)で示す顧客側の端末操作パネル30上には「配車希望」ボタンが点滅又は色変わりして配車希望が受理されたことが示されると共に、「配車応答」を行ったタクシーが
図2マッチング地図上で点滅又は色変わりして、顧客は、どの空車タクシーから「配車応答」があったかを識別でき、当該タクシーがどの方向から、どの程度の時間で到着するかの走行状況を表示装置上で確認することができる。
【0049】
この「配車希望」信号を受信したタクシードライバーは必ずしもその顧客の要求に応じる必要もなく、タクシー側の「配車応答」ボタン38をクリック又は「配車了解」の音声返答をしなければ配車に応じないこととなる。また、この「配車希望」ボタン33による顧客からの要求は、なるべく顧客から近い距離にある空車タクシーから優先順位を付けて「配車応答」させることも、前述したように顧客と空車タクシーとの位置関係が把握されているため可能である。その場合、タクシー側の端末表示装置21、22、・・・又は管理センター4のサーバーは、タクシー乗車希望者の現在位置と各々の空車タクシーの位置及び進行方向に基づき最短走行経路をダイクストラ法などの最短ルート算定法により算出する。タクシー側の端末表示装置21、22、・・・は、乗車希望者マーカーを識別表示し配車希望である旨表示すると共に、サーバー又はタクシー側の端末表示装置21、22、・・・で算出された最短走行経路に基づきタクシー乗車希望者への到達可能性時間が短い順に「配車応答」の優先権を与え、空車タクシーを配車応答させる。
【0050】
この「配車希望」ボタンによる顧客の識別表示は、いずれかのタクシーが「配車応答」を行うまで、顧客が点滅又は色変わりによりハイライトされ、「配車希望」が継続している旨を通知するが、状況によっては「配車応答」が行われず一定時間経過した場合はリセットされる。顧客がなお「配車希望」を行う場合、「配車希望」の所定範囲を拡大したり、対象台数を増加させたりして設定条件を変更して再度配車を要請することとなる。
【0051】
従来のタクシー配車(呼び出し)では、通常、顧客がタクシー会社へ連絡し、配車手配を要請するため、タクシー会社が顧客の近くを走行している空車タクシー又はタクシー会社の拠点で待機している車両に配車要請を伝える。顧客の場所へ向かった時点から走行課金されることとなるが、本発明のようなシステムにおいては、顧客を中心とした所定範囲内で走行中の(流しの)タクシーに「配車希望」を伝えるだけである。「配車応答」の義務がないため、顧客を確保した時点から課金されることとなる。顧客にとってはより早くタクシーを確保することができるだけでなく、タクシー料金を節約できる可能性がある。
【0052】
顧客とタクシーとがマッチングして、タクシーが顧客を獲得した時点で、課金走行状態となり、顧客の端末表示装置11,12…及びタクシーの端末表示装置21,22…は、タクシーのマーカー、顧客のマーカー及びタクシーの移動方向マーカーを消滅させる。課金走行状態となった時点でタクシーの識別信号と共に乗車場所、乗車時刻は管理センター4で記録され、その後の走行経路を含め記録される。目的地に到着し、課金走行状態が解除されるとタクシーは空車状態となり端末表示装置上で空車タクシーとして表示される。
【0053】
タクシー会社の管理センター4では、前述の通り管理下にあるすべてのタクシーの運行状況を管理し、配車管理を行っているが、同時に本発明によるシステムを利用して各タクシーの運行状況及び顧客獲得状況を分析し、タクシー配車や効率的顧客とのマッチングを行うことができる。つまり、管理下にあるすべてタクシーの運行管理状況は、ネットワークを介して管理センター4のサーバー5又はクラウド6上のサーバーに記録、保持されている。そのデータとして、タクシー側からは、(1)顧客が乗車し課金状態になった時点での乗車信号、(2)課金状態が解除された時点での降車信号、(3)GPS情報及びGISシステムから入手したその時々のタクシー位置情報信号などが管理センター4へ発信され、これらタクシー情報と併せて季節、曜日、天気、イベント情報、事故情報を含むタクシー管理に必要な条件を管理センター4でインプットし、サーバー5又はクラウド6に記録、保管しデータの蓄積を行う。蓄積されたデータは、常時どのような条件下で、何台ぐらいのタクシーをどの地域に配車すれば最も効率的に顧客とのマッチングが図れるかを分析する。更に、走行経路情報の蓄積によりどの走行経路が効率的走行ルートであるかも分析することができる。
【0054】
<実施例2>
前述の通り、タクシーの運行状態及び顧客マッチング状況は、常時、管理センター4において管理されている。そのため、顧客とのマッチング状況は、乗車時刻、場所、曜日、天候などの諸条件を考慮して最適な効率化を図ることができるよう空車タクシー側へ情報提供することができる。タクシー群2のそれぞれの空車タクシーT1、T2、・・・と管理センター4とはネットワークが確立しており、管理センター4で分析した走行時点、場所における条件に合致する地域の顧客マッチング頻度情報が走行中の空車タクシー側へ常時送信されている。
【0055】
タクシー側の端末表示装置21、22、・・・では、ベクターデータ形式でクラウド6よりネットワークを介して地図情報を入手し、端末表示装置内に備えられた描画ソフトによりマッチング頻度に応じて地図表示用マーカーを編集し、表示する。本発明においては、描画ソフトが端末表示装置に備えられているため、管理センター4より受領したマッチング頻度レベル情報に応じて頻度を識別するマーカーを編集、加工することができる。クラウド6より入手した地図パーツを加工して色替えしたり、拡大・縮小したり、ハイライトさせたりすることも可能であり、また別途地図情報パーツにないような独自のマーカーなどを作成、編集して地図上に表示することも可能となる。
【0056】
図4は、タクシー側の表示装置上に表示される顧客マッチング頻度を示す説明図である。タクシーの端末表示装置上では道路又は道路に沿った形で顧客とのマッチング可能性を示す識別表示がされている。
図4の道路H1の交差点Aから交差点Bとの間では、東方向に向かって矢印41が実線及び点線にて示されている。また、西方向に向かっては矢印42が実線、一点鎖線及び点線により示されている。ここで、実線(A)は、顧客とのマッチング頻度が最も高い高頻度を示しており、マッチング頻度のレベルに応じて一点鎖線(B)は中頻度、点線(C)は低頻度としてそれぞれの頻度を示している。ドライバーは、マッチング頻度を視覚的に認識し、マッチング頻度が高頻度の地域へ向かうことで顧客をより早く、確実に獲得する可能性が高くなる。
【0057】
また、交差点Cの付近では、道路V1及び道路C1上でのマッチング頻度が道路上にマッチング頻度43が頻度に応じて(A)高頻度、(B)中頻度、(C)低頻度として色変わりなどで表示されているが、交通渋滞や事故など何らかの異常事態が発生していることを点線丸印44により示している。このような場合、マッチング頻度が高くても交通渋滞などにより回避した方が効率的であると判断する情報を提供できる。
【0058】
このマッチング頻度の識別表示は、頻度に応じて黄色(低頻度)、橙色(中頻度)、赤色(高頻度)という様に道路上で色分けしたり、ハイライトしたり、矢印、図形、アイコン表示など種々の方法で識別させることができる。できるだけドライバーには負担をかけずに視覚的にマッチング頻度を認識できる識別表示が望ましい。このように、タクシーの端末表示装置は、空車タクシーが所定道路通過を基準として、所定道路通過後の時間経過に従い所定道路を変色又は所定道路を識別表示させて空車タクシーの通過頻度及び時間経過を表示することができる。
【0059】
<実施例3>
実施例1において、タクシー待ち状態の顧客はどちらの方向へ移動希望なのかタクシー側にとっては不明である。通常、顧客はタクシーを確保し、乗車した後にどちらの方向へ向かうかを指示するが、タクシードライバーにとっては、終業間近や帰社時にはドライバーの移動希望方向と反対方向を顧客が希望する場合があり、顧客の要望を拒否することは困難である。従って、予め顧客の移動方向を確認できれば、タクシードライバーにとってドライバーの希望する方向の顧客を選択することができ、好都合である。
【0060】
図5は、顧客の移動希望方向を端末上で指示しうるための実施例3の説明図である。
図5において、顧客の移動方向アイコン51は、東西南北(NEWS)の移動方向を示すボタンが備えられている。移動方向がわかっている顧客は、東、西、南、北それぞれの移動方向ボタンをクリックすることで希望する方向とタクシー待機状態であることが所定範囲内の空車タクシー群へ通知される。これにより、顧客及び所定範囲内の空車タクシーの端末表示装置には、待ち状態の顧客が移動希望方向の矢印と共にタクシー待機状態のマーカーが表示される。
【0061】
図5では、顧客P1が北方向への移動を希望し道路H1上で「配車希望」状態であることがタクシー側に表示される。もし、空車タクシーT1が西方向へ移動希望している場合、タクシーT1は顧客P1を無視するか、「配車希望」があっても応答せずに顧客P1とマッチングすることを選択しないで、他の西方向移動顧客(例えば顧客P2又はP3)とマッチングすることで、ドライバーの希望する方向へ向かう顧客とマッチングすることが可能となる。移動方向が不明な場合、顧客は必ずしも移動方向をクリックする必要はなく、移動方向指示ボタン50の中央にある「待機状態」ボタン51をクリックする。移動方向指示なしに、待機状ボタン51をタッチした場合、地図上では顧客のマーカーには移動方向の矢印は付与されず、
図2と同様の「待機状態」マーカーのみが表示される。
【0062】
この顧客が移動したい方向を示す移動方向指示ボタン50を設けることで所定地域内でのライドシェア(相乗りタクシー)への応用が可能となる。つまり、既に顧客を獲得して移動中のライドシェアタクシーが同一方向の新たな顧客を表示上で見つけた場合、その新たな顧客をライドシェア(相乗り)させることが容易に可能となる。このようなライドシェアタクシーの場合は、顧客とマッチングした時点で、端末表示上から消滅することはなく、ライドシェアタクシーとしての顧客人数表示となり、所定乗車人数(満車)となった時点で端末表示上から消滅する。
【0063】
<実施例4>
上述の発明は、主としてタクシーにおける効率的マッチングを目的として説明したが、移動ショップや移動サービス車両に広く適用することができる。移動車両による店舗やサービスは、店舗が移動体として移動し、顧客の希望する時に、好きな場所で物品の購入やサービスを受けられるシステムである。店舗場所が不要である上に、車両の移動中にサービスや希望物品調達の準備が出来、顧客とマッチングすれば直ちに販売やサービスが可能となるなど効率的な利便性を有している。また、高齢者や近くに店舗などが存在しない住民などにとっては極めて利便性の高いシステムとなってきている。各種店舗、コンビニエントストア、食事・アルコール類などを提供する移動式屋台、理髪・美容室、図書館からスポーツジム、医療診断サービス、移動式診療所にまで及んでいる。
【0064】
基本的には、前述のタクシーマッチングシステムと同様の技術的思想であり、タクシーが移動体店舗となる。
図2で示すタクシーマッチング用ソフトの顧客用端末表示装置上には、
図3(A)に示すタクシーマッチングボタン34aの他に各種移動店舗又は移動サービスの移動車両用マッチングボタン群34として移動式屋台(DINING)34b,コンビニショップ(SHOPS)34c、移動式スポーツジム(GIM.)34d、その他(OTHERS)34eの例示が備えられている。希望する顧客は、これらのマッチングボタンをクリックして各種移動店舗などの専用マッチングソフトを立ち上げる。説明の都合上、
図2の顧客用端末上にそれぞれの移動店舗のマッチングボタンを設けているが、スマートフォンなどのそれぞれの店舗アプリ・ソフトから立ち上げても良い。
【0065】
図6は、移動店舗に適用した場合の顧客側及び移動店舗側の端末表示の一例を示す。顧客が移動式屋台を希望し、
図2で表示する「DINING」(移動式屋台)ボタン34bをクリックすると、
図6の地図表示に示されるように所定範囲内にある移動式屋台D1、D2、・・・が進行方向の矢印を付して表示されると共に、その時点で移動式屋台を希望している顧客R1、R2、・・・の位置が表示される。同時に顧客の端末上にはリクエストメニュー60が料理名、価格、特徴などがポップアップし、希望する料理や飲み物などをクリック選択する。リクエストメニュー60で選択された料理や飲み物は、リクエスト表示欄61に表示される。
図6においては、顧客R1が道路V1上で、顧客R2、R3が自宅から料理などのリクエストを発信し、まだリクエスト応答がされておらず、顧客のそれぞれがハイライトされている状況を示している。
【0066】
移動店舗側D1、D2、・・・の端末表示装置上にも顧客側と同様、
図6に示すような地図表示が示される。移動店舗側の操作パネルの一例が
図7に示されている。移動店舗側の操作パネル70には、それぞれの顧客に対しリクエストを確認し、リクエストに対する応諾又は拒否を返答する「配車応答」ボタン71が設けられている。それぞれの顧客に対して「配車応答」を行うと顧客側の操作パネルの「配車希望」ボタン62が「配車応答」に変化する。リクエスト応答受諾された旨表示されると共に、受注(又は配車)確認欄63上で受注確認表示アイコン64がハイライトし、待機客数が何人で、何番目の顧客であるかも表示される。また、おおよその待機時間も顧客までのマッチング時間と一顧客当たりの平均的所用時間を目安として示す事もできる。顧客側としては、待機時間によっては、「配車希望」リクエストから所定時間(数分)以内にキャンセル可能なように設定することも可能である。
【0067】
「配車応答」すると移動体側の操作パネル70には顧客のリクエストに対し顧客別、注文別にその内容個数、注文内容の詳細を示すリクエストリスト73が表示され、移動体側では顧客の場所へ到着するまでに、物品やサービスの提供準備、在庫確認、伝票作成などを行うことができ、顧客とマッチングした時点でスムースな物品提供やサービスが可能となる。
【0068】
また、操作パネル70に設けられた客数スライドバー72を動かすと移動体に最も近い移動距離にある顧客から順番に1人、2人、3人・・・と表示され、移動店舗としてはどのようなルートで走行すれば効率的かを判断することができる。また、タクシーマッチングシステムと同様、このような移動店舗の走行ルート、顧客とのマッチング場所、時間、サービス又は購入品目、イベント情報、天候などの詳細データを管理・記録し、蓄積することで、配車地域、配車台数、売上予測、商品ラインナップ、サービス内容の見直しなどの分析に役立てることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上述の通り、本発明は、タクシー及び移動店舗と顧客とのマッチング装置及びシステムにつき説明した。本発明はこれに限らず、本発明の複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の移動体車両と顧客との効率的マッチングを確保することができる。顧客にとっては、空車タクシーや移動店舗の移動方向が認識でき、待機時間の短縮や効率的遭遇が可能となる。ドライバーにとっては、より顧客を獲得し易いエリアを選定することが可能となり空車時間を短縮でき、色彩やハイライトなどの視覚的表示でマッチング頻度が表示される。このためより安全で、効率的走行が可能となる。また、会社・管理側にとっては、運行管理、走行状態把握が可能となり、配車管理システムの効率化を図ることが可能となる。つまり、顧客、ドライバー、会社それぞれの関係者にとって極めて利便性の高い装置やシステムを提供することが可能となり、産業上多大な有用性と利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0070】
1 顧客群
2 タクシー群
3 GPS
4 管理センター
5 管理センター内のサーバー
6 クラウド
11、12、・・・顧客の端末表示装置(スマートフォン)
21、22、・・・タクシーの端末表示装置(カーナビ装置)
30 顧客側端末操作パネル
31 地図拡大、詳細ボタン
32 台数表示スライドバー
33 配車希望ボタン
34a タクシーソフト起動ボタン
34b、34c、34d,34e 各種移動体車両マッチングボタン
36 タクシー側端末操作パネル
37 客数表示スライドバー
38 配車応答ボタン
39 タクシー運行補助ボタン群
41、42,43 マッチング頻度識別表示
50 顧客移動方向表示ボタン
63 受注又は配車確認欄
64 受注確認表示アイコン