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特許7621598推奨データ生成装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】推奨データ生成装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20250120BHJP
   G16Z 99/00 20190101ALI20250120BHJP
【FI】
G06F30/27
G16Z99/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023506873
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005623
(87)【国際公開番号】W WO2022196206
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021044485
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの高速実装と評価」委託研究及び「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの研究開発」委託研究(研究推進法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鍬守 直樹
(72)【発明者】
【氏名】撫佐 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】風間 悠加
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 広明
(72)【発明者】
【氏名】菊川 豪太
(72)【発明者】
【氏名】岡部 朋永
(72)【発明者】
【氏名】小松 一彦
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-293315(JP,A)
【文献】特開2016-099737(JP,A)
【文献】特開2007-087098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G16Z 99/00
G06Q 10/04
G06Q 50/04
G16B 5/00 -99/00
G16C 10/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当手段と、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出手段と、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成手段と、を有し、
前記推奨データ生成手段は、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、各前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成手段は、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、推奨データ生成装置。
【請求項2】
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当手段と、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出手段と、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成手段と、を有し、
前記推奨データ生成手段は、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、各前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成手段は、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、推奨データ生成装置。
【請求項3】
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当手段と、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出手段と、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成手段と、を有し、
前記推奨データ生成手段は、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、推奨データ生成装置。
【請求項4】
入力された材料諸元で特定される材料を用いて生成されうる前記成果物について、その物性の予測データを生成するシミュレータに、前記推奨データで表される材料諸元を入力としたシミュレーションを実行させるシミュレータ制御手段と、
前記シミュレータによって生成された前記予測データを取得し、その予測データと前記推奨データを出力するシミュレーション結果出力手段と、を有する請求項1からいずれか一項に記載の推奨データ生成装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を有し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、制御方法。
【請求項6】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を有し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、制御方法。
【請求項7】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を有し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を実行させ
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を実行させ、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成し、
前記推奨データ生成ステップにおいて、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を実行させ、
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品開発に関連する情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品開発において、所望の物性を持つ成果物を生成可能な材料の探索が行われることがある。そのため、このような材料の探索を支援するシステムが開発されている。例えば特許文献1は、自己組織化マップを利用してタイヤの設計を支援するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-148988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、タイヤの複数の設計変数のうち、どの変数が重要な因子であるのかを特定するために、自己組織化マップが利用されている。そのため、それ以外の目的で自己組織化マップを利用することは想定されていない。本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の推奨データ生成装置は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得部と、前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成部と、前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当部と、前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出部と、前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成部と、を有する。
【0006】
本開示の制御方法は、コンピュータによって実行される。当該制御方法は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を有する。
【0007】
本開示の非一時的なコンピュータ可読媒体は、本開示の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の推奨データ生成装置の動作の概要を例示する図である。
図2】実施形態1の推奨データ生成装置の機能構成を例示するブロック図である。
図3】推奨データ生成装置を実現するコンピュータのハードウエア構成を例示するブロック図である。
図4】実施形態1の推奨データ生成装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図5】材料諸元情報をテーブル形式で例示する図である。
図6】物性情報をテーブル形式で例示する図である。
図7】各ノードに諸元ベクトルが割り当てられている自己組織化マップの構成をテーブル形式で例示する図である。
図8】実施形態1の推奨データ生成装置の動作の概要を例示する図である。
図9】実施形態1の推奨データ生成装置の機能構成を例示するブロック図である。
図10】実施形態1の推奨データ生成装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。また、特に説明しない限り、所定値や閾値などといった予め定められている情報は、その情報を利用する装置からアクセス可能な記憶装置などに予め格納されている。
【0011】
[実施形態1]
<概要>
図1は、実施形態1の推奨データ生成装置2000の動作の概要を例示する図である。ここで、図1は、推奨データ生成装置2000の概要の理解を容易にするための図であり、推奨データ生成装置2000の動作は、図1に示したものに限定されない。
【0012】
推奨データ生成装置2000は、製品開発の特定の工程(以下、対象工程)について、所望の物性を持つ成果物を生成可能な材料の探索を支援する。なお、対象工程は、材料から成果物が生成される任意の工程とすることができる。所望の物性を持つ成果物を生成可能な材料の探索を行う手段として、材料の諸元を様々に変えながら、成果物の生成のシミュレーションを行ったり、成果物を実験的に生成してみたりする方法がある。推奨データ生成装置2000は、このようなシミュレーションや実験的生成の対象として推奨される材料諸元のデータ(以下、推奨データ)を生成する。推奨データは、所望の物性を持つ成果物を生成できる蓋然性が高い材料諸元のデータである。
【0013】
推奨データを生成するために、例えば推奨データ生成装置2000は、以下に示す動作を行う。推奨データ生成装置2000は、複数パターンの材料60それぞれについて(言い換えれば、複数パターンの材料諸元それぞれで特定される材料60について)、その材料60の材料諸元を表す材料諸元情報10と、その材料60を利用して対象工程で生成されうる成果物70の物性を示す物性情報20を取得する。後述するように、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、既に行われたシミュレーションや成果物70の実験的な生成により、生成されたものである。
【0014】
材料60の1つのパターンは、材料諸元によって特定される。言い換えれば、材料諸元が互いに異なる材料60は、互いに異なるパターンの材料60として扱われる。一方、材料諸元が互いに同じである材料60は、互いに同じパターンの材料60として扱われる。
【0015】
材料諸元は、例えば、材料の種類、材料を構成する物質の種類、各物質の配合比率、及び材料を作成するために行われる加工の種類などで表される。材料の種類としては、例えば、炭素繊維強化プラスチックやステンレス鋼などがある。例えば材料60が、炭素繊維強化プラスチックであるとする。この場合、材料60の材料諸元は、材料60を構成する1つ又は複数の炭素繊維それぞれの種類(ポリアクリルニトリル繊維やセルロース炭化繊維など)、材料60を構成する1つ又は複数の樹脂それぞれの種類(エポキシやポリエーテルテフタレートなど)、及びそれらの物質の配合比率を含む。また、材料諸元には、繊維方向性重合方式の種類、圧着方式の種類、及び樹脂組成などがさらに含まれてもよい。
【0016】
物性情報20は、成果物70について、複数種類の物性それぞれの物性量を示す。物性の種類は、例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、又は靱性などである。成果物70は、対象工程の生成プロセスで材料60を処理することによって生成されると予測されるもの、又は、実際に生成されたものである。
【0017】
推奨データ生成装置2000は、物性情報20を用いて、成果物70の物性の分布を表す自己組織化マップ30を生成する。自己組織化マップ30は、m次元のマップ空間上に配置された複数のノードを有する(m>0)。
【0018】
自己組織化マップ30の各ノードには、複数種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す多次元データ(以下、物性ベクトル)が割り当てられる。例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、及び靱性という4種類の物性を利用するとする。この場合、物性ベクトルは、これら4種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す4次元データである。以下、物性ベクトルの次元数をnとおく。なお、n>mである。すなわち、自己組織化マップ30において、物性ベクトルの空間が高次元空間であり、マップ空間が低次元空間である。
【0019】
物性情報20は、n種類以上の種類の物性についての物性量を示す。推奨データ生成装置2000は、物性情報20によって示されているn種類の物性についての物性量を利用して自己組織化マップ30の学習を行うことにより、各ノードに割り当てる物性ベクトルを決定することで、自己組織化マップ30を生成する。
【0020】
推奨データ生成装置2000は、材料諸元情報10を利用して、自己組織化マップ30の各ノードに対して材料諸元を割り当てる。より具体的には、推奨データ生成装置2000は、各ノードに対し、材料諸元の複数種類のパラメータ(以下、諸元パラメータ)それぞれについての値を表す多次元データ(以下、諸元ベクトル)を割り当てる。これにより、自己組織化マップ30の各ノードにおいて、諸元ベクトルと物性ベクトルとが対応づけられる。すなわち、各ノードにおいて、材料諸元と成果物70の物性とが対応づけられる。
【0021】
さらに推奨データ生成装置2000は、ユーザが所望する成果物70の物性を表すターゲット情報80を取得する。推奨データ生成装置2000は、自己組織化マップ30の中から、ターゲット情報80によって示されている所望の物性に該当する物性ベクトルを持つノードを検出する。以下、このノードをターゲットノードと呼ぶ。
【0022】
推奨データ生成装置2000は、ターゲットノードを利用して、推奨データを生成する。例えば推奨データ生成装置2000は、ターゲットノードや、マップ空間においてターゲットノードの周辺に位置するノードについて、そのノードに割り当てられている諸元ベクトルによって表される材料諸元を示す推奨データを生成する。
【0023】
<作用効果の一例>
推奨データ生成装置2000は、物性情報20を利用して、物性を表す物性ベクトルが各ノードに割り当てられた自己組織化マップ30を生成する。また、推奨データ生成装置2000は、材料諸元情報10を利用して、自己組織化マップ30の各ノードに対して、材料諸元を表す諸元ベクトルをさらに割り当てる。これにより、自己組織化マップ30において、材料諸元と物性とが対応付けられる。そして、推奨データ生成装置2000は、この対応付けを用いて、所望の物性を持つ成果物70を生成できる蓋然性が高い材料60の材料諸元を表す推奨データ90を生成する。具体的には、推奨データ生成装置2000は、ターゲット情報80に示されている所望の物性に該当する物性ベクトルを持つターゲットノードを検出し、ターゲットノードやその周辺に位置するノードに対応づけられている諸元ベクトルを用いて、推奨データ90を生成する。
【0024】
ここで、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、既に行われた成果物70の生成のシミュレーションや実験的生成の結果に基づいて生成されたものである。そのため、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、これまでに行われたシミュレーションなどによって得られた、材料諸元と物性の対応関係についての知見であると言える。推奨データ生成装置2000によれば、このような知見を利用して、所望の物性を持つ成果物70を生成することができる材料60の探索を、効率的に(短い時間や少ない計算コストで)行うことができるようになる。
【0025】
以下、本実施形態の推奨データ生成装置2000について、より詳細に説明する。
【0026】
<機能構成の例>
図2は、実施形態1の推奨データ生成装置2000の機能構成を例示するブロック図である。推奨データ生成装置2000は、取得部2020、自己組織化マップ生成部2040、諸元割当部2060、ターゲットノード検出部2080、及び推奨データ生成部2100を有する。取得部2020は、複数パターンの材料60それぞれについて、材料諸元情報10及び物性情報20を取得する。自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する。諸元割当部2060は、材料諸元情報10を用いて、自己組織化マップ30の各ノードに対して諸元ベクトルを割り当てる。ターゲットノード検出部2080は、ターゲット情報80を取得し、ターゲット情報80によって示されている所望の物性に該当する物性ベクトルが割り当てられているノードを、ターゲットノードとして検出する。推奨データ生成部2100は、ターゲットノードを利用して推奨データ90を生成する。
【0027】
<ハードウエア構成の例>
推奨データ生成装置2000の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、推奨データ生成装置2000の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0028】
図3は、推奨データ生成装置2000を実現するコンピュータ500のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ500は、任意のコンピュータである。例えばコンピュータ500は、サーバマシンや PC(Personal Computer)などといった、据え置き型のコンピュータである。その他にも例えば、コンピュータ500は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータである。コンピュータ500は、推奨データ生成装置2000を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。
【0029】
例えば、コンピュータ500に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ500で、推奨データ生成装置2000の各機能が実現される。上記アプリケーションは、推奨データ生成装置2000の各機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。なお、上記プログラムの取得方法は任意である。例えば、当該プログラムが格納されている記憶媒体(DVD ディスクや USB メモリなど)から、当該プログラムを取得することができる。その他にも例えば、当該プログラムが格納されている記憶装置を管理しているサーバ装置から、当該プログラムをダウンロードすることにより、当該プログラムを取得することができる。
【0030】
コンピュータ500は、バス502、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512を有する。バス502は、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ504などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0031】
プロセッサ504は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ506は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス508は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0032】
入出力インタフェース510は、コンピュータ500と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース510には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0033】
ネットワークインタフェース512は、コンピュータ500をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0034】
ストレージデバイス508は、推奨データ生成装置2000の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ504は、このプログラムをメモリ506に読み出して実行することで、推奨データ生成装置2000の各機能構成部を実現する。
【0035】
推奨データ生成装置2000は、1つのコンピュータ500で実現されてもよいし、複数のコンピュータ500で実現されてもよい。後者の場合において、各コンピュータ500の構成は同一である必要はなく、それぞれ異なるものとすることができる。
【0036】
<処理の流れ>
図4は、実施形態1の推奨データ生成装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。取得部2020は、複数パターンの材料60それぞれについて、材料諸元情報10及び物性情報20を取得する(S102)。自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する(S104)。諸元割当部2060は、材料諸元情報10を用いて、自己組織化マップ30の各ノードに対して諸元ベクトルを割り当てる(S106)。ターゲットノード検出部2080は、ターゲット情報80を取得する(S108)。ターゲットノード検出部2080は、ターゲット情報80を用いてターゲットノードを検出する(S110)。推奨データ生成部2100は、ターゲットノードを利用して推奨データ90を生成する(S112)。
【0037】
<材料諸元情報10及び物性情報20の取得:S102>
取得部2020は、対象工程において利用されうる複数パターンの材料60それぞれについて、その材料60の材料諸元を表す材料諸元情報10と、その材料60を用いて生成されうる成果物70についての物性情報20を取得する(S102)。図5は、材料諸元情報10をテーブル形式で例示する図である。図5のテーブル100は、材料識別情報102及び材料諸元104という列を有する。材料識別情報102は、材料60に割り当てられた識別情報を示す。材料諸元104は、材料60の諸元を示す。
【0038】
図5において、材料諸元情報10は、テーブル100の1つのレコードで表されている。すなわち、材料諸元情報10は、材料60の識別情報と、その識別情報を持つ材料60の材料諸元とを対応づけている。
【0039】
図6は、物性情報20をテーブル形式で例示する図である。図6のテーブル200は、成果物識別情報202及び物性204という列を有する。成果物識別情報202は、成果物70の識別情報を示す。物性204は、成果物70の物性を示す。テーブル200において、成果物70の物性は、「物性の種類を表すラベル:その物性の物性量」という対応付けを物性ごとに示すことによって表されている。
【0040】
図6において、物性情報20は、テーブル200の1つのレコードで表されている。すなわち、物性情報20は、成果物70の識別情報と、その識別情報を持つ成果物70の物性とを対応づけている。
【0041】
取得部2020は、材料諸元情報10と物性情報20のペアを複数取得する。取得部2020が材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得する方法は様々である。例えば材料諸元情報10と物性情報20のペアは予め、推奨データ生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に格納されている。取得部2020は、この記憶装置にアクセスすることにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得する。その他にも例えば、取得部2020は、材料諸元情報10と物性情報20のペアを入力するユーザ入力を受け付けることにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。その他にも例えば、取得部2020は、他の装置から送信される材料諸元情報10と物性情報20のペアを受信することにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。
【0042】
ここで、材料諸元情報10と物性情報20のペアを生成する方法は様々である。例えば、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成のシミュレーションを行うことで生成される。具体的には、特定の材料諸元を入力として与えてシミュレーションを実行することにより、成果物70について各物性の物性量の予測値を示す物性情報20が生成される。そして、生成された物性情報20と、入力として与えた材料諸元を示す材料諸元情報10とのペアが得られる。ここで、材料諸元を入力として取得し、その材料諸元で特定される材料について、その材料を用いて特定の工程で生成される成果物の物性の予測データを出力するシミュレーションを実現する技術には、既存の技術を利用することができる。
【0043】
その他にも例えば、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成を実際に行うことで生成されてもよい。具体的には、特定の材料諸元で表される材料60を対象工程で利用することで、成果物70が実験的に生成される。さらに、生成された成果物70について、各物性の物性量の測定を行うことにより、物性情報20が生成される。その結果、生成された物性情報20と、利用した材料60を表す材料諸元情報10のペアが得られる。
【0044】
なお、取得部2020によって取得される物性情報20の中には、データの表現方法が互いに異なるものが含まれうる。例えば、本質的に等しい物性に対し、互いに異なるラベルが利用されていることが考えられる。また、同一の物性の物性量が、互いに異なる単位で表されていることが考えられる。このような場合、取得部2020は、ラベルの統一や単位換算などを行うことで、データの表現方法を統一することが好適である。このように物性情報20同士でデータの表現方法が互いに異なる状況は、例えば、シミュレーションを利用して生成された物性情報20と、実験的に成果物70を生成することで生成された物性情報20の双方を取得する場合に起こりうると考えられる。なお、このようなデータの表現方法の統一は、材料諸元情報10についても同様に行われることが好ましい。
【0045】
<自己組織化マップ30の生成:S104>
自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する(S104)。自己組織化マップ30は、m次元のマップ空間上に配置された複数のノードを有する。マップ空間の次元数は、予め定められていてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0046】
自己組織化マップ30の各ノードには、n次元の物性ベクトルが割り当てられる。各ノードに対する物性ベクトルの割り当ては、自己組織化マップ30の学習によって行われる。自己組織化マップ30の学習は、学習に利用するn次元の訓練データを自己組織化マップ30に入力することで行うことができる。ここで、訓練データを用いて自己組織化マップの学習を行う具体的な方法には、既存の方法を利用することができる。
【0047】
例えば自己組織化マップ生成部2040は、自己組織化マップ30を任意の方法で初期化する。初期化の方法としては、例えば、各ノードの物性ベクトルをランダムな値に初期化するといった方法を採用できる。自己組織化マップ生成部2040は、取得した複数の各物性情報20それぞれから、n種類の物性それぞれの物性量を抽出することにより、複数のn次元の物性ベクトルを生成する。自己組織化マップ生成部2040は、これら複数の物性ベクトルそれぞれを訓練データとして扱って自己組織化マップ30の学習を行うことで、自己組織化マップ30を生成する。その結果、自己組織化マップ30の各ノードの物性ベクトルは、n種類の物性の物性量それぞれに関する値を示すn次元データとなる。
【0048】
物性情報20から得られる物性ベクトルは、物性情報20によって示されるn種類の物性それぞれの物性量をそのまま示してもよいし、各物性量を所定の方法(例えば、正規化や標準化など)で変換することで得られる値を示してもよい。
【0049】
ここで、物性情報20によって示される物性の数は、nより多くてもよい。この場合、物性情報20によって示されるデータの一部が、自己組織化マップ30の生成に利用される。ここで、物性情報20が示す物性のうち、どの種類の物性を利用して自己組織化マップ30を生成するのかについては、予め定められてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0050】
<諸元ベクトルの割り当て:S106>
諸元割当部2060は、材料諸元情報10を利用して、自己組織化マップ30の各ノードに諸元ベクトルを割り当てる(S106)。ここで、材料諸元情報10から得られる諸元ベクトルは、材料諸元情報10によって示される全ての諸元パラメータについての値を示してもよいし、その中の一部の諸元パラメータについての値を示してもよい。すなわち、諸元ベクトルの次元数をkとおくと、kの値は、材料諸元情報10が示す諸元パラメータの数と同じであってもよいし、材料諸元情報10が示す諸元パラメータの数より小さくてもよい。
【0051】
例えば材料諸元情報10が、連続値をとるパラメータ(例えば、物質の配合比率)と、連続値をとらないパラメータ(例えば、加工の種類など)の双方を示すとする。この場合、諸元ベクトルは、連続値をとるパラメータによって生成される。
【0052】
なお、材料諸元情報10が示すパラメータのうち、どのパラメータを利用して諸元ベクトルを生成するのかについては、予め定められてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。また、諸元ベクトルは、材料諸元情報10によって示されているパラメータの値をそのまま示してもよいし、各パラメータの値を所定の方法で変換する(例えば、正規化や標準化を行う)ことで得られる値を示してもよい。
【0053】
各ノードに対する諸元ベクトルの割り当てを決定するため、例えば諸元割当部2060は、各材料諸元情報10をノードに割り当てる。ノードに対する材料諸元情報10の割り当てには、材料諸元情報10に対応する物性情報20が利用される。すなわち、諸元割当部2060は、材料諸元情報10に対応する物性情報20から得られる物性ベクトルについて、その物性ベクトルと最も類似する物性ベクトルを持つノードを特定する。諸元割当部2060は、その材料諸元情報10を特定したノードに割り当てる。諸元割当部2060は、材料諸元情報10が割り当てられたノードに対し、その材料諸元情報10から得られる諸元ベクトルを割り当てる。
【0054】
ここで、上記処理の結果、材料諸元情報10が割り当てられないノードも存在しうる。そこで例えば、諸元割当部2060は、材料諸元情報10が割り当てられていないノードに割り当てる諸元ベクトルを、推定によって求める。すなわち、諸元割当部2060は、材料諸元情報10が割り当てられた各ノードの諸元ベクトル、及びマップ空間上におけるそれらのノードの配置に基づいて、諸元ベクトルの分布を推定する。そして、諸元割当部2060は、材料諸元情報10が割り当てられなかったノードに対しても、推定された分布を利用して、諸元ベクトルを割り当てる。
【0055】
諸元ベクトルの分布を推定する方法は様々である。例えば諸元割当部2060は、線形補間やスプライン補間などといった任意の補間処理により、諸元ベクトルの分布を推定する。その他にも例えば、諸元割当部2060は、スパース推定により、諸元ベクトルの分布を推定してもよい。なお、諸元ベクトルの分布を推定する際、ベイズ推定をさらに適用することにより、推定精度の向上を図ってもよい。
【0056】
図7は、各ノードに諸元ベクトルが割り当てられている自己組織化マップ30の構成をテーブル形式で例示する図である。図7のテーブル300は、位置302、物性ベクトル304、材料識別情報306、及び諸元ベクトル308という4つの列を有する。テーブル300は、1つのノードにつき1つのレコードを有する。
【0057】
位置302は、マップ空間上におけるノードの座標を示す。図7の例ではm=2であり、ノードに対してx座標とy座標が割り当てられている。物性ベクトル304は、ノードに対して割り当てられているn次元の物性ベクトルを表す。図7の例ではn=4である。材料識別情報306は、材料諸元情報10が割り当てられたノードについて、そのノードに割り当てられた材料諸元情報10が示す材料60の識別情報を示す。材料諸元情報10が割り当てられていないノードのレコードでは、材料識別情報306は「-」を示している。諸元ベクトル308は、ノードに対して割り当てられているk次元の諸元ベクトルを表す。図7の例ではk=3である。
【0058】
<ターゲット情報80の取得:S108>
ターゲットノード検出部2080はターゲット情報80を取得する(S108)。ターゲット情報80は、推奨データ生成装置2000のユーザが所望する成果物70の物性を表す。例えばターゲット情報80は、成果物70の1種類以上の物性それぞれについて、物性量の所望の値を示す。その他にも例えば、ターゲット情報80は、成果物70の1種類以上の物性それぞれについて、物性量の所望の範囲を示してもよい。
【0059】
ターゲットノード検出部2080がターゲット情報80を取得する方法は任意である。例えばターゲット情報80は、推奨データ生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に予め格納されている。ターゲットノード検出部2080は、その記憶装置にアクセスすることで、ターゲット情報80を取得する。その他にも例えば、ターゲットノード検出部2080は、ユーザから所望の物性を指定する入力操作を受け付け、その入力の結果として、ターゲット情報80を取得する。その他にも例えば、ターゲットノード検出部2080は、他の装置から送信されたターゲット情報80を受信することにより、ターゲット情報80を取得してもよい。
【0060】
<ターゲットノードの検出:S110>
ターゲットノード検出部2080は、ターゲット情報80を用いて、ターゲットノードを検出する(S110)。そのために、ターゲットノード検出部2080は、自己組織化マップ30の各ノードについて、そのノードに割り当てられている物性ベクトルが、ターゲット情報80によって示されている所望の物性に該当するか否かを判定する。
【0061】
例えばターゲット情報80が、1種類以上の物性それぞれについて所望の値を示しているとする。この場合、或るノードの物性ベクトルが、ターゲット情報80によって所望の値が示されているいずれの種類の物性についても、所望の値と一致する値を示している場合、そのノードがターゲットノードとして検出される。なお、物性ベクトルが物性量を正規化等した値を示している場合、「物性ベクトルが所望の値と一致する値を示す」とは、物性ベクトルが示す値を物性量に変換した場合に、その値が所望の値と一致することを意味する。
【0062】
その他にも例えば、ターゲット情報80が、1種類以上の物性それぞれについて所望の範囲を示しているとする。この場合、或るノードの物性ベクトルが、ターゲット情報80によって所望の値が示されているいずれの種類の物性についても、所望の範囲内の値を示している場合、そのノードがターゲットノードとして検出される。ここで、物性ベクトルが物性量を正規化等した値を示している場合、「物性ベクトルが所望の範囲内の値を示す」とは、物性ベクトルが示す値を物性量に変換した場合に、その値が所望の範囲内にあることを意味する。
【0063】
ここで、自己組織化マップ30において、所望の物性に該当する物性ベクトルは複数存在しうる。そのため、ターゲットノード検出部2080は、複数のノードをそれぞれターゲットノードとして検出しうる。
【0064】
<推奨データの生成:S112>
推奨データ生成部2100は、ターゲットノードを利用して推奨データ90を生成する(S112)。具体的には、推奨データ生成部2100は、ターゲットノードに割り当てられている諸元ベクトルを用いて、推奨データ90を生成する。例えば諸元ベクトルが、複数の諸元パラメータそれぞれの値そのものを示しているとする。この場合、推奨データ生成部2100は、諸元ベクトルが示す値そのものによって特定される材料諸元を表す推奨データ90を生成する。一方、諸元ベクトルが、複数の諸元パラメータそれぞれの値そのものではなく、それらを正規化等の手法で変換した値を示しているとする。この場合、推奨データ生成部2100は、諸元ベクトルが示す値を諸元パラメータの値に変換し、変換後の値を用いて推奨データ90を生成する。
【0065】
なお、推奨データ生成部2100は、諸元ベクトルに含まれない諸元パラメータの値を、推奨データ90に付加してもよい。例えば諸元ベクトルが、材料の種類についての値を示していないとする。この場合、推奨データ生成部2100は、諸元ベクトルから生成した推奨データ90に、材料の種類を表す値を付加する。この際に付加される材料の種類は、予め定められていてもよいし、ユーザによって指定されてもよいし、材料諸元情報10を用いて決定されてもよい。例えば、推奨データ生成装置2000が取得した材料諸元情報10がいずれも、材料の種類として同一の種類を示しているとする。この場合、推奨データ生成部2100は、材料諸元情報10によって示されている材料の種類と同一のものを、推奨データ90に付加する。
【0066】
推奨データ生成部2100は、推奨データ90を複数生成してもよい。この場合、例えば推奨データ生成部2100は、マップ空間においてターゲットノードの周囲に位置する他のノードを1つ以上選択し、選択した各ノードについて、そのノードに割り当てられている諸元ベクトルから推奨データ90を生成する。各ノードから推奨データ90を生成する方法は、ターゲットノードから推奨データ90を生成する方法と同様である。
【0067】
推奨データ90の生成に利用するノードを選択する方法は様々である。例えば推奨データ生成部2100は、マップ空間のうち、ターゲットノードを含む部分領域から、ノードを1つ以上選択する。例えば部分領域は、ターゲットノードを中心とし、ターゲットノードからの距離が所定の閾値以下である領域である。なお、距離の種類には、ユークリッド距離やマンハッタン距離などといった任意のものを採用できる。
【0068】
部分領域は、マップ空間をクラスタリングすることで定められてもよい。具体的には、推奨データ生成部2100は、各ノードに割り当てられた諸元ベクトルに基づいて、マップ空間を複数のクラスタに分割する。これにより、割り当てられている諸元ベクトルが互いに類似しているノードが、同一のクラスタに分類される。推奨データ生成部2100は、ターゲットノードが属しているクラスタを、上記所定の範囲として利用する。すなわち、推奨データ生成部2100は、ターゲットノードと同じクラスタに属している各ノードから、推奨データ90を生成する。なお、複数のノードそれぞれに対応づけられたベクトルに基づいてノードのクラスタリングを行う技術には、k-means 法などといった既存のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。
【0069】
推奨データ生成部2100が上記部分領域から複数のノードを選択する際、その選択の順序は任意である。例えば推奨データ生成部2100は、部分領域からランダムな順序でノードを選択する。その他にも例えば、推奨データ生成部2100は、ターゲットノードに近いノードから順に選択する。なお、ターゲットノードからの距離が互いに等しい複数のノードが存在する場合、推奨データ生成部2100は、それらの中からランダムな順序でノードを選択してもよいし、所定の規則(例えば、識別子の昇順や、マップ空間において右回りの順など)に従ってノードを選択してもよい。
【0070】
推奨データ生成部2100は、部分領域に含まれる全てのノードを利用してもよいし、一部のノードを利用してもよい。後者の場合、例えば推奨データ生成部2100は、所定の数のノードを選択する。当該所定の数は、予め定められていてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0071】
その他にも例えば、推奨データ生成部2100は、推奨データ90が要求される間、ノードの選択を繰り返してもよい。例えば推奨データ生成部2100は、推奨データ90を生成する度に、推奨データ90がさらに必要であるか否かを示す入力データを取得する。入力データが、推奨データ90がさらに必要であることを示す場合、推奨データ生成部2100は、まだ選択していないノードを選択し、そのノードを利用して推奨データ90を生成する。一方、入力データが、推奨データ90がもう必要ないことを示す場合、推奨データ生成部2100は、ノードの選択を終了する。
【0072】
上記入力データは、例えばユーザによって入力される。この場合、例えば推奨データ生成装置2000は、推奨データ90を生成する度に、推奨データ90をさらに生成する必要があるか否かの入力を受け付ける入力画面を、ユーザが操作可能な端末のディスプレイ装置に表示させる。推奨データ生成装置2000は、ユーザによる入力の結果を、上記入力データとして取得する。
【0073】
その他にも例えば、上記入力データは、推奨データ90を利用するシミュレータから送信されてもよい。この場合、推奨データ生成装置2000とシミュレータが連携しながら動作する。例えば推奨データ生成装置2000は、生成した推奨データ90をシミュレータに提供する。シミュレータは、提供された推奨データ90を利用して、成果物70の生成のシミュレーションを行う。その後、さらなるシミュレーションを行う必要がある場合、シミュレータは、次の推奨データ90を要求する入力(前述した、推奨データ90がさらに必要であることを示す入力)を推奨データ生成装置2000へ送信する。上記要求を受信した推奨データ生成装置2000は、ノードの選択をさらに行って、推奨データ90を生成する。
【0074】
ノードを選択する方法は、部分領域から選択する方法に限定されない。例えば推奨データ生成部2100は、ターゲットノードに近いノードから順に所定の数のノードを選択してもよい。
【0075】
<推奨データ90の出力>
推奨データ90の出力態様は任意である。例えば推奨データ生成装置2000は、推奨データ生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に推奨データ90を格納する。その他にも例えば、推奨データ生成装置2000は、推奨データ生成装置2000から制御可能な任意のディスプレイ装置に推奨データ90を表示させる。その他にも例えば、推奨データ生成装置2000は、推奨データ生成装置2000と通信可能に接続されている任意の装置(例えば前述したシミュレータ)に対して、推奨データ90を送信する。
【0076】
<推奨データ90の利用方法の例>
例えば推奨データ90は、成果物70の生成のシミュレーションや、成果物70の実験的な生成に利用される。ここで、推奨データ90は、当該シミュレーションや実験的生成を行う作業者によって参照されてもよいし、シミュレーションを行うシミュレータによって参照されてもよい。前者の場合、作業者は、推奨データ90をシミュレータに入力することでシミュレーションを行ったり、推奨データ90に示されている材料諸元で特定される材料60を用意することで成果物70の実験的な生成を行ったりする。後者のケースについては、以下の通り、実施形態2として説明する。
【0077】
[実施形態2]
図8は、実施形態2の推奨データ生成装置2000の動作の概要を例示する図である。ここで、図8は、推奨データ生成装置2000の概要の理解を容易にするための図であり、推奨データ生成装置2000の動作は、図8に示したものに限定されない。
【0078】
推奨データ生成装置2000は、推奨データ90をシミュレータ400に入力することで、シミュレータ400にシミュレーションを実行させる。シミュレータ400は、対象工程の生成プロセスのシミュレーションを行う。具体的には、シミュレータ400は、材料諸元を表す入力データを取得し、その入力データで特定される材料60を用いて生成される成果物70について、予測された成果物70の物性を表す予測データ410を生成する。ここで、シミュレータ400としては、材料諸元を表す入力データを取得し、その入力データを利用してシミュレーションを行い、成果物の物性の予測データを出力する既存の任意のシミュレータを利用できる。また、シミュレータ400は、推奨データ生成装置2000を実現するコンピュータで実現されていてもよいし、他のコンピュータで実現されていてもよい。
【0079】
推奨データ生成装置2000は、シミュレータ400によって生成された予測データ410を取得し、推奨データ90と予測データ410のペアを出力する。これにより、推奨データ90と、その推奨データ90をシミュレータ400に入力することで得られた予測データ410とのペアが出力される。
【0080】
上記ペアは、前述した材料諸元情報10と物性情報20のペアに相当するものであると言える。このことから、推奨データ生成装置2000を利用することにより、既に行われた成果物70の生成のシミュレーションや実験の結果に基づいて、その後に行うシミュレーションを効率化が実現できる。例えば、最初のある程度の回数については、シミュレーションや実験的生成の対象とする材料諸元が、過去の知見に従って決められたり、ランダムに決められたりする。その後、これらの結果を推奨データ生成装置2000に入力することで、所望の物性を持つ成果物70を得られる蓋然性が高い材料諸元を表す推奨データ90が得られる。そのため、所望の物性を持つ成果物70を得られる蓋然性が高い材料諸元に狙いを絞ってシミュレーションを実行できるようになるため、シミュレーションを効率的に行えるようになる。
【0081】
推奨データ90と予測データ410のペアの出力態様は任意である。例えば推奨データ生成装置2000は、上記ペアを推奨データ生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に格納する。その他にも例えば、推奨データ生成装置2000は、推奨データ生成装置2000から制御可能な任意のディスプレイ装置に上記ペアを表示させる。その他にも例えば、推奨データ生成装置2000は、推奨データ生成装置2000と通信可能に接続されている任意の装置に対して、上記ペアを送信する。
【0082】
なお、推奨データ生成装置2000は、推奨データ90を生成する度に、その推奨データ90を用いたシミュレーションをシミュレータ400に実行させてもよいし、推奨データ90を複数生成した後に、それら複数の推奨データ90それぞれについて順次シミュレータ400にシミュレーションを実行させてもよい。
【0083】
<機能構成の例>
図9は、実施形態2の推奨データ生成装置2000の機能構成を例示するブロック図である。実施形態2の推奨データ生成装置2000は、シミュレータ制御部2120及びシミュレーション結果出力部2140をさらに有する。シミュレータ制御部2120は、推奨データ90をシミュレータ400に入力することで、推奨データ90によって表される材料諸元で特定される材料60を用いた成果物70の生成のシミュレーションを、シミュレータ400に実行させる。シミュレーション結果出力部2140は、シミュレータ400から出力される予測データ410を取得し、推奨データ90と予測データ410のペアを出力する。
【0084】
<ハードウエア構成の例>
実施形態2の推奨データ生成装置2000のハードウエア構成は、実施形態1の推奨データ生成装置2000と同様に、例えば図3で表される。ただし、実施形態2のストレージデバイス508には、実施形態2の推奨データ生成装置2000の各機能構成部を実現するプログラムが格納されている。
【0085】
<処理の流れ>
図10は、実施形態2の推奨データ生成装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。ここで、S102からS112は、図4に示されているものと同じであるため、図10では図示されていない。S114において、シミュレータ制御部2120は、推奨データ90をシミュレータ400に入力して、シミュレータ400にシミュレーションを実行させる。シミュレーション結果出力部2140は、シミュレータ400から予測データ410を取得する(S116)。シミュレーション結果出力部2140は、推奨データ90と予測データ410のペアを出力する(S118)。
【0086】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0087】
なお、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスク ROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0088】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当手段と、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出手段と、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成手段と、を有する推奨データ生成装置。
(付記2)
前記推奨データ生成手段は、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、各前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記1に記載の推奨データ生成装置。
(付記3)
前記推奨データ生成手段は、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、付記2に記載の推奨データ生成装置。
(付記4)
前記推奨データ生成手段は、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、付記2に記載の推奨データ生成装置。
(付記5)
前記推奨データ生成手段は、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記1に記載の推奨データ生成装置。
(付記6)
入力された材料諸元で特定される材料を用いて生成されうる前記成果物について、その物性の予測データを生成するシミュレータに、前記推奨データで表される材料諸元を入力としたシミュレーションを実行させるシミュレータ制御手段と、
前記シミュレータによって生成された前記予測データを取得し、その予測データと前記推奨データを出力するシミュレーション結果出力手段と、を有する付記1から5いずれか一項に記載の推奨データ生成装置。
(付記7)
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を有する制御方法。
(付記8)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記7に記載の制御方法。
(付記9)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、付記8に記載の制御方法。
(付記10)
前記推奨データ生成ステップにおいて、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、付記8に記載の制御方法。
(付記11)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記7に記載の制御方法。
(付記12)
入力された材料諸元で特定される材料を用いて生成されうる前記成果物について、その物性の予測データを生成するシミュレータに、前記推奨データで表される材料諸元を入力としたシミュレーションを実行させるシミュレータ制御ステップと、
前記シミュレータによって生成された前記予測データを取得し、その予測データと前記推奨データを出力するシミュレーション結果出力ステップと、を有する付記7から11いずれか一項に記載の制御方法。
(付記13)
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記材料諸元情報を用いて、材料諸元に関する値を示す諸元ベクトルを各前記ノードに対して割り当てる諸元割当ステップと、
前記成果物についての所望の物性を示すターゲット情報を取得し、前記ターゲット情報によって示されている所望の物性に該当する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを、ターゲットノードとして検出するターゲットノード検出ステップと、
前記ターゲットノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記所望の物性を持つ前記成果物を生成しうる材料の材料諸元を表す推奨データを生成する推奨データ生成ステップと、を実行させる非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記14)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間のうち、前記ターゲットノードが含まれている部分領域から、1つ以上の前記ノードを選択し、前記選択したノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記13に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記15)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記ターゲットノードを中心とし、前記ターゲットノードからの距離が閾値以下の領域を、前記部分領域として用いる、付記14に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記16)
前記推奨データ生成ステップにおいて、
各前記ノードに割り当てられている前記諸元ベクトルに基づいて、前記マップ空間を複数のクラスタに分割し、
前記ターゲットノードが属している前記クラスタを前記部分領域として用いる、付記14に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記17)
前記推奨データ生成ステップにおいて、前記マップ空間における前記ターゲットノードからの距離の近さの順位で上位所定個の前記ノードそれぞれについて、そのノードに割り当てられている前記諸元ベクトルを用いて、前記推奨データをさらに生成する、付記13に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記18)
入力された材料諸元で特定される材料を用いて生成されうる前記成果物について、その物性の予測データを生成するシミュレータに、前記推奨データで表される材料諸元を入力としたシミュレーションを実行させるシミュレータ制御ステップと、
前記シミュレータによって生成された前記予測データを取得し、その予測データと前記推奨データを出力するシミュレーション結果出力ステップと、を有する付記13から17いずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0089】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-044485を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0090】
10 材料諸元情報
20 物性情報
30 自己組織化マップ
60 材料
70 成果物
80 ターゲット情報
90 推奨データ
100 テーブル
102 材料識別情報
104 材料諸元
200 テーブル
202 成果物識別情報
204 物性
300 テーブル
302 位置
304 物性ベクトル
306 材料識別情報
308 諸元ベクトル
400 シミュレータ
410 予測データ
500 コンピュータ
502 バス
504 プロセッサ
506 メモリ
508 ストレージデバイス
510 入出力インタフェース
512 ネットワークインタフェース
2000 推奨データ生成装置
2020 取得部
2040 自己組織化マップ生成部
2060 諸元割当部
2080 ターゲットノード検出部
2100 推奨データ生成部
2120 シミュレータ制御部
2140 シミュレーション結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10