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  • 特許-ドロマイトを含む入浴剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】ドロマイトを含む入浴剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20250120BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20250120BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/365
A61Q19/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020073741
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2020180116
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019081946
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】518414236
【氏名又は名称】株式会社グッドアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板橋 英之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慶郎
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504577(JP,A)
【文献】特表2018-508612(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011343(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0033835(KR,A)
【文献】ホーム エステティック バス プレミアム W 水素,rocce [online],2017年06月,<https://www.rocce.jp/item/013-01064-013-001.html>,[検索日 2024.04.22]
【文献】世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業[online],2017年06月,<https://web.archive.org/web/20170615000000*/https://www.rocce.jp/item/013-01064-013-001.html>,[検索日 2024.04.22]
【文献】Alkaline Deacidification Bath,MINTEL GNPD [online],2016年02月,<URL:https//www.gnpd.com>,ID 3749847, [検索日 2024.04.22]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロマイトとクエン酸を含む、入浴剤(ただし、水素化Mgを含む入浴剤を除く)であって、
ドロマイトの重量を1とした時のクエン酸の重量が1.39以上且つ3.00以下である、入浴剤。
【請求項2】
ドロマイトとクエン酸がそれぞれ粉末である、請求項1に記載の入浴剤。
【請求項3】
ドロマイト粉末の粒径が500マイクロメートル以下である、請求項2に記載の入浴剤。
【請求項4】
ドロマイト粉末とクエン酸粉末を混合固化したタブレットタイプまたは不織布に入れたティーバッグタイプである、請求項1~3のいずれか一項に記載の入浴剤。
【請求項5】
ドロマイトとクエン酸を混合する工程を含む、入浴剤(ただし、水素化Mgを含む入浴剤を除く)の製造方法であって、
ドロマイトの重量を1とした時のクエン酸の重量が1.39以上且つ3.00以下で混合する、製造方法。
【請求項6】
ドロマイトとクエン酸を温水に添加する工程を含む、前記温水への入浴者の肌に対する保湿効果を高めるように温水を改質する方法(ただし、水素化Mgを温水に添加する方法を除く)であって、
ドロマイトの重量を1とした時のクエン酸の重量が1.39以上且つ3.00以下で添加する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容及び健康分野に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスタイプの入浴剤が数多く市販されているが、それらは主に炭酸ガスの血行促進効果に注目したものである。
また、鉱物粉末を含有する入浴剤も知られている。例えば、特許文献1にはラジウム含有鉱石、炭酸水素ナトリウム、およびコハク酸を含む入浴剤が開示されている。しかしながら、この入浴剤もあくまでも血行促進効果向上を目的としたものであり、鉱物を含有させることによる美容効果を目的としたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-230623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来の入浴剤は血行促進効果などの健康増進を目的としたものであり、風呂の水を化粧水と同様な成分にするような美容目的で用いられている入浴剤は知られていない。最近、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む化粧水が注目されているが、風呂の水をそのような化粧水と同様の成分にしようとした場合、極めて高価なものとなり、非現実的であった。そこで、本発明は、風呂の水を化粧水と同様の成分にできるような美容効果に優れた入浴剤を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、天然鉱物であるドロマイトにクエン酸を混合することにより、美容効果に優れたカルシウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸水素イオン(CO2が水に溶解して酸解離したイオンである)、およびクエン酸イオンを効率的に生成することができ、風呂の水を化粧水と同様の成分にできる入浴剤が提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、ドロマイトと、クエン酸などの酸を含む、入浴剤を提供する。ここで、ドロマイトとクエン酸などの酸がそれぞれ粉末であることが好ましく、ドロマイト粉末の粒径が500マイクロメートル以下であることが好ましい。また、クエン酸の含有量は、ドロマイトに対しモル比で4/3以上であることが好ましい。また、ドロマイト粉末とクエン酸などの酸粉末を混合固化したタブレットタイプまたは不織布に入れたティーバッグタイプの入浴剤であることが好ましい。
本発明はまた、ドロマイトとクエン酸などの酸を混合する工程を含む、入浴剤の製造方法、およびドロマイトとクエン酸などの酸を温水(湯)に添加する工程を含む、温水の改質方法、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドロマイトとクエン酸などの酸を用いて、化粧水と同様な効果を持った肌を整える効果を有する入浴剤が提供される。ドロマイトとクエン酸などの酸を風呂に投入して入浴剤として使用することで、全身の肌に化粧水を塗布したのと同様な効果を得ることができる。
本発明の入浴剤を温水に溶解させることで、以下の美容効果に優れた成分が生成する。
・マグネシウム:保湿、アトピー性皮膚炎の改善、皮膚のバリア機能の強化
・カルシウム:保湿、新陳代謝の促進、皮膚のバリア機能の強化
・クエン酸:ピーリング効果、アンチエイジング効果(ミネラル吸収促進効果)
・炭酸ガス:血行促進、新陳代謝の促進、肌の浄化作用
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ドライスキン処置マウスにおける、水道水又はドロマイト溶解水への入浴後の所定時間経過後の経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定結果を表す。
図2】ドライスキン処置マウスにおける、ドロマイト溶解水、水道水、CaCl2溶液、MgCl2溶液またはクエン酸溶液の各溶液への入浴後50分経過した時のTEWL減少率を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の入浴剤は、ドロマイトとクエン酸などの酸を含む。
【0010】
ドロマイトは約5000万年前にサンゴなどの生物が海底に堆積し石灰岩となった後、カルシウムの一部が海水中のマグネシウムに置換されて生成した生物由来の鉱物であり、主成分はCaMg(CO3)2の化学式で表される。本発明において、ドロマイトのモル数を計算するときはこの化学式に基づいて計算する。
なお、ドロマイトはCaMg(CO3)2 以外の成分を含んでもよい。例えば、ドロマイトには二酸化ケイ素が含まれることがあるが、二酸化ケイ素はアンチエイジング効果(抗酸化作用)、美肌・美髪・美爪効果などに効果があり、美容目的では好ましい成分である。
【0011】
ドロマイトは温水に溶解し、かつ、クエン酸と反応しやすくするため、粉末状であることが好ましい。その場合、ドロマイトの粉末は粒径500マイクロメートル以下とすることが好ましく、100マイクロメートル以下とすることがより好ましい。ドロマイトの粉末化は
通常の粉砕機などを用いて行うことができる。
【0012】
ドロマイトは多くの酸と反応するので酸の種類は入浴剤成分として使用可能な酸である限り特に制限はないが、本発明においては酸として、柑橘類に含まれる成分で美容や健康に効果があるクエン酸(C6H8O7)を用いることが好ましい。ドロマイト(CaMg(CO3)2)とクエン酸の反応を以下に示す。
CaMg(CO3)2 + 4/3C6H8O7→ Ca2+ + Mg2+ + 4/3C6H5O7 3-+2CO2 + 2H2O
【0013】
このように、ドロマイトとクエン酸を反応させることで、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸ガス(炭酸水素イオン)を効率よく発生させることができる。上記式より、ドロマイトに対するクエン酸の量は、モル比で、4/3以上とすることが好ましい。
【0014】
ドロマイトに対するクエン酸の量は、重量比で表してもよく、ドロマイトの重量を1とした時のクエン酸の重量は1.39以上とすることが好ましく、またドロマイトとクエン酸を反応させることができる限り特に限定されないが、例えば、1.40以上、1.45以上、1.50以上であってよい。またドロマイトの重量を1とした時のクエン酸の重量は、特に限定されないが、例えば、3.00以下、2.50以下、2.00以下、1.50以下であってよく、クエン酸量が少ない方がpHを中性に近づけることができ、酸による肌への刺激を低下させることができる。
【0015】
入浴剤を温水に添加した際にドロマイトとの反応が開始するようにするため、入浴剤に含まれるクエン酸は固体であることが好ましく、粉末状であることが好ましい。ただし、本発明の入浴剤がドロマイトとクエン酸を別々に添加する態様である場合は、クエン酸などの酸は液体でもよい。
【0016】
本発明の入浴剤の使用量は、上記の美容効果が発揮されるような量であればよく、例えば、本発明の入浴剤を温水(例えば、30~50℃の湯)に溶解したときに、温水中のカルシウムイオン濃度が2~500ppm(好ましくは10~100ppm)、マグネシウムイオン濃度が1~250ppm(好ましくは5~50ppm)、炭酸水素イオン濃度が5~1000ppm(好ましくは20~500ppm)となるような使用量とすることができる。
例えば、温水200リットル当たり、1~1000gの入浴剤を使用することができる。
【0017】
なお、本発明の入浴剤は、炭酸カルシウムなど、入浴剤に含まれる一般的な有効成分や、色素、香料など、入浴剤に含まれる一般的な成分を含んでもよい。
【0018】
本発明の入浴剤は、ドロマイトとクエン酸を別々の構成成分とした入浴剤調製キットのような態様でもよいが、予めドロマイトとクエン酸などの酸が混合された態様であることが流通や使用の簡便さの観点、さらには、ドロマイトとクエン酸などの酸の反応効率の観点から好ましい。
例えば、ドロマイトを粉砕したものとクエン酸粉末を混合し、この混合粉末を不織布のような袋に入れる、あるいは混合粉末に少量の水を加えて捏ねて混ぜた後乾燥させて固形物にする、あるいは混合粉末を機械的に圧縮して固形物にする、等により製造することができる。本発明の入浴剤は、例えば、ドロマイト粉末とクエン酸などの酸粉末を混合固化したタブレットタイプまたは不織布に入れたティーバッグタイプの入浴剤製品とすることができる。
【0019】
本発明の一態様としては、ドロマイトとクエン酸などの酸を混合する工程を含む、入浴剤の製造方法が提供される。ドロマイトとクエン酸などの酸を混合する工程については上述した通りであり、例えば、ドロマイト粉末とクエン酸などの酸粉末を所望の割合で混合することで入浴剤を製造できる。必要に応じて、他の入浴剤成分を配合してもよい。
【0020】
本発明の一態様としては、ドロマイトとクエン酸などの酸を温水に添加する工程を含む、温水の改質方法が提供される。ドロマイトとクエン酸などの酸を温水に添加する工程については上述した通りであり、ドロマイトとクエン酸などの酸を混合したのちに添加する態様だけでなく、別々に添加する態様も含まれる。
【実施例
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、以下の態様はあくまでも本発明の一態様に過ぎず、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0022】
ドロマイトとして、栃木県佐野市葛生地区産のドロマイトを粒径約100マイクロメートル
になるように粉末化して使用した。
【0023】
製造例1
ドロマイト粉末とクエン酸粉末をモル比で1:2の割合(ドロマイト粉末184g、クエン酸粉末384g)で混合し、この混合粉末を不織布の袋に入れて袋入り粉末状入浴剤を作製した。
【0024】
製造例2
ドロマイト粉末とクエン酸粉末をモル比で1:2の割合で混合し、これに少量の水を添加してかき混ぜ、数時間放置して乾燥させることにより、固形入浴剤を作製した。
【0025】
製造例3
ドロマイト粉末とクエン酸粉末をモル比で1:2の割合で混合し、これにプレス機で圧縮成型することにより、固形入浴剤を作製した。
【0026】
実施例1(ドロマイトとクエン酸をモル比1:2で混合して作製した入浴剤の官能評価)製造例1で製造した袋入り粉末状入浴剤(入浴剤2g入り)を、約40℃のお湯2リットルに加えて入浴剤を溶解させた。溶解後の溶液成分を分析したところ、カルシウムイオンが70ppm、マグネシウムイオンが42ppm、炭酸水素イオンが209ppmであり、発明者の分析によれば、近年注目されている化粧水「アベンヌウォーター」(ピエール ファーブル デルモ・コスメティック社)の成分と近似していることが分かった。
【0027】
上記の溶解液に片手を5分間漬けた後、水から手を出し、水分をタオルで拭き取った後の手の表面の状態を評価し、入浴剤を加えない約40℃のお湯に5分間漬けたもう片方の手の状態と比較する試験を行った。
評価項目は「すべすべ感」「しっとり感」とし、どちらの手が良いかを被験者本人が評価した。その結果、被験者10人全てがドロマイト粉末とクエン酸粉末を添加した水につけた手の方が良いとの評価であった。
【0028】
比較例1
ドロマイトと同様な鉱物であるカルサイトの粉末を用いてクエン酸粉末とモル比1:2の割合で混合した入浴剤を作成し、実施例1と同様な評価を行った。その結果、「すべすべ感」、「しっとり感」のいずれの指標についても、ドロマイトを用いた方が評価が高かった。
【0029】
実施例2(ドロマイトの溶解性評価試験)
ドロマイトの脱イオン水又は酸への溶解性評価を行った。本実施例で使用したドロマイトは、粒径10μm以下にふるい分けしたものを使用した。
ドロマイトの溶解性評価試験は次の方法により行った。19.3℃、22.8℃、31.5℃、41.5℃又は50.4℃にそれぞれ温度調整した脱イオン水500mLに、ドロマイト0.15gを入れ、300rpmで2時間攪拌した。この溶液5mLを採取し、孔系0.45μmのシリンジフィルターで濾過後、pHを測定し、さらにイオンクロマトグラフィー(IC)によって、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの濃度を測定した。ICの条件は下表の通りである。
【表1】


その結果、脱イオン水において、ドロマイトは温度の上昇とともに溶解度も徐々に上昇したが、水への溶解度は小さく、50℃でも7%程度しか溶解しないことが分かった。
次に、ドロマイトの酸への溶解性評価を行った。20.4℃、22.2℃、33.4℃、42.3℃又は52.1℃に温度調整した脱イオン水500mLにドロマイト0.15gとクエン酸を0.225g(1.2×10-3M)加え、上記の脱イオン水への溶解性評価試験と同様の方法によって溶解性評価試験を行った。その結果、ドロマイトは温度の上昇とともに溶解度も上昇し、弱酸であるクエン酸溶液(1.2×10-3M)にはほぼ完全に溶解した。
【0030】
実施例3(ドロマイトのクエン酸溶液への溶解試験)
ドロマイトのクエン酸溶液への溶解度をできる限り高く保ちつつ、かつ本発明の入浴剤を溶解した水溶液中のpHを、肌に対して刺激を与えにくくするpHとするために、ドロマイトとクエン酸の最適混合割合の検討を行った。
40℃に温度調整した脱イオン水500mLに、ドロマイトとクエン酸を重量比が1:1、1:1.5、1:2、1:3となるように、ドロマイトを0.15gとクエン酸を0.150g、0.225g、0.300g又は0.450g加え、実施例2の方法に記載の溶解性評価試験と同様の方法によって、溶解性評価試験を行った。
その結果、ドロマイト:クエン酸=1:1の重量比では、ドロマイトはクエン酸水溶液中に完全に溶解するにはいたらなかったが、ドロマイトの重量を1とした時にクエン酸の重量を1.5以上とすることで、ドロマイトはほぼ完全に溶解することが分った。
さらに、ドロマイトの重量を1とした時にクエン酸の重量を1.5以上とすることで、水溶液のpHは4~6の弱酸性となったが、肌刺激の観点から最適pHを考慮するとなるべく中性に近い弱酸性が好ましい。すなわち肌刺激の観点も併せて考えると、ドロマイトとクエン酸の最適重量比は1:1.5であった。
【0031】
実施例4(マウスにおける経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定による、ドロマイトとクエン酸を重量比1:1.5で混合して作製した入浴剤の保湿効果の評価)
本発明の入浴剤の保湿効果を評価するために、TEWLの測定を行った。TEWLとは肌の角層を通して蒸散された水分量であり、単位面積(m2)あたりかつ単位時間(h)あたりの水分の重量(g)、すなわち水分のTEWL=重量(g)/(表面積(m2)×時間(h))で表される。体温上昇、運動および精神的刺激などによって汗腺から分泌される汗とは区別され、正常な状態では、わずかな量の経表皮水分蒸散が観測される。TEWLは皮膚の重要な機能の一つであるバリア機能を反映する指標として用いられ、TEWLの値が低いと肌の保湿効果が高いと評価される。
【0032】
TEWLの測定は当業者に既知の方法により行った。まず、ICR白種マウスの背面皮膚に対してアセトンを5分間塗布し、ドライスキン処理を行い、そのマウスを24時間放置した。ドライスキン処置を行ったマウスを、水道水又はドロマイト溶解水(ドロマイト:クエン酸=1:1.5(重量比))の4Lの湯浴(37℃)に5分間入浴させた。ドロマイト溶解水4Lあたりのドロマイトとクエン酸の重量は、それぞれドロマイト1.2g、クエン酸1.8gである。入浴後30分間自然乾燥させた後、ジエチルエーテルで麻酔をかけ、入浴から30、40、50分後にTEWL測定装置(Cortex Technology社)を用いて製造業者のプロトコルに従ってTEWLの測定を行った。なお、同様の方法を各溶液において独立して2回ずつ行った。図1に示す通り、水道水に入浴させた場合はTEWLの値は時間経過によってほとんど変化しないのに対し、37℃のドロマイト溶解水に5分間浸ることでTEWLの値が時間経過とともに大幅に低下し、皮膚のバリア機能が大きく改善することが分かった。すなわち、ドロマイト溶解水による肌への保湿効果を確認できた。
【0033】
さらに、ドロマイト溶解水と、ドロマイト溶解水の単独成分を溶解した溶液との保湿効果の比較実験を行った。上述の方法によってドライスキン処理を行ったマウスを用いて、上述の方法により入浴後50分後のTEWLを測定することにより、入浴後50分後のTEWL減少率を求めた。マウスが入浴した温浴(37℃)はそれぞれ水道水、ドロマイト溶解水(ドロマイト:クエン酸=1:1.5(重量比))、1.8mM CaCl2溶液、1.2mM MgCl2溶液及び2.3mMクエン酸溶液であり、各溶液において独立して4回ずつ測定を行った。各溶液は4Lずつ作製し、ドロマイト溶解水4Lあたりのドロマイトとクエン酸の重量は、それぞれドロマイト1.2g、クエン酸1.8gである。CaCl2溶液、MgCl2溶液またはクエン酸溶液のカルシウム、マグネシウム、クエン酸の濃度は、それぞれドロマイト溶解水中におけるそれぞれの濃度と同じ濃度になるように上記のモル濃度とした。
図2に示す通り、ドロマイト溶解水を用いた場合とCaCl2溶液(図中、Ca2+)、MgCl2溶液(図中、Mg2+)またはクエン酸溶液を用いた場合とで、入浴後50分経過後のTEWL減少率の比較を行ったところ、ドロマイト溶解水を用いた場合においてTEWL減少率が59.7%であり、極めてTEWL減少率が高いことが示された。一方で、CaCl2溶液またはMgCl2溶液を用いた場合におけるTEWL減少率はそれぞれ14.1%、11.5%であり、水道水を用いた場合のTEWL減少率(7.4%)よりも少し上昇した。またクエン酸溶液を用いた場合におけるTEWL減少率は5.6%であり、水道水を用いた場合のTEWL減少率(7.4%)と同程度であった。
すなわち、ドロマイト水溶液の単独成分であるカルシウム、マグネシウム、クエン酸のそれぞれ単独で溶解した溶液と比較して、ドロマイト水溶液による肌への保湿効果は高いことが確認できた。
【0034】
実施例5(温浴施設における入浴剤のドロマイトとクエン酸を重量比1:1.5で混合して作製した入浴剤の官能評価)
ドロマイトとクエン酸を重量比1:1.5で混合した混合粉末を不織布の袋に入れて袋入り粉末状入浴剤を作製した。この粉末状入浴剤を実際の温浴施設において使用した。温水200Lあたり、100gの本発明の入浴剤を溶解し、この入浴剤を溶解したお風呂に入浴した入浴者を対象にアンケート調査を行った(回答者:男性:104人;女性:133人;合計:237人)。
その結果、本発明の入浴剤を溶解したお風呂に入った後の肌に対する効果については、「もっちりになった」:11%、「すべすべになった」:44%、「しっとりになった」:41%であり、「つっぱった感じになった」:3%、「かさかさになった」:1%であった。つまり、「もっちりになった」、「すべすべになった」又は「しっとりになった」という肯定的な回答が大半(合計で全体の96%)を占め、本発明の肌に対する効果を確認することが出来た。
図1
図2