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  • 特許-光触媒体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】光触媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20250120BHJP
   B01J 31/16 20060101ALI20250120BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20250120BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20250120BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20250120BHJP
   A01N 55/02 20060101ALI20250120BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
B01J35/39
B01J31/16 M
B01J37/10
B01J37/04 102
A01N59/16 Z
A01N55/02
A01P3/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020127359
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024647
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519363373
【氏名又は名称】富士ゲル販売株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599044917
【氏名又は名称】寿化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝次
(72)【発明者】
【氏名】郡 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-198890(JP,A)
【文献】国際公開第2005/026276(WO,A1)
【文献】特開2013-129586(JP,A)
【文献】Journal of Environmental Chemical Engineering,2019年,vol. 7,p.103178,DOI:10.1016/j.jece.2019.103178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
A01N 59/16
A01N 55/02
A01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒酸化チタンと、チオスルファト銀錯塩と、を含有する光触媒体の製造方法であって、
水で希釈した可溶性チタン化合物に塩基性物質を添加して沈殿したチタン酸を得るチタン酸生成工程と、
得られた沈殿物である前記チタン酸を洗浄する不純物除去工程と、
洗浄後の前記チタン酸を含む分散系に過酸化水素水を加えてペルオキソチタン水和物の溶液を得るペルオキソチタン水和物生成工程と、
前記ペルオキソチタン水和物の溶液を大気圧以上の圧力に加圧した状態で加熱して結晶性チタン酸化複合体を含む溶液を得る結晶性チタン酸化物複合体形成工程と、
前記結晶性チタン酸化複合体を含む溶液に、吸着特性を有するシリカまたはシリカ複合酸化物を添加して複合ゾルを得る工程と、
前記複合ゾルにチオスルファト銀錯塩を含む溶液を添加する工程と、
を有する光触媒体の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒酸化チタンに前記シリカ又は前記シリカ複合酸化物を0.1~40重量%添加した複合体と、前記チオスルファト銀錯塩と、が含有されることを特徴とする請求項1記載の光触媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを利用して、有機物を分解する光触媒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒技術は、UVあるいは可視光を照射するのみで、環境問題に対処できる新技術として、大気、水質、及び土壌の各技術分野で注目を集めている。光触媒反応は、光エネルギーの存在下で光触媒を用いて、有機物等を分解する反応である。この反応は、太陽光や蛍光灯、白熱灯等の室内照明から給せられる光に含まれる紫外線を利用して、有害な有機物、無機物等を分解する技術として研究されている。
【0003】
光触媒は、例えば、SOx、NOx等の無機酸性ガスや、シックハウス症候群の原因物質とされているホルムアルデヒドのような有機ガスや、あるいは焼却処理により発生するダイオキシン等の環境ホルモン物質等を二次汚染なしに安全に分解、無害化する環境材料として広く注目を集め、水や空気の浄化への応用や、建材、及びタイル等の建築材料への応用等の研究がなされている。光触媒の特性を生かし、ガラス食器や観葉植物等の生活製品から高速道路や建築物の外壁等の工業用品まで幅広い分野でも光触媒の実用化及び製品化が盛んに進められつつある。
【0004】
光触媒としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、セレン化カドミウム、ガリウムヒ素、及びチタン酸ストロンチウム等が知られているが、一般には、二酸化チタンがよく用いられている(例えば、特許文献1および2参照。)。二酸化チタン等の光触媒の存在下に、有害有機物等に紫外線等を照射することによって、有機物等は分解され、無害化される。
【0005】
以下に、光触媒として、代表的な、二酸化チタン光触媒を例にして本発明の背景技術を説明する。
従来、二酸化チタン光触媒の原料としては、二酸化チタンの微粒子や、金属チタンのアルコキシド溶液等が利用されてきた。二酸化チタン微粒子を使用する場合には、例えば、二酸化チタン微粒子をそのまま用いる方法、バインダー等で固形物上に固定して用いる方法、塗料や水和物等に混合した後、固形物上に塗布、乾燥し、固定化して用いる方法等がある。金属チタンのアルコキシド溶液を使用する場合には、例えば、これを固形物上に塗布した後、乾操、焼成して二酸化チタン薄膜を生成させる、所謂、ゾルゲル法等がある。その他、例えば、CVD法、スパッタ法等で固形物上に二酸化チタン薄膜を生成させて使用する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-063712号公報
【文献】特許第5995100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2では、銀などの金属成分を添加することにより有機物の分解や抗菌等の性能向上が図られている。しかしながら、光触媒粒子を分散させた分散液に金属原料を添加すると、光触媒粒子の分散安定性が阻害されて凝集を引き起こしてしまい、光触媒特性を効率化しにくいと言うという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、光触媒特性を効率化できる光触媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)アナターゼ型酸化チタン(IV)(以下「光触媒酸化チタン」とも表記する。)と、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを含む塩(以下「チオスルファト銀錯塩」とも表記する。)と、を含有すること特徴とする光触媒体の製造方法。
【0010】
(2)光触媒酸化チタンにシリカ又はシリカ複合酸化物を0.1~40重量%添加した複合体と、チオスルファト銀錯塩と、を含有すること特徴とする光触媒体の製造方法。
【0011】
(3)結晶性チタン酸化物複合体の製造方法において、チタン含有原料水溶液に過酸化水素水を加えてペルオキソチタン錯体を形成させた後、シリカ又はシリカ複合酸化物を添加し、チオスルファト銀錯塩を含有する溶液を加えることを特徴とする結晶性チタン酸化物複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、水、大気又は土壌等の浄化技術、環境技術の次世代のキー・テクノロジーとして注目されている光触媒関連の技術分野において、光触媒特性を効率化できる光触媒体を開発し、提供することを可能とするものであり、光触媒を応用する技術分野における新技術の開発・新産業の創出の大きな推進力となり得るものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1および2と、比較例におけるアセトアルデヒド濃度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態では、結晶性チタン酸化物複合体の製造方法において、チタン含有原料水溶液に塩基性物質を添加して、得られた析出沈殿物を洗浄し、不純物イオンを除去する。その後、過酸化水素水を加えてペルオキソチタン錯体を形成させた。
【0015】
このペルオキソチタン錯体水溶液を70℃以上の温度において加熱する結晶性チタン酸化物複合体を生成する。その後、チオスルファト銀錯塩を含有する溶液を加える。吸着特性を有するシリカ又はシリカ複合酸化物の添加のタイミングは、ペルオキソチタン液結晶性酸化チタンの形成の後である。具体的には以下に説明する工程から構成される。
【0016】
(1)チタン酸の生成と不純物除去工程
四塩化チタン等の可溶性チタン化合物を水で希釈し、次に、アンモニア等の塩基性物質を添加し、析出沈殿物を得る。この析出沈殿物を洗浄し、不純物イオンを除去する。
【0017】
(2)ペルオキソチタン水和物の生成工程
(1)で得られたチタン酸を水分散系(サスペンジョン)とする。このサスペンジョンに適量の過酸化水素水を加え、黄色のペルオキソチタン水和物の水溶液を得る。
【0018】
(3)チオスルファト銀錯塩溶液の生成工程
純水またはイオン交換水30mlを40℃に加熱し、それに酢酸銀0.232gを加え40℃~50℃で約5分間攪拌した後濾過し、未溶解の酢酸銀を除去する。あるいは、酢酸銀がすべて溶解するまで強攪拌しても良い。こうして得られた溶液に、安定剤として亜硫酸ナトリウム1.0gを攪拌しながら加える。亜硫酸ナトリウムを加えて白く濁った溶液が透明になるまで攪拌する。その後、チオ硫酸ナトリウム0.66gを加えて攪拌し、チオスルファト銀錯塩溶液とする。
【0019】
(4)結晶性チタン酸化物粒子の形成工程
生成したペルオキソチタン水和物を80℃以上において、常圧(言い換えると、外部系から水溶液に加圧も減圧していない状態、大気圧とも表記する。)、あるいはオートクレーブ中において加熱することによって(言い換えると、水溶液に熱および常圧よりも高い圧力が加えることによって)、結晶性チタン酸化物粒子を形成する。その後、シリカ又はシリカ複合酸化物とチオスルファト銀錯塩を加えた。
【0020】
次に、本発明について更に詳細に説明する。本発明の方法において原料として使用される可溶性チタン化合物は、四塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、アルコキシチタンなどを挙げることができる。また、可溶性チタン化合物の水溶液へ添加する過酸化水素水の量は過酸化水素/チタンのモル比は1以上が必要で、それ以下の量では、完全にペルオキソ化が完了しない。しかも、添加した過酸化水素水には反応に関与することなく分解するものがあるので、過酸化水素/チタンのモル比が1よりも過剰に加えることが好ましい。
【0021】
析出沈殿物を含む液体中から液体中に含まれているアンモニウムイオンや塩素イオン、あるいは原料に由来する不純物を取り除く工程では、デカンテーション、ろ過洗浄、遠心分離などの方法、あるいはイオン交換反応、逆浸透法を適用してイオン性物質を除去する方法を用いることができる。
【0022】
不純物の残存量が多い場合は、ペルオキソチタン水和物の水溶液の安定性や性状に悪影響を与えるので十分に処理することが望ましい。
特に、塩素イオン等の陰イオンはペルオキソチタン水和物の縮合を促すと考えられ、これらの除去が不十分の場合には完全な透明にならず濁る場合がある。一方、アンモニウムイオン等の陽イオンが残っていても陰イオンを十分に除くとペルオキソチタン水和物を含む黄色透明な水溶液を得ることができる。
【0023】
また、沈殿物の処理においては、沈殿物が乾燥すると脱水固化をして、その後の溶液化の工程に悪影響を及ぼすので乾燥させないようにすることが必要である。
【0024】
この溶液化過程では、室温(言い換えると、外部系から加熱も冷却もされない温度)以上に加熱されると、溶液化したペルオキソチタン水和物が再縮合するため、液の増粘、微粒子の形成、不透明化などによって目的の酸化チタン塗布剤が得られない場合があるので、沈殿物含有液体を予め冷却した後に過酸化水素水を添加するか、あるいは冷却下で過酸化水素水を添加することが好ましい。
【0025】
本発明における添加するシリカとしては、市販品の製品(株式会社トクヤマ製、商品名レオロシール、グレードQS-09、QS-10、QS-102、QS-20、QS-30、QS-40)、(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル、グレード90、130,150,200,255、300,380)が挙げられる。更に、添加するシリカ複合酸化物としては、市販品の製品は(ユニオン昭和株式会社製、商品名ABSCENTS2000、ABSCENTS3000、USKY-700、USKY-900,USYZ-2000、HiSiv3000、HiSiv6000)が挙げられる。
【0026】
本発明の製造方法で製造された光触媒体(結晶性チタン酸化物複合体)を含む塗布剤は、各種微粒子を分散させる働きがあり、固体微粒子と混合して、超音波やボールミル等で分散させることができ、それを塗布して乾燥焼成などで得られる酸化チタン膜の中に、他の物質を担持あるいは分散した複合体を作成することも可能である。
【0027】
また、塗布する基体としては、セラミックス、陶磁器、金属、プラスチックス、繊維、テント、建材等、用途に応じた加熱処理に耐え得る素材であればあらゆるものに塗布可能である。多孔体の内部や粉体の表面処理を行なうことも可能であり、本発明の製造方法で製造される光触媒体を含む塗布剤は、各種材料製品の保護被膜、光触媒膜、紫外線カット被膜、着色塗布膜、誘電体膜、膜型センサー、酸化チタンゾルの製造などの分野に利用され得る。
【0028】
段ボールなどの梱包資材にも塗布可能である。梱包資材としては、野菜などの生鮮食料品を輸送する際に用いられる段ボール箱などを例示することができる。本発明の製造方法で製造される光触媒体を含む塗布剤を塗布することにより、野菜などの生鮮食料品の保存可能期間を塗布しない場合と比較して延長することが可能となる。つまり、光触媒体の抗ウイルス作用や殺菌作用により、生鮮食料品が傷みにくくなり保存可能期間が長くなる。
【0029】
以下に、実施例を示し、本発明を報告する。
実施例1
四塩化チタンの60重量%水溶液5mlを蒸留水で500mlとした溶液に3重量%アンモニア水を45ml滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物を濾別し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて90mlとした水酸化チタン懸濁液に30重量%過酸化水素水を10ml加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させて、黄色粘性液体100mlを得た。次いで、得られた液体を110℃で8時間加熱し、薄い乳白色半透明の分散液を得た。この分散液にハイシリカゼオライト(ユニオン昭和株式会社製、HISIV-3000)を0.8g加え、超音波洗浄器にて60分間分散し、結晶性酸化チタンを含む複合ゾルを得た。
【0030】
その一方で、イオン交換水60mlを40℃に加熱し、それに酢酸銀0.464gを加え40~50℃で約5分間攪拌した後濾紙(No.2)で濾過し、未溶解の酢酸銀を除去する。こうして得られた溶液に、亜硫酸ナトリウム2.0gを攪拌しながら加えた。亜硫酸ナトリウムを加えて白く濁った溶液が透明になるまで攪拌し、その後、チオ硫酸ナトリウム1.32gを加えて攪拌し、チオスルファト銀錯塩溶液を得た。
【0031】
得られた結晶性酸化チタンを含む複合ゾルおよびチオスルファト銀錯塩溶液を混合させる。混合後のチオスルファト銀錯塩の濃度は、125ppm以上500ppm以下、より好ましくは500ppm以上5000ppm以下とされる。
【0032】
実施例2
四塩化チタンの60重量%水溶液5mlを蒸留水で500mlとした溶液に3重量%アンモニア水を45ml滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物を濾別し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて90mlとした水酸化チタン懸濁液に30重量%過酸化水素水を10ml加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させて、黄色粘性液体100mlを得た。次いで、得られた液体を110℃で8時間加熱し、薄い乳白色半透明の分散液を得た。この分散液にレオロシール QS-102を0.8g加え、超音波洗浄器にて60分間分散し、結晶性酸化チタンを含む複合ゾルを得た。
【0033】
その一方で、イオン交換水60mlを40℃に加熱し、それに酢酸銀0.464gを加え40~50℃で約5分間攪拌した後濾紙(No.2)で濾過し、未溶解の酢酸銀を除去する。こうして得られた溶液に、亜硫酸ナトリウム2.0gを攪拌しながら加えた。亜硫酸ナトリウムを加えて白く濁った溶液が透明になるまで攪拌し、その後、チオ硫酸ナトリウム1.32gを加えて攪拌し、チオスルファト銀錯塩溶液を得た。
【0034】
得られた結晶性酸化チタンを含む複合ゾルおよびチオスルファト銀錯塩溶液を混合させる。混合後のチオスルファト銀錯塩の濃度は、125ppm以上500ppm以下、より好ましくは500ppm以上5000ppm以下とされる。
【0035】
比較例
四塩化チタンの60重量%水溶液5mlを蒸留水で500mlとした溶液に3重量%アンモニア水を45ml滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物を濾別し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて90mlとした水酸化チタン懸濁液に30重量%過酸化水素水を10ml加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させて、黄色粘性液体100mlを得た。次いで、得られた液体を110℃で8時間加熱し、薄い乳白色半透明の分散液を得た。
【0036】
更に、亜硫酸ナトリウム0.245gとチオ硫酸ナトリウム0.163gとを溶解した水溶液、および、上述の薄い乳白色半透明の分散液を混合させた比較例の分散液を得た。
【0037】
実施例1、実施例2および比較例の分散液における凝集度合いをそれぞれ目視にて確認した。
以下の表1に示すように実施例1では、沈殿が生じる一方で分散液は白濁したままの状体であった(表1では△と記載。)。実施例2では、沈殿は生じず、かつ、分散液は白濁したままの状態であった(表1では○と記載。)。比較例では、沈殿が生じると共に、分散液は透明な状態に変化した(表1では×と表記。)。
【0038】
【表1】
【0039】
言い換えると実施例1および実施例2は、比較例と比較して光触媒酸化チタン等の光触媒粒子の分散安定性が阻害されにくく、凝集を引き起こしにくいことが示されている。また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例2の方が光触媒粒子の分散安定性が阻害されにくく、凝集を引き起こしにくいことが示されている。
【0040】
実施例1、実施例2および比較例の分散液をそれぞれスライドガラス(76×26mm)に膜厚0.8μmになるよう塗布し、乾燥させた。その後、ブラックライト(極大波長351nm、10W/m)を2時間照射した。
【0041】
これらのスライドガラスをそれぞれ5Lのテドラバッグに入れ、その後、各テドラバック内にアルファガス(エア・リキード工業ガス株式会社製 アルファガス1 Air)を3L注入する。その後、各テドラバック内にアセトアルデヒドを注入し、アセトアルデヒドの濃度が90ppmになるよう調整する。アセトアルデヒドの濃度は検知管式気体測定器(ガステック株式会社製 GV-100S)を用いて測定する。暗所・室温下で2時間、静置し、分散液を塗布して乾燥させた膜にアセトアルデヒドを吸着させる。この時、比較例ではアセトアルデヒドの吸着はおこらずアセトアルデヒドの濃度は90ppmであったが、実施例1および実施例2ではアセトアルデヒドの濃度は0ppmであった。
【0042】
その後、実施例1および実施例2のテドラバッグ内にアセトアルデヒドを更に注入し、アセトアルデヒドの濃度を90ppmとした。これから、60分後の吸着は認められなかったので、ブラックライト(紫外線)を照射し、アセトアルデヒド濃度の変化、言い換えるとアセトアルデヒドの分解を観察した。観察結果を図1に示す。紫外線照射開始から60分の間に、比較例ではアセトアルデヒド濃度は、90ppmから約83ppmに低下した。実施例1では、90ppmから約47ppmに低下した。実施例2では、90ppmから約36ppmに低下した。
【0043】
[MIC(最小発育阻止濃度)の測定]
上記実施例1及び2と比較例1の抗菌剤を試料として、以下の方法で最小発育阻止濃度を測定した。即ち、任意濃度に各試料を添加した寒天平板培地に接種用菌液を接種・培養し、発育が阻止された抗菌剤の最低濃度を、各種微生物に対する試料の最小発育阻止濃度とした。結果を表1に示す。但し、寒天平板培地の調整、接種用菌液の調整、及び培養は、以下のようにして行った。
【0044】
寒天平板培地の調製
滅菌精製水で、試料の200,000ppm,100,000ppm,50,000ppm,25,000ppm,12,500ppm,6,250ppm,3,130ppm,1,560ppm,780ppm,390ppm,200ppm,100ppm,50ppm,25ppm,12.5ppm懸濁液を調製した。次に、溶解後50~60℃となった感受性測定用培地[ミューラー ヒントン(Mueller-Hinton)寒天培地(DIFCO社製)]に、上記の各懸濁液を培地の1/9量加えて、充分に混合した後、シャーレに分けて固化させ、寒天平板培地とした。
【0045】
接種用菌液の調製
増菌用培地[ミューラー ヒントン ブロス(Mueller-HintonBroth)(DIFCO社製)]にて、35℃で一夜培養した試験菌株の菌液を同培地で希釈し、1ml当りの菌数が約106になるように調製した。但し、試験菌株としては、以下のものを利用した。
【0046】
大腸菌:エスケリチャ コーライ(Escherichia coli) IFO 3301
黄色ブドウ球菌:スタフィロコッカス オーレオス(Staphylococcus aureus) 12732
緑膿菌:緑膿菌:シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa) IID P-1
【0047】
培養
接種用菌液を寒天平板培地に、ニクロム線ループ(内径約1mm)で2cm程度画線塗抹し、35℃で1日間培養した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から明らかなように、実施例1及び実施例2の抗菌剤を混合した寒天平板培地では、抗菌性成分として毒性の低い銀錯塩を使用しているにもかかわらず、比較例1の抗菌剤を混合した寒天平板培地よりもはるかに低い混合濃度で菌の発育を阻止することが出来た。
【0050】
上述の製造方法で製造された光触媒体(結晶性チタン酸化物複合体)を光触媒コーティング剤として、バインダーなどで塗布表面にコートした場合に、光触媒体の微粒子がバインダーに覆われたり、埋没したりしにくくなる。そのため、光触媒体の微粒子が、有機物等や酸素、紫外線と接触する表面積が低下しにくくなり、その結果、有機物等の分解効率が低下しにくくなる。
【0051】
また、上述のペルオキソチタン水和物を経由した結晶性チタン酸化物複合体の製造過程において、縮合等を促進する要因を除去するとともに、沈殿状態の水和物から直接的に特性の優れた結晶性粒子が得られる。反応過程において縮合等を促進する要因となる反応生成物、あるいは原料から混入する不純物を早期に分離することによって縮合等を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上詳述したように、本発明は、光触媒体の製造方法に係るものであり、本発明は、高い吸着特性、高い光活性を維持したまま、光効率が良く、耐久性に優れ、且つ、取り扱いが容易である光触媒体の製造方法を提供するものである。本発明は、従来の光触媒体の問題点を解決し、光触媒体による、水、大気又は土壌等の新しい浄化技術、環境技術として有用である。更に、本発明は、照射された光のエネルギーを効率良く利用することができ、耐久性に優れ、取り扱いが容易で、且つ、廉価な光触媒体を提供することができる。更に、本発明は、土壌中、廃水中及び大気中に含まれている有害有機物を、分解し、除去する技術を提供するものであり、高い産業上の利用価値を有する。
図1