(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウム及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20250120BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20250120BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20250120BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250120BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250120BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250120BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250120BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61K8/73
A61K31/728
A61Q19/00
A61P29/00
A61K47/36
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2023568598
(86)(22)【出願日】2022-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2022109329
(87)【国際公開番号】W WO2023006108
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】202110874694.1
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523419897
【氏名又は名称】梅曄生物医藥股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MEYER BIO-MEDICINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6 Jinyuan Road,Lichenzhuang Industrial Park,Laiwu High-tech Zone Jinan,Shandong 271100,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】523419901
【氏名又は名称】山東美貌製藥有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG MEIMAO PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6 Jinyuan Road,Lichenzhuang Industrial Park,Laiwu High-tech Zone Jinan,Shandong 271100,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】523419912
【氏名又は名称】山東貫天下生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG GUANTIANXIA BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingfu Street,Linshu Economic Development Zone Linyi,Shandong 276000,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】▲リン▼ 沛学
(72)【発明者】
【氏名】邵 華栄
(72)【発明者】
【氏名】曽 慶▲カイ▼
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-250592(JP,A)
【文献】特表2000-502141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
A61K
A61Q
A61P
A23L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法であって、
前記方法は、
ヒアルロン酸ナトリウム固体原料に対して過酸化水素水噴霧及び紫外線照射処理を行い、キログラム当たりの前記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料は、質量濃度1%~5%の過酸化水素水50~100ミリリットルを噴霧し、紫外照射線量が300~1500μW/cm
2であり、照射時間が50~70分であり、ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を得る、ステップ1)と、
前記ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を水に溶解し、NaOH溶液でpHをアルカリ性に調整することで、ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液を得る、ステップ2)と、
前記ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ溶液に対して超音波処理を行う、ステップ3)と、
前記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料を、0.1%~1%(w/v)の濃度を有するヒアルロン酸ナトリウム溶液に調製し、20%~60%(v/v)の添加割合で、ステップ3)で得られた超音波処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と均一に混合する、ステップ4)と、
それぞれ珪藻土と活性炭を用いて吸着処理を行い、且つナノ濾過膜を用いて濾過濃縮し、乾燥した後に
、重量平均分子量範囲は0.2万~150万であり、分子量分散係数Mw/Mnは5以上であるヒアルロン酸ナトリウムを得る、ステップ5)とを含む、ことを特徴とする
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料の分子量は、100万~200万である、ことを特徴とする請求項1に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料は、化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム、食品グレードのヒアルロン酸ナトリウム、医薬グレードのヒアルロン酸ナトリウムのうちの一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項4】
前記ステップ2)において、前記ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を水に溶解した後の体積濃度は1%~10%(w/v)であり、及び/又は、
NaOH溶液でpHを10~12に調整する、ことを特徴とする請求項1に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項5】
前記ステップ3)において、超音波処理の周波数は10~100kHzであり、時間は15~180分である、ことを特徴とする請求項1に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項6】
前記ステップ5)において、
珪藻土を採用する吸着処理のステップは、以下の含み、
前記ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ溶液の質量に基づき、0.1%~1%(w/v)の珪藻土を加え、45~80℃で撹拌して30~60分間吸着し、濾過し、及び/又は、
活性炭を採用する吸着処理のステップは、以下を含み、
希酸溶液でpHを6~7に調整し、前記ヒアルロン酸ナトリウム溶液の質量に基づく0.1%~1%(w/v)の活性炭を加え、45~80℃で撹拌して30~60分間吸着し、濾過し、前記希酸溶液は、希塩酸溶液、希硫酸溶液、希酢酸溶液、希次亜塩素酸溶液のうちの一種又は多種から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項7】
前記ステップ5)において、前記ナノ濾過膜の分画分子量は200-300Daであり、操作圧力を15-30barに制御し、温度を30~50℃に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項8】
前記ステップ5における前記ヒアルロン酸ナトリウムのエンドトキシン含有量は<0.01EUであり、タンパク質含有量は<0.01%であり、
前記ステップ5における前記ヒアルロン酸ナトリウムは、280nmでOD値<0.01であり、260nmでOD値<0.01である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の
ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法で調製された
ヒアルロン酸ナトリウムの医薬用、食品用及び/又は化粧品用の保湿剤、潤滑剤、抗炎症剤及び/又は細胞修復剤の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は生体材料技術分野に関し、具体的には全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウム及びその調製方法と応用に関する。
【0002】
ヒアルロン酸(Haluronic acid,HA)は、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンが連結された直鎖多糖であり、分子量が数十万から数百万ダルトンであり、動物組織、特にヒトの皮膚、臍帯、硝子体および関節滑液に広く分布しており、植物や微生物にも広く分布している。天然では、HA構造は同一であり、人種差がなく、免疫原性がない。
【0003】
HAは高濃度(1%)では分子間が網目状に存在し、高い粘弾性を有する。HAの水溶液は粘弾性流体であり、細胞とコラーゲン繊維の空間に充填され且つ特定の表皮組織を覆い、主な機能は細胞を保護及び潤滑し、この弾性マトリックスにおける細胞の移動を調整することである。皮膚において、HAは水分を閉じ込めることができ、皮膚を滑らかで柔らかくし、皮膚の弾性を維持する。人体関節滑液におけるHAは、関節を潤滑し、有害な信号因子の刺激を隔離し、関節軟骨を保護する機能を果たすことができる。眼硝子体中のHAは、眼房を支え、網膜を保護し、眼を明るくする働きをする。HAは国際的に認められた理想的な天然保湿因子であり、様々な化粧品に応用することができ、美容保湿の効果を果たす。HAは経口吸収した後、体内HAの合成に関与することができ、人体皮膚、関節腔及び眼硝子体に分布し、関節滑液内のヒアルロン酸を補充することができ、皮膚弾性を増加させる。
【0004】
HAは生産及び応用する時にヒアルロン酸ナトリウムの形態で存在することが多く、異なる種類のヒアルロン酸ナトリウムは効果の差が大きく、例えば、高分子量ヒアルロン酸ナトリウム(分子量>50万)は比較的良好な粘膜保護作用を有し、低分子量ヒアルロン酸ナトリウム(分子量1万~50万)及びオリゴヒアルロン酸ナトリウム(分子量<1万)は皮膚浸透能力及び経口吸収能力の方面において比較的良好な利点を有する。現在、ヒアルロン酸製品は主に単一分子量分布のヒアルロン酸に集中し、分子量分布の幅が狭く、品質のばらつきがある。そのため、従来の方法は広い分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムを取得しようとすれば、各分子量段のヒアルロン酸ナトリウムを混合して配合する必要があり、しかし、異なる分子量のヒアルロン酸ナトリウム製品の間の粘度等の性能差が大きく、直接混合して取得した生成物の均一性を保証しにくい。従来技術においてさらにいくつかの物理的、化学的又は生物系のヒアルロン酸ナトリウムの分解方法を提供する。しかし従来の分解方法で処理した後のヒアルロン酸ナトリウムの分子量分布が均一ではなく、安定性に劣り、ヒアルロン酸ナトリウム製品の品質をさらに向上させることが困難である。
【0005】
上記問題を解決するために、本発明は均一性に優れ、安定性が高く且つ全分子量分布の高品質ヒアルロン酸ナトリウム、及びその調製方法と応用を提供することを目的とする。
【0006】
一方、本出願は全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、上記方法は以下を含む:
ステップ1)であって、ヒアルロン酸ナトリウム固体原料に対して過酸化水素水噴霧及び紫外線照射処理を行い、ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を得る。
ステップ2)であって、上記ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を水に溶解し、NaOH溶液でpHをアルカリ性に調整することで、ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液を得る。
ステップ3)であって、上記ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ溶液に対して超音波処理を行う。
ステップ4)であって、上記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料を、0.1%~1%(w/v)の濃度を有するヒアルロン酸ナトリウム溶液に調製し、20%~60%(v/v)の添加割合で、ステップ3)で得られた超音波処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と均一に混合する。
ステップ5)であって、それぞれ珪藻土と活性炭を用いて吸着処理を行い、且つナノ濾過膜を用いて濾過濃縮し、乾燥した後に上記全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムを得る。
【0007】
さらに、上記ステップ1)において、キログラム当たりの上記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料は、質量濃度1%~5%の過酸化水素水50~100ミリリットルを噴霧し、紫外照射線量が300~1500μW/cm2であり、照射時間が50~70分である。
【0008】
理解されるように、本出願における上記紫外線照射線量は単位面積で受けた紫外線の光束を指す。選択的に、上記紫外線照射のステップは紫外線ランプの下に置いて照射を行うことで、そのうち紫外線ランプの照射波長は200-400nmであり、好ましくは220-320nmである。
【0009】
さらに、上記ヒアルロン酸ナトリウム固体原料の分子量は、100万~200万である。
【0010】
本明細書に記載されるヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、その重量平均分子量(mass average molar mass)を指すことが理解される。
【0011】
さらに、使用されるヒアルロン酸ナトリウム固体原料は、化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム、食品グレードのヒアルロン酸ナトリウム、医薬グレードのヒアルロン酸ナトリウムのうちの一つ又は複数から選択される。
【0012】
さらに、上記ステップ2)において、上記ヒアルロン酸ナトリウム分解材料を水に溶解した後の体積濃度は1%~10%(w/v)である。及び/又は、NaOH溶液でpHを10~12に調整する。
【0013】
さらに、上記ステップ3)において、超音波処理の周波数は10~100kHzであり、時間は15~180分である。
【0014】
さらに、上記ステップ5)において、珪藻土を採用する吸着処理ステップは以下を含む: 上記ヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ溶液の質量に基づき、0.1%~1%(w/v)の珪藻土を加え、45~80℃で撹拌して30~60分間吸着し、濾過する。及び/又は、活性炭による吸着処理のステップは以下を含む:希酸溶液でpHを6~7に調整し、上記ヒアルロン酸ナトリウム溶液の質量に基づく0.1%~1%(w/v)の活性炭を加え、45~80℃で撹拌して30~60分間吸着し、濾過する。好ましくは、上記希酸溶液は、希塩酸溶液、希硫酸溶液、希酢酸溶液、希次亜塩素酸溶液のうちの一種又は多種から選択される。
【0015】
さらに、上記ステップ5)において、上記ナノ濾過膜の分画分子量は200-300Daであり、操作圧力を15-30barに制御し、温度を30~50℃に制御する。
【0016】
一方、本出願はさらに上記方法で調製された全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムを提供し、上記全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムの重量平均分子量範囲は、0.2万~150万であり、分子量分散係数Mw/Mnは5以上である。
好ましくは、上記ヒアルロン酸ナトリウムにおけるエンドトキシン含有量は<0.01EUであり、タンパク質含有量は<0.01%である。
好ましくは、上記ヒアルロン酸ナトリウムは、280nmでOD値<0.01であり、260nmでOD値<0.01である。
【0017】
一方、本出願はさらに上記調製方法で調製されたヒアルロン酸ナトリウムが医薬用、食品用及び/又は化粧品用の保湿剤、潤滑剤、抗炎症剤及び/又は細胞修復剤の調製における応用を提供する。
【0018】
従来技術に比べ、本発明の有益な効果は以下のとおりである:
1、本発明の提供する調製方法は迅速に、効率的に全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムを調製して得ることができ、調製されたヒアルロン酸ナトリウムは均一性に優れ、安定性が高く、各分子量のヒアルロン酸ナトリウムの効能優位性を十分に利用することができ、分子量分散係数Mw/Mnは5以上である。
2、本発明の提供する全分子量ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法は、同時に紫外線照射分解、超音波-アルカリ分解処理、珪藻土濾過、活性炭吸着及びナノ膜濾過を融合し、得られたヒアルロン酸ナトリウムのエンドトキシン含有量<0.01EU、タンパク質含有量<0.01%、280nmでOD値<0.01、260nmでOD値<0.01であり、より高い生体適合性を有し、より高い品質レベルに達することができ、ヒアルロン酸ナトリウムが皮膚保湿、細胞保護、経口などの方面における応用効果を向上させることに有利である。
3、本発明の提供する全分子量ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法は、紫外線照射分解、超音波分解を高粘度ヒアルロン酸溶液の濾過前に置き、高粘度溶液の濾過の難易度を大幅に低下させ、調製効率及び収率を向上させ、不純物の除去効率を向上させる。
4、本発明の提供する全分子量ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法は、得られた高品質全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムは、優れたスマート補水保湿、抗炎症及び細胞保護等の活性を備える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の全体的な概念をより明確に説明するために、以下では、実施例として詳細に説明する。当業者であれば、以下の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解するであろう。
【0020】
実施例1
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が100万の食品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に1%の過酸化水素水50mLを均一に噴霧し、300μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が1%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、2%のNaOH溶液を用いてpHを10に調整し、10kHzの超音波下で15分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度1%(w/v)の100万ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合60%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、0.1%の珪藻土を用い、45℃で攪拌し、30分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希塩酸溶液でpHを5.0に調整した後、0.1%の活性炭を用いて45℃で攪拌し、30分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7)であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が300Daであり、操作圧力が15barであり、温度を40℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0021】
実施例2
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が120万の食品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に3%の過酸化水素水80mLを均一に噴霧し、600μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が3%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、5%のNaOH溶液を用いてpHを12に調整し、30kHzの超音波下で30分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度0.8%(w/v)の120万ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合40%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、0.2%の珪藻土を用い、50℃で攪拌し、40分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希硫酸溶液でpHを5.0に調整した後、0.3%の活性炭を用いて50℃で攪拌し、50分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7)であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が250Daであり、操作圧力が20barであり、温度を50℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0022】
実施例3
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が120万の化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に5%の過酸化水素水80mLを均一に噴霧し、900μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が5%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、5%(w/v)のNaOH溶液を用いてpHを12に調整し、60kHzの超音波下で60分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度0.6%(w/v)の120万の高分子量ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合40%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、0.4%の珪藻土を用い、55℃で攪拌し、40分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希硫酸溶液でpHを5.0に調整した後、0.3%の活性炭を用いて55℃で攪拌し、50分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7)であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が200Daであり、操作圧力が30barであり、温度を50℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0023】
実施例4
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が140万の化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に5%の過酸化水素水100mLを均一に噴霧し、1200μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が5%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、6%(w/v)のNaOH溶液を用いてpHを12に調整し、90kHzの超音波下で60分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度0.3%(w/v)の140万の高分子量ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合30%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、0.6%の珪藻土を用い、55℃で攪拌し、60分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希硫酸溶液でpHを5.0に調整した後、0.4%の活性炭を用いて55℃で攪拌し、60分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7):であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が200Daであり、操作圧力が30barであり、温度を50℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0024】
実施例5
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が150万の化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に5%の過酸化水素水100mLを均一に噴霧し、1500μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が3%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、5%のNaOH溶液を用いてpHを12に調整し、90kHzの超音波下で60分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度0.3%(w/v)の150万の高分子量ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合20%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸アルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、0.8%の珪藻土を用い、55℃で攪拌し、30分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希硫酸溶液でpHを5.0に調整した後、0.6%の活性炭を用いて55℃で攪拌し、30分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7):であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が300Daであり、操作圧力が30barであり、温度を50℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0025】
実施例6
該実施例は全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの調製方法を提供し、具体的には以下のステップを含む:
ステップ1)であって、分子量が200万の化粧品グレードのヒアルロン酸ナトリウム原料1kgを取り、ヒアルロン酸ナトリウム原料の表面に5%の過酸化水素水100mLを均一に噴霧し、1500μW/cm2の線量で紫外線照射を60分間行う。
ステップ2)であって、紫外線照射後のヒアルロン酸ナトリウム材料を水に溶解し、濃度が1%(w/v)であり、室温で撹拌し、完全に溶解させる。
ステップ3)であって、5%のNaOH溶液を用いてpHを12に調整し、100kHzの超音波下で60分間超音波処理する。
ステップ4)であって、濃度0.1%(w/v)の200万の高分子量ヒアルロン酸ナトリウム溶液を調製し、添加割合30%(v/v)で上記処理後のヒアルロン酸ナトリウムのアルカリ性溶液と混合する。
ステップ5)であって、1%の珪藻土を用い、55℃で攪拌し、50分間吸着処理し、濾過する。
ステップ6)であって、2%の希硫酸溶液でpHを5.0に調整した後、1%の活性炭を用いて55℃で攪拌し、50分間吸着処理し、濾過する。
ステップ7):であって、ナノ濾過膜システムを用いて濾過液を濃縮し、そのうちナノ濾過膜の分画分子量が300Daであり、操作圧力が30barであり、温度を50℃に制御し、ナノ濾過濃縮液を得て、それを噴霧乾燥し、高品質の全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0026】
比較例1
該比較例はある商品化された市販のヒアルロン酸ナトリウム1号(化粧品グレード、125万の重量平均分子量)を選択する。
【0027】
比較例2
該比較例はある商品化された市販のヒアルロン酸ナトリウム2号(化粧品グレード、10万の重量平均分子量)を選択する。
【0028】
比較例3
該比較例は実施例1の調製方法とほぼ同じであり、相違点は、ステップ1)において1%の過酸化水素水50mLのみを均一に散布し、紫外線照射を行わず、且つ活性炭で吸着した後にナノ濾過膜システムを使用した濾過液を濾過濃縮しないことである。
【0029】
比較例4
該比較例は実施例1の調製方法とほぼ同じであり、相違点は、ステップ1)において300μW/cm2線量を採用して60分間紫外線照射を行うのみで、過酸化水素水処理を使用せず、且つ活性炭を採用して吸着した後に、ナノ濾過膜システムを使用した濾液に対する濾過濃縮を行わないことである。
【0030】
比較例5
この比較例は、200万の重量平均分子量を有する高分子量ヒアルロン酸ナトリウム、100万の重量平均分子量を有するヒアルロン酸ナトリウム、30万の重量平均分子量を有する低分子量ヒアルロン酸ナトリウム、及び1万未満の重量平均分子量を有するオリゴヒアルロン酸ナトリウムを、単独でそれぞれ1:1:1:1の質量比で60分間混合撹拌し、ヒアルロン酸ナトリウムのサンプルを得る。
【0031】
実施例7:
上記実施例1~6及び比較例3~5で得られた異なるヒアルロン酸ナトリウムに対して異なる位置のサンプリングを行い、均一性及び安定性を測定し、25℃でNDJ-1型回転粘度計3号回転子を用い、それぞれ1%の異なるヒアルロン酸ナトリウム溶液に対して60r/分で粘度を測定する。各サンプルをそれぞれ調製後4℃で保存し、6ヶ月後にサンプリングして粘度を測定する。結果は表1に示すように、実施例1~6で得られたヒアルロン酸ナトリウムは外観が均一で、安定性に優れる。比較例3及び比較例4で得られたヒアルロン酸ナトリウムは外観が比較的均一であるが、安定性がやや悪く、且つ粘度が比較的大きく、濾過効率が低く、且つナノ濾過膜システムを用いて濾過することが困難であり、比較例5で得られたヒアルロン酸ナトリウムは均一性及び安定性がいずれも悪い。
[表1]
【0032】
実施例8
上記実施例と比較例で得られたヒアルロン酸ナトリウムのサンプルの分子量分布を測定すると、重量平均分子量Mwがそれぞれ0.2万~1万、1万~30万、30万~100万、>100万の範囲にあるヒアルロン酸ナトリウム分子の割合が表2のようになる。
[表2]
表2のデータから、実施例1~6で得られたヒアルロン酸ナトリウム原料は、市販の異なる分子量規格のヒアルロン酸ナトリウムと比較して分子量分布の幅が広く、分子量分散係数Mw/Mnが5以上であることが分かる。比較例3と比較例4では分子量分布範囲が狭く、分子量分散係数が2.5以下であることから、紫外線照射や過酸化水素水処理の単独使用では効果が期待できないことが分かる。
【0033】
実施例9
上記実施例1~6で調製したヒアルロン酸ナトリウムのエンドトキシンと異種タンパク質について、それぞれリムルス試薬検出法、Folinフェノール法を用いて測定した結果を表3に示す。
[表3]
表3の結果から、実施例1~6の調製方法で得られたヒアルロン酸は、エンドトキシン含有量が0.01EU未満、タンパク質含有量が0.01%未満であり、280nmでのOD値が0.01未満、260nmでのOD値が0.01未満であり、生体適合性が高く、品質レベルが高いことが分かる。
【0034】
実施例10
有効な受験希望者45名を選択し、年齢は20~55歳で、2~3日前の受験部位にはどの製品(化粧品や外用薬品などが含まれる)も使用できない。試験前に、被験者は両手の前腕の内側を統一的に清潔にし、4×4cmの試験エリアに印をつけ、調合1~8サンプル(それぞれ実施例1~6の全分子量ヒアルロン酸ナトリウム1%、調合7の市販120万ヒアルロン酸ナトリウム1%、調合8の比較例5ヒアルロン酸ナトリウム1%、調合中の残りの成分はグリセリン2%、ブタンジオール2%)を左右の腕に均一に塗布しランダムに分布し、使用量は3mg/cm
2であり、皮膚水分測定器で製品塗布前及び塗布後30分間、1時間、3時間、6時間の時の被検皮膚エリアの水分量を測定し、各エリアごとに平行に5回測定し、平均値を測定値とする。同一被験者の測定は同一の測定者が完成し、すべての被験者は、測定前後に、温度と湿度が一定の室内空間に居る。皮膚水分増加量(%)=(塗布後水分量?塗布前水分量)/塗布前水分量×100%である。
[表4]
表4の結果から、本発明により調製された全分子量ヒアルロン酸ナトリウムは、優れた保湿性を有し、市販のヒアルロン酸ナトリウム製品よりも優れており、化粧品に使用することにより優れた保湿効果を発揮することが分かった。
【0035】
実施例11
インターロイキンIL-1βによりヒト不死化上皮細胞(HaCaT)の炎症反応を誘導することをモデルとして、本発明により調製された全分子量分布のヒアルロン酸ナトリウムが抗炎症効果を有することを検証する。
ヒト不死化上皮細胞(HaCaT)を96孔プレートに、5×10
3cells/mLで、1孔あたり100μLで接種し、1群あたり6個の複数孔を設け、24時間培養後、10ng/mLのインターロイキンIL-1β、20mg/mLの本発明の全分子量ヒアルロン酸ナトリウム(実施例1~6)、及び比較例ヒアルロン酸ナトリウム(比較例1~5)を含む培地を交換し、IL-1及びヒアルロン酸ナトリウムを加えない細胞を正常対照群とし、IL-1βのみを加えヒアルロン酸ナトリウムを加えない細胞をモデル対照群とし、24時間培養を続けた後、ELISAキットを用いてインターロイキンIL-1α及び腫瘍壊死因子TNF-αの発現レベルを測定する。
[表5]
表5のデータから、異なる実施例と比較例のヒアルロン酸は、細胞のIL-1α及びTNF-αの発現レベルを低下させ、いずれも一定の抗炎症効果を示しているが、本発明のプロセスで調製された全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムは比較例の通常のヒアルロン酸ナトリウムよりも優れた抗炎症効果を示していることが分かる。
【0036】
実施例12
ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)で皮膚モデル損傷を誘導することをモデルとし、本発明で調製した全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムの抗細胞損傷及び細胞修復効果を検証する。
EpiSkin皮膚モデルを12孔プレートに移して培養し、24時間培養後に、0.5%(v/v)SDSを含む培地を交換し、2時間インキュベートした後、1孔当たり1%(w/v)の本発明の全分子量ヒアルロン酸ナトリウム(実施例1~6)、及び比較例ヒアルロン酸ナトリウム(比較例1~5)を含む同量培地を直接添加し、培地のヒアルロン酸ナトリウム含有最終濃度を0.5%(w/v)とし、SDS及びヒアルロン酸ナトリウムを添加しない細胞を正常対照群とし、SDSのみ添加しヒアルロン酸ナトリウムを添加しない細胞をモデル対照群とし、24時間培養を続けた後、皮膚組織モデルを取り出し、MTT法で酵素マーカーを用いて570nmにおける吸光度値を測定し、組織細胞の活性は次の式で計算する:
組織細胞活性(%)=A
p(t)/A
n×100%
ここで、A
p(t)は陽性対照群又は実験群の吸光度値である。A
nは陰性対照群の吸光度値であり、結果は次の表のようになる。
[表6]
表6のデータから、本発明により調製された全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムは、SDSによって誘導されるEpiSkin皮膚モデルの損傷を強く抑制し、損傷した細胞の修復を効果的に促進することが明らかになった。本発明の方法により調製された全分子量分布ヒアルロン酸ナトリウムは、比較例の通常のヒアルロン酸ナトリウムと比較して、細胞修復促進効果が高い。
【0037】
上記は、本出願の実施例に過ぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとっては、本出願は種々の変更及び変化を伴うことができる。本願の精神及び原理の範囲内で行われた補正、均等置換、改良等は、本願の特許請求の範囲内に含まれるものとする。